説明

高層建築物における鉄骨組方法

【目的】 作業ステージを建築物の鉄骨組に転用する上で作業ステージの付属物撤去に仮設足場を必要とすることなく、容易に解体撤去できるようにする。
【構成】 上弦材4aと下弦材4b及びこれらをつなぐ束材4cを主体としたトラス組構造の梁4を備えた建築用作業ステージ3を、昇降装置7を介して上昇させつつ高層建築物の最上階まで構築する方法において、最上階より一階下まで構築後に、昇降装置7により前記梁4を前記階下の上面の適宣位置まで下降させた状態で梁4の下部に設置されている天井クレーン8を解体撤去し、次いで梁4をさらに下降させて束材4cを前記階下の柱2の頂部に連結し、さらに下弦材4bを撤去することで、作業用ステージ3の上弦材4a及び束材4cを建築物の最上階における鉄骨組みとする。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は作業ステージを利用して最上階の鉄骨組みを行えるようにした高層建築物における鉄骨組方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】高層建築物の建築方法として、屋根構造を持った作業ステージを各階の構築毎に上昇させつつ、これに設けた天井クレーンにより資材を吊り上げながら工事を行ない、全天候に対応させるとともに、安全性を高めた工法がある。また工事完了後この作業ステージを撤去せずに、最上階の鉄骨組構造に転用する方法も開発され、例えば特開平03−87438号公報に示す高層建築物における鉄骨材の構築方法が開示されている。
【0003】この構築方法では建築用作業ステージのトラス組構造の梁を順次上昇させつつその下部に建築物を構築し、構築が完了すると、梁を構築部分の最上部に設置し、これをそのまま最上階における鉄骨組構造に転用するものである。
【0004】前記梁を構成するトラス組構造は上弦材と下弦材及びこれらをつなぐ束材とからなるものであり、上弦材を最上階の梁とし下弦材をその1階下の梁とし、束材を下方に延長して既設の柱の頂部に連結することにより2階分の鉄骨組構造としていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、作業ステージには天井走行クレーン及びその付属物が設けられているため、転用するに当たってはこれら付属物を解体する必要があり、束材の連結後はまず仮設足場を組立て、その後これを足場として解体作業を行わなければならず、仮設足場を要する分だけ作業工数がかかっていた。
【0006】本発明は以上の問題を解決するものであって、その目的は、作業ステージを建築物の鉄骨組に転用する上で作業ステージの付属物撤去に仮設足場を必要とすることなく、容易に解体撤去できるようにした高層建築物における鉄骨組方法を提供するものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するため、本発明は、上弦材と下弦材及びこれらをつなぐ束材を主体としたトラス組構造の梁を備えた建築用作業ステージを昇降装置を介して上昇させつつ高層建築物の最上階まで構築する方法において、前記最上階より一階下まで構築後に、前記昇降装置により前記梁を前記階下の上面の適宣位置まで下降させた状態で前記梁の下部に設置されている天井クレーンを解体撤去し、次いで前記梁をさらに下降させて前記束材を前記階下の柱の頂部に連結し、さらに前記下弦材を解体撤去することで、前記作業用ステージの上弦材と束材を建築物の最上階における鉄骨組みとすることを特徴とする。
【0008】
【作用】以上の構成によれば、作業用ステージは該当する建築分の最上階の1階分の骨組みに転用される。転用にあたり、天井クレーンその多の付属物の解体撤去作業は、階下の床面を足場として行なえるため、解体のための仮設支保工が不要となる。
【0009】
【実施例】以下、本発明の一実施例を図面を用いて詳細に説明する。図1(a)〜(d)は本発明方法を26階建てのPCa構造のビルの構築に適用した場合における最上階の構築手順の説明図である。図におけるビルは梁1及び柱2をラーメン構造に組立てたPCa造りのビルであり、(a)においては最上階の1階下である25階まで建築が完了し、その上部を所定高さをおいて作業ステージ3によって覆っており、最上階の構築準備状態となっている。
【0010】作業ステージ3は、梁4と、梁4の外端部に垂設され、ビルの既設部分の外壁に仮固定された複数のラック柱5の外周に挿通されたさや管6と、さや管6の上端に配置され、前記ラック柱5に係合して作業ステージ3を昇降動作させる複数の昇降装置7と、梁4の下部に走行可能に配置された天井クレーン8及びその付属物などを備えたもので、昇降装置7は図示しないが、前記ラック柱5に歯合するピニオン及びこのピニオンの正逆転用駆動モータを備えている。
【0011】梁4は、上弦材4aと下弦材4b及びこれらをつなぐ束材4cとを主体に構成され、これらの間をブレース(斜桁)4dで連結したトラス組構造のもので、上弦材4aの上部には図示しない仮設屋根が張設され、これによって全天候に対応した工事を可能としている。
【0012】上弦材4a及び束材4cは後に建物の最上階の部材として転用されるもので、それを前提として部材の断面が決定され、下弦材4bの部材断面は、そうして決定された上弦材4a及び束材4cの部材を使用したトラスが作業ステージとして要求される構造的耐力を発揮できる必要最小限の部材断面とする。また、束材4cは、既設の柱の直上の位置に配置させることが望ましい。
【0013】25階の構築完了後、昇降装置7を下降動作させることにより、梁4は下降し、天井クレーン8は26階の床面付近に近づき、したがってこの状態で下降停止させることにより、(b)に示すように、天井クレーン8及びクレーンガータ等の付属物を仮設足場を要することなく解体撤去することができる。
【0014】撤去作業終了後、さらに昇降装置7を下降動作することにより、(c)に示すように、下弦材4b及び束材は26階の床面に着底する。この状態では束材4bは既設柱2と同一鉛直線上に配置される。この段階で束材を既設柱2の上端にボルトなどを介して連結し、連結作業終了後は下弦材4b及びブレース4dを撤去するとともに、ラック柱5,さや管6及び昇降装置7その他の付属物を撤去することで、最上階である26階部分の鉄骨組構造を得ることができる。
【0015】下弦材及びブレース4dともに25階の天井面を足場として撤去作業が可能である。また、撤去した下弦材4bはペントハウス等の鉄骨組み構造に転用でき、これらの移動及び建物外壁面における撤去作業にはジブクレーン等が用いられる。
【0016】この後(d)に示すように、上弦材4a及び束材4cの周囲に必要に応じて鉄筋を配筋し、型枠をセットし、コンクリートを打設し、SC造り,またはSRC造りにより最上階である26階を完成できるのである。
【0017】なお、最上階をS造としてもよく、さらには、最上階をペントハウスとして利用し、ペントハウスとして利用しない部分の作業ステージの部材もそのまま残してもよい。この場合は、周囲に目隠し用の囲い板を張る。
【0018】
【発明の効果】以上実施例によって詳細に説明したように、本発明にかかる高層建築物における鉄骨組方法にあっては、作業ステージを建物の最上階の鉄骨組に転用するにあたり、作業ステージの付属物の解体撤去に仮設足場を要することがないため、工期の短縮を図る上で好適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)〜(d)は本発明の構築手順を示す説明図である。
【符号の説明】
1 既設梁
2 既設柱
3 作業ステージ
4 梁
4a 上弦材
4b 下弦材
4c 束材
7 昇降装置
8 天井クレーン

【特許請求の範囲】
【請求項1】 上弦材と下弦材及びこれらをつなぐ束材を主体としたトラス組構造の梁を備えた建築用作業ステージを、昇降装置を介して上昇させつつ高層建築物の最上階まで構築する方法において、前記最上階より一階下まで構築後に、前記昇降装置により前記梁を前記階下の上面の適宣位置まで下降させた状態で前記梁の下部に設置されている天井クレーンを解体撤去し、次いで前記梁をさらに下降させて前記束材を前記階下の柱の頂部に連結し、さらに前記下弦材を撤去することで、前記作業用ステージの上弦材及び束材を建築物の最上階における鉄骨組みとすることを特徴とする高層建築物における鉄骨組方法。

【図1】
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