高機能性健康食品、及び高機能性健康食品の製造方法
【課題】 健康食品素材の有する生理活性を高活性化させ、従来の有効量より少量で、同等又はそれ以上の生理活性を示す高機能性健康食品を提供する。
【解決手段】 健康食品素材と、天然物由来のリン脂質とが機械的に分散処理された混合物からなる高機能性健康食品であって、健康食品素材が、苦瓜抽出物、ネコノヒゲ抽出物、クマツヅラ抽出物、桑の葉抽出物、シークヮーシャー抽出物、ヘチマ抽出物、ボタンボウフウ抽出物、タンカン抽出物、ホソバワダン抽出物、又はノニ抽出物より選ばれる少なくとも一種であり、天然物由来のリン脂質が、卵黄リン脂質又は大豆リン脂質より選ばれる少なくとも一種である高機能性食品とする。
【解決手段】 健康食品素材と、天然物由来のリン脂質とが機械的に分散処理された混合物からなる高機能性健康食品であって、健康食品素材が、苦瓜抽出物、ネコノヒゲ抽出物、クマツヅラ抽出物、桑の葉抽出物、シークヮーシャー抽出物、ヘチマ抽出物、ボタンボウフウ抽出物、タンカン抽出物、ホソバワダン抽出物、又はノニ抽出物より選ばれる少なくとも一種であり、天然物由来のリン脂質が、卵黄リン脂質又は大豆リン脂質より選ばれる少なくとも一種である高機能性食品とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、健康食品素材の生理活性を高活性化させた健康食品に関し、特に苦瓜抽出物、ネコノヒゲ抽出物、クマツヅラ抽出物、桑の葉抽出物、シークヮーシャー抽出物、ヘチマ抽出物、ボタンボウフウ抽出物、タンカン抽出物、ホソバワダン抽出物、又はノニ抽出物が有する生理活性を高活性化させ、従来の有効量よりも少量で、同等又はそれ以上の生理活性を示す高機能性健康食品、及び高機能性健康食品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
健康食品とは、健康に良い効果(生体調整機能)を主張する食品であり、広く健康の保持増進に資する食品として販売・利用されるもの全般を指す。近年、食生活の乱れによる栄養の偏り、食生活の多様化、肥満や生活習慣病の増加、高齢化の進行等により国民の健康に対する関心が高まっており、健康に関するより高い効果を健康食品に対して求めるニーズが増えている。
【0003】
これら健康食品に期待される一般的な健康効果として、免疫力の増強作用、抗ウイルス作用、抗腫瘍作用、血糖降下作用、動脈硬化の改善、抗コレステロール作用、血圧降下作用、解熱作用、整腸作用、利尿作用、鎮痛作用、抗菌作用、二日酔い防止作用等が挙げられる。
【0004】
一方、健康食品に期待される健康効果に関係していると考えられる一般的な生理活性成分には、単糖類、二糖類、機能性オリゴ糖、多糖類、脂肪酸、糖脂質、ステロイド、アミノ酸、ペプチド類、タンパク質、脂溶性ビタミン、水溶性ビタミン、ビタミン様作用物質、ミネラル、食物繊維、テルペノイド、タンニン、フラボノイド、カロテノイド、有機硫黄化合物、有機酸、葉緑素、発酵微生物(プロバイオテクス)、その他特殊成分等が挙げられる。
【0005】
しかし、これらの生理活性成分を経口摂取する際には、成分の物理的性質または体内環境における様々な影響を受けるために、生体利用率の低下を招き、期待される効果が得られ難い場合があるという問題が生じていた。
【0006】
ここで、生体利用率とは、経口投与した薬剤等の生理活性成分の血中への移行量/全投与量と考えることができる。生体利用率は、薬剤の溶解性、粒子の性状、薬剤の物理的・化学的分解、消化管での吸収などに依存している。この生体利用率が大きいほど、薬剤等の吸収がよく、投与量にみあった薬効が期待される。
【0007】
例えば、生理活性成分である多糖類やタンパク質は、比較的分子量が大きいため、消化管粘膜からの膜透過性が悪く、経口投与した場合、消化管から吸収されにくいという問題があった。
このため、現在、経口摂取により多糖類が有する生理活性を得ることを目的として、多糖類やタンパク質に化学的処理や酵素処理を施してその分子量を小さくし、消化管からの吸収効率を上げる方法や、多糖類やタンパク質を多量に摂取することにより吸収量を増加させる方法が検討されている。
【0008】
しかしながら、多糖類やタンパク質の分子量を小さくし、オリゴ糖やペプチド以下の分子量にした場合に、期待される生理活性が発現されるかどうかは明らかになっていない。また、多量摂取は人的苦痛を伴うため、その摂取自体が困難であり、健康食品として望ましいものではないという問題があった。
【0009】
一方、親油性の生理活性成分の場合、消化管粘膜からの膜透過性が悪く、多糖類の場合と同様に、経口投与した場合、消化管から吸収されにくいという問題があった。
このため、現在、経口摂取により親油性成分を有する生理活性成分の生理活性を得る方法としては、親油性成分を油と一緒にカプセル化して摂取する方法(例えば、特許文献1参照。)や、親油性成分を多量に摂取するといった方法が講じられている。
【0010】
【特許文献1】特開2001−086931号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、親油性成分を多量に摂取する方法は、人的苦痛を伴うため、摂取自体が困難である。また、多量摂取のために、加工や製造面において、濃厚なレトルト食品や、カプセル品、特殊な顆粒品、打錠品にするなどの煩雑な食品加工技術が必要となったり、製造工程の増加をまねくという問題がある。
さらに、親油性成分を油と一緒にカプセル化して摂取する場合についても、煩雑な食品加工技術の必要性や製造工程の増加といった問題があり、これらの方法では、相当の製造費用が生じるのが現状である。
【0012】
また、一部の生理活性成分は口から摂取した後、胃や十二指腸から産生される胃酸や十二指腸などの消化液によって分解されてしまうために、その大半は小腸で吸収されないという問題点があった。
生理活性成分を消化管から分解されずに吸収させる技術は古くからの課題であるが、未だ確立された技術はない。生理活性成分の経口吸収を促進させる技術として、例えば以下の方法が知られている。
【0013】
その一つとして、例えば界面活性作用を有する胆汁酸塩類(WO9606635)、しょ糖脂肪酸エステルや、炭素数8〜18のアシル基を有するO−アシル−L−カルニチン類(US4537772)などの非イオン性界面活性剤、あるいはラウリル硫酸ナトリウム(SLS)などの陰イオン性界面活性剤を使用する方法、また胆汁酸塩類とSLSを併用する方法(Pharm.Res.,7,No.9,Suppl.,S157,1990)が挙げられる。該方法は細胞膜の流動性を高めることから水溶性の高い物質の吸収を促進する方法であるが、細胞障害性の問題等によって実用化には至っていない(Journal
of Controlled release,29,253,1994)。
【0014】
EDTA(J.Pharm.Pharmacol.,51,No.11,1241−50,1999)、EGTAなどのキレート剤、あるいはトリプシン阻害剤(J.Pharm.Pharmacol.,50,No.8,913−20,1998)などの酵素阻害剤を使用する方法も挙げられる。該方法は、カルシウムイオンを引き抜くことにより、細胞間隙をルーズとし、高分子物質の膜透過性を促進する方法であるが、生理的pH(中性付近)においては比較的高濃度でないと吸収効果は発現されず、またカルシウムイオンが引き抜かれることによる粘膜障害も報告されている。
【0015】
本発明者らは、上記現状に鑑み、多糖類やタンパク質等の有効成分の分子量を小さくすることなく、親油性成分の吸収を促進し、胃酸や膵液による分解から保護する食品加工技術を鋭意研究した。そして、それぞれ上記のような問題を抱える天然の食品素材のうち、苦瓜抽出物、ネコノヒゲ抽出物、クマツヅラ抽出物、桑の葉抽出物、シークヮーシャー抽出物、ヘチマ抽出物、ボタンボウフウ抽出物、タンカン抽出物、ホソバワダン抽出物、又はノニ抽出物より選ばれる少なくとも一種を、天然物由来のリン脂質より選ばれる少なくとも一種と混合させることで上記問題を解決する作用があることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は、健康食品素材の生理活性を高活性化させ、従来の有効量よりも少量で、同等又はそれ以上の生理活性を示す高機能性健康食品、及び高機能性健康食品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するため、本発明の高機能性健康食品は、健康食品素材と、天然物由来のリン脂質とが機械的に分散処理された混合物からなる高機能性健康食品であって、前記健康食品素材が苦瓜抽出物、ネコノヒゲ抽出物、クマツヅラ抽出物、桑の葉抽出物、シークヮーシャー抽出物、ヘチマ抽出物、ボタンボウフウ抽出物、タンカン抽出物、ホソバワダン抽出物、又はノニ抽出物より選ばれる少なくとも一種であり、前記天然物由来のリン脂質が、卵黄リン脂質又は大豆リン脂質より選ばれる少なくとも一種としてある。
【0017】
高機能性健康食品をこのような構成にすれば、これらの健康食品素材に卵黄リン脂質又は大豆リン脂質を混合して機械的に分散処理することで、これらの健康食品素材がそれぞれ備えた生体調整機能を向上させることができる。
このため、本発明の高機能性健康食品によれば、従来の有効量よりも少量で、従来と同等又はそれ以上の健康効果を得ることが可能となる。
【0018】
また、本発明の高機能性健康食品は、前記混合物に、にがりを含有させたものとしてある。
これによって、より一層各健康食品素材の生理活性を高活性化することが可能となる。
【0019】
また、本発明の高機能性健康食品は、前記機械的分散処理が、高速回転分散処理、超音波分散処理、高圧ホモジナイザー分散処理より選ばれる少なくとも一種としてある。
高機能性健康食品をこれらのような機械的分散処理を施すことによって得たものとすることより、一層生理活性を向上させたものとすることが可能となる。
【0020】
また、本発明の高機能性健康食品の製造方法は、苦瓜抽出物、ネコノヒゲ抽出物、クマツヅラ抽出物、桑の葉抽出物、シークヮーシャー抽出物、ヘチマ抽出物、ボタンボウフウ抽出物、タンカン抽出物、ホソバワダン抽出物、又はノニ抽出物より選ばれる少なくとも一種からなる健康食品素材と、卵黄リン脂質又は大豆リン脂質より選ばれる少なくとも一種からなる天然物由来のリン脂質とを混合し、得られた混合物の高速回転分散処理を行う方法としてある。
高機能性健康食品の製造方法をこのような方法にすれば、これらの健康食品素材に卵黄リン脂質又は大豆リン脂質を混合して機械的に分散処理することで、これらの健康食品素材がそれぞれ備えた生体調整機能を向上させた高機能性健康食品を製造することができる。
このため、従来の有効量よりも少量で、従来と同等又はそれ以上の健康効果を得ることができる高機能性健康食品を製造することが可能となる。
【0021】
また、本発明の高機能性健康食品の製造方法は、前記混合にあたり、さらに、にがりを混合する方法としてある。
また、本発明の高機能性健康食品の製造方法は、前記高速回転分散処理の後に、前記混合物の超音波分散処理又は高圧ホモジナイザー分散処理を行う方法としてある。
高機能性健康食品の製造方法をこれらのような方法にすれば、より一層各健康食品素材の生理活性を高活性化した高機能性健康食品を製造することが可能となる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、苦瓜抽出物、ネコノヒゲ抽出物、クマツヅラ抽出物、桑の葉抽出物、シークヮーシャー抽出物、ヘチマ抽出物、ボタンボウフウ抽出物、タンカン抽出物、ホソバワダン抽出物、又はノニ抽出物にリン脂質を混合し、機械的分散処理を施すことによって、それぞれより少ない摂取量で、より高い生理活性を得ることができる。
すなわち、これらの健康食品素材がそれぞれ有する後述の生理活性を、従来の有効量よりも少ない摂取量で期待することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の一実施形態にかかる高機能性健康食品について説明する。なお、以下に説明する構成は、本発明を限定するものでなく、本発明の範囲内で種々改変することができるものである。
本発明の高機能性健康食品は、苦瓜抽出物、ネコノヒゲ抽出物、クマツヅラ抽出物、桑の葉抽出物、シークヮーシャー抽出物、ヘチマ抽出物、ボタンボウフウ抽出物、タンカン抽出物、ホソバワダン抽出物、又はノニ抽出物からなる群から選択される一種以上の健康食品素材に、卵黄リン脂質又は大豆リン脂質より選ばれる少なくとも一種からなる天然物由来のリン脂質を混合し、得られた混合物を機械的に分散処理したものである。
【0024】
上記各健康食品素材及び天然由来のリン脂質を含む本発明の健康食品は、特に上記各健康食品素材に含有される生理活性成分に期待される生理活性を有するものである。また、これらの健康食品素材を組み合わせることにより、さらなる生理活性を期待することができる。
なお、本発明の健康食品素材としては、エキスなどの抽出物を用いることができるが、その他にも、例えばボタンボウフウの乾燥粉末のようにエキス成分を十分に含んでおり、エキスと同様の効果が得られる素材を上記健康食品素材として含有する高機能性健康食品及びその製造方法は、本発明の範囲内である。
【0025】
(苦瓜)
沖縄の特産物である苦瓜は、学名をMomordica charantia L、沖縄名をゴーヤーといい、ウリ科の一年生つる性草本で雌雄同株、巻ひげで絡みつき這うように茎を伸ばして成長する。花は雌雄異花で、夏5、6月頃から黄色い可憐な花を付け、果実は太めのキュウリがイボイボでおおわれた形で、主に野菜として食用にする。苦瓜と名が付くように、苦味がある野菜である。沖縄で栽培されている苦瓜の品種は、果実の長い、ナガレイシという種類である。
苦瓜は、明の時代に南方から中国に伝わり、日本には徳川時代に渡来したとされ、古くから健康野菜の王者として広く親しまれている。一般的に、血圧安定作用、健胃作用、利尿作用、整腸作用等の効果があるとされている。
【0026】
苦瓜に含まれる成分としては、ビタミンC、カリウム、サポニン、チャランチン、モモルデシン、アデニン、シトルリンなどが挙げられる。
【0027】
苦瓜エキスの調整方法としては、例えば以下のような方法がある。
まず、生原料として洗浄した苦瓜100kgを粉砕した後、90℃程度で1〜1.5時間ブランチングする。そして、45℃になるまで冷却し、セルロース分解酵素(酵素力価:1500U/g)50g、ペクチン分解酵素(酵素力価:1000U/g)50gを加えて、2〜2.5時間攪拌しながら酵素抽出する。その後、90℃で15分間攪拌しながら酵素失活させる。抽出液は遠心分離機により固液分離する。その固体部分を系外に除いて、苦瓜エキスが得られる。
この他にも、熱水(90℃程度)による熱水抽出や、エタノール(70℃程度)によるアルコール抽出などの方法もある。
【0028】
(ヘチマ)
ヘチマは、ウリ科の一年草であり、熱帯アジア原産で、日本には江戸時代のはじめに渡来し、広く栽培されるようになった。夏から秋にかけて、直径5〜10cmの黄色い5花弁を開き、果実は細長の円柱形で深緑色をなす。
果実は熟すと強い網状繊維が発達する。果実中には水溶成分であるアルコール分解酵素やビタミンCが豊富に含まれているため、二日酔い防止や美白効果等を期待することができる。
【0029】
ヘチマに含まれる生理活性成分としては、ルサイン、ルシオサイドなどのテルペノイド類、ビタミンC、アルコール分解酵素(ADH)、アルデヒド分解酵素(ALDH)などが挙げられる。
【0030】
ヘチマエキスの調整方法としては、例えば以下のような方法がある。
まず、生原料として洗浄したヘチマ5kgを、約5℃になるまで冷却する。次に、冷却したヘチマを、カッタなどで切断してホームミキサーに入れ、5℃前後の冷水を1000ml加えて、フル回転で2〜3分間粉砕する。続いて、粉砕したヘチマを遠心分離機により、8000rpmで20分間遠心分離を行う。そして、上澄み液のみを取り出し、固体部分を除去する。固液分離によって得られた上澄み液に、水酸化ナトリウム(NaOH)を加えて、この上澄み液をpH6.9〜pH7.1の範囲内に調整した後、減圧濾過し、その固体部分を系外に除いてヘチマエキスが得られる。
この他にも、水(5℃〜90℃)による水抽出や、切断したヘチマに350kg/cm2程度の圧力を加えて圧搾し、搾汁を得る方法もある。
【0031】
(クマツヅラ)
クマツヅラは、沖縄名を馬鞭草といい、その学名はVerbena officinalis L.という。本州、四国、九州、沖縄およびアジア、ヨーロッパ、北アフリカの暖帯から熱帯にかけて広く分布し、原野や道端に生える多年草である。草丈60〜100cmで直立し、上方で分枝する。クマツヅラの熱水抽出エキスに消炎利尿作用がある他、鎮痛作用、抗菌作用が報告されている。
【0032】
クマツヅラに含まれる成分としては、ピラン誘導体のバーベナロールやその配糖体であるバーベナリン、ベルベナロール、ベルベニンなどが挙げられる。
【0033】
クマツヅラの抽出エキスの調整方法としては、例えば以下のような方法がある。
まず、クマツヅラを所定の抽出溶媒に加える。そして、所定の温度で所定時間抽出を行った後、抽出残渣を除くことで、抽出エキスを得ることができる。抽出溶媒としては、食品衛生法上許容される溶剤であれば特に限定されないが、例えば、熱水、エタノール、アセトン、ヘキサン等を単独または二以上を混合して用いることが好ましい。
この他にも、切断したクマツヅラに350kg/cm2程度の圧力を加えて圧搾し、搾汁を得る方法もある。
【0034】
(タンカン)
タンカンは、かんきつ類のミカン科に属し、学名をCitrus tankan HAYATA という。タンカンは中国広東省原産で、オレンジとポンカンの自然雑種といわれ、伊予柑や清見などに代表されるタンゴールの仲間に入る。タンカンは果汁が多く風味が良く、種が少ない上、オレンジよりやや小ぶりながら重量感があり、程よい酸味に包まれた甘さが特徴である。交感神経興奮作用、発ガン抑制作用、血糖値抑制効果、抗酸化作用などが報告されている。
【0035】
タンカンに含まれる成分としては、ビタミンC、シネフリンなどカテコールアミン類、β-クリプトキサンチンなどのカロテノイド類、ノビレチン、タンゲリチンのようなポリメトキシフラボン、カフェ酸のようなフェニルプロパノイド、オーラプテンのようなクマリン類が挙げられる。
【0036】
タンカンエキスの調整方法としては、例えば以下のような方法がある。
まず、タンカンを所定の抽出溶媒に加える。そして、所定の温度で所定時間抽出を行った後、抽出残渣を除くことで、抽出エキスを得ることができる。抽出溶媒としては、食品衛生法上許容される溶剤であれば特に限定されないが、例えば、熱水、エタノール、アセトン、ヘキサン等を単独または二以上を混合して用いることが好ましい。
この他にも、タンカンに350kg/cm2程度の圧力を加えて圧搾し、搾汁を得る方法もある。
【0037】
(シークヮーシャー)
シークヮーシャーは、かんきつ類のミカン科に属し、学名をCitrus depressa HAYATAという。南西諸島から台湾の山地にかけて野生している小果のマンダリンで、特有の芳香と食味を有し、その地域で料理及び生食用として利用されている。近年、動物実験で発ガン予防効果、インスリン抵抗性の改善、血糖値抑制効果、血圧抑制効果などが明らかになっている。
【0038】
シークヮーシャーに含まれる生理活性成分としてはノビレチン又はタンゲレチンのようなフラボノイド類などが挙げられる。
【0039】
シークヮーシャーエキスの調整方法としては、例えば以下のような方法がある。
まず、シークヮーシャーを、所定の抽出溶媒に加える。そして、所定の温度で所定時間抽出を行った後、抽出残渣を除くことで、抽出エキスを得ることができる。抽出溶媒としては、食品衛生法上許容される溶剤であれば特に限定されないが、例えば、熱水、エタノール、アセトン、ヘキサン等を単独または二以上を混合して用いることが好ましい。
この他にも、シークヮーシャーに350kg/cm2程度の圧力を加えて圧搾し、搾汁を得る方法もある。
【0040】
(ネコノヒゲ)
ネコノヒゲは、学名をOrthosiphon stamineus Benthという東南アジア原産のシソ科の多年草である。マレー語でクミスはヒゲ、クチンは猫を意味するために、別名クミスクチンとも呼ばれている。日本では沖縄を中心に種子島などの温暖な地域で栽培されている。ネコノヒゲの抽出物には利尿作用、血圧降下作用などが確認されている。
【0041】
ネコノヒゲに含まれる成分としては、カリウム、メチルリパリオクロメンAのようなベンゾピラン類、ロズマリン酸のようなフェノール類が挙げられる。
【0042】
ネコノヒゲエキスの調整方法としては、例えば以下のような方法がある。
まず、ネコノヒゲを、所定の抽出溶媒に加える。そして、所定の温度で所定時間抽出を行った後、抽出残渣を除くことで、抽出エキスを得ることができる。抽出溶媒としては、食品衛生法上許容される溶剤であれば特に限定されないが、例えば、熱水、エタノール、アセトン、ヘキサン等を単独または二以上を混合して用いることが好ましい。
【0043】
(ホソバワダン)
ホソバワダンは、沖縄名をニガナといい、学名をCrepidiastrum lanceolatumというキク科アゼトウナ属の植物である。本州の島根県、山口県の日本海側から琉球、朝鮮南部、中国の海岸の岩場などに生育する多年草であり、血圧降下作用、美白作用、抗酸化作用、免疫賦活作用があるといわれている。
【0044】
ホソバワダンに含まれる成分として、カフェ酸やチコリ酸、クロロゲン酸、イソクロロゲン酸など水溶性のポリフェノール類やルテオリン、ルテオリングルコシドのようなフラボノイド類が挙げられる。
【0045】
ホソバワダンエキスの調整方法としては、例えば以下のような方法がある。
まず、ホソバワダンを、所定の抽出溶媒に加える。そして、所定の温度で所定時間抽出を行った後、抽出残渣を除くことで、抽出エキスを得ることができる。抽出溶媒としては、食品衛生法上許容される溶剤であれば特に限定されないが、例えば、熱水、エタノール、アセトン、ヘキサン等を単独または二以上を混合して用いることが好ましい。
【0046】
(桑)
桑は、クワ科クワ属に属し、学名をMorus australis Poirという。熱帯から亜熱帯にかけて広く分布する落葉高木である。日本ではヤマグワ、カラヤマグワ、ログワの3種の系統が栽培され、品種数は100以上ある。桑の葉を日陰干ししたものを「神仙茶」といい、血糖抑制作用、滋養強壮、血圧抑制作用に効果があるとされている。
【0047】
桑の葉中にはカロチン類、エルゴステロールのようなステロイド類の他に、グルコ−スと良く似た構造式の1-デオキシノジリマイシン(以下、1-DNJと略する)と呼ばれる水溶成分が含まれている。
【0048】
桑の葉エキスの調整方法としては、例えば以下のような方法がある。
まず、ホソバワダンを、所定の抽出溶媒に加える。そして、所定の温度で所定時間抽出を行った後、抽出残渣を除くことで、抽出エキスを得ることができる。抽出溶媒としては、食品衛生法上許容される溶剤であれば特に限定されないが、例えば、熱水、エタノール、アセトン、ヘキサン等を単独または二以上を混合して用いることが好ましい。
【0049】
(ボタンボウフウ)
ボタンボウフウは、沖縄名を長命草といい、学名をPeucedanum japonicum Thunbというセリ化の植物である。海岸の断崖や沖縄県特有の珊瑚石灰岩でできた岩場など、厳しい自然条件の中で自生する常緑多年草で、肉厚の濃い緑の葉を繁茂させる。ボタンボウフウには、血圧降下作用、抗酸化作用、神経痛改善、解熱作用が認められている。
【0050】
ボタンボウフウの葉中には、クロロゲン酸、ネオクロロゲン酸のようなポリフェノール類の他、ルチンのようなフラボノイド類が含まれている。
【0051】
ボタンボウフウエキスの調整方法としては、例えば以下のような方法がある。
まず、ボタンボウフウを、所定の抽出溶媒に加える。そして、所定の温度で所定時間抽出を行った後、抽出残渣を除くことで、抽出エキスを得ることができる。抽出溶媒としては、食品衛生法上許容される溶剤であれば特に限定されないが、例えば、熱水、エタノール、アセトン、ヘキサン等を単独または二以上を混合して用いることが好ましい。
【0052】
(ノニ)
ノニは、学名をMorinda citrifolia Lといい、インディアンマルベリーとも呼ばれている。ノニは、高さ3〜10メートルの灌木あるいは、小または中位のサイズの木となる。ノニは、幾らか丸い枝状物と、常緑の対生(または疑似交互)、暗色、光沢、波状の突出した葉脈のある葉とをもつ。ノニの葉は、広い長円形〜長方形で、両端はとがり、長さ10〜30cmで幅5〜15cmである。
ノニの果実は、ジャガイモと同様に、その表面に「目」をもつ。この果実は、水分が多く、苦く、暗黄色〜黄白色であり、多くの赤茶色の堅い、長円形〜三角の翼のついた2細胞核を有し、それぞれに約4個の種が含まれている。この果実が十分に熟すと、腐ったチーズ様の強い臭いをもつ。この果実の抽出エキスには抗ガン作用がある。
【0053】
ノニの果実中にはプロゼロニンと呼ばれる酵素が多く含まれる。このプロゼロニンは、体内でゼロニンに変化し、体内の傷ついた細胞を修復・再生し、汚染された細胞の免疫力を高めて正常化する働きがあることが明らかにされている。
【0054】
ノニエキスの調整方法としては、例えば以下のような方法がある。
まず、ノニの果実を、所定の抽出溶媒に加える。そして、所定の温度で所定時間抽出を行った後、抽出残渣を除くことで、抽出エキスを得ることができる。抽出溶媒としては、食品衛生法上許容される溶剤であれば特に限定されないが、例えば、熱水、エタノール、アセトン、ヘキサン等を単独または二以上を混合して用いることが好ましい。
この他にも、ノニの果実に350kg/cm2程度の圧力を加えて圧搾し、搾汁を得る方法もある。
【0055】
上記健康食品素材は、主としてエキスの形態で本発明の高機能健康食品に好ましく用いられるが、エキスに限定されるものではない。すなわち、エキス以外にも、健康食品素材を圧搾して、得られた搾汁を用いても良いし、水または所定の有機溶媒を用いて抽出したものを用いても良い。
【0056】
抽出に有機溶媒を用いる場合には、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、ブタン、アセトン、ヘキサン、シクロヘキサン、プロピレングリコール、含水エタノール、含水プロピレングリコール、エチルメチルケトン、グリセリン、酢酸メチル、酢酸エチル、ジエチルエーテル、ジクロロメタン、食用油脂、1,1,1,2−テトラフルオロエタン、1,1,2−トリクロロエテン等の食品に許容されるものを使用する。特に、熱水、含水エタノール、含水プロピレングリコール等を用いることが、より好ましい。
【0057】
(リン脂質)
本発明で使用するリン脂質としては、例えば、卵黄リン脂質,大豆リン脂質等とすることができ、これらのうちいずれか一方を使用する他、双方を合わせて使用することもできる。
また、本発明では、これらを所定の酵素で処理したもの、あるいはこれらの水素添加物を用いることもできる。
さらに、これらのリン脂質としては、一般に食品添加物として用いられている物が望ましい。また、その純度は30%以上が好ましく、80%以上がより好ましい。
【0058】
(製造方法)
次に、本発明の高機能性健康食品の製造方法について説明する。
本発明の高機能性健康食品の製造方法は、苦瓜抽出物、ネコノヒゲ抽出物、クマツヅラ抽出物、桑の葉抽出物、シークヮーシャー抽出物、ヘチマ抽出物、ボタンボウフウ抽出物、タンカン抽出物、ホソバワダン抽出物、又はノニ抽出物より選ばれる少なくとも一種からなる健康食品素材と、卵黄リン脂質又は大豆リン脂質より選ばれる少なくとも一種からなる天然物由来のリン脂質とを混合し、得られた混合物の高速回転分散処理(高速回転処理)を行うことが可能で有れば、特に限定されるものではないが、例えば以下のように、抽出工程、予備分散処理工程、及び分散処理工程を有する方法とすることが好ましい。
【0059】
[抽出工程]
抽出工程では、健康食品素材ごとに上述したエキスの調整方法を用いて、それぞれの素材のエキスを抽出することができる。
例えば、健康食品素材を所定の抽出溶媒に加え、所定の温度で所定時間抽出を行った後、抽出残渣を除くことで、抽出エキスを得ることができる。抽出溶媒としては、食品衛生法上許容される溶剤であれば特に限定されないが、例えば、熱水、エタノール、アセトン、ヘキサン等を単独または二以上を混合して用いることが好ましい。
この他、健康食品素材に350kg/cm2程度の圧力を加えて圧搾し、搾汁を得る方法もある。
【0060】
[予備分散処理工程]
まず、健康食品素材を水に加え、機械的攪拌を行うことによって、予備分散させる。このとき、健康食品素材の濃度としては、例えば、20g/100ml未満とすることができ、1〜10g/100mlとすることが好ましい。
この予備分散処理は、例えば、高速回転型分散機により1000〜4000rpmにて約5〜15分間行うことが好ましい。また、その処理温度は、例えば、約20〜70℃とすることができ、30〜60℃とすることが好ましい。
【0061】
また、リン脂質を水に加え、機械的攪拌を行うことによって、予備分散させる。このとき、リン脂質の濃度としては、例えば、30g/100ml未満とすることができ、1〜20g/100mlとすることが好ましい。また、この予備分散は、健康食品素材と同様の条件にて行うことが好ましい。
そして、健康食品素材を予備分散させた健康食品素材分散液に、リン脂質を予備分散させたリン脂質分散液を、上記予備分散処理と同様の機械的攪拌を保ちながら添加する。このリン脂質の添加は、100〜3000ml/分の速度で行うことが好ましい。
健康食品素材分散液に、リン脂質分散液を添加し終えたら、次に分散処理工程によって、機械的攪拌による高速回転分散処理を行う。
【0062】
[分散処理工程]
この分散処理は、例えば、高速回転型分散機により4000〜20000rpmにて行うことができ、8000〜13000rpmで行うことが好ましい。
その処理時間としては、約10〜60分とすることができ、20〜40分とすることが好ましい。
その処理温度としては、約20〜70℃とすることができ、40〜60℃とすることが好ましい。
そして、この分散処理工程により得られた健康食品素材とリン脂質の懸濁液を、高機能性健康食品とすることができる。
【0063】
なお、この懸濁液は、液状のまま高機能性健康食品として用いることができ、例えば、飲料などの液状の食品とすることができる。また、この懸濁液を、噴霧乾燥や凍結乾燥して乾燥物とすることにより、錠剤、顆粒、チュアブルタブレットなどの固形の食品に利用することもできる。さらに、その食品に応じた食品素材、食品添加物などと組み合わせて、通常の方法により調製することも可能である。また、各健康食品素材がそれぞれ有する機能性に応じた健康食品、機能性食品、特定保健用食品、病者用食品等の用途に用いることも可能である。
【0064】
高機能性健康食品を、にがりを含有させたものとする場合は、上記予備分散工程において、健康食品素材分散液に、リン脂質分散液を添加する際、同時ににがりを加えることが好ましい。
にがりの添加量としては、使用する健康食品素材やリン脂質の組成により変動しうるが、例えば、にがり:リン脂質の重量比を1:6〜1:1にすることが可能である。
【0065】
なお、本発明における高機能性健康食品の製造方法は、上記の例示のみに限定されるものではなく、例えば、水に健康食品素材とリン脂質を同時に投入して、機械的攪拌によって予備分散させた後、高速回転分散処理を施すようにすることも可能である。
ただし、健康食品素材とリン脂質を別々に予備分散して調整した方が、各健康食品素材の抽出物が有する生理活性が一層高活性化されるため、上記の例示の方法によることがより好ましい。
【0066】
本発明の高機能性健康食品を製造する際に使用する水としては、特に限定されないが、例えば、脱イオン水、市水、蒸留水、電解水等を使用することができる。
また、本発明において使用する高速回転型分散機としては、ディゾルバー型、ホモミキサー型、櫛歯型等の種々の食品分野で汎用されている高速回転型分散機を挙げることができる。
さらに、上記分散処理工程における分散処理として、高圧ホモジナイザーや超音波式ホモジナイザーによる精密分散を行うこともできる。また、このような精密分散を、高速回転型分散機による分散と組み合わせて使用することも好ましい。
【0067】
本発明による高機能性健康食品の懸濁液は、使用する健康食品素材やリン脂質の組成によっても異なるが、リポソーム、ゲル状化合物、高分子体分散物のいずれか、あるいは、これらの形態のうち、一又は二以上が混在したものにより構成される。
このリポソームについては、従来からその有効性に関する各種報告がなされている。例えば、通常経口投与では無効とされていたインスリンを、リポソームに封入することによって、経口投与時のインスリンのバイオアベイラビリティーが増加することが報告されている(Takeuchi H et al. Pharam. Res. 13, 896, 1996,Muramatsu K et al. Biol.
Pharam. Bull. 19, 1055, 1996,Iwanaga K et al. J.Pharm. Sci. 88, 248, 1999等)。また、エリスロポエチンをリポソームに封入することにより、そのバイオアベイラビリティーが上昇することも報告されている(Maitani
Y et al. J. Pharam. Sci. 85, 440, 1996等)。
このことから、本発明の高機能性健康食品において、リポソームが混在していれば、生理活性が一層上昇することが期待できる。
【0068】
ここで、リポソーム自体は公知のものであり、その製造方法については常法のものがある。また、リポソームの粒径やpHについても各種研究が既に行われている。例えば、粒径に関するものとしては Biochemica et Biophysica Acta, 557, 9 (1979)、同601, 559 (1980)、Journal
of Pharmaceutical Sciences, 71, 806 (1982)等を挙げることができる。また、pHに関するものとしては、特開昭63−96193号公報、特開昭64−85920号公報、特開平4−9337号公報等を挙げることができる。
【0069】
しかしながら、これらの報告は、すべてリポソームの一般的な物性や、本発明が対象としていない生理活性ペプチド(特開平15−171262号公報)、その他特別な薬物含有リポソーム(Takeuchi H et al. Pharam. Res. 13, 896, 1996,Muramatsu K et al. Biol.
Pharam. Bull. 19, 1055, 1996,Iwanaga K et al. J.Pharm. Sci. 88, 248, 1999,Maitani
Y et al. J. Pharam. Sci. 85, 440, 1996等)など、主に一定の低分子化合物に関する報告であり、本発明の高機能性健康食品で使用する各健康食品が有するビタミンC、カリウム、サポニン、チャランチン、モモルデシン、アデニン、シトルリン、ルサイン、ルシオサイドなどのテルペノイド類、アルコール分解酵素(ADH)、アルデヒド分解酵素(ALDH)、ピラン誘導体のバーベナロールやその配糖体であるバーベナリン、ベルベナロール、ベルベニンなどや、ノビレチン又はタンゲレチン、ルテオリン、ルテオリングルコシドやルチンのようなフラボノイド類、メチルリパリオクロメンAのようなベンゾピラン類、ロズマリン酸、カフェ酸やチコリ酸、クロロゲン酸、ネオクロロゲン酸、イソクロロゲン酸などのポリフェノール類、カロチン類、エルゴステロールのようなステロイド類、1-DNJ、プロゼロニンについては、全く記載されていない。
【0070】
また、生理活性の面でも、上記の報告は、苦瓜抽出物が有する血圧安定作用、健胃作用、利尿作用、整腸作用、ネコノヒゲ抽出物が有する利尿作用、血圧降下作用、クマツヅラ抽出物が有する消炎利尿作用、鎮痛作用、抗菌作用、桑の葉抽出物が有する血糖抑制作用、滋養強壮、血圧抑制作用、シークヮーシャー抽出物が有する発ガン予防効果、インスリン抵抗性の改善、血糖値抑制効果、血圧抑制効果、ヘチマ抽出物が有する二日酔い防止や美白効果、ボタンボウフウ抽出物が有する血圧降下作用、抗酸化作用、神経痛改善、解熱作用、タンカン抽出物が有する交感神経興奮作用、発ガン抑制作用、血糖値抑制効果、抗酸化作用、ホソバワダン抽出物が有する血圧降下作用、美白作用、抗酸化作用、免疫賦活作用、又はノニ抽出物が有する腫瘍細胞増殖抑制効果について開示するものではなく、本発明の高機能性健康食品に関連するものではない。
【0071】
なお、上記実施形態において、健康食品素材として、苦瓜抽出物、ネコノヒゲ抽出物、クマツヅラ抽出物、桑の葉抽出物、シークヮーシャー抽出物、ヘチマ抽出物、ボタンボウフウ抽出物、タンカン抽出物、ホソバワダン抽出物、又はノニ抽出物のいずれかを使用することができるのみならず、これらの二以上を組み合わせたものとすることも好ましい。これによって、それぞれの生理活性を合わせ持つ高機能性健康食品を製造することが可能となる。
また、同様に、リン脂質として、卵黄リン脂質又は大豆リン脂質の一方を使用することができるのみならず、これらを組み合わせて使用することも可能である。
【実施例】
【0072】
以下、本発明の実施例について説明する。ただし、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例1は、健康食品素材としてタンカンを使用したものである。実施例2は、健康食品素材として、桑を使用したものである。実施例3は、健康食品素材として、うり科の植物であるヘチマを使用したものである。実施例4及び5は、健康食品素材として、シークヮーシャーを使用したものである。実施例6及び7は、健康食品素材として、ノニを使用したものである。また、試験例は、各実施例の高機能性健康食品を評価するものであり、試験例1は、実施例1に関するもの、試験例2は、実施例2に関するもの、試験例3は、実施例3に関するもの、試験例4は実施例4及び5に関するもの、試験例5は実施例6及び7に関するものである。
【0073】
(実施例1)
タンカン抽出物としては、沖縄県産タンカン200gを輪切りにし、市水600mlとエタノール1400mlの混合溶媒によって、80℃で、1時間抽出を行った後に、抽出残渣を除き、得られた抽出エキスを凍結乾燥機で処理することにより調整したものを使用した。
【0074】
そして、タンカン抽出物粉末3g、大豆由来のリン脂質(SLP-PC70、ツル−レシチン工業株式会社製)7g、及び市水300mlを、500mlトールビーカーに入れて、高速回転型分散機(T.K.ホモミキサーMARK II fmodel 特殊機化工業株式会社。以下同様。)によって、常温、大気圧下(開放)、回転数1500rpmで、5分間予備分散した。
その後、高速回転分散機の回転数を13000rpmにし、60℃で、30分間運転した。この処理物をサンプル1とした。
【0075】
(実施例2)
桑の葉抽出物としては、沖縄県産桑の葉2000gを45℃、12時間乾燥した後に、乾燥桑の葉を1cm角にフードチョッパーを用いて刻んだ。その乾燥桑の葉200gを2000mlの市水によって、90℃で、1時間抽出を行った後に、抽出残渣を除き、得られた抽出エキスを凍結乾燥機で処理することにより調整したものを使用した。
【0076】
そして、桑の葉抽出物粉末1g、実施例1で使用した大豆由来のリン脂質7g、及び市水300mlを、500mlトールビーカーに入れて、高速回転型分散機によって、常温、大気圧下(開放)、回転数1500rpmで、5分間予備分散した。
その後、高速回転分散機の回転数を13000rpmにし、60℃で、30分間運転した。
この処理物をサンプル2とした。
【0077】
(実施例3)
ヘチマ抽出物としては、まず沖縄県産ヘチマ5kgを、約5℃になるまで冷却する。次に、冷却したヘチマを、カッタなどで切断してホームミキサーに入れ、5℃前後の冷水を1000ml加えて、フル回転で2〜3分間粉砕する。続いて、粉砕したヘチマを遠心分離機により、8000rpmで20分間遠心分離を行う。そして、上澄み液のみを取り出し、固体部分を除去する。固液分離によって得られた上澄み液に、水酸化ナトリウム(NaOH)を加えて、この上澄み液をpH6.9〜pH7.1の範囲内に調整した後、減圧濾過し、その固体部分を系外に除いてヘチマエキスが得られた抽出エキスを凍結乾燥機で処理することにより調整したものを使用した。
【0078】
そして、ヘチマ抽出物粉末3g、実施例1で使用した大豆由来のリン脂質6g、及び市水300mlを、500mlトールビーカーに入れて、高速回転型分散機により、常温、大気圧下(開放)、回転数1500rpmで、5分間予備分散した。
【0079】
その後、高速回転分散機の回転数を13000rpmにし、60℃で、30分間運転した。
この処理物をサンプル3とした。さらに、サンプル3を半分に分け、その一方を超音波処理機(UD−201 株式会社TOMY精工。以下同様。)によって、60℃、大気圧下(開放)で、30分間超音波分散処理(超音波処理)し、この処理物をサンプル4とした。
【0080】
(実施例4)
シークヮーシャー抽出物としては、沖縄県産シークヮーシャー200gを輪切りにし、市水600mlとエタノール1400mlの混合溶媒によって、80℃で、1時間抽出を行った後に、抽出残渣を除き、得られた抽出エキスを凍結乾燥機で処理することにより調整したものを使用した。
【0081】
そして、シークヮーシャー抽出物粉末3g、実施例1で使用した大豆由来のリン脂質7g、及び市水300mlを、500mlトールビーカーに入れて、高速回転型分散機によって、常温、大気圧下(開放)、回転数1500rpmで、5分間予備分散した。
その後、高速回転分散機の回転数を13000rpmにし、60℃で、30分間運転した。
この処理物をサンプル5とした。さらに、サンプル5を半分に分け、その一方を超音波処理機にて、60℃、大気圧下(開放)で、30分間超音波分散処理し、この処理物をサンプル6とした。
【0082】
(実施例5)
シークヮーシャー抽出物としては、実施例4と同様に調整したものを使用した。
そして、シークヮーシャー抽出物粉末3g及び市水200mlを、500mlトールビーカーに入れて、高速回転型分散機により、常温、大気圧下(開放)、回転数1500rpmで、5分間予備分散し、これをA液とした。
また、実施例1で使用した大豆由来のリン脂質7g、及び市水100mlを、300mlビーカーに入れて、上記と同様の条件で予備分散処理を行い、これをB液とした。
【0083】
次に、調整したA液を、高速回転型分散機にて、常温、大気圧下(開放)、回転数1500rpmの条件で攪拌しながら、B液を1分間かけて徐々に加えた。
B液をすべて加えた後、高速回転分散機の回転数を13000rpmにし、60℃で、30分間運転した。
この処理物をサンプル7とした。さらに、サンプル7を半分に分け、その一方を超音波処理機によって、60℃、大気圧下(開放)で、30分間超音波分散処理し、この処理物をサンプル8とした。
【0084】
(実施例6)
ノニ抽出物としては、沖縄県産ノニの果実を輪切りにした後、果実圧搾機を用いて350kg/cm2程度の圧力を加えて圧搾し、得られた搾汁を凍結乾燥機で処理することにより調整したものを使用した。
【0085】
そして、ノニ抽出物粉末8g、実施例1で使用した大豆由来のリン脂質400g、及び市水1800mlを、10000mlステンビーカーに入れて、高速回転型分散機により、常温、大気圧下(開放)、回転数13000rpmで、60℃、30分間運転した。この処理物をサンプル9とした。
【0086】
サンプル9と同様の処理物をさらに、超音波処理機にて、60℃、大気圧下(開放)で、30分間超音波分散処理し、この処理物をサンプル10とした。
【0087】
サンプル9と同様の処理物をさらに、超高圧ホモジナイザー(マイクロフルイダイザー)によって、分散処理し、この処理物をサンプル11とした。
超高圧ホモジナイザーの操作条件を次に示す。圧力は、100MPa、1パス行なった。処理における投入温度・取り出し温度は35℃であった。
【0088】
(実施例7)
ノニ抽出物としては、実施例6と同様に調整したものを使用した。
そして、ノニ抽出物粉末8g、実施例1で使用した大豆由来のリン脂質400g、にがり(沖縄県多良間島産)1.44g及び市水1800mlを、10000mlステンビーカーに入れて、高速回転型分散機により、常温、大気圧下(開放)、回転数13000rpmで、60℃、30分間運転した。この処理物をサンプル12とした。
【0089】
サンプル12と同様の処理物をさらに、超音波処理機にて、60℃、大気圧下(開放)で、30分間超音波分散処理し、この処理物をサンプル13とした。
【0090】
サンプル12と同様の処理物をさらに、超高圧ホモジナイザー(マイクロフルイダイザー)によって、分散処理し、この処理物をサンプル14とした。
超高圧ホモジナイザーの操作条件を次に示す。圧力は、100MPa、1パス行なった。処理における投入温度・取り出し温度は35℃であった。
【0091】
(試験例1)
<がん細胞増殖抑制試験>
実施例1において得られた高機能性健康食品(タンカン抽出物,サンプル1)を正常細胞及びがん細胞に単回的に投与し、その後、各細胞の産生するATP産生量を以下の方法に従って調べることにより、本発明の高機能性健康食品によるがん細胞増殖抑制効果を評価した。
【0092】
(1)試験方法
まず、試験群としては、以下の各試験物質を投与する合計3群を設定した。
・試験群I タンカン抽出物
・試験群II タンカン抽出物と大豆リン脂質の混合物(実施例1と同様の成分及び配合比で、機械的処理を行っていない未処理の組成物)
・試験群III サンプル1(タンカン抽出物高速回転処理)
【0093】
(i)サンプル溶液の調製
次に、50mgの上記試験物質を1mlのリン酸塩緩衝生理食塩水(pH−7.4)に溶解し、0.22μMのろ過フィルター(ミリポア社製)で濾過滅菌したものを1倍溶液とし、必要に応じてこれを段階希釈してサンプルを調製した。試験群の群構成と投与物質の内容等を図1に示す。
【0094】
(ii)細胞の調製
ヒト急性リンパ性白血病細胞(T細胞由来)株であるMolt−4、RPMI8402、ならびに健常人の抹消血からリンホセパールI(株式会社免疫生物研究所)を用いて調製した白血球画分を正常細胞として用いた。
【0095】
(2)ガン細胞増殖抑制作用の評価
96穴マイクロプレートに、細胞密度が4.5×105細胞/mlとなるように、それぞれの細胞懸濁液(90μl)とサンプル溶液(10μl)を添加した。
そして、これを5%CO2雰囲気下、37℃で24時間培養した後、細胞が産生したATP生産量を、ATP測定キット(Cell−Titer−GloTM Luminescent Cell Viability Assay(プロメガ社))を用いて測定した。
また、本発明の食品素材を添加せずに、同量のリン酸緩衝生理食塩水を添加したものを対照とした。
【0096】
RPMI8402、Molt−4及び正常細胞についてのATP生産量の測定結果を図2に示す。
図中、添加濃度とは、添加したサンプル溶液の濃度(mg/ml)であり、試験に用いた細胞名の下欄の数値は、対照のATP生産量を100としたときの相対的なATP生産率(%)を示す。このATP生産率の値が100未満のときは、細胞増殖が抑制されたことを意味し、逆に100を超えたときは、細胞が賦活化されたことを意味する。
【0097】
図2は、桑の葉エキスのみの試験群Iが、正常細胞に対して毒性を示さず、かつ白血病細胞であるRPMI8402及びMolt−4に対して細胞増殖抑制の傾向があることを示している。
また、桑の葉エキスにリン脂質を混合しただけの試験群IIでは、試験群I(桑の葉エキスのみ)が細胞に及ぼす効果とほとんど変わらないことが明らかとなった。
【0098】
しかし、桑の葉抽出物と大豆リン脂質を機械的処理により分散した試験群IIIは、試験群I及びIIに比べて、細胞増殖を非常に強く抑制することを示している。
すなわち、実施例1において製造したタンカン抽出物を含有する本発明の高機能性健康食品は、正常細胞に毒性を示すことなく、かつ、白血病細胞であるRPMI8402及びMolt−4に対しては、1.25の添加量の場合においても、生存率50%以下のがん細胞増殖抑制効果を示している。
【0099】
よって、桑の葉抽出物と大豆リン脂質の混合物を機械的処理により分散した本発明の高機能性健康食品によれば、従来よりも少量で、がん細胞増殖抑制効果が発現することが明らかとなった。
一方、機械的分散処理を施さず、タンカン抽出物と大豆リン脂質を混合するだけでは、本来のがん細胞増殖抑制効果の高度化は期待できないことが明らかとなった。
【0100】
(試験例2)
<血糖値上昇抑制試験>
実施例2において得られた高機能性健康食品(桑の葉抽出物,サンプル2)を実験動物に単回的に投与し、その後、マウスの血糖値の濃度の変化を以下の方法に従って調べることにより、本発明の高機能性健康食品による血糖値上昇抑制効果を評価した。
【0101】
(1)試験方法
まず、試験群としては、以下の各試験物質を投与する合計6群を設定した。
・試験群I 桑の葉抽出物(桑の葉抽出物固形量25mg/kg)
・試験群II 桑の葉抽出物(桑の葉抽出物固形量50mg/kg)
・試験群III 桑の葉抽出物と大豆リン脂質の混合物(実施例1と同様の成分及び配合比で、機械的処理を行っていない未処理の組成物)(桑の葉抽出物固形量25mg/kg)
・試験群IV 桑の葉抽出物と大豆リン脂質の混合物(実施例1と同様の成分及び配合比で、機械的処理を行っていない未処理の組成物)(桑の葉抽出物固形量50mg/kg)
・試験群V サンプル2(桑の葉抽出物高速回転処理+超音波処理)(桑の葉抽出物固形量25mg/kg)
・試験群VI サンプル2(桑の葉抽出物高速回転処理+超音波処理)(桑の葉抽出物固形量50mg/kg)
【0102】
そして、これらの試験群I〜VIと、対照群の合計7群について、マウス(ICRマウス,雄,5週齢,n=10,入手先:日本チャールスリバー社)を用いて試験を行った。
対照群及び試験群を16時間絶食させた後、試験群I〜IIIのマウスには、ツベルクリー用1mlシリンジ及びマウス用経口ゾンデを用いて、それぞれの試験物質を桑の葉抽出物が固形量で25mg/kg及び50mg/kgとなるように、強制的に経口投与した。
【0103】
対照群のマウスには、上記と同様にして市水を投与した。試験群の群構成と投与物質の内容等を図3に示す。
投与30分後に、体重1kg当たり3.3gとなるように、グルコース及び可溶性デンプンを、桑の葉抽出物と同様の方法で投与した。
【0104】
血糖値測定は、試験群及び対照群におけるサンプルを投与する前(0分)、試験群及び対照群におけるサンプルの投与30分後、60分後、120分後の計4ポイントで実施した。
血糖値の測定方法は、マウスを固定器に入れ、25G注射器にて尾静脈を切刺して出血させ、グルテストエースG1640(株式会社三和化学研究所製)を用いて血糖値の測定を行った。
【0105】
血糖値測定後、血糖値上昇率を次式より算出し、各サンプルの食後血糖値上昇抑制効果の評価を行った。
【0106】
(食後血糖値上昇率)
血糖値上昇率(%)=(糖負荷後の血糖値/糖負荷前の血糖値)×100−100
【0107】
(2)効果の判定
上記のように算出した血糖値上昇率の平均値を用いて、対照群と各試験群との間でt検定を実施し、食後血糖値上昇抑制効果の判定を行った。その結果を、図4及び図5に示す。各図において、血糖値上昇のグラフにおける食後30分に示したアスタリスクは、1個のものが有意差p<0.05、2個のものが有意差p<0.01で有意差が認められることを意味するものである。
【0108】
図4は、グルコース負荷における血糖値上昇率の推移を示す図であり、図5は、可能性デンプン負荷における血糖値上昇率の推移を示す図である。
図4において、桑の葉抽出物のみの試験群I及び機械的処理を施していない試験群III(それぞれ桑の葉抽出物固形量25mg/kg相当量投与)については、桑の葉抽出エキス対照群に対して血糖値上昇率の低下傾向を示したものの、いずれも対照群に対して有意差は認められなかった。
【0109】
一方、桑の葉抽出物と大豆リン脂質を機械的処理により分散した試験群V(桑の葉抽出物固形量25mg/kg相当量投与)については、対照群に対して有意差(p<0.05)が確認された。
さらに、桑の葉抽出物のみの試験群II及び械的処理を施していない試験群IV(それぞれ桑の葉抽出物固形量50mg/kg相当量投与)については、対照群に対して有意差(p<0.05)が確認されたのに対し、桑の葉抽出物と大豆リン脂質を機械的処理により分散した試験群VI(桑の葉抽出物固形量50mg/kg相当量投与)については、対照群に対して有意差(p<0.01)が確認された。
【0110】
次に、図5に示すとおり、負荷する糖として可溶性デンプンを用いた試験についても、グルコースを用いた場合と同様の結果を得た。
すなわち、桑の葉抽出物のみの試験群I及び機械的処理を施していない試験群III(それぞれ桑の葉抽出物固形量25mg/kg相当量投与)については、桑の葉抽出エキス対照群に対し、血糖値上昇率の低下傾向を示したものの、いずれも対照群に対して有意差は認められなかった。
【0111】
一方、桑の葉抽出物と大豆リン脂質を機械的処理により分散した試験群V(桑の葉抽出物固形量25mg/kg相当量投与)については、対照群に対して有意差(p<0.05)が確認された。
さらに、桑の葉抽出物のみの試験群II及び機械的処理を施していない試験群IV(それぞれ桑の葉抽出物固形量50mg/kg相当量投与)については、対照群に対し、有意差(p<0.05)が確認されたのに対し、桑の葉抽出物と大豆リン脂質を機械的処理により分散した試験群VI(桑の葉抽出物固形量50mg/kg相当量投与)については、対照群に対して有意差(p<0.01)が確認された。
【0112】
以上の結果から、本発明における機械的処理を行うことで、被検物質量が少ない量でも血糖値上昇抑制効果が発現されることが明らかとなった。
すなわち、本試験例2において、機械的処理を行っていない桑の葉抽出物と大豆リン脂質の混合物では、50mg/kg/回で初めて対照群に対して有意差(p<0.05)を示しており、それ以下の投与量では血糖値上昇抑制効果を示していない。
一方、桑の葉抽出物と大豆リン脂質を機械的処理により分散して得られた本発明の高機能性健康食品は、25mg/kg/回の投与量で血糖値上昇抑制効果を示しており、従来よりも少量で、血糖値上昇抑制効果を発現することが明らかとなった。
【0113】
さらに、桑の葉抽出物と大豆リン脂質を機械的処理により分散して得られた本発明の高機能性健康食品は、従来の血糖値上昇抑制効果を発現する50mg/kg/回を投与することで、より一層高い血糖値上昇抑制効果を期待できることが明らかとなった。
一方、桑の葉抽出物と大豆リン脂質を混合するだけで機械的処理を施さない場合には、摂取量を増やすことなく血糖値上昇抑制効果を高度化させることは期待できないことが明らかとなった。
【0114】
(試験例3)
<血中アルコール分解促進試験>
実施例3において得られた高機能性健康食品(ヘチマ抽出物,サンプル3及び4)を実験動物に段階的に投与し、その後、マウスの血液におけるアルコールの濃度における影響を以下の方法に従って調べることにより、本発明の高機能性健康食品における血中アルコール分解促進効果を評価した。
【0115】
(1)試験方法
まず、試験群としては、以下の各試験物質を投与する合計4群を設定した。
・試験群I ヘチマ抽出物
・試験群II ヘチマ抽出物と大豆リン脂質の混合物(実施例1と同様の成分及び配合比で、機械的処理を行っていない未処理の組成物)
・試験群III サンプル3(ヘチマ抽出物高速回転処理)
・試験群IV サンプル4(ヘチマ抽出物高速回転処理+超音波処理)
【0116】
そして、これらの試験群I〜IVと、対照群の合計5群について、マウス(ICRマウス,雄,4週齢,n=10,入手先:日本チャールスリバー社)を用いて試験を行った。
試験群I〜IVのマウスには、ツベルクリー用1mlシリンジ及びマウス用経口ゾンデを用いて、それぞれの試験物質をヘチマ抽出物が固形量で1000mg/kgとなるように強制的に経口投与した。対照群のマウスには、上記と同様にして市水を投与した。試験群の群構成と投与物質の内容等を図6に示す。
投与30分後に体重1kg当たり1.6gとなるように20%エタノールをヘチマ抽出物と同様の方法で投与した。
【0117】
サンプルを投与した後、30分後の血液を採取し、得られる血清を測定サンプルとして用いた。
血中のアルコール濃度は、市販の測定キット(Fキットエタノール J.K.インターナショナル製)を用いて、各試験群及び対照群から得られた血漿中のアルコール濃度を測定することによって行った。
【0118】
(2)効果の判定
上記のように測定した血中アルコール濃度の平均値を用いて、対照群と各試験群との間でt検定を実施し、血中アルコール分解促進効果の判定を行った。この結果を図7に示す。同図において、試験群における血中アルコール濃度の棒グラフの上側に示したアスタリスクは、1個のものが有意差p<0.05、2個のものが有意差p<0.01で有意差が認められることを意味するものである。
【0119】
同図において、ヘチマ抽出物のみの試験群I及び本発明の機械的処理を施していない試験群IIについては、対照群に対し、血中アルコール濃度の低下傾向を示したものの、いずれも対照群に対して有意差は認められなかった。
また、本発明の機械的処理において、ヘチマ抽出物と大豆リン脂質を分散した試験群IIIについては、対照群に対して有意差(p<0.05)が確認され、さらに超音波分散処理を施した試験群IVについては、対照群に対して有意差(p<0.01)が確認された。
【0120】
以上の結果から、本発明の機械的処理を行うことで初めて、血中アルコール分解促進効果が発現されることが明らかとなった。
すなわち、本試験例3において、使用しているヘチマ抽出物は、1000mg/kg/回であり、従来の有効量を下回っているため、この健康食品素材を単に含有するもの(試験群I及びII)は、有効な血中アルコール分解促進効果を示していない。
しかしながら、実施例3において製造したヘチマ抽出物を含有する本発明の高機能性健康食品は、1000mg/kg/回の投与量で血中アルコール分解促進効果を示しており、従来よりも少量で、血中アルコール分解促進効果を発現することが明らかとなった。
【0121】
さらに、本発明の機械的処理において、高速回転分散処理だけでなく、超音波分散処理を施した方が、より一層高い血中アルコール分解促進効果を期待できることが明らかとなった。
しかし、本発明の機械的処理を施さず、ヘチマ抽出物と大豆リン脂質を混合するだけでは、本来の血中アルコール分解促進効果の高度化は期待できないことが明らかとなった。
【0122】
(試験例4)
<血圧上昇抑制試験>
実施例4及び5において得られた高機能性健康食品(シークヮーシャー抽出物,サンプル5〜8)を実験動物に連続投与し、その後、高血圧を発症したラットにおける収縮期血圧の影響を以下の方法に従って調べることにより、本発明の高機能性健康食品における血圧上昇抑制効果を評価した。
【0123】
(1)試験方法
まず、試験群としては、以下の各試験物質を投与する合計6群を設定した。
・試験群I シークヮーシャー抽出物
・試験群II シークヮーシャー抽出物と大豆リン脂質の混合物(実施例2と同様の成分及び配合比で、機械的処理を行っていない未処理の組成物)
・試験群III サンプル5(シークヮーシャー抽出物高速回転処理/素材を同時に予備分散)
・試験群IV サンプル6(シークヮーシャー抽出物高速回転処理+超音波処理/素材を同時に予備分散)
・試験群V サンプル7(シークヮーシャー抽出物高速回転処理/素材を別々に予備分散)
・試験群VI サンプル8(シークヮーシャー抽出物高速回転処理+超音波処理/素材を別々に予備分散)
【0124】
そして、これらの試験群I〜VIと、対照群の合計7群について、高血圧ラット(SHR,雄,8週齢,n=10,入手先:日本チャールスリバー社)を用いて試験を行った。
試験群I〜VIのラットには、ツベルクリー用1mlシリンジ及びラット用経口ゾンデを用いて、それぞれの試験物質をシークヮーシャー抽出物が固形量で250mg/kgとなるように強制的に経口投与した。
投与時間は、午前中とし、投与回数は、1日1回とした。また、投与期間は、6週間とした。
対照群のマウスには、上記と同様にして市水を投与した。試験群の群構成と投与物質の内容等を図8に示す。
【0125】
投与期間中の収縮期血圧測定は週1回とした。収縮期血圧はtail cuff法(ソフトロン非観血式自動血圧測定装置,BP-98A
株式会社ソフトロン,東京)を用いて5回連続して測定し,その最高ならびに最低血圧を除いた3回の平均血圧を用いた。
【0126】
(2)効果の判定
上記のように測定した収縮期血圧の平均値を用いて、対照群と各試験群との間でt検定を実施し、血圧上昇抑制効果の判定を行った。この結果を図9に示す。同図において、試験群における収縮期血圧値の右側に示したアスタリスクは、1個のものが有意差p<0.05、2個のものが有意差p<0.01で有意差が認められることを意味するものである。
【0127】
同図において、本発明の機械的処理を施していない試験群I及びIIについては、対照群に対し、いずれも有意差が確認されなかった。
また、本発明の機械的処理において、シークヮーシャー抽出物及び大豆リン脂質を同時に予備分散した試験群III及びIVについては、t検定に従えば、対照群に対して有意差(p<0.05)が確認され、収縮期血圧値は低減していることが認められた。
また、本発明の機械的処理において、シークヮーシャー抽出物及び大豆リン脂質を別々に予備分散した試験群Vについては、対照群に対して有意差(p<0.01)が確認され、超音波分散処理を施した試験群VIについても、対照群に対して有意差(p<0.01)が確認されたが、その収縮期血圧値は試験群Vよりも更に減少していた。
【0128】
以上の結果から、本発明の機械的処理を行うことで初めて、血圧上昇抑制効果が発現されることが明らかとなった。
すなわち、本試験例4において、使用しているシークヮーシャー抽出物は、250mg/kg/日であり、本来の機能性を発現する有効量を下回っているため、この健康食品素材を単に含有するもの(試験群I及びII)は、有効な肝障害抑制効果を示していない。
しかしながら、実施例4及び5おいて製造したシークヮーシャー抽出物を含有する本発明の高機能性健康食品は、250mg/kg/日の投与量で血圧上昇抑制効果を示しており、従来よりも少量で、肝障害抑制効果を発現することが明らかとなった。
【0129】
また、本発明の機械的処理において、シークヮーシャー抽出物と大豆リン脂質を同時に予備分散するよりも、別々に予備分散して調整した方が、より高い血圧上昇抑制効果を期待できることが明らかとなった。
さらに、本発明の機械的処理において、高速回転分散処理だけでなく、超音波分散処理を施した方が、より一層高い血圧上昇抑制効果を期待できることが明らかとなった。
【0130】
(試験例5)
<腫瘍細胞増殖抑制試験>
実施例6及び7において得られた高機能性健康食品(ノニ抽出物含有,サンプル9〜14)を担癌動物に投与し、腫瘍容積の変化を以下の方法に従って調べることにより、本発明の高機能性健康食品における腫瘍細胞増殖抑制効果を評価した。
【0131】
(1)試験方法
まず、試験群(試験物質投与群)としては、以下の各試験物質を投与する合計8群を設定した。
・試験群I ノニ抽出物
・試験群II ノニ抽出物と大豆リン脂質の混合物(実施例4と同様の成分及び配合比で、機械的処理を行っていない未処理の組成物)
・試験群III サンプル9(ノニ抽出物高速回転処理/にがり無)
・試験群IV サンプル10(ノニ抽出物高速回転処理+超音波処理/にがり無)
・試験群V サンプル11(ノニ抽出物高速回転処理+超高圧ホモジナイザー処理/にがり無)
・試験群VI サンプル12(ノニ抽出物高速回転処理/にがり有)
・試験群VII サンプル13(ノニ抽出物高速回転処理+超音波処理/にがり有)
・試験群VIII サンプル14(ノニ抽出物高速回転処理+超高圧ホモジナイザー処理/にがり有)
【0132】
そして、これらの試験群I〜VIIIと、対照群(対照物質投与群)の合計9群について、マウス(ヌードマウス,BALB/c−nu,雄,4週齢,n=10,入手先:日本チャールスリバー社)を用意し、腫瘍細胞を接種した後に、これらのマウスにそれぞれの物質を投与して飼育し、その腫瘍容積の変化を調べた。
腫瘍細胞の接種は、マウス由来腫瘍細胞株Sarcoma180の生理食塩水分散液(細胞数1×106個/ml)100μlを、注射針25G、ツベルクリー用1mlシリンジを用いて背部皮下に行った。
【0133】
接種後、各試験群には、ツベルクリー用1mlシリンジ及びマウス用経口ゾンデを用いて、それぞれの試験物質をノニ抽出物が固形量で100mg/kgとなるように強制的に経口投与した。
投与時刻は、腫瘍測定のある日の投与は、腫瘍測定終了後の午後とし、腫瘍測定のない日の投与もほぼ同時刻で行った。投与回数は、1日1回とした。投与期間は、21日間とした。
対照群のマウスには、上記と同様にして市水を投与した。試験群の構成と投与物質の内容等を図10に示す。
【0134】
また、各マウスの腫瘍容積(mm3)は、腫瘍の長径(a)、短径(b)、高さ(c)をノギスにてmm単位で測定し、(a)×(b)×(c)/2の式によって求めた。
測定ポイントは、試験物質投与後、5,10,15日の3ポイントで、測定は1日1回とした。
【0135】
(2)効果の判定
試験物質の投与後、5,10,15日目に、各投与群の推定腫瘍容積の平均値を算出し、この値を用いて、対照群と各試験群との間でt検定を実施し、腫瘍細胞増殖抑制効果の判定を行った。図11は、各試験群の推定腫瘍容積の変化の推移を示す図である。
【0136】
同図において、本発明の機械的処理を施していない試験群I及びIIについては、対照群に対し、いずれも有意差が確認されなかった。
また、本発明の機械的処理により、ノニ抽出物及び大豆リン脂質を分散した試験群IIIについては、t検定に従えば、対照群に対して有意ではないが、腫瘍細胞の増殖は、明らかな低下傾向を示した。
【0137】
また、本発明の機械的処理において、ノニ抽出物及び大豆リン脂質に、更に超音波分散処理を施した試験群IV、ノニ抽出物及び大豆リン脂質に、更に超高圧ホモジナイザー処理を施した試験群Vに対して、15日目にそれぞれ(p<0.05)、(p<0.01)の有意差が確認された。
さらに、本発明の機械的処理により、ノニ抽出物及び大豆リン脂質を分散するとともに、更ににがりを加えた試験群VI、VII、VIIIについては、対照群に対して、15日目にそれぞれ(p<0.05)、(p<0.01)、(p<0.001)の有意差が確認された。
【0138】
以上の結果から、実施例6及び7において製造した高機能性健康食品(サンプル9〜14:試験群III〜VIII)に、腫瘍増殖抑制作用が期待できるものと考えられ、本発明の機械的処理を行うことで初めて、腫瘍細胞増殖抑制効果が発現されることが明らかとなった。
すなわち、本試験例5において、使用しているノニ抽出物は、100mg/kg/日であり、本来の機能性を発現する有効量を下回っているため、この健康食品素材を単に含有するもの(試験群I及びII)は、有効な腫瘍細胞増殖抑制効果を示していない。
しかしながら、実施例6及び7において製造したノニ抽出物を含有する本発明の高機能性健康食品は、100mg/kg/日の投与量で腫瘍細胞増殖抑制効果を示しており、従来よりも少量で、腫瘍細胞増殖抑制効果を発現することが明らかとなった。
【0139】
特に、本発明の機械的処理において、ノニ抽出物と大豆リン脂質に高速回転分散処理だけでなく超音波分散処理を施した方が、より高い腫瘍増殖抑制効果を期待できることが明らかとなった。
また、本発明の機械的処理において、高速回転分散処理だけでなく、超高圧ホモジナイザー処理を施した方が、超音波分散処理を施した方よりも、より一層高い腫瘍増殖抑制効果を期待できることが明らかとなった。
さらに、本発明の高機能性健康食品に、にがりを含有させることで、更に一層高い腫瘍細胞増殖抑制効果が発現されることが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0140】
本発明は、飲料などの液状の食品や、錠剤、顆粒、チュアブルタブレットなどの固形の食品に利用することができる。また、苦瓜抽出物が有する血圧安定作用、健胃作用、利尿作用、整腸作用、ネコノヒゲ抽出物が有する利尿作用、血圧降下作用、クマツヅラ抽出物が有する消炎利尿作用、鎮痛作用、抗菌作用、桑の葉抽出物が有する血糖抑制作用、滋養強壮、血圧抑制作用、シークヮーシャー抽出物が有する発ガン予防効果、インスリン抵抗性の改善、血糖値抑制効果、血圧抑制効果、ヘチマ抽出物が有する二日酔い防止や美白効果、ボタンボウフウ抽出物が有する血圧降下作用、抗酸化作用、神経痛改善、解熱作用、タンカン抽出物が有する交感神経興奮作用、発ガン抑制作用、血糖値抑制効果、抗酸化作用、ホソバワダン抽出物が有する血圧降下作用、美白作用、抗酸化作用、免疫賦活作用、又はノニ抽出物が有する腫瘍細胞増殖抑制効果に応じた健康食品、機能性食品、特定保健用食品、病者用食品等の用途に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0141】
【図1】本発明の試験例1における試験群の構成、投与物質の配合組成、及び投与物質の機械的処理の有無を示す図である。
【図2】本発明の試験例1におけるRPMI8402、Molt−4及び正常細胞についてのATP生産量の測定結果を示す図である。
【図3】本発明の試験例2における試験群の構成、投与物質の配合組成、及び投与物質の機械的処理の有無を示す図である。
【図4】本発明の試験例2におけるグルコース負荷における血糖値上昇率の推移を示す図である。
【図5】本発明の試験例2における可溶性デンプン負荷における血糖値上昇率の推移を示す図である。
【図6】本発明の試験例3における試験群の構成、投与物質の配合組成、及び投与物質の機械的処理の有無を示す図である。
【図7】本発明の試験例3における血中アルコール濃度値を示す図である。
【図8】本発明の試験例4における試験群の構成、投与物質の配合組成、及び投与物質の機械的処理の有無を示す図である。
【図9】本発明の試験例4における収縮期血圧値を示す図である。
【図10】本発明の試験例5における試験群の構成、投与物質の配合組成、及び投与物質の機械的処理の有無を示す図である。
【図11】本発明の試練例5における腫瘍体積の変化の推移を示す図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、健康食品素材の生理活性を高活性化させた健康食品に関し、特に苦瓜抽出物、ネコノヒゲ抽出物、クマツヅラ抽出物、桑の葉抽出物、シークヮーシャー抽出物、ヘチマ抽出物、ボタンボウフウ抽出物、タンカン抽出物、ホソバワダン抽出物、又はノニ抽出物が有する生理活性を高活性化させ、従来の有効量よりも少量で、同等又はそれ以上の生理活性を示す高機能性健康食品、及び高機能性健康食品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
健康食品とは、健康に良い効果(生体調整機能)を主張する食品であり、広く健康の保持増進に資する食品として販売・利用されるもの全般を指す。近年、食生活の乱れによる栄養の偏り、食生活の多様化、肥満や生活習慣病の増加、高齢化の進行等により国民の健康に対する関心が高まっており、健康に関するより高い効果を健康食品に対して求めるニーズが増えている。
【0003】
これら健康食品に期待される一般的な健康効果として、免疫力の増強作用、抗ウイルス作用、抗腫瘍作用、血糖降下作用、動脈硬化の改善、抗コレステロール作用、血圧降下作用、解熱作用、整腸作用、利尿作用、鎮痛作用、抗菌作用、二日酔い防止作用等が挙げられる。
【0004】
一方、健康食品に期待される健康効果に関係していると考えられる一般的な生理活性成分には、単糖類、二糖類、機能性オリゴ糖、多糖類、脂肪酸、糖脂質、ステロイド、アミノ酸、ペプチド類、タンパク質、脂溶性ビタミン、水溶性ビタミン、ビタミン様作用物質、ミネラル、食物繊維、テルペノイド、タンニン、フラボノイド、カロテノイド、有機硫黄化合物、有機酸、葉緑素、発酵微生物(プロバイオテクス)、その他特殊成分等が挙げられる。
【0005】
しかし、これらの生理活性成分を経口摂取する際には、成分の物理的性質または体内環境における様々な影響を受けるために、生体利用率の低下を招き、期待される効果が得られ難い場合があるという問題が生じていた。
【0006】
ここで、生体利用率とは、経口投与した薬剤等の生理活性成分の血中への移行量/全投与量と考えることができる。生体利用率は、薬剤の溶解性、粒子の性状、薬剤の物理的・化学的分解、消化管での吸収などに依存している。この生体利用率が大きいほど、薬剤等の吸収がよく、投与量にみあった薬効が期待される。
【0007】
例えば、生理活性成分である多糖類やタンパク質は、比較的分子量が大きいため、消化管粘膜からの膜透過性が悪く、経口投与した場合、消化管から吸収されにくいという問題があった。
このため、現在、経口摂取により多糖類が有する生理活性を得ることを目的として、多糖類やタンパク質に化学的処理や酵素処理を施してその分子量を小さくし、消化管からの吸収効率を上げる方法や、多糖類やタンパク質を多量に摂取することにより吸収量を増加させる方法が検討されている。
【0008】
しかしながら、多糖類やタンパク質の分子量を小さくし、オリゴ糖やペプチド以下の分子量にした場合に、期待される生理活性が発現されるかどうかは明らかになっていない。また、多量摂取は人的苦痛を伴うため、その摂取自体が困難であり、健康食品として望ましいものではないという問題があった。
【0009】
一方、親油性の生理活性成分の場合、消化管粘膜からの膜透過性が悪く、多糖類の場合と同様に、経口投与した場合、消化管から吸収されにくいという問題があった。
このため、現在、経口摂取により親油性成分を有する生理活性成分の生理活性を得る方法としては、親油性成分を油と一緒にカプセル化して摂取する方法(例えば、特許文献1参照。)や、親油性成分を多量に摂取するといった方法が講じられている。
【0010】
【特許文献1】特開2001−086931号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、親油性成分を多量に摂取する方法は、人的苦痛を伴うため、摂取自体が困難である。また、多量摂取のために、加工や製造面において、濃厚なレトルト食品や、カプセル品、特殊な顆粒品、打錠品にするなどの煩雑な食品加工技術が必要となったり、製造工程の増加をまねくという問題がある。
さらに、親油性成分を油と一緒にカプセル化して摂取する場合についても、煩雑な食品加工技術の必要性や製造工程の増加といった問題があり、これらの方法では、相当の製造費用が生じるのが現状である。
【0012】
また、一部の生理活性成分は口から摂取した後、胃や十二指腸から産生される胃酸や十二指腸などの消化液によって分解されてしまうために、その大半は小腸で吸収されないという問題点があった。
生理活性成分を消化管から分解されずに吸収させる技術は古くからの課題であるが、未だ確立された技術はない。生理活性成分の経口吸収を促進させる技術として、例えば以下の方法が知られている。
【0013】
その一つとして、例えば界面活性作用を有する胆汁酸塩類(WO9606635)、しょ糖脂肪酸エステルや、炭素数8〜18のアシル基を有するO−アシル−L−カルニチン類(US4537772)などの非イオン性界面活性剤、あるいはラウリル硫酸ナトリウム(SLS)などの陰イオン性界面活性剤を使用する方法、また胆汁酸塩類とSLSを併用する方法(Pharm.Res.,7,No.9,Suppl.,S157,1990)が挙げられる。該方法は細胞膜の流動性を高めることから水溶性の高い物質の吸収を促進する方法であるが、細胞障害性の問題等によって実用化には至っていない(Journal
of Controlled release,29,253,1994)。
【0014】
EDTA(J.Pharm.Pharmacol.,51,No.11,1241−50,1999)、EGTAなどのキレート剤、あるいはトリプシン阻害剤(J.Pharm.Pharmacol.,50,No.8,913−20,1998)などの酵素阻害剤を使用する方法も挙げられる。該方法は、カルシウムイオンを引き抜くことにより、細胞間隙をルーズとし、高分子物質の膜透過性を促進する方法であるが、生理的pH(中性付近)においては比較的高濃度でないと吸収効果は発現されず、またカルシウムイオンが引き抜かれることによる粘膜障害も報告されている。
【0015】
本発明者らは、上記現状に鑑み、多糖類やタンパク質等の有効成分の分子量を小さくすることなく、親油性成分の吸収を促進し、胃酸や膵液による分解から保護する食品加工技術を鋭意研究した。そして、それぞれ上記のような問題を抱える天然の食品素材のうち、苦瓜抽出物、ネコノヒゲ抽出物、クマツヅラ抽出物、桑の葉抽出物、シークヮーシャー抽出物、ヘチマ抽出物、ボタンボウフウ抽出物、タンカン抽出物、ホソバワダン抽出物、又はノニ抽出物より選ばれる少なくとも一種を、天然物由来のリン脂質より選ばれる少なくとも一種と混合させることで上記問題を解決する作用があることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は、健康食品素材の生理活性を高活性化させ、従来の有効量よりも少量で、同等又はそれ以上の生理活性を示す高機能性健康食品、及び高機能性健康食品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するため、本発明の高機能性健康食品は、健康食品素材と、天然物由来のリン脂質とが機械的に分散処理された混合物からなる高機能性健康食品であって、前記健康食品素材が苦瓜抽出物、ネコノヒゲ抽出物、クマツヅラ抽出物、桑の葉抽出物、シークヮーシャー抽出物、ヘチマ抽出物、ボタンボウフウ抽出物、タンカン抽出物、ホソバワダン抽出物、又はノニ抽出物より選ばれる少なくとも一種であり、前記天然物由来のリン脂質が、卵黄リン脂質又は大豆リン脂質より選ばれる少なくとも一種としてある。
【0017】
高機能性健康食品をこのような構成にすれば、これらの健康食品素材に卵黄リン脂質又は大豆リン脂質を混合して機械的に分散処理することで、これらの健康食品素材がそれぞれ備えた生体調整機能を向上させることができる。
このため、本発明の高機能性健康食品によれば、従来の有効量よりも少量で、従来と同等又はそれ以上の健康効果を得ることが可能となる。
【0018】
また、本発明の高機能性健康食品は、前記混合物に、にがりを含有させたものとしてある。
これによって、より一層各健康食品素材の生理活性を高活性化することが可能となる。
【0019】
また、本発明の高機能性健康食品は、前記機械的分散処理が、高速回転分散処理、超音波分散処理、高圧ホモジナイザー分散処理より選ばれる少なくとも一種としてある。
高機能性健康食品をこれらのような機械的分散処理を施すことによって得たものとすることより、一層生理活性を向上させたものとすることが可能となる。
【0020】
また、本発明の高機能性健康食品の製造方法は、苦瓜抽出物、ネコノヒゲ抽出物、クマツヅラ抽出物、桑の葉抽出物、シークヮーシャー抽出物、ヘチマ抽出物、ボタンボウフウ抽出物、タンカン抽出物、ホソバワダン抽出物、又はノニ抽出物より選ばれる少なくとも一種からなる健康食品素材と、卵黄リン脂質又は大豆リン脂質より選ばれる少なくとも一種からなる天然物由来のリン脂質とを混合し、得られた混合物の高速回転分散処理を行う方法としてある。
高機能性健康食品の製造方法をこのような方法にすれば、これらの健康食品素材に卵黄リン脂質又は大豆リン脂質を混合して機械的に分散処理することで、これらの健康食品素材がそれぞれ備えた生体調整機能を向上させた高機能性健康食品を製造することができる。
このため、従来の有効量よりも少量で、従来と同等又はそれ以上の健康効果を得ることができる高機能性健康食品を製造することが可能となる。
【0021】
また、本発明の高機能性健康食品の製造方法は、前記混合にあたり、さらに、にがりを混合する方法としてある。
また、本発明の高機能性健康食品の製造方法は、前記高速回転分散処理の後に、前記混合物の超音波分散処理又は高圧ホモジナイザー分散処理を行う方法としてある。
高機能性健康食品の製造方法をこれらのような方法にすれば、より一層各健康食品素材の生理活性を高活性化した高機能性健康食品を製造することが可能となる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、苦瓜抽出物、ネコノヒゲ抽出物、クマツヅラ抽出物、桑の葉抽出物、シークヮーシャー抽出物、ヘチマ抽出物、ボタンボウフウ抽出物、タンカン抽出物、ホソバワダン抽出物、又はノニ抽出物にリン脂質を混合し、機械的分散処理を施すことによって、それぞれより少ない摂取量で、より高い生理活性を得ることができる。
すなわち、これらの健康食品素材がそれぞれ有する後述の生理活性を、従来の有効量よりも少ない摂取量で期待することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の一実施形態にかかる高機能性健康食品について説明する。なお、以下に説明する構成は、本発明を限定するものでなく、本発明の範囲内で種々改変することができるものである。
本発明の高機能性健康食品は、苦瓜抽出物、ネコノヒゲ抽出物、クマツヅラ抽出物、桑の葉抽出物、シークヮーシャー抽出物、ヘチマ抽出物、ボタンボウフウ抽出物、タンカン抽出物、ホソバワダン抽出物、又はノニ抽出物からなる群から選択される一種以上の健康食品素材に、卵黄リン脂質又は大豆リン脂質より選ばれる少なくとも一種からなる天然物由来のリン脂質を混合し、得られた混合物を機械的に分散処理したものである。
【0024】
上記各健康食品素材及び天然由来のリン脂質を含む本発明の健康食品は、特に上記各健康食品素材に含有される生理活性成分に期待される生理活性を有するものである。また、これらの健康食品素材を組み合わせることにより、さらなる生理活性を期待することができる。
なお、本発明の健康食品素材としては、エキスなどの抽出物を用いることができるが、その他にも、例えばボタンボウフウの乾燥粉末のようにエキス成分を十分に含んでおり、エキスと同様の効果が得られる素材を上記健康食品素材として含有する高機能性健康食品及びその製造方法は、本発明の範囲内である。
【0025】
(苦瓜)
沖縄の特産物である苦瓜は、学名をMomordica charantia L、沖縄名をゴーヤーといい、ウリ科の一年生つる性草本で雌雄同株、巻ひげで絡みつき這うように茎を伸ばして成長する。花は雌雄異花で、夏5、6月頃から黄色い可憐な花を付け、果実は太めのキュウリがイボイボでおおわれた形で、主に野菜として食用にする。苦瓜と名が付くように、苦味がある野菜である。沖縄で栽培されている苦瓜の品種は、果実の長い、ナガレイシという種類である。
苦瓜は、明の時代に南方から中国に伝わり、日本には徳川時代に渡来したとされ、古くから健康野菜の王者として広く親しまれている。一般的に、血圧安定作用、健胃作用、利尿作用、整腸作用等の効果があるとされている。
【0026】
苦瓜に含まれる成分としては、ビタミンC、カリウム、サポニン、チャランチン、モモルデシン、アデニン、シトルリンなどが挙げられる。
【0027】
苦瓜エキスの調整方法としては、例えば以下のような方法がある。
まず、生原料として洗浄した苦瓜100kgを粉砕した後、90℃程度で1〜1.5時間ブランチングする。そして、45℃になるまで冷却し、セルロース分解酵素(酵素力価:1500U/g)50g、ペクチン分解酵素(酵素力価:1000U/g)50gを加えて、2〜2.5時間攪拌しながら酵素抽出する。その後、90℃で15分間攪拌しながら酵素失活させる。抽出液は遠心分離機により固液分離する。その固体部分を系外に除いて、苦瓜エキスが得られる。
この他にも、熱水(90℃程度)による熱水抽出や、エタノール(70℃程度)によるアルコール抽出などの方法もある。
【0028】
(ヘチマ)
ヘチマは、ウリ科の一年草であり、熱帯アジア原産で、日本には江戸時代のはじめに渡来し、広く栽培されるようになった。夏から秋にかけて、直径5〜10cmの黄色い5花弁を開き、果実は細長の円柱形で深緑色をなす。
果実は熟すと強い網状繊維が発達する。果実中には水溶成分であるアルコール分解酵素やビタミンCが豊富に含まれているため、二日酔い防止や美白効果等を期待することができる。
【0029】
ヘチマに含まれる生理活性成分としては、ルサイン、ルシオサイドなどのテルペノイド類、ビタミンC、アルコール分解酵素(ADH)、アルデヒド分解酵素(ALDH)などが挙げられる。
【0030】
ヘチマエキスの調整方法としては、例えば以下のような方法がある。
まず、生原料として洗浄したヘチマ5kgを、約5℃になるまで冷却する。次に、冷却したヘチマを、カッタなどで切断してホームミキサーに入れ、5℃前後の冷水を1000ml加えて、フル回転で2〜3分間粉砕する。続いて、粉砕したヘチマを遠心分離機により、8000rpmで20分間遠心分離を行う。そして、上澄み液のみを取り出し、固体部分を除去する。固液分離によって得られた上澄み液に、水酸化ナトリウム(NaOH)を加えて、この上澄み液をpH6.9〜pH7.1の範囲内に調整した後、減圧濾過し、その固体部分を系外に除いてヘチマエキスが得られる。
この他にも、水(5℃〜90℃)による水抽出や、切断したヘチマに350kg/cm2程度の圧力を加えて圧搾し、搾汁を得る方法もある。
【0031】
(クマツヅラ)
クマツヅラは、沖縄名を馬鞭草といい、その学名はVerbena officinalis L.という。本州、四国、九州、沖縄およびアジア、ヨーロッパ、北アフリカの暖帯から熱帯にかけて広く分布し、原野や道端に生える多年草である。草丈60〜100cmで直立し、上方で分枝する。クマツヅラの熱水抽出エキスに消炎利尿作用がある他、鎮痛作用、抗菌作用が報告されている。
【0032】
クマツヅラに含まれる成分としては、ピラン誘導体のバーベナロールやその配糖体であるバーベナリン、ベルベナロール、ベルベニンなどが挙げられる。
【0033】
クマツヅラの抽出エキスの調整方法としては、例えば以下のような方法がある。
まず、クマツヅラを所定の抽出溶媒に加える。そして、所定の温度で所定時間抽出を行った後、抽出残渣を除くことで、抽出エキスを得ることができる。抽出溶媒としては、食品衛生法上許容される溶剤であれば特に限定されないが、例えば、熱水、エタノール、アセトン、ヘキサン等を単独または二以上を混合して用いることが好ましい。
この他にも、切断したクマツヅラに350kg/cm2程度の圧力を加えて圧搾し、搾汁を得る方法もある。
【0034】
(タンカン)
タンカンは、かんきつ類のミカン科に属し、学名をCitrus tankan HAYATA という。タンカンは中国広東省原産で、オレンジとポンカンの自然雑種といわれ、伊予柑や清見などに代表されるタンゴールの仲間に入る。タンカンは果汁が多く風味が良く、種が少ない上、オレンジよりやや小ぶりながら重量感があり、程よい酸味に包まれた甘さが特徴である。交感神経興奮作用、発ガン抑制作用、血糖値抑制効果、抗酸化作用などが報告されている。
【0035】
タンカンに含まれる成分としては、ビタミンC、シネフリンなどカテコールアミン類、β-クリプトキサンチンなどのカロテノイド類、ノビレチン、タンゲリチンのようなポリメトキシフラボン、カフェ酸のようなフェニルプロパノイド、オーラプテンのようなクマリン類が挙げられる。
【0036】
タンカンエキスの調整方法としては、例えば以下のような方法がある。
まず、タンカンを所定の抽出溶媒に加える。そして、所定の温度で所定時間抽出を行った後、抽出残渣を除くことで、抽出エキスを得ることができる。抽出溶媒としては、食品衛生法上許容される溶剤であれば特に限定されないが、例えば、熱水、エタノール、アセトン、ヘキサン等を単独または二以上を混合して用いることが好ましい。
この他にも、タンカンに350kg/cm2程度の圧力を加えて圧搾し、搾汁を得る方法もある。
【0037】
(シークヮーシャー)
シークヮーシャーは、かんきつ類のミカン科に属し、学名をCitrus depressa HAYATAという。南西諸島から台湾の山地にかけて野生している小果のマンダリンで、特有の芳香と食味を有し、その地域で料理及び生食用として利用されている。近年、動物実験で発ガン予防効果、インスリン抵抗性の改善、血糖値抑制効果、血圧抑制効果などが明らかになっている。
【0038】
シークヮーシャーに含まれる生理活性成分としてはノビレチン又はタンゲレチンのようなフラボノイド類などが挙げられる。
【0039】
シークヮーシャーエキスの調整方法としては、例えば以下のような方法がある。
まず、シークヮーシャーを、所定の抽出溶媒に加える。そして、所定の温度で所定時間抽出を行った後、抽出残渣を除くことで、抽出エキスを得ることができる。抽出溶媒としては、食品衛生法上許容される溶剤であれば特に限定されないが、例えば、熱水、エタノール、アセトン、ヘキサン等を単独または二以上を混合して用いることが好ましい。
この他にも、シークヮーシャーに350kg/cm2程度の圧力を加えて圧搾し、搾汁を得る方法もある。
【0040】
(ネコノヒゲ)
ネコノヒゲは、学名をOrthosiphon stamineus Benthという東南アジア原産のシソ科の多年草である。マレー語でクミスはヒゲ、クチンは猫を意味するために、別名クミスクチンとも呼ばれている。日本では沖縄を中心に種子島などの温暖な地域で栽培されている。ネコノヒゲの抽出物には利尿作用、血圧降下作用などが確認されている。
【0041】
ネコノヒゲに含まれる成分としては、カリウム、メチルリパリオクロメンAのようなベンゾピラン類、ロズマリン酸のようなフェノール類が挙げられる。
【0042】
ネコノヒゲエキスの調整方法としては、例えば以下のような方法がある。
まず、ネコノヒゲを、所定の抽出溶媒に加える。そして、所定の温度で所定時間抽出を行った後、抽出残渣を除くことで、抽出エキスを得ることができる。抽出溶媒としては、食品衛生法上許容される溶剤であれば特に限定されないが、例えば、熱水、エタノール、アセトン、ヘキサン等を単独または二以上を混合して用いることが好ましい。
【0043】
(ホソバワダン)
ホソバワダンは、沖縄名をニガナといい、学名をCrepidiastrum lanceolatumというキク科アゼトウナ属の植物である。本州の島根県、山口県の日本海側から琉球、朝鮮南部、中国の海岸の岩場などに生育する多年草であり、血圧降下作用、美白作用、抗酸化作用、免疫賦活作用があるといわれている。
【0044】
ホソバワダンに含まれる成分として、カフェ酸やチコリ酸、クロロゲン酸、イソクロロゲン酸など水溶性のポリフェノール類やルテオリン、ルテオリングルコシドのようなフラボノイド類が挙げられる。
【0045】
ホソバワダンエキスの調整方法としては、例えば以下のような方法がある。
まず、ホソバワダンを、所定の抽出溶媒に加える。そして、所定の温度で所定時間抽出を行った後、抽出残渣を除くことで、抽出エキスを得ることができる。抽出溶媒としては、食品衛生法上許容される溶剤であれば特に限定されないが、例えば、熱水、エタノール、アセトン、ヘキサン等を単独または二以上を混合して用いることが好ましい。
【0046】
(桑)
桑は、クワ科クワ属に属し、学名をMorus australis Poirという。熱帯から亜熱帯にかけて広く分布する落葉高木である。日本ではヤマグワ、カラヤマグワ、ログワの3種の系統が栽培され、品種数は100以上ある。桑の葉を日陰干ししたものを「神仙茶」といい、血糖抑制作用、滋養強壮、血圧抑制作用に効果があるとされている。
【0047】
桑の葉中にはカロチン類、エルゴステロールのようなステロイド類の他に、グルコ−スと良く似た構造式の1-デオキシノジリマイシン(以下、1-DNJと略する)と呼ばれる水溶成分が含まれている。
【0048】
桑の葉エキスの調整方法としては、例えば以下のような方法がある。
まず、ホソバワダンを、所定の抽出溶媒に加える。そして、所定の温度で所定時間抽出を行った後、抽出残渣を除くことで、抽出エキスを得ることができる。抽出溶媒としては、食品衛生法上許容される溶剤であれば特に限定されないが、例えば、熱水、エタノール、アセトン、ヘキサン等を単独または二以上を混合して用いることが好ましい。
【0049】
(ボタンボウフウ)
ボタンボウフウは、沖縄名を長命草といい、学名をPeucedanum japonicum Thunbというセリ化の植物である。海岸の断崖や沖縄県特有の珊瑚石灰岩でできた岩場など、厳しい自然条件の中で自生する常緑多年草で、肉厚の濃い緑の葉を繁茂させる。ボタンボウフウには、血圧降下作用、抗酸化作用、神経痛改善、解熱作用が認められている。
【0050】
ボタンボウフウの葉中には、クロロゲン酸、ネオクロロゲン酸のようなポリフェノール類の他、ルチンのようなフラボノイド類が含まれている。
【0051】
ボタンボウフウエキスの調整方法としては、例えば以下のような方法がある。
まず、ボタンボウフウを、所定の抽出溶媒に加える。そして、所定の温度で所定時間抽出を行った後、抽出残渣を除くことで、抽出エキスを得ることができる。抽出溶媒としては、食品衛生法上許容される溶剤であれば特に限定されないが、例えば、熱水、エタノール、アセトン、ヘキサン等を単独または二以上を混合して用いることが好ましい。
【0052】
(ノニ)
ノニは、学名をMorinda citrifolia Lといい、インディアンマルベリーとも呼ばれている。ノニは、高さ3〜10メートルの灌木あるいは、小または中位のサイズの木となる。ノニは、幾らか丸い枝状物と、常緑の対生(または疑似交互)、暗色、光沢、波状の突出した葉脈のある葉とをもつ。ノニの葉は、広い長円形〜長方形で、両端はとがり、長さ10〜30cmで幅5〜15cmである。
ノニの果実は、ジャガイモと同様に、その表面に「目」をもつ。この果実は、水分が多く、苦く、暗黄色〜黄白色であり、多くの赤茶色の堅い、長円形〜三角の翼のついた2細胞核を有し、それぞれに約4個の種が含まれている。この果実が十分に熟すと、腐ったチーズ様の強い臭いをもつ。この果実の抽出エキスには抗ガン作用がある。
【0053】
ノニの果実中にはプロゼロニンと呼ばれる酵素が多く含まれる。このプロゼロニンは、体内でゼロニンに変化し、体内の傷ついた細胞を修復・再生し、汚染された細胞の免疫力を高めて正常化する働きがあることが明らかにされている。
【0054】
ノニエキスの調整方法としては、例えば以下のような方法がある。
まず、ノニの果実を、所定の抽出溶媒に加える。そして、所定の温度で所定時間抽出を行った後、抽出残渣を除くことで、抽出エキスを得ることができる。抽出溶媒としては、食品衛生法上許容される溶剤であれば特に限定されないが、例えば、熱水、エタノール、アセトン、ヘキサン等を単独または二以上を混合して用いることが好ましい。
この他にも、ノニの果実に350kg/cm2程度の圧力を加えて圧搾し、搾汁を得る方法もある。
【0055】
上記健康食品素材は、主としてエキスの形態で本発明の高機能健康食品に好ましく用いられるが、エキスに限定されるものではない。すなわち、エキス以外にも、健康食品素材を圧搾して、得られた搾汁を用いても良いし、水または所定の有機溶媒を用いて抽出したものを用いても良い。
【0056】
抽出に有機溶媒を用いる場合には、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、ブタン、アセトン、ヘキサン、シクロヘキサン、プロピレングリコール、含水エタノール、含水プロピレングリコール、エチルメチルケトン、グリセリン、酢酸メチル、酢酸エチル、ジエチルエーテル、ジクロロメタン、食用油脂、1,1,1,2−テトラフルオロエタン、1,1,2−トリクロロエテン等の食品に許容されるものを使用する。特に、熱水、含水エタノール、含水プロピレングリコール等を用いることが、より好ましい。
【0057】
(リン脂質)
本発明で使用するリン脂質としては、例えば、卵黄リン脂質,大豆リン脂質等とすることができ、これらのうちいずれか一方を使用する他、双方を合わせて使用することもできる。
また、本発明では、これらを所定の酵素で処理したもの、あるいはこれらの水素添加物を用いることもできる。
さらに、これらのリン脂質としては、一般に食品添加物として用いられている物が望ましい。また、その純度は30%以上が好ましく、80%以上がより好ましい。
【0058】
(製造方法)
次に、本発明の高機能性健康食品の製造方法について説明する。
本発明の高機能性健康食品の製造方法は、苦瓜抽出物、ネコノヒゲ抽出物、クマツヅラ抽出物、桑の葉抽出物、シークヮーシャー抽出物、ヘチマ抽出物、ボタンボウフウ抽出物、タンカン抽出物、ホソバワダン抽出物、又はノニ抽出物より選ばれる少なくとも一種からなる健康食品素材と、卵黄リン脂質又は大豆リン脂質より選ばれる少なくとも一種からなる天然物由来のリン脂質とを混合し、得られた混合物の高速回転分散処理(高速回転処理)を行うことが可能で有れば、特に限定されるものではないが、例えば以下のように、抽出工程、予備分散処理工程、及び分散処理工程を有する方法とすることが好ましい。
【0059】
[抽出工程]
抽出工程では、健康食品素材ごとに上述したエキスの調整方法を用いて、それぞれの素材のエキスを抽出することができる。
例えば、健康食品素材を所定の抽出溶媒に加え、所定の温度で所定時間抽出を行った後、抽出残渣を除くことで、抽出エキスを得ることができる。抽出溶媒としては、食品衛生法上許容される溶剤であれば特に限定されないが、例えば、熱水、エタノール、アセトン、ヘキサン等を単独または二以上を混合して用いることが好ましい。
この他、健康食品素材に350kg/cm2程度の圧力を加えて圧搾し、搾汁を得る方法もある。
【0060】
[予備分散処理工程]
まず、健康食品素材を水に加え、機械的攪拌を行うことによって、予備分散させる。このとき、健康食品素材の濃度としては、例えば、20g/100ml未満とすることができ、1〜10g/100mlとすることが好ましい。
この予備分散処理は、例えば、高速回転型分散機により1000〜4000rpmにて約5〜15分間行うことが好ましい。また、その処理温度は、例えば、約20〜70℃とすることができ、30〜60℃とすることが好ましい。
【0061】
また、リン脂質を水に加え、機械的攪拌を行うことによって、予備分散させる。このとき、リン脂質の濃度としては、例えば、30g/100ml未満とすることができ、1〜20g/100mlとすることが好ましい。また、この予備分散は、健康食品素材と同様の条件にて行うことが好ましい。
そして、健康食品素材を予備分散させた健康食品素材分散液に、リン脂質を予備分散させたリン脂質分散液を、上記予備分散処理と同様の機械的攪拌を保ちながら添加する。このリン脂質の添加は、100〜3000ml/分の速度で行うことが好ましい。
健康食品素材分散液に、リン脂質分散液を添加し終えたら、次に分散処理工程によって、機械的攪拌による高速回転分散処理を行う。
【0062】
[分散処理工程]
この分散処理は、例えば、高速回転型分散機により4000〜20000rpmにて行うことができ、8000〜13000rpmで行うことが好ましい。
その処理時間としては、約10〜60分とすることができ、20〜40分とすることが好ましい。
その処理温度としては、約20〜70℃とすることができ、40〜60℃とすることが好ましい。
そして、この分散処理工程により得られた健康食品素材とリン脂質の懸濁液を、高機能性健康食品とすることができる。
【0063】
なお、この懸濁液は、液状のまま高機能性健康食品として用いることができ、例えば、飲料などの液状の食品とすることができる。また、この懸濁液を、噴霧乾燥や凍結乾燥して乾燥物とすることにより、錠剤、顆粒、チュアブルタブレットなどの固形の食品に利用することもできる。さらに、その食品に応じた食品素材、食品添加物などと組み合わせて、通常の方法により調製することも可能である。また、各健康食品素材がそれぞれ有する機能性に応じた健康食品、機能性食品、特定保健用食品、病者用食品等の用途に用いることも可能である。
【0064】
高機能性健康食品を、にがりを含有させたものとする場合は、上記予備分散工程において、健康食品素材分散液に、リン脂質分散液を添加する際、同時ににがりを加えることが好ましい。
にがりの添加量としては、使用する健康食品素材やリン脂質の組成により変動しうるが、例えば、にがり:リン脂質の重量比を1:6〜1:1にすることが可能である。
【0065】
なお、本発明における高機能性健康食品の製造方法は、上記の例示のみに限定されるものではなく、例えば、水に健康食品素材とリン脂質を同時に投入して、機械的攪拌によって予備分散させた後、高速回転分散処理を施すようにすることも可能である。
ただし、健康食品素材とリン脂質を別々に予備分散して調整した方が、各健康食品素材の抽出物が有する生理活性が一層高活性化されるため、上記の例示の方法によることがより好ましい。
【0066】
本発明の高機能性健康食品を製造する際に使用する水としては、特に限定されないが、例えば、脱イオン水、市水、蒸留水、電解水等を使用することができる。
また、本発明において使用する高速回転型分散機としては、ディゾルバー型、ホモミキサー型、櫛歯型等の種々の食品分野で汎用されている高速回転型分散機を挙げることができる。
さらに、上記分散処理工程における分散処理として、高圧ホモジナイザーや超音波式ホモジナイザーによる精密分散を行うこともできる。また、このような精密分散を、高速回転型分散機による分散と組み合わせて使用することも好ましい。
【0067】
本発明による高機能性健康食品の懸濁液は、使用する健康食品素材やリン脂質の組成によっても異なるが、リポソーム、ゲル状化合物、高分子体分散物のいずれか、あるいは、これらの形態のうち、一又は二以上が混在したものにより構成される。
このリポソームについては、従来からその有効性に関する各種報告がなされている。例えば、通常経口投与では無効とされていたインスリンを、リポソームに封入することによって、経口投与時のインスリンのバイオアベイラビリティーが増加することが報告されている(Takeuchi H et al. Pharam. Res. 13, 896, 1996,Muramatsu K et al. Biol.
Pharam. Bull. 19, 1055, 1996,Iwanaga K et al. J.Pharm. Sci. 88, 248, 1999等)。また、エリスロポエチンをリポソームに封入することにより、そのバイオアベイラビリティーが上昇することも報告されている(Maitani
Y et al. J. Pharam. Sci. 85, 440, 1996等)。
このことから、本発明の高機能性健康食品において、リポソームが混在していれば、生理活性が一層上昇することが期待できる。
【0068】
ここで、リポソーム自体は公知のものであり、その製造方法については常法のものがある。また、リポソームの粒径やpHについても各種研究が既に行われている。例えば、粒径に関するものとしては Biochemica et Biophysica Acta, 557, 9 (1979)、同601, 559 (1980)、Journal
of Pharmaceutical Sciences, 71, 806 (1982)等を挙げることができる。また、pHに関するものとしては、特開昭63−96193号公報、特開昭64−85920号公報、特開平4−9337号公報等を挙げることができる。
【0069】
しかしながら、これらの報告は、すべてリポソームの一般的な物性や、本発明が対象としていない生理活性ペプチド(特開平15−171262号公報)、その他特別な薬物含有リポソーム(Takeuchi H et al. Pharam. Res. 13, 896, 1996,Muramatsu K et al. Biol.
Pharam. Bull. 19, 1055, 1996,Iwanaga K et al. J.Pharm. Sci. 88, 248, 1999,Maitani
Y et al. J. Pharam. Sci. 85, 440, 1996等)など、主に一定の低分子化合物に関する報告であり、本発明の高機能性健康食品で使用する各健康食品が有するビタミンC、カリウム、サポニン、チャランチン、モモルデシン、アデニン、シトルリン、ルサイン、ルシオサイドなどのテルペノイド類、アルコール分解酵素(ADH)、アルデヒド分解酵素(ALDH)、ピラン誘導体のバーベナロールやその配糖体であるバーベナリン、ベルベナロール、ベルベニンなどや、ノビレチン又はタンゲレチン、ルテオリン、ルテオリングルコシドやルチンのようなフラボノイド類、メチルリパリオクロメンAのようなベンゾピラン類、ロズマリン酸、カフェ酸やチコリ酸、クロロゲン酸、ネオクロロゲン酸、イソクロロゲン酸などのポリフェノール類、カロチン類、エルゴステロールのようなステロイド類、1-DNJ、プロゼロニンについては、全く記載されていない。
【0070】
また、生理活性の面でも、上記の報告は、苦瓜抽出物が有する血圧安定作用、健胃作用、利尿作用、整腸作用、ネコノヒゲ抽出物が有する利尿作用、血圧降下作用、クマツヅラ抽出物が有する消炎利尿作用、鎮痛作用、抗菌作用、桑の葉抽出物が有する血糖抑制作用、滋養強壮、血圧抑制作用、シークヮーシャー抽出物が有する発ガン予防効果、インスリン抵抗性の改善、血糖値抑制効果、血圧抑制効果、ヘチマ抽出物が有する二日酔い防止や美白効果、ボタンボウフウ抽出物が有する血圧降下作用、抗酸化作用、神経痛改善、解熱作用、タンカン抽出物が有する交感神経興奮作用、発ガン抑制作用、血糖値抑制効果、抗酸化作用、ホソバワダン抽出物が有する血圧降下作用、美白作用、抗酸化作用、免疫賦活作用、又はノニ抽出物が有する腫瘍細胞増殖抑制効果について開示するものではなく、本発明の高機能性健康食品に関連するものではない。
【0071】
なお、上記実施形態において、健康食品素材として、苦瓜抽出物、ネコノヒゲ抽出物、クマツヅラ抽出物、桑の葉抽出物、シークヮーシャー抽出物、ヘチマ抽出物、ボタンボウフウ抽出物、タンカン抽出物、ホソバワダン抽出物、又はノニ抽出物のいずれかを使用することができるのみならず、これらの二以上を組み合わせたものとすることも好ましい。これによって、それぞれの生理活性を合わせ持つ高機能性健康食品を製造することが可能となる。
また、同様に、リン脂質として、卵黄リン脂質又は大豆リン脂質の一方を使用することができるのみならず、これらを組み合わせて使用することも可能である。
【実施例】
【0072】
以下、本発明の実施例について説明する。ただし、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例1は、健康食品素材としてタンカンを使用したものである。実施例2は、健康食品素材として、桑を使用したものである。実施例3は、健康食品素材として、うり科の植物であるヘチマを使用したものである。実施例4及び5は、健康食品素材として、シークヮーシャーを使用したものである。実施例6及び7は、健康食品素材として、ノニを使用したものである。また、試験例は、各実施例の高機能性健康食品を評価するものであり、試験例1は、実施例1に関するもの、試験例2は、実施例2に関するもの、試験例3は、実施例3に関するもの、試験例4は実施例4及び5に関するもの、試験例5は実施例6及び7に関するものである。
【0073】
(実施例1)
タンカン抽出物としては、沖縄県産タンカン200gを輪切りにし、市水600mlとエタノール1400mlの混合溶媒によって、80℃で、1時間抽出を行った後に、抽出残渣を除き、得られた抽出エキスを凍結乾燥機で処理することにより調整したものを使用した。
【0074】
そして、タンカン抽出物粉末3g、大豆由来のリン脂質(SLP-PC70、ツル−レシチン工業株式会社製)7g、及び市水300mlを、500mlトールビーカーに入れて、高速回転型分散機(T.K.ホモミキサーMARK II fmodel 特殊機化工業株式会社。以下同様。)によって、常温、大気圧下(開放)、回転数1500rpmで、5分間予備分散した。
その後、高速回転分散機の回転数を13000rpmにし、60℃で、30分間運転した。この処理物をサンプル1とした。
【0075】
(実施例2)
桑の葉抽出物としては、沖縄県産桑の葉2000gを45℃、12時間乾燥した後に、乾燥桑の葉を1cm角にフードチョッパーを用いて刻んだ。その乾燥桑の葉200gを2000mlの市水によって、90℃で、1時間抽出を行った後に、抽出残渣を除き、得られた抽出エキスを凍結乾燥機で処理することにより調整したものを使用した。
【0076】
そして、桑の葉抽出物粉末1g、実施例1で使用した大豆由来のリン脂質7g、及び市水300mlを、500mlトールビーカーに入れて、高速回転型分散機によって、常温、大気圧下(開放)、回転数1500rpmで、5分間予備分散した。
その後、高速回転分散機の回転数を13000rpmにし、60℃で、30分間運転した。
この処理物をサンプル2とした。
【0077】
(実施例3)
ヘチマ抽出物としては、まず沖縄県産ヘチマ5kgを、約5℃になるまで冷却する。次に、冷却したヘチマを、カッタなどで切断してホームミキサーに入れ、5℃前後の冷水を1000ml加えて、フル回転で2〜3分間粉砕する。続いて、粉砕したヘチマを遠心分離機により、8000rpmで20分間遠心分離を行う。そして、上澄み液のみを取り出し、固体部分を除去する。固液分離によって得られた上澄み液に、水酸化ナトリウム(NaOH)を加えて、この上澄み液をpH6.9〜pH7.1の範囲内に調整した後、減圧濾過し、その固体部分を系外に除いてヘチマエキスが得られた抽出エキスを凍結乾燥機で処理することにより調整したものを使用した。
【0078】
そして、ヘチマ抽出物粉末3g、実施例1で使用した大豆由来のリン脂質6g、及び市水300mlを、500mlトールビーカーに入れて、高速回転型分散機により、常温、大気圧下(開放)、回転数1500rpmで、5分間予備分散した。
【0079】
その後、高速回転分散機の回転数を13000rpmにし、60℃で、30分間運転した。
この処理物をサンプル3とした。さらに、サンプル3を半分に分け、その一方を超音波処理機(UD−201 株式会社TOMY精工。以下同様。)によって、60℃、大気圧下(開放)で、30分間超音波分散処理(超音波処理)し、この処理物をサンプル4とした。
【0080】
(実施例4)
シークヮーシャー抽出物としては、沖縄県産シークヮーシャー200gを輪切りにし、市水600mlとエタノール1400mlの混合溶媒によって、80℃で、1時間抽出を行った後に、抽出残渣を除き、得られた抽出エキスを凍結乾燥機で処理することにより調整したものを使用した。
【0081】
そして、シークヮーシャー抽出物粉末3g、実施例1で使用した大豆由来のリン脂質7g、及び市水300mlを、500mlトールビーカーに入れて、高速回転型分散機によって、常温、大気圧下(開放)、回転数1500rpmで、5分間予備分散した。
その後、高速回転分散機の回転数を13000rpmにし、60℃で、30分間運転した。
この処理物をサンプル5とした。さらに、サンプル5を半分に分け、その一方を超音波処理機にて、60℃、大気圧下(開放)で、30分間超音波分散処理し、この処理物をサンプル6とした。
【0082】
(実施例5)
シークヮーシャー抽出物としては、実施例4と同様に調整したものを使用した。
そして、シークヮーシャー抽出物粉末3g及び市水200mlを、500mlトールビーカーに入れて、高速回転型分散機により、常温、大気圧下(開放)、回転数1500rpmで、5分間予備分散し、これをA液とした。
また、実施例1で使用した大豆由来のリン脂質7g、及び市水100mlを、300mlビーカーに入れて、上記と同様の条件で予備分散処理を行い、これをB液とした。
【0083】
次に、調整したA液を、高速回転型分散機にて、常温、大気圧下(開放)、回転数1500rpmの条件で攪拌しながら、B液を1分間かけて徐々に加えた。
B液をすべて加えた後、高速回転分散機の回転数を13000rpmにし、60℃で、30分間運転した。
この処理物をサンプル7とした。さらに、サンプル7を半分に分け、その一方を超音波処理機によって、60℃、大気圧下(開放)で、30分間超音波分散処理し、この処理物をサンプル8とした。
【0084】
(実施例6)
ノニ抽出物としては、沖縄県産ノニの果実を輪切りにした後、果実圧搾機を用いて350kg/cm2程度の圧力を加えて圧搾し、得られた搾汁を凍結乾燥機で処理することにより調整したものを使用した。
【0085】
そして、ノニ抽出物粉末8g、実施例1で使用した大豆由来のリン脂質400g、及び市水1800mlを、10000mlステンビーカーに入れて、高速回転型分散機により、常温、大気圧下(開放)、回転数13000rpmで、60℃、30分間運転した。この処理物をサンプル9とした。
【0086】
サンプル9と同様の処理物をさらに、超音波処理機にて、60℃、大気圧下(開放)で、30分間超音波分散処理し、この処理物をサンプル10とした。
【0087】
サンプル9と同様の処理物をさらに、超高圧ホモジナイザー(マイクロフルイダイザー)によって、分散処理し、この処理物をサンプル11とした。
超高圧ホモジナイザーの操作条件を次に示す。圧力は、100MPa、1パス行なった。処理における投入温度・取り出し温度は35℃であった。
【0088】
(実施例7)
ノニ抽出物としては、実施例6と同様に調整したものを使用した。
そして、ノニ抽出物粉末8g、実施例1で使用した大豆由来のリン脂質400g、にがり(沖縄県多良間島産)1.44g及び市水1800mlを、10000mlステンビーカーに入れて、高速回転型分散機により、常温、大気圧下(開放)、回転数13000rpmで、60℃、30分間運転した。この処理物をサンプル12とした。
【0089】
サンプル12と同様の処理物をさらに、超音波処理機にて、60℃、大気圧下(開放)で、30分間超音波分散処理し、この処理物をサンプル13とした。
【0090】
サンプル12と同様の処理物をさらに、超高圧ホモジナイザー(マイクロフルイダイザー)によって、分散処理し、この処理物をサンプル14とした。
超高圧ホモジナイザーの操作条件を次に示す。圧力は、100MPa、1パス行なった。処理における投入温度・取り出し温度は35℃であった。
【0091】
(試験例1)
<がん細胞増殖抑制試験>
実施例1において得られた高機能性健康食品(タンカン抽出物,サンプル1)を正常細胞及びがん細胞に単回的に投与し、その後、各細胞の産生するATP産生量を以下の方法に従って調べることにより、本発明の高機能性健康食品によるがん細胞増殖抑制効果を評価した。
【0092】
(1)試験方法
まず、試験群としては、以下の各試験物質を投与する合計3群を設定した。
・試験群I タンカン抽出物
・試験群II タンカン抽出物と大豆リン脂質の混合物(実施例1と同様の成分及び配合比で、機械的処理を行っていない未処理の組成物)
・試験群III サンプル1(タンカン抽出物高速回転処理)
【0093】
(i)サンプル溶液の調製
次に、50mgの上記試験物質を1mlのリン酸塩緩衝生理食塩水(pH−7.4)に溶解し、0.22μMのろ過フィルター(ミリポア社製)で濾過滅菌したものを1倍溶液とし、必要に応じてこれを段階希釈してサンプルを調製した。試験群の群構成と投与物質の内容等を図1に示す。
【0094】
(ii)細胞の調製
ヒト急性リンパ性白血病細胞(T細胞由来)株であるMolt−4、RPMI8402、ならびに健常人の抹消血からリンホセパールI(株式会社免疫生物研究所)を用いて調製した白血球画分を正常細胞として用いた。
【0095】
(2)ガン細胞増殖抑制作用の評価
96穴マイクロプレートに、細胞密度が4.5×105細胞/mlとなるように、それぞれの細胞懸濁液(90μl)とサンプル溶液(10μl)を添加した。
そして、これを5%CO2雰囲気下、37℃で24時間培養した後、細胞が産生したATP生産量を、ATP測定キット(Cell−Titer−GloTM Luminescent Cell Viability Assay(プロメガ社))を用いて測定した。
また、本発明の食品素材を添加せずに、同量のリン酸緩衝生理食塩水を添加したものを対照とした。
【0096】
RPMI8402、Molt−4及び正常細胞についてのATP生産量の測定結果を図2に示す。
図中、添加濃度とは、添加したサンプル溶液の濃度(mg/ml)であり、試験に用いた細胞名の下欄の数値は、対照のATP生産量を100としたときの相対的なATP生産率(%)を示す。このATP生産率の値が100未満のときは、細胞増殖が抑制されたことを意味し、逆に100を超えたときは、細胞が賦活化されたことを意味する。
【0097】
図2は、桑の葉エキスのみの試験群Iが、正常細胞に対して毒性を示さず、かつ白血病細胞であるRPMI8402及びMolt−4に対して細胞増殖抑制の傾向があることを示している。
また、桑の葉エキスにリン脂質を混合しただけの試験群IIでは、試験群I(桑の葉エキスのみ)が細胞に及ぼす効果とほとんど変わらないことが明らかとなった。
【0098】
しかし、桑の葉抽出物と大豆リン脂質を機械的処理により分散した試験群IIIは、試験群I及びIIに比べて、細胞増殖を非常に強く抑制することを示している。
すなわち、実施例1において製造したタンカン抽出物を含有する本発明の高機能性健康食品は、正常細胞に毒性を示すことなく、かつ、白血病細胞であるRPMI8402及びMolt−4に対しては、1.25の添加量の場合においても、生存率50%以下のがん細胞増殖抑制効果を示している。
【0099】
よって、桑の葉抽出物と大豆リン脂質の混合物を機械的処理により分散した本発明の高機能性健康食品によれば、従来よりも少量で、がん細胞増殖抑制効果が発現することが明らかとなった。
一方、機械的分散処理を施さず、タンカン抽出物と大豆リン脂質を混合するだけでは、本来のがん細胞増殖抑制効果の高度化は期待できないことが明らかとなった。
【0100】
(試験例2)
<血糖値上昇抑制試験>
実施例2において得られた高機能性健康食品(桑の葉抽出物,サンプル2)を実験動物に単回的に投与し、その後、マウスの血糖値の濃度の変化を以下の方法に従って調べることにより、本発明の高機能性健康食品による血糖値上昇抑制効果を評価した。
【0101】
(1)試験方法
まず、試験群としては、以下の各試験物質を投与する合計6群を設定した。
・試験群I 桑の葉抽出物(桑の葉抽出物固形量25mg/kg)
・試験群II 桑の葉抽出物(桑の葉抽出物固形量50mg/kg)
・試験群III 桑の葉抽出物と大豆リン脂質の混合物(実施例1と同様の成分及び配合比で、機械的処理を行っていない未処理の組成物)(桑の葉抽出物固形量25mg/kg)
・試験群IV 桑の葉抽出物と大豆リン脂質の混合物(実施例1と同様の成分及び配合比で、機械的処理を行っていない未処理の組成物)(桑の葉抽出物固形量50mg/kg)
・試験群V サンプル2(桑の葉抽出物高速回転処理+超音波処理)(桑の葉抽出物固形量25mg/kg)
・試験群VI サンプル2(桑の葉抽出物高速回転処理+超音波処理)(桑の葉抽出物固形量50mg/kg)
【0102】
そして、これらの試験群I〜VIと、対照群の合計7群について、マウス(ICRマウス,雄,5週齢,n=10,入手先:日本チャールスリバー社)を用いて試験を行った。
対照群及び試験群を16時間絶食させた後、試験群I〜IIIのマウスには、ツベルクリー用1mlシリンジ及びマウス用経口ゾンデを用いて、それぞれの試験物質を桑の葉抽出物が固形量で25mg/kg及び50mg/kgとなるように、強制的に経口投与した。
【0103】
対照群のマウスには、上記と同様にして市水を投与した。試験群の群構成と投与物質の内容等を図3に示す。
投与30分後に、体重1kg当たり3.3gとなるように、グルコース及び可溶性デンプンを、桑の葉抽出物と同様の方法で投与した。
【0104】
血糖値測定は、試験群及び対照群におけるサンプルを投与する前(0分)、試験群及び対照群におけるサンプルの投与30分後、60分後、120分後の計4ポイントで実施した。
血糖値の測定方法は、マウスを固定器に入れ、25G注射器にて尾静脈を切刺して出血させ、グルテストエースG1640(株式会社三和化学研究所製)を用いて血糖値の測定を行った。
【0105】
血糖値測定後、血糖値上昇率を次式より算出し、各サンプルの食後血糖値上昇抑制効果の評価を行った。
【0106】
(食後血糖値上昇率)
血糖値上昇率(%)=(糖負荷後の血糖値/糖負荷前の血糖値)×100−100
【0107】
(2)効果の判定
上記のように算出した血糖値上昇率の平均値を用いて、対照群と各試験群との間でt検定を実施し、食後血糖値上昇抑制効果の判定を行った。その結果を、図4及び図5に示す。各図において、血糖値上昇のグラフにおける食後30分に示したアスタリスクは、1個のものが有意差p<0.05、2個のものが有意差p<0.01で有意差が認められることを意味するものである。
【0108】
図4は、グルコース負荷における血糖値上昇率の推移を示す図であり、図5は、可能性デンプン負荷における血糖値上昇率の推移を示す図である。
図4において、桑の葉抽出物のみの試験群I及び機械的処理を施していない試験群III(それぞれ桑の葉抽出物固形量25mg/kg相当量投与)については、桑の葉抽出エキス対照群に対して血糖値上昇率の低下傾向を示したものの、いずれも対照群に対して有意差は認められなかった。
【0109】
一方、桑の葉抽出物と大豆リン脂質を機械的処理により分散した試験群V(桑の葉抽出物固形量25mg/kg相当量投与)については、対照群に対して有意差(p<0.05)が確認された。
さらに、桑の葉抽出物のみの試験群II及び械的処理を施していない試験群IV(それぞれ桑の葉抽出物固形量50mg/kg相当量投与)については、対照群に対して有意差(p<0.05)が確認されたのに対し、桑の葉抽出物と大豆リン脂質を機械的処理により分散した試験群VI(桑の葉抽出物固形量50mg/kg相当量投与)については、対照群に対して有意差(p<0.01)が確認された。
【0110】
次に、図5に示すとおり、負荷する糖として可溶性デンプンを用いた試験についても、グルコースを用いた場合と同様の結果を得た。
すなわち、桑の葉抽出物のみの試験群I及び機械的処理を施していない試験群III(それぞれ桑の葉抽出物固形量25mg/kg相当量投与)については、桑の葉抽出エキス対照群に対し、血糖値上昇率の低下傾向を示したものの、いずれも対照群に対して有意差は認められなかった。
【0111】
一方、桑の葉抽出物と大豆リン脂質を機械的処理により分散した試験群V(桑の葉抽出物固形量25mg/kg相当量投与)については、対照群に対して有意差(p<0.05)が確認された。
さらに、桑の葉抽出物のみの試験群II及び機械的処理を施していない試験群IV(それぞれ桑の葉抽出物固形量50mg/kg相当量投与)については、対照群に対し、有意差(p<0.05)が確認されたのに対し、桑の葉抽出物と大豆リン脂質を機械的処理により分散した試験群VI(桑の葉抽出物固形量50mg/kg相当量投与)については、対照群に対して有意差(p<0.01)が確認された。
【0112】
以上の結果から、本発明における機械的処理を行うことで、被検物質量が少ない量でも血糖値上昇抑制効果が発現されることが明らかとなった。
すなわち、本試験例2において、機械的処理を行っていない桑の葉抽出物と大豆リン脂質の混合物では、50mg/kg/回で初めて対照群に対して有意差(p<0.05)を示しており、それ以下の投与量では血糖値上昇抑制効果を示していない。
一方、桑の葉抽出物と大豆リン脂質を機械的処理により分散して得られた本発明の高機能性健康食品は、25mg/kg/回の投与量で血糖値上昇抑制効果を示しており、従来よりも少量で、血糖値上昇抑制効果を発現することが明らかとなった。
【0113】
さらに、桑の葉抽出物と大豆リン脂質を機械的処理により分散して得られた本発明の高機能性健康食品は、従来の血糖値上昇抑制効果を発現する50mg/kg/回を投与することで、より一層高い血糖値上昇抑制効果を期待できることが明らかとなった。
一方、桑の葉抽出物と大豆リン脂質を混合するだけで機械的処理を施さない場合には、摂取量を増やすことなく血糖値上昇抑制効果を高度化させることは期待できないことが明らかとなった。
【0114】
(試験例3)
<血中アルコール分解促進試験>
実施例3において得られた高機能性健康食品(ヘチマ抽出物,サンプル3及び4)を実験動物に段階的に投与し、その後、マウスの血液におけるアルコールの濃度における影響を以下の方法に従って調べることにより、本発明の高機能性健康食品における血中アルコール分解促進効果を評価した。
【0115】
(1)試験方法
まず、試験群としては、以下の各試験物質を投与する合計4群を設定した。
・試験群I ヘチマ抽出物
・試験群II ヘチマ抽出物と大豆リン脂質の混合物(実施例1と同様の成分及び配合比で、機械的処理を行っていない未処理の組成物)
・試験群III サンプル3(ヘチマ抽出物高速回転処理)
・試験群IV サンプル4(ヘチマ抽出物高速回転処理+超音波処理)
【0116】
そして、これらの試験群I〜IVと、対照群の合計5群について、マウス(ICRマウス,雄,4週齢,n=10,入手先:日本チャールスリバー社)を用いて試験を行った。
試験群I〜IVのマウスには、ツベルクリー用1mlシリンジ及びマウス用経口ゾンデを用いて、それぞれの試験物質をヘチマ抽出物が固形量で1000mg/kgとなるように強制的に経口投与した。対照群のマウスには、上記と同様にして市水を投与した。試験群の群構成と投与物質の内容等を図6に示す。
投与30分後に体重1kg当たり1.6gとなるように20%エタノールをヘチマ抽出物と同様の方法で投与した。
【0117】
サンプルを投与した後、30分後の血液を採取し、得られる血清を測定サンプルとして用いた。
血中のアルコール濃度は、市販の測定キット(Fキットエタノール J.K.インターナショナル製)を用いて、各試験群及び対照群から得られた血漿中のアルコール濃度を測定することによって行った。
【0118】
(2)効果の判定
上記のように測定した血中アルコール濃度の平均値を用いて、対照群と各試験群との間でt検定を実施し、血中アルコール分解促進効果の判定を行った。この結果を図7に示す。同図において、試験群における血中アルコール濃度の棒グラフの上側に示したアスタリスクは、1個のものが有意差p<0.05、2個のものが有意差p<0.01で有意差が認められることを意味するものである。
【0119】
同図において、ヘチマ抽出物のみの試験群I及び本発明の機械的処理を施していない試験群IIについては、対照群に対し、血中アルコール濃度の低下傾向を示したものの、いずれも対照群に対して有意差は認められなかった。
また、本発明の機械的処理において、ヘチマ抽出物と大豆リン脂質を分散した試験群IIIについては、対照群に対して有意差(p<0.05)が確認され、さらに超音波分散処理を施した試験群IVについては、対照群に対して有意差(p<0.01)が確認された。
【0120】
以上の結果から、本発明の機械的処理を行うことで初めて、血中アルコール分解促進効果が発現されることが明らかとなった。
すなわち、本試験例3において、使用しているヘチマ抽出物は、1000mg/kg/回であり、従来の有効量を下回っているため、この健康食品素材を単に含有するもの(試験群I及びII)は、有効な血中アルコール分解促進効果を示していない。
しかしながら、実施例3において製造したヘチマ抽出物を含有する本発明の高機能性健康食品は、1000mg/kg/回の投与量で血中アルコール分解促進効果を示しており、従来よりも少量で、血中アルコール分解促進効果を発現することが明らかとなった。
【0121】
さらに、本発明の機械的処理において、高速回転分散処理だけでなく、超音波分散処理を施した方が、より一層高い血中アルコール分解促進効果を期待できることが明らかとなった。
しかし、本発明の機械的処理を施さず、ヘチマ抽出物と大豆リン脂質を混合するだけでは、本来の血中アルコール分解促進効果の高度化は期待できないことが明らかとなった。
【0122】
(試験例4)
<血圧上昇抑制試験>
実施例4及び5において得られた高機能性健康食品(シークヮーシャー抽出物,サンプル5〜8)を実験動物に連続投与し、その後、高血圧を発症したラットにおける収縮期血圧の影響を以下の方法に従って調べることにより、本発明の高機能性健康食品における血圧上昇抑制効果を評価した。
【0123】
(1)試験方法
まず、試験群としては、以下の各試験物質を投与する合計6群を設定した。
・試験群I シークヮーシャー抽出物
・試験群II シークヮーシャー抽出物と大豆リン脂質の混合物(実施例2と同様の成分及び配合比で、機械的処理を行っていない未処理の組成物)
・試験群III サンプル5(シークヮーシャー抽出物高速回転処理/素材を同時に予備分散)
・試験群IV サンプル6(シークヮーシャー抽出物高速回転処理+超音波処理/素材を同時に予備分散)
・試験群V サンプル7(シークヮーシャー抽出物高速回転処理/素材を別々に予備分散)
・試験群VI サンプル8(シークヮーシャー抽出物高速回転処理+超音波処理/素材を別々に予備分散)
【0124】
そして、これらの試験群I〜VIと、対照群の合計7群について、高血圧ラット(SHR,雄,8週齢,n=10,入手先:日本チャールスリバー社)を用いて試験を行った。
試験群I〜VIのラットには、ツベルクリー用1mlシリンジ及びラット用経口ゾンデを用いて、それぞれの試験物質をシークヮーシャー抽出物が固形量で250mg/kgとなるように強制的に経口投与した。
投与時間は、午前中とし、投与回数は、1日1回とした。また、投与期間は、6週間とした。
対照群のマウスには、上記と同様にして市水を投与した。試験群の群構成と投与物質の内容等を図8に示す。
【0125】
投与期間中の収縮期血圧測定は週1回とした。収縮期血圧はtail cuff法(ソフトロン非観血式自動血圧測定装置,BP-98A
株式会社ソフトロン,東京)を用いて5回連続して測定し,その最高ならびに最低血圧を除いた3回の平均血圧を用いた。
【0126】
(2)効果の判定
上記のように測定した収縮期血圧の平均値を用いて、対照群と各試験群との間でt検定を実施し、血圧上昇抑制効果の判定を行った。この結果を図9に示す。同図において、試験群における収縮期血圧値の右側に示したアスタリスクは、1個のものが有意差p<0.05、2個のものが有意差p<0.01で有意差が認められることを意味するものである。
【0127】
同図において、本発明の機械的処理を施していない試験群I及びIIについては、対照群に対し、いずれも有意差が確認されなかった。
また、本発明の機械的処理において、シークヮーシャー抽出物及び大豆リン脂質を同時に予備分散した試験群III及びIVについては、t検定に従えば、対照群に対して有意差(p<0.05)が確認され、収縮期血圧値は低減していることが認められた。
また、本発明の機械的処理において、シークヮーシャー抽出物及び大豆リン脂質を別々に予備分散した試験群Vについては、対照群に対して有意差(p<0.01)が確認され、超音波分散処理を施した試験群VIについても、対照群に対して有意差(p<0.01)が確認されたが、その収縮期血圧値は試験群Vよりも更に減少していた。
【0128】
以上の結果から、本発明の機械的処理を行うことで初めて、血圧上昇抑制効果が発現されることが明らかとなった。
すなわち、本試験例4において、使用しているシークヮーシャー抽出物は、250mg/kg/日であり、本来の機能性を発現する有効量を下回っているため、この健康食品素材を単に含有するもの(試験群I及びII)は、有効な肝障害抑制効果を示していない。
しかしながら、実施例4及び5おいて製造したシークヮーシャー抽出物を含有する本発明の高機能性健康食品は、250mg/kg/日の投与量で血圧上昇抑制効果を示しており、従来よりも少量で、肝障害抑制効果を発現することが明らかとなった。
【0129】
また、本発明の機械的処理において、シークヮーシャー抽出物と大豆リン脂質を同時に予備分散するよりも、別々に予備分散して調整した方が、より高い血圧上昇抑制効果を期待できることが明らかとなった。
さらに、本発明の機械的処理において、高速回転分散処理だけでなく、超音波分散処理を施した方が、より一層高い血圧上昇抑制効果を期待できることが明らかとなった。
【0130】
(試験例5)
<腫瘍細胞増殖抑制試験>
実施例6及び7において得られた高機能性健康食品(ノニ抽出物含有,サンプル9〜14)を担癌動物に投与し、腫瘍容積の変化を以下の方法に従って調べることにより、本発明の高機能性健康食品における腫瘍細胞増殖抑制効果を評価した。
【0131】
(1)試験方法
まず、試験群(試験物質投与群)としては、以下の各試験物質を投与する合計8群を設定した。
・試験群I ノニ抽出物
・試験群II ノニ抽出物と大豆リン脂質の混合物(実施例4と同様の成分及び配合比で、機械的処理を行っていない未処理の組成物)
・試験群III サンプル9(ノニ抽出物高速回転処理/にがり無)
・試験群IV サンプル10(ノニ抽出物高速回転処理+超音波処理/にがり無)
・試験群V サンプル11(ノニ抽出物高速回転処理+超高圧ホモジナイザー処理/にがり無)
・試験群VI サンプル12(ノニ抽出物高速回転処理/にがり有)
・試験群VII サンプル13(ノニ抽出物高速回転処理+超音波処理/にがり有)
・試験群VIII サンプル14(ノニ抽出物高速回転処理+超高圧ホモジナイザー処理/にがり有)
【0132】
そして、これらの試験群I〜VIIIと、対照群(対照物質投与群)の合計9群について、マウス(ヌードマウス,BALB/c−nu,雄,4週齢,n=10,入手先:日本チャールスリバー社)を用意し、腫瘍細胞を接種した後に、これらのマウスにそれぞれの物質を投与して飼育し、その腫瘍容積の変化を調べた。
腫瘍細胞の接種は、マウス由来腫瘍細胞株Sarcoma180の生理食塩水分散液(細胞数1×106個/ml)100μlを、注射針25G、ツベルクリー用1mlシリンジを用いて背部皮下に行った。
【0133】
接種後、各試験群には、ツベルクリー用1mlシリンジ及びマウス用経口ゾンデを用いて、それぞれの試験物質をノニ抽出物が固形量で100mg/kgとなるように強制的に経口投与した。
投与時刻は、腫瘍測定のある日の投与は、腫瘍測定終了後の午後とし、腫瘍測定のない日の投与もほぼ同時刻で行った。投与回数は、1日1回とした。投与期間は、21日間とした。
対照群のマウスには、上記と同様にして市水を投与した。試験群の構成と投与物質の内容等を図10に示す。
【0134】
また、各マウスの腫瘍容積(mm3)は、腫瘍の長径(a)、短径(b)、高さ(c)をノギスにてmm単位で測定し、(a)×(b)×(c)/2の式によって求めた。
測定ポイントは、試験物質投与後、5,10,15日の3ポイントで、測定は1日1回とした。
【0135】
(2)効果の判定
試験物質の投与後、5,10,15日目に、各投与群の推定腫瘍容積の平均値を算出し、この値を用いて、対照群と各試験群との間でt検定を実施し、腫瘍細胞増殖抑制効果の判定を行った。図11は、各試験群の推定腫瘍容積の変化の推移を示す図である。
【0136】
同図において、本発明の機械的処理を施していない試験群I及びIIについては、対照群に対し、いずれも有意差が確認されなかった。
また、本発明の機械的処理により、ノニ抽出物及び大豆リン脂質を分散した試験群IIIについては、t検定に従えば、対照群に対して有意ではないが、腫瘍細胞の増殖は、明らかな低下傾向を示した。
【0137】
また、本発明の機械的処理において、ノニ抽出物及び大豆リン脂質に、更に超音波分散処理を施した試験群IV、ノニ抽出物及び大豆リン脂質に、更に超高圧ホモジナイザー処理を施した試験群Vに対して、15日目にそれぞれ(p<0.05)、(p<0.01)の有意差が確認された。
さらに、本発明の機械的処理により、ノニ抽出物及び大豆リン脂質を分散するとともに、更ににがりを加えた試験群VI、VII、VIIIについては、対照群に対して、15日目にそれぞれ(p<0.05)、(p<0.01)、(p<0.001)の有意差が確認された。
【0138】
以上の結果から、実施例6及び7において製造した高機能性健康食品(サンプル9〜14:試験群III〜VIII)に、腫瘍増殖抑制作用が期待できるものと考えられ、本発明の機械的処理を行うことで初めて、腫瘍細胞増殖抑制効果が発現されることが明らかとなった。
すなわち、本試験例5において、使用しているノニ抽出物は、100mg/kg/日であり、本来の機能性を発現する有効量を下回っているため、この健康食品素材を単に含有するもの(試験群I及びII)は、有効な腫瘍細胞増殖抑制効果を示していない。
しかしながら、実施例6及び7において製造したノニ抽出物を含有する本発明の高機能性健康食品は、100mg/kg/日の投与量で腫瘍細胞増殖抑制効果を示しており、従来よりも少量で、腫瘍細胞増殖抑制効果を発現することが明らかとなった。
【0139】
特に、本発明の機械的処理において、ノニ抽出物と大豆リン脂質に高速回転分散処理だけでなく超音波分散処理を施した方が、より高い腫瘍増殖抑制効果を期待できることが明らかとなった。
また、本発明の機械的処理において、高速回転分散処理だけでなく、超高圧ホモジナイザー処理を施した方が、超音波分散処理を施した方よりも、より一層高い腫瘍増殖抑制効果を期待できることが明らかとなった。
さらに、本発明の高機能性健康食品に、にがりを含有させることで、更に一層高い腫瘍細胞増殖抑制効果が発現されることが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0140】
本発明は、飲料などの液状の食品や、錠剤、顆粒、チュアブルタブレットなどの固形の食品に利用することができる。また、苦瓜抽出物が有する血圧安定作用、健胃作用、利尿作用、整腸作用、ネコノヒゲ抽出物が有する利尿作用、血圧降下作用、クマツヅラ抽出物が有する消炎利尿作用、鎮痛作用、抗菌作用、桑の葉抽出物が有する血糖抑制作用、滋養強壮、血圧抑制作用、シークヮーシャー抽出物が有する発ガン予防効果、インスリン抵抗性の改善、血糖値抑制効果、血圧抑制効果、ヘチマ抽出物が有する二日酔い防止や美白効果、ボタンボウフウ抽出物が有する血圧降下作用、抗酸化作用、神経痛改善、解熱作用、タンカン抽出物が有する交感神経興奮作用、発ガン抑制作用、血糖値抑制効果、抗酸化作用、ホソバワダン抽出物が有する血圧降下作用、美白作用、抗酸化作用、免疫賦活作用、又はノニ抽出物が有する腫瘍細胞増殖抑制効果に応じた健康食品、機能性食品、特定保健用食品、病者用食品等の用途に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0141】
【図1】本発明の試験例1における試験群の構成、投与物質の配合組成、及び投与物質の機械的処理の有無を示す図である。
【図2】本発明の試験例1におけるRPMI8402、Molt−4及び正常細胞についてのATP生産量の測定結果を示す図である。
【図3】本発明の試験例2における試験群の構成、投与物質の配合組成、及び投与物質の機械的処理の有無を示す図である。
【図4】本発明の試験例2におけるグルコース負荷における血糖値上昇率の推移を示す図である。
【図5】本発明の試験例2における可溶性デンプン負荷における血糖値上昇率の推移を示す図である。
【図6】本発明の試験例3における試験群の構成、投与物質の配合組成、及び投与物質の機械的処理の有無を示す図である。
【図7】本発明の試験例3における血中アルコール濃度値を示す図である。
【図8】本発明の試験例4における試験群の構成、投与物質の配合組成、及び投与物質の機械的処理の有無を示す図である。
【図9】本発明の試験例4における収縮期血圧値を示す図である。
【図10】本発明の試験例5における試験群の構成、投与物質の配合組成、及び投与物質の機械的処理の有無を示す図である。
【図11】本発明の試練例5における腫瘍体積の変化の推移を示す図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
健康食品素材と、天然物由来のリン脂質とが機械的に分散処理された混合物からなる高機能性健康食品であって、
前記健康食品素材が苦瓜抽出物、ネコノヒゲ抽出物、クマツヅラ抽出物、桑の葉抽出物、シークヮーシャー抽出物、ヘチマ抽出物、ボタンボウフウ抽出物、タンカン抽出物、ホソバワダン抽出物、又はノニ抽出物より選ばれる少なくとも一種であり、前記天然物由来のリン脂質が、卵黄リン脂質又は大豆リン脂質より選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする高機能性健康食品。
【請求項2】
前記混合物に、にがりを含有させたことを特徴とする請求項1に記載の高機能性健康食品。
【請求項3】
前記機械的分散処理が、高速回転分散処理、超音波分散処理、高圧ホモジナイザー分散処理より選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする請求項1又は2記載の高機能性健康食品。
【請求項4】
苦瓜抽出物、ネコノヒゲ抽出物、クマツヅラ抽出物、桑の葉抽出物、シークヮーシャー抽出物、ヘチマ抽出物、ボタンボウフウ抽出物、タンカン抽出物、ホソバワダン抽出物、又はノニ抽出物より選ばれる少なくとも一種からなる健康食品素材と、卵黄リン脂質又は大豆リン脂質より選ばれる少なくとも一種からなる天然物由来のリン脂質とを混合し、得られた混合物の高速回転分散処理を行うことを特徴とする高機能性健康食品の製造方法。
【請求項5】
前記混合にあたり、さらに、にがりを混合することを特徴とする請求項4に記載の高機能性健康食品の製造方法。
【請求項6】
前記高速回転分散処理の後に、前記混合物の超音波分散処理又は高圧ホモジナイザー分散処理を行うことを特徴とする請求項4又は5記載の高機能性健康食品の製造方法。
【請求項1】
健康食品素材と、天然物由来のリン脂質とが機械的に分散処理された混合物からなる高機能性健康食品であって、
前記健康食品素材が苦瓜抽出物、ネコノヒゲ抽出物、クマツヅラ抽出物、桑の葉抽出物、シークヮーシャー抽出物、ヘチマ抽出物、ボタンボウフウ抽出物、タンカン抽出物、ホソバワダン抽出物、又はノニ抽出物より選ばれる少なくとも一種であり、前記天然物由来のリン脂質が、卵黄リン脂質又は大豆リン脂質より選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする高機能性健康食品。
【請求項2】
前記混合物に、にがりを含有させたことを特徴とする請求項1に記載の高機能性健康食品。
【請求項3】
前記機械的分散処理が、高速回転分散処理、超音波分散処理、高圧ホモジナイザー分散処理より選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする請求項1又は2記載の高機能性健康食品。
【請求項4】
苦瓜抽出物、ネコノヒゲ抽出物、クマツヅラ抽出物、桑の葉抽出物、シークヮーシャー抽出物、ヘチマ抽出物、ボタンボウフウ抽出物、タンカン抽出物、ホソバワダン抽出物、又はノニ抽出物より選ばれる少なくとも一種からなる健康食品素材と、卵黄リン脂質又は大豆リン脂質より選ばれる少なくとも一種からなる天然物由来のリン脂質とを混合し、得られた混合物の高速回転分散処理を行うことを特徴とする高機能性健康食品の製造方法。
【請求項5】
前記混合にあたり、さらに、にがりを混合することを特徴とする請求項4に記載の高機能性健康食品の製造方法。
【請求項6】
前記高速回転分散処理の後に、前記混合物の超音波分散処理又は高圧ホモジナイザー分散処理を行うことを特徴とする請求項4又は5記載の高機能性健康食品の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2007−300869(P2007−300869A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−133632(P2006−133632)
【出願日】平成18年5月12日(2006.5.12)
【出願人】(397040993)金秀バイオ株式会社 (11)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年5月12日(2006.5.12)
【出願人】(397040993)金秀バイオ株式会社 (11)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】
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