高品質おからの製法
【課題】高品質おからの製法、その装置及び高品質おから製品を提供する。
【解決手段】少なくとも20質量%の水を添加したおからを、100℃以上に加熱された熱水及び/又は水蒸気を100℃以上に加熱された準密閉空間の加熱室内に連続的噴射させ、発生した微細水滴と水蒸気で該加熱室内の空気を置換させて湿度95%以上及び酸素濃度1%以下の組成を有し、90〜180℃の温度に保持された加熱媒体組成物を用いて加熱することを特徴とする高品質おからの製造方法、その装置、及びその高品質おから製品。
【解決手段】少なくとも20質量%の水を添加したおからを、100℃以上に加熱された熱水及び/又は水蒸気を100℃以上に加熱された準密閉空間の加熱室内に連続的噴射させ、発生した微細水滴と水蒸気で該加熱室内の空気を置換させて湿度95%以上及び酸素濃度1%以下の組成を有し、90〜180℃の温度に保持された加熱媒体組成物を用いて加熱することを特徴とする高品質おからの製造方法、その装置、及びその高品質おから製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高品質おからの製法、その装置及び製品に関するものであり、更に詳しくは、アクアガス加熱装置で加熱処理して、高い日持ち性、食品加工適性、保存性、良好な食感、食味を保持した高品質おからを製造することを可能とする高品質おからの製法、その装置及びその高品質おから製品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、栄養価が高く、食材としての再利用が要望されている「おから」については、高水分で微生物増殖が速く、保存性が低いために、効率的な利用ができていない。おからを食材化するための殺菌処理に関しては、従来技術では、好適な処理法がないのが現状である。この殺菌処理法については、強いて言えば、オートクレーブ処理などが挙げられるが、加圧した飽和水蒸気の中では、水分が高まり、食感が損なわれるという問題がある。また、オートクレーブ処理などにおいては、作業性が悪く、効率的に大量におからを殺菌処理することは困難である。
【0003】
従来技術として、おからの処理法に関しては、先行文献には、原料おからの殺菌、滅菌が行え、原料おからを均一に乾燥することができる乾燥おからの製造方法及び装置が提案されている(特許文献1)。また、微細化した湿潤おからを掻き取り式熱交換機に供給し、120℃以上に加熱して冷却したものを無菌的に充填密封することを特徴とする湿潤おからの製造法が提案されている(特許文献2)。
【0004】
また、おからを水に懸濁し、これを加熱殺菌した後、固液分離、乾燥を行う乾燥おからの製造法が提案されている(特許文献3)。更に、生おからを品温110℃〜130℃で加熱乾燥することにより高機能の性質を有する乾燥おから粉末の製造方法が提案されている(特許文献4)。
【0005】
しかしながら、従来法は、食感が損なわれることがなく、作業性が良好で、効率良く大量に殺菌処理可能で、おからの食材化を達成するための処理法としては不十分であり、当技術分野では、上述の処理を実現し、おからの食材化を可能とする新しい高品質おからの製造技術を開発することが強く要請されていた。
【0006】
【特許文献1】特開2002−330717号公報
【特許文献2】特開2001−145468号公報
【特許文献3】特開2000−217529号公報
【特許文献4】特開平11−103809号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような状況の中で、本発明者らは、上記従来技術に鑑みて、おからの食材として再利用を可能にする新しい処理技術を開発することを目標として鋭意研究を重ねた結果、おからをアクアガス加熱装置で加熱処理することで、短時間処理での高い殺菌効果と、若干の含水率の向上による歩留まりの向上と、食感、食味の著しい向上効果が得られるという新規知見を見出し、更に研究を重ねて、本発明を完成するに至った。
【0008】
本発明は、おからをアクアガス加熱装置で加熱処理することにより、おからの食材化を可能にする高品質おからの製造方法を提供することを目的とするものである。また、本発明は、上記アクアガス加熱装置で加熱処理して得られる高品質おから及びその加工食品を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための本発明は、以下の技術的手段から構成される。
(1)所定量の水を含むおからを、100℃以上に加熱された熱水及び/又は水蒸気を100℃以上に加熱された準密閉空間の加熱室内に連続的噴射させ、発生した微細水滴と水蒸気で該加熱室内の空気を置換させて湿度95%以上及び酸素濃度1%以下の組成を有し、90〜180℃の温度に保持された加熱媒体組成物を用いて加熱することを特徴とする高品質おからの製造方法。
(2)少なくとも20質量%のおからを上記加熱媒体組成物を用いて加熱する前記(1)に記載の高品質おからの製造方法。
(3)所定量の水を含む被加熱材料のおからを加熱して高品質おからを製造する装置であって、少なくとも、被加熱材料を外気と遮断して加熱する準密閉状態の加熱室、該加熱室を100℃を越える所定の温度に加熱する加熱手段、100℃以上に加熱された熱水及び/又は水蒸気を上記加熱室内に導入して所定の方向に移送する微細水滴と水蒸気発生手段、を構成要素として含み、100℃以上に加熱された熱水及び/又は水蒸気を上記加熱室内に連続的に噴射させ、加熱室内部を常圧状態のまま微細水滴と水蒸気で充満させ、少なくとも湿度95%以上、酸素濃度1%以下の微細水滴と水蒸気で加熱室内部の空気を置換し、該微細水滴と水蒸気で加熱室内の被加熱材料を加熱するようにしたことを特徴とする高品質おからの製造装置。
(4)少なくとも20質量%の水を添加した被加熱材料のおからを加熱して高品質おからを製造する装置である前記(3)に記載の高品質おからの製造装置。
(5)前記(1)又は(2)に記載の方法を用いて、所定量の水を含むおからを加熱処理したことを特徴とする高品質おから又は該高品質おからを含む高品質おから食品。
(6)前記(5)に記載の高品質おからを食材として利用して高品質おから食品を製造することを特徴とする高品質おから食品の製造方法。
【0010】
次に、本発明について更に詳細に説明する。
本発明は、少なくとも20質量%の水を添加したおからを、100℃以上に加熱された熱水及び/又は水蒸気を100℃以上に加熱された準密閉空間の加熱室内に連続的噴射させ、発生した微細水滴と水蒸気で該加熱室内の空気を置換させて湿度95%以上及び酸素濃度1%以下の組成を有し、90〜180℃の温度に保持された加熱媒体組成物を用いて加熱することを特徴とする高品質おからの製造方法の点に特徴を有するものである。
【0011】
また、本発明は、少なくとも20質量%の水を添加した被加熱材料のおからを加熱して高品質おからを製造する装置であって、少なくとも、被加熱材料を外気と遮断して加熱する準密閉状態の加熱室、該加熱室を100℃を越える所定の温度に加熱する加熱手段、100℃以上に加熱された熱水及び/又は水蒸気を上記加熱室内に導入して所定の方向に移送する微細水滴と水蒸気発生手段、を構成要素として含み、100℃以上に加熱された熱水及び/又は水蒸気を上記加熱室内に連続的に噴射させ、加熱室内部を常圧状態のまま微細水滴と水蒸気で充満させ、少なくとも湿度95%以上、酸素濃度1%以下の微細水滴と水蒸気で加熱室内部の空気を置換し、該微細水滴と水蒸気で加熱室内の被加熱材料を加熱するようにしたことを特徴とする高品質おから製造装置の点に特徴を有するものである。
【0012】
更に、本発明は、上記方法を用いて、少なくとも20質量%の水を添加したおからを加熱処理したことを特徴とする高品質おから又は該高品質おからを含む高品質おから食品の点、及び上記の高品質おからを食材として利用して高品質おから食品を製造することを特徴とする高品質おから食品の製造方法の点、に特徴を有するものである。
【0013】
本発明の加熱方法は、(1)100℃以上に加熱された熱水及び/又は水蒸気を、これと同温度以上に加熱された準密閉空間の加熱室内に連続的に噴射させ、微細水滴と湿熱水蒸気を発生させる、(2)上記微細水滴と湿熱水蒸気で上記加熱室内の空気を置換させて、湿度95%以上及び酸素濃度1%以下の組成を有し、90〜180℃の温度領域に保持されたガス成分で満たす、(3)上記微細水滴と湿熱水蒸気で被処理材料に上記温度領域で少なくとも10℃の温度差の連続振幅加熱を施して加熱処理する、ことを特徴とするものである。
【0014】
本発明において、微細水滴と湿熱水蒸気とは、高湿度の湿熱水蒸気とその凝縮により部分的に生成する微細水滴との混合系を意味し、乾熱水蒸気とは、上記湿熱水蒸気の乾燥により部分的に生成する高乾燥水蒸気を意味する。本発明では、上記微細水滴と湿熱水蒸気で被処理材料に90〜180℃の温度領域で少なくとも10℃の温度差の連続振幅加熱を施して加熱処理するが、ここで、少なくとも10℃の温度差の連続振幅加熱とは、90〜180℃の温度範囲において、短時間に10℃を上回る温度差の振幅で連続的に加熱することを意味する。本発明では、例えば、10〜50℃の温度差の振幅で連続的に被処理材料を加熱することができる。本発明では、上記微細水滴と湿熱水蒸気の混合状態を気体水(アクアガス(登録商標))と称する。
【0015】
本発明では、加熱室を100℃を越える所定の温度に加熱すると共に、該加熱室に熱水及び/又は水蒸気を導入し、該加熱室を水の気体(気体水)で置換し、酸素濃度を1.0%以下に低下させることにより形成した気体水雰囲気で被加熱材料を加熱する。本発明において、上記加熱室は、被加熱材料を外気と遮断して加熱することができる所定の準閉鎖系空間で構成され、好適には、例えば、被加熱材料を載せるためのプレート、一部にガラス窓部を形成した開閉可能なドア部を有する準密閉空間が例示される。加熱室は、好適には、ステンレス製の素材で形成される。本発明では、上記加熱室を100℃を越える所定の温度に加熱するが、この場合、好適には、該加熱室に導入する熱水及び/又は水蒸気の温度と同等又はそれ以上に加熱する。
【0016】
本発明では、上記のように、加熱室を所定の温度に加熱すると共に、該加熱室で微細水滴と湿熱水蒸気を発生させ、該加熱室内の空気を水の気体で置換する。この場合、上記微細水滴と湿熱水蒸気は、例えば、細管を通して所定の流速で送水された水を細管の外部からヒータで加熱し、細管の端部に設けられたノズルを介して加熱室に導入することで生成される。上記微細水滴と湿熱水蒸気は、100〜180℃、より好適には、95〜150℃に加熱された高温常圧のガス成分であり、被処理材料を高いエネルギー効率で加熱する作用を有する。加熱された水は、加熱室内にノズルを介して噴霧される。加熱室内は常圧状態で100℃以上の所定の温度に加熱制御されており、噴霧された水滴は気化して、加熱室内を微細水滴と湿熱水蒸気の混合状態にする。その際に、噴霧される水量及び水滴径を調整することで、水蒸気雰囲気に一部微細水滴を混合させる状態を作り出すことができ、このような状態をアクアガスと呼ぶ。
【0017】
本発明では、給水タンクの水を給水ポンプで汲み上げ、細管からなる導管を通して水蒸気発生蓄熱パネルに供給し、加熱ヒーターにより、例えば、105〜200℃の所定の温度に加熱し、そのまま、細管の先端に設置した水蒸気噴射ノズルから高速で熱水及び/又は水蒸気を噴射させる。この場合、水蒸気ノズルとしては、先端に微細噴射孔を形成してなる、熱水及び/又は水蒸気を微細化して噴出する機能を有するものであれば、適宜のものが用いられる。微細噴射孔の孔径、孔数、孔の穿設位置等は任意に設定できる。水蒸気噴射ノズルからの熱水及び/又は水蒸気の噴射速度は、好適には、噴射ノズル先端において160〜200/s程度であるが、これらに制限されるものではなく、装置の大きさ、種類及び使用目的等に応じて、例えば、微細噴射孔の孔径、孔数等を変更することにより任意に設定することができる。
【0018】
本発明では、例えば、上記微細噴射ノズルから噴射された水蒸気を加熱室に導入するが、その際に、噴射ノズルの先端に近接して設置した循環ファンに水蒸気を噴射して、循環ファンの回転による衝撃力と風力により所定の風向に水蒸気を移送すると共に、それらの風向に合わせて設置された加熱ヒーターに水蒸気を接触させて、水蒸気をその温度を低下させずに加熱室全体に導入し、該加熱室を所定の温度に保持された水の気体で置換し、湿度95%以上、酸素濃度1.0%以下、より好適には、湿度99.0%以上、酸素濃度1.0%以下のガス成分で加熱室を満たすことにより加熱室内に気体水雰囲気を形成することができる。
【0019】
微細噴射口から噴射された熱水及び/又は水蒸気は、循環ファンに衝突することで更に微細化する。また、循環ファンにより形成された風向の風下に設置された加熱ヒーターは、その表面が噴射された熱水及び/又は水蒸気に直接的に、かつ広面積で接触するように、好適には、噴射された熱水及び/又は水蒸気をなるべく遮るような位置及び方向に設置する。それにより、加熱ヒーターによる熱を噴射された熱水及び/又は水蒸気に効率良く伝達し、噴射された熱水及び/又は水蒸気の温度低下を確実に防止することが可能となる。
【0020】
上記循環ファンは、例えば、加熱室内部の後面側の中央に設置され、噴射された熱水及び/又は水蒸気を、加熱室内部の左側面部及び右側面部に位置するダクト内に設置された加熱ヒーターに直接接触するように移送する機能を有するものが例示されるが、これらに制限されるものではない。また、上記加熱ヒーターは、好適には、例えば、シーズヒーター等をヘアピン状に多数設置して、噴射された熱水及び/又は水蒸気との接触面積が増えるようにしたものが例示されるが、これらに制限されるものではなく、同様の機能を有するものであれば同様に使用することができる。上記循環ファンの回転数及び回転方向は、装置の大きさ、ダクトの位置、形状、加熱ヒーターの形状、設置位置等を考慮して、噴射された熱水及び/又は水蒸気がダクト内に循環風として循環し得るように設定される。
【0021】
加熱室は気体水で置換された段階で、被処理材料を加熱室に導入し、上記気体水を熱媒体として利用して、所定の加熱処理を行う。ここで言う加熱処理とは、上記気体水を熱源として利用する加熱処理を意味する。本発明において、被処理材料は、所定量の水を含むおから、好適には、少なくとも20質量%の水を添加したおからである。加熱室に導入した被処理材料は、所定の加熱処理を施した後、適宜のタイミングで加熱室の外に搬出され、被処理材料に接触した気体水は、気体水排出口から系外に排出される。
【0022】
加熱室内に噴射された熱水及び/又は水蒸気は、まず、循環ファンに衝突し、微細化され、ダクトに移送され、ダクト内に設置した加熱ヒーターに接触し、所定の温度に加熱された後、加熱室内に導入された被処理材料に接触し、熱媒体として利用された後、系外に排出される。熱媒体としての気体水の熱エネルギーは、被処理材料の加熱処理の熱源として利用されるが、本発明では、噴射された熱水及び/又は水蒸気は、そのまま、被処理材料に接触するのではなく、一旦、ダクト内に設置された加熱ヒーターにより加熱された後に、被処理材料に接触し、噴射された熱水及び/又は水蒸気の熱量を低下させることなく、被処理材料を加熱するので、被処理材料を効率よく加熱することが可能となる。
【0023】
また、噴射された熱水及び/又は水蒸気は、例えば、高速で循環ファンに衝突し、その衝突により衝撃で水滴が分割されて、更に、微細化されると共に、更に、加熱ヒーターで加熱されるので、この微細化された高温の気体水は、肉眼観察で完全に透明な高熱伝導率の高温の水粒子からなり、被処理材料の内部への浸透性が高く、一旦、被処理材料の内部へ浸透して熱交換を行った気体水に対し、後続の高温の気体水が熱エネルギーをたえず供給するので、高熱伝導率を有する熱が連続的に内部へ移動し、気体水が、効率よく被処理材料の内部へ浸透し、短時間で被処理材料を加熱することができる。
【0024】
本発明において、上記噴出された熱水及び/又は水蒸気の水滴は、必要により、循環ファンに衝突することで更に微細化され、殺菌性の微細な水粒子として加熱室に充満する。実験の結果、給水タンクから採取された水のpHは約6.9〜7.1であったが、この殺菌性微細水粒子のpHは、約5.2〜5.8であり、105℃以上の高温条件と協動して、加熱室内で高殺菌性気体水雰囲気を形成する。したがって、本発明では、高殺菌性雰囲気下で被処理材料を加熱処理することができるので、加熱と同時に高殺菌効果を付与できる。
【0025】
次に、本発明の気体水による加熱装置の一実施の形態を図に基づいて具体的に説明する。ただし、図は、本発明の装置の一例を示すものであり、本発明は、これに制限されるものではなく、また、各構成要素は、同様の機能を有する同様の手段に置換することが可能であり、更に、公知の手段を任意に付加することができる。
【0026】
図1は、本発明の加熱装置の正面図であり、被処理材料を外気と遮断して加熱するための加熱室1、その正面に設置された開閉可能なドア部2、そのハンドル3及び窓4、操作パネル5、及び供給水の加熱装置15を構成要素として含むバッチ式の装置を示す。加熱室1は、被処理材料(図示せず)をその内部に収容して加熱処理し得る所定の空間を形成する。加熱室1の正面に設置されたドア部2は、ハンドル3を操作して適宜開閉し得る構造を有し、窓4は、被処理材料の加熱状況を確認するために設置される。尚、加熱室は、単一又は複数であっても良く、例えば、連続式の装置では、処理温度の異なる複数の加熱室を設けることが可能であり、その場合、ドア部は省略することができる。
【0027】
図2は、上記装置の縦断平面図であり、水蒸気発生蓄熱パネル6を通して加熱された水は、高温水蒸気として微細水蒸気噴出ノズルを介して加熱室内に噴出され、回転する循環ファン7に衝突して微細化されると共に、左右に設置されたダクト8、8′に移送され、ダクト内8、8′内に設置された加熱ヒーター9に接触して、所定の温度に加熱され、循環風向10として被処理材料(図示せず)に接触し、被処理材料を加熱する。熱源として利用された気体水は、排出口11から系外に排出される。加熱室内に噴射された水蒸気は、循環ファン7により、装置の左側面部及び右側面部に設けられたダクト8、8′に移送され、加熱ヒーター9により加熱される。
【0028】
本発明では、加熱ヒーター9の温度条件は、好適には、噴射された熱水及び/又は水蒸気の温度レベルに合わせるか、それ以上の温度に設定することが重要である。それにより、噴射された熱水及び/又は水蒸気の温度レベルを低下させることなく、噴射された熱水及び/又は水蒸気の温度レベルを維持した気体水で加熱室を満たすことが可能となるが、仮に、加熱ヒーターを設置しない場合には、このような気体水雰囲気を形成することはできない。
【0029】
また、加熱室内及び噴射された熱水及び/又は水蒸気を加熱するための加熱ヒーターと、供給された水を加熱して所定の温度の高温水蒸気を発生させるための加熱手段とを独立して設置し、これらを併用することにより、噴射される熱水及び/又は水蒸気の温度と、加熱室内の温度を独立して制御することが可能となり、それにより、噴射された熱水及び/又は水蒸気の熱量を過度にロスすることなく、省エネルギーで気体水による被処理材料の加熱処理を実施することができる。
【0030】
図3は、図2の水蒸気発生高熱パネルの一実施例であり、給水タンクから給水ポンプを介して供給される水を、ヒーター線を配設した細管を経由して水を加熱すると共に、その先端に設置された噴射ノズル11から、微細水粒子12を噴出する。図3には、U字状の細管を多数組み合わせた水蒸気発生蓄熱パネル6の一例を示したが、これに制限されるものではなく、同様の機能を有するものであれば同様に使用することができる。
【0031】
本発明では、上記水蒸気発生蓄熱パネルにより、水を、好適には、105〜200℃に加熱するが、高効率の加熱をするには、水を約108〜115℃に加熱して噴出させることが好ましい。本発明において、熱媒体としての気体水を最も効率よく利用するには、約108〜115℃に設定された加熱室に約108〜115℃に加熱された熱水及び/又は水蒸気を噴出することが好適なものとして例示されるが、被処理材料の性質、加熱処理の種類等に応じてこれらの温度条件を任意に設定することができる。
【0032】
本発明において、気体水(アクアガス、AQGと記載することがある。)とは、開放管等の開放系の中で外部ヒータにより100℃以上に加熱された熱水及び/又は水蒸気を、圧力を生じさせないように開放系の準密閉状態で熱水及び/又は水蒸気温度と同温度以上に安定的に加熱された加熱室内で、連続的に噴射させ、微細水滴と湿熱水蒸気を発生させ、加熱室内部を常圧状態のまま水蒸気で充満させ、空気との置換により、湿度90%以上、酸素濃度1.0%以下、より好ましくは、湿度99.0%以上、酸素濃度1.0%以下にしたガス成分として定義される。
【0033】
上記加熱室内で発生させたガス成分(気体水)は、水蒸気温度と同温度以上に安定的に加熱された加熱室内では、温度低下を起こさないことから、凝縮が少なく、水蒸気の有する高い潜熱と吐出された水蒸気の密度が安定的に維持されるので、熱エネルギーのロスが少なく、高熱量の熱媒体として作用し、非酸化状態での省エネ加熱を可能とすることができる。気体水は、上記開放系の外部ヒータ(パネルヒータ)及び加熱室内の加熱ヒータの容量を選択することにより、好適には、例えば、100〜180℃の温度に維持できるが、これらに制限されるものではなく、適宜の温度条件に選定できる。気体水は、水蒸気及び過熱水蒸気と比べて、より高い熱の伝導性を持ち、例えば、被処理材料の歩留まりを向上させるような初期凝縮期間の調整を可能とする、湿熱水蒸気及び微細水滴を用いた加熱媒体「アクアガス」として、特に、被処理材料の加熱・殺菌加工に好適に用いられる。
【0034】
従来、通常の蒸気による加熱方式、高温高圧水蒸気による加熱方式、スチームコンベクションオーブンによる加熱方式等が存在するが、これらの加熱方式の内、高温高圧水蒸気による加熱方法では、高温高圧水蒸気を減圧し、低圧水蒸気の状態で、圧力を生じないように開放管を設けて準密閉状態にした加熱室へ連続的に導入した場合、加熱室及び被加熱材料は、低圧水蒸気の熱エネルギーで加熱されることから、加熱室内の温度は、導入される水蒸気の温度よりも低くなり、そのために、水蒸気は常に凝縮し、液化され、潜熱量は低下し、エネルギーのロスがきわめて大きくなる。また、加熱室内部を低圧水蒸気で充満させ、残留する酸素濃度を1.0%以下に維持するためには、大量の水蒸気と熱エネルギーが必要となる。
【0035】
この加熱方式で被処理材料を加熱する場合、導入される水蒸気より温度の低い加熱室内には、常に大量の低圧水蒸気が送り込まれ、熱交換による凝縮が発生する。そのため、例えば、130℃以下では、被処理材料は、その凝縮の影響により蒸しの状態での加熱となる。他方、スチームコンベクションオーブンによる加熱方式では、加熱室内は一定温度に加熱された状態であり、水蒸気は常に気化温度での水の蒸発により発生し、水蒸気の温度は、加熱室内部の温度の上昇により上昇する。水蒸気は加熱室内では温度上昇過程にあり、十分な密度及び潜熱量を保つことができない。この加熱方式で被処理材料を加熱する場合、充満した水蒸気による加熱ではなく、乾燥空気が含まれた水蒸気による加熱となり、その潜熱量は小さくなる。
【0036】
これらの加熱方式に対して、本発明の加熱方式では、開放管等の開放系の中で外部ヒータにより100℃以上に加熱された水蒸気を、圧力を生じさせないように開放管を設けた準密閉状態で、かつ水蒸気温度と同温度以上に安定的に加熱された加熱室内で、連続的に熱水及び/又は水蒸気を噴射させ、微細水滴と湿熱水蒸気を発生させるので、加熱室の内部は常圧状態のまま水蒸気で充満され、空気との置換が行われ、例えば、湿度99.0%以上、酸素濃度1.0%以下のガス成分の状態となり、発生した水蒸気は温度低下を起こさないことから高い潜熱量の維持が可能となる。
【0037】
この加熱方式で被処理材料を加熱する場合、加熱室内での温度低下が起こらず、水蒸気の凝縮が少なく、また、高い潜熱量を維持して、非酸化的な加熱が可能となると共に、被処理材料に90〜180℃の温度領域で少なくとも10℃の温度差の連続振幅加熱を施すことが可能となる。このように、本発明の加熱方式は、高潜熱量での省エネルギー加熱、凝縮の影響のない加熱及び非酸化状態での加熱を実現するものである。
【0038】
本発明者らは、アクアガスを用いることで、短時間処理での高い殺菌効果を確認し、更に、若干の含水率向上により、歩留まりの向上、食感、食味が著しく向上することを研究した。本発明の装置は、例えば、充填豆腐製造ラインに設置し、チルド保存性を生かして一般食材(卯の花など)として利用したり、豆乳製造ラインへの設置が広く期待される。
【発明の効果】
【0039】
本発明により、1)被処理材料に90〜180℃の温度領域で少なくとも10℃の温度差の連続振幅加熱を施して加熱・殺菌処理することができる、2)被処理材料を外界と遮断して加熱するための加熱室を、水の気体で置換し、湿度99.0%以上、酸素濃度を0.1%以下のガス成分(気体水雰囲気)にすることができる、3)上記気体水で被処理材料を短時間で効率よく低侵襲的に加熱・殺菌することができる、4)おからにアクアガス加熱処理を適用して、高品質おから製品を製造し、提供することができる、5)気体水を生成させ、それを熱媒体として利用する気体水による加熱・殺菌装置を提供することができる、6)短時間処理で高い殺菌作用が得られる、7)若干の含水率向上により、歩留まりの向上が期待できる、8)食感、食味が著しく向上する、9)栄養価が高く、食材としての再利用が強く期待されているおからの高品質化とその再利用が実現できる、10)日持ち性、食品加工適性、保存性に優れた高品質おからを製造し、提供することができる、11)おからの食材化を実現する新技術・新製品を提供できる、という効果が奏される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
次に、試験例及び実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
【0041】
試験例1
本試験例では、図1に示すアクアガス発生装置を用いて、アクアガスの発生試験を実施した。アクアガス発生装置の運転を開始し、準密閉状態の加熱室(加熱チャンバー)を水蒸気温度と同温度に加熱し、次いで、該チャンバーに300℃に加熱された水蒸気を連続的に噴射させて、チャンバーの内部を常圧状態のまま水蒸気で充満させた。運転開始から25分経過後に微細水滴と湿熱水蒸気の混合状態を作り出し、約7分後に湿度99.9%、酸素濃度0.01%の「気体水」の状態に達した。上記アクアガス発生装置による気体水生成過程におけるチャンバー内の温度、湿度、酸素濃度、排気温度を測定した結果を図4に示す。図中で、25分経過後に、チャンバー内の酸素濃度の急激な低下及び湿度の急激な上昇を経て、気体水が生成されることが分かる。
【0042】
試験例2
本試験例では、図1に示す装置において、水蒸気発生用パネルヒータ(2kw)、加熱室内の加熱ヒータ(10kw)を用いて、アクアガス発生装置の運転時の100℃から300℃までの水蒸気吐出温度と、装置内温度、装置内湿度、及び装置内酸素濃度との関係を調べた。上記パネルヒータは100℃以上において、連続最大運転とし、上記加熱ヒータは110℃以上において、連続最大運転とした。ただし、100℃以下においては、その設定温度に設定した。約100〜115℃の気化発生期の水蒸気では、温度上昇に時間を要し、約120℃以上の水蒸気は装置内温度に連動して短時間、かつ安定な温度上昇を示し、装置内温度と水蒸気温度がきわめて安定に制御し得ることが分かった。他方、115℃前後の水蒸気は、準安定状態ではあるが、高密度で高い潜熱量を有する熱媒体として利用し得ると考えられる。これにより、本発明では、これらの準安定及び安定状態の気体水を、その特性を生かして、被加熱材料の種類に応じて任意に選択し、使用することが可能であることが分かった。
【0043】
試験例3
本試験例では、図1に示す装置を用いて、気体水発生時における水蒸気及び微細水滴噴射ノズル付近の温度変化を調べた。その結果を図5に示す。図に示されるように、約95〜150℃の温度領域で約10〜40℃の温度差の振幅で連続的かつ短時間の温度変化が生起することが分かった。また、上記温度差の振幅と、微細水滴と湿熱水蒸気及び乾熱水蒸気の組成は、噴射する水蒸気の温度と装置内温度を調節することにより、変化させ得ることが分かった。また、気体水発生時における装置内温度と気体水温度を比較した。供給水を加熱装置15で余熱し、供給水量は定量ポンプ115spm(3.62l/h)とした。その結果を図6に示す。図に示されるように、装置内温度を約120〜150℃の温度範囲で調節することにより、気体水の約20〜50℃の温度差の振幅の条件で連続振幅加熱できることが分かった。
【0044】
また、上記と同様にして、気体水発生時における装置内温度と気体水温度を比較した。その結果を図7に示す。図に示されるように、装置内温度を約115〜165℃の温度範囲で調節することにより、気体水の約20〜50℃の温度差の振幅の条件で連続振幅加熱できることが分かった。更に、約115〜165℃の温度範囲の気体水を用いて、水道水(100cc)を80℃に加熱するための加熱時間を比較した。その結果、約115℃の温度条件の気体水を用いたとき、最も加熱時間が短く、高いエネルギー効率を示すことが分かった。
【0045】
試験例4
上記試験例3と同様にして作り出したアクアガスの温度と時間の関係を調べた。図8に、115℃のアクアガスの温度時間曲線(庫内)、図9に、115℃のアクアガスの温度時間曲線(噴射ノズル部)を示す。比較例として、過熱水蒸気及び飽和水蒸気の温度時間曲線(庫内及び噴射ノズル部)を図10及び図11に示す。アクアガスの温度時間曲線は、過熱水蒸気及び飽和水蒸気の温度時間曲線と本質的に相違していることが分かる。
【実施例1】
【0046】
(1)本実施例で使用した原料おから製品
本実施例では、原料おからとして、以下の製品を使用した。
・ 生産者名:飯村商事株式会社
・ 製造年月日:2005年8月7日
・ 荷姿:プラスチック製容器
・ 入れ目:20kg
・ 保存条件:10℃以下
・ 保存日数:製造日を含む2日間
【0047】
・ 原料おからの特性値
1)水分:79.4%
2)一般生菌数:4.4×10−5
3)大腸菌群:陰性
4)好気性芽胞菌:3.2×10−3
(2)本実施例で使用したアクアガス加熱装置
加熱装置として、試験例1のアクアガス発生装置と同様の厨房型「アクアガス加熱装置」を用いた。
【0048】
(3)高品質おからの調製
1)おからの加水処理
原料おから1,600gをステンレス製ボールに入れ、水道水400mlを添加混合して加水し、20%加水おから2,000gを得た。その含水率は81.9%であった。同様にして、含水率40%、50%及び60%の加水おからを調製した。
【0049】
2)加水おからの加熱処理
含水率20%加水おから1,900gを、テフロン(登録商標)コートパンチングトレーに入れ、そのトレーに受け皿を設置し、アクアガス加熱装置で115℃、30分間加熱して、密封包装後冷水で芯温10℃まで冷却して、アクアガス加熱おから1,895g(含水率82.1%)を得た。
【0050】
同様にして、含水率40%、50%及び60%加水おからを、アクアガス装置で115℃、30分間加熱して、含水率85.6%、87.6%及び89.2%のアクアガス加熱おからを、各々、1,872g(収率98.5%)、1,822g(収率95.9%)、及び1,772g(収率93.3%)得た。
【0051】
含水率20%加水おから1,900gを、テフロンコートパンチングトレー入れ、そのトレーに受け皿を設置し、アクアガス加熱装置で115℃、60分間加熱して、アクアガス加熱おから1,782g(含水率81.5%)を得た。
【0052】
同様にして、含水率40%、50%及び60%加水おからを、アクアガス装置で115℃、60分間加熱して、含水率85.2%、88.2%及び88.0%のアクアガス加熱おからを、各々、1,742g(収率91.7%)、1,701g(収率89.5%)、及び1,664g(収率87.6%)得た。
【0053】
含水率20%加水おから1,900gを、テフロンコートパンチングトレー入れ、そのトレーに受け皿を設置し、アクアガス加熱装置で115℃、90分間加熱して、アクアガス加熱おから1,720g(含水率80.4%)を得た。
【0054】
同様にして、含水率40%、50%及び60%加水おからを、アクアガス装置で115℃、90分間加熱して、含水率84.4%、86.6%及び87.4%のアクアガス加熱おからを、各々、1,674g(収率88.1%)、1,654g(収率87.1%)、及び1,503g(収率79.1%)得た。以上の結果を纏めて表1に示す。
【0055】
【表1】
【0056】
(4)アクアガス加熱おからの品質評価
1)日持ち性
おからは、含水率が高く、変質し易いことが汎用食材としての欠点の一つであった。表2に、おからの加水とそのアクアガス加熱による品質改善効果(一般生菌数)を調べた結果を示す。表に示される様に、おから及びその加水品をアクアガス加熱処理することによって、一般生菌が効率的に殺菌されて、日持ち性が顕著に改善されることが分かった。
【0057】
2)食品加工適性
アクアガス加熱おからを用いて、チルド惣菜「卯の花」を下記の条件で調製して、その官能性を評価した。その結果を表2に示す。表に示される様に、加水率とアクアガス加熱時間に特定条件が存在し、加水率50%以上のおからをアクアガスで60分以上加熱処理したおからから調製した「卯の花」は、従来品と比べて、食味性と日持ち性が顕著に改善されることが明らかにされ、当該条件でのアクアガス処理おからの高品質性が実証された(以下、これを「高品質おから」と記載することがある。)。
【0058】
【表2】
【0059】
3)保存性
未処理のおからと高品質おから(50%加水・アクアガス60分加熱)をポリエチレン製袋に密封し、10℃の冷蔵庫に48時間保管し、一般生菌数と大腸菌群の経時変化を測定した。その結果を表3に示す。高品質おからは、表に示される様に、従来品に比べて、冷蔵安定性が顕著に改善されることが実証された。
【0060】
【表3】
【0061】
4)「卯の花」の調製
卯の花の調製は、以下の条件で行った。すなわち、平釜にサラダ油80mlを入れて加熱し、2mm幅カットした長ネギ30gを投入して中火で5分間炒めた。これに、高品質おから550gを投入して中火で5分間加熱後、三温糖62g、鰹だし汁44g、きのこ煮汁35g(石づきカットしめじ44g、3mm幅カット椎茸30g、白醤油風調味液14g、三温糖8.4g、水84gを沸騰後3分間煮た残り煮汁)、白醤油風調味液24g、みりん24g、たまり醤油4.8g、及び風味だし顆粒2gを加えて、中火で20分間加熱した。
【0062】
これに、鰹だし汁44g、きのこ煮汁35g、白醤油風調味液24g、みりん24g、たまり醤油4.8gと豆乳30mlを加えて、更に中火で25分間加熱し、茹でた4mm×3mm×50mmカット人参74g、前述の煮た石づきカットしめじ37g、及び3mm幅カット椎茸25gを混ぜて、中火で5分間加熱後に、火を止めて、中身を容器にとって真空冷却機で芯温10℃以下まで冷却した。加熱後出来高は1,000g、加熱後歩留まりは86.7%であった。
【0063】
(5)高品質おからの品質特性評価
1)高品質おからの初発菌の検査
高品質おから(50%加水・アクアガス60分加熱)から上記条件で調製した「卯の花」の初発菌数を検査した。その結果を表4に示す。表に示される様に、未処理おからと比べて、上記条件で調製した「卯の花」では、何れの初発菌とも顕著に少ないことが明らかとなった。
【0064】
【表4】
【0065】
2)上記1)記載の「卯の花」の日持ち性
生菌数の経時変化を調べた結果を表5に示す。表に示される様に、未処理おからと比べて、上記条件で調製した「卯の花」では、日持ち性が顕著に改善された。
【0066】
【表5】
【0067】
3)上記1)記載の「卯の花」の官能性
6名の専門パネルにより官能性評価試験を行った。その結果を表6に示す。未処理おからと比べて、上記条件で調製した「卯の花」では、官能性が顕著に改善されることが明らかとなった。
【0068】
【表6】
【0069】
(6)高品質おからの成分分析とその特徴(カッコ内は生おからの分析値)
1)食品成分分析
50%加水のアクアガス60分加熱の高品質おからの食品成分分析結果は、下記の通りであった。
蛋白質 3.9%(3.9%)
脂質 2.4%(2.1%)
炭水化物 9.0%(8.9%)
食物繊維
総食物繊維 9.4%(水溶性食物繊維0.2%、不溶性食物繊維9.2%(8.8%(水溶性食物繊維0%、不溶性食物繊維8.8%))
【0070】
2)含水率
高品質おからの含水率は、84.2%(81.9%)であった。
3)特記事項
おからに対する加水アクアガス加熱処理により作製した高品質おからでは、栄養素の損失は、認められなかった。
【産業上の利用可能性】
【0071】
以上詳述したように、本発明は、高品質おからの製法、その装置及び製品に係るものであり、本発明により、栄養価が高く、その食材化が強く要請されているおからの再利用技術を提供することができる。本発明の高品質おからは、日持ち性、食品加工適性、保存性、及び食感、食味が優れているので、おからを汎用食材として利用することを実現するものであり、本発明は、おからの食材化を可能とするものとして高い技術的意義を有する。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の装置の一例を示す。
【図2】上記装置の縦断平面図である。
【図3】水蒸気発生蓄熱パネルの一例を示す。
【図4】水蒸気発生装置による気体水生成過程におけるチャンバー内の温度、湿度、酸素濃度、排気温度の測定結果を示す。
【図5】水蒸気(アクアガス)噴射ノズル付近の温度変化を示す。
【図6】装置内温度/水蒸気(アクアガス)温度の比較を示す。
【図7】装置内温度/水蒸気(アクアガス)温度の比較を示す。
【図8】115℃のアクアガスの温度時間曲線(庫内)を示す。
【図9】115℃のアクアガスの温度時間曲線(噴射ノズル部)を示す。
【図10】115℃の過熱水蒸気状態の温度の時間曲線(庫内及び噴射ノズル部)を示す。
【図11】115℃の飽和水蒸気状態の温度の時間曲線(庫内及び噴射ノズル部)を示す。
【符号の説明】
【0073】
1 加熱室
2 ドア部
3 ハンドル
4 窓
5 操作パネル
6 水蒸気発生蓄熱パネル
7 循環ファン
8 ダクト
8′ダクト
9 加熱ヒーター
10 循環風向
11 排出口
12 給水パネル
13 微細水蒸気噴出ノズル
14 噴出した微細水粒子
15 供給水の加熱装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、高品質おからの製法、その装置及び製品に関するものであり、更に詳しくは、アクアガス加熱装置で加熱処理して、高い日持ち性、食品加工適性、保存性、良好な食感、食味を保持した高品質おからを製造することを可能とする高品質おからの製法、その装置及びその高品質おから製品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、栄養価が高く、食材としての再利用が要望されている「おから」については、高水分で微生物増殖が速く、保存性が低いために、効率的な利用ができていない。おからを食材化するための殺菌処理に関しては、従来技術では、好適な処理法がないのが現状である。この殺菌処理法については、強いて言えば、オートクレーブ処理などが挙げられるが、加圧した飽和水蒸気の中では、水分が高まり、食感が損なわれるという問題がある。また、オートクレーブ処理などにおいては、作業性が悪く、効率的に大量におからを殺菌処理することは困難である。
【0003】
従来技術として、おからの処理法に関しては、先行文献には、原料おからの殺菌、滅菌が行え、原料おからを均一に乾燥することができる乾燥おからの製造方法及び装置が提案されている(特許文献1)。また、微細化した湿潤おからを掻き取り式熱交換機に供給し、120℃以上に加熱して冷却したものを無菌的に充填密封することを特徴とする湿潤おからの製造法が提案されている(特許文献2)。
【0004】
また、おからを水に懸濁し、これを加熱殺菌した後、固液分離、乾燥を行う乾燥おからの製造法が提案されている(特許文献3)。更に、生おからを品温110℃〜130℃で加熱乾燥することにより高機能の性質を有する乾燥おから粉末の製造方法が提案されている(特許文献4)。
【0005】
しかしながら、従来法は、食感が損なわれることがなく、作業性が良好で、効率良く大量に殺菌処理可能で、おからの食材化を達成するための処理法としては不十分であり、当技術分野では、上述の処理を実現し、おからの食材化を可能とする新しい高品質おからの製造技術を開発することが強く要請されていた。
【0006】
【特許文献1】特開2002−330717号公報
【特許文献2】特開2001−145468号公報
【特許文献3】特開2000−217529号公報
【特許文献4】特開平11−103809号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような状況の中で、本発明者らは、上記従来技術に鑑みて、おからの食材として再利用を可能にする新しい処理技術を開発することを目標として鋭意研究を重ねた結果、おからをアクアガス加熱装置で加熱処理することで、短時間処理での高い殺菌効果と、若干の含水率の向上による歩留まりの向上と、食感、食味の著しい向上効果が得られるという新規知見を見出し、更に研究を重ねて、本発明を完成するに至った。
【0008】
本発明は、おからをアクアガス加熱装置で加熱処理することにより、おからの食材化を可能にする高品質おからの製造方法を提供することを目的とするものである。また、本発明は、上記アクアガス加熱装置で加熱処理して得られる高品質おから及びその加工食品を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための本発明は、以下の技術的手段から構成される。
(1)所定量の水を含むおからを、100℃以上に加熱された熱水及び/又は水蒸気を100℃以上に加熱された準密閉空間の加熱室内に連続的噴射させ、発生した微細水滴と水蒸気で該加熱室内の空気を置換させて湿度95%以上及び酸素濃度1%以下の組成を有し、90〜180℃の温度に保持された加熱媒体組成物を用いて加熱することを特徴とする高品質おからの製造方法。
(2)少なくとも20質量%のおからを上記加熱媒体組成物を用いて加熱する前記(1)に記載の高品質おからの製造方法。
(3)所定量の水を含む被加熱材料のおからを加熱して高品質おからを製造する装置であって、少なくとも、被加熱材料を外気と遮断して加熱する準密閉状態の加熱室、該加熱室を100℃を越える所定の温度に加熱する加熱手段、100℃以上に加熱された熱水及び/又は水蒸気を上記加熱室内に導入して所定の方向に移送する微細水滴と水蒸気発生手段、を構成要素として含み、100℃以上に加熱された熱水及び/又は水蒸気を上記加熱室内に連続的に噴射させ、加熱室内部を常圧状態のまま微細水滴と水蒸気で充満させ、少なくとも湿度95%以上、酸素濃度1%以下の微細水滴と水蒸気で加熱室内部の空気を置換し、該微細水滴と水蒸気で加熱室内の被加熱材料を加熱するようにしたことを特徴とする高品質おからの製造装置。
(4)少なくとも20質量%の水を添加した被加熱材料のおからを加熱して高品質おからを製造する装置である前記(3)に記載の高品質おからの製造装置。
(5)前記(1)又は(2)に記載の方法を用いて、所定量の水を含むおからを加熱処理したことを特徴とする高品質おから又は該高品質おからを含む高品質おから食品。
(6)前記(5)に記載の高品質おからを食材として利用して高品質おから食品を製造することを特徴とする高品質おから食品の製造方法。
【0010】
次に、本発明について更に詳細に説明する。
本発明は、少なくとも20質量%の水を添加したおからを、100℃以上に加熱された熱水及び/又は水蒸気を100℃以上に加熱された準密閉空間の加熱室内に連続的噴射させ、発生した微細水滴と水蒸気で該加熱室内の空気を置換させて湿度95%以上及び酸素濃度1%以下の組成を有し、90〜180℃の温度に保持された加熱媒体組成物を用いて加熱することを特徴とする高品質おからの製造方法の点に特徴を有するものである。
【0011】
また、本発明は、少なくとも20質量%の水を添加した被加熱材料のおからを加熱して高品質おからを製造する装置であって、少なくとも、被加熱材料を外気と遮断して加熱する準密閉状態の加熱室、該加熱室を100℃を越える所定の温度に加熱する加熱手段、100℃以上に加熱された熱水及び/又は水蒸気を上記加熱室内に導入して所定の方向に移送する微細水滴と水蒸気発生手段、を構成要素として含み、100℃以上に加熱された熱水及び/又は水蒸気を上記加熱室内に連続的に噴射させ、加熱室内部を常圧状態のまま微細水滴と水蒸気で充満させ、少なくとも湿度95%以上、酸素濃度1%以下の微細水滴と水蒸気で加熱室内部の空気を置換し、該微細水滴と水蒸気で加熱室内の被加熱材料を加熱するようにしたことを特徴とする高品質おから製造装置の点に特徴を有するものである。
【0012】
更に、本発明は、上記方法を用いて、少なくとも20質量%の水を添加したおからを加熱処理したことを特徴とする高品質おから又は該高品質おからを含む高品質おから食品の点、及び上記の高品質おからを食材として利用して高品質おから食品を製造することを特徴とする高品質おから食品の製造方法の点、に特徴を有するものである。
【0013】
本発明の加熱方法は、(1)100℃以上に加熱された熱水及び/又は水蒸気を、これと同温度以上に加熱された準密閉空間の加熱室内に連続的に噴射させ、微細水滴と湿熱水蒸気を発生させる、(2)上記微細水滴と湿熱水蒸気で上記加熱室内の空気を置換させて、湿度95%以上及び酸素濃度1%以下の組成を有し、90〜180℃の温度領域に保持されたガス成分で満たす、(3)上記微細水滴と湿熱水蒸気で被処理材料に上記温度領域で少なくとも10℃の温度差の連続振幅加熱を施して加熱処理する、ことを特徴とするものである。
【0014】
本発明において、微細水滴と湿熱水蒸気とは、高湿度の湿熱水蒸気とその凝縮により部分的に生成する微細水滴との混合系を意味し、乾熱水蒸気とは、上記湿熱水蒸気の乾燥により部分的に生成する高乾燥水蒸気を意味する。本発明では、上記微細水滴と湿熱水蒸気で被処理材料に90〜180℃の温度領域で少なくとも10℃の温度差の連続振幅加熱を施して加熱処理するが、ここで、少なくとも10℃の温度差の連続振幅加熱とは、90〜180℃の温度範囲において、短時間に10℃を上回る温度差の振幅で連続的に加熱することを意味する。本発明では、例えば、10〜50℃の温度差の振幅で連続的に被処理材料を加熱することができる。本発明では、上記微細水滴と湿熱水蒸気の混合状態を気体水(アクアガス(登録商標))と称する。
【0015】
本発明では、加熱室を100℃を越える所定の温度に加熱すると共に、該加熱室に熱水及び/又は水蒸気を導入し、該加熱室を水の気体(気体水)で置換し、酸素濃度を1.0%以下に低下させることにより形成した気体水雰囲気で被加熱材料を加熱する。本発明において、上記加熱室は、被加熱材料を外気と遮断して加熱することができる所定の準閉鎖系空間で構成され、好適には、例えば、被加熱材料を載せるためのプレート、一部にガラス窓部を形成した開閉可能なドア部を有する準密閉空間が例示される。加熱室は、好適には、ステンレス製の素材で形成される。本発明では、上記加熱室を100℃を越える所定の温度に加熱するが、この場合、好適には、該加熱室に導入する熱水及び/又は水蒸気の温度と同等又はそれ以上に加熱する。
【0016】
本発明では、上記のように、加熱室を所定の温度に加熱すると共に、該加熱室で微細水滴と湿熱水蒸気を発生させ、該加熱室内の空気を水の気体で置換する。この場合、上記微細水滴と湿熱水蒸気は、例えば、細管を通して所定の流速で送水された水を細管の外部からヒータで加熱し、細管の端部に設けられたノズルを介して加熱室に導入することで生成される。上記微細水滴と湿熱水蒸気は、100〜180℃、より好適には、95〜150℃に加熱された高温常圧のガス成分であり、被処理材料を高いエネルギー効率で加熱する作用を有する。加熱された水は、加熱室内にノズルを介して噴霧される。加熱室内は常圧状態で100℃以上の所定の温度に加熱制御されており、噴霧された水滴は気化して、加熱室内を微細水滴と湿熱水蒸気の混合状態にする。その際に、噴霧される水量及び水滴径を調整することで、水蒸気雰囲気に一部微細水滴を混合させる状態を作り出すことができ、このような状態をアクアガスと呼ぶ。
【0017】
本発明では、給水タンクの水を給水ポンプで汲み上げ、細管からなる導管を通して水蒸気発生蓄熱パネルに供給し、加熱ヒーターにより、例えば、105〜200℃の所定の温度に加熱し、そのまま、細管の先端に設置した水蒸気噴射ノズルから高速で熱水及び/又は水蒸気を噴射させる。この場合、水蒸気ノズルとしては、先端に微細噴射孔を形成してなる、熱水及び/又は水蒸気を微細化して噴出する機能を有するものであれば、適宜のものが用いられる。微細噴射孔の孔径、孔数、孔の穿設位置等は任意に設定できる。水蒸気噴射ノズルからの熱水及び/又は水蒸気の噴射速度は、好適には、噴射ノズル先端において160〜200/s程度であるが、これらに制限されるものではなく、装置の大きさ、種類及び使用目的等に応じて、例えば、微細噴射孔の孔径、孔数等を変更することにより任意に設定することができる。
【0018】
本発明では、例えば、上記微細噴射ノズルから噴射された水蒸気を加熱室に導入するが、その際に、噴射ノズルの先端に近接して設置した循環ファンに水蒸気を噴射して、循環ファンの回転による衝撃力と風力により所定の風向に水蒸気を移送すると共に、それらの風向に合わせて設置された加熱ヒーターに水蒸気を接触させて、水蒸気をその温度を低下させずに加熱室全体に導入し、該加熱室を所定の温度に保持された水の気体で置換し、湿度95%以上、酸素濃度1.0%以下、より好適には、湿度99.0%以上、酸素濃度1.0%以下のガス成分で加熱室を満たすことにより加熱室内に気体水雰囲気を形成することができる。
【0019】
微細噴射口から噴射された熱水及び/又は水蒸気は、循環ファンに衝突することで更に微細化する。また、循環ファンにより形成された風向の風下に設置された加熱ヒーターは、その表面が噴射された熱水及び/又は水蒸気に直接的に、かつ広面積で接触するように、好適には、噴射された熱水及び/又は水蒸気をなるべく遮るような位置及び方向に設置する。それにより、加熱ヒーターによる熱を噴射された熱水及び/又は水蒸気に効率良く伝達し、噴射された熱水及び/又は水蒸気の温度低下を確実に防止することが可能となる。
【0020】
上記循環ファンは、例えば、加熱室内部の後面側の中央に設置され、噴射された熱水及び/又は水蒸気を、加熱室内部の左側面部及び右側面部に位置するダクト内に設置された加熱ヒーターに直接接触するように移送する機能を有するものが例示されるが、これらに制限されるものではない。また、上記加熱ヒーターは、好適には、例えば、シーズヒーター等をヘアピン状に多数設置して、噴射された熱水及び/又は水蒸気との接触面積が増えるようにしたものが例示されるが、これらに制限されるものではなく、同様の機能を有するものであれば同様に使用することができる。上記循環ファンの回転数及び回転方向は、装置の大きさ、ダクトの位置、形状、加熱ヒーターの形状、設置位置等を考慮して、噴射された熱水及び/又は水蒸気がダクト内に循環風として循環し得るように設定される。
【0021】
加熱室は気体水で置換された段階で、被処理材料を加熱室に導入し、上記気体水を熱媒体として利用して、所定の加熱処理を行う。ここで言う加熱処理とは、上記気体水を熱源として利用する加熱処理を意味する。本発明において、被処理材料は、所定量の水を含むおから、好適には、少なくとも20質量%の水を添加したおからである。加熱室に導入した被処理材料は、所定の加熱処理を施した後、適宜のタイミングで加熱室の外に搬出され、被処理材料に接触した気体水は、気体水排出口から系外に排出される。
【0022】
加熱室内に噴射された熱水及び/又は水蒸気は、まず、循環ファンに衝突し、微細化され、ダクトに移送され、ダクト内に設置した加熱ヒーターに接触し、所定の温度に加熱された後、加熱室内に導入された被処理材料に接触し、熱媒体として利用された後、系外に排出される。熱媒体としての気体水の熱エネルギーは、被処理材料の加熱処理の熱源として利用されるが、本発明では、噴射された熱水及び/又は水蒸気は、そのまま、被処理材料に接触するのではなく、一旦、ダクト内に設置された加熱ヒーターにより加熱された後に、被処理材料に接触し、噴射された熱水及び/又は水蒸気の熱量を低下させることなく、被処理材料を加熱するので、被処理材料を効率よく加熱することが可能となる。
【0023】
また、噴射された熱水及び/又は水蒸気は、例えば、高速で循環ファンに衝突し、その衝突により衝撃で水滴が分割されて、更に、微細化されると共に、更に、加熱ヒーターで加熱されるので、この微細化された高温の気体水は、肉眼観察で完全に透明な高熱伝導率の高温の水粒子からなり、被処理材料の内部への浸透性が高く、一旦、被処理材料の内部へ浸透して熱交換を行った気体水に対し、後続の高温の気体水が熱エネルギーをたえず供給するので、高熱伝導率を有する熱が連続的に内部へ移動し、気体水が、効率よく被処理材料の内部へ浸透し、短時間で被処理材料を加熱することができる。
【0024】
本発明において、上記噴出された熱水及び/又は水蒸気の水滴は、必要により、循環ファンに衝突することで更に微細化され、殺菌性の微細な水粒子として加熱室に充満する。実験の結果、給水タンクから採取された水のpHは約6.9〜7.1であったが、この殺菌性微細水粒子のpHは、約5.2〜5.8であり、105℃以上の高温条件と協動して、加熱室内で高殺菌性気体水雰囲気を形成する。したがって、本発明では、高殺菌性雰囲気下で被処理材料を加熱処理することができるので、加熱と同時に高殺菌効果を付与できる。
【0025】
次に、本発明の気体水による加熱装置の一実施の形態を図に基づいて具体的に説明する。ただし、図は、本発明の装置の一例を示すものであり、本発明は、これに制限されるものではなく、また、各構成要素は、同様の機能を有する同様の手段に置換することが可能であり、更に、公知の手段を任意に付加することができる。
【0026】
図1は、本発明の加熱装置の正面図であり、被処理材料を外気と遮断して加熱するための加熱室1、その正面に設置された開閉可能なドア部2、そのハンドル3及び窓4、操作パネル5、及び供給水の加熱装置15を構成要素として含むバッチ式の装置を示す。加熱室1は、被処理材料(図示せず)をその内部に収容して加熱処理し得る所定の空間を形成する。加熱室1の正面に設置されたドア部2は、ハンドル3を操作して適宜開閉し得る構造を有し、窓4は、被処理材料の加熱状況を確認するために設置される。尚、加熱室は、単一又は複数であっても良く、例えば、連続式の装置では、処理温度の異なる複数の加熱室を設けることが可能であり、その場合、ドア部は省略することができる。
【0027】
図2は、上記装置の縦断平面図であり、水蒸気発生蓄熱パネル6を通して加熱された水は、高温水蒸気として微細水蒸気噴出ノズルを介して加熱室内に噴出され、回転する循環ファン7に衝突して微細化されると共に、左右に設置されたダクト8、8′に移送され、ダクト内8、8′内に設置された加熱ヒーター9に接触して、所定の温度に加熱され、循環風向10として被処理材料(図示せず)に接触し、被処理材料を加熱する。熱源として利用された気体水は、排出口11から系外に排出される。加熱室内に噴射された水蒸気は、循環ファン7により、装置の左側面部及び右側面部に設けられたダクト8、8′に移送され、加熱ヒーター9により加熱される。
【0028】
本発明では、加熱ヒーター9の温度条件は、好適には、噴射された熱水及び/又は水蒸気の温度レベルに合わせるか、それ以上の温度に設定することが重要である。それにより、噴射された熱水及び/又は水蒸気の温度レベルを低下させることなく、噴射された熱水及び/又は水蒸気の温度レベルを維持した気体水で加熱室を満たすことが可能となるが、仮に、加熱ヒーターを設置しない場合には、このような気体水雰囲気を形成することはできない。
【0029】
また、加熱室内及び噴射された熱水及び/又は水蒸気を加熱するための加熱ヒーターと、供給された水を加熱して所定の温度の高温水蒸気を発生させるための加熱手段とを独立して設置し、これらを併用することにより、噴射される熱水及び/又は水蒸気の温度と、加熱室内の温度を独立して制御することが可能となり、それにより、噴射された熱水及び/又は水蒸気の熱量を過度にロスすることなく、省エネルギーで気体水による被処理材料の加熱処理を実施することができる。
【0030】
図3は、図2の水蒸気発生高熱パネルの一実施例であり、給水タンクから給水ポンプを介して供給される水を、ヒーター線を配設した細管を経由して水を加熱すると共に、その先端に設置された噴射ノズル11から、微細水粒子12を噴出する。図3には、U字状の細管を多数組み合わせた水蒸気発生蓄熱パネル6の一例を示したが、これに制限されるものではなく、同様の機能を有するものであれば同様に使用することができる。
【0031】
本発明では、上記水蒸気発生蓄熱パネルにより、水を、好適には、105〜200℃に加熱するが、高効率の加熱をするには、水を約108〜115℃に加熱して噴出させることが好ましい。本発明において、熱媒体としての気体水を最も効率よく利用するには、約108〜115℃に設定された加熱室に約108〜115℃に加熱された熱水及び/又は水蒸気を噴出することが好適なものとして例示されるが、被処理材料の性質、加熱処理の種類等に応じてこれらの温度条件を任意に設定することができる。
【0032】
本発明において、気体水(アクアガス、AQGと記載することがある。)とは、開放管等の開放系の中で外部ヒータにより100℃以上に加熱された熱水及び/又は水蒸気を、圧力を生じさせないように開放系の準密閉状態で熱水及び/又は水蒸気温度と同温度以上に安定的に加熱された加熱室内で、連続的に噴射させ、微細水滴と湿熱水蒸気を発生させ、加熱室内部を常圧状態のまま水蒸気で充満させ、空気との置換により、湿度90%以上、酸素濃度1.0%以下、より好ましくは、湿度99.0%以上、酸素濃度1.0%以下にしたガス成分として定義される。
【0033】
上記加熱室内で発生させたガス成分(気体水)は、水蒸気温度と同温度以上に安定的に加熱された加熱室内では、温度低下を起こさないことから、凝縮が少なく、水蒸気の有する高い潜熱と吐出された水蒸気の密度が安定的に維持されるので、熱エネルギーのロスが少なく、高熱量の熱媒体として作用し、非酸化状態での省エネ加熱を可能とすることができる。気体水は、上記開放系の外部ヒータ(パネルヒータ)及び加熱室内の加熱ヒータの容量を選択することにより、好適には、例えば、100〜180℃の温度に維持できるが、これらに制限されるものではなく、適宜の温度条件に選定できる。気体水は、水蒸気及び過熱水蒸気と比べて、より高い熱の伝導性を持ち、例えば、被処理材料の歩留まりを向上させるような初期凝縮期間の調整を可能とする、湿熱水蒸気及び微細水滴を用いた加熱媒体「アクアガス」として、特に、被処理材料の加熱・殺菌加工に好適に用いられる。
【0034】
従来、通常の蒸気による加熱方式、高温高圧水蒸気による加熱方式、スチームコンベクションオーブンによる加熱方式等が存在するが、これらの加熱方式の内、高温高圧水蒸気による加熱方法では、高温高圧水蒸気を減圧し、低圧水蒸気の状態で、圧力を生じないように開放管を設けて準密閉状態にした加熱室へ連続的に導入した場合、加熱室及び被加熱材料は、低圧水蒸気の熱エネルギーで加熱されることから、加熱室内の温度は、導入される水蒸気の温度よりも低くなり、そのために、水蒸気は常に凝縮し、液化され、潜熱量は低下し、エネルギーのロスがきわめて大きくなる。また、加熱室内部を低圧水蒸気で充満させ、残留する酸素濃度を1.0%以下に維持するためには、大量の水蒸気と熱エネルギーが必要となる。
【0035】
この加熱方式で被処理材料を加熱する場合、導入される水蒸気より温度の低い加熱室内には、常に大量の低圧水蒸気が送り込まれ、熱交換による凝縮が発生する。そのため、例えば、130℃以下では、被処理材料は、その凝縮の影響により蒸しの状態での加熱となる。他方、スチームコンベクションオーブンによる加熱方式では、加熱室内は一定温度に加熱された状態であり、水蒸気は常に気化温度での水の蒸発により発生し、水蒸気の温度は、加熱室内部の温度の上昇により上昇する。水蒸気は加熱室内では温度上昇過程にあり、十分な密度及び潜熱量を保つことができない。この加熱方式で被処理材料を加熱する場合、充満した水蒸気による加熱ではなく、乾燥空気が含まれた水蒸気による加熱となり、その潜熱量は小さくなる。
【0036】
これらの加熱方式に対して、本発明の加熱方式では、開放管等の開放系の中で外部ヒータにより100℃以上に加熱された水蒸気を、圧力を生じさせないように開放管を設けた準密閉状態で、かつ水蒸気温度と同温度以上に安定的に加熱された加熱室内で、連続的に熱水及び/又は水蒸気を噴射させ、微細水滴と湿熱水蒸気を発生させるので、加熱室の内部は常圧状態のまま水蒸気で充満され、空気との置換が行われ、例えば、湿度99.0%以上、酸素濃度1.0%以下のガス成分の状態となり、発生した水蒸気は温度低下を起こさないことから高い潜熱量の維持が可能となる。
【0037】
この加熱方式で被処理材料を加熱する場合、加熱室内での温度低下が起こらず、水蒸気の凝縮が少なく、また、高い潜熱量を維持して、非酸化的な加熱が可能となると共に、被処理材料に90〜180℃の温度領域で少なくとも10℃の温度差の連続振幅加熱を施すことが可能となる。このように、本発明の加熱方式は、高潜熱量での省エネルギー加熱、凝縮の影響のない加熱及び非酸化状態での加熱を実現するものである。
【0038】
本発明者らは、アクアガスを用いることで、短時間処理での高い殺菌効果を確認し、更に、若干の含水率向上により、歩留まりの向上、食感、食味が著しく向上することを研究した。本発明の装置は、例えば、充填豆腐製造ラインに設置し、チルド保存性を生かして一般食材(卯の花など)として利用したり、豆乳製造ラインへの設置が広く期待される。
【発明の効果】
【0039】
本発明により、1)被処理材料に90〜180℃の温度領域で少なくとも10℃の温度差の連続振幅加熱を施して加熱・殺菌処理することができる、2)被処理材料を外界と遮断して加熱するための加熱室を、水の気体で置換し、湿度99.0%以上、酸素濃度を0.1%以下のガス成分(気体水雰囲気)にすることができる、3)上記気体水で被処理材料を短時間で効率よく低侵襲的に加熱・殺菌することができる、4)おからにアクアガス加熱処理を適用して、高品質おから製品を製造し、提供することができる、5)気体水を生成させ、それを熱媒体として利用する気体水による加熱・殺菌装置を提供することができる、6)短時間処理で高い殺菌作用が得られる、7)若干の含水率向上により、歩留まりの向上が期待できる、8)食感、食味が著しく向上する、9)栄養価が高く、食材としての再利用が強く期待されているおからの高品質化とその再利用が実現できる、10)日持ち性、食品加工適性、保存性に優れた高品質おからを製造し、提供することができる、11)おからの食材化を実現する新技術・新製品を提供できる、という効果が奏される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
次に、試験例及び実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
【0041】
試験例1
本試験例では、図1に示すアクアガス発生装置を用いて、アクアガスの発生試験を実施した。アクアガス発生装置の運転を開始し、準密閉状態の加熱室(加熱チャンバー)を水蒸気温度と同温度に加熱し、次いで、該チャンバーに300℃に加熱された水蒸気を連続的に噴射させて、チャンバーの内部を常圧状態のまま水蒸気で充満させた。運転開始から25分経過後に微細水滴と湿熱水蒸気の混合状態を作り出し、約7分後に湿度99.9%、酸素濃度0.01%の「気体水」の状態に達した。上記アクアガス発生装置による気体水生成過程におけるチャンバー内の温度、湿度、酸素濃度、排気温度を測定した結果を図4に示す。図中で、25分経過後に、チャンバー内の酸素濃度の急激な低下及び湿度の急激な上昇を経て、気体水が生成されることが分かる。
【0042】
試験例2
本試験例では、図1に示す装置において、水蒸気発生用パネルヒータ(2kw)、加熱室内の加熱ヒータ(10kw)を用いて、アクアガス発生装置の運転時の100℃から300℃までの水蒸気吐出温度と、装置内温度、装置内湿度、及び装置内酸素濃度との関係を調べた。上記パネルヒータは100℃以上において、連続最大運転とし、上記加熱ヒータは110℃以上において、連続最大運転とした。ただし、100℃以下においては、その設定温度に設定した。約100〜115℃の気化発生期の水蒸気では、温度上昇に時間を要し、約120℃以上の水蒸気は装置内温度に連動して短時間、かつ安定な温度上昇を示し、装置内温度と水蒸気温度がきわめて安定に制御し得ることが分かった。他方、115℃前後の水蒸気は、準安定状態ではあるが、高密度で高い潜熱量を有する熱媒体として利用し得ると考えられる。これにより、本発明では、これらの準安定及び安定状態の気体水を、その特性を生かして、被加熱材料の種類に応じて任意に選択し、使用することが可能であることが分かった。
【0043】
試験例3
本試験例では、図1に示す装置を用いて、気体水発生時における水蒸気及び微細水滴噴射ノズル付近の温度変化を調べた。その結果を図5に示す。図に示されるように、約95〜150℃の温度領域で約10〜40℃の温度差の振幅で連続的かつ短時間の温度変化が生起することが分かった。また、上記温度差の振幅と、微細水滴と湿熱水蒸気及び乾熱水蒸気の組成は、噴射する水蒸気の温度と装置内温度を調節することにより、変化させ得ることが分かった。また、気体水発生時における装置内温度と気体水温度を比較した。供給水を加熱装置15で余熱し、供給水量は定量ポンプ115spm(3.62l/h)とした。その結果を図6に示す。図に示されるように、装置内温度を約120〜150℃の温度範囲で調節することにより、気体水の約20〜50℃の温度差の振幅の条件で連続振幅加熱できることが分かった。
【0044】
また、上記と同様にして、気体水発生時における装置内温度と気体水温度を比較した。その結果を図7に示す。図に示されるように、装置内温度を約115〜165℃の温度範囲で調節することにより、気体水の約20〜50℃の温度差の振幅の条件で連続振幅加熱できることが分かった。更に、約115〜165℃の温度範囲の気体水を用いて、水道水(100cc)を80℃に加熱するための加熱時間を比較した。その結果、約115℃の温度条件の気体水を用いたとき、最も加熱時間が短く、高いエネルギー効率を示すことが分かった。
【0045】
試験例4
上記試験例3と同様にして作り出したアクアガスの温度と時間の関係を調べた。図8に、115℃のアクアガスの温度時間曲線(庫内)、図9に、115℃のアクアガスの温度時間曲線(噴射ノズル部)を示す。比較例として、過熱水蒸気及び飽和水蒸気の温度時間曲線(庫内及び噴射ノズル部)を図10及び図11に示す。アクアガスの温度時間曲線は、過熱水蒸気及び飽和水蒸気の温度時間曲線と本質的に相違していることが分かる。
【実施例1】
【0046】
(1)本実施例で使用した原料おから製品
本実施例では、原料おからとして、以下の製品を使用した。
・ 生産者名:飯村商事株式会社
・ 製造年月日:2005年8月7日
・ 荷姿:プラスチック製容器
・ 入れ目:20kg
・ 保存条件:10℃以下
・ 保存日数:製造日を含む2日間
【0047】
・ 原料おからの特性値
1)水分:79.4%
2)一般生菌数:4.4×10−5
3)大腸菌群:陰性
4)好気性芽胞菌:3.2×10−3
(2)本実施例で使用したアクアガス加熱装置
加熱装置として、試験例1のアクアガス発生装置と同様の厨房型「アクアガス加熱装置」を用いた。
【0048】
(3)高品質おからの調製
1)おからの加水処理
原料おから1,600gをステンレス製ボールに入れ、水道水400mlを添加混合して加水し、20%加水おから2,000gを得た。その含水率は81.9%であった。同様にして、含水率40%、50%及び60%の加水おからを調製した。
【0049】
2)加水おからの加熱処理
含水率20%加水おから1,900gを、テフロン(登録商標)コートパンチングトレーに入れ、そのトレーに受け皿を設置し、アクアガス加熱装置で115℃、30分間加熱して、密封包装後冷水で芯温10℃まで冷却して、アクアガス加熱おから1,895g(含水率82.1%)を得た。
【0050】
同様にして、含水率40%、50%及び60%加水おからを、アクアガス装置で115℃、30分間加熱して、含水率85.6%、87.6%及び89.2%のアクアガス加熱おからを、各々、1,872g(収率98.5%)、1,822g(収率95.9%)、及び1,772g(収率93.3%)得た。
【0051】
含水率20%加水おから1,900gを、テフロンコートパンチングトレー入れ、そのトレーに受け皿を設置し、アクアガス加熱装置で115℃、60分間加熱して、アクアガス加熱おから1,782g(含水率81.5%)を得た。
【0052】
同様にして、含水率40%、50%及び60%加水おからを、アクアガス装置で115℃、60分間加熱して、含水率85.2%、88.2%及び88.0%のアクアガス加熱おからを、各々、1,742g(収率91.7%)、1,701g(収率89.5%)、及び1,664g(収率87.6%)得た。
【0053】
含水率20%加水おから1,900gを、テフロンコートパンチングトレー入れ、そのトレーに受け皿を設置し、アクアガス加熱装置で115℃、90分間加熱して、アクアガス加熱おから1,720g(含水率80.4%)を得た。
【0054】
同様にして、含水率40%、50%及び60%加水おからを、アクアガス装置で115℃、90分間加熱して、含水率84.4%、86.6%及び87.4%のアクアガス加熱おからを、各々、1,674g(収率88.1%)、1,654g(収率87.1%)、及び1,503g(収率79.1%)得た。以上の結果を纏めて表1に示す。
【0055】
【表1】
【0056】
(4)アクアガス加熱おからの品質評価
1)日持ち性
おからは、含水率が高く、変質し易いことが汎用食材としての欠点の一つであった。表2に、おからの加水とそのアクアガス加熱による品質改善効果(一般生菌数)を調べた結果を示す。表に示される様に、おから及びその加水品をアクアガス加熱処理することによって、一般生菌が効率的に殺菌されて、日持ち性が顕著に改善されることが分かった。
【0057】
2)食品加工適性
アクアガス加熱おからを用いて、チルド惣菜「卯の花」を下記の条件で調製して、その官能性を評価した。その結果を表2に示す。表に示される様に、加水率とアクアガス加熱時間に特定条件が存在し、加水率50%以上のおからをアクアガスで60分以上加熱処理したおからから調製した「卯の花」は、従来品と比べて、食味性と日持ち性が顕著に改善されることが明らかにされ、当該条件でのアクアガス処理おからの高品質性が実証された(以下、これを「高品質おから」と記載することがある。)。
【0058】
【表2】
【0059】
3)保存性
未処理のおからと高品質おから(50%加水・アクアガス60分加熱)をポリエチレン製袋に密封し、10℃の冷蔵庫に48時間保管し、一般生菌数と大腸菌群の経時変化を測定した。その結果を表3に示す。高品質おからは、表に示される様に、従来品に比べて、冷蔵安定性が顕著に改善されることが実証された。
【0060】
【表3】
【0061】
4)「卯の花」の調製
卯の花の調製は、以下の条件で行った。すなわち、平釜にサラダ油80mlを入れて加熱し、2mm幅カットした長ネギ30gを投入して中火で5分間炒めた。これに、高品質おから550gを投入して中火で5分間加熱後、三温糖62g、鰹だし汁44g、きのこ煮汁35g(石づきカットしめじ44g、3mm幅カット椎茸30g、白醤油風調味液14g、三温糖8.4g、水84gを沸騰後3分間煮た残り煮汁)、白醤油風調味液24g、みりん24g、たまり醤油4.8g、及び風味だし顆粒2gを加えて、中火で20分間加熱した。
【0062】
これに、鰹だし汁44g、きのこ煮汁35g、白醤油風調味液24g、みりん24g、たまり醤油4.8gと豆乳30mlを加えて、更に中火で25分間加熱し、茹でた4mm×3mm×50mmカット人参74g、前述の煮た石づきカットしめじ37g、及び3mm幅カット椎茸25gを混ぜて、中火で5分間加熱後に、火を止めて、中身を容器にとって真空冷却機で芯温10℃以下まで冷却した。加熱後出来高は1,000g、加熱後歩留まりは86.7%であった。
【0063】
(5)高品質おからの品質特性評価
1)高品質おからの初発菌の検査
高品質おから(50%加水・アクアガス60分加熱)から上記条件で調製した「卯の花」の初発菌数を検査した。その結果を表4に示す。表に示される様に、未処理おからと比べて、上記条件で調製した「卯の花」では、何れの初発菌とも顕著に少ないことが明らかとなった。
【0064】
【表4】
【0065】
2)上記1)記載の「卯の花」の日持ち性
生菌数の経時変化を調べた結果を表5に示す。表に示される様に、未処理おからと比べて、上記条件で調製した「卯の花」では、日持ち性が顕著に改善された。
【0066】
【表5】
【0067】
3)上記1)記載の「卯の花」の官能性
6名の専門パネルにより官能性評価試験を行った。その結果を表6に示す。未処理おからと比べて、上記条件で調製した「卯の花」では、官能性が顕著に改善されることが明らかとなった。
【0068】
【表6】
【0069】
(6)高品質おからの成分分析とその特徴(カッコ内は生おからの分析値)
1)食品成分分析
50%加水のアクアガス60分加熱の高品質おからの食品成分分析結果は、下記の通りであった。
蛋白質 3.9%(3.9%)
脂質 2.4%(2.1%)
炭水化物 9.0%(8.9%)
食物繊維
総食物繊維 9.4%(水溶性食物繊維0.2%、不溶性食物繊維9.2%(8.8%(水溶性食物繊維0%、不溶性食物繊維8.8%))
【0070】
2)含水率
高品質おからの含水率は、84.2%(81.9%)であった。
3)特記事項
おからに対する加水アクアガス加熱処理により作製した高品質おからでは、栄養素の損失は、認められなかった。
【産業上の利用可能性】
【0071】
以上詳述したように、本発明は、高品質おからの製法、その装置及び製品に係るものであり、本発明により、栄養価が高く、その食材化が強く要請されているおからの再利用技術を提供することができる。本発明の高品質おからは、日持ち性、食品加工適性、保存性、及び食感、食味が優れているので、おからを汎用食材として利用することを実現するものであり、本発明は、おからの食材化を可能とするものとして高い技術的意義を有する。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の装置の一例を示す。
【図2】上記装置の縦断平面図である。
【図3】水蒸気発生蓄熱パネルの一例を示す。
【図4】水蒸気発生装置による気体水生成過程におけるチャンバー内の温度、湿度、酸素濃度、排気温度の測定結果を示す。
【図5】水蒸気(アクアガス)噴射ノズル付近の温度変化を示す。
【図6】装置内温度/水蒸気(アクアガス)温度の比較を示す。
【図7】装置内温度/水蒸気(アクアガス)温度の比較を示す。
【図8】115℃のアクアガスの温度時間曲線(庫内)を示す。
【図9】115℃のアクアガスの温度時間曲線(噴射ノズル部)を示す。
【図10】115℃の過熱水蒸気状態の温度の時間曲線(庫内及び噴射ノズル部)を示す。
【図11】115℃の飽和水蒸気状態の温度の時間曲線(庫内及び噴射ノズル部)を示す。
【符号の説明】
【0073】
1 加熱室
2 ドア部
3 ハンドル
4 窓
5 操作パネル
6 水蒸気発生蓄熱パネル
7 循環ファン
8 ダクト
8′ダクト
9 加熱ヒーター
10 循環風向
11 排出口
12 給水パネル
13 微細水蒸気噴出ノズル
14 噴出した微細水粒子
15 供給水の加熱装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定量の水を含むおからを、100℃以上に加熱された熱水及び/又は水蒸気を100℃以上に加熱された準密閉空間の加熱室内に連続的噴射させ、発生した微細水滴と水蒸気で該加熱室内の空気を置換させて湿度95%以上及び酸素濃度1%以下の組成を有し、90〜180℃の温度に保持された加熱媒体組成物を用いて加熱することを特徴とする高品質おからの製造方法。
【請求項2】
少なくとも20質量%のおからを上記加熱媒体組成物を用いて加熱する請求項1に記載の高品質おからの製造方法。
【請求項3】
所定量の水を含む被加熱材料のおからを加熱して高品質おからを製造する装置であって、少なくとも、被加熱材料を外気と遮断して加熱する準密閉状態の加熱室、該加熱室を100℃を越える所定の温度に加熱する加熱手段、100℃以上に加熱された熱水及び/又は水蒸気を上記加熱室内に導入して所定の方向に移送する微細水滴と水蒸気発生手段、を構成要素として含み、100℃以上に加熱された熱水及び/又は水蒸気を上記加熱室内に連続的に噴射させ、加熱室内部を常圧状態のまま微細水滴と水蒸気で充満させ、少なくとも湿度95%以上、酸素濃度1%以下の微細水滴と水蒸気で加熱室内部の空気を置換し、該微細水滴と水蒸気で加熱室内の被加熱材料を加熱するようにしたことを特徴とする高品質おからの製造装置。
【請求項4】
少なくとも20質量%の水を添加した被加熱材料のおからを加熱して高品質おからを製造する装置である請求項3に記載の高品質おからの製造装置。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の方法を用いて、所定量の水を含むおからを加熱処理したことを特徴とする高品質おから又は該高品質おからを含む高品質おから食品。
【請求項6】
請求項5に記載の高品質おからを食材として利用して高品質おから食品を製造することを特徴とする高品質おから食品の製造方法。
【請求項1】
所定量の水を含むおからを、100℃以上に加熱された熱水及び/又は水蒸気を100℃以上に加熱された準密閉空間の加熱室内に連続的噴射させ、発生した微細水滴と水蒸気で該加熱室内の空気を置換させて湿度95%以上及び酸素濃度1%以下の組成を有し、90〜180℃の温度に保持された加熱媒体組成物を用いて加熱することを特徴とする高品質おからの製造方法。
【請求項2】
少なくとも20質量%のおからを上記加熱媒体組成物を用いて加熱する請求項1に記載の高品質おからの製造方法。
【請求項3】
所定量の水を含む被加熱材料のおからを加熱して高品質おからを製造する装置であって、少なくとも、被加熱材料を外気と遮断して加熱する準密閉状態の加熱室、該加熱室を100℃を越える所定の温度に加熱する加熱手段、100℃以上に加熱された熱水及び/又は水蒸気を上記加熱室内に導入して所定の方向に移送する微細水滴と水蒸気発生手段、を構成要素として含み、100℃以上に加熱された熱水及び/又は水蒸気を上記加熱室内に連続的に噴射させ、加熱室内部を常圧状態のまま微細水滴と水蒸気で充満させ、少なくとも湿度95%以上、酸素濃度1%以下の微細水滴と水蒸気で加熱室内部の空気を置換し、該微細水滴と水蒸気で加熱室内の被加熱材料を加熱するようにしたことを特徴とする高品質おからの製造装置。
【請求項4】
少なくとも20質量%の水を添加した被加熱材料のおからを加熱して高品質おからを製造する装置である請求項3に記載の高品質おからの製造装置。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の方法を用いて、所定量の水を含むおからを加熱処理したことを特徴とする高品質おから又は該高品質おからを含む高品質おから食品。
【請求項6】
請求項5に記載の高品質おからを食材として利用して高品質おから食品を製造することを特徴とする高品質おから食品の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2007−61005(P2007−61005A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−251866(P2005−251866)
【出願日】平成17年8月31日(2005.8.31)
【出願人】(501203344)独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 (827)
【出願人】(591048324)株式会社タイヨー製作所 (10)
【出願人】(399029215)学校法人香川栄養学園 (4)
【出願人】(503002189)株式会社ローズコーポレーション (2)
【出願人】(599046254)有限会社梅田事務所 (11)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年8月31日(2005.8.31)
【出願人】(501203344)独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 (827)
【出願人】(591048324)株式会社タイヨー製作所 (10)
【出願人】(399029215)学校法人香川栄養学園 (4)
【出願人】(503002189)株式会社ローズコーポレーション (2)
【出願人】(599046254)有限会社梅田事務所 (11)
【Fターム(参考)】
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