説明

高圧電線、及び高圧電線の製造方法

【課題】省スペース化を図ることが可能な、また、軽量化も図ることが可能な高圧電線及びこの製造方法を提供する。
【解決手段】高圧電線21、高圧電線21′は、複数本の並んだ導体22に対し絶縁体23を一括被覆してなるとともに、導体22同士の隣り合う部分24の絶縁体厚みAが隣り合わない部分25の絶縁体厚みB以下となるものである。また、高圧電線21、高圧電線21′の製造方法は、複数本の並んだ導体22に対し絶縁体23を一括して押出被覆するにあたり、導体22同士の隣り合う部分24の厚みAが隣り合わない部分25の厚みB以下となるように絶縁体23を押出被覆して高圧電線21、高圧電線21′を製造する方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数本の導体とこれを一括被覆する絶縁体とを含む高圧電線、及び、この高圧電線の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、エコカーとしてハイブリッド自動車や電気自動車が注目されている。また、普及率が高まってきている。ハイブリッド自動車や電気自動車は、動力源としてモータを搭載している。モータを駆動するためには、バッテリーとインバータ間を、また、インバータとモータ間を、高圧のワイヤハーネスによって電気的に接続する必要がある。高圧のワイヤハーネスは、導電路である高圧電線を複数本備えて構成されている。
【0003】
高圧のワイヤハーネスに関しては、数多くの提案がなされている。その一例としては、下記特許文献1に開示されたワイヤハーネスが挙げられるものとする。
【0004】
下記特許文献1に開示されたワイヤハーネスは、複数本の高圧電線を横一列に並べて配索する構造を採用している。この構造によりワイヤハーネスは高さが低くなり、ワイヤハーネスを車両の床下に組み付けても、地面から離れた所にワイヤハーネスが位置することから、ワイヤハーネスの破損や損傷を防止することができるという効果を奏する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−12868号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示されたワイヤハーネスは、複数本の高圧電線を備えてこれを横一列に並べることから、車両高さ方向の長さを最小限に抑えることができる反面、車両幅方向の長さが長くなってしまうという状態になる。そこで、本願発明者は、今後省スペース化の要望があった場合を想定し、これに応えることのできる構造を検討する必要があると考えている。
【0007】
尚、ワイヤハーネスに限るものでないが、例えば走行距離をのばすためとして、車両構成部品の軽量化を図ることは重要である。
【0008】
本発明は、上記した事情に鑑みてなされたもので、省スペース化を図ることが可能な、また、軽量化も図ることが可能な高圧電線及びこの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するためになされた請求項1記載の本発明の高圧電線は、複数本の導体と、該複数本の導体を並べ一括して被覆する絶縁体とを含み、該絶縁体を、前記導体同士の隣り合う部分の厚みが隣り合わない部分の厚み以下となるようにすることを特徴とする。
【0010】
請求項2記載の本発明の高圧電線は、請求項1に記載の高圧電線に係り、前記導体に応じた電線サイズを3mm〜30mmとし、且つ、前記隣り合う部分における最も薄くなるポイントでの厚みの下限値を0.25mmとすることを特徴とする。
【0011】
また、上記課題を解決するためになされた請求項3記載の本発明の高圧電線の製造方法は、複数本の並んだ導体に対し絶縁体を一括して押出被覆するにあたり、前記導体同士の隣り合う部分の厚みが隣り合わない部分の厚み以下となるように前記絶縁体を押出被覆することを特徴とする。
【0012】
請求項4記載の本発明の高圧電線の製造方法は、請求項3に記載の高圧電線の製造方法に係り、前記導体を予熱した上で前記絶縁体を押出被覆することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載された本発明によれば、従来に比べ、省スペース化及び軽量化を図ることができるという効果を奏する。具体的には、導体に絶縁体を設けてなる従来の高圧電線を複数本並べた場合と、本発明の高圧電線とで比較をすると、従来の高圧電線はこれを一本ずつ並べた時、各高圧電線の導体間に各高圧電線の絶縁体が介在するようになることから、導体間は絶縁体二つ分だけ離れた状態になる。これに対し、本発明の高圧電線は、複数本の並んだ導体に対し絶縁体を一括被覆してなるとともに、導体同士の隣り合う部分の絶縁体厚みを隣り合わない部分の絶縁体厚み以下となるようにしていることから、導体同士の間隔は従来よりも確実に狭くなる。従って、本発明の高圧電線は、従来の高圧電線を複数本並べた場合よりも幅狭にすることができ、以て省スペース化を図ることができるという効果を奏する。また、本発明の高圧電線は、導体間における絶縁体の厚みを従来よりも薄くしてなることから、この薄くした分だけ少なくとも軽量化を図ることができるという効果を奏する。
【0014】
請求項2に記載された本発明によれば、高電圧回路で使用するにあたり、電線の耐電圧として5kVを確保することができるという効果を奏する。
【0015】
請求項3に記載された本発明によれば、従来に比べ、省スペース化及び軽量化を図ることが可能な高圧電線の製造方法を提供することができるという効果を奏する。
【0016】
請求項4に記載された本発明によれば、導体を予熱することにより、導体に対し押し出される絶縁体の流動性を良好にし、以て隣り合う導体同士間の絶縁体厚みを薄くし易くすることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の高圧電線に係る図であり、(a)は車両の模式図、(b)及び(c)は高圧電線の断面図である。
【図2】高圧電線の幅の比較に係る図であり、(a)は図1(b)の高圧電線の断面図、(b)は図1(c)の高圧電線の断面図、(c)従来例の高圧電線の断面図である。
【図3】高圧電線の製造方法に係る図であり、(a)は製造工程全体の模式図、(b)は導体送り出し状態に係る断面図、(c)は絶縁体を押出被覆した状態に係る断面図である。
【図4】高圧電線を含むワイヤハーネスの図であり、(a)はシールド部材及びシースを高圧電線に一体構成した状態のワイヤハーネス断面図、(b)はシールド部材及びシースを高圧電線に対し別体構成とした状態のワイヤハーネス断面図である。
【図5】高圧電線の他の例に係る図であり、(a)は導体を二本とした高圧電線の断面図、(b)及び(c)は導体を三本とした高圧電線の断面図である。
【図6】高圧電線の他の例に係る図であり、(a)は導体を棒状の角導体とした高圧電線の断面図、(b)は導体を平角導体とした高圧電線の断面図、(c)は絶縁体を第一絶縁体及び第二絶縁体に分けた高圧電線の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
高圧電線は、複数本の並んだ導体に対し絶縁体を一括被覆してなるとともに、導体同士の隣り合う部分の絶縁体厚みが隣り合わない部分の絶縁体厚み以下となるものである。
【0019】
また、高圧電線の製造方法は、複数本の並んだ導体に対し絶縁体を一括して押出被覆するにあたり、導体同士の隣り合う部分の厚みが隣り合わない部分の厚み以下となるように絶縁体を押出被覆して高圧電線を製造する方法である。
【実施例】
【0020】
以下、図面を参照しながら実施例を説明する。図1は本発明の高圧電線に係る図であり、(a)は車両の模式図、(b)及び(c)は高圧電線の断面図である。また、図2は高圧電線の幅の比較に係る図、図3は高圧電線の製造方法に係る図、図4は高圧電線を含むワイヤハーネスの図、図5及び図6は高圧電線の他の例に係る図である。
【0021】
本実施例においては、ハイブリッド自動車(電気自動車であってもよいものとする)に本発明の高圧電線を採用する例を挙げて説明するものとする。
【0022】
図1(a)において、引用符号1はハイブリッド自動車を示している。ハイブリッド自動車1は、エンジン2及びモータユニット3の二つの動力をミックスして駆動する車両であって、モータユニット3にはインバータユニット4を介してバッテリー5(電池パック)からの電力が供給されるようになっている。エンジン2、モータユニット3、及びインバータユニット4は、本実施例において前輪等がある位置のエンジンルーム6に搭載されている。また、バッテリー5は、後輪等がある自動車後部7に搭載されている(エンジンルーム6の後方に存在する自動車室内に搭載してもよいものとする)。
【0023】
モータユニット3とインバータユニット4は、ワイヤハーネス8により接続されている。また、バッテリー5とインバータユニット4もワイヤハーネス9により接続されている。ワイヤハーネス8、9は、高圧用のものとして構成されている。ワイヤハーネス8は、モータケーブルと呼ばれることもある。ワイヤハーネス8は、ワイヤハーネス9よりも短尺なものになっている。
【0024】
ワイヤハーネス9は、この中間部10が車両床下11に配索されている(室内側であってもよいものとする)。車両床下11は、車両ボディの地面側であって、所謂パネル部材となるような部分になっている。この所定位置には、図示しない貫通孔が貫通形成されている。貫通孔の部分は、ワイヤハーネス9との防水を図る防水構造(図示省略)が設けられている。
【0025】
ワイヤハーネス9とバッテリー5は、このバッテリー5に設けられたジャンクションブロック12を介して接続されている。ジャンクションブロック12には、ワイヤハーネス9の後端13が接続されている。ワイヤハーネス9の後端13側は、自動車室内側となる床上に配索されている。床上には、ワイヤハーネス9の前端14側も配索されている。ワイヤハーネス9の前端14側は、インバータユニット4に接続されている。
【0026】
ここで本実施例での補足説明をすると、モータユニット3はモータ及びジェネレータを構成に含んでいるものとする。また、インバータユニット4は、インバータ及びコンバータを構成に含んでいるものとする。モータユニット3は、シールドケースを含むモータアッセンブリとして形成されるものとする。また、インバータユニット4もシールドケースを含むインバータアッセンブリとして形成されるものとする。バッテリー5は、Ni−MH系やLi−ion系のものであって、モジュール化してなるものとする。尚、例えばキャパシタのような蓄電装置を使用することも可能であるものとする。バッテリー5は、ハイブリッド自動車1や電気自動車に使用可能であれば特に限定されないものとする。
【0027】
図1(a)〜(c)において、インバータユニット4とバッテリー5とを繋ぐワイヤハーネス9は、本発明に係る高圧電線21、又は、本発明に係る高圧電線21′を含んで構成されている。高圧電線21、高圧電線21′は、いずれであっても、従来例に比べ省スペース化及び軽量化が図られたものになっている。
【0028】
高圧電線21、高圧電線21′は、二本の導体22と、この二本の導体22を並べ一括して被覆する絶縁体23とを含んで構成されている。
【0029】
尚、導体22の本数はワイヤハーネス9の場合、二本となるものであるが、この本数に限定されないものとする。例えば、モータユニット3とインバータユニット4とを繋ぐワイヤハーネス8の場合は、後述するが、三本となっている。
【0030】
高圧電線21、高圧電線21′は、各導体22に応じた電線サイズが3mm〜30mmとなるように製造されている。高圧電線21、高圧電線21′は、所謂太物の電線として製造されている。
【0031】
高圧電線21、高圧電線21′は、従来同様の柔軟性を有するように、或いは、これ自身にてワイヤハーネス9の配索経路に沿った形状保持が可能な剛性(例えば直線の状態から曲げを施すと、元に戻らずに曲げの形状を維持することが可能な剛性)を有するように形成されている。
【0032】
導体22は、銅、銅合金、アルミニウム、又はアルミニウム合金製の素線を撚り合わせてなる断面円形状の撚り線導体が用いられている(この限りでないものとする。他の例に関しては後述するものとする)。尚、導体22を安価且つ軽量にするのであれば、上記材質の中でアルミニウムやアルミニウム合金を用いることが有効であるものとする。
【0033】
絶縁体23は、導体22を覆って絶縁し且つ保護をするものであって、上記の如く二本の導体22を一括して被覆することにより形成されている。絶縁体23は、本実施例において、断面略めがね形状に形成されている。絶縁体23に適した材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、フッ素樹脂等の熱可塑性樹脂材料が挙げられるものとする。本実施例においては、架橋ポリエチレンが用いられている。
【0034】
絶縁体23は、隣り合う導体22同士に挟まれた部分、言い換えれば、導体22同士が隣り合う部分となる、「隣り合う部分24」と、この隣り合う部分24以外の部分となる、「隣り合わない部分25」とを有している。隣り合う部分24は、この部分における最も薄くなるポイントでの厚みAの下限値が0.25mmとなるように設定されている。尚、上記「最も薄くなるポイント」は、「導体22同士の間隔が最も狭くなるポイント」でもある。
【0035】
図1(b)の高圧電線21は、隣り合う部分24の厚みAが下限値の0.25mmとなるように絶縁体23が形成されている。下限値の0.25mmは、高圧電線21を高電圧回路で使用するにあたり、電線の耐電圧として5kVを確保するために設定されている。
【0036】
隣り合う部分24は、電線としての耐摩耗性を考慮しなくて済む部分となっている。
【0037】
隣り合う部分24の厚みAの上限値としては、従来例の厚みG(図2(c)参照。後述する)よりも小さければ(A<G)、省スペース化を図ることが可能であり、これを上限値としてもよいが、本実施例においては、より良いものとするために、隣り合わない部分25と同じ厚みBが上限値として設定されている。尚、隣り合わない部分25の厚みBは、従来例の絶縁体103の厚みH(図2(c)参照。後述する)と同じに設定されている。
【0038】
図1(c)の高圧電線21′は、隣り合う部分24の厚みAが上記の上限値となるように絶縁体23が形成されている。
【0039】
高圧電線21は、隣り合う部分24の厚みAが下限値の0.25mmとなるように絶縁体23を形成していることから、高圧電線21としての幅Cは狭くなっている。尚、幅Cの方向は、車両幅方向に一致するものとする。また、高圧電線21′は、隣り合う部分24の厚みAが上記の上限値となるように絶縁体23を形成していることから、高圧電線21′としての幅Dは、高圧電線21よりも若干広いが、十分に狭くなっている。高圧電線21、高圧電線21′は、車両高さ方向の寸法Eに関し、従来例と同じ寸法であるものとする。従って、ワイヤハーネス9の中間部10を車両床下11に配索しても、地面からの距離を稼ぐことができるような寸法になっている。
【0040】
図2において、高圧電線21及び高圧電線21′と、従来例の二本の高圧電線101との幅の比較をしてみると、高圧電線21の幅C<高圧電線21′の幅D<二本の高圧電線101の幅Fとなり、本発明に係る高圧電線21及び高圧電線21′は、従来例の二本の高圧電線101よりも幅狭になっていることが図から分かる。図2(c)で示す従来例の高圧電線101は、導体102と、絶縁体103とを備えて構成されている。絶縁体103は、導体102の全周を均一な厚みHで覆うように形成されている。絶縁体103を均一な厚みHにするのは、電線の耐摩耗性を確保するために重要である。このような高圧電線101を二本、互いに接触するように並べると、導体102同士の隣り合う部分は、厚みGとなるようになっている。
【0041】
ここで、従来例の高圧電線101を、電線サイズが15mmとなり且つ仕上がり外径が7.5mmとなる銅撚り線電線とすると、この従来例の高圧電線101を二本並べれば、幅F(長径方向の仕上がり外径)はF=15.0mmとなる。これに対し、高圧電線21′を採用すれば、この幅DはD=13.9mmとなる。従って、従来例に対し7%の幅寸法減(−7%)を達成することができる。さらに、高圧電線21を採用すれば、この幅CはC=13.1mmとなる。従って、従来例に対し13%の幅寸法減(−13%)を達成することができる。
【0042】
高圧電線21、高圧電線21′は、例えば次のようにして製造されている。すなわち、図3(a)に示す如く、二つのドラム26から導体22を個別に繰り出し、この後に絶縁体成形ダイ27にて絶縁体23を押出被覆することにより製造されている。絶縁体成形ダイ27においては、図3(b)に示す如く導体22同士の間隔Jが維持される。この間隔Jは、隣り合う部分24の厚みAと同じである。導体22に対し絶縁体23は、図3(c)に示す如く押出被覆される。本実施例は、絶縁体23を押出被覆する前の状態において、導体22に対し予熱を行っているものとする。この予熱は、絶縁体23の流動性を良好にするという利点を有している。
【0043】
図4において、ワイヤハーネス9は、例えば次のように構成されている。すなわち、図4(a)に示す如く、高圧電線21の上記構成と、編組又は金属箔からなる導電性のシールド部材28と、このシールド部材28の外側に押出被覆される絶縁性のシース29とを備えて構成されている。図4(a)において、ワイヤハーネス9は、高圧電線21に対しシールド部材28及びシース29を一体化してなるようなケーブル状のものに製造されている。
【0044】
尚、シース29の材料は、耐摩耗性、耐熱性、耐候性、耐衝撃性、押出成形性等の各種特性が良好な樹脂材料が好適であるものとする。この場合、外装部材レスのワイヤハーネス9にすることができるようになる。外装部材レスを可能とする上記樹脂材料は、絶縁体23に適用してもよいものとする。
【0045】
一方、図4(b)に示す如くのワイヤハーネス9は、高圧電線21と、この高圧電線21を全長にわたって収容するシールド部材30と、これらを収容する筒状の外装部材31とを備えて構成されている。シールド部材30は、編組又は金属箔にて筒状に形成されている。外装部材31は、平形のコルゲートチューブやプロテクタ等であるものとする。
【0046】
ワイヤハーネス9は、特に図示しないが、シールド機能を持たせた金属保護パイプを備え、この金属保護パイプに高圧電線21を収容するような構成及び構造であってもよいものとする。
【0047】
以上の高圧電線21は、高圧電線21′に置き換えても当然によく、また、図5及び図6に示す如くの変形例となる高圧電線に置き換えてもよいものとする。以下、変形例について説明をする。
【0048】
図5(a)において、高圧電線41は、二本の導体42と、この二本の導体42を並べ一括して被覆する絶縁体43とを備えて構成されている。導体42は、上記導体22(図1(b)参照)と同じ、若しくは、丸単心となる導体構造のものに形成されている。絶縁体43は、断面略めがね形状でなく、ここでは長円形状に形成されている。絶縁体43は、隣り合う部分44の厚みAが下限値の0.25mmとなるように形成されている。また、絶縁体43は、隣り合わない部分45の厚みBが上記隣り合わない部分25(図1(b)参照)と同じになるように形成されている。
【0049】
図5(b)において、高圧電線51は、三本の導体52と、この三本の導体52を並べ一括して被覆する絶縁体53とを備えて構成されている。導体52は、上記導体22(図1(b)参照)と同じ、若しくは、丸単心となる導体構造のものに形成されている。絶縁体53は、断面略めがね形状に形成されている。絶縁体53は、隣り合う部分54の厚みAが下限値の0.25mmとなるように形成されている。また、絶縁体53は、隣り合わない部分55の厚みBが上記隣り合わない部分25(図1(b)参照)と同じになるように形成されている。高圧電線51は、モータユニット3とインバータユニット4とを繋ぐワイヤハーネス8(図1(a)参照)に用いることが好適であるものとする。
【0050】
図5(c)において、高圧電線61は、三本の導体62と、この三本の導体62を並べ一括して被覆する絶縁体63とを備えて構成されている。導体62は、上記導体22(図1(b)参照)と同じ、若しくは、丸単心となる導体構造のものに形成されている。絶縁体63は、断面略めがね形状でなく、ここでは長円形状に形成されている。絶縁体63は、隣り合う部分64の厚みAが下限値の0.25mmとなるように形成されている。また、絶縁体63は、隣り合わない部分65の厚みBが上記隣り合わない部分25(図1(b)参照)と同じになるように形成されている。高圧電線61は、モータユニット3とインバータユニット4とを繋ぐワイヤハーネス8(図1(a)参照)に用いることが好適であるものとする。
【0051】
図6(a)において、高圧電線71は、二本の導体72と、この二本の導体72を並べ一括して被覆する絶縁体73とを備えて構成されている。導体72は、略四角形の単心となる導体構造(棒状の角導体となる構造)のものに形成されている。絶縁体73は、導体72の外形形状に合わせて形成されている。絶縁体73は、隣り合う部分74の厚みAが下限値の0.25mmとなるように形成されている。また、絶縁体73は、隣り合わない部分75の厚みBが上記隣り合わない部分25(図1(b)参照)と同じになるように形成されている。
【0052】
図6(b)において、高圧電線81は、二本の導体82と、この二本の導体82を図中上下に並べ一括して被覆する絶縁体83とを備えて構成されている。導体82は、平角単心となる導体構造(略バスバー状の導体構造)のものに形成されている。絶縁体83は、導体82の外形形状に合わせて形成されている。絶縁体83は、図中上下方向に隣り合う部分84の厚みAが下限値の0.25mmとなるように形成されている。また、絶縁体83は、隣り合わない部分85の厚みBが、例えば上記隣り合わない部分25と同じになるように形成されている。高圧電線81は、幅寸法Kが狭く、高さ寸法Lも低くなるように形成されている。
【0053】
図6(c)において、高圧電線91は、二本の導体92と、この二本の導体92を並べ一括して被覆する絶縁体93とを備えて構成されている。導体92は、上記導体22(図1(b)参照)と同じ、若しくは、丸単心となる導体構造のものに形成されている。絶縁体93は、断面略めがね形状に形成されている。絶縁体93は、隣り合う部分94の厚みAが下限値の0.25mmとなるように形成されている。また、絶縁体93は、隣り合わない部分95の厚みBが上記隣り合わない部分25(図1(b)参照)と同じになるように形成されている。絶縁体93は、第一絶縁体96及び第二絶縁体97に分けられている。第一絶縁体96は、隣り合う部分94の厚みAで一方の導体92(例えば図6(c)中右側の導体92)を覆うように押出被覆されている。第二絶縁体97は、第一絶縁体96の形成の後に、この第一絶縁体96と接触するように他方の導体92を並べた状態で第一絶縁体96を覆うように、また、他方の導体92を覆うように、同じ樹脂材料で押出被覆されている。
【0054】
以上、図1ないし図6を参照しながら説明してきたように、本発明の高圧電線21、高圧電線21′等によれば、従来例の高圧電線101に比べ、省スペース化を図ることができるという効果を奏する。また、本発明の高圧電線21、高圧電線21′等によれば、省スペース化を図った分だけ軽量化を図ることができるという効果を奏する。
【0055】
この他、本発明によれば、省スペース化及び軽量化を図ることが可能な高圧電線21、高圧電線21′等の製造方法を提供することができるという効果も奏する。
【0056】
本発明は本発明の主旨を変えない範囲で種々変更実施可能なことは勿論である。
【符号の説明】
【0057】
1…ハイブリッド自動車
2…エンジン
3…モータユニット
4…インバータユニット
5…バッテリー
6…エンジンルーム
7…自動車後部
8、9…ワイヤハーネス
10…中間部
11…車両床下
12…ジャンクションブロック
13…後端
14…前端
21、21′…高圧電線
22…導体
23…絶縁体
24…隣り合う部分
25…隣り合わない部分
26…ドラム
27…絶縁体成形ダイ
28、30…シールド部材
29…シース
31…外装部材
41、51、61、71、81、91…高圧電線
42、52、62、72、82、92…導体
43、53、63、73、83、93…絶縁体
44、54、64、74、84、94…隣り合う部分
45、55、65、75、85、95…隣り合わない部分
96…第一絶縁体
97…第二絶縁体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本の導体と、該複数本の導体を並べ一括して被覆する絶縁体とを含み、該絶縁体を、前記導体同士の隣り合う部分の厚みが隣り合わない部分の厚み以下となるようにする
ことを特徴とする高圧電線。
【請求項2】
請求項1に記載の高圧電線において、
前記導体に応じた電線サイズを3mm〜30mmとし、且つ、前記隣り合う部分における最も薄くなるポイントでの厚みの下限値を0.25mmとする
ことを特徴とする高圧電線。
【請求項3】
複数本の並んだ導体に対し絶縁体を一括して押出被覆するにあたり、前記導体同士の隣り合う部分の厚みが隣り合わない部分の厚み以下となるように前記絶縁体を押出被覆する
ことを特徴とする高圧電線の製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載の高圧電線の製造方法において、
前記導体を予熱した上で前記絶縁体を押出被覆する
ことを特徴とする高圧電線の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−243550(P2012−243550A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−112144(P2011−112144)
【出願日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】