説明

高強度ソイルセメントスラリー調製用の流動化剤

【課題】土壌に対するセメントミルクの注入率を下げ、廃棄することとなる建設汚泥の発生量を抑えた場合であっても、調製したソイルセメントスラリーに高流動性を付与することができ、同時に調製したソイルセメントスラリーから高強度の硬化体、具体的には材齢28日の一軸圧縮強度が10N/mm以上となるような高強度の硬化体を得ることができる高強度ソイルセメントスラリー調製用の流動化剤を提供する。
【解決手段】分子中に特定の2種類の構成単位を特定の割合で有する特定の水溶性ビニル共重合体を60〜98質量%、また特定の低級モノアルコールのポリアルキレンオキサイド付加物を2〜40質量%(合計100質量%)の割合で含有して成るものを高強度ソイルセメントスラリー調製用の流動化剤とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は高強度ソイルセメントスラリー調製用の流動化剤に関する。ソイルセメントスラリーは土壌とセメントミルクとを混合して調製したもので、軟弱地盤改良工事、土留め壁工事、地下止水工事、基礎杭工事、埋め戻し工事等で、CRM工法、SMW工法、TRD工法等に使用されている。これらの工法のうちでCRM工法は、掘削により発生した土壌とセメントミルクとを地上設備で混合してソイルセメントスラリーを調製し、このソイルセメントスラリーを掘削孔に戻す工法であり、またSMW工法やTRD工法は、原位置地盤に直接セメントミルクを注入し、地中で混合してソイルセメントスラリーを調製する工法である。いずれの工法においても、環境保全の観点から土壌に対するセメントミルクの注入率を下げ、廃棄することとなる建設汚泥の発生量を抑えた場合であっても、調製したソイルセメントスラリーに充分な流動性を確保し、同時に調製したソイルセメントスラリーから得られる硬化体が充分な強度を発現することが要求される。例えば調製したソイルセメントスラリーから杭等の高強度の硬化体を得るような場合には、得られる硬化体が材齢28日の一軸圧縮強度で10N/mmを超えるような高強度を発現することが要求されるのである。本発明はかかる要求に応える高強度ソイルセメントスラリー調製用の流動化剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ソイルセメントスラリーを調製する際に、各種の流動化剤を用いることが知られている(例えば特許文献1〜5参照)。しかし、これら従来の流動化剤には、前記したような高強度ソイルセメントスラリーを調製できないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−169209号公報
【特許文献2】特開2002−114550号公報
【特許文献3】特開2006−131435号公報
【特許文献4】特開2006−347784号公報
【特許文献5】特開2007−169547号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、土壌に対するセメントミルクの注入率を下げ、廃棄することとなる建設汚泥の発生量を抑えた場合であっても、調製したソイルセメントスラリーに高流動性を付与することができ、同時に調製したソイルセメントスラリーから高強度の硬化体、具体的には材齢28日の一軸圧縮強度が10N/mm以上となるような高強度の硬化体を得ることができる高強度ソイルセメントスラリー調製用の流動化剤を提供する処にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
しかして本発明者らは前記の課題を解決するべく研究した結果、高強度ソイルセメントスラリー調製用の流動化剤としては特定の2成分を特定の割合で含有する一液混合タイプのものを用いるのが正しく好適であることを見出した。
【0006】
すなわち本発明は、下記のA成分及びB成分から成り、該A成分を60〜98質量%及び該B成分を2〜40質量%(合計100質量%)の割合で含有して成ることを特徴とする高強度ソイルセメントスラリー調製用の流動化剤に係る。
【0007】
A成分:分子中に下記の構成単位Lを40〜60モル%及び下記の構成単位Mを60〜40モル%(合計100モル%)の割合で有する質量平均分子量(GPC法、プルラン換算)が2000〜70000の水溶性ビニル共重合体。
【0008】
構成単位L:マレイン酸から形成された構成単位及びマレイン酸塩から形成された構成単位から選ばれる一つ又は二つ以上。
構成単位M:分子中に15〜80個のオキシエチレン単位のみで構成されたポリオキシエチレン基を有するα−アリル−ω−メチル−ポリオキシエチレンから形成された構成単位及び分子中に15〜80個のオキシエチレン単位のみ又は合計15〜80個のオキシエチレン単位とオキシプロピレン単位の双方で構成されたポリオキシアルキレン基を有するα−アリル−ω−ヒドロキシ−ポリオキシアルキレンから形成された構成単位から選ばれる一つ又は二つ以上。
【0009】
B成分:下記の化1で示されるポリアルキレンオキサイド付加物であって、質量平均分子量(GPC法、ポリスチレン換算)が2000〜18000のポリアルキレンオキサイド付加物。
【0010】
【化1】

【0011】
化1において、
:炭素数3〜6の脂肪族炭化水素基
:分子中にオキシエチレン単位とオキシプロピレン単位の双方で構成され且つオキシエチレン単位/オキシプロピレン単位=20/80〜80/20(モル比)の割合からなるポリオキシアルキレン基を有するポリアルキレングリコールから全ての水酸基を除いた残基
【0012】
本発明に係る高強度ソイルセメントスラリー調製用の流動化剤(以下単に本発明の流動化剤という)はA成分とB成分から成るものである。本発明の流動化剤に供するA成分は、分子中に構成単位Lを40〜60モル%、好ましくは45〜55モル%、また構成単位Mを60〜40モル%、好ましくは55〜45モル%(合計100モル%)の割合で含有する質量平均分子量が2000〜70000、好ましくは3000〜50000の水溶性ビニル共重合体である。ここでA成分の水溶性ビニル共重合体の質量平均分子量はGPC法(ゲル浸透クロマトグラフ法、以下同じ)で測定したプルラン換算の質量平均分子量である。
【0013】
構成単位Lとしては、1)マレイン酸から形成された構成単位、2)マレイン酸塩から形成された構成単位、3)マレイン酸から形成された構成単位とマレイン酸塩から形成された構成単位の双方が挙げられる。ここで、マレイン酸塩から形成された構成単位としては、イ)マレイン酸のリチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩から形成された構成単位、ロ)マレイン酸のジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の有機アミン塩から形成された構成単位が挙げられるが、なかでもマレイン酸のアルカリ金属塩から形成された構成単位が好ましく、マレイン酸のナトリウム塩から形成された構成単位がより好ましい。
【0014】
構成単位Mとしては、1)分子中に15〜80個のオキシエチレン単位のみで構成されたポリオキシエチレン基を有するα−アリル−ω−メチル−ポリオキシエチレンから形成された構成単位、2)分子中に15〜80個のオキシエチレン単位のみで構成されたポリオキシエチレン基を有するα−アリル−ω−ヒドロキシ−ポリオキシエチレンから形成された構成単位、3)分子中に合計15〜80個のオキシエチレン単位とオキシプロピレン単位とで構成されたポリオキシアルキレン基を有するα−アリル−ω−ヒドロキシ−ポリオキシアルキレンから形成された構成単位、4)前記1)〜3)の構成単位から選ばれる二つ以上の構成単位が挙げられる。オキシエチレン単位とオキシプロピレン単位との双方で構成されたポリオキシアルキレン基の場合、オキシエチレン単位とオキシプロピレン単位の結合様式はブロック状であってもランダム状であってもよいが、ブロック状が好ましい。前記の1)〜4)のなかでも構成単位Mとしては、1)の構成単位が好ましく、なかでも分子中に20〜70個のオキシエチレン単位のみで構成されたポリオキシエチレン基を有するα−アリル−ω−メチル−ポリオキシエチレンから形成されたものがより好ましい。
【0015】
A成分の水溶性ビニル共重合体それ自体は公知の方法で合成できる。かかる合成には例えば、特公昭58−38380号公報、特開2005−132955号公報及び特開2008−273766号公報等に記載されている方法が適用できる。
【0016】
A成分の水溶性ビニル共重合体は、質量平均分子量(GPC法、プルラン換算)が2000〜70000の範囲のものであるが、3000〜50000の範囲のものが好ましい。
【0017】
本発明の流動化剤に供するB成分は化1で示されるポリアルキレンオキサイド付加物である。化1中のRは炭素数3〜6の脂肪族炭化水素基であり、これには例えばプロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基及びこれらの異性体等が挙げられるが、なかでも炭素数4のブチル基が好ましい。
【0018】
化1中のAは、分子中にオキシエチレン単位とオキシプロピレン単位の双方で構成され且つオキシエチレン単位/オキシプロピレン単位=20/80〜80/20(モル比)の割合からなるポリオキシアルキレン基を有するポリアルキレングリコールから全ての水酸基を除いた残基であるが、なかでも分子中にオキシエチレン単位/オキシプロピレン単位=30/70〜70/30(モル比)の割合からなるポリオキシアルキレン基を有するポリアルキレングリコールから全ての水酸基を除いた残基が好ましい。
【0019】
化1で示されるB成分のポリアルキレンオキサイド付加物は、炭素数3〜6の低級脂肪アルコールにエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドを前記の割合となるよう付加させる公知の方法で合成できる。その場合、オキシエチレン単位とオキシプロピレン単位の結合様式はブロック状であってもランダム状であってもよいが、ランダム状が好ましい。またB成分のポリアルキレンオキサイド付加物の質量平均分子量は2000〜18000の範囲とするが、3000〜15000の範囲とするのが好ましい。ここでB成分のポリアルキレンオキサイド付加物の質量平均分子量はGPC法で測定したポリスチレン換算の質量平均分子量である。以上説明したB成分のポリアルキレンオキサイド付加物は、土壌中の粘土塊粒子にぬれ性と潤滑性を付与し、主に土粒子の分散剤として作用するA成分の水溶性ビニル共重合体と併用したときに相乗効果として練り混ぜ性能を大きく助長する。更には凝結遅延性を小さくする効果も加わり材齢7日までの初期強度を充分に発現させる。
【0020】
本発明の流動化剤は、以上説明したA成分とB成分とから成るものである。A成分及びB成分の含有割合は、A成分60〜98質量%及びB成分2〜40質量%(合計100質量%)とするが、A成分65〜95質量%及びB成分5〜35質量%(合計100質量%)とするのが好ましい。本発明の流動化剤中のA成分及びB成分の含有割合は、以上のような含有割合の範囲内にて、それを含有させたセメントミルクと混合する土壌の性状との関係で適宜選択するのが好ましい。
【0021】
本発明の流動化剤は通常、土壌とセメントミルクとを混合して高強度ソイルセメントスラリーを調製する際に、セメントミルクに含有させて用いる。かかるセメントミルクに用いるセメントとしては、普通ポルトランドセメント、高炉セメント、フライアッシュセメント等が挙げられるが、高炉セメントが好ましく、なかでも汎用の高炉B種セメントが好ましい。セメントの使用量は、土壌とセメントミルクとを混合して高強度ソイルセメントスラリーを調製したときに、土壌1m当たりセメントが通常は200〜500kgとなるようにするが、好ましくは300〜450kgとなるようにする。
【0022】
本発明の流動化剤は、これを中性乃至アルカリ性水溶液となし、かかる中性乃至アルカリ性水溶液を土壌と混合するセメントミルクに含有させて用いるのが好ましい。なかでも、本発明の流動化剤をその濃度1質量%の水溶液としたときにpHが7.5〜10となるようなアルカリ性水溶液として用いると、より優れた所期の効果が発現される。かかるアルカリ性水溶液の調製は例えばアルカリ金属水酸化物を用いて行なうことができる。
【0023】
調製する高強度ソイルセメントスラリーの流動性は、土壌の種類(粘土質土壌、シルト質土壌、砂質土壌等)によって変動し、特に粒子径の細かい粘土を多く含む粘性質土壌は含水比が高く流動性が低下し易いため、相応の流動化剤が必要となる。また高強度ソイルセメントスラリーを調製するためには、土壌と混合するセメントミルクの水/セメント比をできるだけ小さくすることが重要であり、この場合も相応の流動化剤が必要となる。得られる硬化体の材令28日の一軸圧縮強度が10N/mm以上となるような高強度ソイルセメントスラリーを調製するためには、土壌と混合するセメントミルクの水/セメント比を25〜80%とするのが好ましく、30〜65%とするのがより好ましい。また土壌も水を含んでおり、粘性質土壌等は含水比で約30〜100%も含水しているので、かかる土壌の水を考慮して、調製する高強度ソイルセメントスラリーにおける水/セメント比が130〜250%となるようにするのが好ましい。
【0024】
本発明の流動化剤は通常、土壌とセメントミルクとを混合して高強度ソイルセメントスラリーを調製する際に該セメントミルクに含有させて用いるが、このときの本発明の流動化剤の使用量は、土壌1m当たり2〜20kgの割合となるようにするのが好ましく、4〜15kgの割合となるようにするのがより好ましい。
【0025】
高強度ソイルセメントスラリーの調製に際しては、本発明の流動化剤の外に、合目的的に他の剤を併用することができる。かかる他の剤としては、消泡剤、凝結遅延剤、材料分離防止剤、凝結促進剤、防水剤等が挙げられる。
【発明の効果】
【0026】
本発明の流動化剤を用いると、環境保全の観点から土壌に対するセメントミルクの注入率を下げ、廃棄することとなる建設汚泥の発生量を抑えた場合であっても、調製したソイルセメントスラリーに高流動性を付与することができ、同時に調製したソイルセメントスラリーから高強度の硬化体、具体的には材齢28日の一軸圧縮強度が10N/mm以上となるような高強度の硬化体を得ることができる。
【0027】
以下、本発明の構成及び効果をより具体的にするため、実施例等を挙げるが、本発明が該実施例に限定されるというものではない。なお、以下の実施例等において、別に記載しない限り、%は質量%を、また部は質量部を意味する。
【実施例】
【0028】
試験区分1(A成分としての水溶性ビニル共重合体の合成)
・水溶性ビニル共重合体(a−1)の合成
無水マレイン酸98g(1.0モル)及びα−アリル−ω−メチル−ポリオキシエチレン(オキシエチレン単位の数33、以下n=33とする)1512g(1.0モル)を反応容器に仕込み、徐々に加温して攪拌しながら均一に溶解した後、反応容器内の雰囲気を窒素置換した。反応系の温度を温水中にて80℃に保ち、過酸化ベンゾイル3gを投入してラジカル重合反応を開始した。更に過酸化ベンゾイル3gを分割投入し、ラジカル重合反応を4時間継続して反応させた。得られた共重合体に水を加えて加水分解し水溶性ビニル共重合体(a−1)の40%水溶液を得た。水溶性ビニル共重合体(a−1)を分析したところ、マレイン酸から形成された構成単位/α−アリル−ω−メチル−ポリオキシエチレン(n=33)から形成された構成単位=50/50(モル比)の割合で有する質量平均分子量(GPC法、プルラン換算)が22000の水溶性ビニル共重合体であった。
【0029】
・水溶性ビニル共重合体(a−2)、(a−3)及び(ar−1)〜(ar−3)の合成
水溶性ビニル共重合体(a−1)と同様にして、水溶性ビニル共重合体(a−2)、(a−3)及び(ar−1)〜(ar−3)を合成した。
【0030】
・水溶性ビニル共重合体(a−4)の合成
α−アリル−ω−ヒドロキシ−ポリオキシエチレン(n=30)1370g(1.0モル)、マレイン酸116g(1.0モル)及び水1760gを反応容器に仕込み、撹拌しながら均一に溶解した後、雰囲気を窒素置換した。反応系の温度を温水浴にて80℃に保ち、過硫酸ナトリウムの20%水溶液15gを加えてラジカル重合反応を開始した。更に過硫酸ナトリウムの20%水溶液5gを加え、ラジカル重合反応を5時間継続して反応を完結し、水溶性ビニル共重合体を得た後、48%水酸化ナトリウム水溶液167g(2.0モル)を加えて中和し、水を390g加えて水溶性ビニル共重合体(a−4)の40%水溶液を得た。水溶性ビニル共重合体(a−4)を分析したところ、マレイン酸ナトリウムから形成された構成単位/α−アリル−ω−ヒドロキシ−ポリオキシエチレン(n=30)から形成された構成単位=50/50(モル比)の割合で有する質量平均分子量(GPC法、プルラン換算)が20600の水溶性ビニル共重合体であった。
【0031】
・水溶性ビニル共重合体(a−5)及び(ar−4)〜(ar−7)の合成
水溶性ビニル共重合体(a−4)と同様にして、水溶性ビニル共重合体(a−5)及び(ar−4)〜(ar−7)を合成した。以上で合成したA成分としての各水溶性ビニル共重合体の内容を表1にまとめて示した。














【0032】
【表1】

【0033】
表1において、
質量平均分子量:GPC法、プルラン換算
L−1:マレイン酸
L−2:マレイン酸ナトリウム
M−1:α−アリル−ω−メチル−ポリオキシエチレン(n=33)
M−2:α−アリル−ω−メチル−ポリオキシエチレン(n=22)
M−3:α−アリル−ω−メチル−ポリオキシエチレン(n=68)
M−4:α−アリル−ω−ヒドロキシ−ポリオキシエチレン(n=30)
M−5:α−アリル−ω−ヒドロキシ−ポリオキシエチレン(n=50)ポリオキシプロピレン(オキシプロピレン単位の数5、以下m=5とする)
M−6:α−アリル−ω−ヒドロキシ−ポリオキシエチレン(n=105)
M−7:α−アリル−ω−ヒドロキシ−ポリオキシエチレン(n=9)
M−8:α−アリル−ω−ヒドロキシ−ポリオキシエチレン(n=7)ポリオキシプロピレン(m=2)
【0034】
試験区分2(B成分としてのポリアルキレンオキサイド付加物の合成)
・ポリアルキレンオキサイド付加物(b−1)の合成
ノルマルブチルアルコール111g(1.5モル)をオートクレーブに仕込み、触媒として水酸化カリウムを14.3g加えた後、オートクレーブ内を窒素置換した。攪拌しながら、反応温度を110〜135℃に保ち、エチレンオキサイド5808g(132モル)とプロピレンオキサイド7670g(132モル)を予め混合した混合液を圧入してランダム付加反応を行なった。圧入終了後、同温度で2時間熟成して反応を終了し、生成物を得た。この生成物を吸着材で処理した後、濾別精製した。これを分析したところ、化1中のRがブチル基、Aがオキシエチレン単位とオキシプロピレン単位との双方で構成され且つオキシエチレン単位/オキシプロピレン単位=50/50(モル比)の割合からなるものであって、これらの単位がランダム状に結合した質量平均分子量(GPC法、ポリスチレン換算)が9000のポリアルキレングリコールモノブチルエーテル(b−1)であった。
【0035】
ポリアルキレンオキサイド付加物(b−2)〜(b−6)及び(br−1)〜(br−4)の合成
ポリアルキレンオキサイド付加物(b−1)と同様にして、ポリアルキレンオキサイド付加物(b−2)〜(b−6)及び(br−1)〜(br−4)を合成した。以上で合成した各ポリアルキレンオキサイド付加物の内容を表2にまとめて示した。
【0036】
【表2】

【0037】
表2において、
,A:化1中の記号に相当
質量平均分子量:GPC法、ポリスチレン換算
【0038】
試験区分3(高強度ソイルセメントスラリー調製用の流動化剤の調製)
・実施例1{流動化剤(P−1)の調製}
A成分として試験区分1で合成した水溶性ビニル共重合体(a−1)の40%水溶液188部に、B成分として試験区分2で合成したポリアルキレンオキサイド付加物(b−1)25部及び水37部を混合して、実施例1の流動化剤(P−1)の40%水溶液250部を調製した。
【0039】
・実施例2〜9及び比較例1〜14{流動化剤(P−2)〜(P−9)及び流動化剤(R−1)〜(R−14)の調製}
実施例1の流動化剤(P−1)の調製と同様にして、実施例2〜9及び比較例1〜14の流動化剤(P−2)〜(P−9)及び(R−1)〜(R−14)を調製した。以上で調製した各例の流動化剤の内容を表3にまとめて示した。











【0040】
【表3】

【0041】
表3において、
pH:流動化剤の濃度を1%の水溶液としたときのpH
a−1〜a−5,ar−1〜ar−7:試験区分1で合成した水溶性ビニル重合体等
b−1〜b−6,br−1〜br−4:試験区分2で合成したポリアルキレンオキサイド付加物
【0042】
試験区分4(高強度ソイルセメントスラリーの調製及び評価)
試験例1〜29
・高強度ソイルセメントスラリーの調製
表3で調製した流動化剤を用いて、次のように高強度ソイルセメントスラリーを調製した。表5に記載した各配合No.の高強度ソイルセメントスラリーの組成となるよう、表4に記載した物性値の土壌(地盤を掘削して得た粘土質土壌/豊浦珪砂=3/1(質量比)の割合で混合したもの)と、セメントミルクとをホバートミキサーに投入し、混合して高強度ソイルセメントスラリーを調製した。セメントミルクはセメント及び水に、表6に記載した使用量となるよう試験区分3で調製した流動化剤を混合したものを用いた。またセメントの使用量は、調製した高強度ソイルセメントスラリーから得られる硬化体の材齢28日の一軸圧縮強度が10N/mm2以上となるように配合した。



【0043】
【表4】

【0044】
表4において、
含水比:土壌の乾燥物100質量部当たりの水の質量部
【0045】
【表5】

【0046】
表5において、
セメント:高炉B種セメント(密度=3.04g/cm、ブレーン値3850cm/g)
*1:セメントミルクの水/セメント比(質量%)
*2:土壌に含まれる水を加算した高強度ソイルセメントスラリーにおける水/セメント比(質量%)
注入率:土壌1m当たり注入したセメントミルクの容積比率(%)
【0047】
・高強度ソイルセメントスラリーの物性評価
調製した各例の高強度ソイルセメントスラリーについて、練り混ぜ直後のフロー値、練り混ぜてから90分間静置後のフロー値、フロー残存率、及び得られた硬化体について、一軸圧縮強度を次のように求め、結果を表6にまとめて示した。
・フロー値:調製した各例の高強度ソイルセメントスラリーについて、JIS−R5201に準拠し、練り混ぜ直後と90分経過後のフロー試験を行い、15回落差後のフロー値(mm)を測定した。
・フロー残存率:(90分間静置後のフロー値/練り混ぜ直後のフロー値)×100で求めた。
・一軸圧縮強度試験:JIS−A1108に準拠し、各例の高強度ソイルセメントスラリーから直径50mm×高さ100mmの型枠を用いて成形した成形品について、材齢28日の圧縮強度(N/mm2)を測定した。





【0048】
【表6】

【0049】
表6において、
P−1〜P−9,R−1〜R−14:表3に記載した流動化剤
流動化剤の使用量:土壌1m当たり、使用した流動化剤の量(固形分としての量、kg)
一軸圧縮強度:材齢28日の圧縮強度(N/mm
*3:流動化剤の使用量を加減しても目標の流動性が得られなかったので測定しなかった。
【0050】
表6の結果からも明らかなように、実施例の流動化剤(P−1)〜(P−9)を用いた各試験例の高強度ソイルセメントスラリーは、調製直後及び90分後においていずれもフロー値が200mm以上の良好な流動性を有し、同時に目標とする優れた一軸圧縮強度の硬化体が得られているが、比較例の流動化剤(R−1)〜(R−14)を用いた各試験例の高強度ソイルセメントスラリーでは、流動性と強度の双方を同時に満足できるものが得られていない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記のA成分及びB成分から成り、該A成分を60〜98質量%及び該B成分を2〜40質量%(合計100質量%)の割合で含有して成ることを特徴とする高強度ソイルセメントスラリー調製用の流動化剤。
A成分:分子中に下記の構成単位Lを40〜60モル%及び下記の構成単位Mを60〜40モル%(合計100モル%)の割合で有する質量平均分子量(GPC法、プルラン換算)が2000〜70000の水溶性ビニル共重合体。
構成単位L:マレイン酸から形成された構成単位及びマレイン酸塩から形成された構成単位から選ばれる一つ又は二つ以上。
構成単位M:分子中に15〜80個のオキシエチレン単位のみで構成されたポリオキシエチレン基を有するα−アリル−ω−メチル−ポリオキシエチレンから形成された構成単位及び分子中に15〜80個のオキシエチレン単位のみ又は合計15〜80個のオキシエチレン単位とオキシプロピレン単位の双方で構成されたポリオキシアルキレン基を有するα−アリル−ω−ヒドロキシ−ポリオキシアルキレンから形成された構成単位から選ばれる一つ又は二つ以上。
B成分:下記の化1で示されるポリアルキレンオキサイド付加物であって、質量平均分子量(GPC法、ポリスチレン換算)が2000〜18000のポリアルキレンオキサイド付加物。
【化1】

化1において、
:炭素数3〜6の脂肪族炭化水素基
:分子中にオキシエチレン単位とオキシプロピレン単位の双方で構成され且つオキシエチレン単位/オキシプロピレン単位=20/80〜80/20(モル比)の割合からなるポリオキシアルキレン基を有するポリアルキレングリコールから全ての水酸基を除いた残基
【請求項2】
A成分を65〜95質量%及びB成分を5〜35質量%(合計100質量%)の割合で含有する請求項1記載の高強度ソイルセメントスラリー調製用の流動化剤。
【請求項3】
A成分の水溶性ビニル共重合体が、質量平均分子量(GPC法、プルラン換算)が3000〜50000のものである請求項1又は2記載の高強度ソイルセメントスラリー調製用の流動化剤。
【請求項4】
A成分の構成単位Mが、分子中に20〜70個のオキシエチレン単位のみで構成されたポリオキシエチレン基を有するα−アリル−ω−メチル−ポリオキシエチレンから形成された構成単位である請求項1〜3のいずれか一つの項記載の高強度ソイルセメントスラリー調製用の流動化剤。
【請求項5】
B成分の化1で示されるポリアルキレンオキサイド付加物が、質量平均分子量(GPC法、ポリスチレン換算)が3000〜13000のものである請求項1〜4のいずれか一つの項記載の高強度ソイルセメントスラリー調製用の流動化剤。
【請求項6】
B成分の化1で示されるポリアルキレンオキサイド付加物が、化1中のA1が分子中にオキシエチレン単位/オキシプロピレン単位=30/70〜70/30(モル比)の割合からなるポリオキシアルキレン基を有するポリアルキレングリコールから全ての水酸基を除いた残基である場合のものである請求項1〜5のいずれか一つの項記載の高強度ソイルセメントスラリー調製用の流動化剤。

【公開番号】特開2012−51737(P2012−51737A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−177116(P2010−177116)
【出願日】平成22年8月6日(2010.8.6)
【出願人】(000210654)竹本油脂株式会社 (138)
【Fターム(参考)】