説明

高圧放電ランプに用いられる電極システム

高圧放電ランプに用いられる電極システム(13)は、少なくとも、放電側の自由端部の近くに被着された、ヘッドとしての螺旋体(5)を備えたピン状の軸部(4)と、この軸部(4)に結合された接続部材(8)とを有している。この場合、接続部材(8)には、被覆する巻線(11)が被着されている。この場合、螺旋体と巻線とが、互いにスペーサ(24)を介して結合されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、請求項1の上位概念部に記載した形式の、高圧放電ランプに用いられる電極システムから出発する。この電極システムは、特に水銀および/またはナトリウムを含有した高圧放電ランプに用いられる電極である。使用分野は、たとえばメタルハライドランプ、別の特別なナトリウム高圧ランプである。
【0002】
背景技術
欧州特許出願公開第587238号明細書および国際公開第95/28732号パンフレットに基づき、高圧放電ランプに用いられる電極システムがすでに公知である。この公知の電極システムには、1つの電極と1つの貫通案内部材とが使用される。この場合、電極軸部には、螺旋体が取り付けられている。同時に、貫通案内部材には、被覆する巻線が取り付けられている。この巻線は、一部で、シールの改善および腐食に対する防護のために働くものの、特にセラミックス製の放電容器の場合には、螺旋体が毛管内の隙間容積を塞いでいる。さらに、通常使用されるモリブデンの熱膨張係数はより良好にAlに適合している。しばしば、螺旋体は、放電付近における高い温度に耐えるために、タングステンから成っている。巻線では、むしろガラスはんだとの相容性が問題となり、これによって、ここでは、たいていモリブデン線材が使用される。一般的に、貫通案内部材は軸部よりも中実であり、相応して、巻線は螺旋体よりも著しく太い線材から成っている。約100Wまでの低いワット数に対する通常の電極システムはしばしば3つの部分から成っている。この場合、貫通案内部材は2つの部分から、モリブデンピンから成る電極軸部に対する接続部材と、端片としてのニオブピンとを備えて形成されている。より高ワット数のランプは、しばしば3つまたは4つの部分から成っている。このランプは接続部材として、たいていピン状のサーメット部材を使用している。
【0003】
発明の開示
本発明の課題は、請求項1の上位概念部に記載した形式の電極システムを改良して、高圧放電ランプの運転特性が改善され、特により良好な光束・メンテナンス特性も得られるようにすることである。
【0004】
この課題は、請求項1の特徴部に記載の特徴によって解決される。特に有利な構成は従属請求項に記載してある。
【0005】
別の課題は、このような電極システムを備えたランプを提供することである。
【0006】
この課題は、請求項18の特徴部に記載の特徴によって解決される。
【0007】
本発明によれば、螺旋体と巻線との間に剛性的な結合部が形成される。この結合部は品質を改善し、ランプの特性における、より良好に再現可能な結果に繋がる。これによって、螺旋体と巻線との間に不変の間隔関係があり、これによって、巻線の、いずれにせよ必要となる正確な位置調整が、螺旋体の正確な位置調整を自動的にもたらす。このような結合は、螺旋体と巻線とに対する自体全く異なる要求プロファイルに基づき、これまで考慮されなかった。
【0008】
この場合、本発明の基本原理に対して、どのように電極システムが正確に形成されているかは重要ではない。一般的に、電極システムは少なくとも、螺旋体として形成されたヘッドを備えた電極軸部と、接続部材とから成っている。少なくともこの接続部材の一部には、被覆する巻線が被着されている。
【0009】
接続部材は、一方では、電極軸部に一体に結合されていてよい。この場合、一体の部材は、たいてい、タングステンから製造されたピンから成っている。
【0010】
しかし、接続部材は別個の部材であってもよい。この事例では、接続部材が、しばしば構造上、この接続部材に付設された貫通案内部材の一部と共に1つにされている。通常、接続部材はモリブデン、タングステンまたはサーメットから成っている。この事例では、接続部材の直径がしばしば電極軸部の直径よりもかなり大きく(150%まで)または著しく大きく(400%まで)すら寸法設定されている。本発明によるコンセプトは、螺旋体と巻線との直径における極めて大きな違いにおいて、両部材が、互いに結合された別個のワークから製造されていることによって考慮され得る。一般的な剛性的な結合部は、たとえば溶接、ろう接または交絡によって得られる。
【0011】
しかし、本発明は、電極軸部と接続部材との直径が極端に異なって選択されず、もはや50%よりも多く互いに異なっておらず、特に20%にまですら等しい場合に特別な利点を生ぜしめる。この事例では、螺旋体と巻線とが1つの線材から一体に製造されていよい。この場合、螺旋体と巻線とは、いわゆる「巻線中断部」を介して互いに結合されている。この技術は、螺旋体と巻線とが1回の作業過程で直接電極システムに被着され、従来慣用のように別個に製造される必要がなく、この場合、一層手間をかけて別個に被着される必要がないという利点を有している。したがって、この新たな技術は、電極システムひいては製作される高圧放電ランプに対するコスト削減および品質改善における量子飛躍を成している。
【0012】
本発明によって、当業者は、特に電極が装着されたセラミックス製の放電容器の製作を簡単にかつ安価にすることができる。この場合、特に小さな出力を備えたランプの開発も注目される。なぜならば、簡単なかつ確実な製造法によって初めて、特に20〜75Wの範囲内の小さなワット数の製造における僅かな誤差が可能となるからである。
【0013】
通常の電極システムは3つの部分から形成されていて、タングステンから成る電極軸部と、2つの部分から成る貫通案内部材とから成っている。この貫通案内部材は、巻線が被着された、モリブデンから成る接続部材と、ニオブから成る端片とを備えている。接続部材は、しばしば自体既知の割合とほぼ同じ割合を備えたモリブデンとAlとから成る導電性のサーメットからも成っている。この構成は、むしろ、150Wまでの比較的小さなワット数に対して一般的である。接続部材に設けられた巻線は別の巻線によって変更されていてよい。この別の巻線は、第1の巻線とほぼ同じ特性を有していてよく、第1の巻線における同じ材料から成る補足的な第2の層を形成していてもよいし、別の材料から成っていてもよいし、より良好な安定性のために、本来の巻線に対する被覆線材として形成されていてもよい。
【0014】
より高いワット数(150〜400W)に対する別の構成は、4つの部分から成る電極システムを使用する。この場合、しばしばモリブデンから成る接続部材と、しばしばニオブから成る端片との間に、たいていサーメットから成る中間片が挿入されている。
【0015】
一般的に、通常2〜4つの部分から成る電極システムの種々異なる構成要素は溶接されるかまたはろう接されるかまたは、たとえば圧着または差込みによって機械的に結合される。
【0016】
本発明による電極システムは、高圧放電ランプに用いられるセラミックス製の放電容器だけでなく、ガラス製造された放電容器にも使用することができる。この場合、放電容器が片側で閉鎖されているかまたは両側で閉鎖されているかは重要ではない。片側のピンチシールの事例では、電極が折り曲げられている。この電極は放電容器内にその軸部を介して、たとえば軸部の一部であるかまたは軸部に付設された貫通案内部材によって保持される。この場合、この貫通案内部材は、自体公知のように、セラミックス製の毛管内にシールされているかまたはピンチシール部内にまたは封止部内にシールされている。
【0017】
電極軸部に設けられた螺旋体は、軸部と同一平面を成して終わっていてもよいし、突出していてもよいし、引っ込められていてもよい。
【0018】
これによって、電極の特に簡単な製造が可能となる。出発材料は、たとえばエンドレス巻成体である。このエンドレス巻成体は、巻成区分と、巻線の中断部とを有している。第1の巻成区分は螺旋体()を形成することができ、いわゆる「中断部()」を介して間隔を置いて配置された隣り合った第2の巻成区分は巻線()を形成することができる。原理的に、このような、いわゆる「WUW巻成体」は、任意の長さ、特に巻成されたセグメントと中断部との任意の長さを備えて製作可能でありかつ使用可能である。
【0019】
少なくとも1つの電極システムを備えた一般的なランプは、少なくとも1つの放電容器を有している。この放電容器は金属蒸気、特に水銀および/またはナトリウムを含有している。この場合、放電容器はガラスまたはセラミックスから製造されている。有利には、20〜400Wの出力を備えた比較的低ワット数のランプが挙げられる。しかし、たとえば2000Wまでのより高ワット数のランプは排除されていない。
【0020】
電極システムを製作するための有利な製作法は、軸部と接続部材との役割を果たす一貫して延びるコアピンの代わりに、互いに異なる直径を備えた2つの部分から形成されたコアピンが使用されるように変更されていてもよい。
【0021】
区分へのエンドレス巻成体の切断は、有利にはワイヤ放電加工またはレーザパルスの使用によって行われる。このような巻成体は良好な寸法安定性を有している。螺旋体はもはやずれ滑り得ない。螺旋体をコアピンで同一平面を成して終わらせることは維持されたままである。強い負荷時の螺旋体の落下はいまや排除されている。
【0022】
さらに、規定された熱移行が発生させられる。電極パラメータは製造ロットの内部でいまや不変であり、これによって、螺旋体と軸部との間のコンタクトひいてはランプスタート後の初期の熱移行も全てのランプにおいて実際に同一となる。いまや、螺旋体を固定するための別個の手段、たとえばドイツ連邦共和国特許出願公開第19808981号明細書に記載されているような張出し部はもはや不要となる。新たな製作方法の別の利点は、電極が被嵌めの省略によってもはや不都合に曲げられ得ないことである。極端に穏やかな製造によって、もはや継ぎ目が電極領域に突出せず、これによって、黒色化特性とアーク静粛性とが改善される。
【0023】
新たな製作法によって、極端に簡単な、つまり、2つの部分からしか成っていない電極システムを製造することができる。この電極システムは、極めて僅かなワット数に対しても寸法安定性である。螺旋体を備えた20Wランプに対して、これまでまだ、工業的に有利な製作法は存在していない。
【0024】
これによって、電極システムのフロント片として機能する特殊な構成部材を形成することもでき、この構成部材が、特にハイグレードな対称性を有することもできる。対称的な電極システムの利点もしくはフロント片を形成する構成部材の利点は、これによって、電極システムの構成要素を互いに結合する第1のまたはただ1つの溶接部が放電アークから十分に離されて配置されていることである。これによって、過熱される溶接点と、屈曲される電極ヘッドとの問題が最小限に抑えられる。
【0025】
高い出力、たとえば150〜600Wでは、いま、手間のかかる4部分デザインの代わりに、廉価な3部分デザインが可能となる。なぜならば、1つのフロント片をその長さにおいて仕立てることができるからである。これによって、ここでも、溶接点を高温のゾーンからずらすことができる。別の利点は、より低温の区域に、より良好に適合されたサーメットを使用することができることである。従来、大きなワット数では、3部分デザインが不可能であった。なぜならば、第1に、サーメット材料が十分に熱安定性でなく、逆に貫通案内部材までのコアピンの延長が、この手段に基づき生ぜしめられる毛管内の大きな隙間容積のため禁じられているからである。第2に、モリブデンピンを使用することもできない。なぜならば、この場合、シール部が十分に機能しないからである。モリブデンから成る大きなピンは、熱膨張係数において毛管のセラミックスにほとんど適合されていない。
【0026】
螺旋体と巻線とを備えた電極システムに対する新たな製作法は、製作を著しく簡単にかつ廉価にし、自動化を容易にする。
【0027】
新たな電極はレーザによる製作のために極めて良好に適している。一般的に、この作業のためにはNd−YAGレーザが使用される。このレーザは切断工具として使用することができるかまたは材料加工、特に除去のために使用することができる。第1の事例では、特にばりなしの真っ直ぐな切断が得られ、第2の事例では、電極の先端における突出したコアピンを簡単に接触なしに得ることができる。レーザの別の使用分野は、これによって、スペーサの横断面を端正に局所的に減じることができることである。この部分的な除去は、螺旋体と巻線との間の熱流を減じるために役立つ。この場合、線材の高さだけでなく幅も減じることができる。有利には、高さが減じられる。なぜならば、これによって、この箇所で外径を減じることができるからである。これによって、セラミックス製の放電容器の毛管に対する間隔が増加させられる。このことは、亀裂の危険を減じる。
【0028】
別の使用可能性は、追補的に最後の巻条がその高さにおいて減じられることによる巻線の太さの減少である。これによって、有利には、端部で溶接可能性が改善され、ここで接続ピンを取り囲む溶融セラミックス内への埋込みがより良好に達成される。
【0029】
30〜65%だけの高さ減少が一般的である。このことは、特に100Wまでの小さなワット数で重要となる。
【0030】
特に接続部材の付加的な被覆部を設けることができる。この被覆部は別個に製作することができ、場合により、追補的に被せ嵌めることができる。しかし、被覆部は巻成体の線材から直接一体に製作されていてもよい。被覆部は一層または二層であってよく、単重巻成体または二重巻成体として実現することができる。別の可能性は一層の被覆巻成体である。
【0031】
発明の有利な構成
以下に、本発明を複数の実施例につき詳しく説明する。
【0032】
図1には、150Wの出力を有する、両側で閉鎖されたセラミックス製の放電容器2を備えたメタルハライドランプ1が概略的に部分図として示してある。電極3はピン4を有している。このピン4は電極軸部として一貫してコンスタントな直径を有している。この直径は約500μmである。ピンの放電側の先端から0.3mmの間隔を置いて、180μmの直径の螺旋体5が軸部4に取り付けられている。放電容器2内には、金属ハロゲン化物充填物が充填されている。放電容器の端部6は毛管7によって閉鎖されている。この毛管7は、二分割された貫通案内部材8,9を狭幅に取り囲んでいる。この貫通案内部材8,9は、内側の接続部材8と外側の端片9とから成っている。この端片9はニオブピンである。
【0033】
図2には、放電容器2の一方の端部が詳しく示してある。端片9はガラスはんだ10によって毛管7内にシールされている。接続部材8はモリブデンから成っている。この接続部材8はピン(隠されている)である。このピンは、モリブデンから成る巻線11によって被覆されている。接続部材8の直径は、電極の、軸部として機能するコアピン4の直径よりも著しく大きく寸法設定されている。軸部に位置する、電極ヘッドとして働く螺旋体5は、1条または多条を有する中断部12を介して巻線11に結合されている。条数は、有利には1〜3である。
【0034】
図3には、詳しく示した図2のランプに用いられる電極システム13の別の実施例が概略的に示してある。この電極システム13は、一貫して延びるピン4を有している。このピン4は軸部と接続部材との役割を同時に引き受けている。放電側の端部には、螺旋体5が被着されている。この螺旋体5は、1つの線材の約6条を有していて、ピンと同一平面を成して切り落とされている。貫通案内部材側の端部には、タングステンから成る線材の巻線11が被着されている。この巻線11は約30条を有している。螺旋体5と巻線11とは一体に製造されていて、1条を有する中断部12を介して結合されている。螺旋体と巻線との間の間隔は、螺旋体5の長さの3倍にほぼ相当している。
【0035】
一般的に、螺旋体と巻線との間の間隔は、有利にはワット数と共に増加することが認められる。
【0036】
図4では、電極システム13が図3に類似して形成されている。しかし、螺旋体5と巻線11とが一体ではなく、別個に形成されている。巻線11はモリブデンから成っている。なぜならば、このモリブデンが、毛管7のセラミックスの熱膨張係数に適合させるために最良に適しているからである。しかし、このような電極システムは、モリブデンの比較的低い融点のため、極めて強く負荷されてはならない。言い換えると、このシステムは100Wまでの出力に対して良好に適しているものの、それ以上は単に条件付けられている。電極システムに用いられる別の適切な材料は、タングステン、タンタルおよびレニウムであり、単独でも組み合わされてもよい。場合により、1つの材料が別の材料への被覆層として働く。巻線11の線材直径は、隙間容積を可能な限り小さく保つために、螺旋体5の線材直径よりも著しく小さく寸法設定されている。螺旋体と巻線とは、中断部の端部に設けられた溶接点Sを介して互いに結合されている。
【0037】
電極システム13は、接続部材8にさらに、著しく大きな直径を備えた、ニオブから成る貫通案内部材の端片9が溶接されていることによって完成されている。巻線の外径とニオブピンの直径とはほぼ等しい大きさである。
【0038】
有利な構成では、熱的な適合の問題の解決手段が、巻線を、適切に組み合わされた材料から製造することにある。このことは、特に高負荷されるランプに当てはまる。図5には、電極システム13が部分図で示してある。この電極システム13では、タングステンから成っていて、図3に示したように、螺旋体と一体である本来の巻線11に、モリブデンから成る第2の巻成体14が被着されることによって、毛管の材料に対する熱膨張係数の適合の問題が解決される。巻成体14は、一般的に、隙間容積を最小限に抑えるため、より細い線材、一般的には20〜50%細い線材から製造されている。
【0039】
図6には、電極システムの一部が示してある。この電極システムは標準構成部材を、電極システムの、放電にさらされる端部に設けられたフロント片20として使用している。このフロント片20はコア線材21を有している。このコア線材21は、軸部と、この軸部に続く接続部材の第1の区分とを形成している。螺旋体22は、特にこの螺旋体22が軸部と同一平面を成して終わっているように軸部の第1の端部に組み付けられている。螺旋体22と同じ長さを有する巻線23は、軸部の第2の端部に同じく同一平面を成して組み付けられている。この場合、中断部24はその間に配置されている。螺旋体22と巻線23との同じ長さに基づき、構成部材が対称的となる。このことは、製造における使用を著しく簡単にする。なぜならば、対称性に基づき、組付け時の構成部材の方向付けに注意を払う必要がないからである。言い換えると、螺旋体と巻線とが、ここでは、互いに交換することができる同様の部材として構想されている。
【0040】
図7には、フロント片20が貫通案内部材の別の構成要素にどのように付設されるのかが示してある。この場合、フロント片20は、別個の巻線26で被覆された、サーメットから成る中間部材または中間片25に溶接されている。この中間片25には、ニオブから成る端片27が同じく溶接を介して付設されている。すなわち、電極と貫通案内部材との間の一般的な境界が、構造上の利点のために排除されている。
【0041】
この配置形式の特別な利点は、ここでは、巻線23の外径と、中間部材25の別個の巻成体26の外径とが等しい大きさである必要がないことである。なぜならば、フロント片20がジオメトリと材料とに関して螺旋体22の要求に最適化され得るのに対して、中間部材25は毛管内での被覆・シール作用に最適化され得るからである。
【0042】
図8aおよび図8bには、螺旋体35と巻線39との間の規定された間隔の利点を説明する電極システム30が示してある。フロント片31は、図8aにより新規に形成されている。これに対して、接続部材32と端片33とは慣用に、すなわち、たとえばモリブデン巻成体39がモリブデンピン34a(破線参照)に被着されていて、ニオブから成るピンである端片33に溶接されていることによって形成されていてよい。ここでは、図8aにより、タングステンから成る螺旋体35が被着されたタングステン製の軸部34から成るフロント片31が使用されている。しかし、付加的には、さらに、軸部34に中断部36が巻かれている。この中断部36は、軸部の後方の端部37にまで延びている。
【0043】
図8bによれば、フロント片31は慣用の接続部材32に溶接されてよい。著しく概略的に示した溶接結合点38は、コアピン34,34aだけでなく、中断部36も巻線39に結合している。ここでも、ジオメトリと材料とが、フロント片と中間部材との間の分離に基づき、あらゆる特殊な要求に最適化され得る。
【0044】
図9には、構成ユニットが、軸部としてのコアピン4と、一体の接続部材とを有する電極システム13が示してある。螺旋体5は、慣用のように、軸部4の放電側の端部に装着されているのに対して、巻線11は、その内部に隠れた接続部材4′よりも長く形成されており、これによって、接続部材の後側の端部に設けられた中空室15内に端片を押し込むことができ、その後、圧着することができる。これによって、1回の溶接過程を省略することができる。
【0045】
図10には、図9に対する択一的な構成が示してある。この構成では、ただ1つの違いとして、接続部材4′の後方の端部に付加的な中断部16がコアピンなしに付設されている。この実施例では、端片が中空室15内に挿入され、中断部16によって圧着される。
【0046】
図11には、3つの部分から成るデザインを備えた電極システム13が示してある。軸部と、接続部材の第1の部分とを形成する一貫して延びるコアピン4を備えた非対称的なフロント片17が設けられている。このフロント片17には、短い螺旋体18と長い巻線19とが装着されている。フロント片17には、取り囲むモリブデン巻成体を備えたサーメットピン28が溶接されている。このサーメットピン28には、さらに、端片29が溶接されている。溶接点はそれぞれ符号38で示してある。
【0047】
図12には、中断部40が2条の長さであるフロント片35が示してある。螺旋体14の外径と巻線29の外径との間の比は、ここでは、1:3である。巻線内には、適切に寸法設定された中間片を嵌め込むことができる。
【0048】
寸法の1つの具体的な例は70Wランプである。この70Wランプでは、軸部21が250μmの直径を有している。この軸部21に巻かれる、螺旋体および巻線のための線材は150μmの直径を有している。軸部と、螺旋体と、巻線とから製造された対称的なフロント片(図6および図7参照)は、1.1mmの螺旋体22の長さと、1.8mmの中断部24(1条)の長さと、再び1.1mmの巻線23の長さとを有している。フロント片に付設された、モリブデン線材26によって被覆された中間部材25は、400μmの直径のコアピンと、140μmの直径の巻き線材とを備えた8.5mmの長さを有している。中間部材25に付設された、ニオブから成る端片27は16.8mmの長さを有していて、730μmの直径を備えたニオブピンから成っている。
【0049】
35Wランプの寸法は以下のことを提案している。ニオブピン27が610μmの直径を有している。中間部材のモリブデンコアピン25は300μmの直径を有していて、130μmの直径を備えたモリブデン線材26によって被覆されている。電極軸部および接続部材に対する一貫した部分として働くコアピン21は154μmの直径を有している。このコアピン21には、122μmの直径の線材から成る螺旋体22、中断部24および巻線23が巻かれている。
【0050】
150Wランプの寸法は以下のことを提案している。ニオブピン27が880μmの直径を有している。中間部材のモリブデンコアピン25は540μmの直径を有していて、150μmの直径を備えたモリブデン線材26によって被覆されている。電極軸部および接続部材に対する一貫した部分として働くコアピン21は500μmの直径を有している。このコアピン21には、180μmの直径の線材から成る螺旋体22、中断部24および巻線23が巻かれている。
【0051】
接続部材の直径DAは、軸部の直径DSの50〜400%であってよい。
【0052】
一般的に、別個の螺旋体と巻線とは、中断部の終端部が巻線の始端部または螺旋体の始端部に溶接されていることによって互いに剛性的に結合することができる。この場合、中断部は巻線または螺旋体に一体に付設されている。択一的には、中断部が螺旋体および巻線と別個であってもよく、この場合、2つの溶接点を必要とする。溶接またはろう接等の代わりに、たとえばハロゲン白熱ランプに対して知られている技術に類似して、螺旋体または巻線の、場合により曲げられた端部への中断部の刺込みによって、純粋に機械的に剛性的な結合も可能である。
【0053】
螺線状に巻かれた巻線中断部の代わりに、中断部は、真っ直ぐなスペーサ41として形成されていてもよい。このスペーサ41は、たとえば溶接点42を介して螺旋体22と巻線23との間に挿入されている(図13参照)。
【0054】
図14には、コア線材21が中断部24によって被覆された1つの実施例が示してある。この中断部24は、一部では、損なわれていない線材区分24uであり、一部では、直径が約60%に減少させられた線材区分24rである。このことは、レーザ加工によって最も簡単に実現することができる。こうして、電極のヘッドから後方への熱流が抑圧される。択一的な構成が図15に示してある。この構成は、原理的に図9に示してあるものの、ここには、中断部が均一に側方から狭窄されている(41)かまたは片側で狭窄されている(42)という違いがある。両狭窄部は再びレーザによって製作されてもよいが、機械的に製作されてもよい。
【0055】
図16には、巻線11の末端の部分45、すなわち、巻線11の、放電と反対の側の端部に装着された部分45が、減じられた直径を有していてよく、これによって、巻線の、溶融セラミックスまたはガラスはんだ10に接触する領域が最適化されることが示してある(理解しやすくするために図2参照)。この場合、ピン4と、中断部12と、螺旋体5とは、図2に示した配置形式に相当している。ここでも、部分45での高さの減少はレーザによって最良に実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】高圧放電ランプの断面図である。
【図2】別の高圧放電ランプの断面図である。
【図3】図2のランプに用いられる電極システムの断面図である。
【図4】電極システムの別の実施例を示す図である。
【図5】電極システムの別の実施例を示す図である。
【図6】電極システムの別の実施例を示す図である。
【図7】電極システムの別の実施例を示す図である。
【図8a】電極システムの別の実施例を示す図である。
【図8b】電極システムの別の実施例を示す図である。
【図9】電極システムの別の実施例を示す図である。
【図10】電極システムの別の実施例を示す図である。
【図11】電極システムの別の実施例を示す図である。
【図12】電極システムの別の実施例を示す図である。
【図13】電極システムの別の実施例を示す図である。
【図14】電極システムの別の実施例を示す図である。
【図15】電極システムの別の実施例を示す図である。
【図16】電極システムの別の実施例を示す図である。
【符号の説明】
【0057】
1 メタルハライドランプ、 2 放電容器、 3 電極、 4 軸部、 4′ 接続部材、 5 螺旋体、 6 端部、 7 毛管、 8 接続部材、 9 端片、 10 ガラスはんだ、 11 巻線、 12 中断部、 13 電極システム、 14 巻成体または螺旋体、 15 中空室、 16 中断部、 17 フロント片、 18 螺旋体、 19 巻線、 20 フロント片、 21 軸部、 22 螺旋体、 23 巻線、 24 中断部、 24r,24u 線材区分、 25 中間部材、 26 巻成体、 27 端片、 28 サーメットピン、 29 端片または巻線、 30 電極システム、 31 フロント片、 32 接続部材、 33 端片、 34 軸部、 34a 軸部、 35 螺旋体またはフロント片、 36 中断部、 37 端部、 38 溶接点、 39 巻線、 40 中断部、 41 スペーサまたは狭窄部、 42 溶接点または狭搾部、 45 部分、 S 溶接点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高圧放電ランプに用いられる電極システム(13)であって、少なくとも1つの電極が設けられており、該電極が、ピン状の軸部(4)を有しており、該軸部(4)が、放電側の自由端部の近くに被着された螺旋体(5)と、軸部(4)に結合された接続部材(8)とを備えており、該接続部材に、被覆する巻線(11)が被着されている形式のものにおいて、螺旋体(5)と巻線(11)とが、互いにスペーサ(41)を介して結合されていることを特徴とする、高圧放電ランプに用いられる電極システム。
【請求項2】
接続部材の直径DAが、軸部の直径DSの50%〜400%である、請求項1記載の電極システム。
【請求項3】
螺旋体(5)と巻線(11)とが、互いに剛性的に結合された別個の部材である、請求項1記載の電極システム。
【請求項4】
螺旋体(5)と巻線(11)とが、一体の構造上のユニットを成している、請求項1記載の電極システム。
【請求項5】
螺旋体と巻線とが、スペーサとしての巻線中断部(24)を介して互いに結合されている、請求項3または4記載の電極システム。
【請求項6】
接続部材が、別個の部材である、請求項1記載の電極システム。
【請求項7】
接続部材が、軸部の一体の延長部である、請求項1記載の電極システム。
【請求項8】
少なくとも軸部が、高融点の導電性の材料、有利にはタングステンまたはタンタルから単にまたは主にタングステンまたはタンタルから成っている、請求項7記載の電極システム。
【請求項9】
接続部材が、単にモリブデン、ニオブ、導電性のサーメットまたは主にこれらの材料の1つまたは合金から成っている、請求項6記載の電極システム。
【請求項10】
螺旋体(5)と巻線(11)とが、同一の材料から成っている、請求項1記載の電極システム。
【請求項11】
螺旋体と巻線とが、モリブデンおよび/またはタングステンから成っている、請求項1記載の電極システム。
【請求項12】
螺旋体と巻線とが、同じピッチを有している、請求項1記載の電極システム。
【請求項13】
当該電極システムが、フロント片を有しており、該フロント片において、螺旋体と巻線とが互いに対称的である、請求項1記載の電極システム。
【請求項14】
巻線(11)または巻線(11)の一部に少なくとも1つの別の巻線または被覆線が被着されている、請求項1記載の電極システム。
【請求項15】
接続部材が、貫通案内部材の第1の部分を成している、請求項1記載の電極システム。
【請求項16】
貫通案内部材が、さらに、末端の第2の部分を有しており、該部分が、特にニオブピンである、請求項15記載の電極システム。
【請求項17】
接続部材が、軸部とほぼ同じ直径を有しており、特に接続部材と軸部との直径が、30%未満で互いに異なっている、請求項1記載の電極システム。
【請求項18】
スペーサの直径が局所的に減じられている、請求項1から17までのいずれか1項記載の電極システム。
【請求項19】
巻線(11)の高さが、放電と反対の側の端部で減じられている、請求項1記載の電極システム。
【請求項20】
高圧放電ランプにおいて、請求項1記載の少なくとも1つの電極システムが設けられており、当該ランプが、2つの端部を備えた放電容器(2)を有しており、電極システムが、放電容器(2)の一方の端部または両方の端部に挿入されており、放電容器(2)が、特にセラミックスから製造されていることを特徴とする、高圧放電ランプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8a】
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【図8b】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公表番号】特表2007−522640(P2007−522640A)
【公表日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−553420(P2006−553420)
【出願日】平成16年11月19日(2004.11.19)
【国際出願番号】PCT/DE2004/002561
【国際公開番号】WO2005/083744
【国際公開日】平成17年9月9日(2005.9.9)
【出願人】(390009472)パテント−トロイハント−ゲゼルシヤフト フユール エレクトリツシエ グリユーラムペン ミツト ベシユレンクテル ハフツング (152)
【氏名又は名称原語表記】Patent−Treuhand−Gesellschaft fuer elektrische Gluehlampen mbH
【住所又は居所原語表記】Hellabrunner Strasse 1, Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】