説明

高度水素化したブロック共重合体の製造方法

【課題】高度水素化したビニル芳香族/共役ジエンブロック共重合体の製造方法を提供する。
【解決手段】製造方法により得られたビニル芳香族/共役ジエンブロック共重合体は、水素化率が90%を上回り、高透明度、高ガラス転移点、低吸水性、強度、靱性、耐候性、溶融加工性、低い複屈折特性などの長所を有するため、光ディスク品、組立品、熱成形品、押出し成形品、射出成形品、薄膜などの多くの応用に適し、光ディスク、光学薄膜、導光板などの分野への応用に適した物理的性質を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素化したブロック共重合体の製造方法に関し、特に高度水素化したビニル芳香族/共役ジエンブロック共重合体(substantially hydrogenated vinyl aromatic/conjugated diene block copolymer)の量産製造に用いる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ビニル芳香族/共役ジエンブロック共重合体は、通常、ビニル芳香族重合物ブロックと共役ジエン重合物ブロックを含む。SEBS(Styrene-Ethylene-Butylene-Styrene)と
呼ばれる部分水素化したスチレン−ブタジエン−スチレン(styrene-butadiene-styrene
)、SEPS(Styrene-Ethylene-Propylene-Styrene)と呼ばれる部分水素化したスチレン−イソプレン−スチレン(styrene-isoprene-styrene)など、部分水素化したビニル芳香族/共役ジエンブロック共重合体がこの技術において広範に知られており、ここで使用されている名称「部分水素化」とは、ブロック重合物のジエン部分の水素化がすでに95%以上に達しているが、ビニル芳香族部分の芳香族の水素化が90%未満であることを表す。前記部分水素化したビニル芳香族/共役ジエンブロック共重合体は、すでに各種の様々な分野において応用されているが、耐熱性が低い、物理的性質がよくない、加工性がよくない、光安定性がよくないの問題を含むいくつかの欠点がある。業者は、ブロック重合物の芳香環部分の水素化率(hydrogenation level)を増加することによって、前記欠点
を解決することを試みている。
【0003】
高度水素化したビニル芳香族/共役ジエンブロック共重合体とは、ビニル芳香族部分の芳香族の水素化率が90%を上回ることを表す。この高度水素化したビニル芳香族/共役ジエンブロック共重合体は、高透明度(transparency)、高ガラス転移点(glass transition temperature)、低吸水性(water absorption)、優れた強度、優れた靱性、優れた耐候性、良好な溶融加工性(melt processability)、および比較的低い複屈折(birefringence)特性などの長所を有するため、これらの材料は、光ディスク品、組立品、熱成形(thermoformed)品、押出し成形(extruded)品、射出成形(injection molded articles)品、薄膜などの多くの応用に適した理想的な選択となっている。
【0004】
高度水素化したビニル芳香族/共役ジエンブロック共重合体は、多くの分野において広範に応用可能であるため、業者は前記高度水素化したビニル芳香族/共役ジエンブロック共重合体の量産に適した方法を必要としている。
【0005】
パラビニル芳香族/共役ジエンブロック共重合体を水素化する方法、および水素化したビニル芳香族/共役ジエンブロック共重合体のこの技術における応用は、例えば、特許文献1〜10で開示された内容のように広く知られており、本文において参照することができる。しかし、水素化率が90%を上回る高度水素化したビニル芳香族/共役ジエンブロック共重合体の精製に用いる溶剤除去工程については、議論されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許6,376,622号
【特許文献2】米国特許6,399,538号
【特許文献3】米国特許5,612,422号
【特許文献4】米国特許6,395,841号
【特許文献5】米国特許6,455,656号
【特許文献6】米国特許6,350,820号
【特許文献7】米国特許6,376,621号
【特許文献8】米国特許6,451,924号
【特許文献9】米国特許6,583,230号
【特許文献10】米国特許6,632,890号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、高度水素化したビニル芳香族/共役ジエンブロック共重合体の製造方法を提供することである。この高度水素化したビニル芳香族/共役ジエンブロック共重合体は、水素化率が90%を上回り、好ましくは95%を上回り、さらに好ましくは99%を上回るものをいう。前記の名称「水素化率」とは、本来の芳香環部分の不飽和結合が水素化によって飽和に変わった割合をいう。
【0008】
本発明のもう1つの目的は、高度水素化したビニル芳香族/共役ジエンブロック共重合体の重合物溶液における工程溶剤の除去に適した溶剤除去工程(solvent removal process)を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様において、高度水素化したブロック共重合体の製造方法は、ビニル芳香族重合物ブロックと共役ジエン重合物ブロックとにより構成されたブロック共重合体を、水素化触媒が存在する下で水素化剤と接触させることを介して水素化し、水素化率が90%を上回る水素化ブロック共重合体と溶剤とを含む重合物溶液を得るステップと、フラッシュ脱揮法(flash devolatilization)を利用して、処理温度が200〜300℃、処理圧力が1〜10Barの条件の下で重合物溶液中の溶剤を除去し、残余溶剤の含量がその総重量の1〜50重量%を占める濃縮した重合物溶液を得るステップと、脱揮装置を利用して、圧力が100torr(約13.3kPa)未満の条件下で、好ましくは20torr(約2.67kPa)未満で、濃縮した重合物溶液中の残余溶剤をさらに除去し、この水素化ブロック共重合体を分離するステップとを含む。
1実施形態において、重合物溶液をフラッシュタンク(flash tank)に入れ、フラッシュ脱揮法を利用して重合物溶液中の溶剤を除去するステップを行なう前に、9〜30Barの圧力を維持し、かつ先に予熱して200〜300℃の温度を維持することが好ましい。重合物溶液を相対的に低圧のフラッシュタンク中に入れると、重合物溶液中の溶剤をフラッシュ除去(flash off)することができる。
【0010】
1実施形態において、フラッシュ脱揮法を行なう間に使用する圧力は、水素化したブロック重合物を含む濃縮した重合物溶液が残余溶剤を有するようにするため、通常使用される圧力よりも高い。この残余溶剤は、濃縮した重合物溶液が粘りすぎないようにし、かつ後続の工程処理を行ないやすくすることができる。また、圧力の増加により、フラッシュ脱揮法に適した処理温度を、水素化したブロック重合物の溶融温度(melt temperature)以下まで下げることができ、これによって、この水素化したブロック重合物に分解(degradation)が発生することを防止することができる。
【0011】
重合物溶液中の溶剤を除去する工程において、大多数の溶剤は、先ずフラッシュ脱揮法を利用して除去し、濃縮した重合物溶液を得ることができる。この濃縮した重合物溶液の残余溶剤を有する含量は、濃縮した重合物溶液の総重量の1〜50重量%を占め、好ましくは1〜15重量%を占める。次に、この濃縮した重合物溶液を二軸押出機、薄膜蒸発機、二重脱揮装置(double flash tank)またはその組み合わせに移し、例えば、真空(2
0torr((約2.67kPa))未満など)の条件の下で、さらに余剰溶剤を除去することができる。本発明に基づき、前記重合物溶液中の溶剤を除去する2つの溶剤除去工程は、高効率かつ有効な方式を利用して水素化したビニル芳香族/共役ジエンブロック共
重合体の溶剤除去を行なうことができるだけでなく、例えば、極めて優れた加工性、高透明度などの理想的な性質を有する水素化ブロック共重合体の生産に用いることもできる。
【0012】
得られた高度水素化したビニル芳香族/共役ジエンブロック共重合体は、光ディスク、光学薄膜、導光板などへの使用に適した有益な物理特性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施例に基づいて提供される高度水素化したビニル芳香族/共役ジエンブロック共重合体の製造方法の流れ図である。
【図2】本発明の実施例に基づいて提供される脱揮発システムの概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、高度水素化したビニル芳香族/共役ジエンブロック共重合体の量産製造に適した該共重合体の製造方法に関し、方法は、水素化率が90%を上回る水素化ビニル芳香族/共役ジエンブロック共重合体と溶剤とを含む重合物溶液を提供し、かつ重合物溶液中の溶剤を除去し、水素化したビニル芳香族/共役ジエンブロック共重合体を分離するステップを含む。この水素化したビニル芳香族/共役ジエンブロック共重合体は、ビニル芳香族重合物ブロックと共役ジエン重合物ブロックとにより構成されたブロック共重合体を、水素化触媒が存在する下で水素化剤と接触させて得られる。
【0015】
ビニル芳香族重合物ブロックは、スチレン、α-メチルスチレン(alpha-methylstyrene)、ビニルトルエン(vinyl toluene)のすべての異性体(isomer)(特に、パラビニル
トルエン(paravinyltoluene))、エチルスチレン(ethyl styrene)のすべての異性体
、プロピルスチレン(propyl styrene)、ビニルビフェニル(vinyl biphenyl)、ビニルナフタレン(vinyl naphthalene)、ビニルアントラセン(vinyl anthracene)とこれと
同類のもの、およびその混合物などを含むビニル芳香族単量体(monomer)の重合により
形成することができる。共役ジエン重合物ブロックは、例えば、1,3-ブタジエン(1,
3-butadiene)、2−メチル−1,3−ペンタジエン(2-methyl-1,3 pentadiene)、
イソプレン(isoprene)と相似した化合物、およびその混合物などを含む共役ジエン単量体の重合により形成することができる。
【0016】
ここでいう「ブロック(block)」とは、共重合体の重合ブロックをいい、共重合体の
構造上または組成上異なる重合ブロックによりもたらされたミクロ相分離(microphase separation)を示す。ミクロ相分離の生成は、ブロック重合物中の重合ブロックの不和合
(incompatibility)または部分不和合(partial incompatibility)によりもたらされる。ミクロ相分離およびブロック共重合体については、「Block Copolymers-Designer Soft
Materials」,PHYSICS TODAY,1999年2月,32-38ページにおいて広範に議論されている。
【0017】
ブロック重合物は、少なくとも1つのビニル芳香族単量体および少なくとも1個の共役ジエン単量体の共重合体であり得る。ビニル芳香族/共役ジエンブロック共重合体は、アニオン重合法(anionic polymerization)により形成可能であり、その例はAnionic Polymerization: Principles and Practical Applications(H. L. Hsieh and R. P. Quirk,
Marcel Dekker, ニューヨーク,1996)を参照することができる。例えば、エチル基(ethyl-)、プロピル基(propyl-)、イソプロピル基(isopropyl-)、n−ブチル基(n-butyl-)、sec-ブチル基(sec.-butyl-)、tert-ブチル基(tert.-butyl)、フェニル基(phenyl−)、ヘキシルジフェニル基(hexyl-diphenyl-)、ブタジエニル基(butadienyl-)、ポリスチリル基(polystyryl-)などのリチウム化物の有機リチウム(organolithium)、または例えば、ヘキサメチレンジリチウム(hexamethylene-dilithium)、1,4-ジリチ
ウムブタン (1,4-dilithium-butane)、1,6-ジリチウムヘキサン(1,6-dilithium-hexane)、1,4-ジリチウム- 2-ブテン(1,4-dilithium-2-butene)、1,4-ジリ
チウムベンゼン(1,4-dilithium-benzene)などの化合物の多官能化合物(multifunctional compound)を使用して、重合反応の開始剤(polymerization initiator)とするこ
とが有利であり、n−ブチルおよび/またはsec-ブチル基のリチウム化合物を開始剤として使用することが好ましい。開始剤の含量は、この技術において広く知られており、当業者は過度の実験を経ずに簡単に確認することができる。
【0018】
ビニル芳香族重合物ブロックは、スチレンの重合により形成されることが好ましく、共役ジエン重合物ブロックは、ブタジエンまたはイソプレンの重合により形成されることが好ましい。ブロック共重合体は、数平均分子量(number average molecular weight)が
約40000〜150000であることが好ましく、約40000〜80000であることがさらに好ましい。ブロック共重合体におけるビニル芳香族重合物ブロックと共役ジエン重合物ブロックは、重量比が約40:60〜約90:10であることが好ましい。
【0019】
ビニル芳香族/共役ジエンブロック共重合体の重合反応は、通常、飽和炭化水素(saturated hydrocarbon)の溶剤、若しくはエーテル(ether)、ベンゼン(benzene)、トル
エン(toluene)、キシレン(xylene)またはエチルベンゼン(ethylbenzene)などの溶
剤の中で行ない、かつ、例えばシクロヘキサン(cyclohexane)またはメチルシクロヘキ
サン(methylcyclohexane)などの非極性(non-polar)の飽和炭化水素溶剤が好ましい。
【0020】
ブロック共重合体は、水素化触媒を使用して水素化反応を行なうことができる。水素化触媒は、VIII族の金属成分およびレニウム(rhenium)、モリブデン(molybdenum)、タ
ングステン(tungsten)、タンタル(tantalum)、ニオブ(niobium)、白金(platinum
)からなる群から選ばれた少なくとも1つの成分を含むことができる。この水素化触媒は、これらの成分を単独で含むことができるが、前記成分沈積のため、その他に担体(例えば、シリカ(silica)、アルミナ(alumina)または炭素)を含むことが好ましい。この
担体は、例えばシリカは、水銀圧入法(mercury porosimetry)で測定される少なくとも
98%の孔洞体積を有し、直径が600オングストローム(angstrom)を超える孔洞寸法を有することが好ましい。
【0021】
水素化反応は、非極性の飽和炭化水素溶剤の下で実施することが好ましい。このような溶剤において、重合物は可溶であり、かつこうした溶剤は水素化反応の進行を阻害しない。この溶剤は、重合反応を行なう溶剤と同じであることが好ましい。
【0022】
水素化反応の温度は、水素化反応を行ない重合物が著しい分解を受けないいかなる温度の下でも実施することができる。水素化反応を行なった後、数平均分子量の低下、多分散性(polydispersity)の増加またはガラス転移点の低下などを検出することによって、重合物の分解を知ることができる。通常の水素化反応温度は、約40℃以上とすることができ、約100℃以上が好ましく、約110℃以上がさらに好ましく、約120℃以上が最も好ましく、約250℃以下とし、約200℃以下が好ましく、180℃以下がさらに好ましく、170℃以下が最も好ましい。
【0023】
水素化剤は、水素を生成可能で、不飽和の重合物を効率的に水素化することができるいかなる化合物とすることができる。水素化剤は、水素、ヒドラジン(hydrazine)水素化
ホウ素ナトリウム(sodium borohydride)を含むがその限りでなく、水素化剤は水素が好ましい。
【0024】
水素化反応が終わった後、水素化触媒はろ過と回収を経て再利用することができる。
【0025】
この技術において、溶剤除去工程は、通常、重合物溶液中の残余単量体、工程溶剤およびその他の揮発性成分を除去するものであり、すなわち重合物を溶液の中から精製するた
めに用いる。この技術に適した溶剤除去工程は、フラッシュ脱揮法、沈降法、蒸留法、噴霧乾燥法、薄膜蒸発法などを含むがその限りでなく、重合物溶液中の溶剤の除去に用いる。ここでいうこれらの重合物を精製または分離するために用いる方法は、単独で、または組み合わせて使用することができ、重合物のタイプの違いおよび/または特定の需要に基づき、各種の設計を行なうことができる。
【0026】
2つの溶剤除去工程は、特に高効率および有効な方式を利用して溶剤を除去し、高度水素化したブロック共重合体を精製するためのものであり、かつ例えば透明度などの有利な性質に影響を及ぼさない。重合物溶液中の溶剤を除去する工程ステップにおいて、大多数の溶剤は、先ずフラッシュ脱揮法を利用して除去し、濃縮した重合物溶液を得ることができる。この濃縮した重合物溶液は、残余溶剤の含量が濃縮した重合物溶液の総重量の1〜50重量%を占め、1〜15重量%であることが好ましい。このステップにおいて、使用した溶剤の種類に基づき、重合物溶液は、9〜30Barの圧力を維持することができ、熱交換器(heat exchanger)を介し、200〜300℃の温度に予熱して維持することができる。次に、重合物溶液をフラッシュタンク中に移し、重合物溶液中の溶剤を除去する。除去は、200〜300℃のフラッシュタンクの温度および1〜10Barの圧力の条件下で実施することができる。重合物溶液を相対的に低圧のフラッシュタンク中に入れると、重合物溶液中の溶剤をフラッシュ除去することができる。こうして除去した溶剤は、凝固させて回収することができる。
【0027】
次に、濃縮した重合物溶液を脱揮装置に移し、圧力が100torr(約13.3kPa)未満、好ましくは20torr(約2.67kPa)未満の条件の下で、さらに残余溶剤を除去し、水素化ブロック共重合体を分離することができる。脱揮装置は、二軸押出機、薄膜蒸発機、雙脱揮装置またはその組み合わせを含むことができ、軸押出機が好ましい。除去された残余溶剤は、回収して再利用することができる。
【0028】
酸化防止剤(antioxidant)は、重合物溶液中の水素化触媒のろ過ステップの後、およ
び重合物溶液中の溶剤の除去ステップの前に、重合物溶液中に添加することができる。こうして得られた水素化したブロック重合物は、重合物溶液が高温を受けたことによる酸化または変色を防止することができる。1実施形態において、酸化防止剤は、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(hindered phenolic antioxidant)または/およびリン酸エステ
ル系酸化防止剤を含むことができ、その分解温度は150℃以上が好ましい。
【0029】
本発明に基づき、前記重合物溶液中の溶剤を除去する2つの工程は、水素化したビニル芳香族/共役ジエンブロック共重合体を高効率かつ有効に精製することができ、かつ得られた高度水素化したビニル芳香族/共役ジエンブロック共重合体は、高透明度、高ガラス転移点、低吸水性、優れた強度、優れた靱性、優れた耐候性、良好な溶融加工性、および比較的低い複屈折特性などの長所を有する。そのため、これらの材料は、光ディスク、光学薄膜、および導光板などの応用に特に適している。
【0030】
以下の実施例は、本発明を説明するために提供するものでしかなく、本発明の範囲を制限することを意図したものではない。別途説明がある場合を除き、記述された含量は重量部または重量%である。
(実施例)
【0031】
本発明をさらに理解しやすくするため、以下の詳細な記述では、図1および図2を一緒に参照する。図1は、本発明の実施例に基づいて提供される高度水素化したビニル芳香族/共役ジエンブロック共重合体の製造方法の流れ図である。図2は、本発明の実施例に基づいて提供される脱揮発システムの概要図である。
【0032】
溶剤および単量体中に存在する不純物および水が、除去される前に重合反応システム中に入ると、重合反応触媒の活性に影響を及ぼす。大量の不純物は、触媒を失効させるか、または重合物溶液の理想的な分子量が得られにくくなる。
【0033】
乾燥除水後の活性アルミナを充填した乾燥塔(drying tower)を、通常、溶剤および単量体中の水分および不純物の吸着に用いることができる。シクロヘキサン、ブタジエン、スチレンなど、現在の工業用の溶剤は、通常、すでに先に乾燥塔を通過しているが、残存した不純物および水分は、重合反応の結果に十分影響を及ぼす。そのため、例えば、ブタジエンおよびスチレンなどの単量体、およびシクロヘキサン溶剤は、さらに精製および脱水ステップを行なうことが好ましい(図1のステップ10)。実務上、この追加の精製および脱水ステップ10を行なった後、溶剤および単量体中に残存した不純物および水分は、10ppm以下に下げることができる。
【0034】
重合反応ステップ12において、先ずシクロヘキサン溶剤800キログラムを2000リットルの耐圧反応器中に注入した。この耐圧反応器は、10Barの圧力および150℃の温度に耐えることができる。特定量のビニル芳香族単量体を三等分し、特定量の共役ジエン単量体を二等分した。次に、ビニル芳香族単量体一部と共役ジエン単量体一部とを順番に、かつ交互に5回に分けて添加し、5ブロック共重合体を製造した。実施例1において、スチレン単量体149キログラムを三等分し、ブタジエン単量体25キログラムを二等分した。次に、スチレン単量体一部とブタジエン単量体一部とを順番に、かつ交互に5回に分けて添加し、有機リチウム開始剤が存在する下でスチレン−ブタジエン−スチレン-ブタジエン-スチレンの5ブロック共重合体を製造した。
【0035】
重合反応は、開始温度50℃とし、100℃までの反応温度の下で重合反応を行なった。反応物を徐々に耐圧反応器中に添加し、反応熱の生成により、反応圧が温度の上昇に伴い上昇した。
【0036】
スチレン−ブタジエン−スチレン-ブタジエン-スチレンの5ブロック共重合体を得た後、重合反応停止剤(terminator)であるメタノールを添加することにより重合反応を停止することができた。添加した単量体はほぼ完全に反応したため、実施例1において得られたスチレン−ブタジエン−スチレン-ブタジエン-スチレンの5ブロック共重合体中のスチレンおよびブタジエンは、約85:15の重量比を有した。
【0037】
重合物溶液(約974キログラム)とダウ・ケミカル・カンパニー(DOW Chemical Company)製の白金/レニウム-シリカ担体水素化触媒30キログラムを500gal約1.
89m3の循環式反応器(Loop Reactor)中に一緒に添加した。水素化反応ステップ14
は、温度を170℃に設定し、圧力を40kg/cm2に設定した条件下で少なくとも4時間反応した。水素化反応が終了すると(すなわち、水素が消耗しなくなると)、圧力と温度を下げ、かつ余分な水素を排出した。この水素化後の重合物溶液は、紫外/可視分光計で波長2605ナノメートル(nm)の条件の下で測定された水素化率が、99%を上回った。
【0038】
多数の水素化触媒が、ろ過ステップ16を介して重合物溶液中から除去することができ、触媒を回収することができた(ステップ17)。この水素化後の重合物溶液は、先ずFundabacろ過器によってろ過し、さらに袋ろ過器(bag filter)によってさらに微細な水素化触媒を除去することができた。最後に、ろ過後の重合物溶液を緩衝槽30中に移した。酸化防止剤Irganox 1010(製造元Cibaから購入)をろ過後の重合物溶液中に添加することができる(ステップ18)。
【0039】
この実施例において、溶剤の除去工程は、2つのステップ20および22を含む。前記
のすでに水素化およびろ過した後の重合物溶液は、輸送管35を経て熱交換器40中に移し、かつこの熱交換器40を介して約230℃の設定温度まで加熱し、約23Barの設定圧力の条件を維持した。この加熱した重合物溶液は、温度および圧力がいずれも熱交換器40の温度圧力条件を模した条件を維持した輸送管45を経て、フラッシュタンク50中に連続投入し、フラッシュ脱揮法を介し、約230℃の温度および約1〜2Barの圧力条件の下で重合物溶液中の大多数の溶剤を除去し、濃縮した重合物溶液を得た(溶剤除去の第1ステップ20)。溶剤を除去した後、凝固させ、管60を経て輸送し、溶剤の回収を行なった(ステップ21)。溶剤除去の第1ステップ20の後、濃縮した重合物溶液は、得られることが予想される残余溶剤の含量が濃縮した重合物溶液の総重量の約10重量%を占めた。濃縮した重合物溶液を、歯車ポンプ70を介して、転送管55を経て、二軸押出機80(JSW TEX alpha−54)に輸送し、さらに余剰溶剤を除去した(溶剤除去の第2ステップ22は)。この二軸押出機80は、設定圧力が約10torr(約1.33kPa)未満および温度約230℃の条件の下で、例えば2〜10分など、適切な時間で、余剰溶剤を除去した。溶剤除去の第2のステップ22の後、得られたスチレン−ブタジエン−スチレン-ブタジエン-スチレンの5ブロック共重合体は、ペレット製造システムに入れて重合物粒子を形成することができた。
【0040】
本発明のその他の実施例2〜10のパラメータ条件は、次の各表のとおりであった。
【0041】
【表1】

【0042】
【表2】

【0043】
得られたスチレン−ブタジエン−スチレン-ブタジエン-スチレンのブロック共重合体、およびスチレン−イソプレン−スチレン-イソプレン-スチレンのブロック共重合体のうち、ブロック共重合体のシクロヘキサン溶剤の残余量は500ppm未満であり、重合物粒子は、分光計SE2000(Nippon Denshoku Kogyo Industries Co., Ltd.)を介して得られた黄色度(Yellowness Index;YI)値が1以下であり、得られたブロック共重合体が
極めて優れた透明度および光安定性を有することが示された。
【0044】
本発明は、特定の好ましい実施例を特に合わせて説明したが、当業者が本明細書を参照して多種の代替、修正および変更を行なうことができることは明らかである。そのため、
添付した特許請求の範囲は、本発明の実際の範囲および主旨を逸脱しないこれらのいかなる代替、修正および変更を網羅する。
【符号の説明】
【0045】
10 単量体/溶剤精製
12 重合反応
14 水素化反応
16 ろ過
17 触媒回収
18 酸化防止剤添加
20 溶剤除去第1ステップ
21 溶剤回収
22 溶剤除去第2ステップ
23 溶剤回収
24 重合物造粒
30 緩衝槽
35 輸送管
40 熱交換器
45 輸送管
50 フラッシュタンク
55 転送管
60 管
70 歯車ポンプ
80 二軸押出機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビニル芳香族重合物ブロックと共役ジエン重合物ブロックとにより構成されたブロック共重合体を、水素化触媒が存在する下で水素化剤と接触させることを介して水素化し、ビニル芳香族部分の芳香族の水素化率が90%を上回る水素化ブロック共重合体と溶剤とを含む重合物溶液を得るステップと、
フラッシュ脱揮法を利用して、処理温度が200〜300℃、処理圧力が1〜10Barの条件下で該重合物溶液中の該溶剤を除去し、残余溶剤の含量が該濃縮した重合物溶液の総重量の1〜50重量%を占める濃縮した重合物溶液を得るステップと、
脱揮装置を利用して、圧力が100torr(13.3kPa)未満の条件の下で、該濃縮した重合物溶液中の該残余溶剤を除去し、該水素化ブロック共重合体を分離するステップと、
を含む高度水素化したブロック共重合体の製造方法。
【請求項2】
該ビニル芳香族重合物ブロックが、スチレンの重合により形成される請求項1に記載の高度水素化したブロック共重合体の製造方法。
【請求項3】
該共役ジエン重合物ブロックが、ブタジエンまたはイソプレンの重合により形成される請求項1に記載の高度水素化したブロック共重合体の製造方法。
【請求項4】
該ブロック共重合体が、少なくとも1つのビニル芳香族単量体および少なくとも1個の共役ジエン単量体の共重合体である請求項1に記載の高度水素化したブロック共重合体の製造方法。
【請求項5】
該ブロック共重合体が、数平均分子量40000〜150000を有する請求項1に記載の高度水素化したブロック共重合体の製造方法。
【請求項6】
該ブロック共重合体中の該ビニル芳香族重合物ブロックと該共役ジエン重合物ブロックとが、約40:60〜約90:10の重量比を有する請求項1に記載の高度水素化したブロック共重合体の製造方法。
【請求項7】
該溶剤が非極性溶剤を含む請求項1に記載の高度水素化したブロック共重合体の製造方法。
【請求項8】
該非極性溶剤がシクロヘキサンを含む請求項7に記載の高度水素化したブロック共重合体の製造方法。
【請求項9】
該水素化触媒がVIII族の金属成分およびレニウム、モリブデン、タングステン、タンタル、ニオブ、白金からなる群から選ばれる少なくとも1つの成分を含む請求項1に記載の高度水素化したブロック共重合体の製造方法。
【請求項10】
該水素化触媒がシリカをさらに含む請求項9に記載の高度水素化したブロック共重合体の製造方法。
【請求項11】
該脱揮装置が、二軸押出機、薄膜蒸発機、二重脱揮装置またはその組み合わせを含む請求項1に記載の高度水素化したブロック共重合体の製造方法。
【請求項12】
該重合物溶液中の該溶剤を除去するステップの前に、先に該重合物溶液をろ過するステップをさらに含む請求項1に記載の高度水素化したブロック共重合体の製造方法。
【請求項13】
該重合物溶液をろ過するステップの後、および該重合物溶液中の該溶剤を除去するステップの前に、酸化防止剤を該重合物溶液中に添加するステップをさらに含む請求項12に記載の高度水素化したブロック共重合体の製造方法。
【請求項14】
該酸化防止剤が、ヒンダードフェノール系酸化防止剤または/およびリン酸エステル系酸化防止剤を含み、該酸化防止剤の分解温度が150℃以上である請求項13に記載の高度水素化したブロック共重合体の製造方法。
【請求項15】
該水素化剤が、水素、ヒドラジンまたは水素化ホウ素ナトリウムを含む請求項1に記載の高度水素化したブロック共重合体の製造方法。
【請求項16】
該ブロック共重合体が、有機リチウム化合物を含む重合反応開始剤を使用することを介して形成される請求項1に記載の高度水素化したブロック共重合体の製造方法。
【請求項17】
該重合物溶液をフラッシュタンクに入れ、該フラッシュ脱揮法を利用して該重合物溶液中の該溶剤を除去するステップを行なう前に、9〜30Barの圧力を維持する請求項1に記載の高度水素化したブロック共重合体の製造方法。
【請求項18】
該重合物溶液を該フラッシュタンクに入れ、該フラッシュ脱揮法を利用して該重合物溶液中の該溶剤を除去するステップを行なう前に、先に予熱して200〜300℃の温度を維持する請求項17に記載の高度水素化したブロック共重合体の製造方法。
【請求項19】
該濃縮した重合物溶液中の該残余溶剤を除去するステップを、二軸押出機により200〜300℃の温度の下で行なう請求項1に記載の高度水素化したブロック共重合体の製造方法。
【請求項20】
該水素化率が95%を上回る請求項1に記載の高度水素化したブロック共重合体の製造方法。
【請求項21】
該脱揮装置を利用して該濃縮した重合物溶液中の該残余溶剤を除去するステップを、該圧力が20torr(2.67kPa)未満の条件の下で行ない、該水素化ブロック共重合体を分離する請求項1に記載の高度水素化したブロック共重合体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−155966(P2010−155966A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−164026(P2009−164026)
【出願日】平成21年7月10日(2009.7.10)
【出願人】(506156595)台橡股▲ふん▼有限公司 (6)
【Fターム(参考)】