説明

高温プラント機器の余寿命診断システム及びこの余寿命診断システムを用いた余寿命診断方法

【課題】瞬時又は短時間的に余寿命を推定する高温プラント機器の余寿命診断システム及び高温プラント機器の余寿命診断方法を提供する。
【解決手段】余寿命診断システム30は、自社・他社プラント設備情報データベース32と、計測対象部位を計測する計測手段と、計測手段にて計測される計測データをインターネット14を介して送信する計測データ送信手段38と、計測対象部位の表面形状を観察する観察手段と、計測対象部位の内部の欠陥や不均一構造を検査する非破壊検査手段と、観察手段にて観察される観察データ及び非破壊検査手段にて検査される検査データを格納するための観察結果用データベース48と、予備診断用サーバ50と、余寿命診断用サーバ52とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電プラント、化学プラント等において高温下で使用されるプラント機器の損傷又は劣化度を評価して余寿命を推定する余寿命診断システム及び余寿命診断方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高温域で長時間使用され、かつ、起動停止が頻繁に繰り返される発電所のボイラや蒸気タービン等のプラント機器の材料は、熱疲労及びクリープ疲労により損傷し、劣化する。
【0003】
このような損傷、劣化に対し、発電プラント、化学プラント等のプラント機器を安全に稼働するために、プラント機器の余寿命を推定し、部分的な取り替えや補修を計画的に行っている。係る余寿命の推定には高信頼性が求められるために、プラント機器に使用されている材料に関する知識が豊富な専門家がプラント機器の設置されているプラント機器設置現場に行って、プラント機器に様々な計測器を取り付けて寿命推定に必要な計測データ等を取得して事務所に持ち帰り、事務所にて計測データを解析して余寿命を推定している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、この推定方法では、余寿命推定の経験が豊富な専門家の人的能力に依存しており、寿命推定対象プラントの増加に対して、余寿命を推定することができる人材を短期間で養成することが難しく、人的に対応することが困難であるという問題点があった。
【0005】
また、プラント機器設置現場から計測データを分析設備の整った事務所に持ち帰る必要があり、余寿命の推定までに時間がかかるという問題点があった。
【0006】
そこで、本発明は、上記の問題点を鑑みてなされたものであり、その目的は、短時間で余寿命を推定する高温プラント機器の余寿命診断システム及び高温プラント機器の余寿命診断方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、本発明の高温プラント機器の余寿命診断システムは、ボイラ、蒸気タービン等の高温で使用されるプラント機器の余寿命を推定する余寿命診断システムであって、前記プラント機器の状態を計測する計測情報を格納するためのプラント設備情報データベースと、前記プラント機器の補修履歴情報を格納するためのプラント補修履歴情報データベース、前記プラント機器に使用されている材料の材料特性情報を格納するための材料特性情報データベースと、前記プラントと同じ種類で他のプラント機器の寿命評価情報を格納するための寿命評価情報データベースと、前記プラント機器の計測対象部位の温度及びひずみを計測する計測手段と、該計測手段にて計測される計測データを通信、ネットワーク等を介して送信する計測データ送信手段と、前記計測データ、前記プラント補修履歴情報、前記材料特性情報、前記寿命評価情報、前記計測情報に基づいて前記計測対象部位の余寿命を推定する余寿命診断用サーバとを備えることを特徴とする(第1の発明)。
【0008】
第2の発明は、第1の発明において、前記計測データ送信手段は、前記計測手段により計測される計測データを所定の時間に送信することを特徴とする。
【0009】
第3の発明は、第1又は第2の発明において、前記余寿命診断用サーバは、前記計測データ送信手段により送信される前記計測データに履歴を付けて前記計測情報として前記プラント設備情報データベースに格納するプラント情報転送手段と、前記プラント設備情報データベース、前記プラント補修履歴情報データベース、前記材料特性情報データベース、前記寿命評価情報データベースを参照し、所定の情報を抽出するプラント情報抽出手段と、前記プラント情報抽出手段にて抽出される情報に基づいて前記プラント機器の余寿命を推定する余寿命診断手段と、該余寿命診断手段にて推定される余寿命診断結果を承認するための電子承認手段と、該電子承認手段にて承認された余寿命診断結果を通信、ネットワーク等を介して送信する余寿命診断結果送信手段とを備えることを特徴とする。
【0010】
第4の発明は、第1の発明において、前記計測対象部位を観察する光学顕微鏡、電子顕微鏡及びレーザ顕微鏡等の観察手段と、前記計測対象部位の内部の欠陥や不均一構造を検査する超音波検査装置、前記計測対象部位の亀裂を検査する磁気検査装置、前記計測対象部位の表面開口部欠陥を検査する浸透検査装置等の非破壊検査手段と、前記観察手段にて観察される観察データ及び前記非破壊検査手段にて検査される検査データを格納するための観察結果用データベースと、前記観察データ及び前記検査データに基づいて前記計測対象部位の損傷劣化の程度を評価する予備診断用サーバとを備え、該予備診断用サーバは、前記観察データ及び前記検査データに履歴を付けて前記観察結果用データベースに格納する観察結果転送手段と、前記観察結果用データベースを参照し、前記観察結果用データベースに格納された情報のうち、所定の情報を抽出する観察結果抽出手段と、前記観察データ、前記検査データを通信、ネットワーク等を介して送信する観察結果送信手段とを備えることを特徴とする。
【0011】
第5の発明は、第1〜4のいずれかの発明において、前記余寿命診断用サーバは、前記予備診断用サーバより送信される前記観察データ、前記検査データを前記計測情報に履歴を付けて前記プラント設備情報データベースに格納し、前記観察データ、前記検査データに基づいて前記計測対象部位の余寿命を推定し、更に精度を向上させることを特徴とする。
【0012】
第6の発明は、第1又は第3〜5のいずれかの発明において、前記予備診断用サーバは、前記余寿命診断結果送信手段から送信される前記余寿命診断結果を受信する受信手段と、該受信手段にて受信した前記余寿命診断結果を外部に出力する出力手段とを更に備えることを特徴とする。
【0013】
第7の発明は、第1又は第3〜6のいずれかの発明において、前記予備診断用サーバは、通信、ネットワークを介して前記寿命評価情報データベースを参照し、前記寿命評価情報データベースに格納された前記寿命評価情報、前記観察データ及び前記検査データに基づいて前記計測対象部位の損傷劣化の程度を評価する余寿命暫定診断手段を更に備え、該余寿命暫定診断手段による余寿命暫定診断結果は、前記観察結果送信手段にて送信されることを特徴とする。
【0014】
第8の発明は、第7の発明において、前記余寿命診断用サーバは、前記予備診断用サーバより送信される前記余寿命暫定診断結果を前記電子承認手段にて承認して、該承認された余寿命暫定診断結果を余寿命診断結果送信手段にて送信することを特徴とする。
【0015】
第9の発明は、第1又は第3〜8のいずれかの発明において、前記予備診断用サーバは、前記余寿命診断結果送信手段から送信される前記余寿命暫定診断結果を前記受信手段にて受信して、前記承認された余寿命暫定診断結果を前記出力手段にて外部に出力することを特徴とする。
【0016】
第10の発明は、第1の発明において、前記プラント機器の余寿命診断業務に関する見積額情報を格納するための見積額用データベースと、通信、ネットワーク経由でアクセスしてきた利用者端末からの要求に応じて、見積依頼用の表示画面を生成して前記利用者端末へ送信する契約用サーバとを備え、前記契約用サーバは、前記利用者端末に表示された前記見積依頼用の表示画面上において前記利用者にて入力される余寿命診断希望部位箇所、余寿命診断希望部位の溶接数等の余寿命診断部位情報、前記プラント機器の運転時間情報、前記プラント機器の起動回数情報、前記プラント機器の材質情報等の前記プラント機器の余寿命診断業務に関する入力情報に基づいて、前記見積額用データベースを参照し、前記見積額情報を抽出する見積額抽出手段を備え、前記見積額抽出手段は、抽出した前記見積額情報を表示する見積額表示用の表示画面と余寿命診断業務契約依頼書画面とを生成して前記利用者端末へ送信することを特徴とする。
【0017】
第11の発明は、第10の発明において、前記契約用サーバは、前記利用者端末に表示された前記余寿命診断業務契約依頼書画面上において前記利用者が入力した契約に関する入力情報に社印等の業務契約認印を追記する契約印追記手段を備え、該業務契約認印が記載された余寿命診断業務締結書画面を生成して前記利用者端末へ送信することを特徴とする。
【0018】
第12の発明は、ボイラ、蒸気タービン等の高温で使用されるプラント機器の余寿命を推定する余寿命診断方法において、前記プラント機器の状態を計測した計測情報をプラント設備情報データベースに格納し、前記プラント機器の補修履歴情報をプラント補修履歴情報データベースに格納し、前記プラント機器に使用されている材料の材料特性情報を材料特性情報データベースに格納し、前記プラントと同じ種類で他のプラント機器の寿命評価情報を寿命評価情報データベースに格納し、前記プラント機器の計測対象部位の温度及びひずみを計測手段にて計測し、該計測手段にて計測される計測データを通信、ネットワーク等を介して計測データ送信手段にて送信し、前記計測対象部位を光学顕微鏡、電子顕微鏡及びレーザ顕微鏡等の観察手段にて観察し、前記計測対象部位の状態を超音波検査装置、磁気検査装置及び浸透検査装置等の非破壊検査手段にて検査し、前記観察手段にて観察される観察データ及び前記非破壊検査手段にて検査される検査データを観察結果用データベースに格納し、前記観察データ、前記検査データ及び前記寿命評価情報に基づいて前記計測対象部位の損傷劣化の程度を予備診断用サーバにて評価し、該予備診断用サーバにて評価された評価結果を外部に出力することを特徴とする。
【0019】
第13の発明は、第12の発明において、前記計測データ、前記観察データ、前記検査データ、前記補修履歴情報、前記材料特性情報、前記寿命評価情報、前記計測情報に基づいて前記計測対象部位の余寿命を余寿命診断用サーバにて推定するとともに、該余寿命診断用サーバにて推定される余寿命診断結果を外部に出力することを特徴とする。
【0020】
第14の発明は、第12又は第13の発明において、前記プラント機器の余寿命診断業務に関する見積額情報を見積額用データベースに格納し、通信、ネットワーク経由でアクセスしてきた利用者端末からの要求に応じて、見積依頼用の表示画面を契約用サーバにて生成して前記利用者端末へ送信し、前記利用者端末に表示された前記見積依頼用の表示画面上において前記利用者が入力する余寿命診断希望部位箇所、余寿命診断希望部位の溶接数等の余寿命診断部位情報、前記プラント機器の運転時間情報、前記プラント機器の起動回数情報、前記プラント機器の材質情報等の前記プラント機器の余寿命診断業務に関する入力情報に基づいて、前記契約用サーバが有する見積額抽出手段にて前記見積額用データベースを参照し、前記見積額情報を抽出し、前記見積額抽出手段が抽出した前記見積額情報を表示する見積額表示用の表示画面と余寿命診断業務契約依頼書画面とを生成して前記利用者端末へ送信し、前記契約用サーバが、前記利用者端末に表示された前記余寿命診断業務契約依頼書画面上において利用者が入力する契約に関する入力情報に社印等の業務契約認印を追記した余寿命診断業務締結書画面を生成して前記利用者端末へ送信することを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明による高温プラント機器の余寿命診断システム及び余寿命診断方法によれば、余寿命を推定する際に必要なデータがすべてインターネット等を介して入手することができるために、正確な余寿命診断を短時間で行うことができる。
【0022】
また、作業員が高温プラント機器の設置されている現場に行った際には、現場から高温プラント機器の計測対象部位を観察手段により観察した観察データ、非破壊検査手段により検査した検査データ等及び寿命評価情報に基づいて、高温プラント機器の暫定的な余寿命の推定を行うために、作業員は短時間で正確な余寿命暫定診断結果を客先に提出することができる。
【0023】
計測対象部位の計測データは定期的に収集され、かつ、これらの計測データはプラントの履歴情報として保存される。そして、この履歴情報に基づいて、現在の高温プラント機器の状態を診断するために、高温プラント機器の異常を軽微な段階で検出することができる。
【0024】
そして、一般の人間が利用できるコンピュータ等の利用者端末からインターネット等を介して契約用サーバにアクセスすることにより、高温プラント機器の余寿命診断業務に関する金額が短時間で視覚的に表現されるために、この内容に同意する利用者と高温プラント機器の余寿命診断業務を効率的に短時間で契約することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明に係る高温プラント機器の余寿命診断システム及び余寿命診断方法の好ましい実施形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、本実施形態においては、発明の便宜上、客先の工場に設置されている高温プラント機器の余寿命を診断する方法について説明するが、本発明の適用対象は客先に限定されるものではなく、遠隔地にあるプラント機器すべてに広く適用が可能である。
【0026】
図1は、本発明の実施形態に係る高温プラント機器の余寿命診断システムのうち契約に関する業務を行うシステムの構成図である。図1に示すように、ボイラ、蒸気タービン等の高温で使用される高温プラント機器の余寿命を推定する余寿命診断システムのうち契約に関する業務を行うシステム10は、プラント機器の余寿命診断業務に関する見積額情報を格納するための見積額用データベース12と、インターネット14経由でアクセスしてきたコンピュータ等の利用者端末16からの要求に応じて、見積依頼用の表示画面を生成して利用者端末16へ送信する契約用サーバ18とを備える。
【0027】
契約用サーバ18は見積額情報を抽出する見積額抽出手段20を備える。この見積額抽出手段20は、利用者端末16に表示された見積依頼用の表示画面上において利用者にて入力される余寿命診断希望部位箇所、余寿命診断希望部位の溶接数等の余寿命診断部位情報、プラント機器の運転時間情報、プラント機器の起動回数情報、プラント機器の材質情報等のプラント機器の余寿命診断業務に関する入力情報に基づいて、見積額用データベース12を参照し、見積額情報を抽出する。そして、抽出した見積額情報を表示する見積額表示用の表示画面と余寿命診断業務契約依頼書画面とを生成して利用者端末16へ送信する。
【0028】
また、契約用サーバ18は、見積額及び余寿命診断業務契約依頼書に記載されている契約内容に同意する利用者が利用者端末16に表示される余寿命診断業務契約依頼書画面上において、契約に関する入力情報を入力すると、契約印追加手段22にて社印等の業務契約認印を追記した余寿命診断業務締結書画面を生成して利用者端末16へ送信し、利用者と余寿命診断に関する業務を締結する。
【0029】
したがって、本発明による高温プラント機器の余寿命診断システムによれば、一般の人間が利用できるコンピュータ等の利用者端末16からは、インターネット14を介して契約用サーバ18にアクセスすることにより、高温プラント機器の余寿命診断業務に関する金額が短時間で視覚的に表現されるために、この内容に同意する利用者と高温プラント機器の余寿命診断業務を効率的に短時間で契約することができる。
【0030】
次に、本実施形態に係る高温プラント機器の余寿命診断システムのうち余寿命診断に関する業務を行うシステムについて説明する。なお、本実施形態においては、高温プラント機器の配管ラインについての余寿命診断システム及び余寿命診断方法について説明するが、本発明の適用対象は配管ラインに限定されるものではなく、高温プラント機器のすべての部位に広く適用が可能である。
【0031】
図2は、本実施形態に係る高温プラント機器の余寿命診断システムのうち余寿命診断に関する業務を行うシステムの構成図である。図2に示すように、ボイラ、蒸気タービン等の高温で使用される高温プラント機器の配管ラインの余寿命を推定する余寿命診断システム30は、自社の配管ラインの状態を計測した計測情報を格納するとともに、他社での過去の計測情報を格納した自社・他社プラント設備情報データベース32と、自社の配管ラインの補修履歴情報を格納するとともに、他社での過去の修復履歴情報を格納した自社・他社プラント補修履歴情報データベース33と、配管ラインに使用されている材料の材料特性情報を格納するための材料特性情報データベース35と、他のプラント機器における同じ種類の配管ラインの寿命評価情報を格納するための寿命評価情報データベース37と、配管ラインの計測対象部位に設置され、この計測対象部位の温度及びひずみを計測する温度計34及びひずみ計36の計測手段と、温度計34及びひずみ計36にて計測される計測データを所定の時間にインターネット14を介して送信する計測データ送信手段38と、計測対象部位表面の金属組織が転写されるレプリカと、このレプリカの表面形状を観察する光学顕微鏡39、電子顕微鏡40及び亀裂、ボイドを観察するレーザ顕微鏡42の観察手段と、計測対象部位の内部の欠陥や不均一構造を検査する超音波検査装置44、亀裂を検査する磁気検査装置46及び計測対象部位の表面開口部欠陥を検査する浸透検査装置47の非破壊検査装置による非破壊検査手段と、観察手段にて観察される観察データ及び非破壊検査手段にて検査される検査データを格納するための観察結果用データベース48と、観察データ、検査データ等に基づいて計測対象部位の損傷劣化の程度を評価する予備診断用サーバ50と、計測データ、観察データ、検査データ、補修履歴情報、材料特性情報、寿命評価情報、計測情報に基づいて計測対象部位の余寿命を正確に推定する余寿命診断用サーバ52とを備える。
【0032】
計測対象部位に設置される温度計34及びひずみ計36は、余寿命を診断するための計測を行う前に、予め配管ライン全体の温度、ひずみを計測して損傷劣化程度を有限要素法等の周知の数学的処理法にて解析し、損傷劣化程度の高い部位を計測対象部位として特定し、この計測対象部位にのみ設置される。温度計34及びひずみ計36にて計測された計測対象部位の温度データ及びひずみデータは、所定の時間にインターネット14を介して自動的にプラント情報転送手段66(後述する)に送信され、自社・他社プラント設備情報データベース32に保存される。また、余寿命を診断するための計測を開始する前に、計測対象部位表面の金属組織をレプリカに転写し、余寿命診断中の測定データと比較検討するための基本データとするために計測情報41として自社・他社プラント設備情報データベース32に保存される。
【0033】
予備診断用サーバ50は、光学顕微鏡39、電子顕微鏡40、レーザ顕微鏡42により観察される観察データ及び超音波検査装置44、磁気検査装置46、浸透検査装置47により検査される検査データに履歴を付けて観察結果用データベース48に格納する観察結果転送手段58と、観察結果用データベース48を参照し、観察結果用データベース48に格納された情報のうち、所定の情報を抽出する観察結果抽出手段60と、観察データ、検査データ及び寿命評価情報データベース37に格納されている寿命評価情報に基づいて計測対象部位の損傷劣化の程度を暫定的に診断する余寿命暫定診断手段62と、観察データ、検査データ及び余寿命暫定診断手段62にて診断された余寿命暫定診断結果をインターネット14を介して送信する観察結果送信手段64と、余寿命診断結果送信手段54からインターネット14を介して送信された余寿命診断結果を受信するための受信手段72と、受信装置72にて受信した余寿命診断結果を出力するプリンタ等の出力手段65とを備え、工場等の現場に設置される。
【0034】
余寿命暫定診断手段62は、インターネット14を介して寿命評価情報データベース37にアクセスし、寿命評価情報を参照するとともに、観察データ、検査データから得られるボイド、亀裂等の物理的損傷程度をボイド又は亀裂の有無、大きさ等により損傷劣化程度を周知の数学的処理法から適正に算出される所定の基準に基づいて余寿命を暫定的に診断し、余寿命暫定診断結果を作成する。この余寿命暫定診断結果は、観察結果送信手段64にてインターネット14を介して送信され、余寿命診断業務を請け負った業者の事務所等に設けられた電子承認手段74(後述する)にて受信されるとともに、診断結果内容が確認される。余寿命暫定診断結果は、内容が確認された後に電子承認手段74にて承認されて社印等の承認印が追記される。承認印入りの余寿命暫定診断結果は、余寿命診断結果送信手段54にてインターネット14を介して送信され、受信手段72にて受信され、プリンタ等の出力手段65にて出力されて客先に提出される。
【0035】
余寿命診断用サーバ52は、計測データ、評価結果、観察データ、検査データを計測情報41に履歴を付けて自社・他社プラント設備情報データベース32に格納するプラント情報転送手段66と、自社・他社プラント設備情報データベース32、自社・他社プラント補修履歴情報データベース33、材料特性情報データベース35、寿命評価情報データベース37を参照し、所定の情報を抽出するプラント情報抽出手段68と、プラント情報抽出手段68にて抽出される情報に基づいてプラント機器の余寿命を正確に推定する余寿命診断手段70と、余寿命診断手段70にて推定された余寿命診断結果を承認して社印等の承認印を追記する電子認証手段74と、承認印の入った余寿命診断結果をインターネット14を介して送信する余寿命診断結果送信手段54とを備え、余寿命診断業務を請け負った業者等の事務所に設置される。
【0036】
余寿命診断手段70は、観察データ、検査データ、予備評価結果、温度データ、ひずみデータ、プラント設備情報、補修履歴情報、材料特性情報、寿命評価情報との組み合わせに基づいて配管ラインの余寿命をθ法、Ω法等の周知の評価手法に基づいて算定し、図3(a)〜図3(e)にそれぞれ示すように、算出された数値の各々を時間損傷比とひずみ、時間損傷比とき裂長さ、時間損傷比とクリープボイド個数・面積、時間損傷比と金属組成・炭水化物面積・間隔、時間損傷比とM・Lパラメータ等の相関を示すマスターカーブに取り込み、それぞれの時間損傷比(t(h)/tr(h))を算出し、これらの時間損傷比のうち最大値(=最も余寿命が短い)を余寿命とする余寿命診断結果を自動的に作成する。
【0037】
そして、電子承認手段74にて承認が得られた余寿命診断結果は、余寿命診断結果送信手段54にて送信され、予備診断用サーバ50の受信手段72にて受信され、社印等の承認印が入った余寿命診断結果報告書をプリンタ等の出力手段65にて出力し、客先に提出する。
【0038】
したがって、事務所にて自動的に作成された余寿命診断結果をインターネット14を介して、高温プラント機器等が設置されている現場に瞬時に送信することができる。なお、本実施形態においては、インターネット14を介して余寿命診断結果を送信する方法について説明したが、余寿命診断を請け負った会社にてプリンタ等にて紙面に出力し、郵送等で送付する方法でもよい。
【0039】
したがって、本発明による高温プラント機器の余寿命診断システム30によれば、余寿命の推定をする際に必要とするすべてのデータが通信手段14を介して入手することができるために、正確な余寿命診断を短時間で行うことができる。
【0040】
また、定期的に計測対象部位の計測データが収集され、かつ、これらの計測データはプラントの履歴情報として保存される。そして、この履歴情報に基づいて、現在のプラント機器の状態を診断するために、高温プラント機器の異常を軽微な段階で検出することができる。
【0041】
さらに、作業員が高温プラント機器の設置されている現場から観察データ、検査データ等を事務所にインターネット14を介して送信し、事務所にて自動的に高温プラント機器の余寿命の推定を行い、再びインターネット14を介して返信するために、作業員は短時間で客先に正確な余寿命の診断結果を報告することができる。
【0042】
なお、本実施形態においては、データ等の転送手段はインターネット14を使用する方法について説明したが、インターネット14に限らず、例えば、LANで接続されていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の実施形態に係る高温プラント機器の余寿命診断システムのうち契約に関する業務を行うシステムの構成図である。
【図2】本実施形態に係る高温プラント機器の余寿命診断システムのうち余寿命診断に関する業務を行うシステムの構成図である。
【図3】本実施形態に係る寿命評価の判断方法を示す図である。
【符号の説明】
【0044】
10 契約に関する業務を行うシステム
12 見積額用データベース
14 インターネット
16 利用者端末
18 契約用サーバ
20 見積額用抽出手段
22 契約印追加手段
30 余寿命診断システム
32 自社・他社プラント設備情報データベース
33 自社・他社プラント補修履歴情報データベース
34 温度計
35 材料特性情報データベース
36 ひずみ計
37 寿命評価情報データベース
38 計測データ送信手段
39 光学顕微鏡
40 電子顕微鏡
42 レーザ顕微鏡
44 超音波検査装置
46 磁気検査装置
47 浸透検査装置
48 観察結果用データベース
50 予備診断用サーバ
52 余寿命診断用サーバ
54 余寿命診断結果送信手段
58 観察結果転送手段
60 観察結果抽出手段
62 余寿命暫定診断手段
64 観察結果送信手段
65 出力手段
66 プラント情報転送手段
68 プラント情報転送手段
70 余寿命診断手段
72 受信手段
74 電子承認手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボイラ、蒸気タービン等の高温で使用されるプラント機器の余寿命を推定する余寿命診断システムであって、
前記プラント機器の状態を計測する計測情報を格納するためのプラント設備情報データベースと、前記プラント機器の補修履歴情報を格納するためのプラント補修履歴情報データベース、前記プラント機器に使用されている材料の材料特性情報を格納するための材料特性情報データベースと、前記プラントと同じ種類で他のプラント機器の寿命評価情報を格納するための寿命評価情報データベースと、
前記プラント機器の計測対象部位の温度及びひずみを計測する計測手段と、
該計測手段にて計測される計測データを通信、ネットワーク等を介して送信する計測データ送信手段と、
前記計測データ、前記プラント補修履歴情報、前記材料特性情報、前記寿命評価情報、前記計測情報に基づいて前記計測対象部位の余寿命を推定する余寿命診断用サーバとを備えることを特徴とする高温プラント機器の余寿命診断システム。
【請求項2】
前記計測データ送信手段は、前記計測手段により計測される計測データを所定の時間に送信することを特徴とする請求項1に記載の高温プラント機器の余寿命診断システム。
【請求項3】
前記余寿命診断用サーバは、前記計測データ送信手段により送信される前記計測データに履歴を付けて前記計測情報として前記プラント設備情報データベースに格納するプラント情報転送手段と、
前記プラント設備情報データベース、前記プラント補修履歴情報データベース、前記材料特性情報データベース、前記寿命評価情報データベースを参照し、所定の情報を抽出するプラント情報抽出手段と、
前記プラント情報抽出手段にて抽出される情報に基づいて前記プラント機器の余寿命を推定する余寿命診断手段と、
該余寿命診断手段にて推定される余寿命診断結果を承認するための電子承認手段と、
該電子承認手段にて承認された余寿命診断結果を通信、ネットワーク等を介して送信する余寿命診断結果送信手段とを備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の高温プラント機器の余寿命診断システム。
【請求項4】
前記計測対象部位を観察する光学顕微鏡、電子顕微鏡及びレーザ顕微鏡等の観察手段と、
前記計測対象部位の内部の欠陥や不均一構造を検査する超音波検査装置、前記計測対象部位の亀裂を検査する磁気検査装置、前記計測対象部位の表面開口部欠陥を検査する浸透検査装置等の非破壊検査手段と、
前記観察手段にて観察される観察データ及び前記非破壊検査手段にて検査される検査データを格納するための観察結果用データベースと、
前記観察データ及び前記検査データに基づいて前記計測対象部位の損傷劣化の程度を評価する予備診断用サーバとを備え、
該予備診断用サーバは、前記観察データ及び前記検査データに履歴を付けて前記観察結果用データベースに格納する観察結果転送手段と、
前記観察結果用データベースを参照し、前記観察結果用データベースに格納された情報のうち、所定の情報を抽出する観察結果抽出手段と、
前記観察データ、前記検査データを通信、ネットワーク等を介して送信する観察結果送信手段とを備えることを特徴とする請求項1に記載の高温プラント機器の余寿命診断システム。
【請求項5】
前記余寿命診断用サーバは、前記予備診断用サーバより送信される前記観察データ、前記検査データを前記計測情報に履歴を付けて前記プラント設備情報データベースに格納し、前記観察データ、前記検査データに基づいて前記計測対象部位の余寿命を推定し、更に精度を向上させることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の高温プラント機器の余寿命診断システム。
【請求項6】
前記予備診断用サーバは、前記余寿命診断結果送信手段から送信される前記余寿命診断結果を受信する受信手段と、該受信手段にて受信した前記余寿命診断結果を外部に出力する出力手段とを更に備えることを特徴とする請求項1又は3〜5のいずれかに記載の高温プラント機器の余寿命診断システム。
【請求項7】
前記予備診断用サーバは、通信、ネットワークを介して前記寿命評価情報データベースを参照し、前記寿命評価情報データベースに格納された前記寿命評価情報、前記観察データ及び前記検査データに基づいて前記計測対象部位の損傷劣化の程度を評価する余寿命暫定診断手段を更に備え、該余寿命暫定診断手段による余寿命暫定診断結果は、前記観察結果送信手段にて送信されることを特徴とする請求項1又は3〜6のいずれかに記載の高温プラント機器の余寿命診断システム。
【請求項8】
前記余寿命診断用サーバは、前記予備診断用サーバより送信される前記余寿命暫定診断結果を前記電子承認手段にて承認して、該承認された余寿命暫定診断結果を余寿命診断結果送信手段にて送信することを特徴とする請求項7に記載の高温プラント機器の余寿命診断システム。
【請求項9】
前記予備診断用サーバは、前記余寿命診断結果送信手段から送信される前記承認された余寿命暫定診断結果を前記受信手段にて受信して、前記承認された余寿命暫定診断結果を前記出力手段にて外部に出力することを特徴とする請求項1又は3〜8のいずれかに記載の高温プラント機器の余寿命診断システム。
【請求項10】
請求項1に記載の高温プラント機器の余寿命診断システムであって、前記プラント機器の余寿命診断業務に関する見積額情報を格納するための見積額用データベースと、通信、ネットワーク経由でアクセスしてきた利用者端末からの要求に応じて、見積依頼用の表示画面を生成して前記利用者端末へ送信する契約用サーバとを備え、
前記契約用サーバは、前記利用者端末に表示された前記見積依頼用の表示画面上において前記利用者にて入力される余寿命診断希望部位箇所、余寿命診断希望部位の溶接数等の余寿命診断部位情報、前記プラント機器の運転時間情報、前記プラント機器の起動回数情報、前記プラント機器の材質情報等の前記プラント機器の余寿命診断業務に関する入力情報に基づいて、前記見積額用データベースを参照し、前記見積額情報を抽出する見積額抽出手段を備え、
前記見積額抽出手段は、抽出した前記見積額情報を表示する見積額表示用の表示画面と余寿命診断業務契約依頼書画面とを生成して前記利用者端末へ送信することを特徴とする高温プラント機器の余寿命診断システム。
【請求項11】
前記契約用サーバは、前記利用者端末に表示された前記余寿命診断業務契約依頼書画面上において前記利用者が入力した契約に関する入力情報に社印等の業務契約認印を追記する契約印追記手段を備え、該業務契約認印が記載された余寿命診断業務締結書画面を生成して前記利用者端末へ送信することを特徴とする請求項10に記載の高温プラント機器の余寿命診断システム。
【請求項12】
ボイラ、蒸気タービン等の高温で使用されるプラント機器の余寿命を推定する余寿命診断方法において、
前記プラント機器の状態を計測した計測情報をプラント設備情報データベースに格納し、前記プラント機器の補修履歴情報をプラント補修履歴情報データベースに格納し、前記プラント機器に使用されている材料の材料特性情報を材料特性情報データベースに格納し、前記プラントと同じ種類で他のプラント機器の寿命評価情報を寿命評価情報データベースに格納し、
前記プラント機器の計測対象部位の温度及びひずみを計測手段にて計測し、
該計測手段にて計測される計測データを通信、ネットワーク等を介して計測データ送信手段にて送信し、
前記計測対象部位を光学顕微鏡、電子顕微鏡及びレーザ顕微鏡等の観察手段にて観察し、
前記計測対象部位の状態を超音波検査装置、磁気検査装置及び浸透検査装置等の非破壊検査手段にて検査し、
前記観察手段にて観察される観察データ及び前記非破壊検査手段にて検査される検査データを観察結果用データベースに格納し、
前記観察データ、前記検査データ及び前記寿命評価情報に基づいて前記計測対象部位の損傷劣化の程度を予備診断用サーバにて評価し、
該予備診断用サーバにて評価された評価結果を外部に出力することを特徴とする高温プラント機器の余寿命診断方法。
【請求項13】
請求項12に記載の高温プラント機器の余寿命診断方法において、
前記計測データ、前記観察データ、前記検査データ、前記補修履歴情報、前記材料特性情報、前記寿命評価情報、前記計測情報に基づいて前記計測対象部位の余寿命を余寿命診断用サーバにて推定するとともに、該余寿命診断用サーバにて推定される余寿命診断結果を外部に出力することを特徴とする高温プラント機器の余寿命診断方法。
【請求項14】
請求項12又は13に記載の高温プラント機器の余寿命診断方法において、
前記プラント機器の余寿命診断業務に関する見積額情報を見積額用データベースに格納し、
通信、ネットワーク経由でアクセスしてきた利用者端末からの要求に応じて、見積依頼用の表示画面を契約用サーバにて生成して前記利用者端末へ送信し、
前記利用者端末に表示された前記見積依頼用の表示画面上において前記利用者が入力する余寿命診断希望部位箇所、余寿命診断希望部位の溶接数等の余寿命診断部位情報、前記プラント機器の運転時間情報、前記プラント機器の起動回数情報、前記プラント機器の材質情報等の前記プラント機器の余寿命診断業務に関する入力情報に基づいて、前記契約用サーバが有する見積額抽出手段にて前記見積額用データベースを参照し、
前記見積額情報を抽出し、
前記見積額抽出手段が抽出した前記見積額情報を表示する見積額表示用の表示画面と余寿命診断業務契約依頼書画面とを生成して前記利用者端末へ送信し、
前記契約用サーバが、前記利用者端末に表示された前記余寿命診断業務契約依頼書画面上において利用者が入力する契約に関する入力情報に社印等の業務契約認印を追記した余寿命診断業務締結書画面を生成して前記利用者端末へ送信することを特徴とする高温プラント機器の余寿命診断方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−263603(P2007−263603A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−85787(P2006−85787)
【出願日】平成18年3月27日(2006.3.27)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】