説明

高感度ガス分析装置、ガス定量方法及び分析装置システム

【課題】装置の大型化やコスト高を招くことなく、測定値の精度向上を図り、最高ppmオーダーまでの微量ガスを測定可能とする。
【解決手段】微量ガスを定量測定する高感度ガス分析装置において、被測定ガスを収容する被測定ガスリザーバ21と、被測定ガスリザーバと第1の開閉弁を介して接続する小容器23と、小容器と第2の開閉弁を介して接続する,容量が前記小容器の容量の2000倍以上のバッファタンク25と、バッファタンクと配管を介して接続するマニホールド27と、マニホールドと接続する,吸気口側に第3の開閉弁を介装したターボ分子ポンプ及びダイヤフラムポンプからなる真空排気装置の付いた四極子型質量分析計30と、被測定ガスを四極子型質量分析計に流入させるためのオリフィスと、マニホールドとターボ分子ポンプとを接続する,第4の開閉弁を介装したバイパス配管38とを具備することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大気等に含まれる微量ガスを繰返し高感度で定量することができるガス分析装置、ガス定量方法及び分析装置システムに関する。詳しくは、大気中の特定ガス,自動車排気ガス中の有害ガス,呼気中の特定ガス,構造材に含まれる特定ガスなどの微量ガスを最高ppmオーダーの高い感度で測定することができる質量分析法によるガス分析装置、ガス定量方法及び分析装置システムに関する。
【背景技術】
【0002】
大気等に含まれる微量ガスを質量分析法により測定する場合には、測定しようとするガス(対象ガス)を含む大気等(被測定ガス)を連続的に質量分析計のイオン源に流し込む必要がある。しかしながら、大気圧かそれに近い圧力の被測定ガス圧力と質量分析計が正常に作動する圧力の間には1億倍(10)以上の差を生じさせる必要があるため、数段の差動排気を行うとともに、質量分析計イオン源へのガス流入口の孔径を極度に小さくして質量分析計の作動に適した10−2Pa以下の測定圧力を創出している。
【0003】
即ち、従来のガス分析装置は、図3に示すような構成となっている。同装置は、被測定ガスリザーバ1と、可変リークバルブ2と、マニホールド3と、ターボ分子ポンプ4及びダイヤフラムポンプ5からなる真空排気装置6と、被測定ガスリザーバ1とマニホールド3を結ぶ配管7aと、マニホールド3とターボ分子ポンプ4を結ぶ配管7bと、ターボ分子ポンプ8とダイヤフラムポンプ9からなる真空排気装置10の付いた四極子型質量分析計11と、被測定ガスの一部をマニホールド3から使用済みのホースを構成する素材は、全てポリエステル系材である四極子型質量分析計11のイオン源12に流入させるためのオリフィス13と、マニホールド3に取り付けられた圧力計14から構成されている。
【0004】
このような装置における被測定ガスの流れは、次のとおりである。即ち、まず、前記両真空排気装置6,10により可変リークバルブ2の下流側配管内と四極子型質量分析計11内を高真空に排気し、四極子型質量分析計11を作動状態にする。次に、可変リークバルブ2を適度に開き、マニホールド3に取り付けてある圧力計14の指示が所定の値になるようにする。この所定の値とは、四極子型質量分析計11のイオン源12の圧力がこの値とオリフィス13のコンダクタンスと排気装置の実効排気速度により測定に最適な値となるように予め設定された,本分析装置固有のものである。
【0005】
この状態において、被測定ガスリザーバ1から放出された被測定ガスの一部がマニホールド3の近くに設けられたオリフィス13から四極子型質量分析計11のイオン源12に流れ込むので、そのガスのマススペクトルを分析することにより被測定ガス中の対象ガスの濃度を測定することができる。
【0006】
しかしながら、従来のガス分析装置では、可変リークバルブ2を絞って被測定ガスリザーバ1からのガス放出量を少なくするための流量微調整が難しいため、再現性に乏しくなる。また、反対に、可変リークバルブ2を開いて被測定ガスリザーバ1からのガス放出量を多くするとマニホールド部の圧力が上昇するため、オリフィス径を極端に小さくする必要があり、オリフィス13のコンダクタンスが変化したり、オリフィス13が詰まったりして、同様に再現性が悪くなるという難点がある。
【0007】
また、従来のガス分析装置では、基本的に被測定ガスを連続的に流して、定常状態にて測定する方式を採用している。そのため、流れの再現性が仮に確保されたとしても、通常被測定ガス中に多量に含まれる水蒸気等の吸着性ガスの影響により対象ガスの検出感度が著しく低下するという問題を有している。
【0008】
即ち、例えば、被測定ガス中に存在する微量の水素を測定しようとする場合、イオンの質量数と電荷の比m/e=2(H)に着目して分析を行う。しかし、被測定ガス中に多量の水蒸気が存在すると、m/e=1(H)が生成し、m/e=1の値が大きくなるとこれに隣接するm/e=2の指示にも影響を与える。このため、対象ガスの水素に起因するm/e=2の正確な値が読めなくなり、結果的に検出感度の低下を招くことになる。なお、水蒸気等の吸着性ガスは、質量分析計の管壁や電極に吸着しやすく、いったん吸着すると高温に加熱しない限り簡単に脱離しない性質を有している。
【0009】
このようなことから、本出願人は、先に、測定値の精度(再現性)向上を図るとともに、水蒸気等の吸着性ガスの影響を最小限に抑えて最高ppmオーダーまでの微量ガスを測定できるようにしたガス分析装置を提案した(特許文献1)。しかしながら、こうした改良したガス分析装置では、マニホールドに配管を介して接続する,ターボ分子ポンプ及びダイヤフラムポンプからなる真空排気装置を備えているので、ガス分析装置が大型化するとともに、コスト高になるという問題があった。
【0010】
ここで、ガス分析装置を大型化せざるを得なかった理由について説明する。
1) 前記被測定ガス中に水蒸気等の吸着性ガスが含まれると、測定対象ガスの検出感度及び測定値の再現性が著しく低下する。この原因は以下に述べるとおりである。即ち、測定対象ガス中に含まれている例えば水素(H)等の非吸着性ガスは真空ポンプで直ちに測定後測定域外へ排出除去される。しかし、水蒸気等の吸着性ガスは、測定終了後も、マニホールド3、四極子型質量分析計11などの器壁、管壁面との吸脱着現象を繰り返し長時間に渡って測定域内に滞在する。そして、その一部は器壁面上に蓄積し、それが次の測定時に器壁面等から不定期に再放出して、測定対象ガス濃度の相対的希釈化(検出感度の低下)及びバックグラウンド値の不規則変動(再現性の低下)を引き起こしている。
【0011】
2) そのため、次の測定時にこれらの吸着性ガスの悪影響を残さないようにするための現実的な真空排気条件は、マニホールド3における実効排気速度が0.01〜0.1L/sで圧力減衰(図4参照)の時定数は10s前後である。この条件を実現するために、専用の真空排気装置6をマニホールド3への配管7bで結び、マニホールド3内の吸着性ガスを測定中も真空排気装置6で連続的に排出除去して、測定対象ガスの検出感度及び測定値の再現性を高品位に維持している。
【0012】
3) ところで、真空排気装置6が設置されていない場合は、ガス分析装置の四極子型質量分析計11についている真空排気装置10のみで、これら吸着性ガスを排出除去しなければならない。具体的には、吸着性ガスがマニホールド3、オリフィス13及びイオン源12を経由して真空排気装置10で排気されることになる。また、オリフィス13は円形の孔(直径0.3mm前後、コンダクタンス8×10−3L/s)でコンダクタンスが最も小さい。この場合、マニホールド3における実効排気速度は8×10−3L/sで圧力減衰(図4参照)の時定数は120s前後である。なお、実効排気速度は、最も小さいコンダクタンス値と同じ値となることが理論的に知られている。
【0013】
4) 従って、専用の真空排気装置6を持たず、オリフィス13のみを経由して吸着性ガスを排気除去しようとした場合、圧力減衰の時定数は120s/10s=12倍程度長くなる。つまり、オリフィス13のみを経由しての吸着性ガスの排気除去は時間がかかり過ぎるため、現実的でない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特許第4052597号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、こうした事情を考慮してなされたもので、装置の大型化やコスト高を招くことなく、測定値の精度向上を図るとともに、水蒸気等の吸着性ガスの影響を最小限に抑えて最高ppmオーダーまでの微量ガスを測定できる高感度ガス分析装置、ガス定量方法及び分析装置システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明に係る高感度ガス分析装置は、微量ガスを定量測定する高感度ガス分析装置において、被測定ガスを収容する被測定ガスリザーバと、この被測定ガスリザーバと第1の開閉弁を介して接続する小容器と、この小容器と第2の開閉弁を介して接続する,容量が前記小容器の容量の2000倍以上のバッファタンクと、このバッファタンクと配管を介して接続するマニホールドと、このマニホールドと接続する,吸気口側に第3の開閉弁を介装したターボ分子ポンプ及びダイヤフラムポンプからなる真空排気装置の付いた四極子型質量分析計と、被測定ガスを四極子型質量分析計に流入させるためのオリフィスと、前記マニホールドとターボ分子ポンプとを接続する,第4の開閉弁を介装したバイパス配管とを具備することを特徴とする。
【0017】
また、本発明に係るガス定量方法は、前記高感度ガス分析装置を用いたガス定量方法であって、前記被測定ガスリザーバに収容されている被測定ガスを第1・第2の開閉弁を操作して小容器に一定容積の被測定ガスを採取する工程と、前記真空排気装置を作動させた後、第1の開閉弁を閉じてから第2の開閉弁を開いて小容器内の被測定ガスをバッファタンク内に拡散させる工程、拡散した被測定ガスを前記バッファタンクと前記マニホールド間の配管を介してマニホールドに移す工程と、マニホールド内の被測定ガスを、前記オリフィスを介して前記質量分析計のイオン源に供給して被測定ガスをイオン化する工程、イオン化した被測定ガスのイオン電流を測定することにより被測定ガス中の対象ガスの定量を行う工程とを具備し、前記マニホールド内の被測定ガス圧が前記質量分析計の正常動作圧力の上限値を超えた場合に、バイパス配管を経由して余分な量の被測定ガスを系外へ排出することを特徴とする。
【0018】
更に、本発明に係る高感度ガス分析装置システムは、前記高感度ガス分析装置と、この高感度ガス分析装置による分析の解析を行うホストコンピュータと、前記高感度ガス分析装置とホストコンピュータ間で分析情報及び解析結果情報のやり取りを行う有線又は無線による連絡機構とを具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、装置の大型化やコスト高を招くことなく、測定値の精度向上を図るとともに、水蒸気等の吸着性ガスの影響を最小限に抑えて最高ppmオーダーまでの微量ガスを測定できる高感度ガス分析装置、ガス定量方法及び分析装置システムを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は本発明の一実施形態に係る高感度ガス分析装置の概略図。
【図2】図2は、本発明に係る高感度ガス分析装置システムの説明図。
【図3】図3は従来のガス分析装置の概略図。
【図4】図4は本発明に係る高感度ガス分析装置のバッファタンク及びマニホールド内の圧力の時間的変化を概略的に示した図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の高感度ガス分析装置、ガス定量方法及び分析装置システムについて更に詳しく説明する。
本発明において、バッファタンクの容量を小容器の容量の2000倍以上とするのは、以下の理由による。
本発明の分析装置の一構成である四極子型質量分析計は、イオン化した(電荷を持った)被測定ガスを、高周波電場と直流電場を重ね合わせた電場域を通過させると、被測定ガス重量(分子量)の違い毎にイオンの飛行軌跡が異なってくることを利用して混合ガス中の成分ガス種を分別検出する装置である。従って、四極子型質量分析計では、電気的に中性な被測定ガスをイオン化させることが極めて重要である。
【0022】
電気的に中性な被測定ガスをイオン化させる方法としては、約1000℃以上に高温加熱した金属製フィラメントから熱電子を放出させ、それに外部電圧を印加して熱電子を加速し、中性な被測定ガスに衝突させて中性ガス分子から電子を叩き出し、プラス電荷を持ったイオンに変化させることが挙げられる。
【0023】
従って、四極子型質量分析計のイオン源内では、四極子型質量分析計の運転に必須な熱電子発生のために約1000℃以上に高温加熱されたタングステン等の金属製フィラメントが点灯されている。不活性気体以外の酸素、ハロゲン等の反応性ガスがイオン源内に一定の上限圧以上存在すると、高温の金属製フィラメントは、急激な腐食反応を起こしフィラメントが腐食破断に至ることが知られている。これにより、高温の金属製フィラメントからの熱電子発生が中断され、四極子型質量分析計の正常な運転が阻害される。
【0024】
この腐食反応が顕著に起きだす反応性ガスの上限圧は、反応ガス種にあまり依存することなく、約50Paであるということが経験的に知られており、したがってこの腐食反応を抑えるためにイオン源のガス入口を約50Pa以下にする必要がある。このため、本発明では、大気圧(略1気圧、0.1MPa)状態で小容器内に採取された被測定ガスの圧を約50Pa以下に低減させる必要がある。そこで、バッファタンクの容量を小容器の約2000倍(0.1×10Pa/50Pa=2000倍)とし、小容器からバッファタンク内へ被測定ガスを導入膨張させることで、イオン源の入口部で約50Paとなるように圧力調整を行なっている。
【0025】
本発明において、マニホールドとターボ分子ポンプ間に第4の開閉弁を介装したバイパス配管を設けるのは、被測定ガスリザーバには一般的に多めの被測定ガスを収容することがあり、これに起因してマニホールド内の被測定ガス圧が四極子型質量分析計の正常動作圧力の上限を超える場合があるからである。
【0026】
(第1の実施形態)
図1を参照する。
図中の符番21は、大気圧(0.1MPa)状態で被測定ガスを収容する被測定ガスリザーバを示す。この被測定ガスリザーバ21には、第1の開閉弁22を介して小容器23(内容積:約0.1ml)が接続されている。この小容器23には、第2の開閉弁24を介してバッファタンク25(内容積:約200ml)が接続されている。このバッファタンク25には、大きなコンダクタンスの配管26を介して圧力計(図示せず)を備えたマニホールド27が接続されている。ここで、前記被測定ガスリザーバ21、小容器23、バッファタンク25及びマニホールド27より被測定ガス流路28が構成されている。ここで、バッファタンク25の容量は、小容器23の容量の2000倍以上となっている。
【0027】
前記マニホールド27には、配管29を介して真空排気装置付四極子型質量分析計30が接続されている。この質量分析計30の下流側には、吸気口側に第3の開閉弁36を備えたターボ分子ポンプ32と、このターボ分子ポンプ32に接続するダイヤフラムポンプ33から構成された真空排気装置31が配置されている。ここで、真空排気装置31の実効排気速度は20〜100L/sである。マニホールド27とターボ分子ポンプ32の吸気口は、マニホールド側に位置した第4の開閉弁37を介装したバイパス配管38により接続されている。前記質量分析計30はイオン源34を備えている。マニホールド27と質量分析計30を接続する配管29には、円形の孔(直径0.3mm前後)を有する薄い金属板(オリフィス)35が配置されている。このオリフィス35により、被測定ガス流路28の中間から被測定ガスの一部が質量分析計30のイオン源34に導入される。
【0028】
こうしたガス分析装置における被測定ガスの流れは次のとおりである。即ち、まず、被測定ガスリザーバ21に入っている被測定ガスを第1の開閉弁22を開いて(第2の開閉弁24は閉じておく)小容器23に一定容積の大気圧(略1気圧,0.1MPa)の被測定ガスを採取する。つづいて、真空排気装置31が作動していることを確認してから第1の開閉弁22を閉じ、この後第2の開閉弁24を高速で全開する。これにより、小容器23内の被測定ガスは、バッファタンク25内に速やかに拡散する。このとき、バッファタンク25内の圧力は、図4に示すように、いったん極大値に達し、以後、真空排気装置31により排気されるので、徐々に低下していく。バッファタンク25とマニホールド27は大きなコンダクタンスの配管26で接続されているので、マニホールド27内の圧力はバッファタンク25内の圧力とほぼ同様な変化をする。従って、第2の開閉弁24を開いた直後のバッファタンク25及びマニホールド27内の圧力はおよそ50Paである。
【0029】
この後、バッファタンク25内に拡散した被測定ガスを、マニホールド27に移す。次に、マニホールド27内の被測定ガスを、オリフィス35を介して四極子型質量分析計30のイオン源34に供給し、電気的に中性な被測定ガスをイオン化する。ここで、イオン化した被測定ガスのイオン電流を測定して被測定ガス中の対象ガスの定量を繰り返し行う。なお、マニホールド27内の被測定ガス圧が四極子型質量分析計30の正常動作圧力の上限を超えた場合には、第4の開閉弁37の開閉によりバイパス配管38を経由して、余分な量の被測定ガスを系外へ排出除去する。
【0030】
上記実施形態に係る高感度ガス分析装置は、上述したように、被測定ガスリザーバ21と、この被測定ガスリザーバ21に第1の開閉弁22を介して接続する小容器23と、この小容器23に第2の開閉弁24を介して接続する,容量が小容器23の容量の約2000倍のバッファタンク25と、このバッファタンク25に配管26を介して接続するマニホールド27と、このマニホールド27に接続する,吸気口側に第3の開閉弁36を介装したターボ分子ポンプ32及びダイヤフラムポンプ33からなる真空排気装置31の付いた四極子型質量分析計30と、被測定ガスの一部を前記質量分析計30に流入させるオリフィス35と、マニホールド27とターボ分子ポンプ32とを接続する,第4の開閉弁37を介装したバイパス配管38を具備している。
【0031】
こうした高感度ガス分析装置によれば、バッファタンク25の容量を小容器23の容量の2000倍とすることにより、従来のようにマニホールドに配管を介して接続する真空排気装置を用いることなく、測定値の精度向上を図るとともに、水蒸気等の吸着性ガスの影響を最小限に抑えて最高ppmオーダーまでの微量ガスを測定することができる。また、上記真空排気装置を取り除くことができるので、装置の構成部材を簡略化でき、装置の大型化やコスト高を回避することができる。更に、本発明のガス分析装置では、マニホールド27とターボ分子ポンプ32間にバイパス配管38を設けることにより、マニホールド27内の被測定ガス圧が四極子型質量分析計30の正常動作圧力の上限を超えた場合に、第4の開閉弁37の開閉によりバイパス配管38を経由して、余分な量の被測定ガスを系外へ排出除去している。この場合、第4の開閉弁37の開又は閉動作に対応して第3の開閉弁36の動作が常に第4の開閉弁37とは正反対の閉又は開動作となるように第3の開閉弁36及び第4の開閉弁37を連動動作させることにより、除去した被測定ガスが四極子型質量分析計30へ逆流侵入することを阻止できる。
【0032】
(第2の実施形態)
図2を参照する。
本実施形態に係る高感度ガス分析装置システムは、高感度ガス分析装置41と、この分析装置41による分析の解析を行うホストコンピュータ42と、前記高感度ガス分析装置とホストコンピュータ間で分析情報及び解析結果情報のやり取りを行う有線又は無線による連絡機構43とを備えている。ここで、連絡機構43としては、携帯電話、パソコン、FAXあるいはネットコンピュータなどが挙げられるが、分析情報及び解析結果情報のやり取りができれば特に限定されない。
【0033】
第2の実施形態によれば、高感度ガス分析装置41を用いた作業者による分析情報をホストコンピュータ42に送り、またホストコンピュータ42による分析者の分析結果を作業者に伝達できるので、分析者は高感度ガス分析装置41が配置された現地まで出向くことなく、分析結果を作業者に伝達することができる。従って、たとえ作業者が装置41による分析に十分習得していなくても短時間で正確な分析結果が得られ、また分析者も現地まで出向いて分析する手間を省き、移動時間の無駄を無くすことができる。
【0034】
なお、この発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素を適宜に組み合わせることにより種々の発明を形成できる。例えば、バッファタンクの容量と小容器の容量との比は、上述した比に限らず、2000倍以上であればよい。
【符号の説明】
【0035】
21…被測定ガスリザーバ、22…第1の開閉弁、23…小容器、24…第2の開閉弁、25…バッファタンク、26,29…配管、27…マニホールド、28…被測定ガス流路、30…四極子型質量分析計、31…真空排気装置、32…ターボ分子ポンプ、33…ダイヤフラムポンプ、34…イオン源、35…オリフィス、36…第3の開閉弁、37…第4の開閉弁、38…バイパス配管、41…高感度ガス分析装置、42…ホストコンピュータ、43…連絡機構。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
微量ガスを定量測定する高感度ガス分析装置において、
被測定ガスを収容する被測定ガスリザーバと、
この被測定ガスリザーバと第1の開閉弁を介して接続する小容器と、
この小容器と第2の開閉弁を介して接続する,容量が前記小容器の容量の2000倍以上のバッファタンクと、
このバッファタンクと配管を介して接続するマニホールドと、
このマニホールドと接続する,吸気口側に第3の開閉弁を介装したターボ分子ポンプ及びダイヤフラムポンプからなる真空排気装置の付いた四極子型質量分析計と、
被測定ガスを四極子型質量分析計に流入させるためのオリフィスと、
前記マニホールドとターボ分子ポンプとを接続する,第4の開閉弁を介装したバイパス配管とを具備することを特徴とする高感度ガス分析装置。
【請求項2】
請求項1記載の高感度ガス分析装置を用いたガス定量方法であって、
前記被測定ガスリザーバに収容されている被測定ガスを第1・第2の開閉弁を操作して小容器に一定容積の被測定ガスを採取する工程と、
前記真空排気装置を作動させた後、第1の開閉弁を閉じてから第2の開閉弁を開いて小容器内の被測定ガスをバッファタンク内に拡散させる工程、
拡散した被測定ガスを前記バッファタンクと前記マニホールド間の配管を介してマニホールドに移す工程と、
マニホールド内の被測定ガスを、前記オリフィスを介して前記質量分析計のイオン源に供給して被測定ガスをイオン化する工程、
イオン化した被測定ガスのイオン電流を測定することにより被測定ガス中の対象ガスの定量を行う工程とを具備し、
前記マニホールド内の被測定ガス圧が前記質量分析計の正常動作圧力の上限値を超えた場合に、バイパス配管を経由して余分な量の被測定ガスを系外へ排出することを特徴とするガス定量方法。
【請求項3】
請求項1記載の高感度ガス分析装置と、この高感度ガス分析装置による分析の解析を行うホストコンピュータと、前記高感度ガス分析装置とホストコンピュータ間で分析情報及び解析結果情報のやり取りを行う有線又は無線による連絡機構とを具備することを特徴とする高感度ガス分析装置システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate