説明

高圧放電ランプおよび照明装置

【課題】
石英ガラス製の透光性気密容器における封止部の強度を条件が厳しい高圧放電ランプであっても好適な程度に向上させた高圧放電ランプおよび照明装置を提供する。
【解決手段】
高圧放電ランプは、石英ガラス製の透光性気密容器1と、その封止部1bの内部に埋設された封着金属箔2と、基端が封着金属箔に接続した電極軸部3bを備えた電極3と、封止部内において電極軸部の周囲に装着され、一端が放電空間側に位置し他端が封着金属箔と電極軸部との接続部近傍に向かって連続して延在する第1コイル部4aからなる第1の領域R1と第1コイル部の他端に隣接する寸断部Csおよび一端が寸断部を介して第1コイル部の他端に対向し、他端が電極軸部との接続部に隣接する第2コイル部4bからなる第2の領域R2とを備えているサブコイル4と、点灯時に1MPa以上の圧力を呈するように封入された放電媒体とを具備している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、封止部に封着金属箔を用いた高圧放電ランプおよびこれを備えた照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高圧放電ランプに石英ガラス製の透光性気密容器を用いる場合、透光性気密容器の放電空間の包囲部に隣接する封止部内にモリブデンを主成分とする厚さ20μm程度の封着金属箔を気密に埋設して、気密を維持しながら内部に通電を行うのが一般的である。そして、封着金属箔の一端側に電極軸部の基端部を、他端側に電流導入導体の先端部を、それぞれ溶接して、封止部を経由して電極に電流を供給するように構成される。
【0003】
点灯時の放電空間内の圧力が1MPa以上、石英ガラス製の透光性気密容器の温度が500℃以上となる超高圧形の高圧放電ランプにおいては、十分な耐圧性および耐熱性が高圧放電ランプの各部に求められる。特に透光性気密容器の封止部内において、電極軸部とその周囲を覆う石英ガラスとの熱膨張係数の差が比較的大きいため、これらが直接接触する場合、大きな熱応力がそれらの間に生じ、封止部の石英ガラス内にクラックが発生して、点灯時における透光性気密容器破損の原因の一つとなることがよく知られている。とりわけ、電極は、その軸部の温度が電極主部に近付くほど高くなるため、放電空間に近い部分ほど上記の熱応力の影響を受けて封止部にクラックが発生しやすく、これに伴って透光性気密容器が破損するなどの問題が発生することも経験的に知られている。
【0004】
電極軸部と封止部の熱膨張係数の相違に伴う熱応力に起因する封止部のクラックが発生して、これがリーク発生の要因になるのを抑制する手段として自動車用ヘッドランプの光源として使用されるメタルハライドランプおよびその製造方法が提案されている(特許文献1参照。)。特許文献1では、石英ガラス製の透光性気密容器の封止部内に埋設される電極の棒状部分に装着するサブコイルの内径を電極の棒状部分の外径よりも適宜に大きくし、かつ封止を行うときにコイルターン間から溶融した石英ガラスが入り込むことのないピッチとして形成する。そして、サブコイルの一端を電極の棒状部分が溶接されている封着金属箔に溶接してから、サブコイルの長さの略半分の位置を保持して電極棒の放電端側に引っ張ることでサブコイルにおけるモリブデン箔側の部分のピッチを伸長させるとともに密着させる。
【0005】
特許文献1によれば、サブコイルにおけるモリブデン箔側の部分のピッチが伸長される結果、当該伸張部分においては石英ガラス製の透光性気密容器と電極の棒状部分が接触して、メタルハライドおよび水銀の侵入が阻止されるので、石英ガラス製の透光性気密容器と封着金属箔との剥離が防止される旨記載されている。
【0006】
【特許文献1】特開平10−269941号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、点灯時の放電空間内の圧力および透光性気密容器の温度が頗る高くなるような場合や点灯時間に伴って放電媒体と石英ガラスおよび金属との化学反応が発生して強度変化が大きくなりやすい場合など条件がとりわけ厳しい高圧放電ランプの場合には、その各部に高い耐圧性と耐熱性を有していることが要求される。特に封止部においては、電極軸部とその周囲を包囲する石英ガラスとは、それらの熱膨張係数差が無視し得ない程度に大きく、特許文献1などの従来技術だけで封止部の強度を上述した高圧放電ランプが要求する程度まで十分に高めることが困難であることが分かった。
【0008】
封止部の強度を十分に高めるためには、耐圧性と耐熱性を向上させる必要がある。耐圧性は、透光性気密容器内の圧力を高くしたときに、当該透光性気密容器、特にその封止部がどの程度の圧力まで耐えるかを示す指標であり、例えば静水耐圧試験により知ることができる。点灯時の透光性気密容器内の高い圧力に封止部が耐えるためには、封止部の耐圧性が高いとともに封止部が点灯時の高温と消灯時の温度低下との繰り返しに耐える必要がある。この封止部が点灯時および消灯時の温度変化の繰り返しに耐える指標が耐熱性である。
【0009】
封止部の耐熱性が不足すると、封止部の電極軸部に接する石英ガラス部分にクラックが発生する。また、高圧放電ランプの点灯時に上記クラックに透光性気密容器の内圧に起因する応力が作用して透光性気密容器が破損に至る。さらに、上記クラックは、高圧放電ランプの使用時における点灯および消灯の繰り返しにより封止部の温度が大きく変化する場合に発生し、またそれが成長することが多い。
【0010】
また、封止部の強度は、点灯時間の増大に伴って初期状態より低下していくため、封止部内にクラックが存在すると、そこに応力集中が発生して初期の封止部強度を低下させるので、クラックが封止部内に存在しないのが理想的である。
【0011】
本発明は、石英ガラス製の透光性気密容器における封止部の強度を条件が厳しい高圧放電ランプであっても好適な程度に向上させた高圧放電ランプおよびこれを備えた照明装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の高圧放電ランプは、内部に放電空間が形成された包囲部および包囲部の端部に連接された封止部を備えた石英ガラス製の透光性気密容器と;透光性気密容器の封止部の内部に気密に埋設された封着金属箔と;基端が封着金属箔に接続した電極軸部および電極軸部の先端に配設されて放電空間に臨む電極主部を備えた電極と;透光性気密容器の封止部内において電極軸部の周囲に装着されるとともに、一端が放電空間側に位置し他端が封着金属箔と電極軸部との接続部近傍に向かって連続して延在する第1コイル部からなる第1の領域と第1コイル部の他端に隣接する寸断部および一端が寸断部を介して第1コイル部の他端に対向し、かつ他端が電極軸部との接続部に隣接する第2コイル部からなる第2の領域とを備えているサブコイルと;先端が封着金属箔に接続し、基端が封止部から外部に露出した電流導入導体と;点灯時に1MPa以上の圧力を呈するように透光性気密容器の内部に封入された放電媒体と;を具備していることを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明においては、サブコイルが透光性気密容器の封止部内において電極軸部の周囲に装着されるとともに、一端が放電空間側に位置し他端が封着金属箔と電極軸部との接続部近傍に向かって連続して延在する第1コイル部からなる第1の領域と第1コイル部の他端に隣接する寸断部および一端が寸断部を介して第1コイル部の他端に対向し、かつ他端が電極軸部との接続部に隣接する第2コイル部からなる第2の領域とを備えていることにより、寸断部において石英ガラスが電極軸部の全周にわたって密着するため、放電媒体が封着金属箔側へ侵入するのを確実に阻止でき、その結果封着金属箔に剥離が発生しにくくなる。また、第2コイル部が装着されているため、当該部分において石英ガラスが電極軸部に密着しにくくなって封着金属箔に近接した領域の電極軸部と石英ガラスとの間に作用する熱応力が低減される。さらに、封止部内の電極軸部の放電空間側に位置するサブコイルの第1の領域における第1コイル部が石英ガラスと電極軸部との間に介在することによって石英ガラスが直接電極軸部に接触しなくなり、その結果クラック発生が抑制される。
【0014】
以上の結果、電極軸部と封着金属箔との接続部近傍におけるクラック発生が抑制され、高圧放電ランプの点灯および消灯によって熱負荷が繰り返し作用したときでも高い耐熱性と耐圧性を示して封止部の強度が向上するため、内圧および温度が頗る高くなるような場合および/または点灯時間に伴って放電媒体と石英ガラスおよび金属との化学反応が発生して強度変化が大きくなりやすい場合など条件がとりわけ厳しくても良好な高圧放電ランプが得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態を説明する。
【0016】
図1は、本発明の高圧放電ランプを実施するための一形態を示す正面図および要部拡大正面図である。なお、要部拡大正面図は、正面図の枠で囲んだ部分のうち封止部の部分を拡大して示している。
【0017】
本発明の高圧放電ランプは、プロジェクション用、自動車前照灯用および一般照明用など多様な用途に適応し得るものであり、透光性気密容器1、封着金属箔2、電極3、サブコイル4、電流導入導体5および放電媒体を具備して構成されている。図示の形態の高圧放電ランプはプロジェクション用であり、上記構成に加えて口金6および外部リード線7を備えている。
【0018】
透光性気密容器1は、石英ガラス製であり、包囲部1aおよび封止部1bを備えている。包囲部1aは、バルブ状に膨出していて、内部に放電空間1cが形成されている。また、包囲部1aは、内部の放電空間の形状が回転楕円状、紡錘状、球状または円筒状など所望の形状にすることができる。封止部1bは、包囲部1aの端部に連接されていて、透光性気密容器1を封止している。封止は、シュリンクシール、ピンチシールまたはそれらの併用などを適宜採用して行うことができる。また、封止部1bは、本発明においてその数が特段限定されないが、本形態の場合、一対が包囲部1aの管軸方向の両端部に連続して形成されて管軸方向に延在している。
【0019】
封着金属箔2は、例えばモリブデンなどの耐熱性で、かつ導電性の金属からなる厚さ20〜30μm程度の箔であり、少なくともその長手方向の中間部が封止部2の内部に気密に埋設されていて、気密を維持しながら外部からの通電を可能にする。
【0020】
電極3は、電極主部3aおよび電極軸部3bを備えている。電極主部3aは、タングステンなどの耐熱性金属を主体として構成され、放電空間1cに臨んで放電を生起させる。そして、所望により先端に尖端部を形成したり、側面に放熱を促進する溝形成やコイル巻装などを施したりすることができる。電極軸部3bは、タングステンなどの耐熱性金属からなり、その先端部で電極主部3aを支持し、基端部が封着金属箔2の放電空間側の端部に溶接などにより接続する。また、電極軸部3bは、電極主部3aと一体成形されていてもよいし、別体に形成して一体化してもよい。
【0021】
サブコイル4は、電極軸部の直径に比較して頗る直径の小さいタングステンなどからなる耐火性金属線であり、透光性気密容器1の封止部1b内において電極軸部3bの周囲に装着されるとともに、第1の領域R1および第2の領域R2とを備えている。第1の領域R1は、一端が放電空間1c側に位置し、他端が封着金属箔2と電極軸部3bとの接続部に向かって一端から連続して封着金属箔2に比較的近い位置まで延在する第1コイル部4aからなる。
【0022】
第2の領域R2は、第1の領域R1と封着金属箔2との間に位置していて、寸断部Csおよび第2コイル部4bからなる。寸断部Csは、第1コイル部4aの他端に隣接して形成され、電極軸部3bの長さ方向の距離が極短く設定される。第2コイル部4bは、一端が寸断部Csを介して第1コイル部4aの他端に対向し、他端が電極軸部3bと封着金属箔2の接続部に隣接する。
【0023】
したがって、サブコイル4は、電極軸部3bと封着金属箔2の接続部に比較的近い位置で寸断され、その寸断部Csを介して第1コイル部4aと第2コイル部4bとに分離している。
【0024】
第1の領域R1における第1コイル部4aは、石英ガラスが直接電極軸部3bに接触するのを回避することができる程度にピッチが比較的小さく設定されている部分を少なくとも主体としている。また、第1コイル部4aの長さは、封止部1bの放電空間1c側の端部から電極軸部3bと封着金属箔2の接続部近傍の手前までの間に配設されるように設定される。そうすれば、石英ガラスが直接電極軸部3bに接触するのを第1コイル部4aが阻止する。なお、所望により第1コイル部4aの封着金属箔2側における一部領域のピッチを大きくすることが許容される。
【0025】
第2の領域R2の寸断部Csは、第1コイル部4aの他端に隣接し、第1コイル部4aと第2コイル部4bとの間を分断した状態でその間に小さな間隙を提供する。なお、封止時すなわち封止部1bを形成する加熱工程において、寸断部Csの部位で石英ガラスが電極軸部3bにその全周にわたって密着する。しかし、寸断部Csの軸方向の長さが大きすぎると、電極軸部3bと石英ガラスの熱膨張係数の相違によって高圧放電ランプの点灯および消灯時に生じる熱応力のために、封止部1bにクラックが発生しやすくなるので、好ましくいない。
【0026】
また、寸断部Csは、封止に先立って予め全体として一体化されているサブコイル4を第1コイル部4aと第2コイル部4bとに分断しておくことによって形成することができる。あるいは、一体に形成されたサブコイル4が封止工程の遂行中の加熱処理において、高温の石英ガラスがサブコイル4に接触することにより、変形が進み、遂には寸断に至ることによって形成されたものであってもよい。または、封止に先立って第2コイル部4bの一部の部位を予め切除しておいてから封止した結果として、切除した部位とその他の部位との間に寸断部Csが形成したものであってもよい。
【0027】
第2の領域R2における第2コイル部4aは、寸断部Csにおける石英ガラスの電極軸部3bに対する密着部の面積を必要最小限の程度になるように抑制するとともに、第2コイル部4aの部分では石英ガラスと電極軸部3bとの間に第2コイル部4aが介在して緩和作用を行うことにより、点灯および消灯を繰り返したときにも封着金属箔2と電極軸部3bとの接続部近傍にクラックが発生しないように作用する。その結果、封止部1bの耐熱性が向上する。
【0028】
また、封止工程中の加熱処理において、第2コイル部4aが比較的強く加熱される結果、そのコイルターンが変形してピッチや形状が乱れていたり、一部が欠損されたりしても、上述の機能に本質的な支障を来たすことはない。このことは、所望により封止工程に先立って予めターンの一部を切除することも許容されることを意味する。
【0029】
さらに、第2コイル部4bの封着金属箔2側のコイル終端部eを封着金属箔2に溶接するなどによって固着した構造の電極マウントを形成してから封止するのが好ましい。なお、封着金属箔2への固着に代えて電極軸部3bの基端部に固着してもよい。これにより、封止部1bの加熱処理工程において、封着金属箔2と電極軸部3bとの接続部近傍を十分に加熱した際に、サブコイル4の上記接続部近傍においてサブコイル4が寸断して寸断部Csを形成しやすくなる。このため、電極軸部3bにサブコイル4を装着したときには、単一コイルの態様をなしていても、封止工程においてサブコイル4が寸断されて第1コイル部4aと第2コイル部4bとに寸段するのが容易になる。また、寸断された際に、第2のコイル部4bが上記固着部側に引っ張られて、コイルターンやピッチが乱れて変形し、適当な長さの寸段部Csが形成されやすくなる。
【0030】
しかしながら、上述のように予め電極軸部3bにサブコイル4を寸断部Csにより分離して、第1コイル部4aと第2コイル部4bとを形成してから封止部1bを形成しても、加熱条件が同じである限り、加熱時に寸断が生じる態様におけるのと同様な封止性能を得ることができる。
【0031】
電流導入導体5は、モリブデンなどの導電性金属からなり、その先端部が封着金属箔2の外部側の端部に溶接などにより接続し、基端部が透光性気密容器1の外部へ露出する。
【0032】
放電媒体は、透光性気密容器1の内部に封入されている。放電により所望の放射を得るために、既知の各種放電媒体を封入することができる。例えば、メタルハライドランプの場合には、発光金属のハロゲン化物、希ガスおよびランプ電圧形成物質を封入する。なお、ランプ電圧形成物質は、主として高圧放電ランプのランプ電圧を形成する媒体であり、水銀または蒸気圧が比較的高くて可視域における発光が少ない亜鉛などの金属のハロゲン化物を封入することができる。超高圧水銀ランプの場合には水銀および希ガスを封入する。希ガス放電ランプの場合にはキセノンなどの希ガスを封入する。
【0033】
本発明は、封止部の強度が向上するので、希ガスの封入圧が水銀入りの放電媒体の態様より高いために、点灯時における封止部の温度および内圧が高くなる水銀フリーの態様において好適である。
【0034】
図示の形態において、放電媒体は、主として発光に寄与する金属のハロゲン化物、主としてランプ電圧形成に寄与する亜鉛などの金属ハロゲン化物および希ガスからなる水銀フリーの構成である。また、発光に寄与する金属のハロゲン化物としてスカンジウムハロゲン化物(ScX)を用いている。なお、ハロゲン(X)としてはヨウ素および臭素のいずれか一方または両方を用いるのが好適である。ランプ電圧形成に寄与する金属ハロゲン化物としてヨウ化亜鉛ZnIを用いている。希ガスとしてはキセノンを1.0MPa封入している。
【0035】
口金6は、所望により配設され、高圧放電ランプに給電するとともに所望により高圧放電ランプを支持するのに機能する。本形態においては、プロジェクション用の高圧放電ランプなので、反射鏡と組み合わせて使用されるので、反射鏡を支持することで高圧放電ランプを支持する。このため、本形態における口金6は、透光性気密容器1の一対の封止部1b、1bの一方にのみ装着されている。したがって、口金6は、上記一方の封止部1bから導出された図示されていない電流導入導体に接続するボルト状の口金端子tを有している。
【0036】
外部リード線7は、所望により配設され、透光性気密容器1の口金を装着しない封止部1bの電流導入導体5に接続している。そうして、口金6の口金端子と外部リード線7との間に図示しない点灯回路が接続されて高圧放電ランプが点灯する。
【0037】
なお、図示されていないが、所望により透光性気密容器1を内部に収納する外管を配設することができる。
【0038】
次に、封止部におけるサブコイルの構成と耐圧性能の関係についての実験結果について説明する。
(1)全体をピッチ250%で形成したサブコイルを装着した構成(比較例1)。
(2)封着金属箔と電極軸部の接続部近傍をピッチ400%、残余の部分を250%で形成したサブコイルを装着した構成(比較例2)。
(3)比較例2の構成に加えて封着金属箔と電極軸部の接続部近傍に位置する寸断部を介して第1コイル部および第2コイル部を分離形成した構成(本発明)。
【0039】
上記(1)ないし(3)の各構成について封止部以外の仕様が同一のそれぞれ10灯の水銀フリー形の高圧放電ランプを試作して耐圧性能を比較した結果、破壊圧力は(1)の構成が10〜12MPa、(2)の構成が11.5〜13MPa、(3)の構成が12.5〜18.5MPaであった。したがって、(1)<(2)<(3)の構成の順で耐圧性が高くなることが明らかになった。すなわち、本発明によれば、比較例1および2より耐圧性能が高くなる。
【0040】
次に、本発明におけるサブコイル4の第1の領域R1および第2の領域R2の長さと耐圧性の関係について図2を参照して説明する。図2は、前記(3)に示す本発明の構成において、サブコイル4中の第2の領域R2の長さをAとし、全長(R1+R2)をBに固定して、BにおけるAの値を変化させて破壊圧力を調査した結果を示している。図において、横軸はA/B(%)を、縦軸は破壊圧力(MPa)を、それぞれ示す。なお、図中のA/B(%)=0は、前記比較例2の場合である。また、上記A、Bについては図1にも示している。
【0041】
図2に示す調査結果によれば、本発明においては、2<A/B<42(%)の範囲内で従来技術より耐圧性が明らかに優れるので好適であり、とりわけ13<A/B<37(%)の範囲内で特に高い耐圧性が得られることが理解できる。
【0042】
次に、本発明における第2コイル部の形態の例について図3(a)ないし(c)に示す電極マウントの要部写真を参照して説明する。すなわち、図3(a)は本発明における第2コイル部の第1の例、同じく(b)は第2の例、(c)は比較例である。なお、写真は、電極マウントを側面から撮影したもので、右側下部に封着金属箔の肉厚方向の側面に電極軸部が接続している状態が見える。
【0043】
(a)に示す第1の形態では、封止工程における加熱により電極軸部に装着されたサブコイルの封着金属箔の近傍において切断されて矢印Csの下方に現れている寸断部、矢印4aの下方に現れている第1コイル部および矢印4bの下方に現れている第2コイル部がそれぞれ見える。なお、サブコイルが切断されたことにより、寸断部Csに近接する第1コイル部および第2コイル部のピッチが変形して小さくなっている。
【0044】
(b)に示す第2の形態では、封止工程に先立ち電極軸部に装着されたサブコイルを封着金属箔近傍で切断して、矢印Csに示す寸断部、矢印4aの下方に現れている第1コイル部および矢印4bの下方に現れている第2コイル部がそれぞれ見える。また、第2コイル部は、図の左側の1ターンが残っているが、それ以外のターンが写真に示す正面とその裏面の正対位置が部分的に削除されている。
【0045】
(c)に示す比較例の形態は、前述の(1)に示す比較例1であり、電極軸部に装着された矢印4の下方に現れているサブコイルが全長にわたり一体化されている。
【0046】
図4は、本発明の照明装置を実施するための一形態を示す模式図である。照明装置は、照明装置本体11、高圧放電ランプ12および点灯装置13を具備し、本形態においてはプロジェクタを構成している。
【0047】
照明装置本体11は、照明装置から高圧放電ランプ12および点灯装置13を除いた残余の部分であり、本形態においてはケース11a、ランプソケットおよび光学系11bなどを構成要素として含んでいる。
【0048】
高圧放電ランプ12は、反射鏡14に組み込まれているが、図1に示す構成である。
【0049】
点灯装置13は、電子化点灯回路およびイグナイタからなり、高圧放電ランプ12をイグナイタにより始動し、電子化点灯回路により点灯する。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の高圧放電ランプを実施するための一形態を示す正面図および要部拡大正面図
【図2】サブコイルの全長に対する第2の領域の長さの比率と破壊圧力の関係を示すグラフ
【図3】本発明における第2コイル部の形態の例(a)および(b)を比較例(c)と共に示す写真
【図4】本発明の照明装置を実施するための一形態を示す模式図
【符号の説明】
【0051】
1…透光性気密容器、1a…包囲部、1b…封止部、2…封着金属箔、3…電極、3a…電極主部、3b…電極軸部、4…サブコイル、4a…第1コイル部、4b…第2コイル部、5…電流導入導体、6…口金、7…外部リード線、Cs…寸断部、e…コイル終端部、R1…第1の領域、R2…第2の領域、t…口金端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に放電空間が形成された包囲部および包囲部の端部に連接された封止部を備えた石英ガラス製の透光性気密容器と;
透光性気密容器の封止部の内部に気密に埋設された封着金属箔と;
基端が封着金属箔に接続した電極軸部および電極軸部の先端に配設されて放電空間に臨む電極主部を備えた電極と;
透光性気密容器の封止部内において電極軸部の周囲に装着されるとともに、一端が放電空間側に位置し他端が封着金属箔と電極軸部との接続部近傍に向かって連続して延在する第1コイル部からなる第1の領域と第1コイル部の他端に隣接する寸断部および一端が寸断部を介して第1コイル部の他端に対向し、かつ他端が電極軸部との接続部に隣接する第2コイル部からなる第2の領域とを備えているサブコイルと;
先端が封着金属箔に接続し、基端が封止部から外部に露出した電流導入導体と;
点灯時に1MPa以上の圧力を呈するように透光性気密容器の内部に封入された放電媒体と;
を具備していることを特徴とする高圧放電ランプ。
【請求項2】
サブコイルは、第2の領域の長さをAとし、第1および第2の領域の長さをBとしたとき、比A/Bが下記数式1を満足することを特徴とする請求項1記載の高圧放電ランプ。
[数式1]
2<A/B<42
【請求項3】
放電媒体は、水銀フリーであることを特徴とする請求項1または2記載の高圧放電ランプ。
【請求項4】
照明装置本体と;
照明装置本体に配設された請求項1ないし3のいずれか一記載の高圧放電ランプと;
高圧放電ランプを点灯する点灯装置と;
を具備していることを特徴とする照明装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−277537(P2009−277537A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−128337(P2008−128337)
【出願日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【出願人】(000111672)ハリソン東芝ライティング株式会社 (995)
【Fターム(参考)】