説明

高機能性を有する食品素材の製造方法

【課題】1g中に、DHAが100mg・EPA30mgが含有され、魚臭がせず、また、食物繊維も多量に含まれる高機能性の食品素材を提供する。
【解決手段】オリーブオイル20gをグリセリン脂肪酸エステルとペクチンを用いて予備乳化を行い、次いで、DHAオイル80gを投入し攪拌、混合して乳化物を得る。オカラを摩粉し、水分調整した後に加熱殺菌することによりオカラペーストを調製する。このオカラペーストに、上記の乳化液を配合することによって高機能性を有する食品素材を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は大豆由来食品素材、例えば、おからペーストに魚油中に含まれる高度不飽和脂肪酸〈DHA)を吸着させた高機能性を有する食品素材の製造方法、及びこの方法によって得られた食品素材に関する。
【背景技術】
【0002】
魚油中に含まれる高度不飽和脂肪酸、例えばドコサヘキサエン酸(DHA)や、エイコサペンタエン酸(EPA)は血中のコレステロール値を低下させ血栓防止や血圧改善等の作用を有するのでこれを食品中に含有させようとすることは従来より行われている。
【特許文献1】特許第3407084号
【特許文献2】特許第3443767号 しかし、ドコサヘキサエン酸(DHA)やエイコサペンタエン酸(EPA)等の高度不飽和脂肪酸(以下、これらを総称してDHAという)は非常に酸化されやすく、DHA特有の魚臭を発生しやすいという欠点があった。 この欠点を改良するため、従来の技術はDHAを例えば澱粉、カルシウムまたは脱粉乳等にDHAオイルを吸着させ、その周りを香料など加えてマスキングする方法やデキストリン等に吸着させる方法が一般的であった。しかし、この方法はいずれも単に組織に中に吸着させる方法のため酸化安定性に問題があり、高濃度で食品中に含有させることには至らず、市場性に乏しいのが現状である。 本発明者らはこの欠点を改善し、先に魚臭の発生を極力抑え、高濃度でDHAを含有した食品素材を製造するために種々検討した結果大豆由来食品素材にDHAを含有させることによって魚臭の発生を抑えて高濃度でDHAを含有した食品素材を製造する方法を見出し特許出願を行った(特願2007−31165号)。確かに、この方法により高濃度でDHAを含有された食品素材を提供することはできたが、高濃度で含有された高級不飽和脂肪酸は酸化されて過酸化物を生じ食品風味を劣化させると共に、却ってその生理機能は失われるという欠陥が見出された。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
そこで、本発明者は食品中に含有されたこれらの高度不飽和脂肪酸の酸化を極力抑え、食品の風味劣化を防止すべく種々検討した結果、本発明を完成したもので、本発明は高濃度でDHAを含有する高機能を有する食品素材の食品の風味劣化を防止した高機能性を有する食品素材の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題は、オリーブ油に乳化剤及び増粘剤を添加して得られた乳化液にDHA油を添加、混合して乳化した後、これを大豆由来食品に吸着させることによって解決することが出来たのである。即ち、本願発明の要旨はオリーブ油に乳化剤及び増粘安定剤を添加して得られた乳化液にDHA油を添加、混合して乳化した後、これを大豆由来食品素材に吸着させることを特徴とする高機能性を有する食品素材の製造方法である。
【発明の効果】
【0005】
本発明においては、大豆由来食品、例えばオカラを粉砕・洗浄工程によりペースト化することにより大豆由来食品中に本来あるべき蛋白質・脂質が除去され、さらに大豆由来食品の食物繊維を短繊維化することにより一層DHAを吸着しやすい条件が整い、その結果、本発明では大豆由来食品中に、DHAの高濃度含有量、例えば食品素材1g中に100mg のDHAを含有することが出来ると共に、DHAは乳化されているオリーブ油によって更に乳化される。従って、多相エマルジョンでDHAが食品素材中に吸着されるためDHAの高機能を保持し、食品の風味劣化を防止することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明について、更に詳細に説明する。
本発明にかかる製造方法は、先ずオリーブ油の乳化液を作成する。オリーブオイル乳化液は、オリーブオイルに乳化剤の水溶液を添加し、次いで、増粘安定剤を加えてミキサーで混合してオリーブオイル乳化液とする。オリーブオイルと乳化剤の混合割合は油重量に対して1%から10%であり、これに油重量に対して1%から10%の増粘安定剤を添加する。その時、使用するオリーブオイルとしては、市販のオリーブオイルでよく、乳化剤と増粘安定剤についても市販のものでよい。例えば、乳化剤については非イオン系の界面活性剤で、好ましくはグリセリン脂肪酸エステルであり、また、増粘安定剤としては増粘剤・安定剤・ゲル化剤の中でこの場合はゲル化剤である。次にこのオリーブオイル乳化液をミキサーで高速回転の中でDHA油を添加して乳化させる。DHAとはDHAを含有する精製魚油であって、従来よりDHAの原料として使用されている魚油であれば何れでも良く、具体的には鮪、鰹などの魚油で通常約27%前後のDHAを含有している。このようにして得られたエマルジョンは多相エマルジョンを示し、乳化が安定したものである。
【0007】
得られたエマルジョンを大豆由来食品に吸着させる。本発明で使用する大豆由来食品としてはおからペーストがもっとも好ましい。この吸着方法は先に出願した特願2007−31165号に記載した方法と同じである。即ち、大豆由来食品素材(おからペースト)には大豆由来の大豆サポニン、イソフラボン、カルシウム、レシチンや食物繊維等さまざまな有効成分が含まれている。このうち大豆サポニンは脂質の過酸化抑制・脂肪の代謝促進等による動脈硬化や肥満の予防、イソフラボンはその女性ホルモン様作用による骨粗末症、前立腺肥大、更年期諸症状の予防改善、また、レシチンにはコレステロールの血管沈着防止作用による動脈硬化予防改善、神経伝達物質(アセチルコリン)不足により記憶力減退、痴呆症の予防改善効果が報告されている。従って、このような大豆由来食品にDHAを高濃度で含有させることによって高機能性を有する食品素材とすることが出来る。
【0008】
本発明においては大豆由来食品としておからを使用する。即ち、大豆より豆腐を作ったときの豆乳の絞りかすであるオカラに水を加え、加水したオカラを煮沸することによってオカラに残留する豆乳成分を水相に移相させ、水中に移行した豆乳成分を除去する目的で洗浄を行い、洗浄したオカラを摩砕・煮沸してペースト状とする。得られたペースト状オカラ(オカラペースト)は上記の洗浄と摩砕・煮沸によってオカラに含まれているタンパク質や油(大豆油)を抜き取ることが出来ると共に、食物繊維を短繊維化することが出来る。これによって一層DHAを吸着しやすい条件が整い、高濃度DHA含有の高機能食品素材を得ることが出来る。
【0009】
本発明の次の工程は、乳化(多相エマルション)させたDHAを大豆由来食品素材に吸着させる。大豆由来食品素材(オカラペースト)の繊維組織の中に均一にかつ、十分に吸着させるために混ぜ合わす。その際、オカラペーストの繊維組織内にDHAエマルジョンをなじみやすくなるように、例えば2時間〜5時間程度、例えば3時間程度寝かすことが好ましい。得られたDHA含有オカラペーストを乾燥させ、乾燥後所望に粒径を有するように粉砕する。乾燥手段としては通常の乾燥装置を使用すればよく、例えば真空凍結乾燥機を、また、粉砕に際しては例えば遠心粉砕機等を使用して微粒子パウダーにする。
得られた粉末状高濃度DHA含有食品素材は、粉末1g中にDHA100mg、EPA30mgを含有させることが出来ると共に、高含量で含有されたDHAは多相エマルジョンを有するので酸化されにくく、従って、長期間食品としての風味を保持することが出来る。
【実施例】
【0010】
次に本発明の実施例をもって更に具体的に説明するが、本発明はこの実施例により限定させるものではない。
実施例1
ミキサー中にオリーブオイル20gを投入し、次いで、油重量に対して乳化剤5%とゲル化剤5%を投入し攪拌する。使用した乳化剤は非イオン系の界面活性剤でエステル型のグリセリン脂肪酸エステルを使用する。ゲル化剤としてペクチンを油重量に対して5%程度を同量の油で溶かしたものを使用する。これらをミキサーで混合し予備乳化を行った。次いで、DHAオイル80gを上記オリーブオイル、乳化剤及びゲル化剤が混合されているミキサー中に少量ずつ、かつ断続的に流し込み攪拌、混合する。これによって六方晶相(ヘキサゴナル)の強固な結合が生まれより耐熱性の優れた、かつ乳化安定性の高い乳化が得られた。
常法により豆腐工場でおから・豆乳を分離機によりオカラを得、これを70〜75℃の温度下で加水、約15分滞留後、30〜35℃で摩粉する。続いて得られた約40℃の摩砕物を煮沸し、15分間85℃で滞留する。しかる後に水分調整及び、計量・充填・真空包装した後ボイルして加熱殺菌する。これを2〜3℃で60分間冷却するとオカラペーストが得られる。
得られたオカラペーストに、上記乳化工程で得られた乳化液を配合することによってペースト1g中にDHA100mgが配合される。このように高濃度でDHAオイルを含有しても魚臭がしない理由としては空洞化した繊維組織の中にDHAオイルが吸収されたものと考えられるが実際に繊維質の中にDHAオイルが吸着されていることが顕微鏡で確認された。この状態を図1及び図2に示す。
【産業上の利用可能性】
【0011】
本発明の高濃度不飽和脂肪酸含有高機能性を有する食品素材は、僅か1gでDHAが100mg・EPA30mgと高濃度に含有されており、あらゆる食品に配合が可能であり、魚臭が出ないのが特徴である。しかも、現在不足している食物繊維も多量に含まれているため、現代病である生活習慣病に役立つことが見込まれる。価格も従来のものより低価格で製造が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施例で得られたDHAの多相エマルジョンの状態を示す顕微鏡写真(倍率:300倍)。
【図2】本発明の実施例で得られたDHAの多相エマルジョンの状態を示す顕微鏡写真(倍率:5000倍)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オリーブオイルを乳化剤・増粘安定剤で乳化させた後、更にDHA油を乳化させ、これを大豆由来食品素材に吸着させることを特徴とする高機能性を有する食品素材の製造方法。
【請求項2】
前記大豆油由来食品素材を30〜80ミクロンの微粒子にすることを特徴とする請求項1記載の高機能性を有する食品素材の製造方法。
【請求項3】
前記大豆由来食品素材を粉砕及び洗浄することにより蛋白質と脂質を除去することを特徴とする請求項1〜3のいずれかの項記載の高機能性を有する食品素材の製造方法。
【請求項4】
請求項1記載の方法によって得られた高機能性を有する食品素材。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−201419(P2009−201419A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−47328(P2008−47328)
【出願日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【出願人】(599013979)株式会社ベルリッチ (2)
【Fターム(参考)】