説明

高周波加熱装置

【課題】ボビンに線材を巻回する作業効率の向上を図った昇圧トランスを提供する。
【解決手段】昇圧トランスとスイッチング素子とを電気的に接続する基板を備え、昇圧トランスは、ボビンの一次側コイル巻回部に線径の細い素線を複数本撚った一次側コイルの線材を巻回し、該一次側コイルの引出し線の先端部を基板の穴に差し込んで電気的に接続し、ボビンには、一次側コイルの線材を挟み込むように一対の鉤状片よりなる爪を形成し、また、一次側コイル巻回部から一次側コイルの巻き始め側の引出し線と巻き終わり側の引出し線を爪に導く手前に、引出し線の位置を固定するための巻き始め側のガイド壁A,Bと巻き終わり側のガイド壁A,Bを夫々適宜間隔を保持して設け、巻き始め側のガイド壁A,Bと、巻き終わり側のガイド壁A,Bは、前記引出し線を挟み込むように一対の壁面によって形成し配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マグネトロンに高周波出力を発生させるための電源を供給するインバータ電源において、該インバータ電源に用いる昇圧トランスの一次側コイルの巻回作業効率を向上させた高周波加熱装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の高周波加熱装置において、高周波を発生するマグネトロンへの電源の供給方法はインバータ電源に置き換わり、該インバータ電源を搭載した高周波加熱装置の台数も多くなってきた。
【0003】
インバータ電源に使用される昇圧トランスは、二次側に1000Vrms以上の電圧を20KHz〜40KHzの高周波で発生させる必要がある。
【0004】
そのために、昇圧トランスの一次側コイルには、線径の細い銅線にワニスで絶縁した素線を複数本撚った太い撚り線を巻回し、該撚り線の巻き始め側と巻き終わり側の先端部を直接基板に挿入して半田で電気的に接続する構成をとっている。
【0005】
そして、一次側コイルは、太い撚り線をボビンに巻回してコイルを作る時に、巻きムラを無くすように、太い撚り線に張力をかけながら巻回するため、巻き始め側の引出し線が巻回する方向に引込まれ、引出し線の先端部が短くなり基板に挿入できなくなる不具合がある。
【0006】
また、巻き始めの引出し線が巻回する方向に引込まれるのを想定して、巻き始め側の引出し線の基板へ挿入する先端部の長さを長めに設定すると、引込まれ具合に応じて昇圧トランスの完成時に先端部の長さにバラツキが生じ、長めに設定した分を無駄に切断する手間が発生していた。
【0007】
以上のような不具合を防止するために、特許文献1には、ボビンの鍔部に端線の側面を圧接するように複数の楔状の突起を有した係止部を一体形成したコイルの端線係止構造が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】実開平4−46520号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に記載されたものは、コイルの端線を係止する係止部に複数の楔状突起を設け、該楔状突起により端線を圧接して位置ずれを防止するものであるため、絶縁用のワニスを施した線径の細い素線を複数本撚り合わせた撚り線では、撚り線の断面形状が周囲からの応力により変化し易いため、楔状突起を圧接した時に素線がつぶれ、確実に位置ずれを防止をすることができない。
【0010】
また、昇圧トランスは温度が上昇して高くなるので、耐熱温度などを考慮してボビンの材料に、ポリエチレンテレフタレートにガラス繊維を約30%程度混ぜたものを使用しているため、成形後のボビンの表面は硬く、係止部に設けた複数の楔状突起によって線材を圧接して固定しようとすると、線材を挿入して固定する時に撚りあわせた線径の細い素線に傷を付けてしまい、部品の信頼性を低下させてしまう。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は上記の問題を解決するためになされたものであり、請求項1では、高周波出力を発生するマグネトロンと、該マグネトロンで発生する高周波出力を設定する入力手段と、該入力手段にて設定された高周波出力を前記マグネトロンに発生させるための電源を供給するインバータ電源を備え、該インバータ電源は、前記マグネトロンに供給する高周波出力の電源を生成するための電圧を昇圧する昇圧トランスと、該昇圧トランスへの通電をON−OFFし前記昇圧トランスの一次側コイルに電圧を印加するスイッチング素子と、前記昇圧トランスと前記スイッチング素子とを搭載し、前記昇圧トランスと前記スイッチング素子とを電気的に接続する基板を備え、前記昇圧トランスは、ボビンの一次側コイル巻回部に線径の細い素線を複数本撚った一次側コイルの線材を巻回し、該一次側コイルの引出し線の先端部を前記基板の穴に差し込んで電気的に接続し、前記ボビンには、前記一次側コイルの線材を挟み込むように一対の鉤状片よりなる爪を形成し、また、前記一次側コイル巻回部から前記一次側コイルの巻き始め側の引出し線と巻き終わり側の引出し線を前記爪に導く手前に、前記引出し線の位置を固定するための巻き始め側のガイド壁A,Bと巻き終わり側のガイド壁A,Bを夫々適宜間隔を保持して設け、前記巻き始め側のガイド壁A,Bと、巻き終わり側のガイド壁A,Bは、前記引出し線を挟み込むように一対の壁面によって形成し、かつ、前記巻き始め側のガイド壁A,B及び巻き始め側の爪と、巻き終わり側のガイド壁A,B及び巻き終わり側の爪によって前記引出し線を蛇行するように曲げて配置するものである。
【0012】
請求項2では、前記引出し線を曲げるために、前記巻き始め側のガイド壁Aと巻き始め側の爪を直線で結ぶ中心線と、前記巻き終わり側のガイド壁Aと巻き終わり側の爪45bを直線で結ぶ中心線上から、巻き始め側のガイド壁Bと巻き終わり側のガイド壁Bを左右いずれかに幾分ずらして形成するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、銅線に絶縁用のワニスを施した線径の細い素線を複数本撚りあわせた撚り線でも確実に固定でき、撚り線をボビンに巻回する時でも巻き始め部の線端部が引き込まれることがなく、これによって、作業効率が向上する。
【0014】
また、撚り線の巻き始め部の線端部を長めにする必要がなくなるので、撚り線を固定した後から余分な線材を切断する無駄も無くすことができる。
【0015】
さらに、巻き始め側と巻き終り側の撚り線の線材に傷を付ける事が無いので、昇圧トランスの信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の高周波加熱装置を前面側から見た斜視図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】本発明の高周波加熱装置のインバータ電源の説明図である。
【図4】同高周波加熱装置の昇圧トランスに巻回した一次側コイルの線材の断面図である。
【図5】同高周波加熱装置のインバータ電源の概略斜視図である。
【図6】同高周波加熱装置のインバータ電源に使用する昇圧トランスの側面図である。
【図7】図6のB−B断面図である。
【図8】本発明の高周波加熱装置のインバータ電源に使用する昇圧トランスの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施例を添付図面に従って説明する。
【0018】
図1から図2において、高周波加熱装置の本体について簡単に説明する。
【0019】
高周波加熱装置の本体1は、加熱室17に加熱調理する食品を入れ、マイクロ波やヒータの熱,飽和水蒸気,過熱水蒸気を使用して食品を加熱調理する。
【0020】
ドア2は、加熱室17の開口部を開閉し、食品を出し入れできるようにするもので、ドア2を閉めることで加熱室17を密閉状態にし、食品を加熱調理する時に使用するマイクロ波の漏洩を防止し、ヒータの熱や過熱水蒸気を封じ込め、効率良く加熱調理することを可能にする。
【0021】
取っ手7は、ドア2に取り付けられ、ドア2の開閉を容易にするもので、手で握りやすい形状になっている。
【0022】
操作パネル3は、加熱調理時の熱の影響を受け難いようにドア2の下部に設けられ、そこに入力手段5が設けられている。
【0023】
入力手段5には、マイクロ波加熱やヒータ加熱等の加熱手段や加熱する時間などを入力する操作部5bと入力された内容や加熱の進行状態を表示する表示部5aが設けられている。
【0024】
機械室18は、加熱室底面17aと本体1の底板24との間の空間部に設けられ、底板24上には操作部5bからの入力を表示部5aに表示し、入力された情報に基づいて加熱調理の制御を司る制御部4,食品を加熱するためのマグネトロン31,マグネトロン31に接続された導波管21,インバータ電源30、その他後述する各種部品等が取り付けられている。
【0025】
被加熱物を加熱するためのマイクロ波エネルギーは、マグネトロン31に接続されたインバータ電源30から電源が供給されることでマグネトロン31より放射する。
【0026】
放射したマイクロ波エネルギーは、導波管21,回転アンテナ駆動手段23の出力軸23aが貫通する開孔部22を通し、加熱室底面17aの略中央部に設置した回転アンテナ19の下面に流入し、該回転アンテナ19で拡散されて加熱室17に放射される。
【0027】
回転アンテナ19は、回転アンテナ駆動手段23の出力軸23aに連結されている。
【0028】
加熱室17の後部には、熱風ユニット11が取り付けられ、該熱風ユニット11内には加熱室17の空気を効率良く循環させる熱風ファン15が取り付けられ、加熱室奥壁面17bには空気の通り道となる熱風吸気孔と熱風吹出し孔が設けられている。
【0029】
熱風ファン15は、熱風ユニット11の外側に取り付けられた熱風モータ13の駆動により回転し、熱風ヒータ14で循環する空気を加熱する。
【0030】
加熱室17の天面の裏側には、ヒータよりなるグリル加熱手段12が取り付けられている。グリル加熱手段12は、マイカ板にヒータ線を巻き付けて平面状に形成し、加熱室17の天面裏側に押し付けて固定し、加熱室17の天面を加熱して加熱室17内の食品を輻射熱によって焼くものである。
【0031】
また加熱室17の後部上方には、加熱室17の温度を検出する温度検出手段16が設けられている。該温度検出手段16は、グリル加熱手段12及び熱風ユニット11のからの熱の影響を直接受けない位置に設けられている。
【0032】
一方、加熱室底面17aには、食品を載置するためのテーブルプレート20が載置されている。
【0033】
テーブルプレート20は、食品を載置するためのもので、ヒータ加熱とマイクロ波加熱の両方に使用できるように耐熱性を有し、かつ、マイクロ波の透過性が良く、衛生面でも問題がない磁器等の材料で成形されている。
【0034】
次に、図3〜図7のインバータ電源に関して詳細な構造を説明する。
【0035】
図3はインバータ電源の説明用に簡易的な回路図を示したものである。
【0036】
40は商用電源を表し、一般家庭では100V(50Hz/60Hz)の電源を示す。
【0037】
インバータ電源30では、商用電源40を整流し、平滑した後にスイッチング素子37を使用して昇圧トランス32の一次側コイル34に高周波の電源を供給し、ON−OFF制御する。そして共振コンデンサと昇圧トランス32の一次側コイル34のインダクタンスによってスイッチング素子37がONからOFFした後も、昇圧トランス32の一次側コイル34に電流を交流的に流し、昇圧トランス32の二次側コイル35に電圧を誘起する。
【0038】
昇圧トランス32の二次側コイル35には、高電圧(1000Vrms以上)・高周波(20KHz〜40KHz)の電圧が誘起される。そして、昇圧トランス32の二次側コイル35に発生した電圧は倍電圧回路50で倍電圧整流した後マグネトロン31に供給される。
【0039】
マグネトロン31は、電気的構成としては、カソード(ヒータと兼用)とアノードからなり、ヒータに電流を流して発熱させ、ヒータが温まると、カソードとアノード間に陽極電流が流れ、マグネトロン31は発振を開始して高周波エネルギーを放射して食品を加熱する。
【0040】
そして、マグネトロン31の高周波出力の調整は、スイッチング素子37のON時間とOFF時間の比率を変更することで行われ、制御部4は、操作部5bより入力された高周波出力の情報をインバータ電源30の制御手段38に伝達し、制御手段38は、設定された高周波出力となるようにスイッチング素子37のON−OFFの時間を決定し、駆動回路39を介してスイッチング素子37を駆動する。
【0041】
この時の駆動周波数は、20KHz〜40KHzの高周波である。
【0042】
高周波加熱装置で必要とされる高周波出力は概ね500W〜1000Wで、昇圧トランス32の一次側コイル34に流れる電流は、全体の効率を約55〜70%とした場合に約10〜14A前後流れることになる。
【0043】
以上のことから、昇圧トランス32の一次側コイル34に使用される線材は、細い銅線からなる素線を複数本撚り集めた線材が使用される。
【0044】
図4に本実施で使用される一次側コイル34の線材34aの断面図を示す。
【0045】
一次側コイルの線材34aは、素線34bに絶縁用のワニスを施した線径が0.18mmの銅線を使用し、この素線34bを15本束ねて撚った一次撚り線34cをさらに7本束ねて撚ったものである。
【0046】
次に、図5から図8によりインバータ電源と、該インバータ電源に使用する昇圧トランスの詳細について説明する。
【0047】
41は放熱フィンで、スイッチング素子37などの発熱する部品の放熱面積を大きくして、部品の温度上昇率を低減するものであり、該部品の近傍に位置するように基板42上に取り付けられている。基板42は、表面に張られた銅箔によって、部品と部品とを電気的に接続するものである。
【0048】
昇圧トランス32のボビン33には、一次側コイル34の一次側コイルの線材34aを巻回するための一次側コイル巻回部43と二次側コイル35の線材を巻回するための二次側コイル巻回部44を備えている。
【0049】
一次側コイル巻回部43に巻回する一次側コイルの線材34aは、銅線に絶縁用のワニスを施した線径が0.18mmよりなる素線を用い、この素線を15本の束ねて撚った一次撚り線34cをさらに7本束ねて撚ったもので、その仕上り外径は約2.85mmと太いものである。
【0050】
そのため、昇圧トランス32と基板42の銅箔との接続は、昇圧トランス32の一次側コイル34の巻き始め側の引出し線34dと、巻き終わり側の引出し線34eの両方の先端部34fを基板42に設けた穴(図示せず)に挿入することで接続される。
【0051】
昇圧トランス32のボビン33には、先端部34fと基板42に設けた穴の位置とが合致するように、一次側コイル34の巻き始め側と巻き終わり側の先端部34fの位置ズレを防止するための爪45を一体的に設けている。
【0052】
爪45は、図7に示すように、一次側コイルの線材34aを挟み込むように相対向して形成された一対の鉤状片45cよりなり、一次側コイルの線材34aを固定する時は、該線材34aを鉤状片45cの先端から押し込み、各片が外方向に広がって線材34aを挿入可能とし、線材34aの挿入後は爪45の鉤状片45cが元に戻り、容易に抜けないようになっている。
【0053】
また、一次側コイル巻回部43から一次側コイル34の巻き始め側の引出し線34dと巻き終わり側の引出し線34eを爪45へと導く手前に、該引出し線34d,34eの位置を固定するための巻き始め側のガイド壁A46a,B47aと巻き終わり側のガイド壁A46b,B47bを夫々適宜間隔を保持して設けている。
【0054】
巻き始め側のガイド壁A46a,B47aと、巻き終わり側のガイド壁A46b,B47bは、巻き始め側の引出し線34dと巻き終わり側の引出し線34eを挟み込めるように相対向する一対の壁面によって形成され、かつ、図6のイ部に示すように、巻き始め側のガイド壁A46a,B47a、巻き始め側の爪45aおよび巻き終わり側のガイド壁A46b,B47b、巻き終わり側の爪45bによって巻き始め側の引出し線34d、巻き終わり側の引出し線34eを蛇行するように曲げて配置している。
【0055】
具体的には、引出し線34d,34eを複数回曲げるために、巻き始め側のガイド壁A46aと巻き始め側の爪45aを直線で結ぶ中心線と、巻き終わり側のガイド壁A46bと巻き終わり側の爪45bを直線で結ぶ中心線上から、巻き始め側のガイド壁B47aと巻き終わり側のガイド壁B47bを左右いずれかに幾分ずらして形成している。
【0056】
本実施例は、以上の構成からなり、次にボビン33に一次側コイルの線材34aを巻回する作業について図6を用いて詳細に説明する。
【0057】
始めに、巻き始め側の引出し線34dを巻き始め側の爪45aに固定する。その時は、先端部34fの長さを必要な長さだけ確保し、図7に示すように巻き始め側の爪45aの先端から巻き始め側の引出し線34dを押し込むことで鉤状片45cは外方向に広がり、中に線材が挿入されて固定される。
【0058】
次に、巻き始め側の引出し線34dを巻き始め側の爪45aから巻き始め側のガイド壁B47aに通すため、巻き始め側の引出し線34dを巻き始め側のガイド壁B47aの方向に曲げ、ガイド壁B47aに設けられた一対の壁面の間を通し、次に巻き始め側のガイド壁A46aに設けられた一対の壁面の間を通すように巻き始め側の引出し線34dを曲げ、その後、一次側コイル巻回部43へ一次側コイルの線材34aを巻回する。
【0059】
このとき、巻き始め側の爪45aと巻き始め側のガイド壁B47aと巻き始め側のガイド壁A46aとは夫々間隔を空けて設けているので、引出し線34deを曲げるのに、曲げ易く、曲げた部分が膨らんでも線材に傷を付ける事なく配置できる。
【0060】
一次側コイルの線材34aの巻回時は、巻回後のコイル部に巻きムラ(巻き緩み)などが発生しないように、一次側コイルの線材34をある程度に引っ張りながら巻回する。
【0061】
このとき、巻き始め側の引出し線34dは、巻き始め側の爪45aと巻き始め側のガイド壁B47aと巻き始め側のガイド壁A46aの壁を通す度に曲げられて固定されることで、巻回時の引っ張り力によって先端部34fが引き込まれて短くなることは無い。
【0062】
一次側コイル34は、ボビン33の一次側コイル巻回部43に18回巻回して巻き作業を終了し、巻き終り側の引出し線34eの処理を行う。
【0063】
巻き終り側の引出し線34eの処理は、巻き始め時の流れを反対から進むもので、巻き終わり側のガイド壁A46bから巻き終わり側のガイド壁B47bの各々に設けられた一対の壁面の間に線材を通し、最後に巻き終わり側の爪45bの先端から鉤状片45c間に線材を押し込み固定する。固定後に先端部34fを必要な長さに切断して、一次側コイル34の巻回作業は終了する。
【0064】
次にボビン33の二次側コイル巻回部44に二次側コイル35を巻回し、フェライトコア36などを取り付けて昇圧トランス32の組み立ては完成する。
【0065】
以上説明したように、本実施例によれば、銅線に絶縁用のワニスを施した線径の細い素線を複数本撚りあわせた撚り線でも確実に固定でき、撚り線をボビンに巻回する時でも巻き始め部の線端部が引き込まれることがなく、これによって、作業効率が向上する。
【0066】
また、撚り線の巻き始め部の線端部を長めにする必要がなくなるので、撚り線を固定した後から余分な線材を切断する無駄も無くすことができる。
【0067】
さらに、巻き始め側と巻き終り側の撚り線の線材に傷を付ける事が無いので、昇圧トランスの信頼性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0068】
30 インバータ電源
31 マグネトロン
32 昇圧トランス
34 一次側コイル
34a 一次側コイルの線材
35 二次側コイル
45 爪
45c 鉤状片
46a 巻き始め側のガイド壁A
46b 巻き終わり側のガイド壁A
47a 巻き始め側のガイド壁B
47b 巻き終わり側のガイド壁B

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高周波出力を発生するマグネトロンと、該マグネトロンで発生する高周波出力を設定する入力手段と、該入力手段にて設定された高周波出力を前記マグネトロンに発生させるための電源を供給するインバータ電源を備え、
該インバータ電源は、前記マグネトロンに供給する高周波出力の電源を生成するための電圧を昇圧する昇圧トランスと、該昇圧トランスへの通電をON−OFFし前記昇圧トランスの一次側コイルに電圧を印加するスイッチング素子と、前記昇圧トランスと前記スイッチング素子とを搭載し、前記昇圧トランスと前記スイッチング素子とを電気的に接続する基板を備え、
前記昇圧トランスは、ボビンの一次側コイル巻回部に線径の細い素線を複数本撚った一次側コイルの線材を巻回し、該一次側コイルの引出し線の先端部を前記基板の穴に差し込んで電気的に接続し、
前記ボビンには、前記一次側コイルの線材を挟み込むように一対の鉤状片よりなる爪を形成し、
また、前記一次側コイル巻回部から前記一次側コイルの巻き始め側の引出し線と巻き終わり側の引出し線を前記爪に導く手前に、前記引出し線の位置を固定するための巻き始め側のガイド壁A,Bと巻き終わり側のガイド壁A,Bを夫々適宜間隔を保持して設け、前記巻き始め側のガイド壁A,Bと、巻き終わり側のガイド壁A,Bは、前記引出し線を挟み込むように一対の壁面によって形成し、
かつ、前記巻き始め側のガイド壁A,B及び巻き始め側の爪と、巻き終わり側のガイド壁A,B及び巻き終わり側の爪によって前記引出し線を蛇行するように曲げて配置することを特徴とする高周波加熱装置。
【請求項2】
請求項1記載の高周波加熱装置において、前記引出し線を曲げるために、前記巻き始め側のガイド壁Aと巻き始め側の爪を直線で結ぶ中心線と、前記巻き終わり側のガイド壁Aと巻き終わり側の爪45bを直線で結ぶ中心線上から、巻き始め側のガイド壁Bと巻き終わり側のガイド壁Bを左右いずれかに幾分ずらして形成することを特徴とする高周波加熱装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−113897(P2011−113897A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−270973(P2009−270973)
【出願日】平成21年11月30日(2009.11.30)
【出願人】(399048917)日立アプライアンス株式会社 (3,043)
【Fターム(参考)】