説明

高撥水性材料

【課題】撥水性に優れた材料は多く知られているが、その表面が物理的に摩擦された場合に表面微細構造が壊れてしまい、撥水性が低下する場合が多かった。
【解決手段】下記(A)〜(D)を配合することで、撥水性が持続することを特徴とする高撥水性材料を得て解決する。
(A)撥水性微粒子粉末
(B)最大径が1μm〜100μmの範囲にある半球または不定形の形状を有する粉末
(C)繊維長が50μm〜3mmの範囲にある短繊維
(D)結合剤
ただし、高撥水性材料中の(A)(B)(C)の配合量は、それぞれ高撥水性材料中の固形分の質量に対して40〜85質量%、0.1〜30質量%、0.1〜8.5質量%の範囲にある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下記(A)〜(D)を配合することで、撥水性の持続効果に優れることを特徴とする高撥水性材料に関する。
(A)撥水性微粒子粉末
(B)最大径が1μm〜100μmの範囲にある半球または不定形の形状を有する粉末
(C)繊維長が50μm〜3mmの範囲にある短繊維
(D)結合剤
ただし、高撥水性材料中の(A)(B)(C)の配合量は、それぞれ高撥水性材料中の固形分の質量に対して40〜85質量%、0.1〜30質量%、0.1〜8.5質量%の範囲にある。
さらに詳しくは、撥水性微粒子粉末を配合することで高撥水性となった材料において、半球または不定形の形状を有する粉末と短繊維を同時に配合することで、短繊維が材料表面に飛び出した構造が形成され、これによって撥水性が持続することを特徴とする高撥水性材料に関する。
【背景技術】
【0002】
以下、本発明の技術的背景について説明する。
特許文献1には、モノオクチルシランにて表面処理された一次粒子径が1nm〜15μmの範囲にある微粒子顔料と、シリコーン樹脂及び/又は液状シリコーンゴムと揮発性溶媒を配合しており、かつ揮発性溶媒を除く組成物質量に対してモノオクチルシランで表面処理された微粒子顔料の配合質量が40〜80質量%の範囲にある高撥水性組成物を用いることにより超撥水性〜高撥水性の特徴を有する表面を得る技術が示されている。この技術を用いて塗工した材料は大変高い撥水性を示すが、材料表面に水をつけてこすると、濡れが発生し、水に対する接触角が90度以下になる現象が観察される。材料の撥水性を向上させる方法としては、特許文献2、3のように塗膜表面に多重の微細構造を形成する方法がある。高さを高くできると非特許文献1のように、水に対する接触角が178度と、ほぼ180度に近いものまで得られることが知られている。しかしながら、硬い素材でできた凹凸を持つ材料は機械的な強度に問題があり、前記同様に材料表面を水をつけてこすったりすると微細構造が壊れてしまい、撥水性が弱くなる問題がある。この撥水性が機械的な力により失われる傾向は特に凹凸の高さを高くした場合に顕著であった。
【0003】
一方、特許文献4には、マイクロファイバーとミクロ粉末からなるスラリーとその使用方法についての技術が開示されている。同文献0022段落において、「マイクロファイバーはまた「ナノファイバー」と言われてもよく、それは、少なくとも1つの寸法で、繊維材料のサイズがナノメートルのオーダーにあることの指標である」と説明されていることから、マイクロファイバーは短繊維の一種ではあるが、その大きさはかなり小さいということが言える。また、0023段落において、「用語「ミクロ粉末」は本明細書では、好ましくは約0.01〜約100ミクロン、より好ましくは約0.1〜約50ミクロン、最も好ましくは約0.5〜約25ミクロンの範囲の平均直径の、細分された、容易に分散される粉末または粒子を意味するために用いられる。ミクロ粉末は一般的に有機材料または無機材料を含んでなる。」と説明されており、微粒子というよりは、一般的な粉末を配合したととれる表記となっている。ここで、マイクロファイバーの効果としては、0018段落において「本方法は、その中に分散された粒子が十分に分離され、そして好ましくは再凝集しないように、液体媒体中にマイクロファイバーおよびミクロ粉末の改善された分散を提供する。」とあることから、ミクロ粉末の分散安定性向上が目的であることが判る。また、同文献には撥水性に関する記載は見られない。
【0004】
【特許文献1】特開2008−101197号公報
【特許文献2】特開2003−147339号公報
【特許文献3】特開2003−236955号公報
【特許文献4】特開2008−527109号公報
【非特許文献1】E.Hosono,S.Fujihara,I.Honma,H.Zhou,JACS,2005,127,13458−13459.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以上のように、従来、高い撥水性を示す材料は各種存在しており、その方法も様々であるが、いずれも機械的な摩擦に対して撥水性の維持が難しい問題がある。これは、従来の高撥水性の材料の表面の凹凸の形状が、機械的な摩擦により変化してしまうことが原因であり、強度をさらに高めても、今度はこすられる材質が削れて凹凸の表面に付着したりするため、硬質の材料を使っている限り、この問題は解決が難しいと言える。また、材料の機械的強度を上げると、一般的な塗工などの方法では材料の製造が難しくなるため、汎用性がなくなるという問題も生じる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、本発明人は鋭意検討した結果、硬質素材ではなく、軟質素材である短繊維と疎水性微粒子粉末を用いてこの問題を解決することを試みた。まず、疎水性微粒子粉末と樹脂などの結合剤の混合物からなる材料は特許文献1のように高い撥水性を示すが、ここに短繊維や半球状の粉末をそれぞれ単独で配合しても撥水性は向上せず、機械的な摩擦に対しても弱い。これは、材料の表面を拡大して見てみると、短繊維や半球状の粉末は、ほとんどが材料内部に取り込まれており、表面の形状には影響を与えていないことから、撥水性に寄与しなかったことが判る。次に、疎水性微粒子粉末、結合剤、短繊維、半球状の粉末を全て含む塗工液を塗工して材料を作製し、その表面を拡大すると、半球状の粉末により短繊維が持ち上げられて塗膜の表面から繊維が飛び出している様子が観察される。すなわち、短繊維は半球状の粉末により向きを変えられ、その一部が表面から飛び出したことになる。そして、このような構造を持った材料は、摩擦に対して高い接触角を維持する効果が高いことが判った。これは、短繊維は機械的な力がかかった場合でも、硬質素材を用いた時のように構造が破壊されず、変形しても元に戻る力が強いためである。また、短繊維はみかけの凹凸の高さを稼げるため、撥水性も高くできるメリットがある。さらに、この組み合わせであれば、専用の装置など用いなくても従来の塗工方法を利用して高撥水性材料が容易に得られるメリットがある。ただし、短繊維の長さと、半球状などの粉末の大きさと撥水性の間には関係があり、前記のナノファイバーのような極短繊維を用いると、材料表面のみかけの凹凸の高さが稼げず、撥水性が向上しないなどの問題が生じるため、その大きさや形状との関係について検討を行った結果、下記(A)〜(D)を配合することが最適であることを見出し、高撥水性材料を完成した。
(A)撥水性微粒子粉末
(B)最大径が1μm〜100μmの範囲にある半球または不定形の形状を有する粉末
(C)繊維長が50μm〜3mmの範囲にある短繊維
(D)結合剤
ただし、高撥水性材料中の(A)(B)(C)の配合量は、それぞれ高撥水性材料中の固形分の質量に対して40〜85質量%、0.1〜30質量%、0.1〜8.5質量%の範囲にある。
【0007】
すなわち、本発明は、下記(A)〜(D)を配合することを特徴とする高撥水性材料にある。
(A)撥水性微粒子粉末
(B)最大径が1μm〜100μmの範囲にある半球または不定形の形状を有する粉末
(C)繊維長が50μm〜3mmの範囲にある短繊維
(D)結合剤
ただし、高撥水性材料中の(A)(B)(C)の配合量は、それぞれ高撥水性材料中の固形分の質量に対して40〜85質量%、0.1〜30質量%、0.1〜8.5質量%の範囲にある。
【発明の効果】
【0008】
以上説明するように、本発明は、下記(A)〜(D)を配合することで、機械的な摩擦に対して強く、高撥水性を持続できることを特徴とする高撥水性材料が得られることは明らかである。
(A)撥水性微粒子粉末
(B)最大径が1μm〜100μmの範囲にある半球または不定形の形状を有する粉末
(C)繊維長が50μm〜3mmの範囲にある短繊維
(D)結合剤
ただし、高撥水性材料中の(A)(B)(C)の配合量は、それぞれ高撥水性材料中の固形分の質量に対して40〜85質量%、0.1〜30質量%、0.1〜8.5質量%の範囲にある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、上記本発明を詳細に説明する。
本発明は、下記(A)〜(D)を配合することを特徴とする高撥水性材料に関する。
(A)撥水性微粒子粉末
(B)最大径が1μm〜100μmの範囲にある半球または不定形の形状を有する粉末
(C)繊維長が50μm〜3mmの範囲にある短繊維
(D)結合剤
ただし、高撥水性材料中の(A)(B)(C)の配合量は、それぞれ高撥水性材料中の固形分の質量に対して40〜85質量%、0.1〜30質量%、0.1〜8.5質量%の範囲にある。
本発明で言う撥水性微粒子粉末とは、平均一次粒子径が5nm〜100nmの範囲にある微粒子粉末であって、その表面が撥水性であるものを指す。微粒子の材質は無機化合物でも有機化合物でも構わない。無機化合物の場合は、従来公知の微粒子材料が使用可能であるが、例えばチタン、鉄、亜鉛、ニッケル、銅、クロム、珪素、セリウム、アルミニウム、ジルコニウム、錫、タングステンの酸化物または水酸化物、金、銀、白金などの貴金属微粉末、セラミックスなどが挙げられる。有機化合物の場合は、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、アラミド、ポリエチレンテレフタレート等従来公知の樹脂が挙げられる。また、ダイヤモンド末なども使用可能である。もし粉末の表面が撥水性でない場合、または撥水性が低い場合では、表面処理により粉末表面を撥水化処理することが必要である。撥水化表面処理の例としては、メチルハイドロジェンポリシロキサン処理、アルキルアルコキシシラン処理、アルキルシラザン処理、有機チタネート処理、金属石鹸処理、ワックス処理、アクリル樹脂処理、シリコーン樹脂処理、パーフルオロアルキルシラン処理、パーフルオロポリエーテル処理、パーフルオロアルキルリン酸エステル処理、界面活性剤処理など従来公知の方法を用いることができる。
【0010】
本発明で用いる、最大径が1μm〜100μmの範囲にある半球または不定形の形状を有する粉末とは、縦、横、高さの内、最大の長さが1μm〜100μmの範囲にある粉末であって、その形状が半球または略半球、または不定形の形状を有する粉末を指す。ここで不定形とは、球状、立方体状、棒状、板状を除くドーナツ状、こんぺい糖状、赤血球状などの形態を言う。形態としては、半球状の形態が短繊維を持ちあげるのに最も効果的であるため好ましい。材質としては、アクリル系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ウレタン、シリコーン、アルギン酸塩、シリカ、炭酸カルシウム、酸化チタン、アパタイト、硫酸バリウムなどが挙げられるが特に限定されない。
【0011】
本発明で用いる、繊維長が50μm〜3mmの範囲にある短繊維としては、例えば天然繊維としてはカポック綿、パンヤ綿等の木綿、綿、シルク、麻、ウールなどが挙げられ、合成繊維としてはナイロン、アクリル、ウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリエーテルスルホン、セルロース、セルローストリアセテート、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、ポリエトラフルオロエチレン、ポリスルホン、ポリイミド等が挙げられる。短繊維は直線状であっても、曲線状であっても構わない。短繊維の断面は、円形状、井形状、星状、多角形状、中空状、三角形状などが挙げられるが特に限定はない。短繊維は粉砕、カット等の方法により短繊維化したものが用いられる。また、短繊維の表面は、撥水性微粒子粉末を含む塗膜で一部または全部が覆われることから、撥水性であっても親水性であっても構わない。また、力がかかった時に折れてしまうような棒状酸化チタンなどの材料からなる短繊維は好ましくない。
【0012】
本発明で用いる結合剤とは、(A)撥水性微粒子粉末、(B)最大径が1μm〜100μmの範囲にある半球または不定形の形状を有する粉末、(C)繊維長が50μm〜3mmの範囲にある短繊維 を材料表面に固定するための材料を指す。結合剤の例としては、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂などの各種樹脂、アマニ油などの乾性油、酢酸ビニル、エポキシ化合物などの反応性化合物など、従来塗料、インキなどに用いられてきた成分を利用することができる。
【0013】
本発明の高撥水性材料中の撥水性微粒子粉末の配合量は、高撥水性材料中の固形分の質量に対して40〜85質量%の範囲にある。この範囲であれば、高い撥水性が維持できる。85質量%を超えると、他の配合成分の量が少なすぎ、物理的な強度が不足する問題があり、また40質量%未満では、撥水性が低くなる問題がある。なお、本発明でいう固形分とは、高撥水性材料中の揮発性成分を除いた不揮発性成分のことを指す。
【0014】
本発明の高撥水性材料中の半球または不定形の形状を有する粉末の配合量は、高撥水性材料中の固形分の質量に対して0.1〜30質量%の範囲にあり、さらに好ましくは0.1〜1質量%の範囲が挙げられる。この範囲であれば、短繊維が材料表面に飛び出しやすい。30質量%を超えると、短繊維を材料表面に飛びださせる効果に差が見られなくなる。また0.1質量%未満では、短繊維はあまり材料表面に飛びださなくなる問題がある。なお、短繊維が材料表面に飛び出すとは、光学顕微鏡や電子顕微鏡などで材料表面を観察した時に図1に示すような像が得られることを言い、飛び出していないとは、図2に示すように短繊維が材料から飛び出していないことを言う。図1の例では短繊維は中空繊維の一種であるカポック繊維を用いており、写真左上から右下に棒状に見えるものが短繊維である。なお、図1と図2の中央の十字はスケールである。
【0015】
【図1】
【0016】
【図2】
【0017】
本発明の高撥水性材料中の短繊維の配合量は、高撥水性材料中の固形分の質量に対して0.1〜8.5質量%の範囲にある。この範囲であれば、高撥水性を維持する効果が高い。8.5質量%を超えると、高撥水性材料中で繊維が絡まって凝集体が形成されたり、塗工時に繊維濃度が部位によって一定にならない、凝集体の周囲に塗膜に穴が開くなどの問題が生じる場合がある。また、0.1質量%未満では、高撥水性を維持する効果が低い。
【0018】
本発明の高撥水性材料中の半球または不定形の形状を有する粉末と短繊維の大きさは、上記の範囲内にあれば高撥水性の維持には好適であるが、さらに下記関係が満たされるとより効果的である。
半球または不定形の形状を有する粉末の最大径の1/2<短繊維の繊維長
この関係が満たされると短繊維は材料表面からより飛び出しやすくなる。
【0019】
本発明の高撥水性材料は、上記成分の他に、通常塗料やインキなどに使用される各種の成分、例えば溶剤、水、紫外線吸収剤、顔料、油剤、蛍光剤、界面活性剤、フッ素化合物、粘剤、防腐剤、防カビ剤、香料、湿潤剤、塩類、酸化防止剤、キレート剤、中和剤、pH調整剤、昆虫忌避剤などを配合することができる。尚、撥水化されていない微粒子粉末を配合しても高撥水性材料は得られるが、材料の物理的強度が弱くなる問題がある。
【0020】
本発明の高撥水性材料は、上記の各成分を混合または乳化させて得られる。混合または乳化には、例えばミキサー、アトライタ、ディスパー、遊星ミル、ビーズミル、ロールミル、ホモジナイザーなどの混合機または粉砕機を用いることができる。
【0021】
本発明の高撥水性材料は、通常塗料やインキに用いられる方法により各種材料表面にコーティングすることにより得られる。例えば、印刷、浸漬、塗工、スプレーによる吹き付け、電着塗装、ハケ塗りなどの方法により、金属、紙、木材、樹脂、セラミックス、石、ガラスなどの材料の表面に処理することができる。
【0022】
本発明の高撥水性材料は、塗料、樹脂、インク、紙、電磁波遮蔽材、電磁波散乱制御材、光学素子、アンテナ、電線などに好適に用いられる。本発明の高撥水性材料の使用目的としては、撥水、防汚、防雪、腐食防止などが挙げられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下に実施例を挙げ本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【実施例】
【0024】
〔実施例1〕
平均一次粒子径35nmのオクチルシリル化微粒子酸化チタン32.0質量部を揮発性シリコーンの一種であるデカメチルシクロペンタシロキサン48.0質量部にディスパーを用いて分散させた。ここに、平均一次粒子径10μmの架橋ポリメタクリル酸メチルでできた半球状粉末(積水化成品工業製テクポリマー)を0.4質量部混合し、ついで木綿の一種であるカポック綿を漂白した後に平均繊維長で250μmの長さに粉砕した短繊維を4.0質量部加え良く混合した。ここに、結合剤としてシリコーンRTVゴム(東レ・ダウコーニング社製SE9140RTV)を15.6質量部投入し、良く混合した。なお、上記混合液では、固形分換算で、疎水性微粒子粉末が61.5質量%、半球または不定形の形状を有する粉末が0.8質量%、短繊維が7.7質量%、結合剤が30.0質量%となる。得られた混合液をポリエチレンテレフタレートフィルムにアプリケーターを用いてスリット幅25.4μmで塗工し高撥水性材料を得た。
【0025】
〔比較例1〕
実施例1の半球状粉末と短繊維を用いない他は全て実施例1と同様にして高撥水性材料を得た。
【0026】
〔比較例2〕
実施例1の短繊維の配合量を4.8質量部とした以外は全て実施例1と同様にして高撥水性材料を得た。なお、混合液では、固形分換算で、疎水性微粒子粉末が60.5質量%、半球または不定形の形状を有する粉末が0.8質量%、短繊維が9.2質量%、結合剤が29.5質量%となる。
【0027】
〔実施例2〕
実施例1の短繊維の配合量を0.4質量部とし、スリット幅を127μmとした以外は全て実施例1と同様にして高撥水性材料を得た。なお、混合液では、固形分換算で、疎水性微粒子粉末が66.1質量%、半球または不定形の形状を有する粉末が0.8質量%、短繊維が0.8質量%、結合剤が32.3質量%となる。
【0028】
〔実施例3〕
平均一次粒子径35nmのオクチルシリル化微粒子酸化チタン33.5質量部をデカメチルシクロペンタシロキサン50.2質量部にディスパーを用いて分散させた。ここに、平均一次粒子径10μmの架橋ポリメタクリル酸メチルでできた半球状粉末(積水化成品工業製テクポリマー)を0.2質量部混合し、ついで木綿の一種であるカポック綿を漂白した後に平均繊維長で100μmの長さに粉砕した短繊維を0.2質量部加え良く混合した。ここに、結合剤としてシリコーンRTVゴムを15.9質量部投入し、良く混合した。なお、上記混合液では、固形分換算で、疎水性微粒子粉末が67.3質量%、半球または不定形の形状を有する粉末が0.4質量%、短繊維が0.4質量%、結合剤が31.9質量%となる。得られた混合液をポリプロピレンフィルムにアプリケーターを用いてスリット幅76.2μmで塗工し高撥水性材料を得た。
【0029】
〔比較例3〕
実施例3の半球状粉末を用いない以外は全て実施例3と同様にして高撥水性材料を得た。
【0030】
〔比較例4〕
実施例3の短繊維を用いない以外は全て実施例3と同様にして高撥水性材料を得た。
【0031】
〔実施例4〕
実施例2の短繊維の代わりに、中空ポリエステル繊維を平均500μmの繊維長にカットした短繊維を用いた以外は全て実施例1と同様にして高撥水性材料を得た。
【0032】
〔実施例5〕
実施例2の短繊維の代わりに、三角形状の断面を持つポリエステル繊維を平均1mmの繊維長にカットした短繊維を用いた以外は全て実施例1と同様にして高撥水性材料を得た。
【0033】
〔実施例6〕
実施例2の短繊維の代わりに、表面に溝を持つ形状の断面を持つポリエステル繊維を平均3mmの繊維長にカットした短繊維を用いた以外は全て実施例1と同様にして高撥水性材料を得た。
【0034】
〔比較例5〕
実施例2の短繊維の代わりに、三角形状の断面を持つポリエステル繊維を平均5mmの繊維長にカットした短繊維を用いた以外は全て実施例1と同様にして高撥水性材料を得た。
【0035】
〔比較例6〕
実施例2の半球状粉末の代わりに、平均一次粒子径4.5μmの真球状シリコーン粉末であるポリメチルシルセスキオキサンを用いた以外は全て実施例2と同様にして高撥水性材料を得た。
【0036】
〔比較例7〕
実施例2の半球状粉末の代わりに、平均一次粒子径10μmの板状粉末であるタルクを用いた以外は全て実施例2と同様にして高撥水性材料を得た。
【0037】
〔比較例8〕
実施例2の半球状粉末の代わりに、平均一次粒子径100μmの球状シリカを用いた以外は全て実施例2と同様にして高撥水性材料を得た。
【0038】
〔実施例7〕
実施例2の半球状粉末の代わりに、平均一次粒子径で15μmの略半球〜赤血球状の不定形の形状を持つ小麦澱粉を用いた以外は全て実施例2と同様にして高撥水性材料を得た。
【0039】
〔実施例8〕
実施例2の半球状粉末の代わりに、平均一次粒子径で80μmの不定形(塊状)の形状を持つポリエチレン粉末を用いた以外は全て実施例2と同様にして高撥水性材料を得た。
【0040】
〔実施例9〕
平均一次粒子径35nmのオクチルシリル化微粒子酸化チタン31.3質量部をデカメチルシクロペンタシロキサン46.9質量部にディスパーを用いて分散させた。ここに、平均一次粒子径10μmの架橋ポリメタクリル酸メチルでできた半球状粉末(積水化成品工業製テクポリマー)を0.5質量部混合し、ついで木綿の一種であるカポック綿を平均繊維長で300μmの長さに粉砕した短繊維を0.5質量部加え良く混合した。ここに、結合剤としてシリコーンRTVゴムを20.8質量部投入し、良く混合した。なお、上記混合液では、固形分換算で、疎水性微粒子粉末が59.0質量%、半球または不定形の形状を有する粉末が0.9質量%、短繊維が0.9質量%、結合剤が39.2質量%となる。得られた混合液をポリエチレンテレフタレートフィルムにアプリケーターを用いてスリット幅127μmで塗工し高撥水性材料を得た。
【0041】
〔比較例9〕
平均一次粒子径35nmのオクチルシリル化微粒子酸化チタン30.0質量部をデカメチルシクロペンタシロキサン45.0質量部にディスパーを用いて分散させた。ここに、平均一次粒子径10μmの架橋ポリメタクリル酸メチルでできた半球状粉末(積水化成品工業製テクポリマー)を0.7質量部混合し、ついで木綿の一種であるカポック綿を平均繊維長で300μmの長さに粉砕した短繊維を0.7質量部加え良く混合した。ここに、結合剤としてシリコーンRTVゴムを50質量部投入し、良く混合した。なお、上記混合液では、固形分換算で、疎水性微粒子粉末が36.9質量%、半球または不定形の形状を有する粉末が0.9質量%、短繊維が0.9質量%、結合剤が61.3質量%となる。得られた混合液をポリエチレンテレフタレートフィルムにアプリケーターを用いてスリット幅127μmで塗工し高撥水性材料を得た。
【0042】
〔実施例10〕
実施例2において、結合剤としてシリコーンRTVゴムを7.8質量部投入した他は全て実施例2と同様にして高撥水性材料を得た。なお、上記混合液では、固形分換算で、疎水性微粒子粉末が79.0質量%、半球または不定形の形状を有する粉末が0.9質量%、短繊維が0.9質量%、結合剤が19.2質量%となる。
【0043】
〔実施例11〕
実施例2において、半球状粉末の配合量を4.0質量部とした他は全て実施例2と同様にして高撥水性材料を得た。なお、上記混合液では、固形分換算で、疎水性微粒子粉末が61.5質量%、半球または不定形の形状を有する粉末が7.7質量%、短繊維が0.8質量%、結合剤が30.0質量%となる。
【0044】
〔実施例12〕
実施例2において、半球状粉末の配合量を20.0質量部とした他は全て実施例2と同様にして高撥水性材料を得た。なお、上記混合液では、固形分換算で、疎水性微粒子粉末が47.4質量%、半球または不定形の形状を有する粉末が29.0質量%、短繊維が0.5質量%、結合剤が23.1質量%となる。
【0045】
〔比較例10〕
実施例12において、半球状粉末の配合量を25.0質量部とした他は全て実施例2と同様にして高撥水性材料を得た。なお、上記混合液では、固形分換算で、疎水性微粒子粉末が41.8質量%、半球または不定形の形状を有する粉末が32.6質量%、短繊維が5.2質量%、結合剤が20.4質量%となる。
【0046】
〔比較例11〕
実施例2において、結合剤としてシリコーンRTVゴムを2.0質量部投入した他は全て実施例2と同様にして高撥水性材料を得た。なお、上記混合液では、固形分換算で、疎水性微粒子粉末が92.2質量%、半球または不定形の形状を有する粉末が1.1質量%、短繊維が1.1質量%、結合剤が5.6質量%となる。
【0047】
〔実施例13〕
実施例10において用いた、平均一次粒子径35nmのオクチルシリル化微粒子酸化チタン30.0質量部とデカメチルシクロペンタシロキサン45.0質量部の代わりに、平均一次粒子径が10nmのオクチルシリル化微粒子シリカ30質量部とデカメチルシクロペンタシロキサン70質量部を用いた以外は全て実施例10と同様にして高撥水性材料を得た。なお、上記混合液では、固形分換算で、疎水性微粒子粉末が79.0質量%、半球または不定形の形状を有する粉末が0.9質量%、短繊維が0.9質量%、結合剤が19.2質量%となる。
【0048】
〔実施例14〕
実施例13の平均一次粒子径が10nmのオクチルシリル化微粒子シリカの代わりに、平均一次粒子径が80nmのメチルハイドロジェンポリシロキサン焼き付け処理シリカを用いた他は全て実施例13と同様にして高撥水性材料を得た。
【0049】
〔実施例15〕
実施例2のシリコーンRTVゴムの代わりにアマニ油を用い、塗工後、室温で2日間放置した以外は全て実施例2と同様にして高撥水性材料を得た。
【0050】
〔実施例16〕
平均一次粒子径15nmのステアリン酸アルミニウム処理微粒子酸化チタン32.0質量部を不飽和ポリエステル樹脂の30質量%アセトン溶液64.0質量部に分散させた。平均一次粒子径で15μmの略半球〜赤血球状の不定形の形状を持つ小麦澱粉を0.4質量部混合し、ついで木綿の一種であるカポック綿を漂白した後に平均繊維長で250μmの長さに粉砕した短繊維を2.0質量部加え良く混合した。そして、不飽和ポリエステル樹脂用の硬化剤を適量投入して攪拌し、得られた混合液をステンレス板にハケを用いて塗工し、良く乾燥させて高撥水性材料を得た。なお、上記混合液では、固形分換算で、疎水性微粒子粉末が59.7質量%、半球または不定形の形状を有する粉末が0.8質量%、短繊維が3.7質量%、結合剤が35.8質量%となる。
【0051】
以下実施例および比較例で作成した高撥水性材料の評価を表1に示す。
評価方法は、以下の手順にて実施した。
1)撥水性試験 材料に水を2μL落とした時に接触角が135度以上を示すか否かを確認する。示した場合は高撥水性であるとする。
2)耐摩擦試験 材料に水を1mL落とし、指と材料との間に水が挟まれるようにして材料表面を10回摩擦する。材料表面を水洗した後、残っている水分を紙製ウエスを押し当てて取り除いた。ついで、摩擦した場所に水を10μL落とした時の接触角が90度以上を示すかを確認する。示した場合は耐摩擦性に優れているとする。
3)水滴残留試験 前項にて摩擦して試料にダメージを与えた場所に水を3mL落とし、材料を傾けた際に材料表面に水が残るか否かを確認する。水が残らない場合は、耐摩擦性によりすぐれているとする。
【0052】
なお、1)撥水性試験での高撥水性か否かは水に接触した直後のごく短時間での撥水性能を示したものである。通常撥水性を議論する場合はこの方法で議論される場合が多い。2)耐摩擦試験は、水をつけずに摩擦した場合と比べても試料のダメージが大きく、材料の加速劣化試験として用いた方法である。3)水滴残留試験は、2)耐摩擦試験で耐摩擦性に優れていたと判断されても、やや多めの水量を与えた時にダメージを受けた部分に水が残るか否かで、経時、特に屋外の経時観察において材料の濡れや汚染に影響があるため、評価項目として設定した。1)2)3)の試験の結果、いずれも性能が優れていると評価された試料は、撥水性が長期間持続すると考えられる。
【0053】
【表1】

【0054】
表1の結果から、本発明の実施例は比較例と比べていずれも優れた性能を有していることが判る。比較例1は短繊維と半球または不定形の形状を有する粉末を共に配合しなかった場合の例であるが、耐摩擦性は劣っていた。比較例2は短繊維を多量に配合した場合の例であるが、耐摩擦性は劣っていた。比較例3は短繊維を配合し、半球または不定形の形状を有する粉末を配合しなかった場合の例であるが、耐摩擦性は劣っていた。比較例4は短繊維を配合せず、半球または不定形の形状を有する粉末を配合した場合の例であるが、耐摩擦性は劣っていた。比較例5は短繊維の繊維長を長くした場合の例であるが、耐摩擦性は劣っていた。比較例6は、半球または不定形の形状を有する粉末の代わりに真球状の粉末を用いた場合の例であるが、耐摩擦性は劣っていた。比較例7は、半球または不定形の形状を有する粉末の代わりに板状の粉末を用いた場合の例であるが、耐摩擦性は劣っていた。比較例8は、半球または不定形の形状を有する粉末の代わりに粒子径の大きな球状の粉末を用いた場合の例であるが、耐摩擦性は劣っていた。比較例9は撥水性微粒子粉末の配合量を少なくした場合の例であるが、耐摩擦性は劣っていた。比較例10は半球または不定形の形状を有する粉末の配合量を多くした場合の例であるが、耐摩擦性は劣っていた。比較例11は撥水性微粒子粉末の配合量を多くした場合の例であるが、耐摩擦性は劣っていた。以上から、比較例はいずれも高い撥水性を示したものの、耐摩擦性試験を行うと、性能が低くなっていることが判る。
【図面の簡単な説明】
【0055】

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)〜(D)を配合することを特徴とする高撥水性材料。
(A)撥水性微粒子粉末
(B)最大径が1μm〜100μmの範囲にある半球または不定形の形状を有する粉末
(C)繊維長が50μm〜3mmの範囲にある短繊維
(D)結合剤
ただし、高撥水性材料中の(A)(B)(C)の配合量は、それぞれ高撥水性材料中の固形分の質量に対して40〜85質量%、0.1〜30質量%、0.1〜8.5質量%の範囲にある。

【図1】 短繊維が材料表面に飛びだしている様子を示した光学顕微鏡写真の例(写真の横幅が約230μmに相当)
【図2】 短繊維が材料表面に飛びだしていない様子を示した光学顕微鏡写真の例(写真の横幅が約230μmに相当)
【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−43233(P2010−43233A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−229051(P2008−229051)
【出願日】平成20年8月11日(2008.8.11)
【出願人】(500034941)株式会社コスメテクノ (16)
【Fターム(参考)】