説明

高圧を使用する、改善されたタンパク質脱凝集およびリフォールディング

【課題】高圧を使用して、タンパク質凝集体を脱凝集し、そして変性したタンパク質をリフォールディングする改善された方法を提供することを本発明の課題とする。
【解決手段】上記課題は、凝集体解離およびタンパク質リフォールディングの速度および程度を上昇させるための、圧力下での攪拌、高温、「段階的」減圧、透析および希釈の使用を提供することによって解決された。1つの局面において、本発明は、タンパク質凝集体から脱凝集した、生物学的に活性なタンパク質を生成する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の背景)
(1.発明の分野)
本発明は、一般的に、タンパク質生化学の分野に関連する。より詳細には、本発明は、ポリペプチド凝集体の再生およびリフォールディングのための改良した方法に関係する。
【背景技術】
【0002】
(2.関連技術の説明)
タンパク質の凝集体は、バイオテクノロジー、製薬、および医療業界で非常に重要である。インビトロにおいて、凝集体は、実質的にタンパク質治療薬の製造、リフォールディング、精製、保存、および運送における実質的にすべての段階でみられる(非特許文献1および2)。インビボでは、ヒトにおける多数の病原性の状態(例えば、アルツハイマー病、パーキンソン病、およびプリオン病(Kelly,1996;Kelly,1998;Prusiner,1998;Scherzingerら,1999))はタンパク質凝集体を有し、そしてその状態に関連した不溶性沈着物の形成を有する。その結果、これらの疾患における凝集体の特徴付けおよび凝集体の機構に関する研究は、医学研究の積極的な領域である。
【0003】
ヒトタンパク質の沈着疾患における凝集体は、不溶性原線維の形態での組織化を表し、一般的にタンパク質の誤アセンブリおよび凝集プロセスの研究に益々の意義をもたらしてきた(Wetzel,1999)。凝集の逆転および沈殿プロセスの研究は、治療タンパク質の製造、精製、および送達に即実践的な意味を有する。
【0004】
治療タンパク質の製造において、凝集沈殿物(例えば、封入体)は通常、カオトロープ(例えば、6M塩酸グアニジン)の高濃度の存在下で沈殿した凝集体の解離により逆転される。そのような過酷な条件は、脱凝集(溶解)およびタンパク質がほぼ完全にフォールディングされていない状態の両方を生じさせる。
【0005】
通常、リフォールディングは、透析を介したカオトロープの除去または約10〜50μg/mLのタンパク質濃度までの希釈によりもたらされる(Clarkら,1999)。なぜなら、リフォールディングは通常、一次(タンパク質濃度における)プロセスであり、凝集は2次またはより高次のプロセスであって、リフォールディングの収量は低タンパク質濃度で改善されるからである(Clarkら,1999)。可溶性凝集体はしばしば、ネイティブタンパク質から、高価で時間のかかるカラムクロマトグラフィーにより分離される。分離された可溶凝集体は代表的に廃棄され、これにより全タンパク質収量を減少させ、そしてタンパク質の産生はコストを実質的に増加させる。不溶性凝集体を解離するためのカオトロピックな解離または可溶凝集体を除去するためのカラム精製に代わるものは、圧力による脱凝集である(Foguelら,1999;Gorovits&Horowitz,1998;St.Johnら,1999)。
【0006】
いくつかの研究グループはネイティブなタンパク質オリゴマーを解離するために、圧力能を利用している(Silva&Weber,1993)。さらに、他の研究グループは、可溶性の非ネイティブタンパク質凝集体から(Foguelら,1999;Gorovits&Horowitz,1998)および沈殿した不溶性の非ネイティブ凝集体から(St.Johnら,1999)脱凝集およびタンパク質をリフォールドするための圧力の利用を研究した。GorovitsおよびHorowitz(1998)は、ロダネーゼの3.9Mの尿素溶液下で可溶凝集体の形成を阻害するため、そして可溶凝集体の形成を逆転させるために高圧力を使用した。しかし、Gorovits&Horowitz(1998)は、「圧力は多くの凝集体の逆転をし得ない」と報告している。P22テイルスパイク(tailspike)タンパク質から形成された可溶凝集体の90分間2.4キロバールでの処理は、凝集レベルを41.1%〜17.6%に下げた(Foguelら,1999)。
【0007】
St.Johnら(1999)は、封入体として形成された凝集体を含む、大きな不溶性凝集体から200MPaのオーダーの圧力で、ネイティブタンパク質を解離し、そして回収するために、高圧力を使用した。不溶性で、沈殿した凝集体からのリフォールドされた活性なヒト成長ホルモン、リゾチーム、およびβ−ラクタマーゼの高タンパク質濃度での高収率は、非変性濃度の塩酸グアニジンを圧力と併用して用いてか、または塩酸グアニジンのない条件下での圧力を用いて達成された。(St.Johnら,1999)。不溶性沈殿物を架橋するはたらきを有する非ネイティブ分子間共有ジスフィルド結合を含むリゾチームの不溶性凝集体の特定の場合では、高収率でフォールドした、生物学的に活性のあるタンパク質を産出するために、高圧力および0.8M塩酸グアニジンを併用して、還元グルタチオンおよび酸化グルタチオンの混合物のようなレドックスシャッフリング剤が用いられた。凝集および沈殿されたヒト成長ホルモンならびに凝集されたヒト成長ホルモンの特定の場合、可溶性ネイティブタンパク質の回収を最適化するために、塩酸グアニジンのような低レベルのカオトロピック剤が用いられた。B−ラクタマーゼ封入体の特定の場合では、塩酸グアニジンの添加は、生物学的に活性なB−ラクタマーゼの収率を増加させなかったが、夾雑タンパク質のより高い可溶化を引きおこした。
【0008】
この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、次のものがある。
【非特許文献1】Carpenter,J. F., Pikal, M. J., Chang, B. S., and Randolph, T.W. (1997).「Rational designof stable lyophilized protein formulations: Some practical advice.」PharmaceuticalResearch, 14 (8), 969-975.
【非特許文献2】Clark,E. D., Schwarz, E., and Rudolph, R. (1999).「Inhibition of aggregation sidereactions during in vitro protein folding.」Amyloid, Prions, and Other ProteinAggregates, Academic Press Inc, San Diego, 217-236.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
にもかかわらず、タンパク質凝集体の高圧力解離についての改良法および可溶性タンパク質のリフォールディングについての改良法が所望される。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(発明の要旨)
従って、本発明に従い、タンパク質の脱凝集およびリフォールディングにおける高圧力の使用についての改良法が提供される。ひとつの実施形態において、タンパク質の凝集体から生物学的に活性のある脱凝集タンパク質を生成する方法が提供される。この方法は、以下を包含する:
(i)タンパク質凝集体を提供する工程;
(ii)凝集体の中にあるジスフィルド結合を還元するために十分な量の還元剤と、このタンパク質凝集体を混合する工程;
(iii)工程(ii)の混合物を、雰囲気圧と比較して高い圧力に供する工程であって、これによりこのタンパク質凝集体が解離する工程;
(iv)圧力下でこの混合物を透析する工程であって、これによりこの還元剤が除去され、そしてジスルフィド結合を再形成する、工程;および
(v)高い圧力から解離タンパク質を取り出す工程であって、
これにより、生物学的活性を保持するようにこの上記タンパク質がリフォールドする、工程。この方法は解離および/もしくはリフォールディングを増強するために、このタンパク質凝集体および/もしくは解離したタンパク質を攪拌する工程をさらに包含し得るか;または、リフォールディングの前に約30℃〜約125℃の温度にこのタンパク質凝集体を供する工程をさらに含み得る。この方法は、必要に応じて、カオトロピック剤を排除し得る。適切な還元剤としては、ジオチオトレイトール、グルタチオン、ジチオエリトリトール、またはβ−メルカプトエタノールが挙げられる。高い圧力は約500気圧〜約10,000気圧を含み得る。
【0011】
(ii)〜(v)の工程は約3時間〜約12時間、特に約6時間で実施され得る。(ii)および(iii)の工程は、カオトロピック剤の存在下でおこなわれ得、この方法はこのカオトロピック剤を除去する工程をさらに包含し得る。適切なカオトロピック剤としては、グアニジン、硫酸グアニジン、塩酸グアニジン、尿素、チオシアネート、サルコシル、ドデシル硫酸ナトリウム、またはオクチル硫酸ナトリウムが挙げられる。
【0012】
タンパク質凝集体は、封入体、可溶性および不溶性沈殿物、可溶性非ネイティブオリゴマー、ゲル、原線維、フィルム、フィラメント、プロト原線維、アミロイド沈着物、プラーク、または分散した非ネイティブな細胞内オリゴマーを含み得る。タンパク質凝集体はまた、高濃度で、例えば、約5〜20mg/ml、またはより特には、約10mg/mlの濃度で、圧力に供され得る。次いで、タンパク質凝集体は、圧力下で、例えば約1mg/mlに希釈され得る。
【0013】
他の実施形態として、タンパク質の凝集体から生物学的に活性のある脱凝集タンパク質を生成する方法が提供される。この方法は、以下を包含する:
(i)タンパク質凝集体を提供する工程;
(ii)このタンパク質凝集体を、雰囲気圧と比較して高い圧力および攪拌に供する工程であって、これによりこのタンパク質凝集体が解離する工程;および
(iii)高い圧力から解離タンパク質を取り出す工程であって、
これにより、生物学的活性を保持するようにこのタンパク質がリフォールドする、工程。この方法は、リフォールディングを増強するために、解離したタンパク質を攪拌する工程をさらに包含し得る。攪拌は超音波エネルギー、機械的攪拌、振とう、または静止装置をとおしたポンピング(pumping)により提供され得る。この方法は、リフォールディングの前に、約30℃〜約80℃の温度にこのタンパク質凝集体を供する工程をさらに含み得る。必要に応じて、この方法はカオトロピック剤を利用しない。高い圧力は、約500気圧〜約10,000気圧を含み得る。
【0014】
(ii)〜(v)の工程は、約3時間〜約12時間、特に、約6時間で実施され得る。(ii)および(iii)の工程は、カオトロピック剤の存在下でおこなわれ得、上記方法は、このカオトロピック剤を除去する工程をさらに包含し得る。適切なカオトロピック剤としては、グアニジン、硫酸グアニジン、塩酸グアニジン、尿素、チオシアネート、サルコシル、ドデシル硫酸ナトリウム、またはオクチル硫酸ナトリウムが挙げられる。
【0015】
この方法はさらに、タンパク質凝集体中のジスルフィド結合を還元するために十分な量の還元剤と、このタンパク質凝集体を混合する工程を含み得る;そしてさらに、圧力下でこの混合物を透析し、これにより、この還元剤を除去し、そしてジスルフィド結合を再形成する工程を含み得る。還元剤は、ダイアフィルトレーションまたは限外濾過により取り除かれ得るか、あるいは酸化剤の添加によって打ち消され得る。適切な還元剤は、ジチオトレイトール(diothiothreitol)、グルタチオン、ジチオエリトリトール、またはβ−メルカプトエタノールである。
【0016】
このタンパク質凝集体は、封入体、可溶性および不溶性沈殿物、可溶性非ネイティブオリゴマー、ゲル、原線維、フィルム、フィラメント、プロト原線維、アミロイド沈着物、プラーク、または分散した非ネイティブ細胞内オリゴマーを含み得る。このタンパク質凝集体はまた、高濃度で、例えば、約5〜20mg/ml、またはより特に、約10mg/mlである濃度で、圧力に供され得る。次いで、タンパク質凝集体は、圧力下で、例えば、約1mg/mlに希釈され得る。
【0017】
さらに別の実施形態として、タンパク質凝集体から生物学的に活性のある脱凝集タンパク質を生成する方法が提供される。この方法は、以下を包含する:
(i)タンパク質凝集体を提供する工程;
(ii)このタンパク質凝集体を、雰囲気圧と比較して高い圧力および約30℃〜約125℃の高い温度に供する工程であって、これによりこのタンパク質凝集体が解離する、工程;および
(iii)高い圧力および高い温度から解離タンパク質を取り出す工程であって、
これにより、生物学的活性を保持するようにこのタンパク質がリフォールドする、工程。必要に応じて、この方法はカオトロピック剤を利用しない。この方法は、解離および/もしくはリフォールディングを増強するために、このタンパク質凝集体および/もしくは解離したタンパク質を攪拌する工程をさらに包含し得るか;または、この方法はさらに、タンパク質凝集体中のジスルフィド結合を還元するために十分な量の還元剤と、このタンパク質凝集体を混合する工程を含み得る。圧力下でこの混合物を透析し得、これにより上記還元剤を除去し、そしてジスルフィド結合を再形成する。あるいは、還元剤Iが、ダイアフィルトレーションまたは限外濾過により取り除かれるか、あるいは酸化剤の添加によって打ち消される。適切な還元剤としては、ジチオトレイトール(diothiothreitol)、グルタチオン、ジチオエリトリトール、またはβ−メルカプトエタノールが挙げられる。高い圧力は約500気圧〜約10,000気圧を含み得る。
【0018】
(ii)〜(v)の工程は、約3時間〜約12時間、特に、約6時間で実施され得る。(ii)および(iii)の工程は、カオトロピック剤の存在下でおこなわれ得、そしてこの方法はこのカオトロピック剤を除去する工程をさらに包含し得る。適切なカオトロピック剤としては、グアニジン、硫酸グアニジン、塩酸グアニジン、尿素、チオシアネート、サルコシル、ドデシル硫酸ナトリウム、またはオクチル硫酸ナトリウムが挙げられる。
【0019】
このタンパク質凝集体は、封入体、可溶性および不溶性沈殿物、可溶性非ネイティブオリゴマー、ゲル、原線維、フィルム、フィラメント、プロト原線維、アミロイド沈着物、プラーク、または分散した非ネイティブ細胞内オリゴマーを含み得る。タンパク質凝集体はまた、高濃度で、例えば、約5〜20mg/ml、またはより特に、約10mg/mlの濃度で、圧力に供され得る。次いで、タンパク質凝集体は、圧力下で、例えば、約1mg/mlに希釈され得る。
【0020】
なお、さらに他の実施形態として、タンパク質の凝集体から生物学的に活性のある脱凝集タンパク質を生成する方法が提供される。この方法は、以下を包含する:
(i)タンパク質凝集体を提供する工程;
(ii)凝集体の中にあるジスフィルド結合を還元するために十分な量の還元剤と、このタンパク質凝集体を混合する工程;
(iii)工程(ii)の混合物を、雰囲気圧と比較して高い圧力、約30℃〜約125℃の高温および攪拌に供する工程であって、これによりこのタンパク質凝集体が解離する、工程;
(iv)この還元剤を除去または中和することにより、ジスルフィド結合を再形成する、工程;ならびに、
(v)高い圧力および高温から解離タンパク質を取り出す工程であって、
これにより、生物学的活性を保持するようにこのタンパク質がリフォールドする、工程。必要に応じて、この方法はカオトロピック剤を利用しない。この方法は、圧力下で上記混合物を透析し、これにより、上記還元剤を除去し、そしてジスルフィド結合を再形成する工程をさらに含み得るか;あるいは、この方法は、ダイアフィルトレーションまたは限外濾過によりこの還元剤を除去する工程をさらに含み得る。あるいは、この還元剤の効果は、酸化剤の添加によって打ち消される。適切な還元剤としては、ジチオトレイトール(diothiothreitol)、グルタチオン、ジチオエリトリトール、またはβ−メルカプトエタノールが挙げられる。高い圧力は約500気圧〜約10,000気圧を含み得る。
【0021】
(ii)〜(iii)の工程は、約1時間〜約12時間、特に約6時間で実施され得る。このタンパク質凝集体は、封入体、可溶性および不溶性沈殿物、可溶性非ネイティブオリゴマー、ゲル、原線維、フィルム、フィラメント、プロト原線維、アミロイド沈着物、プラーク、または分散した非ネイティブ細胞内オリゴマーを含み得る。このタンパク質凝集体はまた、高濃度、例えば、約5〜20mg/ml、またはより特に、約10mg/mlの濃度で、圧力に供され得る。次いで、タンパク質凝集体は、圧力下で、例えば、約1mg/mlに希釈され得る。
【0022】
(ii)および(iii)の工程は、カオトロピック剤の存在下でおこなわれ得、この方法はこのカオトロピック剤を除去する工程をさらに包含する。適切なカオトロピック剤としては、グアニジン、硫酸グアニジン、塩酸グアニジン、尿素、チオシアネート、サルコシル、ドデシル硫酸ナトリウム、またはオクチル硫酸ナトリウムが挙げられる。
【0023】
さらなる実施形態として、タンパク質の凝集体から生物学的に活性のある脱凝集タンパク質を生成する方法が提供される。この方法は、以下を包含する:
(i)タンパク質凝集体を提供する工程;
(ii)このタンパク質凝集体を、雰囲気圧と比較して高い第1圧力に供する工程であって、これによりこのタンパク質凝集体が解離する、工程;
(iii)解離タンパク質を、上記の高い第1圧力より低いが、雰囲気圧と比較するとなお高い圧力である第2圧力を供する工程、および
(iv)この高い第2圧力から解離タンパク質を取り出す工程であって、
これにより、生物学的活性を保持するようにこのタンパク質がリフォールドする、工程。高い第1圧力は、約200MPa〜約1,000MPaであり得る。高い第2圧力は、約100MPaであり得る。この方法は、圧力下でこのタンパク質を攪拌する工程をさらに包含し得る;もしくは、この方法は、高温、例えば約30℃〜約125℃の高温に、このタンパク質を供する工程をさらに含み得る。
【0024】
この方法は、加圧の前に、タンパク質凝集体を還元剤と混合する工程をさらに含み得る。この方法はまた、圧力下で上記混合物を透析する工程を含み得、これにより上記還元剤を除去し、そしてジスルフィド結合を再形成する。あるいは、還元剤は、ダイアフィルトレーションまたは限外濾過により取り出される。あるいは、還元剤は、酸化剤の添加によって打ち消される。還元剤としては、ジチオトレイトール(diothiothreitol)、グルタチオン、ジチオエリトリトール、またはβ−メルカプトエタノールが挙げられる。
【0025】
このタンパク質凝集体はまた、高濃度、例えば、約5〜20mg/ml、またはより特に、約10mg/mlの濃度で、圧力に供され得る。次いで、タンパク質凝集体は、圧力下で、例えば、約1mg/mlに希釈され得る。
【0026】
(ii)〜(iv)の工程は、約3時間〜約12時間、またはより特に、約6時間で実施され得る。必要に応じて、この方法は、カオトロピック剤を排除する。(ii)〜(iv)の工程は、カオトロピック剤の存在下でおこなわれ得、そしてこの方法は、このカオトロピック剤を除去する工程をさらに包含する。適切なカオトロピック剤としては、グアニジン、硫酸グアニジン、塩酸グアニジン、尿素、チオシアネート、サルコシル、ドデシル硫酸ナトリウム、またはオクチル硫酸ナトリウムが挙げられる。
【0027】
タンパク質凝集体は、タンパク質多量体、たとえばヘテロ多量体またはホモ多量体を含み得る。多量体は、二量体、三量体、四量体、五量体、六量体、七量体、八量体、および九量体からなる群から選択され得る。多量体タンパク質の例としては、インターフェロン−γ、ヘモグロビン、乳酸デヒドロゲナーゼ、抗体および抗体フラグメントが挙げられる。
【0028】
上述のすべての方法は、可溶性の変性タンパク質上でも同様に実施され得る。
【0029】
さらなる実施形態としては、以下が提供される;
カオトロープ、界面活性剤、および/もしくは加温による解離に対してタンパク質凝集体を感受性にする方法であって、1つ以上のカオトロープ、界面活性剤、および/もしくは加温と組み合わせて、高圧に、このタンパク質凝集体を供する工程を包含する方法であって、;
タンパク質サンプルの有効期間を増加させる方法であって、高圧に続いて減圧を適用することにより、可溶タンパク質凝集体を取り出す工程を包含する方法;
リフォールディング状態についてタンパク質組成物をスクリーニングする方法であって、以下:
(i)物理的に異なる複製サンプル中のタンパク質組成物を提供する工程;
(ii)高圧および温度変化、pHを変化させた緩衝液、塩濃度を変化させた緩衝液、タンパク質濃度変化、還元剤濃度変化、安定剤の変化、カオトロピック剤の変化、界面活性剤変化、表面活性剤の変化を含む、異なる条件に、この複製サンプルを供する工程;および
(iii)高圧からこの複製サンプルを取り出す工程;および
(iv)タンパク質のリフォールディングを評価する工程、
を包含する方法;
目的のタンパク質を含有するサンプルにおいてウイルスを不活性化する方法であって、以下:
(i)ネイティブもしくは非ネイティブ状態にある、所望されるタンパク質を含有するサンプルを提供する工程;
(ii)このサンプルを、そのサンプル中の感染性のウイルス粒子を低減もしくは排除させるために処理する工程;および
(iii)このサンプルを、高圧のタンパク質リフォールディング手順に供する工程、
を包含する方法;
ならびに、タンパク質凝集体からの、生物学的に活性な脱凝集タンパク質を生成する方法であって、以下:
(i)タンパク質凝集体を提供する工程;
(ii)工程(i)の混合物を、雰囲気圧と比較して高い圧力、約30℃〜約125℃の高温、および攪拌に供する工程であって、これによりこのタンパク質凝集体が解離する、工程;
(iii)透析により、工程(ii)の混合物のpHを変化させる工程;ならびに
(iv)高い圧力および高温から、解離タンパク質を取り出す工程であって、これにより生物学的に活性を保持するようにこの上記タンパク質がリフォールドする、工程、
を包含する方法。
【0030】
また、本発明は、以下を提供する。
(項目1) タンパク質凝集体から脱凝集した、生物学的に活性なタンパク質を生成する方法であって、該方法は、以下の工程:
(i)タンパク質凝集体を提供する工程;
(ii)該タンパク質凝集体を、その中のジスルフィド結合を還元するために十分量の還元剤と混合する工程;
(iii)工程(ii)の混合物を、周囲圧力と比べて増加した圧力に供する工程であって、ここで、該タンパク質凝集体が解離する、工程;
(iv)該混合物を圧力下で透析し、これにより該還元剤を除去し、そしてジスルフィド結合を再形成する、工程;および
(v)増加した圧力から該解離したタンパク質を回収する工程、
を包含し、これによって、該タンパク質は、生物学的活性が保持されるように、リフォールディングする、方法。
(項目2) 解離および/またはリフォールディングを増強するために前記タンパク質凝集体および/または解離したタンパク質を攪拌する工程をさらに包含する、項目1に記載の方法。
(項目3) リフォールディングの前に、前記タンパク質凝集体を約30℃〜約125℃の温度に供する工程をさらに包含する、項目1に記載の方法。
(項目4) カオトロピック剤を利用しない、項目3に記載の方法。
(項目5) 前記還元剤が、ジチオトレイトール、グルタチオン、ジチオエリトリオールまたはβ−メルカプトエタノールである、項目1に記載の方法。
(項目6) 前記増加した圧力が、約500気圧〜約10,000気圧を含む、項目1に記載の方法。
(項目7) 工程(ii)〜(v)が約3時間〜約12時間実施される、項目1に記載の方法。
(項目8) 工程(ii)〜(v)が約6時間実施される、項目7に記載の方法。
(項目9) 工程(ii)および(iii)が、カオトロピック剤の存在下で実施され、該カオトロピック剤を除去する工程をさらに包含する、項目1に記載の方法。
(項目10) 前記カオトロピック剤が、グアニジン、硫酸グアニジン、塩酸グアニジン、尿素、チオシアネート、ザルコシル、ドデシル硫酸ナトリウムまたはオクチル硫酸ナトリウムである、項目8に記載の方法。
(項目11) 前記タンパク質凝集体が、封入体、可溶性沈降物および不溶性沈降物、可溶性非ネイティブオリゴマー、ゲル、フィブリル、フィルム、フィラメント、プロトフィブリル、アミロイド沈着、斑、または分散した非ネイティブ細胞内オリゴマーを含む、項目1に記載の方法。
(項目12) タンパク質凝集体から脱凝集した、生物学的に活性なタンパク質を生成する方法であって、該方法は、以下の工程:
(i)タンパク質凝集体を提供する工程;
(ii)該タンパク質凝集体を、周囲圧力と比べて増加した圧力、および攪拌に供する工程であって、これにより該タンパク質凝集体が解離する、工程;ならびに
(iii)増加した圧力から該解離したタンパク質を回収する工程、
を包含する方法であって、
これにより、該タンパク質は、生物学的活性が保持されるようにリフォールディングされる、方法。
(項目13) リフォールディングを増強するために前記解離したタンパク質を攪拌する工程をさらに包含する、項目12に記載の方法。
(項目14) リフォールディングの前に、前記タンパク質凝集体を約30℃〜約80℃の温度に供する工程をさらに包含する、項目12に記載の方法。
(項目15) カオトロピック剤を利用しない、項目14に記載の方法。
(項目16) 前記増加した圧力が、約500気圧〜約10,000気圧を含む、項目12に記載の方法。
(項目17) 工程(ii)〜(iii)が約3時間〜約12時間実施される、項目12に記載の方法。
(項目18) 工程(ii)〜(iii)が約6時間実施される、項目17に記載の方法。
(項目19) 工程(ii)および(iii)が、カオトロピック剤の存在下で実施され、該カオトロピック剤を除去する工程をさらに包含する、項目12に記載の方法。
(項目20) 前記カオトロピック剤が、グアニジン、硫酸グアニジン、塩酸グアニジン、尿素、チオシアネート、ザルコシル、ドデシル硫酸ナトリウムまたはオクチル硫酸ナトリウムである、項目19に記載の方法。
(項目21) 前記タンパク質凝集体を、その中のジスルフィド結合を還元するために十分量の還元剤と混合する工程をさらに包含する、項目12に記載の方法。
(項目22) 前記混合物を圧力下で透析する工程をさらに包含し、これにより該還元剤を除去し、そしてジスルフィド結合が再形成する、項目21に記載の方法。
(項目23) 前記還元剤を、ダイアフィルトレーションまたは限外濾過によって除去する工程をさらに包含する、項目21に記載の方法。
(項目24) 酸化剤の添加によって前記還元剤の効果を打ち消す工程をさらに包含する、項目21に記載の方法。
(項目25) 前記還元剤が、ジチオトレイトール、グルタチオン、ジチオエリトリオールまたはβ−メルカプトエタノールである、項目21に記載の方法。
(項目26) 前記タンパク質凝集体が、封入体、可溶性沈降物および不溶性沈降物、可溶性非ネイティブオリゴマー、ゲル、フィブリル、フィルム、フィラメント、プロトフィブリル、アミロイド沈着、斑、または分散した非ネイティブ細胞内オリゴマーを含む、項目12に記載の方法。
(項目27) タンパク質凝集体から脱凝集した、生物学的に活性なタンパク質を生成する方法であって、該方法は、以下の工程:
(i)タンパク質凝集体を提供する工程;
(ii)該タンパク質凝集体を、周囲圧力と比べて増加した圧力、および約30℃〜約125℃の温度に供する工程であって、これにより該タンパク質凝集体は解離する、工程;ならびに
(iii)増加した圧力および高温から該解離したタンパク質を回収する工程、
を包含する方法であって、
これにより、該タンパク質は、生物学的活性が保持されるようにリフォールディングされる、方法。
(項目28) カオトロピック剤を利用しない、項目27に記載の方法。
(項目29) 解離および/またはリフォールディングを増強するために前記タンパク質凝集体および/または解離したタンパク質を攪拌する工程をさらに包含する、項目27に記載の方法。
(項目30) 前記タンパク質凝集体を、その中のジスルフィド結合を還元するために十分量の還元剤と混合する工程をさらに包含する、項目27に記載の方法。
(項目31) 前記混合物を圧力下で透析する工程をさらに包含し、これにより該還元剤を除去し、そしてジスルフィド結合が再形成する、項目30に記載の方法。
(項目32) 前記還元剤を、ダイアフィルトレーションまたは限外濾過によって除去する工程をさらに包含する、項目30に記載の方法。
(項目33) 酸化剤の添加によって前記還元剤の効果を打ち消す工程をさらに包含する、項目30に記載の方法。
(項目34) 前記還元剤が、ジチオトレイトール、グルタチオン、ジチオエリトリオールまたはβ−メルカプトエタノールである、項目30に記載の方法。
(項目35) 前記増加した圧力が、約500気圧〜約10,000気圧を含む、項目27に記載の方法。
(項目36) 工程(ii)〜(iii)が約3時間〜約12時間実施される、項目27に記載の方法。
(項目37) 工程(ii)〜(iii)が約6時間実施される、項目36に記載の方法。
(項目38) 前記タンパク質凝集体が、封入体、可溶性沈降物および不溶性沈降物、可溶性非ネイティブオリゴマー、ゲル、フィブリル、フィルム、フィラメント、プロトフィブリル、アミロイド沈着、斑、または分散した非ネイティブ細胞内オリゴマーを含む、項目27に記載の方法。
(項目39) 工程(ii)および(iii)が、カオトロピック剤の存在下で実施され、該カオトロピック剤を除去する工程をさらに包含する、項目27に記載の方法。
(項目40) 前記カオトロピック剤が、グアニジン、硫酸グアニジン、塩酸グアニジン、尿素、チオシアネート、ザルコシル、ドデシル硫酸ナトリウムまたはオクチル硫酸ナトリウムである、項目39に記載の方法。
(項目41) タンパク質凝集体から脱凝集した、生物学的に活性なタンパク質を生成する方法であって、該方法は、以下の工程:
(i)タンパク質凝集体を提供する工程;
(ii)該タンパク質凝集体を、その中のジスルフィド結合を還元するために十分量の還元剤と混合する工程;
(iii)工程(ii)の混合物を、周囲圧力と比べて増加した圧力,約30℃〜約125℃の高温、および攪拌に供する工程であって、ここで、該タンパク質凝集体が解離する、工程;
(iv)該還元剤を除去または中和する工程であって、これによりジスルフィド結合が再形成する、工程;ならびに
(v)増加した圧力および高温から該解離したタンパク質を回収する工程、
を包含する方法であって、
これにより、該タンパク質は、生物学的活性が保持されるようにリフォールディングされる、方法。
(項目42) カオトロピック剤を利用しない、項目41に記載の方法。
(項目43) 前記混合物を圧力下で透析する工程をさらに包含し、これにより該還元剤を除去し、そしてジスルフィド結合が再形成する、項目41に記載の方法。
(項目44) 前記還元剤を、ダイアフィルトレーションまたは限外濾過によって除去する工程をさらに包含する、項目41に記載の方法。
(項目45) 酸化剤の添加によって前記還元剤の効果を打ち消す工程をさらに包含する、項目41に記載の方法。
(項目46) 前記還元剤が、ジチオトレイトール、グルタチオン、ジチオエリトリオールまたはβ−メルカプトエタノールである、項目41に記載の方法。
(項目47) 前記増加した圧力が、約500気圧〜約10,000気圧を含む、項目41に記載の方法。
(項目48) 工程(ii)〜(iii)が約1時間〜約12時間実施される、項目41に記載の方法。
(項目49) 工程(ii)〜(iii)が約6時間実施される、項目48に記載の方法。
(項目50) 前記タンパク質凝集体が、封入体、可溶性沈降物および不溶性沈降物、可溶性非ネイティブオリゴマー、ゲル、フィブリル、フィルム、フィラメント、プロトフィブリル、アミロイド沈着、斑、または分散した非ネイティブ細胞内オリゴマーを含む、項目41に記載の方法。
(項目51) 工程(ii)および(iii)が、カオトロピック剤の存在下で実施され、該カオトロピック剤を除去する工程をさらに包含する、項目41に記載の方法。
(項目52) 前記カオトロピック剤が、グアニジン、硫酸グアニジン、塩酸グアニジン、尿素、チオシアネート、ザルコシル、ドデシル硫酸ナトリウムまたはオクチル硫酸ナトリウムである、項目51に記載の方法。
(項目53) タンパク質凝集体から脱凝集した、生物学的に活性なタンパク質を生成する方法であって、該方法は、以下の工程:
(i)タンパク質凝集体を提供する工程;
(ii)該タンパク質凝集体を、周囲圧力と比べて第1の増加した圧力に供する工程であって、ここで、該タンパク質凝集体が解離する、工程;
(iii)該解離したタンパク質を、該第1の増加した圧力より低いが周囲圧力と比べてなお増加した圧力である、第2の圧力に供する工程;ならびに
(iv)該第2の増加した圧力から該解離したタンパク質を回収する工程、
を包含する方法であって、
これにより、該タンパク質は、生物学的活性が保持されるようにリフォールディングされる、方法。
(項目54) 該第1の増加した圧力が約200MPa〜約1000MPaである、項目53に記載の方法。
(項目55) 該第2の増加した圧力が約100MPaである、項目53に記載の方法。
(項目56) 圧力下での前記タンパク質の攪拌をさらに包含する、項目53に記載の方法。
(項目57) 前記タンパク質を高温に供する工程をさらに包含する、項目53に記載の方法。
(項目58) 前記高温が約30℃〜約125℃である、項目57に記載の方法。
(項目59) 増加した圧力の前に、前記タンパク質凝集体を還元剤と混合する工程をさらに包含する、項目53に記載の方法。
(項目60) 前記混合物を圧力下で透析する工程をさらに包含し、これにより該還元剤を除去し、そしてジスルフィド結合が再形成する、項目59に記載の方法。
(項目61) 前記還元剤を、ダイアフィルトレーションまたは限外濾過によって除去する工程をさらに包含する、項目59に記載の方法。
(項目62) 酸化剤の添加によって前記還元剤の効果を打ち消す工程をさらに包含する、項目59に記載の方法。
(項目63) 前記還元剤が、ジチオトレイトール、グルタチオン、ジチオエリトリオールまたはβ−メルカプトエタノールである、項目59に記載の方法。
(項目64) 前記タンパク質凝集体が、高濃度で圧力に供される、項目53に記載の方法。
(項目65) 前記高濃度が約5〜20mg/mlである、項目64に記載の方法。
(項目66) 前記高濃度が約10mg/mlである、項目65に記載の方法。
(項目67) 前記タンパク質凝集体が圧力下で希釈される、項目65に記載の方法。
(項目68) 前記タンパク質凝集体が約1mg/mlに希釈される、項目67に記載の方法。
(項目69) 工程(ii)〜(iv)が約3時間〜約12時間実施される、項目53に記載の方法。
(項目70) 工程(ii)〜(iv)が約6時間実施される、項目53に記載の方法。
(項目71) カオトロピック剤を利用しない、項目53に記載の方法。
(項目72) 工程(ii)〜(iv)が、カオトロピック剤の存在下で実施され、該カオトロピック剤を除去する工程をさらに包含する、項目53に記載の方法。
(項目73) 前記カオトロピック剤が、グアニジン、硫酸グアニジン、塩酸グアニジン、尿素、チオシアネート、ザルコシル、ドデシル硫酸ナトリウムまたはオクチル硫酸ナトリウムである、項目72に記載の方法。
(項目74) 前記タンパク質凝集体がタンパク質マルチマーを含む、項目53に記載の方法。
(項目75) 前記マルチマーがヘテロマルチマーである、項目74に記載の方法。
(項目76) 前記マルチマーがホモマルチマーである、項目74に記載の方法。
(項目77) 前記マルチマーが、ダイマー、トリマー、テトラマー、ペンタマー、ヘキサマー、ヘプタマー、オクタマーおよびノナマーからなる群より選択される、項目74に記載の方法。
(項目78) 前記マルチマーが、インターフェロン−γ、ヘモグロビン、乳酸デヒドロゲナーゼ、抗体および抗体フラグメントからなる群より選択される、項目74に記載の方法。
(項目79) 変性したタンパク質をリフォールディングする方法であって、該方法は、以下の工程:
(i)変性したタンパク質組成物を提供する工程;
(ii)該タンパク質組成物を、その中のジスルフィド結合を還元するために十分量の還元剤と混合する工程;
(iii)工程(ii)の該混合物を、周囲圧力と比べて増加した圧力に供する工程;
(iv)該混合物を圧力下で透析する工程であって、これにより該還元剤を除去しそしてジスルフィド結合を再形成させる工程;ならびに
(v)増加した圧力から該タンパク質組成物を回収する工程、
を包含する方法であって、
これにより、該タンパク質は、生物学的活性が保持されるようにリフォールディングされる、方法。
(項目80) 変性したタンパク質をリフォールディングする方法であって、該方法は、以下の工程:
(i)タンパク質組成物を提供する工程;
(ii)該タンパク質組成物を、周囲圧力と比べて増加した圧力、および攪拌に供し、これにより該タンパク質凝集体が解離する工程;ならびに
(iii)増加した圧力から該タンパク質組成物を回収する工程、
を包含する方法であって、
これにより、該タンパク質は、生物学的活性が保持されるようにリフォールディングされる、方法。
(項目81) 変性したタンパク質をリフォールディングする方法であって、該方法は、以下の工程:
(i)タンパク質組成物を提供する工程;
(ii)該タンパク質組成物を、周囲圧力と比べて増加した圧力、および約30℃〜約125℃の高温に供する工程;ならびに
(iii)増加した圧力および高温から該タンパク質組成物を回収する工程、
を包含する方法であって、
これにより、該タンパク質は、生物学的活性が保持されるようにリフォールディングされる、方法。
(項目82) 変性したタンパク質をリフォールディングする方法であって、該方法は、以下の工程:
(i)タンパク質組成物を提供する工程;
(ii)該タンパク質組成物を、その中のジスルフィド結合を還元するために十分量の還元剤と混合する工程;
(iii)工程(ii)の該混合物を、周囲圧力と比べて増加した圧力、および約30℃〜約125℃の高温、および攪拌に供する工程;
(iv)該還元剤を除去または中和する工程であって、それによってジスルフィド結合が再形成させる工程;ならびに
(v)増加した圧力および高温から該タンパク質組成物を回収する工程、
を包含する方法であって、
これにより、該タンパク質は、生物学的活性が保持されるようにリフォールディングされる、方法。
(項目83) 変性したタンパク質をリフォールディングする方法であって、該方法は、以下の工程:
(i)タンパク質組成物を提供する工程;
(ii)該タンパク質組成物を、周囲圧力と比べて第1の増加した圧力に供する工程;
(iii)該タンパク質組成物を、該第1の増加した圧力より低いが周囲圧力と比べてなお増加した圧力である、第2の圧力に供する工程;ならびに
(iv)該第2の増加した圧力から該タンパク質を回収する工程、
を包含する方法であって、
これにより、該タンパク質は、生物学的活性が保持されるようにリフォールディングされる、方法。
(項目84) タンパク質凝集体を、カオトロピック剤、洗浄剤および/または上昇した温度による解離に感受性にさせる方法であって、該方法は、該タンパク質凝集体を、1つ以上のカオトロピック剤、洗浄剤および/または上昇した温度と組合わせて高圧に供する工程を包含する、方法。
(項目85) リフォールディング条件についてタンパク質組成物をスクリーニングする方法であって、該方法は、以下の工程:
(i)生理学的に異なる複製サンプル中にタンパク質組成物を提供する工程;
(ii)該複製サンプルを、以下を含む異なる条件に供する工程:高圧および種々の温度、種々のpHの緩衝液、種々の塩濃度の緩衝液、種々のタンパク質濃度、種々の還元剤濃度、種々の安定化剤、種々のカオトロピック剤、種々の洗浄剤、種々の界面活性剤;
(iii)該複製サンプルを高圧から回収する工程;ならびに
(iv)タンパク質リフォールディングを評価する工程、
を包含する、方法。
(項目86) 所望のタンパク質を含むサンプル中のウイルスを不活化する方法であって、該方法は、以下の工程:
(i)該所望のタンパク質を含むサンプルを提供する工程であって、該タンパク質がネイティブな状態または非ネイティブな状態にある、工程;
(ii)その他の感染性ウイルス粒子を減少または除去するために該サンプルを処理する工程;
(iii)該サンプルを、高圧タンパク質リフォールディング手順に供する工程、
を包含する、方法。
(項目87) 前記サンプルが、HIV−1、HIV−2、A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、パルボウイルス、単純ヘルペスウイルスIおよびII、エプスタインバーウイルス、HHV6およびサイトメガロウイルスを含むか、または含むと予想される、項目86に記載の方法。
(項目88) 前記サンプルが、血漿、血液、血漿由来タンパク質産物、培養ヒト細胞由来タンパク質産物、血清、または血清含有細胞培養培地である、項目86に記載の方法。
(項目89) 前記高圧タンパク質リフォールディング手順が、高温、カオトロピック剤、可溶化剤、還元剤、攪拌および「段階的」減圧からなる群より選択される処理の1つ以上をさらに含む、項目86に記載の方法。
(項目90) 高圧、次いで、減圧を適用することによって、可溶性タンパク質凝集体を除去する工程を包含する、タンパク質サンプルの保存期を増加させる、方法。
(項目91) タンパク質凝集体から脱凝集した、生物学的に活性なタンパク質を生成する方法であって、該方法は、以下の工程:
(i)タンパク質凝集体を提供する工程;
(ii)工程(i)の混合物を、周囲圧力と比べて増加した圧力、約30℃〜約125℃の高温、および攪拌に供する工程であって、これによって、該タンパク質凝集体が解離する、工程;
(iii)透析によって工程(ii)の混合物のpHを変化させる工程;および
(iv)増加した圧力および高温から該解離したタンパク質を回収する工程、
を包含する方法であって、
これにより、該タンパク質は、生物学的活性が、保持されるようにリフォールディングする、方法。
【0031】
(例示的実施形態の説明)
(I.本発明)
明らかではないが、可溶性の凝集体は、タンパク質産物を生産する場合、極めて困難かつ有害な問題を提示する。可溶性凝集体は、産物の価値を低下させ、そして薬学的調製物の場合、患者において致死的であり得る危険なアナフィラキシー反応を引き起こし得る。多くの処理工程は、可溶性凝集体の形成を引き起こし得、この工程としては、濾過、限外濾過、抽出、沈降、結晶化、噴霧/凍結乾燥、濃縮およびクロマトグラフィーが挙げられる。濾過は、可溶性凝集体のさらなる形成を生じ得るため、これらの凝集体の除去は、極めて複雑でありかつ困難である。実際に、市販のタンパク質産物は、処方物中の可溶性凝集体の含量によりしばしば等級化されており、そして産物の価値は、可溶性凝集体における比較的小さな低減(2〜5%)により、劇的に改善され得る。ヒト血清アルブミンは、凝集体の低減により価値が向上された、優れた産物の例である。
【0032】
同様に、非天然タンパク質の不溶性沈降物は、タンパク質の生産、精製、パッケージング、貯蔵、輸送(shipping)および送達の間にしばしば形成される。これらの凝集体は、非経口投与された産物の場合に、ヒトの健康に有害である。なぜなら、これらの凝集体は、アナフィラキシー・ショックを含む、深刻な免疫応答を誘発し得る。さらに、組換え体細胞の培養物におけるヒトタンパク質の合成は、しばしば封入体と呼ばれるネイティブでない凝集したタンパク質の不溶沈降物の形成をもたらす。封入体が、しばしば透過型電子顕微鏡で観察されるに十分大きく、そしてネイティブでない共有結合性分子間ジスルフィド結合を含み得ることは注意されるべきである。カオトロピック剤(例えば、尿素またはグアニジン)の高濃度中でこれらの封入体をまず溶解し、ジスルフィド結合を切るために還元剤を添加することによって、これらの封入体は、典型的に処理される。溶解後、次いで、溶解した、フォールディングされていないタンパク質は、典型的に1mg/ml未満の濃度に希釈され、そして尿素またはグアニジンは、ダイアフィルトレーションにより徐々に除かれる。酸化還元条件は、しばしばネイティブなジスルフィド結合が再形成し得るリフォールディング工程の間の種々の時点で特定される。全ての工程は、大量の高価な試薬、大量の溶液を扱うための設備、および高価で不用な処分工程を必要とする。さらに、適切にフォールディングされたネイティブなタンパク質の収率は、しばしば50%未満であり、そして所望のタンパク質は、リフォールディング後の希釈溶液中に見出され、リフォールディングの完了後の高価な濃縮工程をさらに必要とする。
【0033】
これまでに、本発明者らは、不溶性タンパク質凝集体の脱凝集を容易にし、そしてタンパク質のリフォールディングを容易にするための高圧の使用について本発明者らの研究を記載した。St.Johnら(1999)、およびRandolphらによる米国特許第09/350,327号。静水圧を、低い、および非変性濃度のグアニジン塩酸と組合わせて、ヒト成長ホルモン凝集体は、脱凝集され、そして適切にリフォールディングしたタンパク質は、100%回収された。24℃およびグアニジンの非存在下における、24時間の2kbarでの圧力処理後のネイティブのヒト成長ホルモンの回収率は、20%に過ぎなかった。
【0034】
特に、Randolphらによる米国特許第09/350,327号(参考として援用される)は、溶液中で変性し、凝集したタンパク質の、脱凝集およびリフォールディングに有効な方法を提供し、その結果、溶液中で適切にフォールディングされ、生物学的に活性なタンパク質が、高収率で回収される。タンパク質凝集体の脱凝集は、圧力が、約0.25kbarからもはや約12kbarまで増加される場合に生じる。リフォールディングは、約0.25kbarから約3.5kbarの間の圧力で生じ、約1.5kbarから約3kbarで有利に生じる。典型的に、カオトロピック剤は、大気圧でタンパク質を変性することに有効ではない濃度で存在し、そして完全に欠くこともある。必要に応じて、酸化−還元剤は、リフォールディング溶液中に組み込まれ得、その結果、ネイティブな分子内ジスルフィド結合が、所望の部位に形成され得る。方法は、実質的に全てのタンパク質、特に不溶性タンパク質凝集体、封入体、または異常性のオリゴマー状(可溶性)凝集体に適用可能である。
【0035】
本発明は、この研究を以下の方法で拡張する:
・種々の段階(特に、タンパク質が圧力下にある場合)でのタンパク質の撹拌は、脱凝集工程およびリフォールディング工程を促進および改善する;
・タンパク質が脱凝集およびリフォールディングを被る場合、特にカオトロープの非存在の場合、種々のインキュベーションの間の温度の上昇はまた、工程を促進させ、そして収率を向上させる;
・圧力下での還元剤の除去または中和;
・加圧直後の作業濃度へのタンパク質の希釈。これは実質的な経費の削減を与える、高圧リフォールディング装置のための小容量を可能にする;そして、
・分子内および分子間相互作用が独立して「ソートされる」ことを可能にするための、リフォールディングの間の中程度の圧力の使用。
これらの要素を、以前開示した方法と組合わせて、個々にか、または、相互に組合わせてのいずれかで、本発明者らは、顕著な時間の節約を含む、圧力下での、タンパク質の脱凝集およびリフォールディングの改良された方法を提供する。以下の項は、本発明の種々の実施形態を記載する。
【0036】
(従来のリフォールディング工程の増強;移行工程) 多くのリフォールディング工程において、特定の試薬または条件が除去または無効にされる重要な段階が存在する。これらの段階は、リフォールディングしたタンパク質をアンフォールディング、または凝集および沈降させる機会を提供する。この段階を生じることを防ぐために、本発明は、ある処理条件を次へと「橋渡し(bridge)」をするために利用され得る。例えば、界面活性剤またはカオトロピック剤の除去、あるいはタンパク質サンプルのさらなる処理に重要な温度の低減は、凝集の危険性を生成する。界面活性剤またはカオトロピック剤のない溶液へ、あるいは室温ヘと移行する間に、サンプルを加圧することによって、沈降の機会を低減させる。
【0037】
同様に、タンパク質の脱凝集および/またはリフォールディングを容易にするために、不十分および自然な(of themselves)、いくつかの試薬または条件は、高圧を用いることで増強され得る。特定の使用は、カオトロピックまたは界面活性剤の排除により成功するが、他の使用は、これらの比較的苛酷な処理により、影響され得ない。これらの試薬または条件を、高圧と組合わせて使用することによって、それらの性能を改善し得、そして、いくつかの場合においては、実施可能なリフォールディングプロセスを形成し得る。そのような組合わせは、圧力および温度上昇、圧力および界面活性剤、圧力およびカオトロープなどを含む。
【0038】
(遺伝子産物に対するフォールディング条件のスクリーニング) 当業者に周知の技術を用いて、既知または未知のタンパク質産物を宿主細胞に産生させるために、適切な宿主細胞を遺伝子改変することによって、タンパク質産生は、容易にされ得る。Sambrookら(1989)を参照のこと。残念なことに、これらの産物は、しばしば宿主細胞内に不溶性沈降物として見出され、そして、適切にフォールディングしたタンパク質をこれらの沈降物から回収することは、かなりの困難性が存在し得る。しかし、各タンパク質−宿主細胞の組合わせは独特であるので、適切なリフォールディング条件を決定するために、しばしば困難な経験的な実験を行う。
【0039】
本発明の1つの局面において、所望のタンパク質産物の不溶性沈降物を含む、細胞「ペースト」のホモジナイズされたサンプル、または(例えば、細胞片を除くための遠心分離、次いで、脂質を除くための界面活性剤を含む緩衝化溶液を用いる沈降物の洗浄によって)部分的に精製された調製物は、個々のサンプル容器にそれらを配置することにより、最適な溶解条件およびフォールディング条件についてスクリーニングされ得る。さらに種々の緩衝液(例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:リン酸緩衝液、ホウ酸緩衝液、炭酸緩衝液、クエン酸緩衝液、HEPES、MEPS)、塩(例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:ナトリウム、亜鉛、カルシウム、アンモニウムおよびカリウムの、塩酸塩、硫酸塩および炭酸塩)、可溶化剤(例としては、以下を含むが、これらに限らない:尿素、グアニジン塩酸、グアニジン硫酸、およびサルコシン)、および安定化剤(例としては、以下を含むが、これらに限定されない:非イオン性界面活性剤(例えば、Tween20、Tween40、Tween80、およびBrij)、保存料(例えば、ベンジルアルコール)、ならびに炭水化物(例えば、蔗糖、ラフィノース、ヒドロキシエチル澱粉、デキストラン、およびトレハロース))を含み得る水溶液もまた、これらの容器に添加される。
【0040】
好ましい容器は、複数のウェル(例えば、96ウェル)のサンプルホルダーであり、複数のタンパク質サンプルは、サンプルウェルのアレイの中に配置され得、ここで各ウェルは、異なるpH、イオン強度、塩の型、緩衝液の型、および安定化剤の溶液をおそらく含む。複数のウェルのサンプルホルダーは、市販の自己接着性のプラスチックカバーを用いて、簡便に密封され得る。次いで、容器、または複数のウェルのサンプルホルダー全体は、圧力管(例えば、Flow International Corp.またはHigh Pressure Equipment Co.からの市販されるもの)の中に置かれ得る。次いで、高圧管の内部容積の残りは、水または他の圧力伝達性の流体で満たされ得る。次いで、圧力は、特許請求の範囲に記載されるように上昇され得、そしてタンパク質サンプルの溶解およびフォールディングがもたらされる。
【0041】
(ウイルスの不活性化プロセス後の、タンパク質の脱凝集およびリフォールディング) ウイルスの不活性化プロセスは、しばしばヒト血漿、血漿由来のタンパク質産物、および細胞培養培地に対して使用される。これらのプロセスは、熱、高圧のサイクル、または溶媒−洗浄剤混合物による溶液の処理と関連する。これらのいずれの方法についても、ウイルスを不活性化する同じプロセスもまた、タンパク質の変性および凝集を生じるという問題を生じる。したがって、ウイルス不活性化プロトコルは、しばしば最適なウイルス不活性化と所望のレベルの活性なタンパク質の最適な保持との間の平衡を示す。その結果は、不活性化が不完全であるか、貴重なタンパク質成分が損なわれるか、またはこれらの両者のいずれかである。問題は、処理された産物(例えば、第VIII因子)の中で最も貴重なタンパク質のいくつかが、ストレス誘発性の凝集に最も感受性であるもののいくつかであるという事実により、さらに複雑にされる。
【0042】
本発明者らのプロセスを用いて、ウイルスを含む溶液は、ウイルスを不活性化するために使用される標準的方法のいずれかを用いて処理され得る。この処理の後、次いで、溶液は、ネイティブで活性なタンパク質のレベルを増加するために、本発明者らの高圧脱凝集工程およびリフォールディング工程に供される。さらに、所定のウイルス不活性化の間に損傷したタンパク質を再生するための能力を用いて、さらに効果的な(例えば、高温下へのより長い曝露、および/または、より高温への曝露)ウイルス不活性化プロセスを使用し得る。
【0043】
関連し得るウイルスとしては、HIV−1、HIV−2、A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、パルボウイルス、単純ヘルペスウイルスIおよびII、エプスタイン・バーウイルス、HHV6、ならびにサイトメガロウイルスが挙げられる。サンプルは、血漿、血液、血漿由来のタンパク質産物、培養されたヒト細胞由来のタンパク質産物、血清、または血清含有細胞培養培地であり得る。高圧タンパク質リフォールディング手順は、さらに、高温、カオトロピック剤、可溶化剤、還元剤、撹拌および「段階的」減圧を含む、1つ以上の処理を含む。
【0044】
(タンパク質沈降に対して核または前核として作用する可溶性凝集体のレベルの低減) タンパク質産物の精製、貯蔵、およびプロセシングの間に、ネイティブでない可溶性タンパク質凝集体、および/またはネイティブでないタンパク質凝集体上の不溶性沈降物の形成を促進するいくつかの工程が、存在する。これらとしては、濾過、透析、クロマトグラフィー、凍結融解、例えば、保持槽、すなわち、まさに最終産物の瓶の充填のプロセスの間の気泡への曝露などが挙げられる。これらの凝集体を除去または低減することは、沈降に起因する、引き続くプロセシング工程の間の、非常に大量のタンパク質の損失の危険性を低減させる。これは、可溶性凝集体がしばしば沈降に対して核または前核として働くからである。それ自体、これらの種は、比較的低レベルで存在し得(例えば、全タンパク質質量の1%)、そして全タンパク質集団の大きな画分(例えば、30〜50%より多く、またはそれより多く)の迅速な沈降をなお誘発し得る。沈降は、与えられたプロセシング工程が、閾値を越える可溶性凝集体のレベルの形成を促進する場合、および/またはアセンブリを臨界的な核のサイズへ促進するストレス(例えば、濾過)へ存在する可溶性凝集体を曝露することにより、誘発され得る。また、長期間の保存という単なる事実が、可溶性凝集体に起因する沈降を生じ得る。
【0045】
従って、1つの実施形態において、これらの核または前核は、全細胞のスラリー、または部分的に精製されたスラリーを、本発明の高圧脱凝集および/またはリフォールディングプロセスを用いて、プロセシングすることによって、簡単に除去され得る。あるいは、沈降したタンパク質は、濾過、クロマトグラフィーまたは遠心分離により、可溶性画分から分離され得、次いで、同一の高圧法を用いてリフォールディングされ得る。これらの凝集体の除去(すなわち、まさにレベルの低減)は、引き続くプロセシング工程におけるタンパク質の沈降に対する危険を最小にし、そしてリフォールディングするタンパク質調製物の保存期間を改善し得る。
【0046】
本発明の種々の局面は、以下の議論の中で詳細に記載される。
【0047】
(II.規定)
本明細書中で使用される場合、「タンパク質凝集体」は、多数のタンパク質分子から構成されるとして規定され、ここで、ネイティブでない非共有結合性相互作用および/または分子間ジスルフィド結合のようなネイティブでない共有結合は、タンパク質分子を互いに保持する。典型的には(常ではないが)、凝集体は、十分な分子を含み、その結果、凝集体は不溶性である。溶液中に凝集体を生じる異常なオリゴマーのタンパク質もまた存在する。さらに、典型的に(常ではないが)、ネイティブで凝集していないタンパク質の表面には示されない、少なくとも1つのエピトープまたは領域が、凝集体表面上に示される。「封入体」は、本発明を適用し得る、特に目的の凝集体の型である。
【0048】
「大気」圧または「雰囲気」圧は、約15ポンド/平方インチ(psi)または1バール(bar)として規定される。
【0049】
「結合パートナー」または「リガンド」は、リフォールディングする混合物中に含まれ得る。「結合パートナー」は、目的の標的タンパク質と特異的に結合する(またはさもなくば相互作用する)化合物である。「リガンド」としては、限定なく以下が挙げられる:抗体、レセプター、ペプチド、ペプチド模倣物、ビタミン、補因子、補欠分子団、基質、産物、拮抗インヒビター、金属および他の低分子または高分子。このような結合パートナーの存在は、リフォールディング混合物において、特に有利であり、ここで、結合パートナーがリフォールディングする標的タンパク質と相互作用する場合、この結合パートナーは、標的タンパク質のネイティブなコンフォーメーションを好む。
【0050】
本明細書中で使用される場合、タンパク質の「生物学的活性」は、タンパク質の既知の有用性または意図される有用性と相関されることが当該分野において一般的に受け入れられるアッセイで測定されるような既知の最大比活性の少なくとも10%を意味する。治療用途が意図されるタンパク質について、選択されるアッセイは、管理機関により承認されるアッセイであり、ここで、タンパク質の安全性および有効性に対するデータは、提出されねばならない。10%よりも高い既知の最大比活性タンパク質は、本発明の目的で、「生物学的に活性」である。
【0051】
本文脈においてタンパク質に適用される場合、「変性した」とは、ネイティブな2次構造および3次構造が、そのタンパク質が「生物学的活性」をもたない程度に分裂されることを意味する。
【0052】
「脱気」は、本発明において使用される溶液中に溶解した気体の除去として規定される。気体は、大気圧と比較して、高圧において液体にはるかによく溶解する。その結果、サンプルの頭隙の全ての気体は、加圧の際に溶液中へ押し込まられ得る。結果は、2通りある:溶液中のさらなる酸素は、タンパク質産物を化学的に分解し得、そして減圧の際に溶液中に存在する気体は、さらなる凝集を引き起こし得る。従って、サンプルは、脱気した溶液を用いて調製されるべきであり、そして全ての頭隙は加圧に先立ち液体で満たされるべきである。
【0053】
「減圧」は、高圧から、より低圧(通常は、大気圧または雰囲気圧)へ、圧力を減少させるプロセスである。減圧は、10秒から10時間の範囲の、予め決められた期間にわたって行われ、そして(周囲と比較してなお高いが)中間の圧力レベルで、最適なリフォールディングを可能にするため、1つ以上の時点で中断され得る。減圧または中断は、1秒、2秒、5秒、10秒、20秒、1分、2分、5分、10分、30分、60分、2時間、3時間、4時間、および5時間であり得る。
【0054】
「異種」タンパク質は、正常には特定の宿主細胞により産生されないタンパク質である。組換えDNA技術は、形質転換された宿主細胞(例えば、大腸菌)から比較的大量の異種のタンパク質(例えば、成長ホルモン)の発現を可能にしてきた。これらのタンパク質は、しばしば宿主細胞の細胞質、および/またはペリプラズムの中の、不溶性の封入体の中に隔離される。封入体または細胞質の凝集体は、少なくとも部分的に、回収されるべき異種のタンパク質を含む。これらの凝集体は、しばしば位相差顕微鏡の下で、輝点として観察される。
【0055】
タンパク質凝集体を解離させる目的で、「高圧」は、約0.25kbarから約12kbarを意味する。この範囲内で特に企図される圧力は、0.30kbar、0.35kbar、0.40kbar、0.50kbar、0.55kbar、0.60kbar、0.65kbar、0.70kbar、0.75kbar、0.80kbar、0.85kbar、0.90kbar、0.95kbar、1.0kbar、1.1kbar、1.2kbar、1.3kbar、1.4kbar、1.5kbar、1.6kbar、1.7kbar、1.8kbar、1.9kbar、2.0kbar、2.1kbar、2.2kbar、2.3kbar、2.4kbar、2.5kbar、2.6kbar、2.7kbar、2.8kbar、2.9kbar、3.0kbar、3.1kbar、3.2kbar、3.3kbar、3.4kbar、3.5kbar、3.6kbar、3.7kbar、3.8kbar、3.9kbar、4.0kbar、4.1kbar、4.2kbar、4.3kbar、4.4kbar、4.5kbar、4.6kbar、4.7kbar、4.8kbar、4.9kbar、5.0kbar、5.1kbar、5.2kbar、5.3kbar、5.4kbar、5.5kbar、5.6kbar、5.7kbar、5.8kbar、5.9kbar、6.0kbar、6.1kbar、6.2kbar、6.3kbar、6.4kbar、6.5kbar、6.6kbar、6.7kbar、6.8kbar、6.9kbar、7.0kbar、7.1kbar、7.2kbar、7.3kbar、7.4kbar、7.5kbar、7.6kbar、7.7kbar、7.8kbar、7.9kbar、8.0kbar、8.1kbar、8.2kbar、8.3kbar、8.4kbar、8.5kbar、8.6kbar、8.7kbar、8.8kbar、8.9kbar、9.0kbar、9.1kbar、9.2kbar、9.3kbar、9.4kbar、9.5kbar、9.6kbar、9.7kbar、9.8kbar、9.9kbar、10.0kbar、10.1kbar、10.2kbar、10.3kbar、10.4kbar、10.5kbar、10.6kbar、10.7kbar、10.8kbar、10.9kbar、11.0kbar、11.1kbar、11.2kbar、11.3kbar、11.4kbar、11.5kbar、11.6kbar、11.7kbar、11.8kbar、11.9kbar、および12.0kbarである。リフォールディング工程の目的で、「高圧」は、約0.25kbarから約3.3kbarを意味する。この範囲内で特に企図される圧力は、0.30kbar、0.35kbar、0.40kbar、0.50kbar、0.55kbar、0.60kbar、0.65kbar、0.70kbar、0.75kbar、0.80kbar、0.85kbar、0.90kbar、0.95kbar、1.0kbar、1.1kbar、1.2kbar、1.3kbar、1.4kbar、1.5kbar、1.6kbar、1.7kbar、1.8kbar、1.9kbar、2.0kbar、2.1kbar、2.2kbar、2.3kbar、2.4kbar、2.5kbar、2.6kbar、2.7kbar、2.8kbar、2.9kbar、3.0kbar、3.1kbar、3.2kbar、3.3kbarである。
【0056】
「宿主細胞」は、目的の異種のタンパク質を発現するように形質転換された、微生物細胞(例えば、細菌、および酵母)、または他の適切な細胞(動物細胞もしくは植物細胞を含む)である。本発明において企図される宿主細胞は、細胞により発現される異種タンパク質が屈折体(refractile bodies)中に隔離されるものを含む。例示的な宿主細胞は、E.coli K12、W311OG(pBGHI)系統、であり、これは、所望の異種タンパク質の発現をもたらすために形質転換されてきた。
【0057】
タンパク質の「ネイティブなコンフォメーション」は、本文脈において、タンパク質がその完全に活性な状態で天然に存在する場合、タンパク質の2次構造、3次構造、および4次構造をいう。
【0058】
「加圧」は、圧力を(通常、大気圧または雰囲気圧から)高い圧力へ圧力を増加させる工程である。加圧は、0.1秒から10時間の範囲の、予め決められた期間にわたって行われる。このような時間として、1秒、2秒、5秒、10秒、20秒、1分、2分、5分、10分、30分、60分、2時間、3時間、4時間、および5時間が挙げられる。
【0059】
「タンパク質」は、広範な種々のペプチド含有分子を含み、以下のタンパク質を含んでいる:モノマータンパク質、ダイマータンパク質、マルチマータンパク質、ヘテロダイマータンパク質、ヘテロトリマータンパク質、およびヘテロテトラマータンパク質;ジスルフィド結合されたタンパク質;グリコシル化タンパク質;螺旋タンパク質;ならびにアルファシート含有タンパク質およびベータシート含有タンパク質。特定のタンパク質としては、ホルモン、抗体、酵素、および金属結合タンパク質が挙げられる。
【0060】
「リフォールディング」、「再生」、または「ネーチャリング(naturing)」は、本文脈において、これによって完全にかまたは部分的に変性したタンパク質が、同族のネイティブな分子の構造と同様の、2次構造、3次構造、および4次構造を採用するプロセスを意味する。適切にリフォールディングしたタンパク質は、変性していない分子の実質的な活性である生物学的活性を有する。ネイティブなタンパク質がジスルフィド結合を有する場合、ネイティブな分子内ジスルフィド結合を形成するための酸化は、リフォールディングプロセスの所望される要素である。
【0061】
「界面活性剤」は、水の表面張力を減少させる界面活性な化合物である。
【0062】
(III.試薬および手順)
(A.カオトロピック剤)
カオトロピック剤は、以下を含むが、これらに限定されない、ポリペプチド鎖を実質的にランダムなコンフォメーションにし得る化合物である:グアニジン塩酸(グアニジウム塩酸、GdmHCl)、グアニジン硫酸、尿素、チオシアン酸ナトリウム、ザルコシル、ドデシル硫酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウム、および/またはタンパク質内の非共有結合性の分子間結合を破壊する他の化合物。
【0063】
カオトロピック剤は、使用される場合、「低」濃度で用いられる。そのような低濃度は、0〜約4.5Mである。特定の濃度としては、以下が挙げられる:0.1M、0.2M、0.3M、0.4M、0.5M、0.75M、1.0M、1.25M、1.5M、1.75M、2.0M、2.25M、2.5M、3.0M、3.5M、4.0M、および4.5M。
【0064】
(B.還元剤および酸化剤)
還元剤は、電子を移動し得、その際、種々の原子間の結合を「還元する」。本発明の文脈において、還元剤は、分子内相互作用および分子間相互作用、特に、ジスルフィド架橋を伴う相互作用を、破壊し得る。本発明に従って、例示的な還元剤は、ジチオスレイトール(diothiothreitol)、グルタチオン、ジチオエリスリトール、またはβ−メルカプトエタノールである。
【0065】
酸化剤は、還元剤を中和するために使用され得る。酸化剤としては、酸化型グルタチオン、分子酸素、空気、または過酸化物が挙げられる。
【0066】
(C.界面活性剤)
界面活性剤は、特定のタンパク質の溶解性を改善するために用いられる。有用な界面活性剤としては、以下が挙げられる:非イオン性薬剤(t−オクチルフェノキシポリエトキシ−エタノールおよびポリオキシエチレンソルビタンが挙げられるが、これらに限定されない)、アニオン性薬剤(例えば、ドデシル硫酸ナトリウム)およびカチオン性薬剤(例えば、塩化セチルピリジニウム)ならびに両性薬剤を含む。適切な界面活性剤としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:デオキシコレート、オクチル硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンエーテル、コール酸ナトリウム、オクチルチオグルコピラノシド、n−オクチルグルコピラノシド、臭化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、およびビス(2−エチルヘキシル)スルフォサクシネートナトリウム。
【0067】
(D.緩衝化剤)
緩衝化剤は、所望のpHの値またはpH範囲を維持するために、脱凝集および/またはリフォールディングする混合物中に有利に存在する。無機緩衝化系(とりわけ、ホスフェート、カルボネート)および有機緩衝化系(とりわけ、シトレート、Tris、MOPS、MES、HEPES)は、当該分野において周知である。
【0068】
(E.安定化剤)
非特異的なタンパク質安定化剤は、タンパク質の最もコンパクトなコンフォーメーションを有利にするように作用する。このような薬剤の例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:蔗糖、トレハロース、グリセロール、ベタイン、アミノ酸、およびトリメチルアミンオキシド。
【0069】
(F.分光法)
リフォールディング条件を最適にするための別の有用な技術は、圧力下におけるサンプルのインサイチュ分光学的測定である。これは、圧力下においてタンパク質の安定性を試験するために周知の工程であるが、タンパク質凝集の研究において活用されている。圧力下での凝集体の溶解を観察するために高圧分光技術を用いることは、凝集体からタンパク質を回収するために最適な圧力範囲を決定することに役立つ。特注の高圧セルは、高圧下のアンフォールディングの研究のために慣用的に使われており、そして高圧下における脱凝集およびリフォールディングの使用に対して適応され得る。
【0070】
(IV.タンパク質のリフォールディングのための現在の方法論)
以下に、「最新技術」を示す種々の一般的なタンパク質リフォールディング技術を記載する:
米国特許第5,077,392号(1991)は、原核生物において産生された組換えタンパク質の活性化のためのプロセスを記載し、凝集したタンパク質は、4〜8Mのグアニジン塩酸または6〜10Mの尿素に溶解される。一旦可溶化されると、緩衝液は、pH1とpH4との間のpHに透析される。最終的に、溶液を、非変性環境および酸化環境を提供するように希釈して、リフォールディングを可能にする。
【0071】
米国特許第5,593,865号(1997)は、原核生物宿主における発現の後、ジスルフィド結合を含有する、真核生物の組換えタンパク質を活性化するためのプロセスを記載する。封入体タンパク質は、還元剤を含む強力な変性剤(6Mグアニジン塩酸)中に溶解される。リフォールディング工程において、タンパク質は、酸化しかつ変性しない環境の中へ導入される。
【0072】
米国特許4,677,196号(1987)はまた、不溶性の封入体からの、生物学的に活性なタンパク質の精製および産生を記載する。これは、不溶性の形態からタンパク質を回収するための一般的な方法であり、SDS中にタンパク質凝集体を溶解させる工程を含む。一旦溶解されると、タンパク質溶液は、カラムクロマトグラフィーにより、SDSから分離される。SDSの非存在下において、タンパク質は、リフォールディングし得る。最終的に、タンパク質は、カラムから溶出される。尿素はまた、溶解したタンパク質溶液の中に含まれている。アニオン交換クロマトグラフィーの後、リフォールディングしたタンパク質溶液に由来する尿素は、透析により除去される。
【0073】
米国特許5,605,691(1997)は、SDSおよび熱を使用した封入体タンパク質の可溶化を記載する。いったん溶液にしたら、タンパク質は、初めにSDSを希釈し、次に非変性濃度になるまでSDSを透析することによって再び折りたたまれる。
【0074】
米国特許4,659,568(1997)は、不溶性タンパク質の凝集体または複合体からのタンパク質の可溶化、精製および特徴付けのプロセス、ならびにそれからの組成物を記載する。その不溶性タンパク質の凝集体または封入体は、尿素の段階的な勾配(3M〜7Mの尿素)の上部に重層される。サンプルが遠心分離されるにつれ、凝集体はそれらが溶けるまで勾配を通って移動する。この方法はタンパク質が溶ける尿素濃度を決定する手段を提供する。
【0075】
米国特許5,728,804(1995)は、変性または凝集させたタンパク質を、5〜7Mの塩酸グアニジンを含んだ、界面活性剤を含まない水性媒質に懸濁し、そして一晩インキュベートするプロセスを記載する。いったん懸濁したら、サンプルを、タンパク質が再び折りたたまれることを助けるに十分なシクロデキストリンと接触させる。最終的にシクロデキストリンは透析によって取り除かれる。
【0076】
以下は、特定のタンパク質の再折りたたみのために開発されたプロセスを開示した特許である。
【0077】
米国特許4,652,630(1987)は、活性なソマトトロピンを生産するための方法を記載する。この方法では、凝集体または封入体はカオトロープ(3M〜5Mの尿素)で可溶化され、そしてpHは完全な可溶化を可能にするために調整される。次に条件は、非変性濃度のカオトロープの存在下で酸化を可能にするために改変される。
【0078】
米国特許5,064,943(1991)もまた、ソマトトロピンを可溶化し、そして再生するための方法を記載するが、それはカオトロープの使用を必要としない。ここではpHは11.5と12.5との間に調整されており、そして5から12時間にわたって維持されている。これらの条件下において、ソマトトロピンは可溶化し、そして再生する。
【0079】
米国特許5,023,323(1991)は、ソマトトロピン(成長ホルモン)凝集体を変性性カオトロープ(1M〜8Mの尿素)に溶解する、この凝集体の再生(naturation)のためのプロセスを記載する。可溶化工程に続いて、このサンプルは、非変性濃度のカオトロープの存在下で酸化環境にさらされる。
【0080】
米国特許5,109,117(1992)は、有機アルコールおよびカオトロープ(1M〜8Mの尿素)の存在下でソマトトロピン凝集体を溶かす方法を記載する。次いで、可溶化されたタンパク質は、非変性酸化環境中で再生される。
【0081】
米国特許5,714,371(1998)は、C型肝炎ウイルスのプロテアーゼの凝集体を再び折りたたむための方法を提供する。凝集体は5M塩酸グアニジンで可溶化される。二番目に、還元剤を溶液に加え、酸性を与えるようにpHを調整する。三番目に、変性剤を透析によって溶液から取り除き、そして最終的にpHを出発点まで高くする。
【0082】
米国特許4,923,967(1990)は、ヒトのインターロイキン2について特異的なプロセスを記載する。タンパク質の凝集体は、亜硫酸分解剤(sulfitolysing agent)を含む4〜8Mの塩酸グアニジンに溶かされる。タンパク質がいったん溶けたら、亜硫酸分解剤を溶媒変換によって取り除く。最終的に、温度を上昇させて、インターロイキン2を純粋な形態で沈殿させる。再折りたたみを可能にするために、沈殿物を塩酸グアニジンに還元剤を加えたものに再び溶かす。最終的に溶液を希釈してタンパク質を再折りたたみさせる。
【0083】
米国特許5,162,507(1992)は、微生物から組換え型のインターロイキン2を回収、精製、酸化、再生するためのプロセスを記載する。微生物から単離した不溶性のインターロイキン2は2M〜4Mの塩酸グアニジン中で可溶化される。塩酸グアニジン溶液は、次に溶液からタンパク質が沈殿するまで希釈される。沈殿物は次に再び塩酸グアニジン溶液に溶かされる。タンパク質は次に酸化されて、ネイティブなジスルフィド結合が再形成される。最終的に溶液は希釈され、そしてインターロイキン2は溶解したままである。
【0084】
米国特許4,985,544(1991)は、魚の成長ホルモンを再生するプロセスを記載する。このプロセスでは、凝集体または封入体は、グアニジン、尿素、SDS、酸またはアルカリを用いて溶かされる。還元剤は次に取り除かれ、そして酸化剤を加える。最終的に変性剤を取り除いて、再折りたたみを可能にする。
【0085】
米国特許5,410,026(1995)は、不溶性の誤って折りたたまれたインスリン様増殖因子(IGF−1)が活性高次構造に再び折りたたまれる方法を記載する。いったんIGF−1が単離されたら、これを、凝集体が可溶化し再び折りたたまれるまで1〜3Mの尿素または1Mの塩酸グアニジンとともにインキュベートする。
【0086】
タンパク質の再折りたたみを扱う他の米国特許としては、米国特許5,708,148;4,929,700および4,766,224が挙げられる。
【0087】
(V.攪拌)
これまでの研究によって、タンパク質の攪拌が凝集および沈殿を生じ得ることが実証されている Bamら(1998)。しかし、質量の輸送の一般的影響はタンパク質の再折りたたみにおいてほとんど無視されている。本発明者らは驚いたことに、物理的な混合、すなわち「攪拌」(攪拌、振盪、回転など)がタンパク質の再折りたたみの速度および程度の両方を増大させることをみいだした。
【0088】
したがって、本発明に従って、タンパク質の攪拌を用いて、圧力下でのタンパク質の再折りたたみを助けそして改良し得る。攪拌は、高圧力下で水性媒質中に懸濁しているタンパク質の沈殿した凝集体に適用され得る。最適には、このような攪拌は、沈殿したタンパク質の凝集体が水溶液の全体に均一に分散するが、攪拌によって誘導される凝集が生じるようなレベルよりも下の強度で適用される。このような攪拌は、タンパク質が凝集しなくなるときまで、分散を維持するために必要に応じて適用されるべきである。攪拌は、超音波を用いて、または静的混合デバイスを通してのポンピングによって、成し遂げられ得る。
【0089】
(VI.高温での再折りたたみ)
高温はしばしばタンパク質の凝集を引き起こすために用いられているが、本発明者らは、温度が不可逆的な変性を引き起こすほど高くなければ、高温が、高圧処理によってもたらされる再折りたたみの回収率を高め得ることを決定した。一般に、再折りたたみのための高温は、活性の不可逆的な喪失が起こる温度より約20℃低くすべきである。相対的に高い温度(例えば、約60℃〜約125℃、約80℃〜約110℃(約100℃、約105℃、約110℃、約115℃、約120℃、約125℃を含んでいる))は、減圧する前に温度が適切に低い温度まで下げられる限り、溶液が圧力下にある間に使用され得る。そのような適切に低い温度は、熱により誘導される変性または凝集が大気条件で生じる温度より低い温度として定義されている。
【0090】
(VII.圧力下での透析および希釈)
圧力下でのタンパク質の再折りたたみは、タンパク質の濃度に依存しないようである。これは高いタンパク質濃度が、タンパク質の凝集を誘導すると知られていることを考えると驚くべきことである。しかし、それは高濃度で、脱凝集した
適切に再折りたたみされたタンパク質を得ることが可能である一方で、まだ高濃度の間にタンパク質を圧力下から取り出すことは、再凝集という結果になるのかもしれない。さらに、すべての加圧工程を低濃度下で行なうと、処理されなければならない物質の体積を非常に増加させ、それゆえ時間的要因が増加する。あるいは、機械をスケールアップして、より大きな体積を取り扱うようにすることは、速度を速める。しかしながら、機械の加圧面のスケールアップの費用は非常に高い。
【0091】
したがって、本発明者らは、高濃度タンパク質下での脱凝集および再折りたたみの実験を行なうことを提案している。問題のタンパク質に依存して、「高」濃度は、1mg/ml〜100mg/mlの範囲にわたり得る。脱凝集に続いて、そして、再折りたたみの間またはその後、タンパク質を0.1mg/ml〜10mg/ml、好ましくは1mg/mlの保存安定濃度まで希釈する。この濃度は、上記で議論した様々な緩衝液を使用して調整される。
【0092】
さらに、圧力下での透析および希釈は、圧力下にありながら、例えば還元剤を用いて、タンパク質をとりまく化学的な環境を変えることを可能にする。透析は、バッチ様式で行なわれ得、ここで、タンパク質溶液は透析膜の一方の側に配置され、そして化学物質は時間がたつにつれ、拡散させられる。しかし、タンパク質は、利用した膜を通して拡散するには大きすぎる。対照的に、希釈は、圧力下にありながら、二つの溶液を注入または混合して、化学的条件のより突然の変化をひきおこすことを必要とする。さらに、再折りたたみプロセスで使用される溶液のpHを変えることが望まれるかもしれない。例えば、タンパク質の二次構造の安定性は典型的に、より低いpHでより高いのに対して、酸化還元剤の存在下でのジスルフィド交換の速度は、典型的にpH10〜11でより高い。したがって、酸化還元剤の除去を認めることに加えて、圧力下での透析はpHでの同時の変化を可能にする。
【0093】
(VIII.「段階的な」減圧)
本発明の別の局面では、出願人らは「段階的な」減圧を提供する。このプロセスは、使用される最高圧力から、最高レベルと周囲圧力との間の中間の、少なくとも第2のレベルへと圧力を下げることを含む。目的は、タンパク質が望ましいコンホメーションをとるのを可能にするこの中間範囲またはその付近の圧力でのインキュベーション期間を提供することである。
【0094】
1つの実施形態では、本発明は、最高圧力と周囲圧力との間のどこかに位置する中間圧力でのインキュベーションを単に意図する。あるいは、約50MPa〜500MPa、約100MPa〜400MPa、および約200MPa〜300MPaを含むがこれらに限定されない、「中間」圧力工程として適しているかもしれない特定の圧力範囲がある。中間的な加圧の特定のレベルとしては、約100MPa、約150MPa、約200MPa、約250MPa、約300MPa、約350MPa、約400MPa、約450MPaおよび約500MPaが挙げられる。唯一の制限は、使用するときに、先の圧力が、加圧の第一のレベルまたは最高レベルより低くなければならないことである。中間の減圧工程のタイミングとしては、1分、5分、10分、20分、30分、45分、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、11時間、および12時間のインキュベート期間が挙げられる。
【0095】
(IX.バッチ対連続したプロセシング)
機械的に、高圧力プロセシングの方法は主に2つある:バッチ法および連続法。バッチプロセスは単純に、指定のチャンバを満たすこと、このチャンバを一定時間加圧すること、およびバッチを減圧することを含んでいる。対照的に、連続プロセスは、圧力チャンバ(pressure chamber)に凝集体を常に送り込み、そして再折りたたみした可溶性タンパク質を圧力チャンバから運び出す。両方の状況の間、よい温度制御および圧力制御は必須である。なぜならこれらのパラメーターの変動は収率の不一致を引き起こし得るからである。温度および圧力の両方とも圧力チャンバの中で測定され、そして適切に制御されるべきである。
【0096】
バッチサンプル:それぞれのタンパク質の特定の安定性の問題に依存して、バッチサンプルを扱う方法は多数ある。タンパク質溶液は、圧力チャンバにローディングされ得、この場合、再折りたたみの緩衝液は圧力媒質として用いられる。あるいはサンプルは、任意の種々の、封をしたフレキシブルコンテナにローディングされ得る。これは、圧力媒質、ならびにタンパク質がさらされている表面でのより大きな柔軟性を可能にする。考えられるところでは、サンプル容器は均等に作用して、化学分解から目的のタンパク質を保護し得る(すなわち、酸素スカベジングプラスチックが利用可能である)。
【0097】
連続プロセシング:連続プロセシングでは、スケールアップは簡単である。圧力下での小さな容積を使用して、大きな容積のタンパク質溶液を再折りたたみさせ得る。さらに、連続プロセスの出口に適切なフィルターを使用することにより、可溶性および不溶性の両方の凝集体を保持しながら、適切に再折りたたみしたタンパク質がチャンバから選択的に放出される。
【0098】
(X.多量体タンパク質)
ヒトの疾患治療、予防適用および診断適用に使用される可能性のあるたくさんのタンパク質は、複数のタンパク質鎖から構成される。組換え技術によるこれらのタンパク質の産生は、適切な鎖がアセンブリしてネイティブな二次、三次、および四次構造を形成することを必要とする。不適切に会合した鎖または会合していない鎖は特に、ネイティブでない凝集体および沈殿物を形成する傾向がある。一つの例では、これらのネイティブでない凝集体は、サンプルコンテナ中で適切な処方物に懸濁され得、Flow International Corp.または、High Pressure Equipment Co.から市販されている高圧容器のような市販の高圧容器に配置され得、そして加圧してタンパク質を脱凝集し、折りたたみおよびネイティブな構造へのアセンブリを促進させ得る。別の例では、個々の鎖は周知の組換え技術を通して別々に合成され得る。個々の鎖の精製または半精製溶液は、適切な処方物中でサンプルホルダー中で組み合わされ得、上記の高圧容器中に配置され得、そして加圧して折りたたみおよびアセンブリがもたらされてネイティブな多量体タンパク質となり得る。
【0099】
特定の実施形態では、本発明は、二量体、三量体、四量体、五量体、六量体、七量体、八量体、九量体などのような、多量体タンパク質の再折りたたみを提供する。ポリペプチドのサブユニットは、同一(ホモ二量体など)であってもよく、または一つ以上がネイティブなタンパク質(ヘテロ二量体など)内で異なり得る。下記で議論する特定の例では、タンパク質(ホモ二量体である、ヒトのインターフェロンーγ)は、組換え的に生産される。
【0100】
(A.インターフェロン)
rhIFN−γは、穏やかな濃度の塩酸グアニジンにさらすことによって形成された凝集体と比較して、熱転位の開始より少し低い温度にさらした場合、完全に異なった形態の凝集体を形成する。熱で誘導されたrhIFN−γの凝集体は繊維状の構造であり、これに対して塩酸グアニジンで誘導された凝集体は非晶質の沈殿物を形成する。ネイティブな状態とは異なる二次および三次構造の凝集体は、凝集物の形態とは独立である。
【0101】
圧力は、二次微分UVおよびFTIRによって測定した場合、rhIFN−γの繊維状および非晶質の凝集体の両方の溶解、ならびにネイティブな構造の回収に有効である。非晶質の凝集体の溶解速度は速く、圧力による解離状態の獲得は250MPaで30分以内に成し遂げられる。熱誘導された凝集体からの圧力による解離状態の獲得は、非晶質の凝集体の溶解速度よりおよそ四倍遅い。しかし、いったん圧力による解離状態が成し遂げられると、二次微分UVによって測定した場合、ネイティブ状態の回収の速度および程度(すなわち、再折りたたみの速度および収量)は、最初の凝集形成とは独立している。
【0102】
1.5時間、100MPaで再折りたたみの程度は、再折りたたみの間のタンパク質濃度に依存しており、ネイティブ様構造の回収は、タンパク質濃度が減少するとともに増加した。再折りたたみプロトコールの後、1mg/mLに希釈したサンプルについて、再折りたたみの程度は再折りたたみの間、タンパク質濃度に独立していた。タンパク質濃度依存性の違いは、減圧の際に高タンパク質濃度のサンプル中に残っている単量体の有意な集団に起因している。再折りたたみプロトコールに従った高タンパク質濃度のサンプルの1mg/mLへの迅速な希釈は、単量体を経て進行する、凝集よりも再折りたたみに有利な条件となる。それゆえ、二量体の獲得は本質的に完全であり、再折りたたみの間のタンパク質濃度によって影響されない。圧力処理後の高タンパク質濃度のサンプルの希釈の失敗は、再折りたたみよりも凝集に有利な条件となり、高濃度の単量体は有意な凝集を導く。
【0103】
250MPaまでの圧力によるrhIFN−γの平衡反応は、二次微分UV分光法に従い得る。この平衡反応は濃度依存性であり、したがってネイティブな二量体の解離である。この解離は−209+/−13mL/molの二量体に等しいΔVを有し、これはタンパク質およびスクロースの濃度に独立である。さらにコンパクトでネイティブな状態に向かって平衡を移動させることによって、タンパク質表面での優先的な排除を介して、スクロースは解離に対してrhIFN−γを安定化する。解離の表面積の変化は、12.7+/−1.6nm2/分子の二量体であると測定され、これはネイティブな二量体と比較して溶媒露出表面積が約30%増加したことを表している。包括的な方程式は、圧力、スクロースおよびタンパク質の濃度の関数としてrhIFN−γのΔGdissを予想する実験データから開発された。
【0104】
平衡解離として同様の判定基準を使用すれば、二次微分UV分光法を使用して、rhIFN−γの凝集速度を追跡し得る。しかし、同様の判定基準を使用するので、有意な解離が凝集と同時に起きないように溶液条件を選ばなければならない。本発明者らは、一次の塩酸グアニジンで誘導した凝集のEが130+/−30kJ/molの二量体であると測定されたこと、これが二次の熱誘導した凝集プロセスのEとは有意に異なるということを示した。異なったストレスによって誘導された凝集反応の活性化エネルギーの不均衡は、塩酸グアニジンで誘導した凝集反応速度が、Nから2Mへの解離によって支配されていることの確認である。
【0105】
以前に報告された(Kendrickら、1998a)ように、スクロースは、タンパク質表面からスクロースを優先的に排除することにより塩酸グアニジンの存在中でrhIFN−γの凝集速度を減じ、コンパクトでネイティブな状態Nに向かって平衡を移動させ、そしてひろがった遷移状態Nから遠ざける。しかし、圧力は、rhIFN−γタンパク質の溶媒化の増加を通して、塩酸グアニジンによる凝集に対してrhIFN−γを不安定化する。溶媒化の増加は、タンパク質の露出表面積を増加させ、NからNに平衡を移動させる、このようにして、スクロースの安定化効果を妨げる。露出表面積の変化、および拡大したNとNとの間の部分モル容積の変化が、それぞれ3.5+/−0.2nm/分子および−39+/−9mL/molの二量体であることが見出された。したがって、遷移状態種の形成に必要とされる摂動は、凝集体となる能力のある単量体の形成を導き、その摂動はネイティブな状態と解離した状態との間の違いと比較して小さい。
【0106】
(B.他の多量体)
本発明に従って再折りたたみされ得る他の多量体タンパク質の例としては、ヘモグロビン、乳酸デヒドロゲナーゼ、抗体および抗体フラグメントが挙げられる。
【実施例】
【0107】
(XI.実施例)
下記の実施例は、発明の好ましい実施形態を実証するために含まれる。以下の実施例に開示される技術は本発明の実施に良好に機能することが本発明者によって発見された技術を表し、従って、その実施の好ましい形態を構成するとみなされ得ることが当業者によって認識されるべきである。しかし、本開示の観点からみると、当業者は、開示された特定の実施形態において多くの変更が行なわれ得、本発明の精神および範囲から逸脱することなく同様または類似の結果がさらに得られることを認識すべきである。
【0108】
(実施例1:高圧での脱凝集および再折りたたみ)
(手順1:高圧でのタンパク質の脱凝集および再折りたたみを変化させる温度)
タンパク質凝集:組換えヒトの成長ホルモン(rhGH)を、1.5mg/mlの濃度で10mMクエン酸ナトリウム緩衝液(pH6.0、1mM EDTA、0.1%アジ化ナトリウム)に懸濁した。10mLのrhGH溶液を、15mlの円錐状のファルコンチューブで、少なくとも24時間8rpmで回転させた。
より大きな構造の損傷を示す凝集体を、クエン酸緩衝液中に0.75Mの塩酸グアニジンを加えて、同一の条件下で回転させた。
【0109】
サンプルの調製:必要とする容積の半分を、15分間、13,000gで遠心分離して、不溶性の凝集体を沈殿させた。上清を捨て、最終容積の緩衝液(10mMクエン酸ナトリウム緩衝液、pH6.0、1mM EDTA、0.1%アジ化ナトリウム)で交換した。凝集体のペレットを、Ultrasonicsの商標の超音波処理器(50%デューティ、1秒間のパルスサイクル)で再懸濁した。いったん再懸濁したら、サンプルを1mlのシリンジに移した(末端をヒートシールし、そしてプランジャーを適所にして全てのヘッドスペースを除去した)。
【0110】
加圧および分析:温度を平衡にした後、サンプルを圧力チャンバーに移した。圧力は24時間にわたって2kbarに増加させた。大気中のサンプルを同一の温度に置いた。圧力を15分かけて穏やかかつ均等に開放した。減圧後、サンプルを15分間、1,3000gで遠心分離した。上清を、可溶性タンパク質について278nmの吸光度によって分析した。光散乱成分を、LeachおよびScheraga(1960)によって記述された方法を利用して差し引いた。rhGHの吸光係数は18,890である(cm mol/l)−1
【0111】
高圧でのタンパク質の脱凝集および再折りたたみを変化させる温度の結果:グアニジニウムの非存在下で、圧力処理後の再折りたたみしたヒトの成長ホルモンの収率は、温度が上昇するとともに増加し、60℃の温度でおおよそ100%に到達する。高圧処理なしで同様の温度にさらすことでは、折りたたまれたネイティブなタンパク質の収率の有意な向上はみられなかった。
【0112】
(手順2:高圧透析を使用した再折りたたみ凝集体)
タンパク質の凝集およびサンプルの調製:Sigma Chemical Co.からのニワトリ卵白リゾチーム(40mg/ml)を8Mの塩酸グアニジン(GdmHCl)、40mMのDTTで一時間、変性および還元させた。次いで、タンパク質溶液を、50mMのTris−HCl緩衝液(pH8.0、1mM EDTA)で20倍にショック希釈して凝集誘導した。サンプルを次に、Tris−HCl緩衝液(pH8.0+GdmHCl+DTT)でさらに二倍希釈して、透析チュービング(1mg/mLリゾチームを含んだ50mM Tris−HCl pH8.0、0.8M GdmHCl、100mM DTT)に入れられる最終的な再折りたたみ溶液を作製した。サンプルを次に透析チュービングに注入した(3500分子量カットオフ、Tris−HCl緩衝液pH8.0に一晩浸したもの)。加圧の直前に、透析チュービングを25倍の容積過剰なTris−HCl緩衝液(pH8.0、0.8M GdmHCl、3mM酸化型グルタチオン)に入れ、加圧のために封鎖した。
【0113】
加圧および分析:変換緩衝液への透析チューブの挿入後できるかぎりすぐに、サンプルを2kbarまで加圧した。圧力を五日間維持した。サンプルを15分間かけて穏やかに減圧した。いったん大気圧になったら、サンプルを13,000gで15分遠心分離して、不溶性の凝集体を沈殿させた。上清を以前記述された(St.Johnら、1999)ように酵素活性について分析した。
【0114】
(実施例2:高圧でのrhIFN−γの繊維状および非晶質の凝集体の再折りたたみ)
(材料および方法)
5mMのコハク酸ナトリウムpH5.0(コハク酸緩衝液)中の精製された組換えDNA由来rhIFN−γは、Genetech Inc.によって提供され、使用するまで4℃で保存し、これ以上精製せずに使用した。40mMの酢酸ピリジンpH5.0緩衝液(PyrAc緩衝液)を、気相電気泳動度の質量分析(GEMMA)に使用した。コハク酸緩衝液を、他のすべての実験に使用した。標準タンパク質(ウシ血清アルブミン、グルコースオキシダーゼ、ヘモグロビン、ユビキチンおよびサイログロブリン)をSigmaから購入した。すべての化学物質は、試薬等級以上のものであり、これもまたSigmaから購入した。
【0115】
(凝集体の調製)
凝集体を、溶液の温度を40℃に上昇させるか、または塩酸グアニジンを終濃度0.45Mになるようにタンパク質溶液に加えることかのいずれかによって調製した。すべての場合において、凝集反応の程度は95%を超えていた。本発明者らは、十分に特徴付けられた凝集速度から、反応の程度を、熱誘導性凝集(タンパク質濃度において二次的であるとわかった)および塩酸グアニジン誘導性凝集(タンパク質濃度において一次的である)の両方に対して決定した。塩酸グアニジン誘導性凝集体は十分量の新しい緩衝液で洗浄し、塩酸グアニジンの終濃度が5mM未満になるようにした。再折りたたみ実験のための凝集体をほぼ1、10、あるいは20mg/ml濃度のrhIFN−γに新しい緩衝液中に懸濁した。
【0116】
(高圧下での実験)
再折りたたみ実験に使った高圧実験装置は、高圧反応器、高圧紫外線分光セル、金属ゲージ(+/−2MPa以下の精度)、および発生器から構成された。高圧反応器と高圧紫外線分光セルを設計し、本発明者らの研究室で作製した。ゲージと発生器をHigh Pressure Equipment, Co(Erie, PA)から購入した。すべての所定の実験において高圧反応器または高圧紫外線分光セルのいずれかを使用した。
【0117】
高圧紫外線分光セルを316ステンレス鋼から作製し、Buna-N 90 デューロメーター O-リングで密封し、このセルは、直径6mm、パス長7.65mmの光学ポートを有していた。セルは、円柱状のサファイヤの窓(直径16mm、厚さ5.1mm)を使用していて、250MPaまで実験に耐えることができた。圧力伝達流体(シリコンオイル)からのサンプルの分離を、セル外部のピストンデバイスによって促進した。すべての濡れた金属表面を、316ステンレス鋼で構成した。すべてのインサイチュの高圧紫外実験を、タンパク質濃度約1mg/mlで行った。
【0118】
高圧反応器中で行われた実験において、凝集体懸濁液を、約1mlのポリプロピレンの管に詰め込み、熱封し、反応器に詰め込んだ。反応器を密封し、圧力を250MPaまで上げた。この圧力は、本発明者らによって決められた、平衡状態でrhIFN−γが完全に単量体に解離していることを保証するのに十分な圧力である。サンプルを、インサイチュの二次微分紫外線測定値に基づいて(以下を参照のこと)、凝集体が解離するのに十分な時間、タンパク質が平衡に達するように、250MPaに保持した。その後、圧力を100MPaに下げ、rhIFN−γ濃度が約1mg/mlの平衡に達するために十分な時間再び保持した(以下を参照のこと)。その後、圧力を0.1MPaに下げ、サンプルを高圧反応器から取り出した。
【0119】
(透過型電子顕微鏡法(TEM))
TEMを、総タンパク質濃度約1mg/mlで2%酢酸ウラン溶液でネガティブ染色されたネイティブのrhIFN−γサンプル、凝集体rhIFN−γサンプル、および高圧処理凝集体rhIFN−γサンプルで行った。標本をホルムバール/炭素の400メッシュの銅盤上で染色し、加速電圧80,000kVで JOEL 100CX TEMで観察した。凝集体構造の顕微鏡写真を、20,000から80,000倍の倍率で得た。
【0120】
(気相電気泳動度質量解析(GEMMA))
GEMMAを用いた粒子径分析の手順は、Kaufmanらの方法(Kaufmanら(1996))に基づいていた。装置を分子量(MW)既知の標準タンパク質を用いて較正した。線形の較正曲線は電気泳動度(EM)直径の自然対数対MWの自然対数から求めた。ネイティブrhIFN−γサンプル、凝集体rhIFN−γサンプル、および高圧処理凝集体rhIFN−γサンプルを、電気伝導度が約2mΩ-1 cmであるPyrAc緩衝液によって約1μg/mlから2μg/mlに希釈し、ただちにTSI(St.Paul, MN)のGEMMA分析器を用いて分析した。PyrAc緩衝液は、サンプル中の不揮発性物質が1ppmより低いというGEMMAの要件のために使われた。
【0121】
本GEMMA分析器は、3480型電気スプレーエアロゾル生成器、3085型微分移動度解析機(DMA)、および3025A型超微細凝縮粒子計測計(CPC)から成っていた。フィルターろ過された乾燥空気を、空気供給設備から307402型フィルター/乾燥機を通して1Lpmの速度で送り込んだ。instrument−gradeの二酸化炭素を0.05Lpmから0.1Lpmの速度で送り込んだ。溶融二酸化珪素電気スプレーキャピラリーは、25cmの長さで、25μmの内径であった。サンプルの流れ(毎分約100nL)を、キャピラリーにかかっている25kPa(3.7psi)の圧力差によって促進した。2kVの電圧をキャピラリー中で維持した。これは、200から250nAの電流に対応する。
【0122】
データ収集を、マイクロソフトウィンドウズ(登録商標)95(著作権)が作動しているIBM互換性PC上で、TSIのAerosol Instrument Manager(AIM(著作権))β4.10版ソフトウェアを用いて行った。このデータ収集ソフトウェアは、電気泳動度直径10個につき64の対数で区切ったチャンネルを使った。空気の粘度(μ)に関しては1.82x10−5kg/(m s)、平均自由行程(λ)に関しては7.75x10−8m、およびタンパク質の密度(ρ)に関しては1.2g/mlという推定値を用いることにより、サンプル分析を、約2.5から58nmの間、データ取得時間は3分から6分で行った。質量パーセント濃度単位のデータファイルを、テキストファイルとして出力し、マイクロソフトエクセル(著作権)に入力した。電気泳動度直径は、所定のピークの最大値により決定された。単量体対二量体の比および反応の程度を(二量体の質量パーセントに基づく)、質量パーセントの分布での個々のピークの有限積分によって決定した。
【0123】
(動的光散乱(DLS))
動的光散乱計測を、Nicomp 370 Submicron Particle Sizer(Particle Sizing Systems, Santa Barbara, CA)を用いて、rhIFN−γの熱誘導凝集体について行った。総タンパク質濃度は、1mg/mlであった。
【0124】
(微分紫外線分光)
吸収スペクトルを、Perkin Elmer Lambda 3B デュアルビーム分光光度計を用いて、rhIFN−γ約1mg/mlで測定した。スキャンを、毎分15nmのスキャン速度で310nmから250nmの間で行った。データ収集を、National Instruments(Austin, TX)のモデルAT-MIO-16E-10 データ収集盤を用いて、毎秒5サンプルの速度で行った。National InstrumentsのLabView(著作権)ソフトウェアをデータの収集を制御するために、マイクロソフトエクセル(著作権)を、波長および吸収データを電圧からそれぞれnmおよび吸収単位に変換するために用いた。吸収スペクトルの二次微分(d2A/dλ2)を、Grams/386(v.3.02)ソフトウェア(Galactic Industries)上で、Savitzky−Golay法を用い、+/−2nmにわたって二次の多項式で平滑化して計算した。
【0125】
Lauda M3型再循環式浴槽温度コントローラーで一定温度に保たれた流体を再循環させることによって、温度を制御した。高圧反応器で処理されたサンプルのスペクトルを、適切なブランクを分光光度計の参照セル中に置き、標準的な光路長10mmの石英キュベット中で、大気圧下で収集した。高圧のセル中で行う実験については、参照サンプルを分光光度計中に置かずに、吸収スペクトルを試料および緩衝液別々に収集した。適当な圧力下で収集された緩衝液スペクトルをタンパク質のスペクトルから引き算することを、二次微分の計算の前に、Grams/386(v.3.02)ソフトウェアで行った。
【0126】
(フーリエ変換赤外線分光法(FTIR))
IRスペクトルを、8μmに合わせた調整可能な光路長のセルを用いて収集した。ブランクの緩衝液スペクトルを、タンパク質を加えずに同じセルを用いて、同じ溶液条件下で収集した。すべてのスペクトルを、大気圧下でDTGS検出器を備えたNicolet Magna−IR(著作権) 750 series II分光光度計(Madison, WI)で収集した。シングルビームモードで、NicoletのOmnic(著作権)(v.2.1)ソフトウェアを用いることにより、4cm-1分解能で、約20mg/ml濃度のサンプルに対しては256スキャンに対してシグナルを平均して、約10mg/ml濃度のサンプルに対しては1024スキャンに対してシグナルを平均して、インターフェログラムを収集した。光学ベンチおよび試料チャンバーを、常にWhatman 75−52型FTIRパージガス生成器(Haverhill,MA)から供給された乾燥空気でパージした。タンパク質含有緩衝液および緩衝液両方のシングルビームスペクトルを、それぞれのバックグラウンドのスペクトルを引くことによって、吸収スペクトルに再加工した。Nicoletのソフトウェアを、緩衝液および水蒸気の寄与をタンパク質含有緩衝液から引き算することおよび二次微分を計算することのために用いた。差スペクトルを、白色ノイズを除くために7点ごとに平滑化し、Grams/386(著作権)(v.3.02)ソフトウェア(Galactic Industries)に出力した。ここでスペクトルのベースラインは補正され、1995年のDongらの方法によって、面積が規格化された。
【0127】
(サイズ排除クロマトグラフィー(SEC))
可溶な凝集体の存在および高圧処理凝集体の単量体/二量体の含有量を、SECで測定し、液体コントロールと比較した。不溶性凝集体を、遠心分離で取り除き、その上清をサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)でアッセイした。上清の50μlのアリコートをコハク酸緩衝液中に1mg/mlとなるように希釈し、二酸化珪素担体のTosohaas TSK−GEL G2000SWXL カラムに充填した。1.2M KClの移動層を、毎分0.8mlの流速でポンプで流し、時間の関数として214nmの吸光度をモニターした。結果として出てきたクロマトグラムを、Grams/386(著作権)(v.3.02)ソフトウェアに入力した。このソフトウェア上で、データが面積規格化され、単量体と二量体の%寄与と溶出時間とを決定するために曲線にあてはめた。自動で求めたカーブフィット関数を、二つのピークのより大きなピーク、ガウス曲線、中間の感度、およびオフセットベースラインについて設定したパラメーターとともに使用した。本装置を、既知のMWの標準タンパク質を用いて較正した。線形較正曲線を、溶出時間の自然対数対MWの自然対数から求めた。
【0128】
(結果と考察)
(凝集体の特徴付け:物理的特徴付け)
5mg/mlを超えたタンパク質濃度では、熱誘導性rhIFN−γ凝集体は、高い粘性の無色透明のゲルを形成し、このゲルを遠心分離で濃縮することは不可能であった。約1mg/mlの濃度では、タンパク質濃度は十分に低く、凝集による粘度の上昇は最小で、遠心分離で分離することは可能であった。より高いタンパク質濃度で形成された凝集体と同様に、約1mg/mlの濃度で形成された凝集体は、無色で比較的ごくわずかな光を散乱した。高温で形成された凝集体とは対照的に、塩酸グアニジンをrhIFN−γ溶液に加えることによって、白色不透明の沈殿が形成された。この沈殿は、凝集体のタンパク質濃度によらず、溶液から簡単に遠心分離できた。
【0129】
凝集体の電子顕微鏡写真によって、熱誘導性凝集体は中間程度の長さの繊維状鎖のマトリクスを形成している(図2A)のに対して、塩酸グアニジン誘導性凝集体はアモルファスの沈殿を形成している(図2B)ことが明らかになった。熱誘導性凝集体の小繊維は、10nm程度の一定した直径を有している。熱誘導性凝集体中には、アモルファス構造は見られなかった。逆に、塩酸グアニジン誘導性凝集体サンプル中には繊維状構造は見られなかった。
【0130】
ネイティブのrhIFN−γおよび熱誘導性凝集体のEMにおける直径の分布を、GEMMAで測定し、その結果を図3に示す。PyrAc緩衝液中で25度、1mg/ml濃度で平衡化したネイティブのタンパク質は、4.4nmおよび5.5nmに中心を持つ二つの大きなピークを持つことがわかった(図3A)。既知の標準タンパク質を用いた較正曲線から、これらピークはそれぞれ16kDおよび32kDの分子量を持つ粒子に対応した。これらの分子量は単量体および二量体のrhIFN−γの既知の分子量(それぞれ16.45kDおよび32.9kD)とよく一致する。サンプル濃度が約3μg/ml未満に保たれている場合は、ネイティブサンプルには、他の大きなピークは検出されなかった。GEMMAで検出された単量体の質量パーセント(図3A中の約12%)は、解離平衡実験から人工的に高い値であることが決定された。単量体に対するバイアスは、電気泳動キャピラリーでのネイティブ二量体の表面誘導性解離が原因で生じる。ネイティブのrhIFN−γに対する較正された単量体の質量パーセントそして、GEMMAで決定された単量体および二量体に対するEM直径および実効分子量を表1Aで報告する。
【0131】
【表1A】

【0132】
【表1B】

コハク酸緩衝液中で40℃、21mg/mlで48時間で凝集させた、熱誘導性凝集体サンプルは、単量体および二量体、それぞれ約1%および4%の質量パーセントであった。質量パーセントで95%を超える凝集体(図3B)は、質量平均直径が16.5nmであった。これは既知の標準タンパク質による較正曲線を基にすると980kDの平均実効MWに対応する。このGEMMAの実効直径は、実効水和直径が1900nmであることを示すDLSの結果とあまり一致しなかった。また凝集体が目に見えたという事実ともあまり一致しなかった。小滴がキャピラリーの出口で形成されるように、繊維状の凝集体がより小さな凝集体へ剪断されること(Kaufman,2000)は、ありそうなことである。従って、GEMMAは凝集体の大きさを評価するには適した技術ではないということが決定された。しかし、凝集体の存在の検出および凝集体の質量パーセントを決定するには適している。DLS測定から得られた粒子の直径は、熱誘導性凝集体の形態に起因して正しくないと考えられ、単にGEMMAの結果とおおまかに比較するためだけに使われた。塩酸グアニジン誘導性凝集体は、サンプル中の不揮発性物質の濃度が1ppm未満であることが必要であるので、GEMMAで解析されていなかった。
【0133】
(凝集体の特徴付け:構造的特徴付け)
二次微分紫外線スペクトルにおける275nmから295nmの領域は、トリプトファン残基およびチロシン残基の微視的環境を反映し、この領域はタンパク質のコンフォメーション状態により影響を受ける(Balestrieriら,1978;Ragoneら,1984;Servilloら,1982)。チロシンおよびトリプトファンの微分紫外線スペクトルは、ほとんど圧力の影響を受けない(Langeら,1996)ので、圧力によるrhIFN−γの二次微分紫外線スペクトルへの変化は、本発明者らがここで示したように、ネイティブコンフォメーションへの変化の結果である。5mMコハク酸ナトリウム緩衝液中での、ネイティブタンパク質、圧力解離性可溶性タンパク質、およびrhIFN−γの熱誘導性凝集体ならびに塩酸グアニジン誘導性凝集体の二次微分紫外線スペクトルを、図4に示す。rhIFN−γのネイティブ型および解離型に対する286nm近辺に存在する極大波長の位置は、解離の度合いに依存せず、その相対的な高さは本発明者らによって、rhIFN−γの解離の度合いを表すことが示された。従って、この極大値の相対的高さはまた、凝集体非存在下で、rhIFN−γの再会合および再折りたたみの度合いを追跡するのに利用可能である。
【0134】
二つの凝集体型(熱誘導性または塩酸グアニジン誘導性凝集体)のスペクトルは、ネイティブの二次微分紫外線スペクトルから、同程度のずれ(deviation)を示し、ネイティブスペクトルおよび圧力解離性スペクトル両方と異なる(図4)。凝集体のスペクトルは、全体的にシグナルの振幅が減衰し、吸収スペクトルがブルーシフトしていることを示す。このことはともに、トリプトファン残基およびチロシン残基がネイティブ構造に比較して親水性の環境への露出が増加したことを示す(Langeら,1996;MachおよびMiddaugh,1994)。加えて、両凝集体のスペクトルは、280nm近辺の極小値の深さが大きく減少することを示す。しかし、凝集体の二次微分紫外線スペクトルの間に顕著な違いがある。振幅の減衰および波長シフトにより測定されるネイティブスペクトルからの摂動の大きさは、塩酸グアニジン誘導性凝集体のスペクトルに比べて熱誘導性凝集体のスペクトルでより小さい。さらに、塩酸グアニジン誘導性凝集体スペクトルでは、288nmおよび280nm近辺の極大値において大きなバンドの広がりが見られたが、熱誘導性凝集体スペクトルでは見られなかった。
【0135】
二つの凝集体型の二次構造を互いに、およびネイティブ型と比較するために、これら三つの状態全てのFTIR吸収スペクトルを収集し、二次微分スペクトルを計算し、比較した。図5は、緩衝液中のネイティブrhIFN−γおよびrhIFN−γの熱誘導性凝集体ならびに塩酸グアニジン誘導性凝集体の二次微分FTIRスペクトルのプロットである。ネイティブ状態からの大きな摂動が、両方の凝集体型で観測された。その変化とともに、吸収の波長シフトおよびαへリックスバンドでの吸収の減少(ネイティブスペクトル中の1656cm−1近辺)、それに伴う1620cm−1および1695cm−1近辺の分子内βシートバンドの出現(図5)、が観察された。1620cm−1および1695cm−1近辺の分子内βシートバンドの寄与は、両凝集体型でほぼ同等であり、αへリックスバンドの減少の程度についても同様である。βシート構造(1630cm−1から1645cm−1近辺の領域)およびターン構造(1670cm−1から1685cm−1近辺の領域)とでのほんのわずかな違いが、熱誘導性凝集体と塩酸グアニジン誘導性凝集体との間で認められた。
【0136】
(高圧性解離(dissolution)と再折りたたみの反応速度論)
圧力は、タンパク質のサブユニットの高次の会合に、よくないと知られている(SilvaおよびWeber 1993)。従って以前に示されているように(Foguelら,1999;GorovitsおよびHorowitz 1998;Silvaら,1989;St.Johnら,1999)、凝集体の解離に使用され得る。rhIFN−γの塩酸グアニジン誘導性凝集体が250MPa下にさらされると、310nmの吸収により測定されるように(図6A)、光散乱性凝集体の迅速で完全な消失が起こった。総rhIFN−γ濃度は1mg/mlであり、溶液中の塩酸グアニジン濃度は約5mMであった。いったん、凝集体の解離を完結させて、吸収のスキャンを250MPaで行い、微分スペクトルを計算した。圧力を二次微分スペクトルが経時的に変化を起こさなくなるまで(約30分)、250MPaに維持した。本発明者らは、250MPa下では、塩酸グアニジン誘導性凝集体の二次微分スペクトルが、ネイティブのrhIFN−γが250MPaの圧力によって解離したときに得られるスペクトル(図4)に平衡化していることを発見した。このことは、凝集体構造の完全な破壊および二量体構造の単量体への解離を示す。
【0137】
いったん、250MPa下で二次微分スペクトルがさらに経時的に変化を生じなくなったら、圧力を100MPaに下げ、吸収スペクトルを経時的に収集した。二次微分スペクトルを、再度計算し、経時的な変化がもはや観測されなくなるまで比較した。100MPaでは、286nm近辺の極大値(圧力解離スペクトルでの最大値、図4を参照のこと)は、時間とともに高さが減少し、最終的に、タンパク質がよりネイティブのコンフォメーションを示し始めたとき、最小値に達した。図6Bは、塩酸グアニジン誘導性凝集体が250MPaで解離した後の、100MPaで1mg/mlでのrhIFN−γの再会合/再折りたたみに関する、286nm近辺の極大値の高さの時間に対するプロットである。図6Bに重ねて書かれているものは、rhIFN−γの圧力解離型およびネイティブ型のスペクトル、さらに圧力を0.1MPaに下げることによって生成された、圧力再折りたたみ平衡型(1mg/ml rhIFN−γ)のスペクトルの高さである。100MPaでの再折りたたみは、約1時間で完了し、圧力処理凝集体の286nm近辺の極大値の高さは、ほぼ完全にネイティブのコントロールの極大値の高さにまで復帰した。
【0138】
熱誘導性凝集体の圧力による解離速度は、310nmの吸収の時間変化による定量化はできない。なぜなら、凝集体は光を十分に散乱しないからである。同様に、凝集体の圧力による解離も、275nmと295nmの間の領域で追跡することは不可能である。凝集体の解離および圧力解離型への構造変化(図4)はいずれも同時に起こるからである。従って、圧力による熱誘導性凝集体の解離の速度は、塩酸グアニジン誘導性凝集体の圧力解離と直接比較することはできない。しかし、二次微分のUVから測定された、熱誘導性凝集体が圧力解離状態を示すまでに必要な時間(約2時間)は、塩酸グアニジン誘導性凝集体が圧力解離状態を示すまでに必要な時間(約30分)に比べて十分に遅い(データは示さず)。しかし、いったん、圧力解離状態が達成されると再折りたたみ速度は、同等である(図6B)。
【0139】
(圧力処理凝集体の性格付け)
緩衝液中で、タンパク質濃度が約1mg/ml、10mg/ml、および20mg/mlであるrhIFN−γの熱誘導性凝集体および塩酸グアニジン誘導性凝集体を、250MPaで5時間加圧した。その後、圧力を1時間半の間100MPaに下げ、さらに再び0.1MPaにまで下げた。凝集体由来のネイティブ様の性質の取得に対する圧力処理の効果および再凝集に対する圧力処理凝集体の安定性をそれぞれ評価するために、圧力処理凝集体の解析を、圧力処理直後および2週間後両方に行った。TEM、GEMMA、およびHPLCを圧力処理凝集体の物理的特徴付けに利用し、二次微分UVおよび二次微分FTIR分光法を、圧力処理凝集体の構造的特徴付けに利用した。各々の技術の結果の比較を、圧力処理凝集体、凝集体コントロール、およびネイティブの液体rhIFN−γコントロールの間で行った。
【0140】
(圧力処理後の物理的特徴付け)
減圧によって、すべての熱誘導性凝集体および塩酸グアニジン誘導性凝集体のサンプルは目に見える粒子は存在せず、光学的に透明であった。そのうえ、10mg/mlおよび20mg/ml濃度の熱誘導性凝集体サンプルは、圧力処理前はゼラチン状の固体であったのが、ネイティブの液体コントロールと区別できない程度(定性的に判断した)の粘度をもつ液体であった。
【0141】
TEMを、液体コントロールおよび両タイプの凝集体の1mg/mlならびに20mg/ml(圧力処理およびコントロール)サンプルについて、総タンパク質濃度約1mg/mlで行った(20mg/mlサンプルは、圧力処理後すぐに希釈された)。図7は、rhIFN−γの(A)熱誘導性凝集体、(B)塩酸グアニジン誘導性凝集体および(C)液体コントロールに対する圧力処理体の代表的なTEM顕微鏡写真を含む。凝集体コントロールは、最初に観察したものと構造が変化していなかったので、凝集体コントロールのTEM写真を、図7に示さない(凝集体コントロールの代表的な構造は、図2を参照のこと)。図7のすべての電子顕微鏡写真は、40,000倍である。圧力処理サンプルおよび液体コントロールの両方において、アモルファス構造および繊維状構造が観察された。アモルファス物質は繊維状物質よりも多く存在した。図7A2は、熱誘導性凝集体の圧力処理体からのアモルファス構造を示す。これは三つ全てのrhIFN−γサンプルで多く見出される構造の代表例である。両圧力処理凝集体および液体コントロールにおいて、観測された構造および繊維状物質に対するアモルファス物質の頻度は一定であった。そのうえ、両熱誘導性凝集体および塩酸グアニジン誘導性凝集体の1mg/mlまたは20mg/ml濃度で圧力処理されたサンプル間に、違いは観察されなかった(比較は示さず)。圧力処理前に熱誘導性凝集体サンプル中に観察された繊維状ネットワークは、破壊されていて、圧力処理熱誘導性凝集体の大部分は、アモルファスであった。さらに、圧力処理塩酸グアニジン誘導性サンプル中に観察された繊維状物質は、塩酸グアニジン誘導性凝集体コントロール中には見出されなかった。
【0142】
圧力処理凝集体および液体コントロールに見られる繊維状構造は、熱誘導性凝集体コントロール中に見られる繊維状構造よりも、長さが短く、直径がよりまちまちであった。圧力処理凝集体および液体コントロール中の繊維状構造の長さは、一般的に100nmから1000nm長で、直径は代表的に約12nmであったが、約25nmにまで達するものもあった。いくつかの絡み合った繊維のネットワークは、三つすべてのサンプルセットで観測され、その例を図7A3および図7C2に示す。圧力処理凝集体の形態は、コントロールとはっきり区別できず、TEMサンプルの調製(タンパク質サンプルの乾燥を含む)は、アモルファス凝集体および繊維状凝集体両方と一致した構造を誘導する、ということが結論付けられた。
【0143】
(圧力処理後の構造的特徴付け)
圧力処理に続いて、UVおよびFTIR吸収スペクトルを収集し、加圧サンプルおよびコントロールサンプルに対して、二次微分UVおよび二次微分FTIRの吸収スペクトルを計算した。すべてのUV解析が1mg/ml rhIFN−γ濃度で行われるように、10mg/mlおよび20mg/mlのサンプルを、減圧後すぐに希釈した。技術上の濃度限界により、FTIR分光法を10mg/mlおよび20mg/mlのサンプルのみにおいて行った。
【0144】
図8は、(A)熱誘導性凝集体および(B)塩酸グアニジン誘導性凝集体の圧力処理体に対する二次微分UVスペクトルのプロットである。圧力処理プロトコール後、スペクトルを0.1MPaで記録した。参照として、ネイティブrhIFN−γの二次微分UVスペクトルを、図8の両方のパネルに重ねている。凝集体のコントロールスペクトルを、明瞭にするために図8から省略する(凝集体のスペクトルは、図4を参照のこと)。ネイティブの二次微分UVスペクトルの復帰の大きさは、凝集体型に独立である。しかし、ネイティブの二次微分UVスペクトルの復帰の程度は、濃度依存的で、低タンパク質濃度においてネイティブスペクトルは大きな回復を示した。1mg/mlで、圧力処理凝集体は、ネイティブrhIFN−γ液体コントロールとほぼ同程度の二次微分UVスペクトルにまで復帰する。表2は、再折りたたみ状態と圧力解離状態との間の、ネイティブおよび圧力解離状態に対する286nm近辺の極大値の高さの違いの比を使って、二次微分UV分光学によって測定されたネイティブスペクトルの復帰のパーセンテージの要約を含む。
【0145】
【表2】

図9は、10mg/mLおよび20mg/mLで行った圧処理についての、(図9A)圧処理した熱誘導rhIFN−γ凝集体、および(図9B)圧処理したグアニジン塩酸塩誘導rhIFN−γ凝集体の、面積を標準化した二次導関数FTIRスペクトルのプロットである。FTIR技術に関連する調製時間およびサンプル収集時間が原因で、FTIRスペクトルは、3時間の減圧中に収集した。比較目的のために、ネイティブrhIFN−γの二次導関数FTIRスペクトルを、図9の両方のウィンドウ上に重ねている。UVスペクトル分析の結果と同様に、FTIRによって定性的に測定されたネイティブ二次構造の回復は、凝集体形態非依存的である。なぜなら10mg/mLおよび20mg/mLにおける二次導関数FTIRスペクトルは、各々、両方の凝集体形態ついて同じであるからである。しかしながら、ネイティブ様の二次構造の回復は、圧処理中のタンパク質の濃度に依存する。10mg/mLのサンプルおよび20mg/mLのサンプルの両方について、圧処理により、1620cm−1および1695cm−1付近において分子間のβシートバンドで大幅の減少が存在する。しかし、ネイティブのスペクトルで観察されるレベルへの、これら分子間のβシートバンドの減少は、10mg/mLのスペクトルについてはほぼ完全であり、一方、20mg/mLのスペクトル各々について、1620cm−1および1695cm−1付近に有意なバンドが存在したままである。二次導関数FTIRで測定した場合、圧処理した10mg/mLのサンプルは、ネイティブ構造で見られるα−へリックスの全て(1656cm−1付近のバンド)を回復している。重なった面積で測定した場合(Kendrickら、1996)、ネイティブ二次構造の回復は、10mg/mLおよび20mg/mLの圧処理について、各々約90%および70%である。表2は、重なった面積で測定した場合のFTIRによるネイティブ構造の回復を、二次導関数UV分光法によるネイティブ構造の回復と比較する。UVおよびFTIRで測定した、ネイティブ様性質の回復のパーセントは、10mg/mLおよび20mg/mLの圧処理サンプルの両方について適度に一致した。なぜなら各方法の再現性は、約5%であるからである。
【0146】
(圧処理した凝集体の安定性:物理的特徴付け)圧処理に続く最初の分析後、圧処理した凝集体サンプル、凝集体コントロールおよびネイティブコントロールを、4℃に配置した。圧処理後2週間で、熱誘導凝集体およびグアニジン塩酸塩誘導凝集体の両方における10mg/mLの圧処理サンプルおよび20mg/mLの圧処理サンプルは、圧処理を行っていない熱誘導凝集体に類似した、無色で透明なゲルを形成した。しかしながら、(定性的に判断した)これらサンプルの粘度は、熱誘導凝集体コントロールについて観察された粘度と比較して著しく低かった。1mg/mLで圧処理した凝集体間の定性的な時間依存的差異は、認められなかった。
【0147】
GEMMAおよびSECを、圧処理直後にコハク酸緩衝液中に1mg/mLになるように希釈した後、4℃で2週間保存した、圧処理した凝集体に対して行った。圧処理したサンプルに関するGEMMAの結果およびSECの結果を、液体コントロールおよび凝集体コントロールと比較した。開始凝集体の型またはリフォールディングタンパク質の濃度について、GEMMAまたはSECのいずれかにより得られる効果は、観察されなかった。GEMMAおよびSECにより測定した場合、圧処理した凝集体はただ2種類のみ含んでおり、そしてそれらは単量体および2量体と同定された。圧処理した凝集体サンプルまたはネイティブコントロールいずれにおいても、より高次の凝集体は検出されなかった。熱誘導凝集体コントロールのGEMMA分析は、凝集体の巨大集団(95質量パーセントを超える)を示した(図3)(また、GEMMA分析は、グアニジン塩酸塩誘導コントロールに対しては行わなかった。)。
【0148】
GEMMAおよびSECに関するネイティブコントロールと圧処理した凝集体との間の結果の概要を、表1Aおよび2Bに各々表示する。開始凝集体の型またはリフォールディングタンパク質の濃度について、効果は観察されなかったので、表1中の圧処理した凝集体に関するデータは、試験した全ての開始凝集体の型およびリフォールディングタンパク質の濃度の平均を計算したものである。GEMMAで測定した、圧処理した粒度分布における2つのピークは、4.6nmおよび5.7nmに集中した。これらは、コントロール(単量体または2量体)の分布中に存在する各々の対応部分よりも、EM直径が大きかった。更に、GEMMAにより、ネイティブコントロールと比較して大きな単量体の質量パーセントが、リフォールディングされた凝集体で確認された。SECにより、圧処理した凝集体について2量体の溶出時間がコントロールと比較して短かったが、単量体の溶出時間に、差異は測定されなかった。コントロールと圧処理した凝集体との間で、単量体の質量パーセントの差異は、SECにより、測定されなかった。GEMMAのデータとSECデータとは、単量体の質量パーセントの増加に関して矛盾しているので、そのデータは、圧処理した凝集体サンプルにおける、コントロールに対して増加した単量体の質量パーセントという結論を支持しない。
【0149】
GEMMAのデータおよびSECのデータについて、圧処理した凝集体サンプルおよびネイティブコントロールサンプル中にある単量体および2量体の分子量の推定は、既知の分子量を持つタンパク質を用いて作製された検量線から行った。そして、これらの分子量の推定を、表1に表示する。コントロールサンプルの単量体および2量体に関する分子量の推定は、GEMMAおよびSECの両方によって正確であった。なぜなら、rhIFN−γ単量体およびrhIFN−γ2量体の既知の分子量は、各々16.45kDおよび32.9kDであるからである。圧処理した凝集体サンプルの2量体の分子量の推定値は、GEMMAおよびSECの両方によって、コントロールサンプルについての2量体の分子量の推定値と比較して大きかった。2量体の見かけの分子量の増加は、不適切にフォールディングし膨張した状態の2量体に起因すると考えられる。単量体に関する見かけの分子量は、GEMMAによって、コントロールに対して大きかったが、SECによっては、コントロールに対して変化はなかった。
【0150】
(圧処理した凝集体の安定性:構造の特徴付け)圧力によるリフォールディングを行った2週間後、減圧直後に1mg/mLとなるように希釈したサンプルを、4℃保存より取り出し、UVにより分析した。濃度制限は、FTIRによるこれらサンプルの分析を妨げた。図10は、1mg/mL、10mg/mLおよび20mg/mLで圧処理した、熱誘導した圧処理凝集体の二次導関数UVスペクトルのプロットである。参考のために、図10にネイティブrhIFN−γの二次導関数UVスペクトルを重ね合わせる。1mg/mLで圧処理した凝集体サンプルのスペクトルは、圧処理直後に得たスペクトルと同じあり、ネイティブ様特徴の本質的に完全な回復を示した。しかしながら、10mg/mLで圧処理した凝集体サンプルおよび20mg/mLで圧処理した凝集体サンプルのスペクトルは、圧処理直後に得たそれぞれのスペクトルから変化した(図8)。1mg/mLにて、4℃において2週間保存した後、286nm付近の極値の高さにより測定したネイティブ構造の回復は、1mg/mL、10mg/mLおよび20mg/mLの圧処理した熱誘導凝集体に関して、各々100%、97%および94%であった。10mg/mLで圧処理した熱誘導凝集体および20mg/mLで圧処理した熱誘導凝集体に関するネイティブ構造の回復は、圧処理直後に測定した、各々、89%および79%(表2)から増加した。圧処理直後の場合と同じように、圧処理の2週間後、ネイティブの二次導関数UVスペクトルの回復の程度は、凝集体型に非依存的である。圧処理したグアニジン塩酸塩誘導凝集体サンプルの二次導関数UVスペクトルは示していないが、286nm付近の極値の高さによって測定したネイティブ構造の回復は、1mg/mLのサンプル、10mg/mLのサンプルおよび20mg/mLのサンプルに関して、各々100%、97%および95%であった。1mg/mLにて、4℃において保存した後、二次導関数UVで測定したネイティブ構造の回復は、リフォールディング中に、タンパク質濃度について減少傾向を示す。しかし、回復の差異は、この方法の精度の範囲内にある。
【0151】
(ネイティブ2量体の回復に関する濃度依存性)凝集体からのネイティブ2量体の回復は、興味深いタンパク質濃度依存性を示した。リフォールディングプロトコルが完了した直後に得たUV分光データおよびFTIR分光データは、回復の程度に関する強い濃度依存性を示す。更に、圧処理後に得た二次導関数FTIRスペクトルは、凝集の明らかな徴候を、特に20mg/mLでリフォールディングしたサンプルについて(図9における、1620cm−1および1695cm−1での分子間βシートバンドの存在)、示した。更に、4℃において2週間保存した後、希釈していない10mg/mLで圧処理した凝集体サンプルおよび希釈していない20mg/mLで圧処理した凝集体サンプルは、これらのサンプルの粘度における明確な増加によって、凝集の巨視的な証拠を示した。しかしながら、同じ圧処理サンプルであって、圧処理直後に1mg/mLとなるように希釈したものは、リフォールディング中のタンパク質の濃度に関わらず、GEMMAおよびSECによって凝集体の何の徴候も示さず、TEMによって、液体コンとロールと区別できず、そして、UV分析によって、ネイティブ構造がほぼ完全に回復したことを示した。この興味深いタンパク質濃度依存性を説明するために、rhIFN−γの凝集経路に対する圧力の効果およびこの凝集経路を理解する必要がある。
【0152】
静水圧は、オリゴマータンパク質を解離させることが公知であり(GrossおよびJaenicke 1994;SilvaおよびWeber 1993)、本発明者らによって、凝集体分離のために本明細書で使用している圧力域において、rhIFN−γを解離させることが示された。このリフォールディングプロトコル中に収集したインサイチュUVデータは、100MPaで約1時間後に、リフォールディングが本質的に完了することを示した。このインサイチュUVデータは、その技術の吸光度限界が原因で、10mg/mLおよび20mg/mLではなく、1mg/mLで収集された。ゆえに、100MPaにおける濃度の関数としてのリフォールディング速度は、知られていない。もし、100MPaにおけるリフォールディング速度が、より高いタンパク質濃度で減少したならば、100MPaで1.5時間のリフォールディング時間後、かなりの単量体が、10mg/mLのサンプルおよび20mg/mLのサンプル中に存在しただろう。本発明者らは、減圧直後に収集した、10mg/mLのサンプルおよび20mg/mLのサンプルに関する二次導関数UVスペクトル(図8)が、増加した単量体の濃度と一致することを示した。更に、単量体を経たrhIFN−γ凝集体、そして、ゆえに、減圧の際の単量体rhIFN−γの存在が、凝集を導くと予測されることが、本発明者らによって確立された。このように、圧処理した凝集体の二次導関数UVスペクトル(図8)において(圧処理直後に)観察される濃度依存性は、増加したタンパク質濃度で、増加した単量体集団を反映するようである。
【0153】
そこで、10mg/mLで圧処理した凝集体サンプルおよび20mg/mLで圧処理した凝集体サンプルに関して、なぜ、希釈していないサンプルで凝集が観察され、1mg/mL rhIFN−γとなるように希釈したサンプルでは凝集は観察されないのか?回答は、タンパク質の凝集とタンパク質のフォールディングとの間の関係に存在する。タンパク質の凝集は、フォールディング中間体を介して進行するので、凝集とフォールディングとは、競合するプロセスである(Bettsら 1997;Clarkら 1999;Fink 1998)。タンパク質のリフォールディング段階は、一般に一次のプロセスである(Clarkら 1999)が、本発明者らは、高電解質濃度非存在下におけるrhIFN−γ凝集は、タンパク質濃度中で2次であるということを、決定した。もし、rhIFN−γのフォールディングの律速段階が、2次より低次(例えば1次)であるならば、より低いタンパク質濃度は、凝集よりもリフォールディングを支持するだろう。2量体のもつれ合った性質を考慮した場合(Ealickら 1991)、rhIFN−γのリフォールディング反応速度を1次と想定することは、適当である。もし、2量体取得における律速段階が、単量体同士の衝突速度ではなく、リフォールディングが起こり得る正確な構造を呈した速度であるならば、1次反応速度が観察されるだろう。その上、温度低下は、凝集阻害および2量体取得に寄与し得る。なぜならば、凝集反応は大きな活性化エネルギーを有するが、2量体を導く会合反応は、比較的に温度非感受性であるからである(Botevaら 1996)。このように、より低い温度は、凝集よりもリフォールディング反応を促す。
(実施例3:リゾチームリフォールディング)
圧力は、液圧式10倍増圧装置(High Pressure Equipment Company,Erie,PA)に連結させた高圧窒素(40MPa)を用いて発生させた。50mM Tris(pH8.0,24℃)、GdnHCl、2mM DTT、および、望ましい最終比のGSSG(GSSG:GSH;最適比は1:1)中の1mg/mLリゾチーム凝集体懸濁液を、SAMCO(登録商標)移動ピペットのヒートシールした球状部の中で調製し、水のバック中でシールし、そして、200MPaに調節した2リットルのクローバー型反応器中に置き、油で満たした。サンプルを、加圧誘導加熱を最小とするために、目的の最終圧力へとゆっくり(20分をかけて)加圧した。減圧を、各々の減圧段階に約5分を要しながら、20MPaずつ変化させて実施した。サンプルを、減圧の間、各中間圧において15分間インキュベートして、1MPa/分(10バール/分)となる全体の減圧速度を生じた。圧力器中に取り付けた熱電対によりモニターした場合、圧力誘導加熱により引き起こされる熱過渡は、この加圧速度で最小(<2℃)であった。他のように述べない限り、全ての圧力実験を24℃で行った。
(実施例4:ビクニンリフォールディング)
リフォールディングの研究を、6つのジスルフィド結合を有する、170アミノ酸タンパク質であるビクニンについて、実施した。このタンパク質は、発酵中に、頻繁に凝集体を形成する。この凝集体は、ネイティブでないジスルフィド結合から構成され、4〜8つの単量体のオリゴマーである。これらジスルフィド結合が乱雑になったタンパク質凝集体をリフォールディングするために高静水圧(1000バール〜3000バール)を使用し得るか否かを決定するために、実験を実施した。
【0154】
凝集したビクニンを、シールしたシリンジ内に置き、様々な反応器条件で圧力下に保持した。圧力、pH、酸化還元条件、温度および減圧速度を、全て制御した。基本ケースと同様に、次の条件を使用した:凝集したビクニンの1mg/mLサンプルを、4mM酸化型グルタチオン(GGSG)、2mMジチオスレイトール(DTT)中に、200MPa、25℃で16時間、保持した。その後、圧力が100MPaに達するまで、サンプルを、30分毎に10MPaづつ減圧した。0.1MPaに達するまで、サンプルを更に、15分毎に25MPaづつ減圧した。加圧後、リフォールディング収率を決定するために、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を使用して、サンプルを分析した。検量線を使用して、質量バランスが実験中に維持されていることを確実にした。サンプルをまた、逆相クロマトグラフィー(RP)および活性アッセイを介した分析のために、2次実験へまわした。これら2次研究は、SECが、不活性単量性タンパク質の存在が原因で、約10%だけリフォールディング収率を過大評価した事を、示した。依然として、SECを最適化手段として使用したが、最終リフォールディング収率は、活性アッセイで確認した。
【0155】
45%+/−4%のリフォールディング収率を、上記した「基本ケース」の条件で活性定量によって測定した場合に、得た。リフォールディング条件の急速な最適化を、「基本ケース」の条件付近で溶液条件を変化させることにより、行った。単純なアルゴリズムを使用した:産業科学者に周知の、より複雑に設計された実験は、より少ない実験でより最適な条件をもたらす可能性がある。しかしながら、基本ケースの条件付近で酸化還元条件、温度、圧力および減圧速度を別々に変化させるという単純な技術を使用することによってさえ、適正な最適条件を素早く発見した。
【0156】
酸化型グルタチオンおよび還元型グルタチオンを、リフォールディング溶液中で酸化還元条件を制御するために、使用し得る。これらの化合物は、ネイティブでないジスルフィド結合を破壊し、そしてネイティブのジスルフィドを再形成するために、必要である。代表的には、全グルタチオン濃度が6mM〜16mMの間である場合に、最適酸化還元条件が存在し、この系に特異的である還元型グルタチオンと酸化型グルタチオンとの比率は、しばしば1と3との間である。サンプルを、種々の酸化還元条件を用いて作製し、リフォールディング収率に対する効果を決定するために、3つの異なる圧力条件で試験した。単量体のSECピークと凝集体SECピークとの比率を、リフォールディングの効果を測定するために、使用した。この結果を図11に示す。これらの研究にとって、最も最適なケースは、2000バールで4mM酸化型グルタチオン、2mM DTTであることが認められた。
【0157】
ネイティブでないジスルフィド結合を含むタンパク質凝集体について予想されるように、このグルタチオンシャッフリング系は、どの有意なリフォールディング収率を得るためにも、必要であった。圧力およびDTTだけでは効果的でなかった。酸化還元条件のさらなる最適化を行えたかもしれない;しかしながら、2000バールにおける4mM GGSG、2mM DTT中で得た収率は、残りのリフォールディング条件の効果を決定するために十分に適切であった。
【0158】
リフォールディング温度の効果を評価した。サンプルを、種々のリフォールディング温度で12時間保持し、それから室温にし、更に12時間保持した。2000バールの圧力および以前に最適化した酸化還元条件を、使用した。リフォールディングは、25℃で最大であることが認められた。これらの結果を図12に示す。
【0159】
リフォールディング圧力の効果を評価した。サンプルを、種々のリフォールディング圧で16時間保持し、それから8時間をかけてゆっくりと減圧した。このサンプルを、以前使用した酸化還元条件を用いて、室温で保持した。2000バールが最適リフォールディング圧力であることが認められ、1000バールおよび3000バールの両方では、リフォールディング収率が減少した。これらの結果を、図13に示す。
【0160】
タンパク質収率に対する減圧の効果を決定するために、タンパク質単量体を、高減圧速度および低減圧速度に供した。サンプルを、標準酸化還元条件(4mM GGSG、2mM DTT)中に2000バール、25℃で、16時間保持した。1セットのサンプルを、30秒間かけて減圧した。第2のサンプルセットを、実験方法中に記載している手順に従い減圧した。(100MPaの圧力に達するまで、サンプルを、30分毎に10MPaづつ減圧し、それから更に、0.1MPaに達するまで、15分毎に25MPaづつ減圧した)ゆっくりと減圧したサンプルは、21%+/−3%の単量体を、凝集体に損失した。この値は、サンプルを急速減圧した場合の59%+/−16%の損失よりかなり低かった。この研究は、タンパク質がネイティブ構造を維持することを確実にするために、一定時間にわたりゆっくりとした減圧を使用する必要性を、立証した。
(実施例5:aVEGFリフォールディング)
高圧リフォールディング研究を、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞培養における生成中に不可逆的2量体形成する、ヒト血管内皮増殖因子(aVEGF)に対する抗体、ジスルフィド結合しグリコシル化した、全長ヘテロテトラマー抗体の、ネイティブでない2量体性凝集体に対して実施した。リフォールディング研究を、ネイティブaVEGF単量体を取得するために高静水圧を使用ことができるかどうかを決定するために、実施した。更に、実験は、リフォールディング収率に対する温度の影響を決定するために、行った。
【0161】
3つの異なる温度で、2000バールに保持したサンプルのリフォールディング収率を決定するために、実験を、実施した。この実験手順は、次の通りである:aVEGF(22%凝集体、78%単量体)を、pH6.0の、25mM 2−(4−モルフォリノ)−エタンスルホン酸(MES)緩衝液中に、1mg/mLの濃度となるように希釈した。各々のサンプルは、密閉したシリンジ中に充填したMESタンパク質溶液(1mg/mL)0.4mLから作製した。このシリンジは、適切な圧力をサンプルに伝えることを確実にするために、必要である。3つのサンプルを、各々の条件のために作製し、室温で圧力器中へ置いた。このサンプルを、2000バールに加圧し、圧力器の温度を0℃、25℃または50℃に調製した。温度が変化しても2000バールに維持するために、この時間中圧力を測定した。サンプルを、所望の温度および所望の圧力で16時間保持し、冷却または加温して室温にし、そして減圧した。減圧は、30分毎に100バールずつ変化させ、1000バールに達したら、15分毎に250バールずつ落とした。このサンプルを圧力器から取り出し、4℃で2日間保存した。サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を使用して、単量体と2量体との質量の割合を決定した。
【0162】
上記した手順を通して、3つのサンプルを、2000バールで、そして0℃、25℃および50℃で試験した。リフォールディング収率(RY%)は、次の式を使用して、SECの結果より計算した。
【0163】
【数1】

ここで、M=最終的単量体の割合およびM=初発単量体の割合である。
【0164】
温度がリフォールディング収率に影響することが、認められた。これらの研究は、50℃におけるリフォールディング収率29%(+/−1%)が達成され得ることを示した。これは、図14に示す。
(実施例6−GCSF封入体の高圧リフォールディング)
Amgen,Inc.(Thousand Oaks,CA)より供給された、濃縮精製封入体を、種々の濃度のグアニジン塩酸塩(GdnHCl)を含むリフォールディング緩衝液(50mM Tris−HCl、1mM EDTA、0.1%NaN)に懸濁した。三通りのサンプルを、2000バールに加圧し、24時間インキュベートした。圧力は、200バールずつ容器の圧力を減少させることで緩めた。サンプルは、各変化圧において15分間保持した。
【0165】
減圧が完了すると、サンプルを、13,000gで15分間遠心分離した。この結果できた上清を、Pierce(登録商標)TPA全タンパク質アッセイを用いて分析した。ウシ血清アルブミン(BSA)スタンダードを、このアッセイを較正するために用いた。この結果を、図15に示す。
【0166】
本明細書中にて開示されそして特許請求される組成物、方法、および装置すべては、本開示を考慮すると、過度の実験を伴わずに作製および実行され得る。本発明の組成物および方法は、好ましい実施形態に関して記載されているが、本明細書中に記載される組成物、方法、および装置、ならびにその方法中の工程および工程の順序に対して、本発明の概念、趣旨、および範囲から逸脱することなく変形が適用され得ることが、当業者にとって明らかである。より詳細には、本明細書中に記載される薬剤を、同じ結果または同様の結果を達成しながら、化学的および生理学的に関連する特定の薬剤で置換し得ることが、明らかである。当業者にとって明らかなこのような同様の置換および改変すべてが、添付の特許請求の範囲により規定される本発明の趣旨、範囲、および概念の内にあると、見なされる。
【0167】
(XII.参考文献)
以下の参考文献は、例示的手順または本明細書に示された手順に対する他の詳細な補遺を提供する範囲で、具体的に本明細書中に参考として援用される。
【0168】
【表3】






下記の図面は、本明細書の一部を構成し、そして本発明の特定の局面をさらに実証するために含まれる。本発明は、本明細書に提供される特定の実施形態の詳細な説明と組み合わせて、ひとつ以上のこれらの図面を参照することにより、より良く理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0169】
【図1】図1:緩衝液単独および0.75M GdmHClの両方における、rhGH凝集体の高圧回収。大気標準は白抜き記号で標識され、加圧したサンプルは黒塗り記号で標識される。リフォールディング緩衝液は、GdmHClを含まない。
【図2】図2A−2B:rhIFN−γの(図2A)熱的に誘導された凝集体および(図2B)塩酸グアニジンで誘導された凝集体のTEM顕微鏡写真。枠A1およびBは倍率40,000倍(バーは200μm)、および枠A2は倍率80,000倍(バーは100μm)である。
【図3】図3:rhIFN−γのネイティブ凝集体(太線)および熱誘導による凝集体(細線)について、GEMMAにより測定した、EMの直径に対する質量%濃度。(A)は、単量体のEM直径領域(約4.4nm)および二量体のEM直径領域(約5.5nm)を示し、(B)は、凝集体のEM直径領域を示す。粒径分布は分かりやすくするために二つの枠に分割し、この二つの枠は異なった質量%スケールを有することに留意のこと。7〜10nmの範囲(枠B)のネイティブのrhIFN−γの応答は、装置のノイズレベル内である。
【図4】図4:圧力処理前における、rhIFN−γの熱誘導(□)および塩酸グアニジン誘導(▲)凝集体の二次微分UVスペクトル。図内に含まれた凝集体のスペクトルは、rhIFN−γの0.1MPaにおける液体コントロール(実線)および、250(×)MPaにて圧力解離したものである。ネイティブおよび圧力解離したスペクトルでの286nm付近の極値を、凝集解離後のリフォールディング事象を追跡するために使用した。250MPaスペクトルを除いて、すべてのスペクトルを0.1MPaで収集した。
【図5】図5:圧力処理前における、熱誘導凝集体(□)および塩酸グアニジン誘導凝集体(▲)の、面積により正規化された二次微分FTIRスペクトル。ネイティブrhIFN−γのスペクトルは、比較目的で含まれており、実線にて表される。すべてのスペクトルを0.1MPaで収集した。
【図6】図6A〜6B:図6Aは、スクシネート緩衝液中での250MPaにおける、塩酸グアニジン誘導凝集体の時間に対する310nmでの吸光度を示している。全rhIFN−γ濃度は1.0mg/mLであり、溶液中の塩酸グアニジン濃度は、約5mMであった。凝集体の非存在下におけるネイティブrhIFN−γの310nmでの吸光度は、約0.06AU mL/cm mgである(データには示していない)。図6Bは、250MPaで解離したrhIFN−γ(1mg/mL)の塩酸グアニジン誘導(▲)および熱誘導(□)凝集体の、100MPaにおける、時間に対する二次微分極値(ほぼ286nm)の高さを示している。スペクトルの高さにおいて、エラーバーは95%信頼区間である。250MPaで圧力解離した形態(破線)、ネイティブ液体コントロール(×つき実線)、および0.1MPaでの平衡後の圧力リフォールドされたもの(点線)についてのスペクトル高は、参考のためのプロットとして含まれる。
【図7】図7A〜7C:圧力処理した凝集体(図7A)、熱誘導凝集体(図7B)、塩酸グアニジン誘導凝集体(図7C)、およびネイティブコントロールのrhIFN−γ(圧力処理していない)の倍率40,000倍でのTEM顕微鏡写真である。すべてのサンプルにおいて、短繊維構造が観察されたが、主要な構造は不定形であった(たとえばA2)。バーは200μmである。
【図8】図8A〜8B:熱誘導(図8A)および塩酸グアニジン誘導(図8B)の圧力処理した凝集体の二次微分UVスペクトル。すべてのスペクトルは、圧力リフォールディングプロトコール完了後、すぐに0.1MPaで収集した。リフォールディングは20mg/mL(黒塗り記号)、10mg/mL(白抜き記号)、および1mg/mL(点線)でおこなわれたものであり、約1mg/mLでの希釈後、すぐにスペクトルを収集した。ネイティブコントロールのrhIFN−γ(実線)のスペクトルは、参考のために両枠において、重ねて表示している。
【図9】図9:圧力処理した、熱誘導凝集体(図9A)および塩酸グアニジン誘導凝集体(図9B)、面積により正規化された二次微分FTIRスペクトル。すべてのスペクトルは、圧力リフォールディングプロトコール完了後3時間以内に、0.1MPaで収集された。FTIRスペクトルは、20mg/mL(黒塗り記号)、10mg/mL(白抜き記号)で行われたリフォールディングについて記録された。ネイティブコントロールのrhIFN−γ(実線)のスペクトルは、参考のために両方の枠において、重ねて表示している。
【図10】図10:4℃、0.1MPa、および1mg/mLでの2週間後の熱誘導圧力処理凝集体の二次微分UVスペクトル。リフォールディングは、20mg/mL(黒塗り記号)、10mg/mL(白抜き記号)、および1mg/mL(点線)で行われ、そしてサンプルを約1mg/mLに迅速に希釈した。ネイティブコントロールのrhIFN−γ(実線)のスペクトルは、参考のために重ねて表示している。
【図11】図11:リフォールディング収量に対する種々の圧力におけるレドックス状態の効果。条件は、25℃で16時間のリフォールディング、および6時間の減圧であった。最高収量は、GGSG 4mM、DTT 2mM、および2000バールに保たれたサンプルについて得られた。
【図12】図12:リフォールディング収量に対する温度効果。条件は、2000バールで、24時間のリフォールディング、GGSG 4mM、DTT 2mM、pH7.2、および8時間の減圧であった。最高収量は、リフォールディング温度が25℃に保たれた場合に得られた。
【図13】図13:リフォールディング収量に対する圧力効果。条件は、16時間のリフォールディング、GGSG 4mM、DTT 2mM、22℃、pH7.2、および8時間の減圧であった。リフォールディング収量は、2000バールで最高になることが見出された。
【図14】図14:aVEGFリフォールディングに対する温度効果。条件は16時間、緩徐な減圧で2000バールであった。29%の収量が50℃に保たれたサンプルで達成された。エラーバーは、95%信頼区間を示す。
【図15】図15:GCSF封入体由来の可溶性タンパク質。丸(●)は大気圧でのサンプルを表す。四角(■)は24時間2000バールでインキュベートしたサンプルを表す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンパク質凝集体から脱凝集した、生物学的に活性なタンパク質を生成する方法であって、該方法は、以下の工程:
(i)タンパク質凝集体を提供する工程;
(ii)該タンパク質凝集体を、その中のジスルフィド結合を還元するために十分量の還元剤と混合する工程;
(iii)工程(ii)の混合物を、周囲圧力と比べて増加した圧力に供する工程であって、ここで、該タンパク質凝集体が解離する、工程;
(iv)該混合物を圧力下で透析し、これにより該還元剤を除去し、そしてジスルフィド結合を再形成する、工程;および
(v)増加した圧力から該解離したタンパク質を回収する工程、
を包含し、これによって、該タンパク質は、生物学的活性が保持されるように、リフォールディングする、方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate


【公開番号】特開2008−31182(P2008−31182A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−270735(P2007−270735)
【出願日】平成19年10月17日(2007.10.17)
【分割の表示】特願2002−563179(P2002−563179)の分割
【原出願日】平成13年10月31日(2001.10.31)
【出願人】(507344520)バロフォールド, インコーポレイテッド (4)
【Fターム(参考)】