説明

高圧放電灯およびこれを用いた光源装置

【課題】封体容器およびプレシールガラス部材に同一の材料を用いて高い耐圧性能を発揮することができ、かつ、始動電圧をより低くすることのできる高圧放電灯を提供する。
【解決手段】封止部28の空間内において、金属箔32を覆う金属箔内包部40、金属箔32の一端よりも基部30の側において電極34を内包する電極内包部42および金属箔32の他端よりも外部の側において外部リード棒36を内包する外部リード棒内包部44で一体的に形成されたプレシールガラス部材38および金属箔32との間で放電する導電体16を備える高圧放電灯10において、電極内包部42を基部30に融着し、外部リード棒内包部44の外周面を封止部28の内周面に気密的に融着し、電極内包部42と外部リード棒内包部44との間において気密された隙間46に不活性ガスを封入することにより、上記課題を解決することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロジェクターなどに使用される高圧放電灯およびこれを用いた光源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プロジェクターなどの光源として使用される高圧放電灯は、内部の空間に水銀蒸気が封入された発光管部と、この発光管部の両側から延び、発光管部の内部の空間を封止する封止部とを備えており、この発光管部に封入された水銀蒸気の圧力が高いほど高圧放電灯から放射される光の量も多くなるという性質を有している。このため、より多くの光を放射することを目的として、発光管部に封入する水銀蒸気の圧力をより高くすること、換言すれば、封止部における耐圧能力を向上させることが要求されている。
【0003】
そこで、この要求に応えるべく、図10に示す高圧放電灯1のように、金属箔2をプレシールガラス部材3で内包し、次に、当該プレシールガラス部材3を封体容器4に形成された封止部5に埋設することにより、封止部5における耐圧能力を向上させる技術が開発されている(特許文献1)。
【0004】
また、高圧放電灯1の発光は、電極6に高い始動電圧を印加することにより、電極6間において絶縁破壊を生じさせ、この絶縁破壊により形成されたアークで発光管部7に封入された水銀を励起することにより行われるが、電極6に高い電圧を印加しなければならない点で高圧放電灯1の始動性はよいといえなかった。そこで、低い始動電圧で発光を開始させることで、高圧放電灯1の始動性を向上させる技術が開発されており、例えば、特許文献1に記載された高圧放電灯1は、封体容器4とプレシールガラス部材3との間に空間8が形成され、当該空間8に不活性ガスが封入され、さらに、空間8を囲繞する封止部5の外周に導電体9が配設されている。この金属箔2と導電体9との間に高電圧を印加することにより、金属箔2と導電体9との間に放電が生じて紫外線が放射される。そして、この紫外線を受けた電極6の表面から電子が放出されることにより、電極6間における絶縁破壊が生じ易くなるので、高圧放電灯1の始動電圧を低下させることができる。
【特許文献1】特開2004−241375号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、特許文献1に記載された高圧放電灯1では、プレシールガラス部材3の材料に、封体容器4の材料よりも軟化点が低いものを用いることを必須の構成要素としている。この点について詳述すると、金属箔2は封体容器4とプレシールガラス部材3とを融着するための熱を受けて膨張する。すると、特許文献1に記載された高圧放電灯1では、金属箔2を内包するプレシールガラス部材3の金属箔内包部分と封止部5の内面とが融着されていることから、金属箔2が膨張する際の応力がプレシールガラス部材3と封止部5との融着部分へ伝搬してクラックが発生し、発光管部7の内部空間に封止された水銀蒸気が流出するおそれがある。そこで、特許文献1に記載された高圧放電灯1では、封体容器4の材料よりも軟化点が低いものをプレシールガラス部材3の材料として用い、プレシールガラス部材3に圧縮応力が加わった状態で封体容器4の封止部5に埋設することにより、金属箔2が膨張する際の応力をプレシールガラス部材3に加えられた圧縮応力で抑制し、クラックの発生を防止して封止部5における耐圧能力を向上させている。
【0006】
しかしながら、封体容器4およびプレシールガラス部材3にそれぞれ異なった材料を用いることは、高圧放電灯1のコストアップ要因となるばかりでなく、製作における工数の増加や原材料ガラスの供給安定性の低下などを引き起こす要因となる。加えて、封体容器4およびプレシールガラス部材3をそれぞれ別材料で形成すると、封体容器4とプレシールガラス部材3との熱膨張係数が当然に異なることから、高圧放電灯1の点灯・消灯を繰り返すことにより、当該熱膨張係数の違いに起因して封体容器4とプレシールガラス部材3との融着界面にクラックが生じるおそれがある。
【0007】
また、上述の技術でもある程度の低電圧始動が可能となるが、より低い始動電圧で点灯させることのできる高圧放電灯の開発が待たれていた。
【0008】
本発明は、このような従来技術の問題点に鑑みて開発されたものである。それゆえに本発明の主たる課題は、封体容器およびプレシールガラス部材に同一の材料を用いて高い耐圧性能を発揮することができ、かつ、始動電圧をより低くすることのできる高圧放電灯を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の高圧放電灯10は、「発光物質を封入した空間を有する発光管部26と、内部に空間を有し、発光管部26の両側から延びる封止部28と、発光管部26の空間および封止部28の空間を互いに隔絶する基部30とを有する封体容器12、封止部28の空間内に配設された金属箔32と、基部30を貫通し、一端が発光管部26の空間内に配設され、他端が金属箔32の一端に取り付けられた電極34と、金属箔32の他端に取り付けられ、封止部28の外部へ突出した外部リード棒36と、封止部28の空間内において、金属箔32を覆う金属箔内包部40、金属箔32の一端よりも基部30の側において電極34を内包する電極内包部42および金属箔32の他端よりも外部の側において外部リード棒36を内包する外部リード棒内包部44で一体的に形成されたプレシールガラス部材38とを有するマウント14、および封止部28の外周に配設され、金属箔32との間で放電する導電体16を備える高圧放電灯10において、プレシールガラス部材38の外周面と封止部28の内周面との間には隙間46が設けられており、プレシールガラス部材38の電極内包部42は、基部30に融着されており、プレシールガラス部材38の外部リード棒内包部44の外周面は、封止部28の内周面に気密的に融着されており、電極内包部42と外部リード棒内包部44との間において気密された隙間46には、不活性ガスが封入されている」ことを特徴とする。
【0010】
本発明に係る高圧放電灯10によれば、プレシールガラス部材38の「金属箔32の一端よりも基部30の側において電極34を内包する」電極内包部42が封体容器12の基部30に融着されており、また、「金属箔32の他端よりも外部の側において外部リード棒36を内包する」外部リード棒内包部44が封止部28の内周面に気密的に融着されている。すなわち、プレシールガラス部材38の融着は、「金属箔32を覆う」金属箔内包部40から離れた位置で行われており、プレシールガラス部材38の金属箔内包部40は、封止部28の内周面に融着されていないので、金属箔32は、基部30および封止部28とプレシールガラス部材38との融着に用いられる熱を直接受けない。
【0011】
したがって、特許文献1に記載された従来技術に比べて金属箔32が受ける熱量が格段に小さくなり、金属箔32の熱による膨張量も小さくなる。また、金属箔32の膨張量が小さくなることから、金属箔32が膨張することによりプレシールガラス部材38に与える応力も小さくなる。さらに、この膨張による応力はプレシールガラス部材38の金属箔内包部40にのみ与えられるにすぎず、プレシールガラス部材38の電極内包部42および外部リード棒内包部44は、金属箔32の膨張による応力を受けない。
【0012】
以上より、封体容器12とプレシールガラス部材38との融着位置において、金属箔32からの応力に起因するクラックの発生を防止することができる。
【0013】
また、プレシールガラス部材38の電極内包部42と外部リード棒内包部44とは、それぞれプレシールガラス部材38の端に位置していることから、本発明の構成によれば、プレシールガラス部材38の外周面と封止部28の内周面との間において気密された隙間46の容積を極大化することができる。この隙間46の容積を極大化することにより、より多くの不活性ガスを当該隙間46に封入することが可能となる。このように、不活性ガスの量が多くなると、金属箔32と導電体16との間における放電により生じる紫外線の量も多くなることから、電極34間の絶縁破壊が生じ易くなり、従来の高圧放電灯に比べて始動電圧をより低くすることができる。
【0014】
請求項2に記載の高圧放電灯10は、請求項1に記載の高圧放電灯10に関し、「隙間46に封入された不活性ガスには、ネオンガスが含まれている」ことを特徴とする。
【0015】
発光管部26の内部空間や隙間46に封入される不活性ガスとして、アルゴンガスが一般的に用いられるが、アルゴンガスよりも絶縁破壊電圧が低いネオンガスを不活性ガスに混入することにより、導電体16と金属箔32との間における放電開始電圧を低くすることができる。
【0016】
請求項3に記載の高圧放電灯10は、請求項1または2に記載の高圧放電灯10に関し、「隙間46には、不活性ガスの他に水銀蒸気が含まれている」ことを特徴とする。
【0017】
水銀蒸気は、不活性ガスとのペニング効果によって導電体16と金属箔32との間における放電開始電圧を低下させることができる。このため、隙間46に封入する不活性ガスの他に水銀蒸気を含めることにより、導電体16と金属箔32との間における放電開始電圧を低くすることができる。
【0018】
請求項4に記載の高圧放電灯10は、請求項1ないし3のいずれかに記載の高圧放電灯10に関し、「隙間46には、金属片54が配設されている」ことを特徴とする。
【0019】
請求項1ないし3に記載の高圧放電灯10は、導電体16と不活性ガスとの間に封止部28が存在しており、また、不活性ガスと金属箔32との間にプレシールガラス部材38が存在している。すなわち、導電体16と不活性ガスとはそれぞれ離隔されているとともに、不活性ガスと金属箔32ともそれぞれ離隔された「無電極構造」となっている。このような無電極構造において、隙間46に金属片54を配設することにより、導電体16と金属箔32との間の静電容量が増大し、静電容量が増大すると電気が通過し易くなることから、導電体16と金属箔32との間における放電開始電圧をより一層低くすることができる。
【0020】
請求項5に記載の高圧放電灯10は、請求項4に記載の高圧放電灯10に関し、「金属片54は、隙間46においてプレシールガラス部材38の外周に巻きつけられた金属線56である」ことを特徴とする。
【0021】
金属片54に金属線56を用いることによって、上述したように、導電体16と金属箔32との間の静電容量結合を強化して導電体16と金属箔32との間における放電開始電圧を低くすることができるだけでなく、金属線56をプレシールガラス部材38の外周面に巻き付けて容易に固定することができ、高圧放電灯10の製造時において封止を行う際に金属線56が不所望に移動することがない。このため、高圧放電灯10の製造を容易にすることができる。
【0022】
請求項6に記載の高圧放電灯10は、請求項1ないし5のいずれかに記載の高圧放電灯10に関し、「導電体16は、金属線である」ことを特徴とする。
【0023】
導電体16に金属線を用いることにより、導電体16としての金属線を封止部28の外周面に巻き付けて固定することが容易となり、導電体16としての金属線が封止部28の外周面から不所望にずれることがない。また、高圧放電灯10の始動性を改善するために一般的に使用されるトリガワイヤーと導電体16とを共通の金属線で形成することができる。
【0024】
請求項7に記載の高圧放電灯10は、請求項1ないし5のいずれかに記載の高圧放電灯10に関し、「導電体16は、封止部28の外周面に形成された導電性被膜60である」ことを特徴とする。
【0025】
封止部28の外表面に形成された導電性被膜60を導電体として用いることにより、例えば金属線で形成された導電体16と比較して放電面積を広くすることができるので、導電性被膜60と金属箔32との間における放電が生じ易くなり、ひいては高圧放電灯10の始動性能を向上させることができる。
【0026】
また、導電性被膜60は、封止部28の外表面に形成された膜状体であることから、例えば、線状の導電体16を配設したときのように、封止部28の外周面に線状の導電体16が出っ張ることがない。したがって、例えば、高圧放電灯10の封止部28が挿入されるアクセスホール64を有するリフレクター66に高圧放電灯10を配設した後、焦点位置を調整する際に導電性被膜60がアクセスホール64の内面に干渉することがなく、焦点位置の調整を容易に行うことができる。
【0027】
請求項8に記載の高圧放電灯10は、請求項1ないし7のいずれかに記載の高圧放電灯10に関し、「プレシールガラス部材38には、隙間46に封入された不活性ガスと金属箔32とが接触するための連通孔58が設けられている」ことを特徴とする。
【0028】
本発明に係る高圧放電灯10では、連通孔58を介して不活性ガスと金属箔32とが接触し、一方で、導電体16と不活性ガスとはそれぞれ離隔された「片電極構造」となっている。このため、請求項1〜7に記載した発明に係る「無電極構造」の高圧放電灯10と比較して、導電体16と金属箔32との間の静電容量が大きくなり、容量結合が強くなることから、導電体16と金属箔32との間における放電開始電圧をより低くすることができる。
【0029】
また、不活性ガスと金属箔32とを接触させるために、連通孔58は、プレシールガラス部材38の金属箔内包部40に設けられるため、連通孔58を設けても、プレシールガラス部材38の電極内包部42および外部リード棒内包部44には何ら影響がなく、高圧放電灯10の耐圧性能は低下しない。したがって、本発明によれば、高圧放電灯10の耐圧性能を維持しつつ、始動性能を向上させることができる。
【0030】
請求項9に記載の高圧放電灯10は、請求項1ないし8のいずれかに記載の高圧放電灯10に関し、「プレシールガラス部材38には、誘電率の高い石英ガラスが用いられている」ことを特徴とする。
【0031】
このように、プレシールガラス部材38に誘電率の高い石英ガラスを用いることにより、導電体16と金属箔32との間の静電容量が大きくなり、容量結合が強くなるので、導電体16と金属箔32との間における放電開始電圧をより低くすることができる。
【0032】
請求項10に記載の高圧放電灯10は、請求項1ないし9のいずれかに記載の高圧放電灯10に関し、「封止部28には、誘電率の高い石英ガラスが用いられている」ことを特徴とする。
【0033】
このように、封止部28に誘電率の高い石英ガラスを用いることにより、導電体16と金属箔32との間の静電容量が大きくなり、容量結合が強くなるので、導電体16と金属箔32との間における放電開始電圧をより低くすることができる。
【0034】
請求項11に記載の高圧放電灯10は、「発光物質を封入した空間を有する発光管部26と、内部に空間を有し、発光管部26の両側から延びる封止部28と、発光管部26の空間および封止部28の空間を互いに隔絶する基部30とを有する封体容器12、封止部28の空間内に配設された金属箔32と、基部30を貫通し、一端が発光管部26の空間内に配設され、他端が金属箔32の一端に取り付けられた電極34と、金属箔32の他端に取り付けられ、封止部28の外部へ突出した外部リード棒36と、封止部28の空間内において、金属箔32を覆う金属箔内包部40、金属箔32の一端よりも基部30の側において電極34を内包する電極内包部42および金属箔32の他端よりも外部の側において外部リード棒36を内包する外部リード棒内包部44で一体的に形成されたプレシールガラス部材38とを有するマウント14、および、金属箔32との間で放電する導電体16を備える高圧放電灯10であって、プレシールガラス部材38の外周面と封止部28の内周面との間には隙間46が設けられており、プレシールガラス部材38の電極内包部42は、基部30に融着されており、プレシールガラス部材38の外部リード棒内包部44の外周面は、封止部28の内周面に気密的に融着されており、電極内包部42と外部リード棒内包部44との間において気密された隙間46には、不活性ガスが封入されており、導電体16は、隙間46においてプレシールガラス部材38の外周に巻きつけられており、封止部28のプレシールガラス部材38の外部リード棒内包部44との融着部分には、導電体用金属箔68と、導電体用金属箔68の一端に取り付けられ、封止部28の外部へ突出した導電体用外部リード棒70とが埋設されており、導電体16の一端は、導電体用金属箔68の他端に取り付けられている高圧放電灯10」であり、導電体16が隙間46に配設されている点に特徴を有する。
【0035】
本発明に係る高圧放電灯10によれば、請求項1に記載した発明に係る高圧放電灯10が奏することのできる作用効果を全て奏することができる。加えて、不活性ガスと導電体16とが接触しており、一方で、金属箔32と不活性ガスとはそれぞれ離隔された「片電極構造」となっているので、「無電極構造」の高圧放電灯10と比較して、導電体16と金属箔32との間の静電容量が大きくなり、容量結合が強くなることから、導電体16と金属箔32との間における放電開始電圧をより低くすることができる。
【0036】
また、導電体16は、封止部28とプレシールガラス部材38との間の隙間46に配設されていることから、封止部28の外周面に導電体16が出っ張ることがない。したがって、請求項7に記載した発明と同様に、高圧放電灯10の封止部28が挿入されるアクセスホール64を有するリフレクター66に高圧放電灯10を配設した後、焦点位置を調整する際にアクセスホール64の内面に干渉する部材がないので、焦点位置の調整を容易に行うことができる。
【0037】
請求項12に記載の発明は、「請求項1ないし11のいずれかに記載の高圧放電灯10、および高圧放電灯10の外部リード棒36と導電体16との間に高周波の高圧電圧を印加する高周波始動回路22を備える光源装置24」である。
【発明の効果】
【0038】
本発明に係る高圧放電灯によれば、封体容器とプレシールガラス部材との融着位置におけるクラックの発生を防ぐことができるので、封体容器とプレシールガラス部材とに同一の材料を用いて、非常に高い圧力で発光物質を発光管部の内部空間に封止できる優れた耐圧性能を発揮することができる。また、金属箔と導電体との間の放電により発生する紫外線の量を多くして、高圧放電灯の始動電圧をより低くすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
(第1の実施例)
以下、本発明が適用された第1の実施例に係る高圧放電灯10Aについて説明する。図1は、本発明に係るダブルエンド型の高圧放電灯10Aの断面図である。もちろん、本発明はシングルエンド型の高圧放電灯についても適用できるが、ここではダブルエンド型の高圧放電灯をその代表例として説明する。
【0040】
本発明に係る高圧放電灯10Aは、大略、封体容器12と、この封体容器12の内部に埋設された一対のマウント14と、導電体16とで構成されている。また、この高圧放電灯10Aに直流電源18と安定器回路20と高周波始動回路22とを組み合わせて、光源装置24が構成されている。
【0041】
封体容器12は、内部に空間を有する略球状の発光管部26と、内部に空間を有し、発光管部26の両側から延びる封止部28と、発光管部26の空間および封止部28の空間を互いに隔絶する基部30とを備えており、熱膨張および熱収縮がほとんど発生しない石英ガラスで形成されている。
【0042】
発光管部26は、その内部の空間に不活性ガスや水銀蒸気が高圧で封入されており、当該空間において互いに離隔して配設された電極(後述)間に絶縁破壊による放電を生じさせることにより発光する。
【0043】
マウント14は、封体容器12に埋設される部材であってモリブデンで形成された金属箔32と、基部30を貫通し、一端が発光管部26の空間内に配設され、他端が金属箔32の一端に取り付けられたタングステン製の電極34と、金属箔32の他端に取り付けられ、封止部28の外部へ突出した外部リード棒36と、プレシールガラス部材38とで構成されている。なお、交流点灯用の高圧放電灯10の場合、発光管部26内に配設された電極34の端部形状は両方とも略同一形状であるが、直流点灯用の高圧放電灯10の場合、陽極側の電極が陰極側に比べて大きく形成される。
【0044】
プレシールガラス部材38は、封止部28の空間内において金属箔32を内包する部材であって、金属箔32を覆う金属箔内包部40、金属箔32の一端よりも基部30の側において電極34を内包する電極内包部42および金属箔32の他端よりも外部の側において外部リード棒36を内包する外部リード棒内包部44で一体的に形成されている。なお、プレシールガラス部材38の電極内包部42の電極側先端は、円錐台状に成型されている。また、プレシールガラス部材38は、封体容器12と同一種類の石英ガラスで形成されている。
【0045】
また、プレシールガラス部材38は、その径が封止部28の内側の空間が有する径よりも小さく形成されており、プレシールガラス部材38の外周面と封体容器12の封止部28の内周面との間には隙間46が形成されている。また、プレシールガラス部材38の電極内包部42は、封体容器12の基部30に融着されており、外部リード棒内包部44の外周面は、封止部28の内周面に気密的に融着されている。これにより、当該隙間46は、電極内包部42と外部リード棒内包部44との間において気密されている(以下、当該隙間46を「気密空洞部46」とよぶ)。また、気密空洞部46には、不活性ガスであるアルゴンガスが封入されている。
【0046】
導電体16は、リング状に形成された金属線であって、気密空洞部46を覆う封止部28の外周を囲むように配置されている。
【0047】
安定器回路20は、直流電源18からの電圧を受けて、高圧放電灯10Aに供給される電圧のばらつきや、経時的な電圧変化などを考慮し、高圧放電灯10Aの点灯に必要な一定電力を安定的に高圧放電灯10Aの一対の電極34間に印加するための回路である。また、安定器回路20は、導電体16が配設されている一方のマウント14aに設けられた一方の外部リード棒36aと、他方のマウント14bに設けられた他方の外部リード棒36bとにそれぞれ高周波始動回路22を介して導線48により電気的に接続されている。また、安定器回路20と他方の外部リード棒36bとを電気的に接続する導線48bには、一端が導電体16に電気的に接続された導電体用導線50の他端が接続されている。
【0048】
高周波始動回路22は、高圧放電灯10Aの点灯時(始動時)において、電極34間および金属箔32と導電体16との間における絶縁破壊を生じ易くするために安定器回路20から受けた電圧の周波数を高くして高圧放電灯10Aに供給する回路である。つまり、電気的に直接接続されていない金属箔32と導電体16との間は、静電容量結合により一種のコンデンサを形成しており、コンデンサは、周波数の高い電圧ほど通過させ易いという性質を有している。このため、高圧放電灯10Aの点灯時に供給する電圧の周波数を高くすることにより、電極34間や金属箔32と導電体16との間における通電、すなわち絶縁破壊を生じ易くすることができる。
【0049】
(高圧放電灯の製造手順)
本実施例に係る高圧放電灯10Aの製造手順の一例について、図2に基づいて簡単に説明する。金属箔32の一端に電極34の他端をスポット溶接し、続いて外部リード棒36の端部を金属箔32の他端にスポット溶接した後、一連に形成された電極34−金属箔32−外部リード棒36を肉厚tが0.5〜0.8mmのプレシールガラス管38a内に挿入する(a)。然る後、プレシールガラス管38aを2000℃以上の高温(石英ガラスの軟化点は、1650℃付近であることから、加熱温度は、2000℃以上に設定されている。)で加熱して熱収縮させ(b)、所定の位置で切断し、略柱状のプレシールガラス部材38とすることによってマウント14を製造する(c)。この場合、プレシールガラス部材38の肉厚tが薄いほど加熱時間を短くすることができるので、プレシールガラス部材38と金属箔32との熱収縮率が異なることに起因して、金属箔32の表面からプレシールガラス部材38が剥離するおそれを少なくすることができる。
【0050】
このようにして形成した1つのマウント14を封体容器12の一方の封止部28の内部空間に挿入し(この段階では、未だ基部30が封体容器12に形成されていない)、マウント14から引き出された外部リード棒36に仮止めされたリング52の弾発力にて一方の封止部28の内部空間でマウント14を位置決めし(d)、この状態で封体容器12の内部を真空にしつつ、封体容器12の発光管部26と封止部28との接合部A(完成品における基部30に対応する部分)を不活性雰囲気下において2000℃以上の高温で例えば10〜12秒間熱してシュリンクさせることにより、発光管部26の内部空間および封止部28の内部空間を互いに隔絶する基部30を形成するとともに、基部30とプレシールガラス部材38の電極内包部42とを融着する(e)。もちろん、上述したシュリンクシールの他に、熱した封体容器12を挟み込むことにより基部30を形成するピンチシールを行ってもよい。
【0051】
続いて封止部28の内周面とプレシールガラス部材38の外周面との間に形成された空間にアルゴンガスを供給した後、プレシールガラス部材38の外部リード棒内包部44の外周面に対応する封止部28を外側から2000℃以上の高温で例えば10〜12秒間熱し、外部リード棒内包部44の外周面と封止部28の内周面とを融着して当該空間を気密することによって気密空洞部46が形成されるとともに、一方のマウント14の封止部28への埋設が完了する。この部分は、シュリンクシールによって融着されているが、もちろんピンチシールを行ってもよい。
【0052】
一方のマウント14を一方の封止部28に埋設した後、発光管部26の内部空間に必要ガス、水銀および必要充填物を封入したのち、上述したのと同様の手順で他方の封止部28に他方のマウント14を埋設する。
【0053】
このように、本実施例に係る高圧放電灯10Aでは、プレシールガラス部材38の「金属箔32の一端よりも基部30の側において電極34を内包する」電極内包部42が封体容器12の基部30に融着されており、また、「金属箔32の他端よりも外部の側において外部リード棒36を内包する」外部リード棒内包部44が封止部28の内周面に気密的に融着されている。すなわち、プレシールガラス部材38の融着は、「金属箔32を覆う」金属箔内包部40から離れた位置で行われており、プレシールガラス部材38の金属箔内包部40は、封止部28の内周面に融着されていないので、金属箔32は、基部30および封止部28とプレシールガラス部材38との融着に用いられる熱を直接受けない。
【0054】
したがって、従来技術に比べて金属箔32が受ける熱量が格段に小さくなり、熱による金属箔32の膨張量も小さくなる。また、金属箔32の膨張量が小さくなることから、金属箔32が膨張することによりプレシールガラス部材38に与える応力も小さいものになる。さらに、この膨張による応力はプレシールガラス部材38の金属箔内包部40にのみ与えられるにすぎず、プレシールガラス部材38の電極内包部42および外部リード棒内包部44は、金属箔32の膨張による応力を受けない。このように、封体容器12とプレシールガラス部材38との融着位置において、金属箔32からの応力によるクラックの発生を防止することができることから、封体容器12とプレシールガラス部材38とに同一の材料を用いて、非常に高い圧力で発光物質を発光管部26の内部空間に封止できる優れた耐圧性能を発揮することができる。
【0055】
また、導電体16に金属線を用いることにより、導電体16としての金属線を封止部28の外周面に巻き付けて固定することが容易となり、導電体16としての金属線が封止部28の外周面から不所望にずれることがない。また、高圧放電灯10の始動性を改善するために一般的に使用されるトリガワイヤー(図示せず)と導電体16とを共通の金属線で形成することができる。
【0056】
(高圧放電灯の点灯手順)
次に、本実施例に係る高圧放電灯10Aを点灯する手順について説明する(図1)。直流電源18、安定器回路20および高周波始動回路22が協働して高周波の高電圧を発生させ、導線48、外部リード棒36および金属箔32を介して電極34間に当該高電圧を印加する。また、導電体用導線50を介して導電体16と一方のマウント14aに設けられた金属箔32との間にも同じ高電圧を印加する。すると、電極34間で絶縁破壊が生じるよりも低く、かつ、アルゴンガスの絶縁破壊電圧を超える電圧で金属箔32と導電体16との間で絶縁破壊が生じ、アルゴンガスから紫外線が放射される。そして、この紫外線が封体容器12の封止部28を通して発光管部26に伝わり(いわゆる、光ファイバ効果)、発光管部26の内部空間に導かれることによって電極34の表面から電子が放射される。この電子の放射により、電極34間の絶縁破壊が誘引され、紫外線の放射がない場合に比べてはるかに低い始動電圧で電極34間の絶縁破壊が生じる。これにより、導電体16や気密空洞部46を備えていない高圧放電灯に比べて低い始動電圧で高圧放電灯10Aを点灯することができる。
【0057】
さらに言えば、本実施例に係る高圧放電灯10Aでは、プレシールガラス部材38の電極内包部42と外部リード棒内包部44とは、それぞれプレシールガラス部材38の端に位置している。このため、プレシールガラス部材38の外周面と封止部28の内周面との隙間の容積、つまり気密空洞部46の容積を極大化することができる。気密空洞部46の容積を極大化することにより、より多くのアルゴンガスを気密空洞部46に封入することが可能となる。そして、アルゴンガスの量が多くなると、金属箔32と導電体16との間に放電が生じたときに発生する紫外線の量も多くなることから、電極34間の絶縁破壊が生じ易くなり、従来の高圧放電灯に比べて始動電圧をより低くすることができる。
【0058】
本実施例に係る高圧放電灯10Aの場合、高圧放電灯10Aが冷えた状態からの始動電圧が2kV以下となる。これは、気密空洞部46や導電体16を備えていない従来型の高圧放電灯の始動電圧が10ないし15kVであったことと比べて格段に低い電圧で高圧放電灯10Aを始動することができることを意味している。また、2kV以下の始動電圧で高圧放電灯を始動することができるので、高圧放電灯の始動時に生じるノイズも低減することができる。
【0059】
(第2の実施例)
次に、本発明に係る第2の実施例(高圧放電灯10B)について、図3に基づいて説明する。第2の実施例は、上述した第1の実施例と比較して、気密空洞部46に金属片54が配設されている点が異なっている。そこで、以下ではこの金属片54に関係する事項についてのみ説明し、第2の実施例に係る他の部分についての構成および作用効果については、第1の実施例における記載を援用することとする。
【0060】
本実施例において、気密空洞部46に配設された金属片54は、プレシールガラス部材38の金属箔内包部40を囲繞する、モリブデンで形成された耐熱性の金属箔である。
【0061】
第1の実施例に係る高圧放電灯10Aは、導電体16と不活性ガスとの間に封止部28が存在しており、また、不活性ガスと金属箔32との間にプレシールガラス部材38が存在している。すなわち、導電体16と不活性ガスとはそれぞれ離隔されているとともに、不活性ガスと金属箔32ともそれぞれ離隔された「無電極構造」となっている。このような無電極構造において、気密空洞部46に金属片54を配設することにより、導電体16と金属箔32との間の静電容量が増大する。一般に、コンデンサは、静電容量の大きいものほど電気を通し易いという性質を有しているので、導電体16と金属箔32との間の静電容量を増大させることにより、導電体16と金属箔32との間における放電開始電圧を低くすることができる。
【0062】
なお、本実施例で用いられる金属片54は、図3に示すような金属箔に限られず、例えば、図4に示す高圧放電灯10Cのように金属線56を用いてもよい。このように、金属線56を用いることにより、上述した作用効果に加えて、金属線56をプレシールガラス部材38の外周面に巻き付けて容易に固定することができ、高圧放電灯10Cの製造において封止を行う際に、金属線56が不所望に移動することがないので、高圧放電灯10Cの製造を容易に行うことができる。
【0063】
(第3の実施例)
本発明に係る第3の実施例(高圧放電灯10D)について、図5に基づいて説明する。第3の実施例は、上述した第1の実施例と比較して、プレシールガラス部材38の金属箔内包部40に連通孔58が設けられており、連通孔58を介して気密空洞部46に封入された不活性ガスと金属箔32とが接触するように形成されている点が異なっている。そこで、以下ではこの連通孔58に関係する事項についてのみ説明し、第3の実施例に係る他の部分についての構成および作用効果については、第1の実施例における記載を援用することとする。
【0064】
本実施例に係る高圧放電灯10Dでは、不活性ガスと金属箔32とが連通孔58を介して接触し、一方で、導電体16と不活性ガスとはそれぞれ離隔された「片電極構造」となっている。このため、「無電極構造」の高圧放電灯と比較して、導電体16と金属箔32との間の静電容量が大きくなり、容量結合が強くなることから、導電体16と金属箔32との間における放電開始電圧をより低くすることができる。また、不活性ガスと金属箔32とを接触させるために、連通孔58は、プレシールガラス部材38の金属箔内包部40に設けられるため、連通孔58を設けても、プレシールガラス部材38の電極内包部42および外部リード棒内包部44には何ら影響がなく、高圧放電灯10Dの耐圧性能は低下しない。したがって、本実施例によれば、高圧放電灯10Dの耐圧性能を維持しつつ、始動性能を向上させることができる。
【0065】
(第4の実施例)
本発明に係る第4の実施例(高圧放電灯10E)について、図6に基づいて説明する。第4の実施例は、上述した第1の実施例と比較して、封止部28の外周面に形成された導電性被膜60を導電体として用いる点で異なっている。そこで、以下ではこの導電性被膜60に関係する事項についてのみ説明し、第4の実施例に係る他の部分についての構成および作用効果については、第1の実施例における記載を援用することとする。
【0066】
本実施例では、封止部28の外周面に導電性被膜60が形成されており、導電体用導線50は、この導電性被膜60と電気的に接続されている。
【0067】
このように、封止部28の外表面に形成された導電性被膜60を導電体として用いることにより、例えば金属線で形成された導電体16と比較して放電面積を広くすることができるので、導電性被膜60と金属箔32との間における放電が発生し易くなり、ひいては高圧放電灯10Eの始動性能を向上させることができる。
【0068】
また、導電性被膜60は、封止部28の外表面に形成された膜状体であることから、例えば、導電線を配設したときのように、封止部28の外周面に導電線が出っ張ることがない。したがって、例えば、図7に示すように、高圧放電灯10Eを備えたランプ62を構成する場合、高圧放電灯10Eの封止部28が挿入されるアクセスホール64を有するリフレクター66に高圧放電灯10Eを配設した後、高圧放電灯10Eとリフレクター66との位置関係を調整することによって焦点位置を合わせる作業が必要となる。このとき、封止部28の周囲に金属線などで形成された導電体が配設されていると、アクセスホール64の内面と金属線とが干渉して焦点位置を合わせる作業の邪魔になるが、本実施例に係る高圧放電灯10Eであれば、封止部28の外周面に導電性被膜60が形成されているだけで金属線などの邪魔な部材は存在しない。したがって、本実施例に係る高圧放電灯10Eであれば、リフレクター66に高圧放電灯10Eを組み込んだ後、焦点位置の調整を容易に行うことができる。
【0069】
(第5の実施例)
本発明に係る第5の実施例(高圧放電灯10F)について、図8に基づいて説明する。第5の実施例は、上述した第1の実施例と比較して、導電体16が気密空洞部46に配設されている点で異なる。そこで、以下ではこの導電体16に関係する事項についてのみ説明し、第5の実施例に係る他の部分についての構成および作用効果については、第1の実施例における記載を援用することとする。
【0070】
本実施例に係る高圧放電灯10Fでは、線状の導電体16がプレシールガラス部材38の外周に巻き付けられており、また、封止部28におけるプレシールガラス部材38の外部リード棒内包部44との融着部分には、モリブデン製の導電体用金属箔68と、導電体用金属箔68の一端に取り付けられ、封止部28の外部へ突出した導電体用外部リード棒70とが埋設されている。
【0071】
本実施例に係る高圧放電灯10Fによれば、不活性ガスと導電体16とが接触しており、一方で、金属箔32と不活性ガスとはそれぞれ離隔された「片電極構造」となっている。このため、「無電極構造」の高圧放電灯10と比較して、導電体16と金属箔32との間の静電容量が大きくなり、容量結合が強くなることから、導電体16と金属箔32との間における放電開始電圧をより低くすることができる。
【0072】
また、導電体16は、封止部28とプレシールガラス部材38との間の隙間46に配設されていることから、封止部28の外周面に導電体16が出っ張ることがない。したがって、第4の実施例と同様に、高圧放電灯10の封止部28が挿入されるアクセスホール64を有するリフレクター66に高圧放電灯10を配設した後、焦点位置を調整する際にアクセスホール64の内面に干渉する部材がないので、焦点位置の調整を容易に行うことができる。
【0073】
なお、本明細書に記載した全ての本実施例では、封体容器12およびプレシールガラス部材38に石英ガラスを用いているが、封体容器12およびプレシールガラス部材38の材質は、これに限られるものではない。例えば、酸化チタンあるいは酸化セリウムを混合した石英ガラスのような誘電率の高い石英ガラスでプレシールガラス部材38を形成することもできる。これにより、導電体16と金属箔32との間の静電容量が大きくなり、容量結合が強くなるので、導電体16と金属箔32との間における放電開始電圧をより低くすることができる。
【0074】
また、図9に示すように、封体容器12における封止部28の一部をこのような誘電率の高い石英ガラスで形成してもよい。図9に示す、第6の実施例に係る高圧放電灯10Gは、封止部28の端部(図中X)が上述した誘電率の高い石英ガラスで形成されており、封止部28の残部、基部30および発光管部26(図中Y)は、一般的な石英ガラスで形成されている。これにより、誘電率の高い石英ガラスでプレシールガラス部材38を形成したときと同様に、導電体16と金属箔32との間における放電開始電圧をより低くすることができる。なお、上述した誘電率の高い石英ガラスは、一般に高温になると結晶化して失透し易い性質を有しているが、プレシールガラス部材38や封止部28は、透明である必要がないので、プレシールガラス部材38や封止部28に誘電率の高い石英ガラスを用いても問題が生じることはない。
【0075】
また、熱膨張係数の違いに起因して封体容器12とプレシールガラス部材38との融着界面にクラックが生じるおそれがなくなることから、封体容器12とプレシールガラス部材38とには、同一の材質を用いることが好適であるが、もちろん、互いに異なる材質を用いても、本発明の効果を奏することができる。
【0076】
また、本実施例では、モリブデン製の金属箔32およびタングステン製の電極34を用いているが、金属箔32および電極34の材質はこれに限られず、他の材質を用いてもよい。
【0077】
また、導電体16として導電線を用いているが、金属箔32との間で放電を生じるものであれば、導電線以外の形状(例えば、導電片など)を用いることができる。
【0078】
また、気密空洞部46に封入する不活性ガスとしてアルゴンガスを用いているが他の不活性ガスを用いてもよい。特に、アルゴンガスよりも絶縁破壊電圧が低いネオンガスを不活性ガスに混入することにより、導電体16と金属箔32との間における放電開始電圧を低くすることができる。また、水銀蒸気は、不活性ガスとのペニング効果によって導電体16と金属箔32との間における放電開始電圧を低下させることができるので、気密空洞部46に封入する不活性ガスの他に水銀蒸気を含めることにより、導電体16と金属箔32との間における放電開始電圧を低くすることができる。
【0079】
さらに、上述した高圧放電灯の製造手順は一つの例であり、本明細書に記載した本実施例に係る高圧放電灯10を製造できるのであれば、他の製造手順を用いてもよい。
【0080】
また、本明細書では、交流点灯用の高圧放電灯10について説明したが、直流点灯用の高圧放電灯についても、陽極側の電極を陰極側の電極に比べて大きく形成すること以外は、全て上述した交流点灯用の高圧放電灯10と同様の構成を用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明にかかる第1の実施例およびこれを用いた光源装置を示す図である。
【図2】第1の実施例に係る高圧放電灯の製造手順を示す図である。
【図3】本発明にかかる第2の実施例を示す図である。
【図4】第2の実施例に関する他の実施例を示す図である。
【図5】本発明にかかる第3の実施例を示す図である。
【図6】本発明にかかる第4の実施例を示す図である。
【図7】第4の実施例に係る高圧放電灯をリフレクターに配設した状態を示す図である。
【図8】本発明にかかる第5の実施例を示す図である。
【図9】本発明にかかる第6の実施例を示す図である。
【図10】従来技術に係る高圧放電灯を示す図である。
【符号の説明】
【0082】
10…高圧放電灯
12…封体容器
14…マウント
16…導電体
18…直流電源
20…安定器回路
22…高周波始動回路
24…光源装置
26…発光管部
28…封止部
30…基部
32…金属箔
34…電極
36…外部リード棒
38…プレシールガラス部材
40…金属箔内包部
42…電極内包部
44…外部リード棒内包部
46…隙間(気密空洞部)
48…導線
50…導電体用導線
52…リング
54…金属片
56…金属線
58…連通孔
60…導電性被膜
62…ランプ
64…アクセスホール
66…リフレクター
68…導電体用金属箔
70…導電体用外部リード棒



【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光物質を封入した空間を有する発光管部と、内部に空間を有し、前記発光管部の両側から延びる封止部と、前記発光管部の空間および前記封止部の空間を互いに隔絶する基部とを有する封体容器、
前記封止部の空間内に配設された金属箔と、前記基部を貫通し、一端が前記発光管部の空間内に配設され、他端が前記金属箔の一端に取り付けられた電極と、前記金属箔の他端に取り付けられ、前記封止部の外部へ突出した外部リード棒と、前記封止部の空間内において、前記金属箔を覆う金属箔内包部、前記金属箔の一端よりも前記基部の側において前記電極を内包する電極内包部および前記金属箔の他端よりも前記外部の側において前記外部リード棒を内包する外部リード棒内包部で一体的に形成されたプレシールガラス部材とを有するマウント、および
前記封止部の外周に配設され、前記金属箔との間で放電する導電体を備える高圧放電灯において、
前記プレシールガラス部材の外周面と前記封止部の内周面との間には隙間が設けられており、
前記プレシールガラス部材の前記電極内包部は、前記基部に融着されており、
前記プレシールガラス部材の前記外部リード棒内包部の外周面は、前記封止部の内周面に気密的に融着されており、
前記電極内包部と前記外部リード棒内包部との間において気密された前記隙間には、不活性ガスが封入されていることを特徴とする高圧放電灯。
【請求項2】
前記隙間に封入された前記不活性ガスには、ネオンガスが含まれていることを特徴とする請求項1に記載の高圧放電灯。
【請求項3】
前記隙間には、前記不活性ガスの他に水銀蒸気が含まれていることを特徴とする請求項1または2に記載の高圧放電灯。
【請求項4】
前記隙間には、金属片が配設されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の高圧放電灯。
【請求項5】
前記金属片は、前記隙間において前記プレシールガラス部材の外周に巻きつけられた金属線であることを特徴とする請求項4に記載の高圧放電灯。
【請求項6】
前記導電体は、金属線であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の高圧放電灯。
【請求項7】
前記導電体は、前記封止部の外周面に形成された導電性被膜であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の高圧放電灯。
【請求項8】
前記プレシールガラス部材には、前記隙間に封入された前記不活性ガスと前記金属箔とが接触するための連通孔が設けられていることを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の高圧放電灯。
【請求項9】
前記プレシールガラス部材には、誘電率の高い石英ガラスが用いられていることを特徴とする請求項1ないし8のいずれに記載の高圧放電灯。
【請求項10】
前記封止部には、誘電率の高い石英ガラスが用いられていることを特徴とする請求項1ないし9のいずれかに記載の高圧放電灯。
【請求項11】
発光物質を封入した空間を有する発光管部と、内部に空間を有し、前記発光管部の両側から延びる封止部と、前記発光管部の空間および前記封止部の空間を互いに隔絶する基部とを有する封体容器、
前記封止部の空間内に配設された金属箔と、前記基部を貫通し、一端が前記発光管部の空間内に配設され、他端が前記金属箔の一端に取り付けられた電極と、前記金属箔の他端に取り付けられ、前記封止部の外部へ突出した外部リード棒と、前記封止部の空間内において、前記金属箔を覆う金属箔内包部、前記金属箔の一端よりも前記基部の側において前記電極を内包する電極内包部および前記金属箔の他端よりも前記外部の側において前記外部リード棒を内包する外部リード棒内包部で一体的に形成されたプレシールガラス部材とを有するマウント、および
前記金属箔との間で放電する導電体を備える高圧放電灯であって、
前記プレシールガラス部材の外周面と前記封止部の内周面との間には隙間が設けられており、
前記プレシールガラス部材の前記電極内包部は、前記基部に融着されており、
前記プレシールガラス部材の前記外部リード棒内包部の外周面は、前記封止部の内周面に気密的に融着されており、
前記電極内包部と前記外部リード棒内包部との間において気密された前記隙間には、不活性ガスが封入されており、
前記導電体は、前記隙間において前記プレシールガラス部材の外周に巻きつけられており、
前記封止部の前記プレシールガラス部材の前記外部リード棒内包部との融着部分には、導電体用金属箔と、前記導電体用金属箔の一端に取り付けられ、前記封止部の外部へ突出した導電体用外部リード棒とが埋設されており、
前記導電体の一端は、前記導電体用金属箔の他端に取り付けられている高圧放電灯。
【請求項12】
請求項1ないし11のいずれかに記載の高圧放電灯、および
前記高圧放電灯の前記外部リード棒と前記導電体との間に高周波の高圧電圧を印加する高周波始動回路を備える光源装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−293912(P2008−293912A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−140685(P2007−140685)
【出願日】平成19年5月28日(2007.5.28)
【出願人】(395019281)フェニックス電機株式会社 (43)
【Fターム(参考)】