高帯域かつオープンな配線ネットワーク
【課題】機内娯楽、キャビンサービス、および衛星インターネットサブシステムをモバイルプラットフォーム上に組込んだ、オープンなローカルエリアネットワークLANを提供する。
【解決手段】LANへのアクセスを提供するため開放型システム間相互接続OSIレイヤ3ルーティングを実行する少なくとも1つのエリアディストリビューションボックスADBを備え、ADBは、複数の異なるプラットフォームのサブシステムにより共通の周波数帯を使用してLANへのOSIレイヤ2接続を提供する少なくとも1つのスイッチとして構成され、ADBと通信する複数のシートエレクトロニクスボックスSEBを備え、各SEBが、SEBに対応する前記モバイルプラットフォーム上の座席のグループに関連付けられた仮想ローカルエリアネットワークVLANを提供するとともに、保護されたOSIレイヤ2ポートを各座席に提供するように構成されている。
【解決手段】LANへのアクセスを提供するため開放型システム間相互接続OSIレイヤ3ルーティングを実行する少なくとも1つのエリアディストリビューションボックスADBを備え、ADBは、複数の異なるプラットフォームのサブシステムにより共通の周波数帯を使用してLANへのOSIレイヤ2接続を提供する少なくとも1つのスイッチとして構成され、ADBと通信する複数のシートエレクトロニクスボックスSEBを備え、各SEBが、SEBに対応する前記モバイルプラットフォーム上の座席のグループに関連付けられた仮想ローカルエリアネットワークVLANを提供するとともに、保護されたOSIレイヤ2ポートを各座席に提供するように構成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
この出願は、2003年5月21日に出願された米国仮特許出願第60/472,575号の利益を主張する。
【背景技術】
【0002】
発明の分野
この発明は、モバイルプラットフォーム上の通信システムに関し、より具体的には、機内娯楽、キャビンサービス、および衛星インターネット(Internet)サブシステムをモバイルプラットフォーム上に組込んだ、オープンなローカルエリアネットワークに関する。
【0003】
発明の背景
今日、広く使用されている商用航空機は、乗客の利益および便宜を図るために、多数のキャビンシステムを含む。これらのシステムは、たとえば機上娯楽(In Flight Entertainment(IFE))およびキャビンサービスシステム(Cabin Services Systems(CSS))を含む。これらの個々のシステムの供給業者は一般に、システムを互いに別々に設計している。したがって、各システムの重量、消費電力、および機能は最適化され得るものの、これまでに開発されたシステムは、これらのシステムに関連する航空機レベルの重量、電力、および他の重要な要素に対処してこなかった。したがって、航空機全体に対してキャビンシステムを最適化することが依然として必要とされる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特に、これまでに開発されたシステムは、個々のシステム内のさまざまな装置に接続するために、重量があって高価な銅の同軸ケーブル、二軸ケーブル、またはカッドケーブルを用いる傾向がある。さらに、これらの種類のケーブルは、設置が難しくなりがちである。なぜなら、これらのケーブルが必要とするコネクタが、嵩高く、かつ、その終端処理が難しいためである。さらに悪いことに、これらのケーブルの種類は、航空機のキャビンの静電遮蔽の要件により、帯域幅が制限される。さらに、現在の機上娯楽システムが、配信媒体(すなわち敷設ケーブル)を共有しており、制限された利用可能な帯域幅を乗客間で分割していることから、これまでに開発されたシステムは、セキュリティおよびスケーラビリティが制約されるという問題を有する。
【0005】
その一方で、航空機の乗客は、民生電子機器が広く利用できるようになったことから、ネットワーク互換装置(ラップトップコンピュータおよび携帯型情報装置等)を航空機内に持込んで、飛行中に娯楽を得ることを始めた。乗客にとっては残念なことに、従来のIFEシステムは一般に、これらの情報技術互換装置との互換性を有さない。したがって、航空機の乗客は、依然として、インターネット上で利用できるようになった新たな娯楽技術(マルチメディア情報およびマルチプレーヤインターネットゲーム等)を事実上利用することができない。
【0006】
このように、先行技術のシステムは、航空機の乗客に一段と望まれている新たなサービスを支援していない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明の概要
この発明は、モバイルプラットフォームの乗客に対し、マルチメディア、インターネット、および電気通信技術の中でも特に、中継放送されるテレビジョン、オーディオ、メッセージ送信、格納されたビデオの再生、乗員情報システム、電子フライトバッグ、アプリケーション、音声、セル式電話、オンデマンドビデオ、オンデマンドオーディオ、およびオンラインゲームを支援するために広帯域の接続性を提供するためのシステムおよび方法を含む。一般に、この明細書に提示されるオープンネットワークおよびそれに関連する方法は、多くの並列システムを含んでいたこれまでの技術に取って代わり、それによって重量の削減、省電力、および省スペースを生じる。さらに、この発明は、より便利なネットワークのアップグレード、保守、変更、および追加を提供する。加えて、この発明は、広範囲の周辺装置および支援装置の「プラグ・アンド・プレイ」用途、ならびに、モバイルプラットフォーム上で使用するための周辺装置に接続性を提供する。
【0008】
より具体的に、この発明は、航空機内の乗客がデータサーバ(オンデマンドオーディオ/ビジュアル等)にアクセスできるようにしながらも、他の乗客のデータおよびデータサーバ自体に対する未認証のアクセスを防止する。好ましい一形態において、システムへの乗客インターフェイスは、たとえばUSB接続を介してロバストなオーディオ、音声、および制御を乗客に提供するスイッチおよびホストクライアントの組合せを介したものである。
【0009】
要約すると、この発明が提供する、航空機キャビンの高帯域スイッチドネットワークは、キャビン配信システムのパラダイムを、閉じられており、所有権が主張され、かつ柔軟性のないシステムから、オープンで業界互換性を有し、柔軟性があり、かつ統合型のシステムのパラダイムに変更する。この発明の原理に従った方法およびシステムは、配線ネットワークおよび無線ネットワークの両方をシームレスに支援し、多種多様な民生電子機器および情報技術の周辺装置に容易に適合する。したがってこの発明は、さまざまな航空機搭載用途のためにカスタムハードウェアおよびソフトウェアを設計する従来の手法に比べ、航空機全体のコストを下げる。
【0010】
さらにこの発明は、ユーザに対し、広帯域の空地通信システムへのシームレスな接続性を提供する。広帯域の空地通信システムの一例は、2000年8月16日に出願されて「モバイルプラットフォームに双方向データサービスおよび実況テレビジョンのプログラミングを提供するための方法および装置(Method and Apparatus for Providing Bi-Directional Data Services and Live Television Programming to Mobile Platforms)」と題
された、米国特許出願第09/639,912号に記載されている。この米国特許出願の内容は、すべてが明示されているかのようにこの明細書で援用される。
【0011】
好ましい実施例において、この発明は、複数の周辺装置を含むモバイルプラットフォームに適したオープンネットワークを提供する。このネットワーク内において、中央サーバは少なくとも1つのスイッチと通信する。次いで、このスイッチと、複数のネットワーク装置とが通信する。したがって、複数のホストおよび個人用の周辺装置の各々は、ネットワーク装置の1つと通信する。さらに、モバイルプラットフォームは、ネットワークを制御するための制御盤を含む航空機であり得る。さらに、コアネット(CoreNet)は、ネッ
トワークを介して通信することが可能な実況TVソース、キャビンサービスサブシステム、アンテナサブシステム、およびホスト装置と機上娯楽との間に、通信ゲートウェイを設けることができる。ネットワークはまた、衛星中継器/データルータを介してネットワークをインターネットにまで拡張するために、アンテナサブシステムの一部として衛星データ送受信機も含み得る。一実施例において、個人用周辺装置は、USB配線装置を用いる代わりにパーソナルエリア無線ネットワーク内のBluetooth(登録商標)互換装置を用い
て、仮想ローカルエリアネットワークに接続されたホストユーザ装置とのインターフェイスをとることができ、それによって仮想ネットワークは、ホストユーザ装置のためのネットワークのセキュリティおよびサービス品質を制御する。
【0012】
別の実施例において、この発明は、複数のホストおよび個人用の周辺装置ならびにオープンネットワークを含むモバイルプラットフォームを提供する。このネットワーク内において、中央サーバは少なくとも1つのスイッチと通信する。次いで、このスイッチと、複数のネットワーク装置とが通信する。したがって、周辺の複数のホストおよび個人用の装置の各々は、ネットワーク装置の1つと通信する。さらに、モバイルプラットフォームは、ネットワークを制御するための制御盤を含む航空機であり得る。さらに、コアネットは、ネットワークを介して通信することが可能な実況TVソース、キャビンサービスサブシステム、アンテナサブシステム、およびホスト装置と機上娯楽との間に、通信ゲートウェイを設けることができる。ネットワークは、衛星中継器/データルータを介してネットワークをインターネットにまで拡張するために、アンテナサブシステムの一部として衛星データ送受信機を含み得る。一実施例において、個人用周辺装置(ヘッドフォン、マイクロフォン、キーボード、および個人用制御ユニット等)は、USB配線装置を用いる代わりにパーソナルエリアネットワーク内のBluetooth(登録商標)互換装置を用いて、仮想ロ
ーカルエリアネットワークに接続されたホストユーザ装置とのインターフェイスをとることができ、それによって仮想ネットワークは、ホストユーザ装置のためのネットワークのセキュリティおよびサービス品質を制御する。
【0013】
これらの特徴、機能、および利点は、この発明のさまざまな実施例において別個に得ることができ、または、さらにこれ以外の実施例において組合され得る。
【0014】
この発明は、詳細な説明および添付の図面からより十分に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】この発明の原理に従った航空機の平面図である。
【図2】図1の航空機のネットワークのブロック図である。
【図3】この発明に従った別の航空機のネットワークのアーキテクチャの図である。
【図4A】この発明に従った別のネットワークの一部の平面図である。
【図4B】この発明に従った別のネットワークの一部の平面図である。
【図5A】図2から図4のネットワークのシートエレクトロニクスボックスのブロック図である。
【図5B】図2から図4のネットワークのシートエレクトロニクスボックスのブロック図である。
【図5C】図2から図4のネットワークのシートエレクトロニクスボックスのブロック図である。
【図5D】図2から図4のネットワークのシートエレクトロニクスボックスのブロック図である。
【図6】この発明の原理に従った、ネットワーク接続のケーブル敷設のブロック図である。
【図7】この発明の原理に従った航空機の座席の概略図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
好ましい実施例の詳細な説明
好ましい実施例の以下の説明は、本質的に単に例示であり、この発明、その用途、または使途を制限するように意図されていない。
【0017】
図面全般、特に図1を参照すると、この発明の原理に従ったモバイルプラットフォーム10(航空機等)が示される。図1は、航空機10内に、乗客部14および乗員部16をそれぞれ有するキャビン12が含まれていることを示す。複数の座席18は、航空機10の飛行中に乗客が寛ぐか、または仕事をするための場所を提供する。ここで、座席18が一般に、2つまたは3つ毎にグループ化されており、隣接するグループとグループとの間に中央通路が存在することに注目されたい。
【0018】
航空機10は、航空機内で乗客が寛ぐことを補助するようにさまざまな快適装備を含み得る。乗客に映画を表示して音楽を再生するために、機上娯楽(IFE)サブシステムを提供することができる。加えて、キャビンサービスサブシステムは、2003年9月25日に出願されて、モバイルプラットフォームのためのキャビンサービスシステム(Cabin Services System For A Mobile Platform)と題された、共有されかつ同時係属中の米国
特許出願第10/670,952号に論じるように、設けることができる。この米国特許出願は、そのすべてが明示されているかのように、この明細書において援用される。
【0019】
多くの乗客は、ラップトップコンピュータ、携帯型情報端末、Wi−Fi/セルラー式電話等が広く利用できるようになったことにより、座席18に着いている間に仕事をする(または娯楽を得る)ことができれば便利であると考えている。さらに、ザ・ボーイング・カンパニー(The Boeing Company)は、いくつかの航空機10上でコネクション・バイ・ボーイング(登録商標)(Connexion By Boeing)サービスを提供して、乗客が航空機10内に持込んだデジタル装置に対し、インターネット接続性を提供する。
【0020】
認識されるように、この明細書で論じるようにすべての装置およびサブシステムを1つのオープンネットワーク上で接続することにより、航空機10の全体に対し、ならびに、さまざまな装置およびサブシステムのライフサイクルにわたり、開発時間、労力、および費用を節約する。1つの統合型オープンシステムは、航空機10全体の重量および消費エネルギも減らす。したがって、図2は、モバイルプラットフォーム10上で使用するのに適し、かつ、モバイルプラットフォーム10の重量、消費電力、ならびに開発時間および費用を減じるこのようなオープンネットワーク20の好ましい一実施例を示す。
【0021】
オープンネットワーク20は、1つ以上の開放型システム間相互接続(Open Systems Interconnection(OSI))レイヤ(Layer)3スイッチを含む。これらのスイッチは、この明細書において、エリアディストリビューションボックス(ADB)22として示される。これらのスイッチは、優先的に光ファイバケーブル24を用いてともにネットワーク接続される。さらに別の光ファイバリンク26は、複数のシートエレクトロニクスボックス(SEB)28をエリアディストリビューションボックス22にネットワーク接続する。シートエレクトロニクスボックス28は一般に、この明細書においてより詳しく論じるように、メディアコンバータおよびOSIレイヤ2スイッチまたはOSIレイヤ3スイッチを含む。次いで、通信経路30および32は、さまざまなデジタルホストユーザ装置34(持込みのラップトップ、携帯型情報端末、およびスマートフォンのホストユーザ装置等)、ならびに専用の座席周辺ホスト装置36のそれぞれを、シートエレクトロニクスボックス28に接続する。
【0022】
加えて、制御盤38を用いて、ネットワーク20の設定、制御、および管理を行なうことができる。好ましい実施例において、制御盤38とネットワーク20のそれ以外の部分との間に「コアネット」ユニット42を介在させることができる。このコアネットは、乗員情報システム(中に制御盤38が存在する)と、主に乗員キャビンに応対する、ネットワーク20のそれ以外の部分との間のゲートウェイの機能と同様の機能を実行する。コアネットユニット42を介在させる利点は、コアネットユニット42が、ネットワーク20全体の情報の流れを管理する点である。したがって、コアネット42をゲートウェイおよびファイアウォールとして用いることにより、制御盤38からネットワーク20を管理、監視、および制御する機能が高まる。図2は、銅線接続40および44を介して制御盤38とネットワーク20との間に介在させたコアネットユニット42を示しているが、この発明がそれに限定されないことは当然である。たとえば制御盤38およびコアネットユニット42は、ネットワーク20のそれ以外の部分に並列接続されてよい。
【0023】
図2はまた、ファイバ接続48を介してネットワーク20に接続されたオンデマンドオーディオおよびビデオサーバ46も示す。これまでのシステムにおいて、従来のオーディオおよびビデオソースは、(デジタルネットワークを通過するのとは対照的に)アナログの銅ケーブルを介して適切な座席周辺装置(ヘッドフォンまたは付近のテレビジョンモニタ等)に配線接続された複雑なシートボックスにおいて復号され、オーディオおよびビデオの内容は、ラップトップまたは座席のホスト周辺装置内の単純なメディアプレーヤによって復号される。代替的に、これまでのシステムの中には、所有権が主張され、かつ、閉じられたネットワークを介して、これらの装置を複雑なシートボックスに接続するものもあった。したがって、これまでのシステムを、新規の機能(すなわち、サーバ、ラップトップ、または座席のホスト周辺装置上でホストされる新規のアプリケーションソフトウェア)に適応するように容易に再設定することができない。また、これまでのシステムは、異なるサイズ(すなわち座席数)の航空機に対してスケーラブルではない。なぜなら、信号の減衰および雑音のため、カスタム設計され、かつ、閉じられたこれらのシステムの長さを延長することが禁じられるためである。
【0024】
さらに悪いことに、これらの従来のシステムに対する各変更を、航空機の各種類に対して再認定しなければならない。さらに、これらの以前のシステムの各々が、他の構成要素またはシステムから最も独立した態様で(すなわち他のシステムに関係なく)開発されているため、重量、電力、内部空間の使用等に関し、航空機10の全体を最適化することができない。それとは対照的に、この発明は、航空機10上のオープンネットワーク20内でこれらのシステムをネットワーク接続することにより、航空機10の全体を最適化する。
【0025】
したがって、この発明は、複数の使途のためのオープンネットワーク20を提供する。これらの使途は、機上でのインターネット接続性(コネクション・バイ・ボーイング(登録商標)サブシステム等)、機上(機内)娯楽、ならびに、電話および機内放送のハンドセット接続性(すなわち音声)を含む。さらに、アーキテクチャがオープンであることにより、所有権が主張されるこれまでのシステムでは必要とされてきた再認定をほとんどまたは全く必要とせずに、同様のフォームファクタを有するさらに別の構成要素をネットワーク20に容易に追加することができる。たとえば、衛星テレビジョン受信機/エンコーダ、インシート表示装置(タブレットパーソナルコンピュータ等)、乗客制御ユニット、ならびにボイス・オーバー・インターネット(VOIP)のヘッドセット、ハンドセット、およびスピーカを比較的容易に追加することができ、その際に、再認定の費用または遅延が、(設置されているハードウェアに対しては)ほとんど生じず、または、(持込まれたハードウェアに対しては)全く生じない。さらに、このオープンシステム内の構成要素は、配線LANおよび無線LANに相互接続されたどのようなクライアント−サーバ技術とも、機能上、「プラグ・アンド・プレイ」の互換性を有する。
【0026】
図3を参照すると、モバイルプラットフォーム上で使用するのに適したオープンネットワークを含むこの発明の別の実施例が示される。このネットワーク120は、光ファイバケーブル124を介してともにネットワーク接続されたいくつかのエリアディストリビューションボックス122(スイッチ)を含む。また、シートエレクトロニクスボックス128(すなわちネットワーク装置)のグループも示される。シートエレクトロニクスボックス128の各々は、航空機10(図1参照)の1つ以上の座席18からなる座席のグループに対応する。好ましい実施例において、シートエレクトロニクスボックス128は、光ファイバリンク126からの信号を、銅線通信経路またはファイバ通信経路のいずれかに変換することに対応するOSIレイヤ2スイッチである。リンク126が同軸ケーブル(または他の銅の導体)とは対照的に光ファイバリンクであるという点で、この発明が以前の手法とは異なっていることに注目すべきである。重要な点は、この光ファイバリンク126の重量が、光ファイバリンク126の代わりに用いられていた銅の導体の重量の約1/10であるという点である。
【0027】
通信経路130は一般に、持込品134の、ネットワーク120への接続に専用のものである。同様に、通信経路132は一般に、座席18に関連する座席周辺ホスト136(頭上の操作卓、スピーカ、背もたれの表示装置として使用される、ディスクレス端末またはディスクベースのタブレットPC、テレビジョンモニタ等)の、ネットワーク120への接続に専用のものである。この実施例は、持込品ならびに座席周辺ホスト134および136のそれぞれへの専用接続を想定しているが、通信経路130および132は、この発明の精神および範囲内に留まるために、それほど専用である必要はない。
【0028】
加えて、図3は、ネットワーク120上の他の装置とネットワーク接続された頭上の表示装置に対する機上娯楽オーディオ/ビジュアルデコーダ152を示す。同様に、データ送受信機/ルータ154およびインターネットサーバ156(コネクション・バイ・ボーイング(登録商標)等)が協働して、モバイルプラットフォームのネットワーク120にインターネット接続性を提供する。さらに、キャビンサービスサブシステムは、適切なインターフェイス158を介してネットワーク120に接続されて、ネットワーク120およびキャビンサービスサブシステムとの間でのデータ、特に音声データ、および信号の転送を可能にする。したがって、ネットワーク120は、専用のカスタマイズされたシステム(キャビンサービスシステム等)上でこれまでは別個に存在していた多くのデータソースを組込む。
【0029】
次に、座席18におけるネットワーク接続性を参照すると、図4は、ネットワーク120に対して考えられる2つのネットワークトポロジーを示す。図4Aは星型トポロジーを示し、図4Bはデイジートポロジーを示す。特に、サーバ160(コネクション・バイ・ボーイング(登録商標)サーバ156、キャビンサービスインターフェイス158、またはオンデマンドオーディオおよびビジュアルサーバ146等)は、ネットワーク120にコンテンツを提供していることが示される。ネットワークは、星型トポロジー162において、エリアディストリビューションボックス122から、光ファイバケーブル126を介してシートエレクトロニクスボックス128へと扇型に広がる。各シートエレクトロニクスボックス128は次いで、座席18における周辺ホストまたは持込品の接続を図るために、1つ以上の通信経路130または132を設ける。シートエレクトロニクスボックス128が、座席166の特定の行または他のグループに関連付けられ得ることに注目されたい。
【0030】
星型トポロジーは、(銅に比べ)極めて軽量なファイバの相互接続を用いる。電路の距離は、システムの重量にほとんど影響を及ぼさない。これにより、遠隔に配置されたソースから個々の座席のグループまでの長距離かつ「ホームラン方式の」相互接続が容易に可能となり、図5Aから図5Cに記載されるシートエレクトロニクスボックスの複雑性、電力、重量、およびサイズを最小にする。なぜなら、各座席または座席のグループが、集中型エリアディストリビューションボックス上のポートに直接接続されるためである。
【0031】
図4Aは、エリアディストリビューションボックス(ADB)122とシートエレクトロニクスボックス128との間において星型トポロジー162で接続されるネットワークを示す。座席の各行(またはその一部)は、ADB122においてアクセスが制御された別個のVLANであり得る。ポートの保護により、VLAN内の座席間のアクセスが制限され得ることに注目されたい。図4Bは、エリアディストリビューションボックス(ADB)122とシートエレクトロニクスボックス128の列との間においてデイジートポロジー164で接続されたネットワークを示す。座席の各列もまた、ADB122においてアクセスが制御された別個のVLANであり得る。ポートの保護により、VLAN内の座席間のアクセスが制限される。
【0032】
図4Bは、エリアディストリビューションボックス122とシートエレクトロニクスボックス128との間においてデイジーチェーントポロジー164で接続された光ファイバケーブル126を示す。好ましい実施例において、図4Aの星型トポロジーには、100ベース−FXの光ファイバデータリンクおよびケーブル126が使用されており、図4Bのデイジーチェーントポロジーには、1000ベース−SXの光ファイバデータリンクおよびケーブル126が使用されている。
【0033】
デイジートポロジーは、航空会社によるネットワークの設置、座席の再構成、および座席間の距離の再調整を簡略化するのに有用である。星型トポロジーにおける10/100Mbpsアップリンクを支援するスイッチおよびメディアコンバータを備えた、図5Aから図5Cに記載されるシートエレクトロニクスボックスは、他の構成のシートエレクトロニクスボックスに比べ、単純であり、小型であり、低電力であって、費用がかからない。スイッチ技術およびスイッチオンチップ技術が発展して、より良好な態様で1Gbpsを支援するようになったのに伴い、デイジートポロジーのシートエレクトロニクスボックスと星型トポロジーのシートエレクトロニクスボックスとの間の電力差、重量差、およびサイズの差が大いに減少する。
【0034】
加えて、図4Aおよび図4Bはいずれも、ネットワーク120用の電源168を示す。ここでもまた、シートエレクトロニクスボックス128の好ましい位置が、シートエレクトロニクスボックス128が応対する座席18のグループ内の座席18の下、またはこのグループに隣接する座席18の下であることに注目されたい。当然ながら、シートエレクトロニクスボックス128と座席18との間のケーブルは、ケーブルのレースウェイ内において、および座席18の下または中にある構造に沿って、経路指定され得る。
【0035】
シートエレクトロニクスボックス128は、周辺ホスト134および持込品136にネットワーク接続性を提供するように、多くのさまざまな方法で構成され得る(たとえば図2または図3を参照)。図5は、シートエレクトロニクスユニット128の例示的ないくつかの構成を示す。本質的に、図5A、図5B、および図5Cは、星型トポロジーによって実現されるネットワークに関し、シートボックスのサイズおよび複雑性、ならびに座席の1グループごとに支援されるユーザおよび周辺ホスト装置の数と、ADBのサイズおよび複雑性とを天秤にかけている。SEBからADBへのアップリンクを減らすことによって、ADBの数は減少するが、SEBの複雑性が増大する。座席の1グループに付き1つから1つの座席に付き1つへと、SEBからADBへのアップリンクの数を増やすことによって、ADBの数は増大するが、それらの数が増大するにもかかわらず、SEBは大いに簡略化される。これらの指針は、航空機のキャビンに最適な電力、重量、およびサイズを有するオープンなシステムネットワークのインフラストラクチャに対する設計の基礎をなす。
【0036】
たとえば図5Aは、4つまでの周辺ホスト134(ラップトップコンピュータ、または背もたれの表示装置として使用されるディスクレス端末もしくはディスクベースのタブレットPC等)をネットワーク120に接続するのに有用なシートエレクトロニクスボックス128Aを示す。優先的に、シートエレクトロニクスボックス128Aは、図4Aの星型ネットワークから、二重通信方式の1本のファイバケーブル126A(好ましくは100Mbpsのファイバデータリンク)に接続する。加えて、シートエレクトロニクスボックス128Aは、4本の銅ケーブル130A(好ましくは、RJ−45コネクタを備えた10/100Mbps銅データリンク)に接続する。次いで、これらの4本のケーブル130Aは、持込まれた周辺ホスト134による接続または専用の座席周辺装置136による接続のために、座席上のジャックへと扇型に広がる。
【0037】
シートエレクトロニクスユニット128Aは、ファイバケーブル126Aからの光学信号を、銅の伝送経路(内部)で使用するのに適した電磁信号に変換するために、光ファイバ−銅の信号コンバータ170A(すなわちメディアコンバータ)を1つ含む。加えて、シートエレクトロニクスユニット128Aは、内部信号と4本のケーブル130Aとの間に切換式の接続性を提供するための1×4スイッチ172Aを含む。
【0038】
図5Bは、データの接続性が向上したシートエレクトロニクスボックス128Bを示す。シートエレクトロニクスユニット128Bが、(1から3個のエリアディストリビューションボックス122Bへの)3本の光ファイバケーブル126Bと12本の銅ケーブル130Bとの間における接続性を提供することに注目されたい。したがって、シートエレクトロニクスボックス128Bは、3つのメディアコンバータ170Bおよび3つのスイッチ172Bを含む。これらのスイッチ172Bが(シートエレクトロニクスボックス128Aにおけるように)1×4スイッチであり得るため、スイッチ172Bは、銅ケーブル130Bとファイバケーブル126Bとの間でのさまざまな接続構成を可能にする。したがって、シートエレクトロニクスボックス128Bは、座席18においてユーザに仮想ローカルエリアネットワークを提供する。
【0039】
図5Cは、この発明の別の実施例に従った別のシートエレクトロニクスボックス128Cを示す。シートエレクトロニクスボックス128Cは、1本のファイバケーブル126Cと6本(または8本)の銅ケーブル130Cとの間に接続性を提供する。したがって、シートエレクトロニクスボックス128Cは、1つのメディアコンバータ170Cと、1×6(または8以上)スイッチ172Cとを含む。したがって、シートエレクトロニクスボックス128Cはまた、それ自体の内部に仮想ローカルエリアネットワークを提供する。加えて、シートエレクトロニクスボックス128Cは、このシートエレクトロニクスボックス128Cに接続された周辺装置のための、サービス品質の管理を行なうことができる。
【0040】
図5Dに示す別の好ましい実施例において、シートエレクトロニクスボックス128Dは、デイジーチェーンネットワークトポロジーにおいて、一方側における1本の1000Mbpsファイバケーブル126Dと、他方側における、以降のシートエレクトロニクスボックスに接続される1本の1000Mbpsファイバケーブル132Dとの間に接続性を提供する。6本の銅ケーブル130Dは、座席のグループ内の周辺装置に10/100の接続性を提供する。したがって、シートエレクトロニクスボックスは、周辺装置134および136に対する信号の変換および接続性を管理するための2つのメディアコンバータ170Dおよびマルチギガビットのスイッチ172Dを含む。したがって、シートエレクトロニクスボックス128Dは、仮想ローカルエリアネットワークとサービス品質の管理とを提供する。
【0041】
以前に論じた星型トポロジーおよびデイジートポロジーを形成することが好まれるハードウェアに関し、図6を次に参照する。図示されるケーブル敷設の手法により、ADBと、座席の配線トポロジーから独立した床部のブレークアウトとの間に、同一のケーブル敷設が行なわれる。ADBは、いずれかのトポロジーを支援する高密度ファイバ配線クローゼットを提供するように設計され得る。特に図6Aは、星型の実施例の一部を示す。12(光)ファイバのリボンケーブル274Aは、エリアディストリビューションボックス222Aからブレークアウトボックス276Aに至る。ブレークアウトボックス276Aは、このリボンケーブル274Aを、12本の単信方式ファイバ278Aへと扇型に広げる。これらのケーブルは、単信方式ファイバ278Aの端部から、床部の下で経路指定される。しかしながら、二重通信方式LCコネクタ280A(単信方式ファイバ278Aの各対に付き1個)は、床部のインターフェイス279Aにおいて、ケーブル282Aの組が星型構成で扇形に広がることを可能にする。次いで、ケーブル282Aは、星型構成においてシートエレクトロニクスボックスに(たとえば断路器284Aにより)接続する。
【0042】
それとは対照的に、図6Bは、デイジーの実施例の一部を示す。12(光)ファイバのリボンケーブル274Bは、エリアディストリビューションボックス222Bからブレークアウトボックス276Bに至る。ブレークアウトボックス276Bは、リボンケーブル274Bを4本の単信方式ファイバ278Bへと扇型に広げる。これらのケーブルは、単信方式ファイバ278Bの端部から、床部の下で経路指定される。しかしながら、二重通信方式LCコネクタ280B(単信方式ファイバ278Bの各対に付き1個)は、床部のインターフェイス279Bにおいて、ケーブルの組282Bが、デイジー構成内の列にある最初および最後のシートエレクトロニクスボックスに(たとえば断路器284Bにより)接続されるようにする。
【0043】
したがって、図6Aの星型トポロジーは、床部のインターフェイス279Aにおいて6本のケーブル282Aを含み、図6Bのデイジートポロジーは、床部のインターフェイス279Bにおいて2本のケーブルを含む。したがって、床部のインターフェイス279Aの方が複雑である。しかしながら、ファイバコネクタアレイを使用することにより、床部のインターフェイス279Aの複雑性が減少することに注目されるべきである。加えて、デイジートポロジー(図4B)は、航空機内の座席下の、相対的に手の届きにくいケーブルのレースウェイ内に、分岐したケーブルが存在しないこと(したがって、保守をほとんどまたは全く必要としない)という利点を有する。地上ベースのネットワークの全領域に、相対的に容易にアクセスすることのできる地上ベースのオープンネットワークとは対照的に、このことは重要である。この明細書で使用するリボンケーブルが、シリコーンゴムのジャケットを含み、機上で制御される特定の要素、たとえば可燃性、毒性、および脱ガスを改善することにも注目されるべきである。
【0044】
ケーブル274にリボンケーブルを用いることにより、機上のケーブルの数が最小になる。さらに、リボンケーブルが頑丈であることから、リボンケーブルは一般に、厳しい状況にある場所でも使用される。同様に、リボンケーブルは一般に、特にアクセスに時間がかかることが考えられる、航空機内での長い距離(たとえば150フィートを上回る)にわたる電路に対して用いられる。したがって、リボンケーブルは、航空機にまつわる設置および保守の費用を下げる。加えて、光ファイバジャンパ線を一般に用いて、床部のインターフェイス279とシートエレクトロニクスボックスとの間のネットワーク接続を完成する。
【0045】
別の好ましい実施例において、この発明は、帯域幅を多く使用する機上娯楽サービスを支援する、高帯域幅であって、かつ、オープンな、インターネットプロトコルベースのスイッチドネットワークを提供する。これらのサービスは、インターネットへの広帯域空地接続性により可能となる新たなインターネットサービスに加え、オンデマンドオーディオ−ビデオ(AVOD)を含む。
【0046】
この実施例は、2層のLANアーキテクチャに基づいた、高帯域幅のスイッチドキャビンネットワークを含む。LANの上層は、OSIレイヤ3スイッチに基づき得る。これらのスイッチは、航空機搭載の集中型配線クローゼット内に取付けることができ、エリアディストリビューションボックス(ADB)と呼ばれ得る。ADBは、セキュリティ管理(たとえば、アクセスリストを介して乗客に提供される仮想LAN間の経路指定を設定する)を含むブラウザにより、ホストからネットワークを管理することができる。ADBはまた、システム全体のための、管理されたサービス品質を支援することもできる。これらのADB上のポートは、衛星受信機/データルータ、コアネット、メディアサーバ、および無線LANのアクセスポイントへの集中型アクセスも提供する。
【0047】
座席(一般には1行内の2個または3個の座席)からなる各グループにおいて、LANの下層はOSIレイヤ2LANスイッチを含み、乗客に対し、ネットワークにアクセスするためのシングルポート、多重ポート、またはスイッチドポートのいずれかを提供することができる。シートエレクトロニクスボックス(Seat Electronics Box(SEB))としても公知のレイヤ2スイッチは、乗客に対し、保護されたスイッチポートの1つに付き1つのVLANも提供して、乗客に対するセキュリティと、システムのスケーラビリティとを確保する。1人の乗客(または1つの座席)に付き1つのポートが提供される場合、レイヤ2スイッチを省略できることに注目されるべきである。しかしながら、このような実施例では、上層のスイッチで必要とされるポートの数を最小にするために、レイヤ2スイッチを用いることが望ましい。
【0048】
しかしながら、1人の乗客に付き2つ(またはそれよりも多くの)ポートを設ける実施例において、レイヤ2スイッチを設けることもできる。したがって、支援を行なう、乗客の周辺装置(ラップトップのパーソナルコンピュータ、携帯用情報端末、または乗客の制御ユニット等)に対し、1つのポートを割当てることができる。そして、背もたれのインテリジェントな表示装置として働き得るタブレットPC様の装置に対し、別のポートを割当てることができる。
【0049】
ADB(エリアディストリビューションボックス)間の配線は、航空機の用途に認定されてきた、低コストの、二重通信方式かつ高帯域幅(1Gbps等)の光ファイバリンクであり得る。好ましい実施例において、1000ベース−SXデータリンクおよびファイバケーブルが用いられる。ADBと床部または側壁の断路器との間の相互接続に対し、低コストの、二重通信方式かつ高帯域幅の光ファイバリンクを用いることもできる。電路は、受動インラインコネクタにより、床部または側壁の断路器において終端をなし得る。
【0050】
ファイバリンクを使用することにより、従来の二軸およびカッド銅ケーブルに優るいくつかの利点が生じる。第1に、これらの種類のケーブルは、静電遮蔽の要件により、航空機上において100Mbpsの帯域幅に制限される。帯域幅−距離の性能は、マルチモードの光ファイバに関しては、銅ケーブルよりも高く、シングルモードの光ファイバケーブルに関しては、銅ケーブルよりも何桁も高い。デュアルカッド銅ケーブルは、適切な終端を用いることにより、キャビンサービスに関してこれまでに提示した1Gbpsを支援する。第2に、ファイバは、銅に比べ、依然として極めて手頃な価格である、スケーラブルな相互接続を提供する。さらに、従来の(銅の)リンクは、航空機のキャビンの静電遮蔽の要件を満たすために、費用のかかる終端と、重量のある遮蔽とを必要とする。ファイバは遮蔽を必要とせず、共通のジャケット内に束ねることができるため、重量が、同じ長さの(およびより性能の低い)従来の銅ベースのリンクの1/10以下であるリンクを提供する。
【0051】
加えて、同じ種類の光学リンクを用いて、デイジーチェーントポロジー(または星型もしくは他のネットワーク構成)内のSEBを相互接続して、座席から座席へのケーブル敷設を支援することができる。したがって、各レイヤ2スイッチ(すなわちシートエレクトロニクスボックス)は、デイジーチェーン内の隣接するSEBへのアップリンクポートおよびダウンリンクポートを支援することができる。さらに、ADBへのリターンデータリンクを設けて、1個のSEBが故障した場合にデイジーチェーン内のそれ以外のSEB間に引き続き相互接続が確保されるように、Ethernet(登録商標)スパニングツリープロトコル(Spanning Tree Protocol(STP))によるネットワークの再設定が可能になるようにすることができる。したがって、この発明は、耐故障性を有するモバイルプラットフォームのネットワークも提供する。
【0052】
さらに別の実施例では、軽量であることと、複数のファイバを1つのジャケットに束ねる機能とにより、各SEBからADB上のポートへの直接的な電路のアップリンクを提供することもできる。さらに、ファイバリンクは、軽量であることにより、(上述の、デイジー相互接続トポロジーに比べて)重量による不利益をほとんど生じない。したがって、SEBはこの発明に従って簡略化され得る。
【0053】
インシート配線のために、USBケーブルを用いて、オーディオおよび音声周辺装置をSEBに接続することができる。代替的に、Bluetooth(登録商標)ポートを設けてよい
。有利にも、Bluetooth(登録商標)を用いて、ネットワーク接続されたSEBに接続さ
れたホストに個人用周辺装置を接続することにより、インシート配線は、省略されるとは言わないまでも大いに簡略化される。したがって、この発明の原理に従って航空機の座席の重量および複雑性を減じることができる。
【0054】
さらに他の好ましい実施例において、シートエレクトロニクスボックスは、星型トポロジーに関して図5Cに示し、かつ、デイジートポロジーに関して図5Dに示したように、星型構成またはデイジー構成のいずれかにおいてエリアディストリビューションボックスに接続され得る。したがって、この発明の原理に従ってデイジートポロジーで構成された航空機のネットワークは、ほぼ以下のような航空機レベルの重量の削減を行なう(閉じられた、機上娯楽、キャビンサービス、およびローカルエリアネットワークのサブシステムを用いる航空機との比較)。
【0055】
150個の座席に付き200lbs、
250個の座席に付き360lbs、および
400個の座席に付き570lbs。
【0056】
デイジートポロジーで構成された航空機のネットワークについて、重量の削減は、ほぼ以下のようなものとなる(閉じられた、次世代の機上娯楽、キャビンサービス、およびローカルエリアネットワークのサブシステムを用いる航空機との比較)。
【0057】
150個の座席に付き100lbs、
250個の座席に付き190lbs、および
400個の座席に付き300lbs。
【0058】
同様に、この発明は、デイジートポロジーに対し、ほぼ以下のような省電力(航空機の燃料の要件に繋がる)を提供する(閉じられた、機上娯楽、キャビンサービス、およびローカルエリアネットワークのサブシステムを用いる航空機との比較)。
【0059】
150個の座席に付き2KW、
250個の座席に付き3.5KW、および
400個の座席に付き6KW。
【0060】
デイジートポロジーに関し、対応する省電力は、ほぼ以下のようなものとなる(閉じられた、次世代の機上娯楽、キャビンサービス、およびローカルエリアネットワークのサブシステムを用いる航空機との比較)。
【0061】
150個の座席に付き0.6KW、
250個の座席に付き0.8KW、および
400個の座席に付き1.5KW。
【0062】
次に図7を参照すると、座席318の一般的なグループが示される。1つ以上の座席318の下において、シートエレクトロニクスボックス328は、この明細書に記載するように、座席318内において、乗客に切換式の接続性を提供する。特に、電力ポート330、周辺ホストおよび持込品に対する10/100RJ−45ジャック332、オーディオおよび電話のヘッドセット用のUSBジャック334、持込品のネットワーク接続性を得るためのUSBジャック336、ファイバコネクタ338、および、内蔵型A/DコンバータによりアナログヘッドセットをデジタルUSBに変換するための3.5mmジャック340が示される。さまざまなUSB接続が、USBケーブル敷設により、背もたれ342および隔壁344上に取付けられたタブレットPCから乗客まで、隣接する座席318間の肘掛け346および操作卓348上のコネクタを介して提供される。しかしながら、コネクタのこれ以外の位置は、たとえば、座席318の下および頭上の制御ユニットを含む。
【0063】
加えて、この発明の原理に従ったネットワークは安全であり、かつ、どのようなサイズの航空機または他のモバイルプラットフォームに対してもスケーラブルである。さらにこの発明は、新規のサービス(シングルプレーヤおよびマルチプレーヤのオンラインゲーム等)の導入を容易にし、そして、キャビン内で使用される敷設ケーブルの重量および費用を大いに削減しながらも、これまでに利用可能であり、閉じられた、所有権が主張されるシステムよりも、優れた電磁干渉(Electro-Magnetic Interference(EMI))および
グラウンドループ抵抗を提供する。
【0064】
さまざまな好ましい実施例を説明してきたが、この発明の概念から逸脱することなく作成され得る変更例および変形例を当業者は認識するであろう。これらの例は、この発明を例示しており、この発明を限定するようには意図されていない。したがって、説明および請求項は、当該の先行技術を鑑みて必要とされるような限定のみを用いて、自由に解釈されるべきである。
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
この出願は、2003年5月21日に出願された米国仮特許出願第60/472,575号の利益を主張する。
【背景技術】
【0002】
発明の分野
この発明は、モバイルプラットフォーム上の通信システムに関し、より具体的には、機内娯楽、キャビンサービス、および衛星インターネット(Internet)サブシステムをモバイルプラットフォーム上に組込んだ、オープンなローカルエリアネットワークに関する。
【0003】
発明の背景
今日、広く使用されている商用航空機は、乗客の利益および便宜を図るために、多数のキャビンシステムを含む。これらのシステムは、たとえば機上娯楽(In Flight Entertainment(IFE))およびキャビンサービスシステム(Cabin Services Systems(CSS))を含む。これらの個々のシステムの供給業者は一般に、システムを互いに別々に設計している。したがって、各システムの重量、消費電力、および機能は最適化され得るものの、これまでに開発されたシステムは、これらのシステムに関連する航空機レベルの重量、電力、および他の重要な要素に対処してこなかった。したがって、航空機全体に対してキャビンシステムを最適化することが依然として必要とされる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特に、これまでに開発されたシステムは、個々のシステム内のさまざまな装置に接続するために、重量があって高価な銅の同軸ケーブル、二軸ケーブル、またはカッドケーブルを用いる傾向がある。さらに、これらの種類のケーブルは、設置が難しくなりがちである。なぜなら、これらのケーブルが必要とするコネクタが、嵩高く、かつ、その終端処理が難しいためである。さらに悪いことに、これらのケーブルの種類は、航空機のキャビンの静電遮蔽の要件により、帯域幅が制限される。さらに、現在の機上娯楽システムが、配信媒体(すなわち敷設ケーブル)を共有しており、制限された利用可能な帯域幅を乗客間で分割していることから、これまでに開発されたシステムは、セキュリティおよびスケーラビリティが制約されるという問題を有する。
【0005】
その一方で、航空機の乗客は、民生電子機器が広く利用できるようになったことから、ネットワーク互換装置(ラップトップコンピュータおよび携帯型情報装置等)を航空機内に持込んで、飛行中に娯楽を得ることを始めた。乗客にとっては残念なことに、従来のIFEシステムは一般に、これらの情報技術互換装置との互換性を有さない。したがって、航空機の乗客は、依然として、インターネット上で利用できるようになった新たな娯楽技術(マルチメディア情報およびマルチプレーヤインターネットゲーム等)を事実上利用することができない。
【0006】
このように、先行技術のシステムは、航空機の乗客に一段と望まれている新たなサービスを支援していない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明の概要
この発明は、モバイルプラットフォームの乗客に対し、マルチメディア、インターネット、および電気通信技術の中でも特に、中継放送されるテレビジョン、オーディオ、メッセージ送信、格納されたビデオの再生、乗員情報システム、電子フライトバッグ、アプリケーション、音声、セル式電話、オンデマンドビデオ、オンデマンドオーディオ、およびオンラインゲームを支援するために広帯域の接続性を提供するためのシステムおよび方法を含む。一般に、この明細書に提示されるオープンネットワークおよびそれに関連する方法は、多くの並列システムを含んでいたこれまでの技術に取って代わり、それによって重量の削減、省電力、および省スペースを生じる。さらに、この発明は、より便利なネットワークのアップグレード、保守、変更、および追加を提供する。加えて、この発明は、広範囲の周辺装置および支援装置の「プラグ・アンド・プレイ」用途、ならびに、モバイルプラットフォーム上で使用するための周辺装置に接続性を提供する。
【0008】
より具体的に、この発明は、航空機内の乗客がデータサーバ(オンデマンドオーディオ/ビジュアル等)にアクセスできるようにしながらも、他の乗客のデータおよびデータサーバ自体に対する未認証のアクセスを防止する。好ましい一形態において、システムへの乗客インターフェイスは、たとえばUSB接続を介してロバストなオーディオ、音声、および制御を乗客に提供するスイッチおよびホストクライアントの組合せを介したものである。
【0009】
要約すると、この発明が提供する、航空機キャビンの高帯域スイッチドネットワークは、キャビン配信システムのパラダイムを、閉じられており、所有権が主張され、かつ柔軟性のないシステムから、オープンで業界互換性を有し、柔軟性があり、かつ統合型のシステムのパラダイムに変更する。この発明の原理に従った方法およびシステムは、配線ネットワークおよび無線ネットワークの両方をシームレスに支援し、多種多様な民生電子機器および情報技術の周辺装置に容易に適合する。したがってこの発明は、さまざまな航空機搭載用途のためにカスタムハードウェアおよびソフトウェアを設計する従来の手法に比べ、航空機全体のコストを下げる。
【0010】
さらにこの発明は、ユーザに対し、広帯域の空地通信システムへのシームレスな接続性を提供する。広帯域の空地通信システムの一例は、2000年8月16日に出願されて「モバイルプラットフォームに双方向データサービスおよび実況テレビジョンのプログラミングを提供するための方法および装置(Method and Apparatus for Providing Bi-Directional Data Services and Live Television Programming to Mobile Platforms)」と題
された、米国特許出願第09/639,912号に記載されている。この米国特許出願の内容は、すべてが明示されているかのようにこの明細書で援用される。
【0011】
好ましい実施例において、この発明は、複数の周辺装置を含むモバイルプラットフォームに適したオープンネットワークを提供する。このネットワーク内において、中央サーバは少なくとも1つのスイッチと通信する。次いで、このスイッチと、複数のネットワーク装置とが通信する。したがって、複数のホストおよび個人用の周辺装置の各々は、ネットワーク装置の1つと通信する。さらに、モバイルプラットフォームは、ネットワークを制御するための制御盤を含む航空機であり得る。さらに、コアネット(CoreNet)は、ネッ
トワークを介して通信することが可能な実況TVソース、キャビンサービスサブシステム、アンテナサブシステム、およびホスト装置と機上娯楽との間に、通信ゲートウェイを設けることができる。ネットワークはまた、衛星中継器/データルータを介してネットワークをインターネットにまで拡張するために、アンテナサブシステムの一部として衛星データ送受信機も含み得る。一実施例において、個人用周辺装置は、USB配線装置を用いる代わりにパーソナルエリア無線ネットワーク内のBluetooth(登録商標)互換装置を用い
て、仮想ローカルエリアネットワークに接続されたホストユーザ装置とのインターフェイスをとることができ、それによって仮想ネットワークは、ホストユーザ装置のためのネットワークのセキュリティおよびサービス品質を制御する。
【0012】
別の実施例において、この発明は、複数のホストおよび個人用の周辺装置ならびにオープンネットワークを含むモバイルプラットフォームを提供する。このネットワーク内において、中央サーバは少なくとも1つのスイッチと通信する。次いで、このスイッチと、複数のネットワーク装置とが通信する。したがって、周辺の複数のホストおよび個人用の装置の各々は、ネットワーク装置の1つと通信する。さらに、モバイルプラットフォームは、ネットワークを制御するための制御盤を含む航空機であり得る。さらに、コアネットは、ネットワークを介して通信することが可能な実況TVソース、キャビンサービスサブシステム、アンテナサブシステム、およびホスト装置と機上娯楽との間に、通信ゲートウェイを設けることができる。ネットワークは、衛星中継器/データルータを介してネットワークをインターネットにまで拡張するために、アンテナサブシステムの一部として衛星データ送受信機を含み得る。一実施例において、個人用周辺装置(ヘッドフォン、マイクロフォン、キーボード、および個人用制御ユニット等)は、USB配線装置を用いる代わりにパーソナルエリアネットワーク内のBluetooth(登録商標)互換装置を用いて、仮想ロ
ーカルエリアネットワークに接続されたホストユーザ装置とのインターフェイスをとることができ、それによって仮想ネットワークは、ホストユーザ装置のためのネットワークのセキュリティおよびサービス品質を制御する。
【0013】
これらの特徴、機能、および利点は、この発明のさまざまな実施例において別個に得ることができ、または、さらにこれ以外の実施例において組合され得る。
【0014】
この発明は、詳細な説明および添付の図面からより十分に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】この発明の原理に従った航空機の平面図である。
【図2】図1の航空機のネットワークのブロック図である。
【図3】この発明に従った別の航空機のネットワークのアーキテクチャの図である。
【図4A】この発明に従った別のネットワークの一部の平面図である。
【図4B】この発明に従った別のネットワークの一部の平面図である。
【図5A】図2から図4のネットワークのシートエレクトロニクスボックスのブロック図である。
【図5B】図2から図4のネットワークのシートエレクトロニクスボックスのブロック図である。
【図5C】図2から図4のネットワークのシートエレクトロニクスボックスのブロック図である。
【図5D】図2から図4のネットワークのシートエレクトロニクスボックスのブロック図である。
【図6】この発明の原理に従った、ネットワーク接続のケーブル敷設のブロック図である。
【図7】この発明の原理に従った航空機の座席の概略図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
好ましい実施例の詳細な説明
好ましい実施例の以下の説明は、本質的に単に例示であり、この発明、その用途、または使途を制限するように意図されていない。
【0017】
図面全般、特に図1を参照すると、この発明の原理に従ったモバイルプラットフォーム10(航空機等)が示される。図1は、航空機10内に、乗客部14および乗員部16をそれぞれ有するキャビン12が含まれていることを示す。複数の座席18は、航空機10の飛行中に乗客が寛ぐか、または仕事をするための場所を提供する。ここで、座席18が一般に、2つまたは3つ毎にグループ化されており、隣接するグループとグループとの間に中央通路が存在することに注目されたい。
【0018】
航空機10は、航空機内で乗客が寛ぐことを補助するようにさまざまな快適装備を含み得る。乗客に映画を表示して音楽を再生するために、機上娯楽(IFE)サブシステムを提供することができる。加えて、キャビンサービスサブシステムは、2003年9月25日に出願されて、モバイルプラットフォームのためのキャビンサービスシステム(Cabin Services System For A Mobile Platform)と題された、共有されかつ同時係属中の米国
特許出願第10/670,952号に論じるように、設けることができる。この米国特許出願は、そのすべてが明示されているかのように、この明細書において援用される。
【0019】
多くの乗客は、ラップトップコンピュータ、携帯型情報端末、Wi−Fi/セルラー式電話等が広く利用できるようになったことにより、座席18に着いている間に仕事をする(または娯楽を得る)ことができれば便利であると考えている。さらに、ザ・ボーイング・カンパニー(The Boeing Company)は、いくつかの航空機10上でコネクション・バイ・ボーイング(登録商標)(Connexion By Boeing)サービスを提供して、乗客が航空機10内に持込んだデジタル装置に対し、インターネット接続性を提供する。
【0020】
認識されるように、この明細書で論じるようにすべての装置およびサブシステムを1つのオープンネットワーク上で接続することにより、航空機10の全体に対し、ならびに、さまざまな装置およびサブシステムのライフサイクルにわたり、開発時間、労力、および費用を節約する。1つの統合型オープンシステムは、航空機10全体の重量および消費エネルギも減らす。したがって、図2は、モバイルプラットフォーム10上で使用するのに適し、かつ、モバイルプラットフォーム10の重量、消費電力、ならびに開発時間および費用を減じるこのようなオープンネットワーク20の好ましい一実施例を示す。
【0021】
オープンネットワーク20は、1つ以上の開放型システム間相互接続(Open Systems Interconnection(OSI))レイヤ(Layer)3スイッチを含む。これらのスイッチは、この明細書において、エリアディストリビューションボックス(ADB)22として示される。これらのスイッチは、優先的に光ファイバケーブル24を用いてともにネットワーク接続される。さらに別の光ファイバリンク26は、複数のシートエレクトロニクスボックス(SEB)28をエリアディストリビューションボックス22にネットワーク接続する。シートエレクトロニクスボックス28は一般に、この明細書においてより詳しく論じるように、メディアコンバータおよびOSIレイヤ2スイッチまたはOSIレイヤ3スイッチを含む。次いで、通信経路30および32は、さまざまなデジタルホストユーザ装置34(持込みのラップトップ、携帯型情報端末、およびスマートフォンのホストユーザ装置等)、ならびに専用の座席周辺ホスト装置36のそれぞれを、シートエレクトロニクスボックス28に接続する。
【0022】
加えて、制御盤38を用いて、ネットワーク20の設定、制御、および管理を行なうことができる。好ましい実施例において、制御盤38とネットワーク20のそれ以外の部分との間に「コアネット」ユニット42を介在させることができる。このコアネットは、乗員情報システム(中に制御盤38が存在する)と、主に乗員キャビンに応対する、ネットワーク20のそれ以外の部分との間のゲートウェイの機能と同様の機能を実行する。コアネットユニット42を介在させる利点は、コアネットユニット42が、ネットワーク20全体の情報の流れを管理する点である。したがって、コアネット42をゲートウェイおよびファイアウォールとして用いることにより、制御盤38からネットワーク20を管理、監視、および制御する機能が高まる。図2は、銅線接続40および44を介して制御盤38とネットワーク20との間に介在させたコアネットユニット42を示しているが、この発明がそれに限定されないことは当然である。たとえば制御盤38およびコアネットユニット42は、ネットワーク20のそれ以外の部分に並列接続されてよい。
【0023】
図2はまた、ファイバ接続48を介してネットワーク20に接続されたオンデマンドオーディオおよびビデオサーバ46も示す。これまでのシステムにおいて、従来のオーディオおよびビデオソースは、(デジタルネットワークを通過するのとは対照的に)アナログの銅ケーブルを介して適切な座席周辺装置(ヘッドフォンまたは付近のテレビジョンモニタ等)に配線接続された複雑なシートボックスにおいて復号され、オーディオおよびビデオの内容は、ラップトップまたは座席のホスト周辺装置内の単純なメディアプレーヤによって復号される。代替的に、これまでのシステムの中には、所有権が主張され、かつ、閉じられたネットワークを介して、これらの装置を複雑なシートボックスに接続するものもあった。したがって、これまでのシステムを、新規の機能(すなわち、サーバ、ラップトップ、または座席のホスト周辺装置上でホストされる新規のアプリケーションソフトウェア)に適応するように容易に再設定することができない。また、これまでのシステムは、異なるサイズ(すなわち座席数)の航空機に対してスケーラブルではない。なぜなら、信号の減衰および雑音のため、カスタム設計され、かつ、閉じられたこれらのシステムの長さを延長することが禁じられるためである。
【0024】
さらに悪いことに、これらの従来のシステムに対する各変更を、航空機の各種類に対して再認定しなければならない。さらに、これらの以前のシステムの各々が、他の構成要素またはシステムから最も独立した態様で(すなわち他のシステムに関係なく)開発されているため、重量、電力、内部空間の使用等に関し、航空機10の全体を最適化することができない。それとは対照的に、この発明は、航空機10上のオープンネットワーク20内でこれらのシステムをネットワーク接続することにより、航空機10の全体を最適化する。
【0025】
したがって、この発明は、複数の使途のためのオープンネットワーク20を提供する。これらの使途は、機上でのインターネット接続性(コネクション・バイ・ボーイング(登録商標)サブシステム等)、機上(機内)娯楽、ならびに、電話および機内放送のハンドセット接続性(すなわち音声)を含む。さらに、アーキテクチャがオープンであることにより、所有権が主張されるこれまでのシステムでは必要とされてきた再認定をほとんどまたは全く必要とせずに、同様のフォームファクタを有するさらに別の構成要素をネットワーク20に容易に追加することができる。たとえば、衛星テレビジョン受信機/エンコーダ、インシート表示装置(タブレットパーソナルコンピュータ等)、乗客制御ユニット、ならびにボイス・オーバー・インターネット(VOIP)のヘッドセット、ハンドセット、およびスピーカを比較的容易に追加することができ、その際に、再認定の費用または遅延が、(設置されているハードウェアに対しては)ほとんど生じず、または、(持込まれたハードウェアに対しては)全く生じない。さらに、このオープンシステム内の構成要素は、配線LANおよび無線LANに相互接続されたどのようなクライアント−サーバ技術とも、機能上、「プラグ・アンド・プレイ」の互換性を有する。
【0026】
図3を参照すると、モバイルプラットフォーム上で使用するのに適したオープンネットワークを含むこの発明の別の実施例が示される。このネットワーク120は、光ファイバケーブル124を介してともにネットワーク接続されたいくつかのエリアディストリビューションボックス122(スイッチ)を含む。また、シートエレクトロニクスボックス128(すなわちネットワーク装置)のグループも示される。シートエレクトロニクスボックス128の各々は、航空機10(図1参照)の1つ以上の座席18からなる座席のグループに対応する。好ましい実施例において、シートエレクトロニクスボックス128は、光ファイバリンク126からの信号を、銅線通信経路またはファイバ通信経路のいずれかに変換することに対応するOSIレイヤ2スイッチである。リンク126が同軸ケーブル(または他の銅の導体)とは対照的に光ファイバリンクであるという点で、この発明が以前の手法とは異なっていることに注目すべきである。重要な点は、この光ファイバリンク126の重量が、光ファイバリンク126の代わりに用いられていた銅の導体の重量の約1/10であるという点である。
【0027】
通信経路130は一般に、持込品134の、ネットワーク120への接続に専用のものである。同様に、通信経路132は一般に、座席18に関連する座席周辺ホスト136(頭上の操作卓、スピーカ、背もたれの表示装置として使用される、ディスクレス端末またはディスクベースのタブレットPC、テレビジョンモニタ等)の、ネットワーク120への接続に専用のものである。この実施例は、持込品ならびに座席周辺ホスト134および136のそれぞれへの専用接続を想定しているが、通信経路130および132は、この発明の精神および範囲内に留まるために、それほど専用である必要はない。
【0028】
加えて、図3は、ネットワーク120上の他の装置とネットワーク接続された頭上の表示装置に対する機上娯楽オーディオ/ビジュアルデコーダ152を示す。同様に、データ送受信機/ルータ154およびインターネットサーバ156(コネクション・バイ・ボーイング(登録商標)等)が協働して、モバイルプラットフォームのネットワーク120にインターネット接続性を提供する。さらに、キャビンサービスサブシステムは、適切なインターフェイス158を介してネットワーク120に接続されて、ネットワーク120およびキャビンサービスサブシステムとの間でのデータ、特に音声データ、および信号の転送を可能にする。したがって、ネットワーク120は、専用のカスタマイズされたシステム(キャビンサービスシステム等)上でこれまでは別個に存在していた多くのデータソースを組込む。
【0029】
次に、座席18におけるネットワーク接続性を参照すると、図4は、ネットワーク120に対して考えられる2つのネットワークトポロジーを示す。図4Aは星型トポロジーを示し、図4Bはデイジートポロジーを示す。特に、サーバ160(コネクション・バイ・ボーイング(登録商標)サーバ156、キャビンサービスインターフェイス158、またはオンデマンドオーディオおよびビジュアルサーバ146等)は、ネットワーク120にコンテンツを提供していることが示される。ネットワークは、星型トポロジー162において、エリアディストリビューションボックス122から、光ファイバケーブル126を介してシートエレクトロニクスボックス128へと扇型に広がる。各シートエレクトロニクスボックス128は次いで、座席18における周辺ホストまたは持込品の接続を図るために、1つ以上の通信経路130または132を設ける。シートエレクトロニクスボックス128が、座席166の特定の行または他のグループに関連付けられ得ることに注目されたい。
【0030】
星型トポロジーは、(銅に比べ)極めて軽量なファイバの相互接続を用いる。電路の距離は、システムの重量にほとんど影響を及ぼさない。これにより、遠隔に配置されたソースから個々の座席のグループまでの長距離かつ「ホームラン方式の」相互接続が容易に可能となり、図5Aから図5Cに記載されるシートエレクトロニクスボックスの複雑性、電力、重量、およびサイズを最小にする。なぜなら、各座席または座席のグループが、集中型エリアディストリビューションボックス上のポートに直接接続されるためである。
【0031】
図4Aは、エリアディストリビューションボックス(ADB)122とシートエレクトロニクスボックス128との間において星型トポロジー162で接続されるネットワークを示す。座席の各行(またはその一部)は、ADB122においてアクセスが制御された別個のVLANであり得る。ポートの保護により、VLAN内の座席間のアクセスが制限され得ることに注目されたい。図4Bは、エリアディストリビューションボックス(ADB)122とシートエレクトロニクスボックス128の列との間においてデイジートポロジー164で接続されたネットワークを示す。座席の各列もまた、ADB122においてアクセスが制御された別個のVLANであり得る。ポートの保護により、VLAN内の座席間のアクセスが制限される。
【0032】
図4Bは、エリアディストリビューションボックス122とシートエレクトロニクスボックス128との間においてデイジーチェーントポロジー164で接続された光ファイバケーブル126を示す。好ましい実施例において、図4Aの星型トポロジーには、100ベース−FXの光ファイバデータリンクおよびケーブル126が使用されており、図4Bのデイジーチェーントポロジーには、1000ベース−SXの光ファイバデータリンクおよびケーブル126が使用されている。
【0033】
デイジートポロジーは、航空会社によるネットワークの設置、座席の再構成、および座席間の距離の再調整を簡略化するのに有用である。星型トポロジーにおける10/100Mbpsアップリンクを支援するスイッチおよびメディアコンバータを備えた、図5Aから図5Cに記載されるシートエレクトロニクスボックスは、他の構成のシートエレクトロニクスボックスに比べ、単純であり、小型であり、低電力であって、費用がかからない。スイッチ技術およびスイッチオンチップ技術が発展して、より良好な態様で1Gbpsを支援するようになったのに伴い、デイジートポロジーのシートエレクトロニクスボックスと星型トポロジーのシートエレクトロニクスボックスとの間の電力差、重量差、およびサイズの差が大いに減少する。
【0034】
加えて、図4Aおよび図4Bはいずれも、ネットワーク120用の電源168を示す。ここでもまた、シートエレクトロニクスボックス128の好ましい位置が、シートエレクトロニクスボックス128が応対する座席18のグループ内の座席18の下、またはこのグループに隣接する座席18の下であることに注目されたい。当然ながら、シートエレクトロニクスボックス128と座席18との間のケーブルは、ケーブルのレースウェイ内において、および座席18の下または中にある構造に沿って、経路指定され得る。
【0035】
シートエレクトロニクスボックス128は、周辺ホスト134および持込品136にネットワーク接続性を提供するように、多くのさまざまな方法で構成され得る(たとえば図2または図3を参照)。図5は、シートエレクトロニクスユニット128の例示的ないくつかの構成を示す。本質的に、図5A、図5B、および図5Cは、星型トポロジーによって実現されるネットワークに関し、シートボックスのサイズおよび複雑性、ならびに座席の1グループごとに支援されるユーザおよび周辺ホスト装置の数と、ADBのサイズおよび複雑性とを天秤にかけている。SEBからADBへのアップリンクを減らすことによって、ADBの数は減少するが、SEBの複雑性が増大する。座席の1グループに付き1つから1つの座席に付き1つへと、SEBからADBへのアップリンクの数を増やすことによって、ADBの数は増大するが、それらの数が増大するにもかかわらず、SEBは大いに簡略化される。これらの指針は、航空機のキャビンに最適な電力、重量、およびサイズを有するオープンなシステムネットワークのインフラストラクチャに対する設計の基礎をなす。
【0036】
たとえば図5Aは、4つまでの周辺ホスト134(ラップトップコンピュータ、または背もたれの表示装置として使用されるディスクレス端末もしくはディスクベースのタブレットPC等)をネットワーク120に接続するのに有用なシートエレクトロニクスボックス128Aを示す。優先的に、シートエレクトロニクスボックス128Aは、図4Aの星型ネットワークから、二重通信方式の1本のファイバケーブル126A(好ましくは100Mbpsのファイバデータリンク)に接続する。加えて、シートエレクトロニクスボックス128Aは、4本の銅ケーブル130A(好ましくは、RJ−45コネクタを備えた10/100Mbps銅データリンク)に接続する。次いで、これらの4本のケーブル130Aは、持込まれた周辺ホスト134による接続または専用の座席周辺装置136による接続のために、座席上のジャックへと扇型に広がる。
【0037】
シートエレクトロニクスユニット128Aは、ファイバケーブル126Aからの光学信号を、銅の伝送経路(内部)で使用するのに適した電磁信号に変換するために、光ファイバ−銅の信号コンバータ170A(すなわちメディアコンバータ)を1つ含む。加えて、シートエレクトロニクスユニット128Aは、内部信号と4本のケーブル130Aとの間に切換式の接続性を提供するための1×4スイッチ172Aを含む。
【0038】
図5Bは、データの接続性が向上したシートエレクトロニクスボックス128Bを示す。シートエレクトロニクスユニット128Bが、(1から3個のエリアディストリビューションボックス122Bへの)3本の光ファイバケーブル126Bと12本の銅ケーブル130Bとの間における接続性を提供することに注目されたい。したがって、シートエレクトロニクスボックス128Bは、3つのメディアコンバータ170Bおよび3つのスイッチ172Bを含む。これらのスイッチ172Bが(シートエレクトロニクスボックス128Aにおけるように)1×4スイッチであり得るため、スイッチ172Bは、銅ケーブル130Bとファイバケーブル126Bとの間でのさまざまな接続構成を可能にする。したがって、シートエレクトロニクスボックス128Bは、座席18においてユーザに仮想ローカルエリアネットワークを提供する。
【0039】
図5Cは、この発明の別の実施例に従った別のシートエレクトロニクスボックス128Cを示す。シートエレクトロニクスボックス128Cは、1本のファイバケーブル126Cと6本(または8本)の銅ケーブル130Cとの間に接続性を提供する。したがって、シートエレクトロニクスボックス128Cは、1つのメディアコンバータ170Cと、1×6(または8以上)スイッチ172Cとを含む。したがって、シートエレクトロニクスボックス128Cはまた、それ自体の内部に仮想ローカルエリアネットワークを提供する。加えて、シートエレクトロニクスボックス128Cは、このシートエレクトロニクスボックス128Cに接続された周辺装置のための、サービス品質の管理を行なうことができる。
【0040】
図5Dに示す別の好ましい実施例において、シートエレクトロニクスボックス128Dは、デイジーチェーンネットワークトポロジーにおいて、一方側における1本の1000Mbpsファイバケーブル126Dと、他方側における、以降のシートエレクトロニクスボックスに接続される1本の1000Mbpsファイバケーブル132Dとの間に接続性を提供する。6本の銅ケーブル130Dは、座席のグループ内の周辺装置に10/100の接続性を提供する。したがって、シートエレクトロニクスボックスは、周辺装置134および136に対する信号の変換および接続性を管理するための2つのメディアコンバータ170Dおよびマルチギガビットのスイッチ172Dを含む。したがって、シートエレクトロニクスボックス128Dは、仮想ローカルエリアネットワークとサービス品質の管理とを提供する。
【0041】
以前に論じた星型トポロジーおよびデイジートポロジーを形成することが好まれるハードウェアに関し、図6を次に参照する。図示されるケーブル敷設の手法により、ADBと、座席の配線トポロジーから独立した床部のブレークアウトとの間に、同一のケーブル敷設が行なわれる。ADBは、いずれかのトポロジーを支援する高密度ファイバ配線クローゼットを提供するように設計され得る。特に図6Aは、星型の実施例の一部を示す。12(光)ファイバのリボンケーブル274Aは、エリアディストリビューションボックス222Aからブレークアウトボックス276Aに至る。ブレークアウトボックス276Aは、このリボンケーブル274Aを、12本の単信方式ファイバ278Aへと扇型に広げる。これらのケーブルは、単信方式ファイバ278Aの端部から、床部の下で経路指定される。しかしながら、二重通信方式LCコネクタ280A(単信方式ファイバ278Aの各対に付き1個)は、床部のインターフェイス279Aにおいて、ケーブル282Aの組が星型構成で扇形に広がることを可能にする。次いで、ケーブル282Aは、星型構成においてシートエレクトロニクスボックスに(たとえば断路器284Aにより)接続する。
【0042】
それとは対照的に、図6Bは、デイジーの実施例の一部を示す。12(光)ファイバのリボンケーブル274Bは、エリアディストリビューションボックス222Bからブレークアウトボックス276Bに至る。ブレークアウトボックス276Bは、リボンケーブル274Bを4本の単信方式ファイバ278Bへと扇型に広げる。これらのケーブルは、単信方式ファイバ278Bの端部から、床部の下で経路指定される。しかしながら、二重通信方式LCコネクタ280B(単信方式ファイバ278Bの各対に付き1個)は、床部のインターフェイス279Bにおいて、ケーブルの組282Bが、デイジー構成内の列にある最初および最後のシートエレクトロニクスボックスに(たとえば断路器284Bにより)接続されるようにする。
【0043】
したがって、図6Aの星型トポロジーは、床部のインターフェイス279Aにおいて6本のケーブル282Aを含み、図6Bのデイジートポロジーは、床部のインターフェイス279Bにおいて2本のケーブルを含む。したがって、床部のインターフェイス279Aの方が複雑である。しかしながら、ファイバコネクタアレイを使用することにより、床部のインターフェイス279Aの複雑性が減少することに注目されるべきである。加えて、デイジートポロジー(図4B)は、航空機内の座席下の、相対的に手の届きにくいケーブルのレースウェイ内に、分岐したケーブルが存在しないこと(したがって、保守をほとんどまたは全く必要としない)という利点を有する。地上ベースのネットワークの全領域に、相対的に容易にアクセスすることのできる地上ベースのオープンネットワークとは対照的に、このことは重要である。この明細書で使用するリボンケーブルが、シリコーンゴムのジャケットを含み、機上で制御される特定の要素、たとえば可燃性、毒性、および脱ガスを改善することにも注目されるべきである。
【0044】
ケーブル274にリボンケーブルを用いることにより、機上のケーブルの数が最小になる。さらに、リボンケーブルが頑丈であることから、リボンケーブルは一般に、厳しい状況にある場所でも使用される。同様に、リボンケーブルは一般に、特にアクセスに時間がかかることが考えられる、航空機内での長い距離(たとえば150フィートを上回る)にわたる電路に対して用いられる。したがって、リボンケーブルは、航空機にまつわる設置および保守の費用を下げる。加えて、光ファイバジャンパ線を一般に用いて、床部のインターフェイス279とシートエレクトロニクスボックスとの間のネットワーク接続を完成する。
【0045】
別の好ましい実施例において、この発明は、帯域幅を多く使用する機上娯楽サービスを支援する、高帯域幅であって、かつ、オープンな、インターネットプロトコルベースのスイッチドネットワークを提供する。これらのサービスは、インターネットへの広帯域空地接続性により可能となる新たなインターネットサービスに加え、オンデマンドオーディオ−ビデオ(AVOD)を含む。
【0046】
この実施例は、2層のLANアーキテクチャに基づいた、高帯域幅のスイッチドキャビンネットワークを含む。LANの上層は、OSIレイヤ3スイッチに基づき得る。これらのスイッチは、航空機搭載の集中型配線クローゼット内に取付けることができ、エリアディストリビューションボックス(ADB)と呼ばれ得る。ADBは、セキュリティ管理(たとえば、アクセスリストを介して乗客に提供される仮想LAN間の経路指定を設定する)を含むブラウザにより、ホストからネットワークを管理することができる。ADBはまた、システム全体のための、管理されたサービス品質を支援することもできる。これらのADB上のポートは、衛星受信機/データルータ、コアネット、メディアサーバ、および無線LANのアクセスポイントへの集中型アクセスも提供する。
【0047】
座席(一般には1行内の2個または3個の座席)からなる各グループにおいて、LANの下層はOSIレイヤ2LANスイッチを含み、乗客に対し、ネットワークにアクセスするためのシングルポート、多重ポート、またはスイッチドポートのいずれかを提供することができる。シートエレクトロニクスボックス(Seat Electronics Box(SEB))としても公知のレイヤ2スイッチは、乗客に対し、保護されたスイッチポートの1つに付き1つのVLANも提供して、乗客に対するセキュリティと、システムのスケーラビリティとを確保する。1人の乗客(または1つの座席)に付き1つのポートが提供される場合、レイヤ2スイッチを省略できることに注目されるべきである。しかしながら、このような実施例では、上層のスイッチで必要とされるポートの数を最小にするために、レイヤ2スイッチを用いることが望ましい。
【0048】
しかしながら、1人の乗客に付き2つ(またはそれよりも多くの)ポートを設ける実施例において、レイヤ2スイッチを設けることもできる。したがって、支援を行なう、乗客の周辺装置(ラップトップのパーソナルコンピュータ、携帯用情報端末、または乗客の制御ユニット等)に対し、1つのポートを割当てることができる。そして、背もたれのインテリジェントな表示装置として働き得るタブレットPC様の装置に対し、別のポートを割当てることができる。
【0049】
ADB(エリアディストリビューションボックス)間の配線は、航空機の用途に認定されてきた、低コストの、二重通信方式かつ高帯域幅(1Gbps等)の光ファイバリンクであり得る。好ましい実施例において、1000ベース−SXデータリンクおよびファイバケーブルが用いられる。ADBと床部または側壁の断路器との間の相互接続に対し、低コストの、二重通信方式かつ高帯域幅の光ファイバリンクを用いることもできる。電路は、受動インラインコネクタにより、床部または側壁の断路器において終端をなし得る。
【0050】
ファイバリンクを使用することにより、従来の二軸およびカッド銅ケーブルに優るいくつかの利点が生じる。第1に、これらの種類のケーブルは、静電遮蔽の要件により、航空機上において100Mbpsの帯域幅に制限される。帯域幅−距離の性能は、マルチモードの光ファイバに関しては、銅ケーブルよりも高く、シングルモードの光ファイバケーブルに関しては、銅ケーブルよりも何桁も高い。デュアルカッド銅ケーブルは、適切な終端を用いることにより、キャビンサービスに関してこれまでに提示した1Gbpsを支援する。第2に、ファイバは、銅に比べ、依然として極めて手頃な価格である、スケーラブルな相互接続を提供する。さらに、従来の(銅の)リンクは、航空機のキャビンの静電遮蔽の要件を満たすために、費用のかかる終端と、重量のある遮蔽とを必要とする。ファイバは遮蔽を必要とせず、共通のジャケット内に束ねることができるため、重量が、同じ長さの(およびより性能の低い)従来の銅ベースのリンクの1/10以下であるリンクを提供する。
【0051】
加えて、同じ種類の光学リンクを用いて、デイジーチェーントポロジー(または星型もしくは他のネットワーク構成)内のSEBを相互接続して、座席から座席へのケーブル敷設を支援することができる。したがって、各レイヤ2スイッチ(すなわちシートエレクトロニクスボックス)は、デイジーチェーン内の隣接するSEBへのアップリンクポートおよびダウンリンクポートを支援することができる。さらに、ADBへのリターンデータリンクを設けて、1個のSEBが故障した場合にデイジーチェーン内のそれ以外のSEB間に引き続き相互接続が確保されるように、Ethernet(登録商標)スパニングツリープロトコル(Spanning Tree Protocol(STP))によるネットワークの再設定が可能になるようにすることができる。したがって、この発明は、耐故障性を有するモバイルプラットフォームのネットワークも提供する。
【0052】
さらに別の実施例では、軽量であることと、複数のファイバを1つのジャケットに束ねる機能とにより、各SEBからADB上のポートへの直接的な電路のアップリンクを提供することもできる。さらに、ファイバリンクは、軽量であることにより、(上述の、デイジー相互接続トポロジーに比べて)重量による不利益をほとんど生じない。したがって、SEBはこの発明に従って簡略化され得る。
【0053】
インシート配線のために、USBケーブルを用いて、オーディオおよび音声周辺装置をSEBに接続することができる。代替的に、Bluetooth(登録商標)ポートを設けてよい
。有利にも、Bluetooth(登録商標)を用いて、ネットワーク接続されたSEBに接続さ
れたホストに個人用周辺装置を接続することにより、インシート配線は、省略されるとは言わないまでも大いに簡略化される。したがって、この発明の原理に従って航空機の座席の重量および複雑性を減じることができる。
【0054】
さらに他の好ましい実施例において、シートエレクトロニクスボックスは、星型トポロジーに関して図5Cに示し、かつ、デイジートポロジーに関して図5Dに示したように、星型構成またはデイジー構成のいずれかにおいてエリアディストリビューションボックスに接続され得る。したがって、この発明の原理に従ってデイジートポロジーで構成された航空機のネットワークは、ほぼ以下のような航空機レベルの重量の削減を行なう(閉じられた、機上娯楽、キャビンサービス、およびローカルエリアネットワークのサブシステムを用いる航空機との比較)。
【0055】
150個の座席に付き200lbs、
250個の座席に付き360lbs、および
400個の座席に付き570lbs。
【0056】
デイジートポロジーで構成された航空機のネットワークについて、重量の削減は、ほぼ以下のようなものとなる(閉じられた、次世代の機上娯楽、キャビンサービス、およびローカルエリアネットワークのサブシステムを用いる航空機との比較)。
【0057】
150個の座席に付き100lbs、
250個の座席に付き190lbs、および
400個の座席に付き300lbs。
【0058】
同様に、この発明は、デイジートポロジーに対し、ほぼ以下のような省電力(航空機の燃料の要件に繋がる)を提供する(閉じられた、機上娯楽、キャビンサービス、およびローカルエリアネットワークのサブシステムを用いる航空機との比較)。
【0059】
150個の座席に付き2KW、
250個の座席に付き3.5KW、および
400個の座席に付き6KW。
【0060】
デイジートポロジーに関し、対応する省電力は、ほぼ以下のようなものとなる(閉じられた、次世代の機上娯楽、キャビンサービス、およびローカルエリアネットワークのサブシステムを用いる航空機との比較)。
【0061】
150個の座席に付き0.6KW、
250個の座席に付き0.8KW、および
400個の座席に付き1.5KW。
【0062】
次に図7を参照すると、座席318の一般的なグループが示される。1つ以上の座席318の下において、シートエレクトロニクスボックス328は、この明細書に記載するように、座席318内において、乗客に切換式の接続性を提供する。特に、電力ポート330、周辺ホストおよび持込品に対する10/100RJ−45ジャック332、オーディオおよび電話のヘッドセット用のUSBジャック334、持込品のネットワーク接続性を得るためのUSBジャック336、ファイバコネクタ338、および、内蔵型A/DコンバータによりアナログヘッドセットをデジタルUSBに変換するための3.5mmジャック340が示される。さまざまなUSB接続が、USBケーブル敷設により、背もたれ342および隔壁344上に取付けられたタブレットPCから乗客まで、隣接する座席318間の肘掛け346および操作卓348上のコネクタを介して提供される。しかしながら、コネクタのこれ以外の位置は、たとえば、座席318の下および頭上の制御ユニットを含む。
【0063】
加えて、この発明の原理に従ったネットワークは安全であり、かつ、どのようなサイズの航空機または他のモバイルプラットフォームに対してもスケーラブルである。さらにこの発明は、新規のサービス(シングルプレーヤおよびマルチプレーヤのオンラインゲーム等)の導入を容易にし、そして、キャビン内で使用される敷設ケーブルの重量および費用を大いに削減しながらも、これまでに利用可能であり、閉じられた、所有権が主張されるシステムよりも、優れた電磁干渉(Electro-Magnetic Interference(EMI))および
グラウンドループ抵抗を提供する。
【0064】
さまざまな好ましい実施例を説明してきたが、この発明の概念から逸脱することなく作成され得る変更例および変形例を当業者は認識するであろう。これらの例は、この発明を例示しており、この発明を限定するようには意図されていない。したがって、説明および請求項は、当該の先行技術を鑑みて必要とされるような限定のみを用いて、自由に解釈されるべきである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モバイルプラットフォームに適したローカルエリアネットワーク(LAN)であって、
前記LANは、
前記LANへのアクセスを提供するため開放型システム間相互接続(OSI)レイヤ3ルーティングを実行する少なくとも1つのエリアディストリビューションボックス(ADB)を備え、前記少なくとも1つのADBは、複数の異なるプラットフォームのサブシステムにより共通の周波数帯を使用してLANへのOSIレイヤ2接続を提供する少なくとも1つのスイッチとして構成され、
前記少なくとも1つのADBと通信する複数のシートエレクトロニクスボックス(SEB)を備え、各SEBが、前記SEBに対応する前記モバイルプラットフォーム上の座席のグループに関連付けられた仮想ローカルエリアネットワーク(VLAN)を提供するとともに、少なくとも1つの保護されたOSIレイヤ2ポートを各座席に提供するように構成されている、ローカルエリアネットワーク。
【請求項2】
前記モバイルプラットフォームは航空機を含む、請求項1に記載のローカルエリアネットワーク。
【請求項3】
前記少なくとも1つのADBと通信しかつ前記ローカルエリアネットワークを管理するための制御盤をさらに備える、請求項1に記載のローカルエリアネットワーク。
【請求項4】
前記少なくとも1つのADBと通信するための機内娯楽サーバをさらに備える、請求項1に記載のローカルエリアネットワーク。
【請求項5】
前記少なくとも1つのADBと通信するためのゲートウェイをさらに備える、請求項1に記載のローカルエリアネットワーク。
【請求項6】
前記少なくとも1つのADBと通信するための衛星送受信機をさらに備える、請求項1に記載のローカルエリアネットワーク。
【請求項7】
複数の異なるプラットフォームのサブシステムを含むローカルエリアネットワーク(LAN)を備え、
LANへのアクセスを提供するため開放型システム間相互接続(OSI)レイヤ3ルーティングを実行する少なくとも1つのエリアディストリビューションボックス(ADB)を備え、前記少なくとも1つのADBは、複数の異なるプラットフォームのサブシステムにより共通の周波数帯を使用してLANへのOSIレイヤ2接続を提供する少なくとも1つのスイッチとして構成され、
前記少なくとも1つのADBと通信する複数のシートエレクトロニクスボックス(SEB)を備え、各SEBが、前記SEBに対応する前記モバイルプラットフォーム上の座席のグループに関連付けられた仮想ローカルエリアネットワーク(VLAN)を提供するとともに、少なくとも1つの保護されたOSIレイヤ2ポートを各座席に提供するように構成されている、モバイルプラットフォーム。
【請求項8】
前記モバイルプラットフォームは航空機を含む、請求項7に記載のモバイルプラットフォーム。
【請求項9】
前記少なくとも1つのADBと通信し、かつ、前記ローカルエリアネットワークを管理するための制御盤をさらに備える、請求項7に記載のモバイルプラットフォーム。
【請求項10】
前記少なくとも1つのADBと通信するための機上娯楽サーバをさらに備える、請求項7に記載のモバイルプラットフォーム。
【請求項11】
前記少なくとも1つのADBと通信するためのゲートウェイをさらに備える、請求項7に記載のモバイルプラットフォーム。
【請求項12】
前記少なくとも1つのADBと通信するための衛星送受信機をさらに備える、請求項7に記載のモバイルプラットフォーム。
【請求項13】
モバイルプラットフォーム上で情報を配信する方法であって、
複数の異なるプラットフォームのサブシステムにより、プラットフォーム上で少なくとも1つのエリアディストリビューションボックス(ADB)を含んでいるローカルエリアネットワーク(LAN)へのアクセスを提供するステップを含み、前記ADBは、前記LANへのアクセスを提供するため開放型システム間相互接続(OSI)レイヤ3ルーティングを実行するように構成され、さらに、前記少なくとも1つのADBは、サブシステムにより共通の周波数帯を使用してLANへのOSIレイヤ2接続を提供する少なくとも1つのスイッチとして構成され、
前記LAN内で複数のシートエレクトロニクスボックス(SEB)を前記少なくとも1つのADBと接続するステップを含み、
各SEBが、前記SEBに対応する座席のグループに関連付けられた仮想ローカルエリアネットワーク(VLAN)を構成するステップを含み、前記VLANは、少なくとも1つの保護されたOSIレイヤ2ポートを各座席に提供する、方法。
【請求項14】
制御盤と通信して前記ローカルエリアネットワークを管理するように前記少なくとも1つのADBを設定するステップをさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
機上娯楽サーバと通信するように前記少なくとも1つのADBを設定するステップをさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
ゲートウェイと通信するように前記少なくとも1つのADBを設定するステップをさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
衛星データ送受信機と通信するように前記少なくとも1つのADBを設定するステップをさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項1】
モバイルプラットフォームに適したローカルエリアネットワーク(LAN)であって、
前記LANは、
前記LANへのアクセスを提供するため開放型システム間相互接続(OSI)レイヤ3ルーティングを実行する少なくとも1つのエリアディストリビューションボックス(ADB)を備え、前記少なくとも1つのADBは、複数の異なるプラットフォームのサブシステムにより共通の周波数帯を使用してLANへのOSIレイヤ2接続を提供する少なくとも1つのスイッチとして構成され、
前記少なくとも1つのADBと通信する複数のシートエレクトロニクスボックス(SEB)を備え、各SEBが、前記SEBに対応する前記モバイルプラットフォーム上の座席のグループに関連付けられた仮想ローカルエリアネットワーク(VLAN)を提供するとともに、少なくとも1つの保護されたOSIレイヤ2ポートを各座席に提供するように構成されている、ローカルエリアネットワーク。
【請求項2】
前記モバイルプラットフォームは航空機を含む、請求項1に記載のローカルエリアネットワーク。
【請求項3】
前記少なくとも1つのADBと通信しかつ前記ローカルエリアネットワークを管理するための制御盤をさらに備える、請求項1に記載のローカルエリアネットワーク。
【請求項4】
前記少なくとも1つのADBと通信するための機内娯楽サーバをさらに備える、請求項1に記載のローカルエリアネットワーク。
【請求項5】
前記少なくとも1つのADBと通信するためのゲートウェイをさらに備える、請求項1に記載のローカルエリアネットワーク。
【請求項6】
前記少なくとも1つのADBと通信するための衛星送受信機をさらに備える、請求項1に記載のローカルエリアネットワーク。
【請求項7】
複数の異なるプラットフォームのサブシステムを含むローカルエリアネットワーク(LAN)を備え、
LANへのアクセスを提供するため開放型システム間相互接続(OSI)レイヤ3ルーティングを実行する少なくとも1つのエリアディストリビューションボックス(ADB)を備え、前記少なくとも1つのADBは、複数の異なるプラットフォームのサブシステムにより共通の周波数帯を使用してLANへのOSIレイヤ2接続を提供する少なくとも1つのスイッチとして構成され、
前記少なくとも1つのADBと通信する複数のシートエレクトロニクスボックス(SEB)を備え、各SEBが、前記SEBに対応する前記モバイルプラットフォーム上の座席のグループに関連付けられた仮想ローカルエリアネットワーク(VLAN)を提供するとともに、少なくとも1つの保護されたOSIレイヤ2ポートを各座席に提供するように構成されている、モバイルプラットフォーム。
【請求項8】
前記モバイルプラットフォームは航空機を含む、請求項7に記載のモバイルプラットフォーム。
【請求項9】
前記少なくとも1つのADBと通信し、かつ、前記ローカルエリアネットワークを管理するための制御盤をさらに備える、請求項7に記載のモバイルプラットフォーム。
【請求項10】
前記少なくとも1つのADBと通信するための機上娯楽サーバをさらに備える、請求項7に記載のモバイルプラットフォーム。
【請求項11】
前記少なくとも1つのADBと通信するためのゲートウェイをさらに備える、請求項7に記載のモバイルプラットフォーム。
【請求項12】
前記少なくとも1つのADBと通信するための衛星送受信機をさらに備える、請求項7に記載のモバイルプラットフォーム。
【請求項13】
モバイルプラットフォーム上で情報を配信する方法であって、
複数の異なるプラットフォームのサブシステムにより、プラットフォーム上で少なくとも1つのエリアディストリビューションボックス(ADB)を含んでいるローカルエリアネットワーク(LAN)へのアクセスを提供するステップを含み、前記ADBは、前記LANへのアクセスを提供するため開放型システム間相互接続(OSI)レイヤ3ルーティングを実行するように構成され、さらに、前記少なくとも1つのADBは、サブシステムにより共通の周波数帯を使用してLANへのOSIレイヤ2接続を提供する少なくとも1つのスイッチとして構成され、
前記LAN内で複数のシートエレクトロニクスボックス(SEB)を前記少なくとも1つのADBと接続するステップを含み、
各SEBが、前記SEBに対応する座席のグループに関連付けられた仮想ローカルエリアネットワーク(VLAN)を構成するステップを含み、前記VLANは、少なくとも1つの保護されたOSIレイヤ2ポートを各座席に提供する、方法。
【請求項14】
制御盤と通信して前記ローカルエリアネットワークを管理するように前記少なくとも1つのADBを設定するステップをさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
機上娯楽サーバと通信するように前記少なくとも1つのADBを設定するステップをさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
ゲートウェイと通信するように前記少なくとも1つのADBを設定するステップをさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
衛星データ送受信機と通信するように前記少なくとも1つのADBを設定するステップをさらに含む、請求項13に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図6】
【図7】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図6】
【図7】
【公開番号】特開2011−68350(P2011−68350A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−257429(P2010−257429)
【出願日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【分割の表示】特願2006−514921(P2006−514921)の分割
【原出願日】平成16年5月20日(2004.5.20)
【出願人】(500520743)ザ・ボーイング・カンパニー (773)
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−257429(P2010−257429)
【出願日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【分割の表示】特願2006−514921(P2006−514921)の分割
【原出願日】平成16年5月20日(2004.5.20)
【出願人】(500520743)ザ・ボーイング・カンパニー (773)
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
【Fターム(参考)】
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