説明

高密度データ記憶のための記憶媒体製造方法およびデータ記憶媒体または装置

【課題】本発明は、表面形状によりデータを記憶するためのデータ記憶媒体を基板の表面に製造する方法を対象とする。本発明はさらに、本方法により得られるデータ記憶媒体およびこのデータ記憶媒体を含むデータ記憶装置を対象とする。
【解決手段】本方法は、少なくとも3つのアルキン基を含む架橋剤を基板の表面に付着する第1のステップを含む。第2のステップでは、付着した架橋剤を硬化して基板の表面に架橋ポリマ層の形のデータ記憶媒体を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は高密度データ記憶の分野に関し、さらに詳しくはデータ記憶媒体、データ記憶システムおよびデータ記憶方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在のデータ記憶法は、0.1〜10μmの領域で行われる。今まで以上に小さいスペースにこれまで以上の情報を記憶することを目的として、データ記憶密度が増大している。電力消費を抑え、集積回路の動作速度を増加させるため、集積回路の製造に使用するリソグラフィは、寸法の小型化およびイメージングの高密度化を強いられている。データ記憶のサイズが大きくなり、密度が増大し、集積回路密度が増大するにつれ、ナノメートル領域で作動する記憶媒体用の組成物の開発が求められている。
【0003】
原子間力顕微鏡(AFM:atomic force microscope)の原理に基づきデータを記憶する記憶装置は、非特許文献1に開示されている。この記憶装置の読み取りおよび書き込み機能は、各々先端を持つプローブ・アレイによる記憶媒体の機械的なxy走査に基づく。プローブは同時に動作し、各プローブは動作中、記憶媒体の関連領域を走査する。記憶媒体はポリマ層を含んでいる。頂部の直径が各々5nm〜20nmの先端が接触モードでポリマ層の表面全体を移動する。接触モードは、プローブの先端が記憶媒体の表面に触れ得るような小さい力をプローブに印加することにより達成される。このため、プローブは、端部に先端があるカンチレバを含む。ビットは、ポリマ層の凹部マークまたは非凹部マークにより表される。カンチレバは、読み取り/書き込みモードでの装置の動作時にポリマ層の表面全体を移動する中でその表面形状の変化に応答する。
【0004】
凹部マークは、熱機械記録によりポリマ表面上に形成される。これは、ポリマ層に対して接触モードで動作した各プローブを加熱することにより達成される。先端の加熱は、凹部マークの書き込み/形成を専門に行うヒータを介して達成される。ポリマ層は、加熱された先端により接触される場所が局所的に軟化する。その結果、たとえば、凹部の形成に使用される先端がナノスケールの直径を持つ凹部を層上に形成する。
【0005】
また、読み取りも熱機械的な考え方により達成される。プローブは、凹部マークの読み取り/検出のプロセスを専門に行うヒータを使用して加熱される。先端に連結されていないためプローブが加熱されないヒータか、あるいはプローブは加熱されるが、連結された先端を加熱するほどプローブが加熱されない、すなわち、加熱温度がそれほど高くないためポリマ層が書き込みに必要なほど軟化しないヒータのいずれかが別個に使用される。熱検出は、プローブが凹部に移動した場合に熱輸送がより効率化するため、プローブと記憶媒体との間の熱伝導が変化することによる。この結果として、ヒータの温度が低下し、それに伴いその電気抵抗も変化する。そこでこの抵抗の変化を測定し、測定信号とする。
【0006】
こうした熱プローブ記憶分野において媒体としての要件は、ポリマ凹部の力学と媒体および先端層を限定する必要性とによって規定される。好ましくは、ガラス転移温度はできるだけ低くするべきであるが、同時にポリマは熱的に安定である必要がある。ポリマの熱安定性は、非常に熱安定性があるポリマを使用して架橋を行うことにより達成される。架橋は典型的には凹みを形成するのに大きな力を要する硬質な材料を生成するため、先端の摩耗が増大する。中程度の書き込み速度の場合、比較的高い温度を使用して力および先端の摩耗を最低限に抑えることができる。書き込み温度は書き込み速度と共に高くなるため、最高設計温度でカンチレバ・ヒータ要素の動作を必要とする高速書き込みでは、こうした熱と力とのトレードオフは不可能となる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】P.ヴェッティガー(P.Vettiger)らによる「The Millipede−More than one thousand tips for future AFM data storage」、IBM Journal of Research and Development、第44巻No.3、2000年3月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、媒体の耐摩耗性を得るための高架橋密度と、柔らかい書き込み状態を得るための低いガラス転移温度という相反する要件を調和させるデータ記憶媒体の製造方法を提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様では、表面形状(topographic feature)によりデータを記憶するため、基板の表面にデータ記憶媒体を製造する方法であって、(a)少なくとも3つのアルキン基を含む(すなわち少なくとも3つの炭素−炭素三重結合を含む)架橋剤を基板の表面に付着させるステップ;(b)付着した架橋剤を硬化し、それにより基板の表面に架橋ポリマ層の形態でデータ記憶媒体を得るように基板に改質された(modified)表面を作製するステップを含む、方法を提供する。
【0010】
本発明の第1の態様では、架橋剤の層を基板の表面に付着する。架橋剤の付着と同時あるいはその後に、付着した架橋剤を硬化し、それにより硬化架橋剤を含む層を得る。この層は高架橋密度を示す。一実施形態では、基板は、たとえば、硬化性ポリマ、特にポリマ骨格またはこのポリマの末端基にアルキン基を持つポリマを含む支持層であってもよい。さらなる実施形態では、基板は、硬化架橋剤の層をターゲット層、特にポリマ・ターゲット層に移行できるテンプレートであっても構わない。架橋剤および架橋剤の層をそれぞれ硬化することにより、少なくとも3つのアルキン基が再配置して梯子状ネットワークを形成し、これが分子間に強い化学結合を与え、妥当である場合、支持層のポリマは基板として使用される。したがって、本発明によれば、軟質な下層上に付着/移行された薄くて硬質な表層部分を含む二層材料が得られる。
【0011】
本発明の第1の態様の実施形態では、基板表面への架橋剤の付着、およびターゲットとして使用する基板の表面への少なくとも一部の付着を、ソースからの架橋剤の蒸発により行う。この手法を用いることにより、非常に薄いポリマの層を基板上に付着させることができ、硬化のプロセスの過程でデウェッティング(dewetting)現象(たとえば、厚さ5nmの薄層の不安定性に起因する)は観察され得ない。一方、スピンキャストのような他の付着方法を用いると、デウェッティング現象が起こる。基板の表面エネルギを低下させる界面活性剤を使用しても、この問題は解決されず、スピンキャストしたポリマのデウェッティングは回避できない。
【0012】
本発明の第1の態様のさらなる実施形態では、架橋剤は、構造ZRまたはZR’あるいはその両方の化合物から選択される。ZおよびZ’は、結合部分、特に芳香族リンカーを表し、アルキン基を含む置換基を結合している(Zは3つの置換基Rを持ち、Z’は少なくとも4つの置換基Rを持ち、置換基Rは各々、少なくとも1つのアルキン基を含み;置換基RはそれぞれZおよびZ’に共有結合している)。
【0013】
たとえばZは、1,3,5−置換6員芳香環または1,2,4−置換6員芳香環であってもよい。さらに、結合部分は、複数の芳香環を含んでいてもよい。たとえば少なくとも2つの環は各々、少なくとも2つの置換基Rを含んでいてもよい。たとえばZ’は、単結合またはアルキレンもしくはアリーレン・リンカーまたは酸素原子を介して連結された2つの6員芳香環を含んでいてもよい。Z’の前記2つの6員芳香環は各々、たとえば3,5−置換芳香環でも、または3,4−置換芳香環でもよい。さらに、3つの芳香環が含まれていてもよく、これら少なくとも3つの環は各々、少なくとも1つのアルキン基を含む少なくとも1つの置換基Rを持つ。
【0014】
あるいは、ZおよびZ’は、脂肪族結合部分、特に所望の特殊な配列の置換基Rを生じる部分であってもよい(Zは3つの置換基Rを持ち、Z’は4つの置換基Rを持ち、置換基Rは各々、少なくとも1つのアルキン基を含む)。
【0015】
構造ZRまたはZR’あるいはその両方の架橋剤の置換基Rは、少なくとも1つのアルキン基および置換もしくは非置換の芳香族部分または水素原子を含む部分を相互にランダムかつ独立に表すか、あるいはアルキン基および置換もしくは非置換の芳香族部分または水素原子からなる。
【0016】
多くの場合、置換基Rは同一であり、架橋剤の構造は極性が低いため、架橋剤は蒸発しやすい。
【0017】
好ましくは結合部分ZまたはZ’は下記式またはシリコン原子を表し、式中、*は、RとZまたはZ’との間の結合を示す。
【0018】
【化1】

【0019】
【化2】

【0020】
結合部分の2つの芳香環の間にあるリンカーLは、好ましくは酸素、アルキレンまたはアリーレン部分を表す。あるいは、Lは、2つの芳香環の間の単結合であってもよい。好ましくは、アルキレン・リンカーは、メチレン・リンカーまたはC(CHのような置換メチレン・リンカーである。
【0021】
好ましくは少なくとも1つのアルキン基を含む置換基Rは、置換アルキン基(すなわち末端アルキンを含まない)、メタ−もしくはパラ−置換フェニレン基またはフェニル基あるいはその組み合わせを含む部分を相互にランダムかつ独立に表す。あるいは、Rは、置換アルキン基、メタ−もしくはパラ−置換フェニレン部分または置換もしくは非置換フェニル基部分あるいはそれらの組み合わせからなる部分を表す。非置換フェニル基が好ましく、置換フェニル基を含む架橋剤は温度安定性が低い。置換基Rは、2つ以上のアルキン基および2つ以上のメタ−もしくはパラ−置換フェニレン部分をさらに含んでいてもよい。
【0022】
最も好ましくは、置換基Rは、相互にランダムかつ独立に下記式を表し、式中、*は、RとZまたはZ’との間の結合を示す。
【0023】
【化3】

【0024】
架橋剤ZRまたはZR’は、最も好ましくは下記式を表す。
【0025】
【化4】

【0026】
【化5】

【0027】
【化6】

【0028】
さらなる実施形態では、使用する架橋剤は、300℃未満の温度で蒸発する。より高い温度になるとアルキン基を含む架橋剤は、多くの場合、重合しやすくなる。一層好ましくは、架橋剤は、250℃未満の温度、最も好ましくは150〜200℃の間の温度で蒸発する。こうした150〜200℃の間の温度で蒸発する架橋剤の割合によって満足のいく蒸着率が可能になる。
【0029】
一例では、本発明の実施形態による架橋剤は、分子量が約900ダルトン未満であると都合がよい(本発明の記載においてダルトンおよびg/molは同義で使用される場合がある)。一層好ましくは、架橋剤は分子量が270〜800ダルトンの間である。
【0030】
本発明の実施形態の1つでは、架橋ポリマ層をテンプレートの表面に付着させる。この実施形態では、架橋剤の硬化後に以下のステップを行う:
(c)基板の改質表面(すなわちテンプレートの改質表面)をターゲット層の表面と接触させる。これにより、架橋ポリマ層と改質表面に隣接するターゲット層とを持つ基板を含むアセンブリを得る。ステップ(d)では、ステップ(c)で得られたアセンブリの環境に液体を導入する。この結果、硬化架橋剤の層が少なくともターゲット表面上の隣接領域に移行する。テンプレート表面は、その表面粗さプロファイルによって選択され、好ましくは相対的にきずを含まない。ステップ(d)で得られる二層材料の硬化架橋剤層の曝露表面(すなわち支持層の上のデータ記憶媒体層)は、前に接触していたテンプレート表面と同程度の平面度を示す。また、データ記憶媒体の層をテンプレート層からターゲット層に移行する方法については、その開示内容を参照によって本明細書に援用する国際公開第2007/113760号に記載されている。
【0031】
一例では、この実施形態に使用するテンプレートの表面は親水性特性を有する。望ましくは、テンプレート表面は、雲母基板、フレーム・アニール処理(flame−annealed)ガラス基板、シリコン基板上のシリコン酸化物層および(100)表面ペロブスカイト基板のうちの1つの表面を含む。また、ステップ(c)の前にステップ(b)で生成された改質表面を加熱することも好ましい。
【0032】
ステップ(d)で導入する液体は、極性液体を含むことが望ましい。
【0033】
この実施形態の別の例では、ステップ(a)において架橋剤とコモノマとの混合物を付着させて架橋剤の硬化層を得る。ステップ(b)では、付着した架橋剤とコモノマの混合物を硬化し、それにより架橋ポリマ層を作製する。
【0034】
コモノマとして、少なくとも2つのアルキン基を有する化合物を使用してもよい。通常このコモノマは、架橋剤と同等の熱安定性を示す。たとえば、一般構造Z’’R(Z’’は2つの置換基Rを持ち、置換基Rは各々、少なくとも1つのアルキン基を含み;置換基RはZ’’に共有結合している)の化合物を使用してもよく、Rは、(化合物ZRおよびZ’Rの)上述のように定義される。中心部分Z’’は、2つの置換基Rを連結している部分を表し、たとえば、(たとえば一対の6員環の一方の1,3−もしくは1,4−位に)2つの置換基Rを持つ芳香環または(たとえば4,4’−位に)2つの置換基Rを持つビフェニルを表す。架橋剤とコモノマとの比は、好ましくは100:0〜20:80(mol%)である。好ましくはコモノマの比は50mol%未満、一層好ましくは20mol%未満である。
【0035】
この実施形態による方法によって層間の境界がくっきりとした二層材料が得られる。硬化架橋剤の薄層は、この媒体を通常のターゲット基板に移行できるある種の表面に直接付着させる。架橋層の上に、たとえば標準的なポリマの安定な厚い層をスピンコートしてもよい。得られた硬化架橋層と標準的なポリマとのサンドイッチを硬化してもよい。硬化架橋剤の層は高度に架橋されており、かつ標準的なポリマの分子量は通常かなり大きいため、層の間で顕著な相互拡散は観察されない。
【0036】
本発明のさらなる実施形態では、アルキン基を含有する1種または複数種の架橋性ポリマを含む支持層である基板の表面に架橋剤を付着させる。こうした架橋性ポリマのアルキン基はポリマ骨格に含まれていてもよいし、あるいはアルキン基はポリマの末端基に含まれていてもよい。本発明のこの実施形態では、架橋剤の付着分子が支持層の表面に達して拡散によりポリマ内に入り込み、架橋パートナーを見つける。こうして付着分子により架橋密度が局所的に増大するため、二層材料の層の間にくっきりとした境界は認められないものの、支持層の上にデータ記憶媒体が得られる。
【0037】
一例では、支持層は、参照によって本明細書に援用する米国特許出願公開第2007/0296101号に記載されているような少なくとも1種のポリアリールエーテルケトン・ポリマを含む。別の例では支持層は、参照によって本明細書に援用する国際公開第2007/096359号に記載されているような少なくとも1種のポリイミド・オリゴマを含む。好ましくは、前記ポリアリールエーテルケトン・ポリマまたはポリイミド・オリゴマあるいはその両方は各々2つの末端を持ち、各末端は2つ以上のフェニル部分を持つ。たとえば米国特許出願公開第2007/0296101号に記載されている以下のポリアリールエーテルケトン・ポリマ
【0038】
【化7】

【0039】
を使用してもよく、式中、Rは:
【0040】
【化8】

【0041】
からなる群から選択され、式中、Rは:
【0042】
【化9】

【0043】
からなる群から選択され、式中、Rはポリ(アリールアセチレン)、ポリ(フェニルエチニル)、
【0044】
【化10】

【0045】
【化11】

【0046】
からなる群から選択され、式中、nは約5〜約50の整数である。
【0047】
米国特許出願公開第2007/0296101号に記載されているポリアリールエーテルケトン・ポリマのさらなる実施形態では、下記式
【0048】
【化12】

【0049】
のR部分の数の0〜30%が下記式:
【0050】
【化13】

【0051】
の部分で置換されている。
【0052】
これらの部分を含むポリアリールエーテルケトン・ポリマの合成は、R部分の出発材料の混合物を用いて米国特許出願公開第2007/0296101号に記載されているように行う。
【0053】
別の例では、支持層は、少なくとも1種のポリイミド・オリゴマを含む。たとえば国際公開第2007/096359号に記載されている以下のポリイミド・オリゴマを使用してもよい。
【0054】
【化14】

【0055】
式中、Rは:
【0056】
【化15】

【0057】
からなる群から選択され、式中、R’’は:
【0058】
【化16】

【0059】
からなる群から選択され、式中、nは約5〜約50の整数である。
【0060】
別の例として国際公開第2007/096359号に記載されている以下のポリイミド・オリゴマを使用してもよい。
E−R’−(A−A−A−…−A−)R’’−R’−E
【0061】
式中、Eは
【0062】
【化17】

【0063】
であり、A、A、A…Aは各々独立に:
【0064】
【化18】

【0065】
からなる群から選択され、R’およびR’’は上記に定義したとおりであり;
R’’’は
【0066】
【化19】

【0067】
であり、式中、Nは2以上の整数である。
【0068】
ある例では、(基板がそれぞれテンプレートであるか、またはポリマ架橋性ポリマである実施形態の)支持層に含まれるポリマは高温安定性があり、ガラス転移温度(TG:glass transition temperature)が低い。好ましくは、ガラス転移温度は220℃未満であり、一層好ましくは100℃〜180℃、最も好ましくは100℃〜150℃である。硬化架橋剤の層のガラス転移温度は通常支持層のポリマのガラス転移温度より高い。好ましくは双方のガラス転移温度の差は少なくとも50℃である。
【0069】
さらなる実施形態では、架橋剤の硬化を330℃〜450℃、好ましくは350〜450℃、最も好ましくは380℃〜430℃の間の温度で行う。
【0070】
通常、本発明の方法のステップ(a)および(b)は同時に行う。
【0071】
架橋剤の蒸発は架橋剤を硬化させる温度より低い温度で行うため、既に付着している架橋剤の再蒸発も基板の表面で行う。しかしながら、全体的に硬化架橋剤層の成長が観察される。
【0072】
架橋剤の硬化の際には、基板の表面に、あるいはその表面に隣接している基板の領域内(すなわち、それぞれアルキン基を含有するポリマを含む支持層および硬化架橋剤の層をターゲット層に移行できるテンプレート)に別の成分が存在していてもよい。こうした別の成分としては、重合反応を開始させる活性剤(たとえばラジカル開始剤および光活性剤)および処理を促進する分子または組成物(たとえば接着促進剤、消泡剤および安定剤)が挙げられる。
【0073】
さらなる実施形態では、硬化架橋剤の層の厚さは少なくとも5nmである。データ記憶媒体として使用するには通常厚さ5〜10nmで十分である。
【0074】
基板の表面への架橋剤の付着は、他の技法によっても行うことができる。ソースから蒸発させてターゲットに蒸着する以外に、プラズマ蒸着のような技法を使用してもよい。しかしながら、プラズマ蒸着を使用すると架橋反応の性質が制御されず、プロセス全体を制御しにくくなる恐れがある。
【0075】
第2の態様では、本発明はまた、本発明の方法の態様の実施形態により生じた、表面形状に特徴がある、データを記憶するデータ記憶媒体に適用される。
【0076】
第3の態様では、本発明は、第2の態様によるデータ記憶媒体を組み込み、さらにデータ記憶媒体に記憶されるデータの書き込みまたは読み取りあるいはその両方を行う少なくとも1つのプローブを備えたデータ記憶装置に適用される。
【0077】
本発明の一態様の特徴は他の任意の態様に適用してもよく、その逆も同様である。
【0078】
本発明の特徴は、添付の特許請求の範囲に記載される。ただし、本発明自体については、以下の例示的な実施形態の詳細な説明を参照して添付図面と共に読むと、最もよく理解される。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明の実施形態によるデータ記憶媒体を含むデータ記憶装置のチップ・アセンブリの構造および動作を図示する。
【図2】本発明の実施形態によるデータ記憶媒体を含むデータ記憶装置のチップ・アセンブリの構造および動作を図示する。
【図3】本発明の実施形態によるデータ記憶媒体を含むデータ記憶装置のチップ・アセンブリの構造および動作を図示する。
【図4】本発明の実施形態によるデータ記憶媒体を含むプローブ記憶アレイの部分的な斜視図である。
【図5】架橋剤を蒸発および付着させるための系を模式的に示す。
【図6】データ記憶媒体の例を示す。
【図7】低架橋ポリマに凹み形成されたビットの格子を示す。
【図8】架橋剤の層が低架橋ポリマの表面に付着および硬化された低架橋ポリマに凹み形成されたビットの格子を示す。
【図9】様々な深さで低架橋ポリマに凹み形成されたビットの温度と力の関係を示す。
【発明を実施するための形態】
【0080】
図1〜図3は、本発明の実施形態によるデータ記憶媒体を含むデータ記憶装置のチップ・アセンブリ100の構造および動作を図示する。図1では、プローブ・チップ・アセンブリ100は、支持構造体110に連結された撓み部材105Aおよび105Bを備えたU型カンチレバ105を含む。部材105Aおよび105Bが撓むと、カンチレバ105が枢軸115を中心として大きく枢動(pivotal motion)する。カンチレバ105は、撓み部材105Aと105Bとの間に連結されたヒータ125に固定された圧子先端(indenter tip)120を含む。撓み部材105Aおよび105Bとヒータ125とは導電性があり、支持構造体110のワイヤ(図示せず)に連結される。一例では、撓み部材105Aおよび105Bと圧子先端120とは高濃度ドープシリコンで形成され、電気抵抗が低く、ヒータ125は、一例ではヒータ125を電流が通過するとき約100℃〜約500℃まで圧子先端120を十分に加熱できる、電気抵抗が高い低濃度ドープシリコンで形成される。ヒータ125の電気抵抗は温度の関数である。
【0081】
図1はさらに、基板130Aおよび支持層130Cを含む記憶媒体(または記録媒体)130を図示する。一例では、支持層130Cは、ポリアリールエーテルケトン樹脂層である。一例では、支持層130Cは、厚さが約10nm〜約500nmである。支持層130Cの上に示されるのは、硬化架橋剤の層130Bである。
【0082】
次に図1のチップ・アセンブリ100の動作に目を向けると、カンチレバ105に電流を通過させて圧子先端120を書き込み温度TW(write temperature:書き込み温度)まで加熱し、圧子先端120を硬化架橋剤層130Bに押し付けることにより硬化架橋剤層130Bに凹部135が形成される。圧子先端120を加熱すると、先端は硬化架橋剤層130Bを貫通して凹部135を形成し、凹部135は先端の移動後も残る。第1の例では、圧子先端の温度を約500℃以下にして圧子先端120を加熱することにより硬化架橋剤層130Bを加熱して凹部135を形成する。第2の例では、圧子先端の温度を約400℃以下にして圧子先端120を加熱することにより硬化架橋剤層130Bを加熱して、凹部135を形成する。第3の例では、圧子先端の温度を約200℃〜約500℃にして圧子先端120を加熱することにより硬化架橋剤層130Bを加熱して凹部135を形成する。第4の例では、圧子先端の温度を約100℃〜約400℃にして圧子先端120を加熱することにより硬化架橋剤層130Bを加熱して凹部135を形成する。凹部135が形成されると、凹部の周りに硬化架橋剤のリング135Aが形成される。凹部135はデータ・ビット値「1」を表し、凹部がない場合、データ・ビット値は「0」になる。凹部135はナノスケールの凹部(幅数ナノメートルから数百ナノメートル)である。
【0083】
図2および図3は、ビット値の読み取りを図示する。図2および図3では、チップ・アセンブリ100について硬化架橋剤層130Bの部分を走査する。圧子先端120が凹部のない硬化架橋剤層130Bの領域の上にある場合、ヒータ125は、硬化架橋剤層130Bの表面からD1の距離にある(図2を参照)。圧子先端120が凹部のある硬化架橋剤層130Bの領域の上にある場合、先端が凹部に「落ちる」ため、ヒータ125は硬化架橋剤層の表面からD2の距離にある(図3を参照)。D1はD2よりも大きい。ヒータ125が温度TR(read temperature:読み取り温度)であり、TWより低い場合、圧子先端120が凹部内にない場合より凹部内にあるとき基板130Aへの熱損失が大きくなる。これは、電流が一定のときヒータの抵抗の変化として測定されるため、データ・ビット値の「読み取り」が可能である。読み取りには、先端に機械的に結合されているが、先端から熱的に隔離された別のヒータを使用すると都合がよい。
【0084】
「消去」(図示せず)は、圧子先端120を凹部135に近接して配置し、先端を温度TE(erase temperature:消去温度)まで加熱し、書き込みと同等の負荷力を印加することで、前に書き込まれた凹みが緩和して平坦な状態になることにより達成されるのに対し、新しい凹みは、消去された凹みから若干離れたところに書き込まれる。このサイクルは一連のビットを消去したいときに繰り返され、それにより凹みは常に消去トラックの端部にとどまる。TEは典型的にはTWよりも高い。消去ピッチは典型的には外縁の半径程度である。第1の例では、圧子先端の温度を約500℃以下にして圧子先端120を加熱することにより硬化架橋剤層130Bを加熱し、消去ピッチを10nmとして凹部135をなくす。第2の例では、圧子先端の温度を約400℃以下にして圧子先端120を加熱することにより硬化架橋剤層130Bを加熱し、消去ピッチを10nmとして凹部135をなくす。第3の例では、圧子先端の温度を約200℃〜約400℃にして圧子先端120を加熱することにより硬化架橋剤層130Bを加熱し、消去ピッチを10nmとして凹部135をなくす。第4の例では、圧子先端の温度を約200℃〜約500℃にして圧子先端120を加熱することにより硬化架橋剤層130Bを加熱し、消去ピッチを10nmとして凹部135をなくす。
【0085】
図4は、本発明の実施形態によるデータ記憶媒体を含むプローブ記憶アレイ140の部分的な斜視図である。図4では、プローブ記憶アレイ140の一部が、データ記録層の役割を果たす硬化架橋剤の層(図示せず)が上にあるポリマ支持層(ポリマ層150)を備えた基板145を含む。一例では、ポリマ層150は厚さが約10nm〜約500nmであり、ポリマ層150の書き込み可能領域の自乗平均平方根面粗さがポリマ層150全体で約1.0nm未満である。ポリマ層150の上に位置するのは、プローブ・チップ・アセンブリ100のアレイを含むプローブ・アセンブリ155である。プローブ・アセンブリ155は、当該技術分野において公知のどのような装置を用いても基板145およびポリマ層150に対してX、YおよびZ方向に移動できる。スイッチング・アレイ160Aおよび160Bはそれぞれ、各プローブ・チップ・アセンブリに対応できるようにプローブ・チップ・アセンブリ100の列(X−方向)および行(Y−方向)に連結される。スイッチング・アレイ160Aおよび160Bはコントローラ165に連結され、コントローラ165は、各プローブ・チップ・アセンブリ100によりデータ・ビットを独立に書き込むための書き込み制御回路と、各プローブ・チップ・アセンブリ100によりデータ・ビットを独立に読み取るための読み取り制御回路と、各プローブ・チップ・アセンブリ100によりデータ・ビットを独立に消去するための消去制御回路と、各プローブ・チップ・アセンブリ100の各々のヒータを独立に制御するための加熱制御回路と、プローブ・アセンブリ155のX、YおよびZ移動を制御するためのX、YおよびZ制御回路とを含む。Z制御回路は、硬化ポリアリールエーテルケトン樹脂層150をプローブ・チップ・アセンブリ100のアレイの先端と接触させる接触機構(図示せず)を制御する。
【0086】
プローブ・アセンブリ155は書き込み動作中にポリマ層150に近接し、プローブ・チップ・アセンブリ100がポリマ層150を走査する。上述のように凹部135は局所的に形成される。各プローブ・チップ・アセンブリ100が書き込むのは、ポリマ層150に対応する領域170だけである。このため移動量が減少し、したがってデータの書き込みに要する時間も短縮される。
【0087】
プローブ・アセンブリ155は読み取り動作中にポリマ層150に近接し、プローブ・チップ・アセンブリ100がポリマ層150を走査する。上述のように凹部135は局所的に検出される。各プローブ・チップ・アセンブリ100が読み取るのは、ポリマ層150に対応する領域170だけである。このため移動量が減少し、したがってデータの読み取りに要する時間も短縮される。
【0088】
プローブ・アセンブリ155は消去動作中にポリマ層150に近接し、プローブ・チップ・アセンブリ100がポリマ層150を走査する。上述のように凹部135は局所的に消去される。各プローブ・チップ・アセンブリ100が読み取るのは、硬化ポリマ層150に対応する領域170だけである。このため移動量が減少し、したがってデータの消去に要する時間も短縮される。
【0089】
上述のデータ記憶装置に関する他の詳細については、「The Millipede−More than one thousand tips for future AFM data storage」、P.ヴェッティガーら、IBM Journal of Research and Development、第44巻No.3、2000年5月、および「The Millipede−Nanotechnology Entering Data Storage」、P.ヴェッティガーら、IEEE Transaction on Nanotechnology,第1巻、No.1という論文で確認することができる。さらに、どちらもその全体を参照によって本明細書に援用する、2005年3月3日に公開されたフローマー(Frommer)らへの米国特許出願公開第2005/0047307号、および2005年3月3日に公開されたフローマーへの米国特許出願公開第2005/0050258号も参照されたい。
【0090】
図5は、架橋剤を蒸発させるための蒸発系を図示する。系は、420℃まで別々に加熱できる2枚の熱伝導板220、230を含む。この板は相互に平行に配置され、たとえば、4cmの距離離れている。蒸発プロセスのソース200は底板220に固定される。ここで架橋剤、たとえば架橋剤1,3,5−トリス(4−(フェニルエチニル)フェニル)ベンゼン(構造II)の溶液から得られた薄膜をシリコン・ウエハ上にスピンキャストする。ソース200と向かい合うターゲット・ウエハ210は底板230に装着される。ソース材料のターゲットへの蒸着の開始または停止を効率的に行えるシャッタ240が2枚の板の間に配置される。系は高真空チャンバ(図示せず)内に位置される。
【0091】
ターゲットを室温に保つことにより蒸発プロセスの温度較正を行った。シャッタ240を開く前に、水または他の汚染物質といった吸収された分子を蒸発させるためソース温度を120℃まで上昇させた。架橋剤、特に1,3,5−トリス(4−(フェニルエチニル)フェニル)ベンゼン(構造II)の効果的な蒸発は、150℃〜200℃の温度で得られることが明らかになった。エリプソメトリにより測定したところ、蒸発から10分後のターゲット・ウエハに蒸着した膜の平均膜厚は23nmであった。
【0092】
第2の実験では、蒸発の全過程においてターゲットを400℃に保った。その目的は、架橋剤がターゲットに到達し次第架橋反応を惹起することにあった。この高温のため、架橋剤の分子の一部がターゲットから再蒸発し、第1の実験と同一の蒸発条件において前の例よりも薄い膜が得られた。エリプソメトリで測定したところ、蒸発から10分後の厚さは1.5nmであった。蒸発時間30〜70分後には、厚さ5〜10nmの層が得られた。
【0093】
第3の実験では、ポリマ厚さ134nm(エリプソメトリにより測定)の低架橋型高温のスピンキャスト膜をターゲットとした(たとえば4,4’−ジフルオロベンゾフェノン、レソルシノールおよび3,5−ビス(4−(フェニルエチニル)−フェニル)フェノールから得られるポリアリールエーテルケトン・ポリマが使用可能であり、このポリマについては米国特許出願公開第2007/0296101号に記載されている)。架橋剤の蒸発後、エリプソメトリにより測定したところ、ターゲット全体の厚さはやはり134nmであった。しかしながら、詳細な解析から、1,3,5−トリス(4−(フェニルエチニル)フェニル)ベンゼン(構造II)と基板としてのポリマとの硬化混合物を含む厚さ9nm(エリプソメトリにより測定)の最上層を持つ層構造であることが明らかになった(この実験ではターゲットを400℃に保った)。硬化混合物の存在はエリプソメトリにより証明できる。すなわち、屈折率の測定値が、純粋な硬化架橋剤と純粋な低架橋型硬化ポリマとの値の間になる。したがって、この実験から、架橋剤は自由に拡散し、ポリマと局所的に反応することができ、それにより架橋密度が増大することが示される。得られる媒体の硬度は架橋密度に相関する。
【0094】
図6は、前記の実験により得られるデータ記憶媒体の例を示す。このデータ記憶媒体は、シリコンまたは別の材料でできている基板(145)と、たとえばポリアリールエーテルケトン・ポリマ層のような非架橋または微架橋の下層(151)(通常骨格中の架橋モノマーの割合が<10%)とを含む。データ記憶媒体は、高度に架橋し、硬化架橋剤(たとえば1,3,5−トリス(4−(フェニルエチニル)フェニル)ベンゼン)を含む最上層(152)をさらに含む。最上層の厚さは通常5〜10nmである。
【0095】
図7および図8はそれぞれ、低架橋ポリマの表面に書き込まれたビットのアレイ(図7)、および架橋剤の層が上に蒸着した低架橋ポリマから得られた層構造に書き込まれたビットのアレイ(図8)を示す。
【0096】
図7に示す低架橋ポリマは、前の段落に記載したポリアリールエーテルケトン・ポリマである。図7に示すビットが書き込まれた格子に使用した層構造も前の段落に記載されている。
【0097】
ビットの格子を書き込むには、ミリピード(millipede)を使用した。どちらの図も4つのブロックを各々異なる温度で書き込み、それぞれ下から上に100℃、230℃、367℃および500℃とした。各ブロック内の力は3本の線ごとに増大させる。それぞれ85nN、105nN、125nNおよび145nNである。
【0098】
図9は、それぞれ低架橋ポリマ(実線)の表面、および架橋剤の層が上に蒸着した低架橋ポリマから得られた層構造(破線)の表面に書き込まれた一定の深さ1nm(「1」)、2nm(「2」)、3nm(「3」)および4nm(「4」)を持つビットの温度と力の関係を示す。この実験に使用したポリマ/層構造は、前の段落に記載したポリマ/層構造と同一である。
【0099】
硬化架橋剤の最上層を持つサンプルの曲線はより大きな力に向かって変位していることから、予想どおり硬度の増加が明確に示される。実際に、架橋面が加わるとポリマ鎖の移動度が局所的に低下する。このため、ガラス転移温度が上昇し、より硬質の材料が形成される。この方法により、拡散プロセスを通じて架橋剤の供給が行われるため、上面から硬度勾配を示す媒体が得られると予想される。蒸発時間を変更し、最終的にターゲットの温度を変更することにより、様々な拡散長を持つ媒体を得ることができる。このようにして、書き込み条件、ビットの保持性およびチップの摩耗性を最適化するため、媒体の特性を調整することができる。
【0100】
ポリマおよび架橋剤の合成:
架橋剤は、米国特許第6,713,590号に記載される例示的な合成に従って合成することができる。また、1,3,5−トリス[4−(フェニルエチニル)フェニル]ベンゼンについては、S.V.リンデマン(S.V.Lindeman)ら、Russian Chemical Bulletin C/C of Izvestiia−Akademiia Nauk Seriia Khimicheskaia 1994、43、1873またはコナー(Connor)ら、Adv.Mater.2004、16、1525に従って合成することができる。
【0101】
ポリアリールエーテルケトン・ポリマは、米国特許出願公開第2007/0296101号に記載されているように合成される。ポリイミド・オリゴマについては、国際公開第2007/096359号に記載されているように合成される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面形状によりデータを記憶する、基板の表面にデータ記憶媒体を製造する方法であって、
(a)前記基板の前記表面に、少なくとも3つのアルキン基を含む架橋剤を付着するステップ、
(b)前記付着した架橋剤を硬化し、それにより前記基板の前記表面に架橋ポリマ層の形態でデータ記憶媒体を得るように前記基板に改質表面を作製するステップ
を含む、方法。
【請求項2】
ステップ(a)は前記架橋剤を蒸発させ、前記基板の前記表面に前記架橋剤の蒸気を付着することにより行われる、
請求項1に記載のデータ記憶媒体を製造する方法。
【請求項3】
前記架橋剤は構造ZRまたはZ’Rあるいはその両方を持ち、
式中、
ZおよびZ’は芳香族または脂肪族あるいはその両方の結合部分を表し、
Rは相互にランダムかつ独立に、アルキン基、および置換もしくは非置換芳香族部分または前記アルキンの末端炭素原子の水素原子あるいはその両方を含む部分を表す、
請求項1または2に記載のデータ記憶媒体を製造する方法。
【請求項4】
前記結合部分ZまたはZ’は
【化1】

【化2】

またはシリコン原子を表し、
式中、*は、RとZまたはZ’との間の結合を示し、
LはO、CH、C(CH、アリーレン部分または前記2つの芳香環の単結合を表す、
請求項3に記載のデータ記憶媒体を製造する方法。
【請求項5】
Rは相互にランダムかつ独立に、置換アルキン基、メタ−もしくはパラ−置換フェニレン部分またはフェニル基あるいはそれらの組合せを含む部分を表す、
請求項3または4に記載のデータ記憶媒体を製造する方法。
【請求項6】
式中、Rは相互にランダムかつ独立に下記式
【化3】

を表し、式中、*は、RとZまたはZ’との間の結合を示す、
請求項5に記載のデータ記憶媒体を製造する方法。
【請求項7】
前記架橋剤は300℃未満の温度で、好ましくは250℃未満の温度で、最も好ましくは150〜200℃の間の温度で蒸発できる、
請求項1ないし6のいずれか1項に記載のデータ記憶媒体を製造する方法。
【請求項8】
前記架橋剤は分子量が約900ダルトン未満、好ましくは270〜800ダルトンの間である、
請求項1ないし7のいずれか1項に記載のデータ記憶媒体を製造する方法。
【請求項9】
前記基板はテンプレートであり、ステップ(b)に続き以下のステップ:
(c)ステップ(b)で作製された前記改質表面をターゲット層の表面に接触させ、それにより前記架橋ポリマ層および前記改質表面に隣接する前記ターゲット層を持つ前記基板を含むアセンブリを得るステップ、および
(d)ステップ(c)で得られた前記アセンブリの環境に液体を導入することで、前記データ記憶媒体が上にある前記ターゲット層を、前記ターゲット表面に少なくとも隣接する領域に移行するステップ
を行い、
ステップ(c)および(d)の前記ターゲット層は前記架橋ポリマ層の支持層であり、前記支持層の表面に前記データ記憶媒体が得られる、
請求項1ないし8のいずれか1項に記載のデータ記憶媒体を製造する方法。
【請求項10】
前記テンプレートの前記表面は親水性表面であり、ステップ(d)で導入される前記液体は極性液体を含む、
請求項9に記載のデータ記憶媒体を製造する方法。
【請求項11】
前記テンプレートの前記表面は、雲母基板、フレーム・アニール処理ガラス基板、シリコン基板上のシリコン−オキシド層および(100)表面ペロブスカイト基板塩層のうちの1つの表面を含む、
請求項9または10に記載のデータ記憶媒体を製造する方法。
【請求項12】
ステップ(a)において前記架橋剤と、少なくとも2つのアルキン基を含むコモノマとの混合物が前記基板の前記表面に付着され、ステップ(b)において前記付着した架橋剤および前記付着したコモノマの前記混合物は硬化され、それにより前記架橋ポリマ層を作製し、改質表面を得る、
請求項9ないし11のいずれか1項に記載のデータ記憶媒体を製造する方法。
【請求項13】
前記基板はアルキン基を含有する1種または複数種の架橋性ポリマを含む支持層であり、ステップ(b)において前記付着した架橋剤および前記架橋性ポリマは硬化され、それにより架橋ポリマ層を作製して前記支持層の表面に前記データ記憶媒体を得る、
請求項1ないし8のいずれか1項に記載のデータ記憶媒体を製造する方法。
【請求項14】
前記支持層は1種または複数種のポリアリールエーテルケトン・ポリマまたはポリイミド・オリゴマあるいはその両方を含み、前記1種または複数種のポリアリールエーテルケトン・ポリマまたはポリイミド・オリゴマあるいはその両方は各々少なくとも2つの末端を持ち、各末端は2つ以上のフェニルエチニル部分を持つ、請求項13に記載のデータ記憶媒体を製造する方法。
【請求項15】
ステップ(b)は330℃〜450℃、好ましくは350℃〜450℃、最も好ましくは400℃〜450℃の間の温度で行われる、
請求項1ないし14のいずれか1項に記載のデータ記憶媒体を製造する方法。
【請求項16】
前記データ記憶媒体の厚さは少なくとも5nmである、
請求項1ないし15のいずれか1項に記載のデータ記憶媒体を製造する方法。
【請求項17】
ステップ(a)はプラズマ蒸着により行われる、
請求項1ないし16のいずれか1項に記載のデータ記憶媒体を製造する方法。
【請求項18】
請求項1ないし17のいずれか1項に記載の方法により得られる、表面形状によりデータを記憶するデータ記憶媒体。
【請求項19】
請求項18に記載の、表面形状に特徴よりデータを記憶するデータ記憶媒体と、前記データ記憶媒体に記憶される前記データの書き込みまたは読み取りあるいはその両方を行うための少なくとも1つのプローブと
を含む、データ記憶装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2012−506598(P2012−506598A)
【公表日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−532744(P2011−532744)
【出願日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際出願番号】PCT/IB2009/054536
【国際公開番号】WO2010/046814
【国際公開日】平成22年4月29日(2010.4.29)
【出願人】(390009531)インターナショナル・ビジネス・マシーンズ・コーポレーション (4,084)
【氏名又は名称原語表記】INTERNATIONAL BUSINESS MASCHINES CORPORATION