説明

高圧処理装置および高圧処理容器

【課題】 本発明は二酸化炭素を溶媒とした異なる数種類の混合溶媒でも置換効率を高めることが可能で、かつ容易に製造することができる高圧処理装置を得るにある。
【解決手段】 開閉扉を備える高圧処理容器と、この高圧処理容器の上方と下方にそれぞれ設けられた溶媒の導入部あるいは排出部となるように切換弁を介装した上方配管および下方配管と、前記高圧処理容器内の溶媒の密度が導入する溶媒より大きい場合には前記上方配管より導入し、前記下方配管より排出し、高圧処理容器内の溶媒の密度が導入する溶媒より小さい場合には前記下方配管より導入し、前記上方配管より排出させる制御機構とで高圧処理装置を構成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は超臨界あるいは液体の二酸化炭素を用いた洗浄装置、乾燥装置、抽出装置、高分子材料の加工等に用いられる高圧処理装置および高圧処理容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、超臨界あるいは液体の二酸化炭素を用いた洗浄装置や乾燥装置で使用される高圧処理容器は、該高圧処理容器と用いる溶媒に温度差がある場合、高圧処理容器からの放熱により高圧処理容器内の溶媒に意図しない温度分布が発生し、処理に不具合が発生する。
この不具合を解消するために、一般的には高圧処理容器への温度調節手段や種々の断熱材が用いられている。
また、二酸化炭素を溶媒とした異なる複数類の混合溶媒を用いる場合、これらの混合溶媒の不十分な置換は処理に不具合を生じさせる。
この不具合を解消するために、一般的に溶媒導入部を加工したり、超音波、攪拌、微細気泡や脈動といった種々の手段が用いられている。
【0003】
しかしながら、前者の温度調節手段等では温度調節のために、所定の時間や熱エネルギーを消費しなければならないという欠点があった。
また、後者の手段ではさらに置換効率を高めたい場合には、十分な効果が得られないという欠点があった。
【特許文献1】特になし
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は以上のような従来の欠点に鑑み、二酸化炭素を溶媒とした異なる数種類の混合溶媒でも置換効率を高めることが可能で、かつ容易に製造することができる高圧処理装置を提供することを目的としている。
【0005】
また、本発明は高圧処理容器と用いる溶媒とに温度差があっても、所定の時間や熱エネルギーを消費することなく、高圧処理容器からの放熱により、高圧処理容器内の溶媒に意図しない温度分布が発生するのを軽減することができる、効率よく経済的に使用することができる高圧処理容器を提供することを目的としている。
【0006】
本発明の前記ならびにそのほかの目的と新規な特徴は次の説明を添付図面と照らし合わせて読むと、より完全に明らかになるであろう。
ただし、図面はもっぱら解説のためのものであって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は開閉扉を備える高圧処理容器と、この高圧処理容器の上方と下方にそれぞれ設けられた溶媒の導入部あるいは排出部となるように切換弁を介装した上方配管および下方配管と、前記高圧処理容器内の溶媒の密度が導入する溶媒より大きい場合には前記上方配管より導入し、前記下方配管より排出し、高圧処理容器内の溶媒の密度が導入する溶媒より小さい場合には前記下方配管より導入し、前記上方配管より排出させる制御機構とで高圧処理装置を構成している。
【0008】
本発明は開閉扉を備える高圧処理容器と、この高圧処理容器の上方と下方にそれぞれ設けられた溶媒の導入部あるいは排出部となるように切換弁を介装した上方配管および下方配管と、前記高圧処理容器内の溶媒の密度が導入する溶媒より大きい場合には前記上方配管より導入し、前記下方配管より排出し、高圧処理容器内の溶媒の密度が導入する溶媒より小さい場合には前記下方配管より導入し、前記上方配管より排出させる制御機構と、前記高圧処理容器内の溶媒を攪拌する攪拌機構とで高圧処理装置を構成している。
【0009】
本発明は開閉扉を備える内側高圧処理容器と、この内側高圧処理容器の外周部が溶媒通路となるように覆い、かつ該内側高圧処理容器の開閉扉が備えられた部位に開閉扉を備える、あるいは内側高圧処理容器の開閉扉と一体形成された開閉扉を備える外側高圧処理容器と、前記内側高圧処理容器の導入口より内部へ溶媒を導く導入配管と、前記内側高圧処置容器内の溶媒を前記外側高圧処理容器内へ導く前記導入配管の導入口とは反対方向に形成された排出口と、前記外側高圧処理容器内の溶媒を外部へ排出する前記導入口側に設けられた排出配管とで高圧処理容器を構成している。
【0010】
本発明は開閉扉を備える内側高圧処理容器と、この内側高圧処理容器の外周部が溶媒通路となるように覆い、かつ該内側高圧処理容器の開閉扉が備えられた部位に開閉扉を備える、あるいは内側高圧処理容器の開閉扉と一体形成された開閉扉を備える外側高圧処理容器と、前記内側高圧処理容器の導入口より内部へ溶媒を導く導入配管と、前記内側高圧処置容器内の溶媒を前記外側高圧処理容器内へ導く前記導入配管の導入口とは反対方向に形成された排出口と、前記外側高圧処理容器内の溶媒を外部へ排出する前記導入口側に設けられた排出配管と、前記溶媒通路に設けた該溶媒通路を均一に溶媒が通過するように設けられたバッフル板とで高圧処理容器を構成している。
【発明の効果】
【0011】
以上の説明から明らかなように、本発明にあっては次に列挙する効果が得られる。
【0012】
(1)開閉扉を備える高圧処理容器と、この高圧処理容器の上方と下方にそれぞれ設けられた溶媒の導入部あるいは排出部となるように切換弁を介装した上方配管および下方配管と、前記高圧処理容器内の溶媒の密度が導入する溶媒より大きい場合には前記上方配管より導入し、前記下方配管より排出し、高圧処理容器内の溶媒の密度が導入する溶媒より小さい場合には前記下方配管より導入し、前記上方配管より排出させる制御機構とで構成されているので、二酸化炭素を溶媒とした異なる数種類の混合溶媒の置換効率を高めることができる。
【0013】
(2)前記(1)によって、制御機構を用いるだけの簡単な構造でよいので、容易に安価に製造することができる。
【0014】
(3)請求項2も前記(1)、(2)と同様な効果が得られるとともに、攪拌機構によって、より混合溶媒の置換効率を高めることができる。
【0015】
(4)とで構成されているので、高圧処理容器と用いる溶媒に温度差があっても、従来のように所定の時間や熱エネルギーを消費することなく、高圧処理容器からの放熱により高圧処理容器内の溶媒に意図しない温度分布が発生するのを軽減することができる。
【0016】
(5)前記(4)によって、従来のように温度調節手段を使用しないので、効率よく、経済的に使用することができる。
【0017】
(6)請求項4も前記(4)、(5)と同様な効果が得られるとともに、バッフル板によって意図しない温度分布の発生をより軽減させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面に示す本発明を実施するための最良の形態により、本発明を詳細に説明する。
【0019】
図1ないし図5に示す本発明を実施するための最良の第1の形態において、1は超臨界あるいは液体の二酸化炭素等の溶媒を用いた洗浄装置、乾燥装置、抽出装置、高分子材料の加工等で使用される本発明の高圧処理装置で、この高圧処理装置1は開口部2を密封状態で開閉する開閉扉3を備える高圧処理容器4と、この高圧処理容器4の上方と下方にそれぞれ設けられた溶媒の導入部あるいは排出部5、6、7、8となるように電磁切換弁9、10、11、12を介装した上方配管13および下方配管14と、前記高圧処理容器4内の溶媒の密度が導入する溶媒より大きい場合には前記上方配管13を介して排出部5および7より導入し、前記下方配管14を介して排出部6および8よりより排出し、高圧処理容器4内の溶媒の密度が導入する溶媒より小さい場合には前記下方配管14を介して排出部6および8よりより導入し、前記上方配管13を介して排出部5および7よりより排出させる制御機構15とで構成されている。
【0020】
前記制御機構15は前記高圧処理容器4内の溶媒の密度が導入される溶媒より大きい場合には、上方配管13の導入部5、7の電磁切換弁9と、前記下方配管14の排出部6、8の電磁切換弁12とだけを開放し、高圧処理容器4内の溶媒の密度が導入する溶媒より小さい場合には、前記下方配管14の導入部6、8の電磁切換弁10と前記上方配管13の排出部5、7の電磁切換弁11とだけを開放するように制御される。
【0021】
なお、高圧処理容器4内の溶媒の密度が導入する溶媒より大きいか、小さいかは事前に把握して行なうか、あるいは検出装置を用いて自動的に把握できるようにしてもよい。
【0022】
[発明を実施するための異なる形態]
次に、図6ないし図19に示す本発明を実施するための異なる形態につき説明する。なお、これらの本発明を実施するための異なる形態の説明に当って、前記本発明を実施するための最良の第1の形態と同一構成部分には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0023】
図6および図7に示す本発明を実施するための第2の形態において、前記本発明を実施するための最良の第1の形態と主に異なる点は、高圧処理容器4内の溶媒を攪拌する高圧処理容器4内に回転可能に取付けられた攪拌羽根17、この攪拌羽根17を回転させる高圧処理容器4外に設けられたモーター18とからなる攪拌装置16を設けた点で、このような攪拌装置16を用いた高圧処理装置1Aにしても、前記本発明を実施するための最良の第1の形態と同様な作用効果が得られるとともに、混合溶媒の置換効率をより高めることができる。
【0024】
図8ないし図10に示す本発明を実施するための第3の形態において、21は高圧処理容器で、この高圧処理容器21は開口部22を密閉状態で開閉する開閉扉23を備えた内側高圧処理容器24と、この内側高圧処理容器24の外周部が溶媒通路25となるように覆い、かつ該内側高圧処理容器24の開閉扉23が備えられた部位の開口部26を密閉状態で開閉する開閉扉27を備える外側高圧処理容器28と、前記内側高圧処理容器24の導入口29より内部へ溶媒を導く導入配管30と、前記内側高圧処理容器24内の溶媒を前記外側高圧処理容器28内、すなわち前記溶媒通路25へ導く、前記導入配管30の導入口29とは反対方向に形成された格子状の排出口31と、前記外側高圧処理容器28内の溶媒を外部へ排出する前記導入口29側に形成された排出口32、32に接続された排出配管33とで構成されている。
このように構成された高圧処理容器21は従来のように熱エネルギーを消費することなく、高圧処理容器21からの放熱により、高圧処理容器21内の溶媒に意図しない温度分布が発生するのを軽減することができる。
【0025】
図11ないし図13に示す本発明を実施するための第4の形態において、前記本発明を実施するための第3の形態と主に異なる点は、内側高圧処理容器24の開口部22と外側高圧処理容器28の開口部26とを1個の開閉扉27Aで開閉できるように構成した点で、このように構成した高圧処理容器21Aにしても、前記本発明を実施するための第3の形態と同様な作用効果が得られる。
【0026】
図14ないし図16に示す本発明を実施するための第5の形態において、前記本発明を実施するための第3の形態と主に異なる点は、溶媒通路25に該溶媒通路25を均一に溶媒が通過するようにバッフル板34を設けた点で、このように構成した高圧処理容器21Bにしても、前記本発明を実施するための第3の形態と同様な作用効果が得られるとともに、バッフル板34によって意図しない温度分布の発生をより軽減させることができる。
【0027】
図17ないし図19に示す本発明を実施するための第6の形態において、前記本発明を実施するための第5の形態と主に異なる点は、内側高圧処理容器24の開口部22と外側高圧処理容器28の開口部26とを1個の開閉扉27Aで開閉できるように構成した点で、このように構成した高圧処理容器21Cにしても、前記本発明を実施するための第5の形態と同様な作用効果が得られる。
【0028】
なお、前記本発明の各実施の形態では開閉扉と開口部のシールや配管部分のシール等について説明しなかったが、本発明は内部が高圧になっても漏れが生じないようなシールや構成を施して用いられる。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明は超臨界あるいは液体の二酸化炭素を用いた洗浄装置、乾燥装置等に使用される高圧処理装置および高圧処理容器を製造する産業で利用される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明を実施するための最良の第1の形態の概略正面図。
【図2】本発明を実施するための最良の第1の形態の概略側面図。
【図3】図1の3−3線に沿う断面図。
【図4】本発明を実施するための最良の第1の形態の上方配管から下方配管への動作説明図。
【図5】本発明を実施するための最良の第1の形態の下方配管から上方配管への動作説明図。
【図6】本発明を実施すえるための第2の形態の概略正面図、
【図7】図6の7−7線に沿う断面図。
【図8】本発明を実施するための第2の形態の概略正面図。
【図9】本発明を実施するための第2の形態の概略側面図。
【図10】図8の10−10線に沿う断面図。
【図11】本発明を実施するための第3の形態の概略正面図。
【図12】本発明を実施するための第3の形態の概略側面図。
【図13】図11の13−13線に沿う断面図。
【図14】本発明を実施するための第4の形態の概略正面図。
【図15】本発明を実施するための第4の形態の概略側面図。
【図16】図14の16−16線に沿う断面図。
【図17】本発明を実施するための第5の形態の概略正面図。
【図18】本発明を実施するための第5の形態の概略側面図。
【図19】図17の19−19線に沿う断面図。
【符号の説明】
【0031】
1、1A:高圧処理装置、 2:開口部、
3:開閉扉、 4:高圧処理容器、
5、6:導入部、 7、8:排出部、
9、10、11、
12:電磁切換弁、
13:上方配管、 14:下方配管、
15:制御機構、 16:攪拌装置、
17:攪拌羽根、 18:モーター、
21、21A、21B、21C:高圧処理容器、
22:開口部、 23:開閉扉、
24:内側高圧処理容器、 25:溶媒通路、
26:開口部、 27、27A:開閉扉、
28:外側高圧処理容器、 29:導入口、
30:導入配管、 31:排出口、
32:排出口、 33:排出配管、
34:バッフル板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開閉扉を備える高圧処理容器と、この高圧処理容器の上方と下方にそれぞれ設けられた溶媒の導入部あるいは排出部となるように切換弁を介装した上方配管および下方配管と、前記高圧処理容器内の溶媒の密度が導入する溶媒より大きい場合には前記上方配管より導入し、前記下方配管より排出し、高圧処理容器内の溶媒の密度が導入する溶媒より小さい場合には前記下方配管より導入し、前記上方配管より排出させる制御機構とを備えることを特徴とする高圧処理装置。
【請求項2】
開閉扉を備える高圧処理容器と、この高圧処理容器の上方と下方にそれぞれ設けられた溶媒の導入部あるいは排出部となるように切換弁を介装した上方配管および下方配管と、前記高圧処理容器内の溶媒の密度が導入する溶媒より大きい場合には前記上方配管より導入し、前記下方配管より排出し、高圧処理容器内の溶媒の密度が導入する溶媒より小さい場合には前記下方配管より導入し、前記上方配管より排出させる制御機構と、前記高圧処理容器内の溶媒を攪拌する攪拌機構とを備えることを特徴とする高圧処理装置。
【請求項3】
開閉扉を備える内側高圧処理容器と、この内側高圧処理容器の外周部が溶媒通路となるように覆い、かつ該内側高圧処理容器の開閉扉が備えられた部位に開閉扉を備える、あるいは内側高圧処理容器の開閉扉と一体形成された開閉扉を備える外側高圧処理容器と、前記内側高圧処理容器の導入口より内部へ溶媒を導く導入配管と、前記内側高圧処置容器内の溶媒を前記外側高圧処理容器内へ導く前記導入配管の導入口とは反対方向に形成された排出口と、前記外側高圧処理容器内の溶媒を外部へ排出する前記導入口側に設けられた排出配管とを備えることを特徴とする高圧処理容器。
【請求項4】
開閉扉を備える内側高圧処理容器と、この内側高圧処理容器の外周部が溶媒通路となるように覆い、かつ該内側高圧処理容器の開閉扉が備えられた部位に開閉扉を備える、あるいは内側高圧処理容器の開閉扉と一体形成された開閉扉を備える外側高圧処理容器と、前記内側高圧処理容器の導入口より内部へ溶媒を導く導入配管と、前記内側高圧処置容器内の溶媒を前記外側高圧処理容器内へ導く前記導入配管の導入口とは反対方向に形成された排出口と、前記外側高圧処理容器内の溶媒を外部へ排出する前記導入口側に設けられた排出配管と、前記溶媒通路に設けた該溶媒通路を均一に溶媒が通過するように設けられたバッフル板とを備えることを特徴とする高圧処理容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2006−130386(P2006−130386A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−320174(P2004−320174)
【出願日】平成16年11月4日(2004.11.4)
【出願人】(000187149)昭和炭酸株式会社 (60)
【Fターム(参考)】