説明

高周波用半導体装置と該装置用リ−ドフレ−ム

【発明の詳細な説明】
[産業上の利用分野]
本発明は、高速で作動させる高周波用半導体装置と該装置用リードフレームに関する。
[従来の技術]
近時、情報処理装置の高速化に伴い、該処理装置に用いられる半導体装置の高周波化が一段と進み、高周波用の半導体素子を収納した高周波特性に優れた半導体装置の需要が高まりつつある。
この高周波用半導体装置には、従来、高周波用の半導体素子を収納するパッケージに、セラミックの絶縁体内部やその表面に、入出力用の信号線路と平行に、グランドプレーンを構成するメタライズ層等の導体層を備えたセラミックパッケージを用いたものと、入出力用の信号線路を備えたセラミック端子取着部材周囲を金属部材が囲んだり、信号線路をガラス部材を介して金属部材が囲むメタルパッケージを用いたものとがある。
[発明が解決しようとする問題点]
しかしながら、上述のセラミックパッケージを用いた装置は、その製造に際して、セラミックの絶縁体の内部やその表面に、グランドプレーンを構成するメタライズ層等の導体層を備えるのに多大な手数と時間がかかり、高価で汎用性がなかった。
また、上述のメタルパッケージを用いた装置も、その製造に際して、信号線路を備えた端子取着部材周囲等を囲む金属部材の切削成形作業等に多大な時間と手数がかかり、高価で汎用性がなかった。
本発明は、かかる問題点を解決するためのもので、その目的は、製造容易で安価な汎用性のある高周波用半導体装置と該装置用リードフレームを提供することにある。
[問題点を解決するための手段]
上記目的を達成するために、本発明の高周波用半導体装置は、樹脂等の絶縁体内部に、高周波用の光導体素子を固着したダイパッドと、前記半導体素子と電気的に導通させた内部リード部とを封止した半導体装置において、前記内部リード部の上方またはその下方またはその上方及びその下方に、前記ダイパッドに、前記内部リード部から離隔させて備えたタイバーを介して、電気的に導通させたグランドプレーンを配設して、該グランドプレーンで前記内部リード部の上方またはその下方またはその上方及びその下方を覆ったことを特徴としている。
また、本発明の高周波用半導体装置用リードフレームは、半導体素子を固着するダイパッドと、前記半導体素子と電気的に導通させる内部リード部とを備えたリードフレームにおいて、前記ダイパッドに、前記内部リード部から離隔させて備えたタイバーを介して、一連に備えたグランドプレーンであって、前記タイバーを折曲させることにより、前記グランドプレーンを、前記内部リード部の上方またはその下方またはその上方及びその下方に配設して、前記グランドプレーンで内部リード部の上方またはその下方またはその上方及びその下方を覆うことの可能なグランドプレーンを備えたことを特徴としている。
[作用]
本発明の高周波用半導体装置においては、ダイパッドにタイバーを介して電気的に導通させたグランドプレーンであって、内部リード部の上方またはその下方またはその上方及びその下方を覆うグランドプレーンにより、内部リード部を伝わる電気信号が、内部リード部の外部に漏れたり、隣合う内部リード部に混入したりするのを防ぐことができる。
また、ダイパッドと該パッドにタイバーを介して電気的に導通させたグランドプレーンとの電位を同一電位に保持できる。そして、ダイパッドに固着した半導体素子の背面電位とグランドプレーンの電位とを同一グランド電位に保持できる。そして、内部リード部にノイズが混入するのをグランドプレーンで効果的に防いだり、内部リード部の高周波特性をグランドプレーンにより効果的に向上させたりできる。
また、グランドプレーンをダイパッドに電気的に導通させるためのタイバーを、内部リード部から離隔させて備えているため、タイバーに、内部リード部を伝わる電気信号がノイズとなって混入するのを防ぐことができる。そして、そのノイズが、タイバーに一連に備えたグランドプレーンに伝わるのを防ぐことができる。そして、そのノイズで、グランドプレーンのシールド特性が低下したり、そのグランドプレーンに伝わったノイズが、タイバーを通して、内部リード部に再びノイズとなって混入したりするのを防ぐことができる。
本発明の高周波用半導体装置用リードフレームにおいては、タイバーをU字状等に折曲させて、ダイパッドにタイバーを介して一連に備えたグランドプレーンを、内部リード部の上方またはその下方またはその上方及びその下方に配設できる。そして、そのグランドプレーンで、内部リード部の上方またはその下方またはその上方及びその下方を覆うことができる。
その際には、グランドプレーンを、タイバーを介して、ダイパッドに電気的に導通させて、グランドプレーンの電位を、ダイパッドと同じグランド電位に保持できる。そして、内部リード部にノイズが混入するのをグランドプレーンで効果的に防いだり、内部リード部の高周波特性をグランドプレーンにより効果的に向上させたりできる。
また、タイバーを内部リード部から離隔させて備えているため、タイバーに、内部リード部を伝わる電気信号がノイズとなって混入するのを防ぐことができる。そして、そのノイズが、タイバーに一連に備えたグランドプレーンに伝わるのを防ぐことができる。そして、そのノイズで、グランドプレーンのシールド特性が低下したり、そのグランドプレーンに伝わったノイズが、タイバーを通して、内部リード部に再びノイズとなって混入したりするのを防ぐことができる。
[実施例]
次に、本発明の実施例を図面に従い説明する。第1図および第2図は本発明の高周波用半導体装置の好適な実施例を示し、第1図は該装置の一部破断平面図、第2図は第1図の装置のA−A断面図を示す。以下、上記図中の実施例を説明する。図において、4はその中央に他の部分に比べて一段窪んだ方形板状のダイパッド6を持ち、該ダイパッド左右にその外方に向けて複数本のリード5を持ったリードフレームである。このリードフレーム4のダイパッド6上面に半導体素子2を固着するとともに、該素子の各電極3とリードフレームの各内部リード部5a先端をワイヤ9でそれぞれ接続する。また、上記半導体素子2を固着したダイパッド6の上方とその下方に、平板状のグランドプレーン7をそれぞれ配設して、リードフレームの各内部リード部5aと離隔した各内部リード部5aの上方とその下方を、上記平板状のグランドプレーン7でそれぞれ覆う。上記各グランドプレーン7の一部周縁と、半導体素子2を固着したダイパッド6の一部周縁とは、U字状をなす細帯状のタイバー8aであって、内部リード部5aから離隔させて備えたタイバー8aで一体に連結する。そして、各グランドプレーン7をダイパッド6に電気的に導通させる。さらに、上記上下の各グランドプレーン7とその内側のリードフレーム4との間の空隙10部分および半導体素子2を含む該素子周囲のリードフレーム4部分を、樹脂等の絶縁体1で封止する。第1図および第2図に示した高周波用半導体装置は以上の構成からなる。
次に、その作用を説明する。絶縁体1外部に突出したリードフレームの各リード5に電気信号を流すと、該信号が各リード5とワイヤ9で接続した半導体素子の各電極3に伝わり、該信号が樹脂等の絶縁体1内部に収納した半導体素子2を作動させる。そしてその際に、絶縁体1表面に備えた、タイバー8aを介してダイパッド6に電気的に導通する各グランドプレーン7が、各リード5を流れる信号が、各リード5外部に漏れたり、隣合う各リード5に混入したりするのを的確に防止する。
また、第3図および第4図は本発明の半導体装置用リードフレームの好適な実施例を示し、第3図は該リードフレームの平面図、第4図は半導体素子を固着して折曲した該リードフレームの断面図である。以下、上記図中のリードフレームを説明する。リードフレーム4に、半導体素子2を固着する方形板状をしたダイパッド6と離隔させて、ダイパッド6とタイバー8aで一体に連結したグランドプレーン7を備える。タイバー8aは、内部リード部5aから離隔させて備える。詳しくは、リードフレームの上下のガイドレール11間に、その中央に半導体素子2を固着する方形板状のダイパッド6を備えるとともに、該ダイパッド上下の周縁中央からその外方に向けて細帯状のタイバー8aを延出させて、各タイバー8a先端に、該タイバー8aを折曲した際にダイパッド6とその周囲の各内部リード部5aの上方とその下方を覆う方形板状のグランドプレーン7をタイバー8aに一体に連結させてそれぞれ備える。また、上記ダイパッド6左右に、ダイパッド6外方に向けて複数本のリード5をそれぞれ備える。そして、上記ダイパッド6左右の各リード5中途部間を、上下のガイドレール11にタイバー8bを介して一体に連なるダムバー12aで相互に連結して、各リード5をガイドレール11間に支持させる。また、上記ダムバー12a端部から、ダイパッド6とグランドプレーン7を一体に連結するタイバー8a方向に向けて、ダイパッド6上下を囲むダムバー12bをそれぞれ延出させる。さらに、ガイドレール11間にタイバー8bを介してグランドプレーン7を支持させるとともに、該タイバー8bを除去した際に、リードフレーム4からダイパッド6がグランドプレーン7と共に脱落しないように、ダムバー12b近くのタイバー8aとダムバー12a間を、ダイパッドサポートバー14で相互に連結する。第3図および第4図に示したリードフレームは以上の構成からなる。
次に、その使用例を説明する。上述リードフレームにおいて、ダイパッド6をリード5部分に比べて一段窪ませて、その窪ませたダイパッド6上面に半導体素子2を固着するとともに、該素子の各電極3と各内部リード部5a先端を金線等のワイヤ9でそれぞれ接続する。次に、ダイパッド6を直接支持するタイバー8bを切断、除去して、第4図に示したように、ダイパッド6とグランドプレーン7を一体に連結する各タイバー8aを断面ほぼU字状に互いに逆方向に折曲させ、半導体素子2を固着したダイパッド6の上方とその下方にダイパッド6にタイバー8aを介して一体に連結した各グランドプレーン7をそれぞれ配設して、リードフレームの内部リード部5aと離隔した内部リード部5aの上方とその下方を、ダイパッド6と電気的に導通する上記上下の各グランドプレーン7を覆う。その後、上記上下の各グランドプレーン7とその内側のリードフレーム4との間の空隙10部分および半導体素子2を含む該素子周囲のダムバー12a,12bより内側のリードフレーム4部分を、樹脂等の絶縁体1で封止する。そして、上記絶縁体1外部に突出したリードフレームの各リード5から、該各リード5を一体に連結するダムバー12a,12bやガイドレール11等を除去して、各リード5を独立させ、第1図等に示したような本発明の半導体装置を製造する。
また、第5図は本発明の半導体装置用リードフレームの他の好適な実施例を示し、詳しくは該リードフレームの平面図を示す。以下、上記図中の実施例を説明する。図中において、既述の第3図および第4図に示したリードフレームと同一部材には、同一符号を付して、その説明を省略する。リードフレーム4の上下のガイドレール11間の中央に備えた半導体素子2を固着する方形板状のダイパッド6の四方周囲に複数本のリード5をダイパッド6外方に向けてそれぞれ備える。また、ダイパッド6周囲の斜め上下のガイドレール11間に、ダイパッド6とその四方周囲の複数本の各内部リード部5aの上方とその下方を覆う方形板状のグランドプレーン7をそれぞれ備える。そして、上記ダイパッド6の対角線上に位置する2隅部とダイパッド周囲の斜め上下の各グランドプレーン7内側隅部とを、内部リード部5aから離隔させて備えた細帯状のタイバー8aでそれぞれ一体に連結する。第5図R>図に示したリードフレームは以上の構成からなる。
次に、その使用例を説明する。上述リードフレームにおいて、既述の第3図および第4図に示したリードフレームと同様にして、リードフレーム4の一段窪ませたダイパッド6に半導体素子2を固着して、該素子の各電極3とリードフレームの各内部リード部5a先端をワイヤ9でそれぞれ接続した後、ダイパッド6と各グランドプレーン7を一体に連結する各タイバー8aを断面ほぼU字状に折曲させて、半導体素子2を固着したダイパッド6の上方とその下方にグランドプレーン7をそれぞれ配設し、リードフレームの内部リード部5aの上方とその下方をグランドプレーン7でそれぞれ覆うとともに、上記各グランドプレーン7とその内側のリードフレーム4との間の空隙10部分および半導体素子2を含む該素子周囲のリードフレーム4部分を、樹脂等の絶縁体1で封止する等して、第1図等に示したような本発明の半導体装置を製造する。
なお、上述各実施例の半導体装置と該装置用リードフレームにおいて、リードフレーム4に、第6図に示したような、ダイパッド6周囲のリード5間に、ダイパッド6周縁からその外方に向けてコプレナー伝送路を構成するダイパッド6に電気的に導通する中間リード13をそれぞれ一体に延出させたリードフレーム4を用いて、本発明の半導体装置のリード5とグランドプレーン7からなるストリップ伝送路の絶縁度を高めるようにしても良い。また、その場合、コプレナー伝送路は、各リード5間にダイパッド6と別体の中間リード13をそれぞれ備えて、該各中間リード13とダイパッド6をワイヤでそれぞれ接続して形成しても良い。
また、リードフレーム4にタイバー8aを介してダイパッド6に一体に連結したグランドプレーンを一つのみ備えて、該グランドプレーン7で内部リード部5aの上方またはその下方のいずれか一方のみを覆うようにしても良い。
さらに、本発明の半導体装置に備えたグランドプレーン7が、その使用時に、隣合う半導体装置等と電気的に接触等しないように、グランドプレーン7とその内側のリードフレーム4との間の空隙10部分を埋める樹脂等の絶縁体1を、グランドプレーン7外側周囲面に及ばせて、絶縁体1内部にグランドプレーン7を封入しても良い。
また、グランドプレーン7を網状に形成したり、グランドプレーン7表面に小孔等を散点状に透設して、グランドプレーン7とその内側のリードフレーム4との間の空隙10部分等を樹脂等の絶縁体1で封止した場合に、該樹脂等の絶縁体1がグランドプレーン7に食い込んで容易に分離しないようにしても良い。
さらに、ダイパッド6を、リード5部分に比べて一段窪ませずに、平面状のままとして、該ダイパッド6上面に半導体素子を固着し、本発明の高周波用半導体装置を形成しても良い。
また、グランドプレーン7とその内側のリードフレーム4との間の空隙10部分および半導体素子2を含む該素子周囲のリードフレーム4部分を封止する樹脂等の絶縁体1、即ち高周波用の半導体素子2を収納するパッケージに、予めリードフレーム4と一体に樹脂成形した絶縁基体を形成済みのプリモールド型パッケージを用いても良い。
[発明の効果]
以上説明したように、本発明においては、半導体素子を収納するパッケージを構成する回路パターンや絶縁体に安価な汎用性のあるリードフレームや樹脂等の絶縁体を用いて、容易にグランドプレーンを備えた高周波用半導体装置を形成できるようにした。従って、本発明によれば、安価な汎用性のある高周波用半導体装置を提供できる。
また、本発明の高周波用半導体装置用リードフレームによれば、リードフレームに備えたダイパッドにタイバーを介して一体に連結したグランドプレーンを、タイバーを断面ほぼU字状等に折曲させて、半導体素子を固着したダイパッドの上方またはその下方のいずれか一方またはその両方に配設し、リードフレームの内部リード部の上方またはその下方のいずれか一方またはその両方をグランドプレーンで覆うのみで、樹脂等の絶縁体で封止した高周波特性に優れた半導体装置を容易かつ安価に製造できる。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明の高周波用半導体装置の一部破断平面図、第2図は第1図の装置のA−A断面図、第3図は本発明の高周波用半導体装置用リードフレームの平面図、第4図は第3図のリードフレームの使用状態説明図、第5図5図はもう一つの本発明の高周波用半導体装置用リードフレームの平面図、第6図はコプレナー伝送路を持つリードフレームの一部平面図である。
1……絶縁体、2……半導体素子、
3……電極、4……リードフレーム、
5……リード、5a……内部リード部、
6……ダイパッド、7……グランドプレーン、
8a……タイバー。

【特許請求の範囲】
【請求項1】樹脂等の絶縁体内部に、高周波用の半導体素子を固着したダイパッドと、前記半導体素子と電気的に導通させた内部リード部とを封止した半導体装置において、前記内部リード部の上方またはその下方またはその上方及びその下方に、前記ダイパッドに、前記内部リード部から離隔させて備えたタイバーを介して、電気的に導通させたグランドプレーンを配設して、該グランドプレーンで前記内部リード部の上方またはその下方またはその上方及びその下方を覆ったことを特徴とする高周波用半導体装置。
【請求項2】半導体素子を固着するダイパッドと、前記半導体素子と電気的に導通させる内部リード部とを備えたリードフレームにおいて、前記ダイパッドに、前記内部リード部から離隔させて備えたタイバーを介して、一連に備えたグランドプレーンであって、前記タイバーを折曲させることにより、前記グランドプレーンを、前記内部リード部の上方またはその下方またはその上方及びその下方に配設して、前記グランドプレーンで内部リード部の上方またはその下方またはその上方及びその下方を覆うことの可能なグランドプレーンを備えたことを特徴とする高周波用半導体装置用リードフレーム。

【第1図】
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【第2図】
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【第3図】
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【第4図】
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【第6図】
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【第5図】
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【特許番号】第2577916号
【登録日】平成8年(1996)11月7日
【発行日】平成9年(1997)2月5日
【国際特許分類】
【出願番号】特願昭62−154927
【出願日】昭和62年(1987)6月22日
【公開番号】特開昭63−318764
【公開日】昭和63年(1988)12月27日
【出願人】(999999999)新光電気工業株式会社
【参考文献】
【文献】特開 昭51−138165(JP,A)
【文献】特表 昭60−501335(JP,A)