説明

高圧流動床式好気性排水処理設備

【課題】リアクター本体の底部に堆積する砂を除去できる高圧流動床式好気性排水処理設備を提供する。
【解決手段】排水が流入されるリアクター本体14内にエアリフト用の内筒15が設けられたリアクター部11と、リアクター部11の上部に設けられ、排水、砂、ガスを分離して排水とガスを排出すると共に分離した砂をリアクター部11に戻すセパレータ部12とを有する高圧流動床式好気性排水処理設備において、内筒15とリアクター本体14間に、リアクター本体14の底部に堆積した砂Sを水流で除去する洗浄水注入手段30を設けたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機物が含まれる排水を、微生物が担持された砂を反応器内で循環させつつ好気性処理する好気性排水処理設備に係り、特に溶存酸素濃度を高めるべく反応器内を高圧型とした高圧流動床式好気性排水処理設備に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の高圧流動床式好気性排水処理設備を図3により説明する。
【0003】
反応器10は、排水中の有機物を砂が担持された微生物で好気性処理するリアクター部11と、リアクター部11からの排水と砂と空気を含むガスを分離するセパレータ部12とから構成される。
【0004】
リアクター部11は、排水流入管13が接続されたリアクター本体14と内筒15とからなり、その内筒15の下部に圧縮空気ライン16から圧縮空気を吹き込む散気管17が設けられ、また後述するように反応器10から排気される排ガスを吹き込むエアリフト用ガス吹込管18が設けられて構成される。
【0005】
このリアクター部11では、排水が排水流入管13からリアクター本体14と内筒15間に供給されて、セパレータ部12からの砂と共に図示の矢印のように降下し、内筒15内で散気管17からの圧縮空気とガス吹込管18からのガスでエアリフトされて内筒15内を上昇し、その間に砂に担持された微生物で好気性処理がなされる。
【0006】
セパレータ部12は、リアクター本体14の上部を拡径した筒部20内に内筒15を上昇した砂を含む排水とガスとを収集してガスを分離する逆ロート状のガス収集筒21を設け、その筒部20の上部と外周とを覆いその筒部20からオーバーフローした排水を排出管22から排出するガス分離キャップ23で構成され、さらにガス収集筒21と筒部20間に形成される沈降層24内に、ガス収集筒21のガスをガス分離キャップ23に設けたガス排出管25に案内すると共にガス収集筒21からオーバーフローした排水中の砂の分離をさらに促進するための逆ロート状の沈降筒26が適宜設けられて構成される。
【0007】
またガス排出管25には、排出される排ガスを、循環ポンプ27にてガス吹込管18に戻す循環ライン28が設けられる。
【0008】
このセパレータ部12では、内筒15から好気性処理がなされた砂を含む排水とガスとが上向流で上昇し、ガス収集筒21で捕集されガスがガス分離キャップ23の気相部に放出されてガス排出管25に放出され、排水と砂とがガス収集筒21からオーバーフローして沈降層24に流れ、沈降筒26で更に固液分離と気液分離がなされ、固液分離がなされた砂は、ガス収集筒21と筒部20の間隙29を通ってリアクター本体14と内筒15間に流下し、排水は筒部20をオーバーフローして排水管22に排水されるようになっている。
【0009】
この高圧流動床式好気性排水処理設備では、砂を内部循環させながら、砂の表面に高濃度に微生物を増殖させることにより、通常の好気性排水処理設備に比べて、高負荷での処理が可能となっている。また高圧にすることで、溶存酸素濃度を高めることができ、汚泥(微生物の増殖による産物)を減らすことができるという利点がある。
【0010】
【特許文献1】特開2002−239575号公報
【特許文献2】特開昭56−100695号公報
【特許文献3】特開昭54−81660号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、高圧流動床式好気性排水処理設備では、微生物を担持させた砂を循環させるために、内筒15に、空気と反応器10から排出された排ガスを吹き込んでエアリフト構造とし、セパレータ部12の沈降層24では、砂とガスと排水を分離し、分離した微生物を担持させた砂をガス収集筒21と筒部20の間隙29を通してリアクター本体14と内筒15間のリアクター部11に戻すようにしているが、リアクター本体14の底部に砂が堆積し、循環の妨げになる問題がある。
【0012】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、リアクター本体の底部に堆積する砂を除去できる高圧流動床式好気性排水処理設備を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために請求項1の発明は、排水が流入されるリアクター本体内にエアリフト用の内筒が設けられたリアクター部と、リアクター部の上部に設けられ、排水、砂、ガスを分離して排水とガスを排出すると共に分離した砂をリアクター部に戻すセパレータ部とを有する高圧流動床式好気性排水処理設備において、内筒とリアクター本体間に、リアクター本体底部に堆積した砂を水流で除去する洗浄水注入手段を設けたことを特徴とする高圧流動床式好気性排水処理設備である。
【0014】
請求項2の発明は、洗浄水注入手段は、リアクター本体の底部の外周面に接線方向に設けられた洗浄水注入管からなる請求項1記載の高圧流動床式好気性排水処理設備である。
【0015】
請求項3の発明は、洗浄水注入手段には、上記セパレータ部で分離された排水が供給される請求項1又は請求項2記載の高圧流動床式好気性排水処理設備である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、リアクター本体の底部に堆積する砂を洗浄水注入手段から注入した洗浄水で崩壊して流動性を与えることで砂の循環を正常に戻すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の好適な一実施の形態を添付図面に基づいて詳述する。
【0018】
図1は、本発明の一実施の形態を示し、基本的には図2で説明した通りであり、これを再度説明すると、反応器10は、排水中の有機物を砂が担持された微生物で好気性処理するリアクター部11と、リアクター部11からの排水と砂と空気を含むガスを分離するセパレータ部12とから構成される。
【0019】
リアクター部11は、排水流入管13が接続された有底筒体状のリアクター本体14とそのリアクター本体14内に同心状に設けられた内筒15とからなり、その内筒15の下部に圧縮空気ライン16から圧縮空気を吹き込む散気管17が設けられ、また反応器10から排気される排ガスを吹き込むエアリフト用ガス吹込管18が設けられて構成される。
【0020】
このリアクター部11では、排水が排水流入管13からリアクター本体14と内筒15間に供給されて、セパレータ部12から分離された砂と共に図示の矢印のように降下し、内筒15内で散気管17からの圧縮空気とガス吹込管18からのガスでエアリフトされて内筒15内を上昇し、その間に砂に担持された微生物で好気性処理がなされる。
【0021】
セパレータ部12は、リアクター本体14の上部を拡径した筒部20内に、内筒15を上昇した砂を含む排水とガスとを収集してガスを分離する逆ロート状のガス収集筒21が内筒15の上方に臨むように設けられ、その筒部20の上部と外周とを覆いその筒部20からオーバーフローした排水(処理水)を排出管22から排出するガス分離キャップ23が設けられて構成される。
【0022】
さらにガス収集筒21と筒部20間に形成される沈降層24内に、ガス収集筒21のガスをガス分離キャップ23に設けたガス排出管25に流すと共にガス収集筒21からオーバーフローした排水中の砂の分離をさらに促進するための逆ロート状の沈降筒26が設けられて構成される。
【0023】
またガス排出管25には、排出される排ガスを、循環ポンプ27にてガス吹込管18に戻す循環ライン28が設けられる。この循環ライン28からガス吹込管18を介してガスを内筒15内に吹き込むことで、散気管17から吹き込む圧縮空気量を調整することなく内筒15内での排水のリフト量を調整できる。
【0024】
セパレータ部12では、内筒15から好気性処理がなされた砂を含む排水とガスとが上向流で上昇し、ガス収集筒21で捕集されたガスが、ガス分離キャップ23の気相部に放出されてガス排出管25に放出され、排水と砂とがガス収集筒21からオーバーフローして沈降層24に流れ、沈降筒26で更に固液分離と気液分離がなされ、固液分離がなされた砂は、ガス収集筒21と筒部20の間隙29を通ってリアクター本体14と内筒15間に流下し、排水は筒部20をオーバーフローして排水管22に排水されるようになっている。
【0025】
さて、本発明においては、ガス収集筒21と筒部20の間隙29を通ってリアクター本体14と内筒15間に流下する砂がリアクター本体14の底部に堆積して循環を妨げるのを防止すべく、リアクター本体14の底部に堆積した砂Sを水流で除去する洗浄水注入手段30を設けたものである。
【0026】
この洗浄水注入手段30は、図2に示すようにリアクター本体14の底部の外周面に接線方向に設けられた複数の洗浄水注入管31からなり、その洗浄水注入管31に、セパレータ部12で分離された排水(処理水)が洗浄水として供給されるようになっている。
【0027】
すなわち、排出管22に接続された排出ライン32と洗浄水注入管31とが注入ライン33を介して接続され、その注入ライン33に、注入ポンプ34が接続される。洗浄水注入管31と注入ライン33は、図示していないが、ヘッダを介して接続され、注入ライン33からの排水がヘッダに供給され、そのヘッダより、各洗浄水注入管31に分配されて供給されるようになっている。
【0028】
リアクター本体14には、リアクター本体14と内筒15間を流下する排水の流量を検出する流量計35が接続され、その流量計35にて注入ポンプ34が制御される。注入ライン33の下流側の排出ライン32には、排水制御弁39が接続され、その排水制御弁39が、セパレータ部12の筒部20外周の排水層36の液面を検出する液面計37により制御される。
【0029】
また排水流入管13は、リアクター本体14の底部に排水を流すようにリアクター本体14の下部に位置して接続され、その排水流入管13に排水ポンプ38が接続される。この排水流入管13は、リアクター本体14の下部に接続される他に、従来のようにリアクター本体14の中央部に接続しても、或いは洗浄水注入手段30と接続し、その洗浄水と合流させて供給するようにしてもよい。
【0030】
ガス排出管25に繋がるガス排出ライン40には、ガス排出制御弁41が接続され、そのガス排出制御弁41がセパレータ部12の気相部の圧力を検出する圧力検出器42により制御される。
【0031】
以上において、セパレータ部12で分離された砂は、一部排水と共にリアクター本体14と内筒15間を重力により沈降する。内筒15の底部では、散気管17から吹き込まれた圧縮空気とガス吹込管18から吹き込まれたガスでエアリフトされ、砂と共に上向流となって内筒15内を上昇することで循環流が生じるが、リアクター本体14の底部に砂Sが堆積すると循環流が低下する。そこで洗浄水注入手段30からセパレータ部12で分離された排水を洗浄水として注入することで、その水流で堆積する砂Sを崩壊して内筒15に流してエアリフトさせることで循環流を適正にすることができる。この際、洗浄水注入管31をリアクター本体14に対して接線方向に流すことでより撹拌効果を上げることができる。
【0032】
この際、リアクター本体14と内筒15間の下降流(流量)を流量計35で検出し、下降流が所定値となるように注入ポンプ34を制御する。あるいは、流量計35の下降流が所定値を下回った場合、注入ポンプ34を起動・停止する間欠運転でもよい。
【0033】
またセパレータ部12からの排水を洗浄水としてリアクター部11に戻すため排水全体の循環量が増加するが、排水層36の波面を液面計37で検出し、液面が一定となるように排水制御弁39を制御することで、排水流入管13からの流入排水量に応じた排水(処理水)制御が行える。
【0034】
さらにセパレータ部12内の圧力を圧力計42で検出し、その圧力が一定となるようにガス排出制御弁41を制御することで、循環ライン28からガス吹込管18に戻すガス量を自在に変えて循環量を制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の一実施の形態を示す断面図である。
【図2】図1の洗浄水注入手段の詳細断面図である。
【図3】従来例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0036】
11 リアクター部
12 セパレータ部
13 排水流入管
14 リアクター本体
15 内筒
30 洗浄水注入手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排水が流入されるリアクター本体内にエアリフト用の内筒が設けられたリアクター部と、リアクター部の上部に設けられ、排水、砂、ガスを分離して排水とガスを排出すると共に分離した砂をリアクター部に戻すセパレータ部とを有する高圧流動床式好気性排水処理設備において、内筒とリアクター本体間に、リアクター本体底部に堆積した砂を水流で除去する洗浄水注入手段を設けたことを特徴とする高圧流動床式好気性排水処理設備。
【請求項2】
洗浄水注入手段は、リアクター本体の底部の外周面に接線方向に設けられた洗浄水注入管からなる請求項1記載の高圧流動床式好気性排水処理設備。
【請求項3】
洗浄水注入手段には、上記セパレータ部で分離された排水が供給される請求項1又は請求項2記載の高圧流動床式好気性排水処理設備。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate