説明

高密度リポ蛋白測定装置および分離方法

【課題】
本発明は、従来技術の欠点を回避し、より迅速に、かつ複雑化された付加的装置を有さずに行うことができ、より迅速でより簡単なHDLコレステロール測定を行うことができる。生物学的液体から非−HDLリポタンパクを分離する方法を提供することを目的とする。
【解決手段】
沈澱剤によって沈澱を生成するLDLリポタンパク,VLDLリポタンパク,カイロミクロンから、沈澱を生成しないHDLリポタンパクを分画した後、従来の遠心分離法の代わりにフィルタろ過法によって生成した沈澱物を除去することによって血清中のHDLリポタンパクを分離する。フィルタとしては親水性セルロース混合エステルが好ましく、孔径が0.8μm以下のものが用いられる。フィルタろ過法を採用することにより、従来の遠心分離法における煩雑な操作,長い所要時間を簡略化,短縮化することが可能となった。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分離器具、特に液体中の特定成分を分離する分離器具に関し、更に詳しくは、血液などの体液中の高比重リポタンパク(以下、HDLと略記する)分画中に含まれる特定成分、特に脂質成分の分離する分離器具に関する。及びその測定に用いる高密度リポ蛋白測定装置ないしHDLリポタンパク分離法に関する。
【背景技術】
【0002】
HDLリポタンパク分離法は、例えば、特開平3−99268号公報(特許文献1)に示されている。
【0003】
血液中のHDLコレステロールは、冠状動脈硬化症の危険予防因子であることから、多くの施設で成人病予防検査の一環としてその測定が行われている。
【0004】
血液,血漿および血清中の全コレステロールは、冠状動脈性心疾患の程度に関する危険性を評価するために最も良く知られているパラメーターの1つである。
【0005】
しかし、全コレステロールの濃度は、個々の危険性評価のための唯一の限定された値である。
【0006】
一方では低比重のリポタンパク[低比重リポタンパク(Low Density Lipoprotein)=LDL]中の、他方では高比重のリポタンパク[高比重リポタンパク(High Density Lipoprotein)=HDL]中のコレステロールの測定は、より有意である。
【0007】
疫学的および臨床学的研究によって、LDLコレステロールと冠状動脈性心疾患の間に陽性の相互関係があり、HDLコレステロールと冠状動脈性心疾患の間には陰性の相互関係があることが分かった。
【0008】
このように相互関係が密に類似しているので、HDLおよび全コレステロールの測定は危険性の評価に充分である。
【0009】
この方法は、現在、診断において好ましく行われている。
【0010】
HDLコレステロールについては、HDLリポタンパクを他のリポタンパクから分画後、上清(上澄液)中のHDLコレステロールを酵素法などによって測定している。
【0011】
HDLコレステロールを独立して測定するために、存在する他のリポタンパク類(LDL,VLDL,カイロミクロン)を分離しなければならない。分離方法は異なる表面電荷(担体として紙またはアガロースによる電気泳動)、またはアポリポタンパクの違い(特異性抗体を用いる免疫化学的方法)に基づく方法がある。
【0012】
さらに、超遠心力を用いる方法,2価の金属イオンとポリアニオンにより他のリポタンパクを沈澱させて除去する方法がある。
【0013】
超遠心法は超遠心機を使用するので、操作が煩雑でかつ多大な時間を必要とすることから、現在の測定に用いられる分画法の主流は沈澱法となっている。
【0014】
2価の金属イオンとポリアニオンを組合せたポリアニオン沈澱剤としては、ヘパリン−Ca2+,ヘパリン−Mn2+,リンタングステン酸−Mg2+,デキストラン硫酸−Mg2+が用いられる。
【0015】
これらのポリアニオン沈澱剤を用いる方法はほぼ共通しており、次のとおりである。
【0016】
すなわち、血清に上記沈澱剤を加えて5〜20分間(使用沈澱剤により異なる)放置して沈澱を十分生成させた後、3000rpmで10〜15分間遠心分離を行う。遠心分離後、上清(HLD画分)をとり、37℃でコレステロール発色反応又は酵素電極法により定量する。
【0017】
【特許文献1】特開平3−99268号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
しかし、上記で述べたように、沈澱剤を用いるHDLコレステロールの測定方法は、沈澱生成以外に遠心分離操作が必要なため、超遠心法ほどではないにせよ操作が煩雑でかつ時間がかかるという欠点が指摘されている。
【0019】
すなわち、遠心分離の正味所要時間は10分間としても、検体の移しかえ,分離管の準備,遠心分離のバランスとり,回転速度の上昇と減速等に必要な時間を加えると少なくとも20分間を要してしまう。また検体の取違えが発生する恐れもある。
【0020】
上記沈澱法と原理は全く異なるが、すでに実用化されている方法として電気泳動法がある。この方法は、電気泳動によってリポタンパクがHDL,LDL,VLDLにそれぞれ分画されるため、HDL画分のコレステロールを染色してデンシトメトリーにより定量する方法であるが、泳動と染色とに時間を要し、高速化したとしても沈澱法と大差ない測定速度にしかならない。
【0021】
本発明は、上記の問題に鑑み、複雑化された付加的装置を備えることなく、簡単な構成により、生物学的液体から非−HDLリポタンパクを迅速に分離することができる分離方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明は、非−HDLリポタンパクを分離する担体に生物学的液体を流通させて生物学的液体から非−HDLリポタンパクを分離することを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、簡単な構成により、生物学的液体から非−HDLリポタンパクを迅速に分離することができる分離方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明の実施例の概要から説明する。
【0025】
本発明によるHDLリポタンパクの分離法は、血清にポリアニオン沈澱試薬を加えてLDLリポタンパク,VLDLリポタンパク,カイロミクロンの沈澱物を生成させ、生成した沈澱物をフィルタによって除去することを特徴としている。
【0026】
また、この分離法を用いるHDLコレステロールの定量測定法は、上記分離法によって分離されたHDLリポタンパクを対象に比色法又は酵素電極法により行われることを特徴とする。
【0027】
上記のように本発明では、沈澱剤によって沈澱を生成するLDLリポタンパク,VLDLリポタンパク,カイロミクロンから、沈澱を生成しないHDLリポタンパクを分画した後、従来の遠心分離法の代わりにフィルタろ過法によって生成した沈澱物を除去することによって血清中のHDLリポタンパクを分離する。
【0028】
フィルタとしては親水性セルロース混合エステルが好ましく、孔径が0.8μm以下のものが用いられる。フィルタろ過法を採用することにより、従来の遠心分離法における煩雑な操作,長い所要時間を簡略化,短縮化することが可能となった。
【0029】
本発明によるHDLコレステロールの測定法では、血清中のHDLリポタンパクをLDLリポタンパク,VLDLリポタンパク,カイロミクロンから分画するのにポリアニオン沈澱試験を用い、生成した沈澱物を0.8μm以下の親水性フィルタでろ過し、得られたHDLリポタンパク画分について比色法又は酵素電極法により定量測定することを基本としている。
【0030】
ポリアニオン沈澱剤としては、ヘパリン−Ca沈澱剤,リンタングステン−Mg沈澱剤,デキストラン硫酸Mg−リンタングステンMg沈澱剤、等電点分画−リンタングステン沈澱剤の4種類が、HDLコレステロール測定の精度,正確さのいずれも優れているため広く用いられており、本発明においてもこれら4種類のいずれの沈澱剤も使用可能である。
【0031】
沈澱剤は沈澱剤の溶液,エマルジョンまたは懸濁液をフィルタに染み込ませ、次いで乾燥することによってフィルタに適用する。この方法においてpH緩衝剤または界面活性剤などの添加剤を適用することができる。
【0032】
一般に市販されているフィルタ製品などを挙げることができる。フィルタの材料としてセルロース,ナイロン,ポリスルホンなどを挙げることができるが、好ましくはセルロースで、特にセルロースアセテートとニトロセルロースの混合エステルが好ましい。
【0033】
フィルタの好ましい仕様は孔径が0.8μm以下,膜厚50〜400μm,膜重量3〜10mg/cm2,流量(差圧0.07Mpa)水90〜150ml/分/cm2である。
【0034】
フィルタには、分画試薬のほか、所望に応じて界面活性剤,緩衝剤等を添加することができる。フィルタの分画濾過が行われる層では、試料溶液を滴下した際、分画試薬によって測定に供しないリポタンパク成分は沈澱を生成し、構成層内に捕捉される。測定されるHDL成分は、沈澱を生成せず、下層へと浸透する。
【0035】
特に界面活性剤は液体試料を本発明の素子に適用した際の浸透速度の調節等有効に用いることができる。
【0036】
使用可能な界面活性剤としては、イオン性(アニオン性又はカチオン性),非イオン性を問わず使用することが可能であるが、非イオン性界面活性剤が有効である。
【0037】
非イオン性界面活性剤の例としては、例えばエステル型のグリセリン脂肪酸エステル,ソルビタン脂肪酸エステル,エーテル型のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル,ポリオキシエチレンアルキルエーテル,エステルエーテル型のポリエチレングリコール脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0038】
これらの界面活性剤は液体試料の受答層への浸透速度を調節することができる。上記界面活性剤は広範に選択されたものを用いることが可能であるが、塗布液の重量に対して〜10重量%程度用いることができる。
【0039】
沈澱剤を含有している担体に、試料を接触させることによって非−HDLリポタンパクを沈澱させる。沈澱物形成は、1分も経たない後に、最も好ましくは約10秒の後に完了し、該液体を担体物質から取り出すことができる。これは、重力を用いることによって連続的にまたは断続的に行うことができる。
【0040】
本発明によって非−HDLリポタンパクを分離することができる生物学的液体は、特に、全血,血清および血漿である。
【0041】
本発明の方法は、他に、公知の方法よりも非常に優れている点を有している。非常に少量の液体試料を用いることも可能である。本発明の器具の取り扱いは、非常に簡単である。
【0042】
血液の全てのタイプ、全血でさえ、最初に血球に関する分離パッドを使用すると、容易に使用することができる。非−HDLリポタンパクの分離は、60秒以下で行うことができる。
【0043】
非−HDLリポタンパクの分離に関する本発明の方法は、特に好都合には、試験片上でのHDLコレステロールの定量測定に関する方法において用いることができる。
【0044】
このため、非−HDLリポタンパクを上記方法に従って分離した液体を、試験反応、例えばコレステロールに関する試験反応を行うために必要なまたは/および有用な試薬と接触させる。
【0045】
それらは、例えば、多孔性担体上にフィルムまたはコーティングの形態で存在することもできる。このような試薬形態の具体例は、当技術分野の当業者には公知である。
【0046】
以下、個々の実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0047】
フィルタとして親水性セルロース混合エステルを材料とする直径5mmのメンブレンディスクフィルタを支持体上に固定化した。フィルタに接触するように試料容器を固定化した。サンプルがフィルタ上に添加されると、フィルタを介して測定液が染み出し試料容器に溜まる。
【0048】
測定装置はアークレイ スポットケムSP−4430、測定試薬にスポットケムHDL−コレステロールキット(デキストラン硫酸マグネシウム沈澱法)を組合せてHDL定量を行った。
【0049】
測定に用いたHDLコレステロールキットはHDLの分画法としてデキストラン硫酸マグネシウム沈澱法を用いており、サンプルと沈澱試薬を混合後遠心分離にてHDLを分画するようになっている。
【0050】
フィルタを用いた実施例ではこの遠心分離過程を省きフィルタにより処理したHDL分画液をサンプルとしてそのまま使用することでHDL定量を行った。
【0051】
HDL分画試薬(アークレイ)50μLをコレステストNキャリブレータ(第一化学)50μLに加えて非HDLリポ蛋白を沈澱させた。沈澱液をフィルタに添加し染み出した溶液をアークレイ スポットケムHDLコレステロールキットを用いてHDLを定量した。
【0052】
比較例では沈澱液を遠心分離(3000rpm,10分)した液をサンプルとしてHDL定量を行った。
【0053】
種々の素材を使用したフィルタを一枚用いて非HDLリポ蛋白沈澱液を処理し、アークレイ スポットケムSP−4430とスポットケムHDL−コレステロールキット(デキストラン硫酸マグネシウム沈澱法)を組合せてHDL定量を行った結果を表1に示す。
【0054】
親水性セルロース混合エステル(ニトロセルロースとセルロースアセテート)を使用したフィルタであるGN−4が沈澱法との測定偏差が小さくなり、優れた非HDLリポ蛋白分画効果を示すことを確認した。
【0055】
【表1】

【実施例2】
【0056】
サンプルにHDLキャリブレータ(和光純薬)を使用した以外は実施例1と同様な条件で検討を行った。結果を表2に示す。実施例1と同様にGN−4をフィルタとして用いた場合に沈澱法との測定偏差が小さくなり、優れた非HDLリポ蛋白分画効果を示すことを確認した。
【0057】
【表2】

【実施例3】
【0058】
本発明の高密度リポ蛋白測定装置に関する実施例を図1から図8を引用して説明する。
【0059】
図1に示す有底筒状の試料容器1は、上に支持体2を着脱自在に載置する。支持体2は筒形状を有し、内側底部に分画用フィルタ3を有する。
【0060】
分画用フィルタ3は、ニトロセルロース及び酢酸セルロースの混合物を主な材料とし、その材料は孔径が0.8μm以下の微細孔を有する。
【0061】
この分画用フィルタ3に非−HDLリポタンパクに対する沈澱剤を含有させて担体が形成される。分画用フィルタ3は、担体の礎材になっている。この担体が分離器具になる。
【0062】
試料注入容器4は、測定する試料が入っている。試料注入容器4より担体であるフィルタ3に試料を滴下する。生物学的液体である試料が分画用フィルタ3に流通して非−HDLリポタンパクが分離し、HDLリポタンパクが分画用フィルタ3を通過して試料容器1に流下する。
【0063】
このように、分画用フィルタ3に非−HDLリポタンパクに対する沈澱剤を含有させた担体を用いることにより、生物学的液体から非−HDLリポタンパクを迅速に分離することができる。
【0064】
また、分離器具は、分画用フィルタ3の担体で作られているので、複雑化された付加的装置を備えることなく、簡単な構成である。このため、取り扱い性がよく、手軽に容易に使用できる。
【0065】
図2,図3は、高密度リポ蛋白測定装置を示す。
【0066】
高密度リポ蛋白測定装置は、測定部20,信号処理部30,データ処理部40を有する。
【0067】
測定部20は、試料容器1,電位差測定装置50を有する。
【0068】
試料容器1は、内底側に測定される試料と接触する作用電極5および参照電極6が設けられる。試薬層7は作用電極5の上側に設けられる。この試薬層7は測定される試料と反応し、測定に寄与する。
【0069】
さて、最初、測定セル内へ試料注入容器4を用いて生物学的液体である試料を注入する。試料溶液中の沈澱分離された測定対象物質は測定対象物質と反応する試薬と反応し、作用電極5の表面に電荷が発生する。
【0070】
その結果、作用電極5上の界面電位が変化する。測定部20の電位差測定装置50での電位測定は、試料注入容器4による試料の注入前後での変化をリアルタイムでモニターし、信号処理部30、及びデータ処理部40で記録することで行う。
【0071】
作用電極5上の界面電位変化は、測定対象である測定物質の濃度に依存する。そのため、予め標準溶液である標準試料を測定して作成した検量線を元に、測定した電位変化値から未知濃度の試料の濃度を得ることができる。
【0072】
試料注入容器4は加圧式送液装置を使用することができる。また、生体成分測定時の夾雑物の電極表面への吸着による影響を低減のために、直鎖高分子ポリマーを電極上に物理吸着させて使用しても良い。
【0073】
直鎖高分子ポリマーとしては、メチルセルロース,アクリルアミド,デキストラン,ポリエチレングリコール等を使用すれば問題ない。
【0074】
参照電極6は、測定溶液中の作用電極の表面で起こる平衡反応あるいは化学反応に基づく電位変化を安定に測定するために、基準となる電位を与える。
【0075】
通常は参照電極6としては、飽和塩化カリウムを内部溶液に使用している銀・塩化銀電極、あるいは甘こう(カロメル)電極が用いられるが、測定する試料溶液の組成が一定の場合には、疑似電極として銀・塩化銀電極のみを使用しても問題はない。
【0076】
図4には加圧型分画素子を示す。有底筒状の試料容器1は、上に支持体2を着脱自在に載置する。支持体2は筒形状を有し、内側底部に分画用フィルタ3を有する。試料容器の上部には試料注入バルブおよび加圧ポンプ接続バルブがバルブ支持体に組み込まれて、支持体に固定化したフィルタを試料容器と挟み込んで接続されている。加圧ポンプ接続バルブにはマイクロポンプが接続されている。
【0077】
分画用フィルタ3は、ニトロセルロース及び酢酸セルロースの混合物を主な材料とし、その材料は孔径が0.8μm以下の微細孔を有する。
【0078】
この分画用フィルタ3に非−HDLリポタンパクに対する沈澱剤を含有させて担体が形成される。分画用フィルタ3は、担体の礎材になっている。この担体が分離器具になる。
【0079】
試料注入容器には、測定する試料が入っている。試料注入容器4より試料注入部に試料を注入する。その際、マイクロポンプを作動させ加圧することで生物学的液体である試料が分画用フィルタ3に流通して非−HDLリポタンパクが分離し、HDLリポタンパクが分画用フィルタ3を通過して試料容器1に流下する。
【0080】
このように、分画用フィルタ3に非−HDLリポタンパクに対する沈澱剤を含有させた担体を用いることにより、生物学的液体から非−HDLリポタンパクを迅速に分離することができる。
【0081】
図5には陰圧型分画素子を示す。シリンジ形試料容器を用い、支持体2を着脱自在に載置する。支持体2は筒形状を有し、内側底部に分画用フィルタ3を有する。試料容器の上部には試料注入バルブがバルブ支持体に組み込まれて、支持体に固定化したフィルタを押さえ込む形で試料容器に接続されている。試料容器の下部にはシリンジポンプが接続されている。
【0082】
分画用フィルタ3は、ニトロセルロース及び酢酸セルロースの混合物を主な材料とし、その材料は孔径が0.8μm以下の微細孔を有する。
【0083】
この分画用フィルタ3に非−HDLリポタンパクに対する沈澱剤を含有させて担体が形成される。分画用フィルタ3は、担体の礎材になっている。この担体が分離器具になる。
【0084】
試料注入容器には、測定する試料が入っている。試料注入容器4より試料注入部に試料を注入する。その際、シリンジポンプを作動させ陰圧により生物学的液体である試料が分画用フィルタ3に流通して非−HDLリポタンパクが分離し、HDLリポタンパクが分画用フィルタ3を通過して試料容器に流下する。
【0085】
このように、分画用フィルタ3に非−HDLリポタンパクに対する沈澱剤を含有させた担体を用いることにより、生物学的液体から非−HDLリポタンパクを迅速に分離することができる。
【0086】
図6には全血用一体型分析素子を示す。電極支持体の上に分画用フィルタおよびこのフィルタと接触する作用電極5および参照電極6が設けられる。試薬層7は作用電極5の上側に設けられる。全血試料を用いるために分画用のフィルタに接して血球分離フィルタを設ける。試薬層7は測定される試料と反応し、測定に寄与する。
【0087】
分画用フィルタ3は、ニトロセルロース及び酢酸セルロースの混合物を主な材料とし、その材料は孔径が0.8μm以下の微細孔を有する。
【0088】
血球分離フィルタには一般に市販されているフィルタ製品などを挙げることができる。フィルタの材料としてセルロース,ナイロン,ポリスルホンなどを挙げることができる。
【0089】
分画用の分画用フィルタ3に非−HDLリポタンパクに対する沈澱剤を含有させて担体が形成される。分画用フィルタ3は、担体の礎材になっている。この担体が分離器具になる。
【0090】
生物学的液体である全血試料は血球分離フィルタに滴下されると、血球が分離され血漿が分画用の分画用フィルタ3に流通して、非−HDLリポタンパクが分離し、HDLリポタンパクが分画用フィルタ3を通過する。試料溶液中の沈澱分離された測定対象物質は測定対象物質と反応する試薬と反応し、作用電極5の表面に電荷が発生する。その結果、作用電極5上の界面電位が変化する。
【0091】
このように、分画用フィルタ3に非−HDLリポタンパクに対する沈澱剤を含有させた担体を用いることにより、生物学的液体から非−HDLリポタンパクを迅速に分離することができる。
【0092】
図7には加圧型全血用一体型測定素子を示す。電極支持体の上に分画用フィルタおよびこのフィルタと接触する作用電極5および参照電極6が設けられる。試薬層7は作用電極5の上側に設けられる。全血試料を用いるために分画用フィルタに接して血球分離フィルタを設ける。試料容器の上部には試料注入バルブおよび加圧ポンプ接続バルブがバルブ支持体に組み込まれて、支持体に固定化したフィルタを試料容器と挟み込んで接続されている。加圧ポンプ接続バルブにはマイクロポンプが接続されている。試薬層7は測定される試料と反応し、測定に寄与する。
【0093】
試料注入容器には、測定する試料が入っている。試料注入容器4より試料注入部に試料を注入する。その際、マイクロポンプを作動させ加圧することで生物学的液体である全血試料が分画用フィルタ3に流通して非−HDLリポタンパクが分離し、HDLリポタンパクが分画用フィルタ3を通過する。試料溶液中の沈澱分離された測定対象物質は測定対象物質と反応する試薬と反応し、作用電極5の表面に電荷が発生する。その結果、作用電極5上の界面電位が変化する。
【0094】
分画用フィルタ3は、ニトロセルロース及び酢酸セルロースの混合物を主な材料とし、その材料は孔径が0.8μm以下の微細孔を有する。
【0095】
血球分離フィルタには一般に市販されているフィルタ製品などを挙げることができる。フィルタの材料としてセルロース,ナイロン,ポリスルホンなどを挙げることができる。
【0096】
この分画用フィルタ3に非−HDLリポタンパクに対する沈澱剤を含有させて担体が形成される。分画用フィルタ3は、担体の礎材になっている。この担体が分離器具になる。
【0097】
このように、分画用フィルタ3に非−HDLリポタンパクに対する沈澱剤を含有させた担体を用いることにより、生物学的液体から非−HDLリポタンパクを迅速に分離することができる。
【0098】
図8には陰圧型全血用一体型分析素子を示す。電極支持体の上にフィルタおよびフィルタと接触する作用電極5および参照電極6が設けられる。試薬層7は作用電極5の上側に設けられる。全血試料を用いるために分画用フィルタに接して血球分離フィルタを設ける。酵素試薬層の下部にはマイクロポンプが接続されている。
【0099】
分画用フィルタ3は、ニトロセルロース及び酢酸セルロースの混合物を主な材料とし、その材料は孔径が0.8μm以下の微細孔を有する。
【0100】
試料注入容器には、測定する全血試料が入っている。試料注入容器4より全血フィルタに試料を注入する。その際、マイクロポンプを作動させ陰圧とすることで生物学的液体である試料が分画用フィルタ3に流通して非−HDLリポタンパクが分離し、HDLリポタンパクが分画用フィルタ3を通過する。試料溶液中の沈澱分離された測定対象物質は測定対象物質と反応する試薬と反応し、作用電極5の表面に電荷が発生する。その結果、作用電極5上の界面電位が変化する。
【0101】
血球分離フィルタには一般に市販されているフィルタ製品などを挙げることができる。フィルタの材料としてセルロース,ナイロン,ポリスルホンなどを挙げることができる。
【0102】
この分画用フィルタ3に非−HDLリポタンパクに対する沈澱剤を含有させて担体が形成される。分画用フィルタ3は、担体の礎材になっている。この担体が分離器具になる。
【0103】
このように、分画用フィルタ3に非−HDLリポタンパクに対する沈澱剤を含有させた担体を用いることにより、生物学的液体から非−HDLリポタンパクを迅速に分離することができる。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】本発明の実施例3に係るもので、試料容器、及びフィルタの分離器具等を示す図。
【図2】本発明の実施例3に係るもので、作用電極,参照電極を備えた試料容器等を示す図。
【図3】本発明の実施例3に係るもので、高密度リポ蛋白測定装置を示す図。
【図4】本発明の実施例3に係るもので、加圧ポンプを備えた試料容器、及びフィルタの分離器具等を示す図。
【図5】本発明の実施例3に係るもので、シリンジポンプを備えた試料容器、及びフィルタの分離器具等を示す図。
【図6】本発明の実施例3に係るもので、全血試料を用いることが可能な作用電極,参照電極を備えた試料容器等を示す図。
【図7】本発明の実施例3に係るもので、全血試料を用いることが可能な加圧ポンプを備えた試料容器、及びフィルタの分離器具等を示す図。
【図8】本発明の実施例3に係るもので、全血試料を用いることが可能なシリンジポンプを備えた試料容器、及びフィルタの分離器具等を示す図。
【符号の説明】
【0105】
1 試料容器
2 支持体
3 分画用フィルタ
4 試料注入容器
5 作用電極
6 参照電極
7 試薬層
20 測定部
30 信号処理部
40 データ処理部
50 電位差測定装置
60 試料注入バルブ
70 加圧ポンプ接続バルブ
80 バルブ支持体
90 マイクロポンプ
100 シリンジポンプ
110 シリンジ形試料容器
120 電極支持体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非−HDLリポタンパクを分離する担体に生物学的液体を流通させて生物学的液体から非−HDLリポタンパクを分離することを特徴とする分離方法。
【請求項2】
請求項1記載の分離方法において、
前記担体は非−HDLリポタンパクに対する沈澱剤を含有することを特徴とする分離方法。
【請求項3】
生物学的液体から非−HDLリポタンパクを分離する沈澱剤を含有している担体を有する分離器具。
【請求項4】
ニトロセルロース及び酢酸セルロースの混合物を材料とする担体に非−HDLリポタンパクに対する沈澱剤を含有させ、
沈澱剤の含有する前記担体に生物学的液体を流通させて生物学的液体から非−HDLリポタンパクを分離することを特徴とする分離方法。
【請求項5】
非−HDLリポタンパクを含有している生物学的液体と非−HDLリポタンパクに対する沈澱剤を混合することにより非−HDLリポタンパクの沈澱工程を行った後に、ニトロセルロース及び酢酸セルロースの混合物を材料とする担体に前記沈澱工程で沈澱された沈澱液を流通させて生物学的液体から非−HDLリポタンパクを分離することを特徴とする分離方法。
【請求項6】
ニトロセルロース及び酢酸セルロースの混合物を材料とし、孔径が0.8μm以下の担体に非−HDLリポタンパクに対する沈澱剤を含有させ、前記担体に生物学的液体を流通させて生物学的液体から非−HDLリポタンパクを分離することを特徴とする分離方法。
【請求項7】
非−HDLリポタンパクを含有している生物学的液体と非−HDLリポタンパクに対する沈澱剤を混合することにより非−HDLリポタンパクの沈澱工程を行った後に、ニトロセルロース及び酢酸セルロースの混合物を材料とし、孔径が0.8μm以下の担体に前記沈澱工程で沈澱させた沈澱液を流通させて生物学的液体から非−HDLリポタンパクを分離することを特徴とする分離方法。
【請求項8】
ニトロセルロース及び酢酸セルロースの混合物を材料とし、孔径が0.8μm以下のフィルタに非−HDLリポタンパクに対する沈澱剤を含有している担体を有することを特徴とする分離器具。
【請求項9】
測定対象物質を含む測定溶液が導入される容器と、
前記容器内に設けられ、前記測定溶液と接触する作用電極と、
前記溶液内に設けられ、前記測定溶液と接触する参照電極と、
前記作用電極の界面電位を測定する電位計を備える測定装置において、
前記作用電極に測定対象物質と反応する試薬層を設けたことを特徴とする高密度リポ蛋白測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−13164(P2009−13164A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−131466(P2008−131466)
【出願日】平成20年5月20日(2008.5.20)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】