説明

高圧水電解装置のシール検査方法

【課題】簡単な工程で、高圧水素を保持するシール部材のシール機能を容易且つ確実に検査することを可能にする。
【解決手段】水電解装置10のシール検査方法は、第1シール部材68aによりシールされるシリンダ室62内に高圧な水素が供給される一方、前記第1シール部材68aを挟んで前記シリンダ室62とは反対側に形成される閉塞されたチャンバ70の圧力を検出する工程と、前記シリンダ室62内が減圧されるとともに、前記チャンバ70内の圧力減少状態を検出する工程と、前記チャンバ70内の圧力減少状態に基づいて、前記第1シール部材68aのシール機能の良否を判断する工程とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解質膜の両側にアノード側給電体及びカソード側給電体が設けられ、前記アノード側給電体と一方のセパレータとの間には、水を供給する第1流路が形成され、前記カソード側給電体と他方のセパレータとの間には、前記水が電気分解されて前記水の圧力よりも高圧な水素を得る第2流路が形成される高圧水電解装置において、高圧な前記水素を保持するシール部材のシール機能を検査する高圧水電解装置のシール検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、水素を製造するために、水電解装置が採用されている。この水電解装置は、水を分解して水素(及び酸素)を発生させるため、固体高分子電解質膜(イオン交換膜)を用いている。固体高分子電解質膜の両面には、電極触媒層が設けられて電解質膜・電極構造体が構成されるとともに、前記電解質膜・電極構造体の両側には、給電体を配設してユニットが構成されている。
【0003】
そこで、複数のユニットが積層された状態で、積層方向両端に電圧が付与されるとともに、アノード側の給電体に水が供給される。このため、電解質膜・電極構造体のアノード側では、水が分解されて水素イオン(プロトン)が生成され、この水素イオンが固体高分子電解質膜を透過してカソード側に移動し、電子と結合して水素が製造される。一方、アノード側では、水素と共に生成された酸素が、余剰の水を伴ってユニットから排出される。
【0004】
この種の設備では、カソード側に高圧な水素を生成させることができる高圧水素製造装置が知られている。例えば、特許文献1では、図6に示すように、陽極主電極1、複数の単位セル2及び陰極主電極3の積層体を、積層方向に締め付けるための締め付け装置4が備えられている。締め付け装置4は、圧縮用流体の導入ノズル5a及び排出ノズル5bを有するシリンダ6と、前記シリンダ6内にOリング7を介装して配設されるピストン8とを備えている。
【0005】
この締め付け装置4は、水電解槽の運転中に生成されている水素圧力よりも、常に一定の締め付け圧力だけ高めの圧力を、ピストン8により付与している。すなわち、圧縮用流体の導入ノズル5a及び排出ノズル5bに連結された調整弁(図示せず)を調整することにより、常に一定の締め付け圧力が確保される、としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−160891号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記の特許文献1では、水電解槽の運転が停止される際には、締め付け装置4による締め付け荷重が減少されるため、シリンダ6内の圧力は、高圧と低圧とに頻繁に切り替えられている。従って、シリンダ6内が高圧に保持されている際に、圧縮用流体である高圧ガス分子がOリング7の内部に入り込むおそれがある。
【0008】
このため、シリンダ6の内圧が急減圧されると、Oリング7の内部に保持されていた高圧ガスが急膨張しながら放出されるため、前記Oリング7の内部に微少な気泡が発生し易い。これにより、Oリング7に破損が惹起し易く、前記Oリング7によるシール機能が低下する一方、該Oリング7の不良を容易に検出することができないという問題がある。
【0009】
本発明はこの種の問題を解決するものであり、簡単な工程で、高圧水素を保持するシール部材のシール機能を容易且つ確実に検査することが可能な高圧水電解装置のシール検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、電解質膜の両側にアノード側給電体及びカソード側給電体が設けられ、前記アノード側給電体と一方のセパレータとの間には、水を供給する第1流路が形成され、前記カソード側給電体と他方のセパレータとの間には、前記水が電気分解されて前記水の圧力よりも高圧な水素を得る第2流路が形成される高圧水電解装置において、高圧な前記水素を保持するシール部材のシール機能を検査する高圧水電解装置のシール検査方法に関するものである。
【0011】
このシール検査方法は、シール部材によりシールされる第1の室内に高圧な水素が供給される一方、前記シール部材を挟んで前記第1の室とは反対側に形成される閉塞された第2の室内の圧力を検出する工程と、前記第1の室内が減圧されるとともに、前記第2の室内の圧力減少状態を検出する工程と、前記第2の室内の圧力減少状態に基づいて、前記シール部材のシール機能の良否を判断する工程とを有している。
【0012】
また、このシール検査方法は、第2の室内の圧力減少状態が、予め設定された規定圧力減少状態と比較され、又は第1の室内の圧力減少状態と比較され、この比較結果に基づいてシール部材のシール機能の良否を判断することが好ましい。
【0013】
さらに、このシール検査方法は、第2の室が、シール部材と他のシール部材との間に形成されることが好ましい。
【0014】
さらにまた、このシール検査方法は、第1の室内が減圧される前に、前記第1の室内の圧力と第2の室内の圧力とが同圧であることが好ましい。
【0015】
また、このシール検査方法は、第1の室が、高圧な水素が導入されるシリンダ室であり、シール部材は、前記シリンダ室内を軸方向に進退して他方のセパレータをカソード側給電体側に押圧可能なピストンと、前記シリンダ室の内壁との摺動部位に配置されることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、第1の室内に高圧水素が供給される際、分子径の小さな前記水素は、シール部材の内部に進入して第2の室内に導入される。このため、第2の室内の圧力が高圧になるとともに、前記第2の室内の圧力が検出される。次いで、第1の室内が減圧されると、第2の室内の高圧水素は、シール部材を透過して前記第1の室内に移動し、前記第2の室内の圧力が減圧される。
【0017】
その際、第2の室内の圧力減少速度や角度等に基づいて、シール部材のシール機能の良否が判断される。従って、シール部材のシール機能が喪失される前に、前記シール部材の交換時期を確実に検出することができ、水素漏れを可及的に阻止することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るシール検査方法が適用される水電解装置の一部断面側面図である。
【図2】前記水電解装置の要部断面説明図である。
【図3】前記シール検査方法を実施するためのフローチャートである。
【図4】シリンダ室の内圧とチャンバの内圧との変化説明図である。
【図5】本発明の第2の実施形態に係るシール検査方法が適用される水電解装置の要部断面説明図である。
【図6】特許文献1に開示されている水電解槽の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1に示すように、本発明の第1の実施形態に係るシール検査方法が適用される水電解装置10は、差圧式の高圧水素製造装置を構成している。この水電解装置10は、複数の単位セル12が鉛直方向(矢印A方向)又は水平方向(矢印B方向)に積層された積層体14を備える。
【0020】
積層体14の積層方向一端には、ターミナルプレート16a、絶縁プレート18a及びエンドプレート20aが、順次、配設される。積層体14の積層方向他端には、同様にターミナルプレート16b、絶縁プレート18b及びエンドプレート20bが、順次、配設される。
【0021】
水電解装置10は、例えば、矢印A方向に延在する複数のタイロッド22を介して、円盤形状のエンドプレート20a、20b間が一体的に締め付け保持される。なお、水電解装置10は、エンドプレート20a、20bを端板として含む箱状ケーシング(図示せず)により一体的に保持される構成を採用してもよい。また、水電解装置10は、全体として略円柱体形状を有しているが、立方体形状等の種々の形状に設定可能である。
【0022】
ターミナルプレート16a、16bの側部には、端子部24a、24bが外方に突出して設けられる。端子部24a、24bは、配線26a、26bを介して電源28に電気的に接続される。陽極(アノード)側である端子部24bは、電源28のプラス極に接続される一方、陰極(カソード)側である端子部24aは、前記電源28のマイナス極に接続される。
【0023】
単位セル12は、円盤状の電解質膜・電極構造体32と、この電解質膜・電極構造体32を挟持するアノード側セパレータ34及びカソード側セパレータ36とを備える。
【0024】
アノード側セパレータ34及びカソード側セパレータ36は、円盤状を有するとともに、例えば、カーボン部材等で構成され、又は、鋼板、ステンレス鋼板、チタン板、アルミニウム板、めっき処理鋼板、あるいはその金属表面に防食用の表面処理を施した金属板をプレス成形して、あるいは切削加工した後に防食用の表面処理を施して構成される。
【0025】
電解質膜・電極構造体32は、例えば、パーフルオロスルホン酸の薄膜に水が含浸された固体高分子電解質膜38と、前記固体高分子電解質膜38の両側に配設されるアノード側給電体40及びカソード側給電体42とを備える。
【0026】
固体高分子電解質膜38の両面には、アノード電極触媒層40a及びカソード電極触媒層42aが形成される。アノード電極触媒層40aは、例えば、Ru(ルテニウム)系触媒を使用する一方、カソード電極触媒層42aは、例えば、白金触媒を使用する。
【0027】
アノード側給電体40及びカソード側給電体42は、例えば、球状アトマイズチタン粉末の焼結体(多孔質導電体)により構成される。アノード側給電体40及びカソード側給電体42は、研削加工後にエッチング処理される平滑表面部を設ける。なお、アノード側給電体40及びカソード側給電体42は、耐食性のチタンシート等の金属シートに、エッチング、ドリル加工、放電加工、電子ビーム、レーザ又はプレス等により開口部を形成してもよい。
【0028】
アノード側セパレータ34の電解質膜・電極構造体32に向かう面には、第1流路44が設けられるとともに、カソード側セパレータ36の前記電解質膜・電極構造体32に向かう面には、第2流路46が設けられる。第1流路44及び第2流路46は、アノード側給電体40及びカソード側給電体42の表面積に対応する範囲内に設けられるとともに、複数の流路溝や複数のエンボス等で構成される。
【0029】
第1流路44には、水(純水)を供給するための水供給通路48と、反応により生成された酸素及び使用済みの水を排出するための酸素排出通路50とが連通する。第2流路46には、反応により生成された水素(高圧水素)を排出するための水素排出通路52が設けられる。この水素排出通路52には、水素を積層方向である矢印A方向に流すための水素連通孔54が連通する。
【0030】
絶縁プレート18aとエンドプレート20aとの間には、ピストン部材56が進退自在に配設される。図2に示すように、ピストン部材56は、フランジ部58から矢印A方向に膨出形成されるピストン60を備え、前記ピストン60は、エンドプレート20aの内周部に形成されるシリンダ室(第1の室)62に配設される。シリンダ室62の内壁面62aとピストン60の先端との間には、弾性体、例えば、皿ばね64が介装される。
【0031】
ピストン60の外周面60aには、第1周溝66aと第2周溝66bとが、軸方向に所定の間隔だけ離間して形成される。第1周溝66aには、例えば、Oリングである第1シール部材68aが配設されるとともに、第2周溝66bには、例えば、Oリングである第2シール部材(他のシール部材)68bが配設される。
【0032】
ピストン60の外周面60aとシリンダ室62の内壁面62aとの間には、隙間が形成されており、第1シール部材68aと第2シール部材68bとの間に、チャンバ(第2の室)70が形成される。エンドプレート20aには、チャンバ70に対応して圧力検出センサ72が配設される。
【0033】
ピストン部材56には、水素連通孔54に一端が連通する高圧水素通路74が形成される。高圧水素通路74の他端は、シリンダ室62に開放されるとともに、前記シリンダ室62には、エンドプレート20aに形成される高圧水素導出口76が連通する。
【0034】
このように構成される水電解装置10の動作について、以下に説明する。
【0035】
図1に示すように、水電解装置10を構成する各単位セル12の水供給通路48に水が供給されるとともに、ターミナルプレート16a、16bの端子部24a、24bに電気的に接続されている電源28を介して電圧が付与される。このため、各単位セル12では、水供給通路48からアノード側セパレータ34の第1流路44に水が供給され、この水がアノード側給電体40内に沿って移動する。
【0036】
従って、水は、アノード電極触媒層40aで電気により分解され、水素イオン、電子及び酸素が生成される。この陽極反応により生成された水素イオンは、固体高分子電解質膜38を透過してカソード電極触媒層42a側に移動し、電子と結合して水素が得られる。
【0037】
このため、カソード側セパレータ36とカソード側給電体42との間に形成される第2流路46に沿って水素が流動する。この水素は、水供給通路48よりも高圧に維持されており、水素排出通路52から水素連通孔54を流れて水電解装置10の外部に取り出し可能となる。
【0038】
水素連通孔54に導出された高圧水素は、図2に示すように、ピストン部材56の高圧水素通路74を通ってシリンダ室62に導入される。このため、ピストン部材56は、シリンダ室62に導入される高圧水素の圧力と皿ばね64の弾性力とを介して、カソード側セパレータ36を電解質膜・電極構造体32側に押圧する。従って、固体高分子電解質膜38とカソード側給電体42との間に生じる隙間を小さくすることができ、電解電圧の上昇を阻止して電解電圧を有効に低下させることが可能になる。
【0039】
一方、第1流路44には、図1に示すように、反応により生成した酸素と使用済みの水とが流動している。酸素と水との混合流体は、酸素排出通路50に沿って水電解装置10の外部に排出される。なお、第2流路46は、第1流路44よりも圧力が高い。
【0040】
次に、第1の実施形態に係るシール検査方法について、図3に示すフローチャートに沿って以下に説明する。
【0041】
先ず、水電解装置10の運転が開始されると(ステップS1中、YES)、ステップS2に進んで、圧力検出センサ72を介してチャンバ70内の圧力が検出される。
【0042】
ここで、水電解装置10の運転が開始されると、上記のように、第2流路46に水素が生成され、前記第2流路46、水素連通孔54、高圧水素通路74及びシリンダ室62の水素圧力が上昇していく。
【0043】
シリンダ室62の内圧が高圧になると、第1シール部材68aの内部に水素ガスが透過して保持される。そして、シリンダ室62内の高圧状態が、長時間にわたって継続されると、水素ガスが第1シール部材68aを透過してチャンバ70に充填される。従って、チャンバ70の内圧は、徐々に高圧状態に移行し、シリンダ室62の内圧と同一圧力に保持される(図4参照)。
【0044】
次に、水電解装置10の運転が停止されると(ステップS3中、YES)、ステップS4に進んで、前記水電解装置10内の脱圧処理が行われる。この脱圧処理では、第2流路46を第1流路44と同圧に、すなわち、大気圧まで急減圧させる(図4参照)。
【0045】
その際、第1シール部材68aが、正常なシール機能を有していると、チャンバ70の圧力減少速度は、非常に緩やかなものとなる(図4中、正常時参照)。一方、第1シール部材68aの内部に気泡(ブリスタ)が発生し、この第1シール部材68aのシール機能が低下した際には、チャンバ70の圧力減少速度が速くなり、シリンダ室62の圧力減少速度に近似する(図4中、NG参照)。
【0046】
このため、予め、正常時のチャンバ70の圧力減少状態を検出し、これを規定圧力減少状態に設定しておく。そして、圧力検出センサ72により検出されたチャンバ70の圧力減少状態と、規定圧力減少状態とが比較される(ステップS5)。この比較結果に基づいて、第1シール部材68aのシール機能の良否が判断される(ステップS6)。
【0047】
第1シール部材68aが、所望のシール機能を有していると判断されると(ステップS6中、YES)、第1シール部材68aのシール検査処理が終了する。一方、第1シール部材68aが、所望のシール機能を有していないと判断されると(ステップS6中、NO)、ステップS7に進んで、前記第1シール部材68aがNGであり、交換時期に至ったと判断される。
【0048】
なお、第2シール部材68bは、内部に水素ガスが保持されるものの、シリンダ室62の減圧時には、前記第2シール部材68bの内部の水素ガスが徐々に抜ける。このため、第2シール部材68bの内部に発泡が惹起されることを阻止することができる。これにより、第2シール部材68bは、第1シール部材68aよりも先にシール機能を喪失することがなく、外部に水素ガスが洩れることを確実に阻止して、第1シール部材68aのメンテナンス時期を検出することが可能になる。
【0049】
この場合、水電解装置10の運転時に、第2流路46に高圧水素ガスが生成されると、分子の小さな前記水素ガスは、シリンダ室62から第1シール部材68aの内部に侵入する。水素ガスは、さらにチャンバ70に導入されるため、前記チャンバ70の圧力が高圧になる。
【0050】
そこで、第1の実施形態では、チャンバ70の内圧を圧力検出センサ72により検出し、水電解装置10の運転停止に伴う減圧処理時に、前記チャンバ70の圧力減少状態が検出されている。そして、検出結果に基づいて、第1シール部材68aのシール機能の良否が判断されている。従って、第1シール部材68aのシール機能が喪失される前に、前記第1シール部材68aの交換時期を確実に検出することができ、水素漏れを可及的に阻止することが可能になるという効果が得られる。
【0051】
図5は、本発明の第2の実施形態に係るシール検査方法が適用される水電解装置80の要部断面説明図である。なお、第1の実施形態に係る水電解装置10と同一の構成要素には、同一の参照符号を付して、その詳細な説明は省略する。
【0052】
水電解装置80は、チャンバ70の内圧を検出する圧力検出センサ72の他に、シリンダ室62の内圧を検出するための圧力検出センサ82を備える。なお、圧力検出センサ82は、シリンダ室62の他、例えば、高圧水素通路74や水素連通孔54等、第2流路46に生成される高圧水素の圧力を検出し得る部位に任意に取り付け可能である。
【0053】
この第2の実施形態は、図3に示すフローチャートに沿って、第1の実施形態と同様に第1シール部材68aのシール検査が遂行される。その際、ステップS5では、シリンダ室62の減圧処理時に、このシリンダ室62の内圧が、圧力検出センサ82により検出される一方、チャンバ70の内圧が、圧力検出センサ72により検出される。
【0054】
さらに、図4に示すように、脱圧時のシリンダ室62の圧力減少状態と、チャンバ70の圧力減少状態とが比較される。例えば、シリンダ室62の圧力とチャンバ70の圧力との差圧が、設定値以上であるか否かに基づいて、第1シール部材68aのシール機能の良否が判断される。
【0055】
具体的には、シリンダ室62の圧力とチャンバ70の圧力との差圧が、設定値以上であれば、第1シール部材68aが所望のシール機能を有すると判断される。一方、差圧が設定値未満であれば、第1シール部材68aが所望のシール機能を有していないと判断される。これにより、第2の実施形態では、上記の第1の実施形態と同様の効果が得られる。
【0056】
なお、第1及び第2の実施形態では、第1シール部材68aと第2シール部材68bとの間にチャンバ70が形成されているが、これに限定されるものではない。例えば、第2シール部材68bに変えて、他のシール構造を採用することにより、チャンバ70に相当する閉塞された第2の室を形成すれば、同様のシール検査方法が実施可能である。
【0057】
また、チャンバ70の圧力減少速度により第1シール部材68aのシール機能の良否を判断しているが、圧力減少角度等に基づいて、前記第1シール部材68aのシール機能の良否を判断してもよい。
【符号の説明】
【0058】
10、80…水電解装置 12…単位セル
14…積層体 16a、16b…ターミナルプレート
18a、18b…絶縁プレート 20a、20b…エンドプレート
24a、24b…端子部 28…電源
32…電解質膜・電極構造体 34…アノード側セパレータ
36…カソード側セパレータ 38…固体高分子電解質膜
40…アノード側給電体 42…カソード側給電体
44、46…流路 48…水供給通路
50…酸素排出通路 52…水素排出通路
54…水素連通孔 56…ピストン部材
60…ピストン 62…シリンダ室
64…皿ばね 68a、68b…シール部材
70…チャンバ 72、82…圧力検出センサ
74…高圧水素通路 76…高圧水素導出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解質膜の両側にアノード側給電体及びカソード側給電体が設けられ、前記アノード側給電体と一方のセパレータとの間には、水を供給する第1流路が形成され、前記カソード側給電体と他方のセパレータとの間には、前記水が電気分解されて前記水の圧力よりも高圧な水素を得る第2流路が形成される高圧水電解装置において、高圧な前記水素を保持するシール部材のシール機能を検査する高圧水電解装置のシール検査方法であって、
前記シール部材によりシールされる第1の室内に高圧な前記水素が供給される一方、前記シール部材を挟んで前記第1の室とは反対側に形成される閉塞された第2の室内の圧力を検出する工程と、
前記第1の室内が減圧されるとともに、前記第2の室内の圧力減少状態を検出する工程と、
前記第2の室内の圧力減少状態に基づいて、前記シール部材のシール機能の良否を判断する工程と、
を有することを特徴とする高圧水電解装置のシール検査方法。
【請求項2】
請求項1記載のシール検査方法において、前記第2の室内の圧力減少状態が、予め設定された規定圧力減少状態と比較され、又は前記第1の室内の圧力減少状態と比較され、この比較結果に基づいて前記シール部材のシール機能の良否を判断することを特徴とする高圧水電解装置のシール検査方法。
【請求項3】
請求項1又は2記載のシール検査方法において、前記第2の室は、前記シール部材と他のシール部材との間に形成されることを特徴とする高圧水電解装置のシール検査方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のシール検査方法において、前記第1の室内が減圧される前に、該第1の室内の圧力と前記第2の室内の圧力とが同圧であることを特徴とする高圧水電解装置のシール検査方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のシール検査方法において、前記第1の室は、前記高圧な水素が導入されるシリンダ室であり、
前記シール部材は、前記シリンダ室内を軸方向に進退して前記他方のセパレータを前記カソード側給電体側に押圧可能なピストンと、前記シリンダ室の内壁との摺動部位に配置されることを特徴とする高圧水電解装置のシール検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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