説明

高圧放電ランプ

【課題】 封止管部の石英ガラスと金属箔が剥れ難くて箔浮きの発生率を低減させ、封止管部の耐圧強度の高い高圧放電ランプを提供すること。
【解決手段】 高圧放電ランプにおいて、封止管部の垂直断面において、金属箔の両端(a1,a2)を結ぶ第1の線分(L1)の長さをA(mm)とし、第1の線分の中点(b1)と、第1の線分の垂直二等分線(F)が金属箔と交差する点(b2)とを結ぶ第2の線分(L2)の長さをB(mm)としたとき、B/Aが式1を満足し、第1の線分(L1)の延長線が封止管部外周と交わる点(c1,c2)と、各交点(c1,c2)に近接する金属箔両端(a1,a2)とを結ぶ線分の長さをそれぞれC1,C2(mm)としたとき、第1の線分の長さA(mm)とC1,C2(mm)との関係が式2の関係を満足する。
(式1)0.01≦B/A≦0.13
(式2)0.22≦A/(C1+C2)≦1.1

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、点灯時の水銀蒸気圧が15MPa以上となるショートアーク型の高圧放電ランプに関し、例えば、液晶ディスプレイ装置やDMD(デジタルミラーデバイス)を使ったDLP(デジタルライトプロセッサ)などのプロジェクタ装置のバックライトとして好適に使用されるショートアーク型高圧放電ランプに関する。
【背景技術】
【0002】
投射型のプロジェクタ装置は、矩形状のスクリーンに対して、均一に、しかも十分な演色性をもって画像を照明させることが要求される。このため、光源としては、水銀や金属ハロゲン化物を封入させたメタルハライドランプ、キセノンランプ或は水銀ランプなどのショートアーク型放電ランプが使われている。
【0003】
上記技術分野に係る液晶プロジェクタは、各会議室へ据え付けられるほど普及していないことから、持ち運びされることが多く、小形軽量化が重要な課題となっている。このために、液晶プロジェクタ用の液晶パネルは年々小形化されてきており、これに伴って小形化された液晶パネルに効率よく集光させるためにも、光源のいっそうの小形化が要求されている。光源の小形化を達成するためには、アーク長を短くするのが光学的に一番効果的な手段であるが、従来の仕様のまま単にアーク長を短縮するだけでは、ランプ電圧が低下してしまう。これを補って所定のランプ電力を投入しようとすると、ランプ電流を増大しなければならない。ところが、ランプ電流を増大させるために点灯装置が大形化してしまうので、液晶プロジェクタ装置を小形化するというコンセプトから外れることになり、結局アーク長を短くする手段を採用することはできない。
【0004】
そこで、ランプ電圧を低下させないでアーク長を短くするために、アークのインピーダンスを高くすること、換言すれば、点灯中の放電媒体の圧力を上昇させる手段が採用されてきている。これによれば照度維持率の向上を図りながら演色性の向上を図ることができるといわれ、近時においては動作時の圧力が10MPa以上となるように、多量の水銀を封入した高圧放電ランプが好適に利用されてきている。
【0005】
なお、以上のような高圧放電ランプは、例えば、特開平2−148561号公報、特開平6−52830号公報等に開示されている。
【0006】
ところで、上述の高圧放電ランプは発光管内の圧力が点灯時に極めて高くなるので、発光管部の両側に延在する封止管部においては当該封止管部を構成する石英ガラス層と電極および給電用の金属箔を十分かつ強固に密着させる必要がある。
特に発光管部の動作圧力が15MPa以上となる場合、ピンチシール方式による封止では十分な耐圧強度を得ることができないため、いわゆる「シュリンクシール方式」による封止に限定されてしまう。
【0007】
図5はシュリンクシール方式の説明図である。
発光管を構成するガラス管は、略中心部に発光管部形成用の楕円球状部分11Aが形成されており、その両端に封止管部形成用の直管状部分12A,12Bが形成されている。楕円球状部分11Aの内部に、それぞれ内部リード棒13の先端に形成された陰極側電極14及び陽極側15を対向状態に配置する。内部リード棒13,13はそれぞれ基端部が金属箔16,16の内側端部に溶接により接続されており、かかる金属箔16,16は、外部リード棒19,19に接続されている。前記電極構成部を所定の位置に挿入後、排気しながらガラス管における金属箔16近傍を全周に亘って加熱すると、軟化したガラスが内側に吸引されて金属箔に気密状態に融着される。
【特許文献1】特開平2−148561号公報
【特許文献2】特開平6−52830号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
近時では、更なる高輝度、高照度のランプとするために、動作圧力をいっそう増大させ、例えば水銀蒸気圧が20〜30MPaとなるようなランプが要求されている。しかしながら上記シュリンクシール方式により封止されたランプであっても、このように高い圧力になると、封入ガスが抜けたり封止管部が破損したりして、不具合を発生するランプが多くなってしまう。この理由について本発明者が調査を行ったところ、ランプが金属箔表面に沿って石英ガラスと金属箔との界面が剥れ、該金属箔が封止管部内で浮いた状態になると(以下「箔浮き」という。)ランプに上記不具合を生じる可能性が高くなると判明した。
先にも述べたように、ランプの動作圧が20MPa以上となるランプの開発が要求されているが、これを実現させるためには、封止管部における耐圧強度の増大が急務である。
そこで、本発明の目的は、封止管部を構成する石英ガラスと金属箔とが剥れにくくて箔浮きの発生率を低減させ、封止管部の耐圧強度をいっそう高くでき、その結果、高い動作圧力で点灯可能なランプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る高圧放電ランプは、石英ガラスからなり発光管部に略円柱状の封止管部が連設された発光管と、前記発光管部の内部にその先端が突出し、前記封止管部に気密に埋設された金属箔の内側端部に、その後端が接続されてなる内部リード棒と、を備えた高圧放電ランプであって、前記封止管部を、前記内部リード棒と前記金属箔との接合部において発光管の管軸に対して垂直方向に切断した断面において、前記内部リード棒の形状は略楕円であり、前記金属箔の両端(a1,a2)を結ぶ第1の線分(L1)の長さをA(mm)とし、前記該第1の線分の中点(b1)と、該第1の線分を垂直に二等分する仮想線(F)が金属箔と交差する点(b2)とを結ぶ第2の線分(L2)の長さをB(mm)としたとき、B/Aが下記式1を満足すると共に、前記第1の線分(L1)を延長した延長線が封止管部外周と交わる点(c1,c2)と、当該各交点(c1,c2)に近接する金属箔両端(a1,a2)とを結ぶ線分の長さをそれぞれC1,C2(mm)としたとき、前記第1の線分の長さA(mm)と、C1,C2(mm)との関係が、下記の式2の関係を満足することを特徴とする。
(式1)0.01≦B/A≦0.13
(式2)0.22≦A/(C1+C2)≦1.1
【0010】
以下、上述の規定に係る関係について以下に説明する。
本発明者はまず、耐圧強度を低下させる原因といわれる「箔浮き」現象が生じる理由について鋭意検討を行った。図6を参照して説明する。図6において(a)は封止前、(b)は封止後の様子を示す図であり、金属箔と内部リード棒の溶接部分において切断した断面図である。
図6(a)において、ガラス管の直管状部分12Aの内部に溶接により一体に構成された内部リード棒13と金属箔16とが、内部リード棒13の中心がガラス管12Aの中心に略一致するように配置される。内部リード棒13は、同図で示すように金属箔16との溶接部外周部の形状においては略楕円形状になっている。これは、内部リード棒13が金属箔16の溶接部において、該金属箔16の面に対して直交する方向に押圧された状態で溶接されたため、内部リード棒13がつぶされて、当初の略円形だったものが楕円形ないしは長円形に変形したからである。
【0011】
また、金属箔16は図6(a)で示すように平面状であるが、シュリンクシールすることにより、ガラス管12Aが加熱されることで矢印のように中心方向に引き寄せられ、封止後においては、金属箔16は中心方向に歪曲した状態で形成される。その理由は、封止管部12がシュリンクシール工程において全周でほぼ均一に縮径されるので該封止管12部分の内周面と金属箔16の両側縁部とが早期に接触し、中心方向に引き寄せられたから、と理解される。そしてこのように歪曲した金属箔16と内部リード棒13の間には、石英ガラスが入り込めない隙間Hが形成される。
【0012】
そして、上記間隙Hにおいては、発光管内部空間に連通している状態であるため、ランプを動作させると、動作圧力と同じ圧力がその内部に掛かることになり、このために、隙間内部には封止管部12を構成する石英ガラスと金属箔16とを引き剥がそうとする応力が掛かる。従来のランプでは、動作圧力が、15MPa、20MPaという圧力がかかると、箔浮きを生じる可能性が極めて高くなり、これと比例するように、ガス抜けや破損に繋がるランプが多数あった。
【0013】
本発明によれば、後段で詳述する図2の断面図において、金属箔の両端(a1,a2)を結ぶ第1の線分(L1)の長さA(mm)と、第1の線分の中点(b1)と、該第1の線分を垂直に二等分する仮想線(F)が金属箔と交差する点(b2)とを結ぶ第2の線分(L2)の長さB(mm)との関係において、B/Aを、0.01≦B/A≦0.13(式1)の範囲とすることにより、以下の作用が奏される。すなわち、B/Aが≦0.13以下であるので、内部リード棒の断面形状が略楕円形であっても、石英ガラスが入り込み易いために間隙を小さくすることができるようになる。
そして、B/Aが0.01以上であるので、石英ガラスと金属箔の密着を引き剥がす応力の方向が分散されるようになり、箔浮きが生じにくくなって、封止管部の破損を抑制することができるようになる。
【0014】
また、第1の線分(L1)を延長した延長線が封止管部外周と交わる点(c1,c2)と、これら各点(c1,c2)にそれぞれ近接する金属箔両端(a1,a2)とを結ぶ線分の長さを、各々C1,C2(mm)としたとき、第1の線分の長さA(mm)と、C1,C2(mm)との関係が、0.22≦A/(C1+C2)≦1.1とされるのは以下の理由による。
すなわち、C1+C2が小さくなれば、金属箔の幅に対して石英ガラスの厚みが不足し、機械的強度が低くなる。更に、ランプの点灯・消灯によって金属箔の端部に特に大きく生じる残留歪が封止管部外面まで達するので、より一層強度が低くなる。また、石英ガラス未充填部分の空間から封止管部の外周までの距離が小さく、当該空間に圧力がかかると破損に至り易い。A/(C1+C2)が1.1を超えると、破損する確率が高くなる。
一方、A/(C1+C2)が0.22未満になると、金属箔の曲がりが大きいために金属箔の両端側に形成される隙間が大きくなって、石英ガラスの接着面積が過小となって、耐圧強度が低下する。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る高圧放電ランプによれば、封止管部を構成する石英ガラスと金属箔とが剥れにくくて、箔浮きの発生率を低減させることができ、封止管部の耐圧強度をいっそう高くすることができる。その結果、高い動作圧力で点灯可能になり、高輝度の高圧放電ランプを実現できるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1は、本発明の第1の実施形態の高圧放電ランプの全体図である。又、図2はこのランプにおける要部を示す図であり放電ランプにおける内部リード棒と金属箔の溶接部における任意箇所、例えば図1中のR−Rに沿って、ランプの管軸に対して垂直方向に切断した断面図を示している。
高圧放電ランプの発光管10は石英ガラスからなり、略楕円球形の発光管部11を有し、この発光管部11の内部空間、即ち放電空間Sには、一対の電極14,15が対向配置されている。また、発光管部11の両端には封止管部12が形成され、該封止管部12内には、例えばモリブデンからなる金属箔16が気密に埋設されている。内部リード棒13は、基端部13Aが前記金属箔16の内側端部に圧着溶接されている。
【0017】
電極材料としてはタングステンが使用される。また、放電空間S内には、例えば発光物質としての水銀と、アルゴン(Ar)、キセノン(Xe)などの希ガス、塩素(Cl)、臭素(Br)、ヨウ素(I)などのハロゲンが封入されている。
封入される水銀量は、0.08mg/mm〜0.35mg/mmであり、点灯時の動作圧が15〜20MPa以上である。
【0018】
ここで、高圧放電ランプの寸法の一例を挙げると次の通りである。
発光管部の最大外径部断面の直径:φ9.0〜12.0mm、
放電空間の容積:60〜150mm
電極間距離:0.8〜1.8mm、
定格電圧:60〜102V、定格電力:130〜220Wである。
内部リード棒の外径:φ0.4〜0.8mm、全長:9.0〜10.0mmである。
金属箔の全長:10.0〜15.0mm、幅:1.0〜3.0mm、厚さ:15〜25μmである。
なお、本発明の高圧放電ランプは直流点灯型、交流点灯型、何れの点灯方法によってもよい。
【0019】
図2において、内部リード棒13は、金属箔16との圧着溶接の際に押圧された影響で、断面が金属箔16の幅方向に長い略楕円形乃至長円形状をなしている。同図に示すように、内部リード棒13と金属箔16との接触部から該内部リード棒13の外周に沿って、封止管部12を構成する石英ガラスが流入することができない空間H1,H2が形成されている。
ここに、金属箔の両端a1,a2を結ぶ第1の線分L1の長さをA(mm)とする。また、第1の線分L1の中点b1(仮想線FとL1の交点)と、該第1の線分L1を垂直に二等分する仮想線Fが金属箔と交差する点b2とを結ぶ第2の線分L2の長さをB(mm)とすると、B/Aが下記式1を満足する。
【0020】
(式1)0.01≦B/A≦0.13
【0021】
B/Aが0.13を超えると、金属箔16の歪曲が大きく内部リード棒13と金属箔16との隙間に封止管部12を構成する石英ガラスが入りこみにくく、結果、封止管部12の耐圧力性を低下させる。空間H1,H2に点灯時の圧力がかかったときに破損する確率が高くなる。
B/Aが0.13以下の場合、金属箔16のそりが比較的少なく、封止管部12を構成する石英ガラスが内部リード棒13と金属箔16との隙間に入りこみ易い。金属箔16と石英ガラスの接触面積が大きくて金属箔16の箔浮きを抑制できると共に、発光管の内部空間Sと連通する空間H1,H2の大きさを小さく構成できるため、金属箔16の上下方向に引き剥がす応力がかかることをも抑制できる。
一方、B/Aが0(ゼロ)に近づき過ぎて金属箔16のそりがほとんどなくなってしまうと破損しやすくなる。これは、金属箔16の上面および下面に対して垂直に生じている封止管部12の石英ガラスと金属箔16の密着を引き剥がす応力の方向が揃ってしまい、箔浮きし易くなるから、と推察される。
B/Aの値が0.01以上であれば、石英ガラスと金属箔16の密着を引き剥がす応力の方向が分散されて、箔浮きが生じにくく、封止管部12の破損を抑制することができるようになる。
【0022】
更に、図2で示す断面図において、前記第1の線分L1を延長した仮想延長線が封止管部12外周と交わる点について一方をc1、他方をc2とし、これら各交点c1,c2と、各々近接する金属箔16の端部a1,a2とを結んだ線分の長さをそれぞれC1,C2(mm)としたとき、第1の線分L1の長さA(mm)、とこれらの線分の長さC1(mm)、C2(mm)との関係が、次の式2の範囲を満足する。
【0023】
(式2)0.22≦A/(C1+C2)≦1.1
【0024】
A/(C1+C2)が1.1よりも大きいと、金属箔16の幅に対して封止管部12の石英ガラスの厚みが小さく、機械的強度が低くなる。更に、ランプの点灯・消灯によって金属箔16の端部(a1、a2)において特に大きく生じる残留歪が封止管部12外面まで達するので、より一層強度が低くなる。また、石英ガラス未充填部分の空間H1,H2から封止管部12の外周までの距離が小さく、当該空間H1,H2に圧力がかかると破損に至り易い。よって、A/(C1+C2)が1.1以上であると、破損する確率が高くなる。
A/(C1+C2)が1.1以下であれば、封止管部12の耐圧力性を維持できる。
一方、A/(C1+C2)が0.22未満になると、金属箔16の歪曲が大きいために空間H1,H2が大きくなり、金属箔16と封止管部12の石英ガラスとの接着面積が過小となり点灯時圧力により破損し易くなる。
従って、上記式2を満足することにより、封止管部12における耐圧力性を確保できるようになる。
【0025】
なお、封止管部12の強度を増大させるのみであれば、封止管部12外径を大きくすれば簡単であるが、これをあまりに大きくした場合にはランプを使用する際、封止管部12が光路上の邪魔になり、光の利用効率を低下させてしまうという別の問題が生じる。従って、本発明に係る式1及び式2の規定を満足しつつ、封止管部12外径を極力小さく成形するのがランプとしては好ましい形態である。
【0026】
[実験例]
図1の基本構造に従って本実験例に係る高圧放電ランプを多数製作した。この実験例では、先に実施形態において述べた仕様の範囲において、外部リード棒の外径、封止管部の外径、及び、金属箔の歪曲状態を変更することにより、図2で示すA(mm),B(mm),C1(mm),C2(mm)の長さを変更して製作した。
基本的なシュリンクシール方法は先に図5で説明した通りであるが、本発明に係る高圧放電ランプは特に、シュリンクシールの前段階において製法の変更を行った。具体的には、図3(a),(b)で示すように、内部リード棒13の軸に垂直な断面において、内部リード棒13の中心点をP、ガラス管10Aの軸に垂直な断面においてガラス管10Aの中心をOとし、点Oについて仮想座標(0,0)で表す。本発明に係る高圧放電ランプは、図3(c)で示すように、金属箔16とX軸とが平行状態に、かつ、金属箔16が内部リード棒の下に位置するよう支持すると共に、内部リード棒の中心点Pがガラス管の軸Oよりも上側に位置するよう配置してシールした。一例を挙げると、点Pを(0,0.4)(単位はmm)の位置に配置して、内部が負圧状態でガラス管10Aの外周を加熱し、シールした。一方、従来技術に係る高圧放電ランプについては、図3(d)で示すように内部リード棒13の中心点Pをガラス管10Aの中心O(0,0)に配置してシールした。
図3(c)のように、ガラス管10Aの軸(O)よりも内部リード棒13の軸(P)を上側に位置させることで、金属箔16は、X軸に近接して配置されるようになる。その結果、金属箔16の両端は、図3(d)のものよりもガラス管10Aの直径部に近付いて金属箔16とガラス管10Aとの最初の接触位置がガラス管10Aに中でも直径部側にずれると共に、金属箔16がガラス管10Aから押圧される力の向きも金属箔16の面と平行な向きに近付くため、内部リード棒13側に巻きこまれ難くなり、シュリンクシールで外周部が一様に収縮された場合でも金属箔16の反りを低減させることができるようになる。
【0027】
このように、サンプル用のランプを合計196本製作し、これらを定格の消費電力で100時間点灯した。
点灯後、封止管部の破損の有無を確認すると共に、内部リード棒と金属箔の接合部を切断し、その断面図を解析して図2に係るA(mm)、B(mm)、C1(mm),C2(mm)の各線分の長さを測定した。
【0028】
図4は、点灯実験した結果と、B/A,A/(C1+C2)の関係をまとめて示す図である。同図は、横軸がB/A、縦軸が,A/(C1+C2)である。白丸又は黒塗りの三角の点は各サンプル用ランプのB/AとA/(C1+C2)を示すと共に、白丸は封止管部に破損が無かったこと、三角は破損が認められたことをそれぞれ表示している。また図ではこの実験例で破損が無かった領域について太実線で囲んでいる。
【0029】
この図4から明らかなように、(式1)0.01≦B/A≦0.13と(式2)0.22≦A/(C1+C2)≦1.1を満足することで、高圧放電ランプの封止管部に高い耐圧力性が得られるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】ランプ全体図を示す説明用断面図である。
【図2】内部リード棒と金属箔の接合部で切断した説明用断面図である。
【図3】実験例に係る高圧放電ランプの製法の一部を説明する図である。
【図4】実験例の結果をまとめて示す図である。
【図5】シュリンクシール工程を説明する説明用断面図である
【図6】従来技術に係る(a)シュリンクシール前段階の封止管部及び電極構成部断面図、(b)シュリンクシール後の封止管部及び電極構成部断面図である。
【符号の説明】
【0031】
10 放電容器
10A ガラス管
11 発光管部
11A 楕円球状部分
12 封止管部
12A,12B 直管状部分
13 内部リード棒
14 陰極
15 陽極
16 金属箔
19 外部リード
S 放電空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
石英ガラスからなり発光管部に略円柱状の封止管部が連設された発光管と、
前記発光管部の内部にその先端が突出し、前記封止管部に気密に埋設された金属箔の内側端部に、その後端が接続されてなる内部リード棒と、を備えた高圧放電ランプであって、
前記封止管部を、前記内部リード棒と前記金属箔との接合部において発光管の管軸に対して垂直方向に切断した断面において、
前記内部リード棒の形状は略楕円であり、
前記金属箔の両端(a1,a2)を結ぶ第1の線分(L1)の長さをA(mm)とし、
前記該第1の線分の中点(b1)と、該第1の線分を垂直に二等分する仮想線(F)が金属箔と交差する点(b2)とを結ぶ第2の線分(L2)の長さをB(mm)としたとき、B/Aが下記式1を満足すると共に、
前記第1の線分(L1)を延長した延長線が封止管部外周と交わる点(c1,c2)と、当該各交点(c1,c2)に近接する金属箔両端(a1,a2)とを結ぶ線分の長さをそれぞれC1,C2(mm)としたとき、前記第1の線分の長さA(mm)と、C1,C2(mm)との関係が、下記の式2の関係を満足することを特徴とする高圧放電ランプ。
(式1)0.01≦B/A≦0.13
(式2)0.22≦A/(C1+C2)≦1.1

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−344404(P2006−344404A)
【公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−166805(P2005−166805)
【出願日】平成17年6月7日(2005.6.7)
【出願人】(000102212)ウシオ電機株式会社 (1,414)
【Fターム(参考)】