説明

高機能内装材

【課題】居住者の健康や精神安定に役立つような癒し効果を発揮したり、傷や汚れを目立たなくするような良好な意匠性を有する高機能内装材を提供する。
【解決手段】この高機能内装材は、芳香剤を含有する注入液、消臭剤を含有する注入液、抗菌剤を含有する注入液、着色剤を含有する注入液、或いはホルムアルデヒドやVOC等の有害物質を除去するためのキャッチャー剤を含有する注入液を、基材となる木材に加圧注入することによって製造したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、主として住宅等の建物に設けられて、居住者の健康や精神安定に役立つような癒し効果を発揮したり、傷や汚れを目立たなくするような意匠性を有する高機能内装材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば特許文献1にも開示されているように、防腐剤や防蟻剤、難燃剤等の各種の改質剤を木材に塗布又は注入して耐久性を高めるようにした建築用の内装材が知られている。
【0003】
【特許文献1】特開2002−307405号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年においては、内装材自体の耐久性等を高めるものだけでなく、住宅等の居住空間に設置することで、居住者の健康や精神安定に役立つような癒し効果を発揮する内装材の開発が望まれている。また、特に表面が軟らかくて傷や汚れが付き易い木材を素材とした内装材の場合には、傷や汚れを付き難くする或いは目立ち難くするといった意匠上の対策も求められている。
【0005】
そこで、この発明は、上記のような不具合を解消して、居住者の健康や精神安定に役立つような癒し効果を長期に亘って安定して発揮することができ、また傷や汚れを目立ち難くするような良好な意匠性を長期に亘って維持することができる高機能内装材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、請求項1に係る発明の高機能内装材は、芳香剤を含有する注入液を、木材に加圧注入してなることを特徴とする。
【0007】
また、請求項2に係る発明の高機能内装材は、消臭剤を含有する注入液を、木材に加圧注入してなることを特徴とする。
【0008】
さらに、請求項3に係る発明の高機能内装材は、抗菌剤を含有する注入液を、木材に加圧注入してなることを特徴とする。
【0009】
さらにまた、請求項4に係る発明の高機能内装材は、着色剤を含有する注入液を、木材に加圧注入してなることを特徴とする。
【0010】
また、請求項5に係る発明の高機能内装材は、ホルムアルデヒドやVOC等の有害物質を除去するためのキャッチャー剤を含有する注入液を、木材に加圧注入してなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
この発明の高機能内装材は、芳香剤、消臭剤、抗菌剤、着色剤又はキャッチャー剤を含有する注入液を、木材に加圧注入することによって構成されており、居住者の健康や精神安定に役立つような癒し効果を発揮し、また傷や汚れを目立たなくするような良好な意匠性を有している。従って、この高機能内装材を居住空間に設けることで、癒し効果の高い居住環境を提供することができ、また傷や汚れが目立ち難い意匠性に優れた居住環境を提供することができる。しかも、加圧注入により、注入液を木材の内部まで十分に浸透させて、癒し効果や良好な意匠性を長期間に亘って維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
この発明の一実施形態に係る高機能内装材は、例えば住宅の居住空間に設けられて、癒し効果や意匠性の高い居住環境を提供するもので、各種の癒し成分や着色成分を含有する注入液を、基材となる木材に加圧注入することで製造される。
【0013】
癒し成分としては、芳香剤、消臭剤、抗菌剤、又は有害物質除去用のキャッチャー剤が用いられる。
【0014】
具体的に、芳香剤としては、植物抽出物、木材抽出物、天然製油、燐酸エステル、アルコール飲料、さらに油性のものはそれらの懸濁液が挙げられる。特に、木材抽出物としては、例えばヒノキ、スギ、ヒバ、ブナ等の天然木材の木粉を水又はアルコールで抽出したものが好適に用いられる。このような木材抽出物をその原材料である木材に対して加圧注入することで、木材の含有成分を濃縮させることができ、木材本来の香りを長期間持続させることができる。また、アルコール飲料としては、例えばワインやウイスキー、日本酒、焼酎、梅酒、ジン等が好適に用いられる。このように、芳香剤としては、人体に悪影響を与えることがなく、焼却処理等の廃棄処分時にも有害な物質を発生することのない天然素材や飲料が主として利用されており、健康や地球環境に配慮した内装材とすることができる。
【0015】
消臭剤、抗菌剤としては、植物抽出物、木材抽出物、ヒバ油やテルペン油等の天然製油、燐酸エステル、さらに油性のものはそれらの懸濁液が挙げられる。特に、植物抽出物としては、例えばシソの葉、紫根、ショウガ、レモン、ドクダミ、べにばな、いぐさ等の水又はアルコールによる抽出物の他、緑茶等から抽出した茶カテキン、柿の葉茶や柿渋の抽出物等が好適に用いられる。木材抽出物としては、例えばヒノキチオールやワサビチオールの他、ヒノキ、スギ、ヒバ、ブナ等の天然木材の木粉を水又はアルコールで抽出したものが好適に用いられる。このように、消臭剤や抗菌剤としても、芳香剤と同様に人体に悪影響を与えることがなく、焼却処理等の廃棄処分時にも有害な物質を発生することのない天然素材が主として利用されており、健康や地球環境に配慮した内装材とすることができる。
【0016】
キャッチャー剤としては、ホルムアルデヒドやVOC(揮発性有機化合物)等の有害物質を化学反応によって分解する化学吸着剤、或いは、有害物質を物理的に捕捉する物理的吸着剤等が用いられる。
【0017】
また、着色成分としては、植物抽出物、木材抽出物、天然製油、アルコール飲料、さらに油性のものはそれらの懸濁液等を利用した着色剤が用いられる。特に、植物抽出物としては、例えばシソの葉、紫根、きはだ、くちなし、ウコン、ウルウルシ、ダイオウ、べにばな、すおう、柿の葉、柿渋等の主として草木染染料として使用される天然植物の水又はアルコールによる抽出物等が好適に用いられる。また、アルコール飲料としては、例えばワインやウイスキー等が好適に用いられる。このように、着色剤としても、芳香剤と同様に人体に悪影響を与えることがなく、焼却処理等の廃棄処分時にも有害な物質を発生することのない天然素材や飲料が主として利用されており、健康や地球環境に配慮した内装材とすることができる。
【0018】
基材となる木材としては、一般に仕上げ材として用いられている高級材だけではなく、成長が早くて注入液の浸透性に優れた針葉樹や小径木の国産材を始めとして、これまで内装材としてあまり用いられていなかった樹種も用いられる。また、着色剤を加圧注入する場合には、木材内部まで着色が十分に施されるので、木材表面に少々の傷や汚れが付いてもそれらは目立ち難くなり、表面が軟らかくて傷や汚れが付き易い例えばスギ等の木材であっても、基材として問題なく用いることができる。
【0019】
なお、木材としては、天然木材だけでなく、合板等の加工木材も含まれる。また、木材の形状としては、内装材の用途に応じて板状や柱状等に加工される。
【0020】
上記構成の高機能内装材の製造に際しては、まず、基材となる木材を乾燥させてから密閉タンク内に入れる。このとき、木材への注入液の浸透を効率良く行うために、外観を損ねない程度に木材表面に穿孔処理を施しても良い。次に、木材に注入液が浸透し易いように、真空ポンプによって密閉タンク内を所定の圧力まで減圧する。続いて、癒し成分や着色成分を含有する注入液を、加圧送液ポンプによって密閉タンク内に充填するとともに、密閉タンク内が所定の圧力になるまで送り込んで加圧して、注入液を木材の内部にまで注入する。
【0021】
注入が終わると、密閉タンク内の圧力を再び減圧するか又は常圧にし、密閉タンク内の注入液を排出した後、密閉タンク内から木材を取り出す。そして、取り出した木材を所定の含水率となるように乾燥させることで、所望の高機能内装材が得られる。
【0022】
なお、高機能内装材の表面は、傷が付き易いため、癒し成分の放散を阻害しないような被膜層で覆うようにしても良い。また、加圧注入の方法は、上記方法に限定されるものでなく、木材の種類や癒し成分、着色成分の種類等に応じて適当な方法を採用すれば良い。
【0023】
このようにして製造された高機能内装材は、例えば回り縁、家具や内部収納等における板材、ドアやシステムキッチン等における面材、手摺、取手、居住空間の露出した状態で施工される柱や梁、ウッドデッキ等の様々な用途に用いられる。
【0024】
そして、このような高機能内装材を用いることで、居住空間に香気が持続的に放散されたり、居住空間の不快な臭気、細菌や雑菌、有害物質が効率良く取り除かれて、癒し効果の高い居住環境を長期に亘って提供することができる。
【0025】
また、着色成分を加圧注入した高機能内装材にあっては、その内部にまで自然な着色が施されているので、表面に傷や汚れが付くようなことがあっても、それら傷や汚れが目立ち難く、また傷や汚れがひどくなった表面部分を削るだけで、その表面部分と同色の新たな着色面が露出して新品同様となるので、メンテナンスも容易である。従って、意匠性の高い居住環境を長期に亘って提供することができる。
【0026】
なお、この発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、この発明の範囲内で上記実施形態に多くの修正及び変更を加え得ることは勿論である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香剤を含有する注入液を、木材に加圧注入してなることを特徴とする高機能内装材。
【請求項2】
消臭剤を含有する注入液を、木材に加圧注入してなることを特徴とする高機能内装材。
【請求項3】
抗菌剤を含有する注入液を、木材に加圧注入してなることを特徴とする高機能内装材。
【請求項4】
着色剤を含有する注入液を、木材に加圧注入してなることを特徴とする高機能内装材。
【請求項5】
ホルムアルデヒドやVOC等の有害物質を除去するためのキャッチャー剤を含有する注入液を、木材に加圧注入してなることを特徴とする高機能内装材。

【公開番号】特開2006−347160(P2006−347160A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−108525(P2006−108525)
【出願日】平成18年4月11日(2006.4.11)
【出願人】(000198787)積水ハウス株式会社 (748)
【Fターム(参考)】