説明

高演色性発光ダイオードの製造方法とシステム

【課題】 試行錯誤の時間コストを減少するため、ソフトウェアの計算を利用して多種類の蛍光粉を迅速に配合して高演色性の発光ダイオードを製造する方式とシステムの提供。
【解決手段】 本発明の高演色性発光ダイオードの製造方法とシステムは、主に演算法で発光ダイオードと混合可能な少なくとも2種類以上の蛍光粉のそれぞれの濃度を計算し、混光後の発光スペクトルは予め設定した色温度の高演色性白色光を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は高演色性発光ダイオードに関し、特に、高演色性発光ダイオードの製造方法とシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオード(Light Emitting Diode;略称LED)は、電気エネルギーを光エネルギーに転化する電子部品であり、同時にダイオードの特性を備えている。一般に直流電流を供給すると、発光ダイオードは安定した状態で発光するが、交流電流を接続すると、発光ダイオードはちらつきが生じ、ちらつきの変動は入力される交流電流の周波数によって変わる。発光ダイオードの発光原理は外部から電圧を加え、電子とホールを半導体内で結合させて、エネルギーを光の形式で放出させる。
【0003】
現在、発光ダイオードチップの組成は主にIII族砒化物、III族リン化物、III族窒化物、II−VI族の半導体化合物等である。発光ダイオードチップの製造材料の違いに伴い、発生する光子が持つエネルギーも異なるため、製造材料によって発光ダイオードチップの発光の波長を制御し、異なるスペクトルと色の各種発光ダイオードチップを生み出している。現在、世界の当該産業ではさまざまな種類の発光ダイオードチップが生み出されており、すでに赤外線から青色光の間の異なる波長の光線を発射でき、紫色から紫外線の発光ダイオードチップの技術もまさに成熟中である。上述の発光ダイオードは主に単色光、または単一周波数の発光ダイオードを重点としている。白色光発光ダイオードの発光スペクトルは、ある単色光上に集中しておらず、可視光のスペクトル中の1つの分布である。現在白色光発光ダイオードを形成するために用いられる組み合わせは主にマルチチップ型とシングルチップ型の2種類のタイプがある。
【0004】
マルチチップ型は赤色、緑色、青色の三色の発光ダイオードチップを用い、レンズでこれら3色の光を混合し、我々が見える白色光を形成する。その利点は高い発光率と光色の調節が可能な点であり、欠点は3種類のチップが必要で、各チップ間に個別の回路設計を要することに加え、3種類のチップの減衰速度と寿命が同じでないため、白色光発光ダイオードの寿命を制御しにくいことである。
【0005】
このほか、シングルチップ型で白色光を発生する方法は3つに分けることができる。第1方式は主流の方式であり、青色発光ダイオードチップを黄色蛍光粉に照射し、蛍光粉を励起させ、白色光を発する方法である。このような製品は発光ダイオードのCIE値を調整するとき、青色光発光ダイオードの波長と黄色蛍光粉の励起スペクトルを正しく選択した後、青色光発光ダイオードの発光強度と黄色蛍光粉の濃度を調整するだけでよい。このような白色光発光ダイオードが発生するスペクトルは、赤色区域の光度が弱すぎ、平均演色評価数(General Color Rendering Index;Ra)値が低くなる。例えば、このような製品をデジタルカメラの補助光源に使用した場合、撮影された人物が往々にして血色悪く写る。このため、現在高演色性の白色光発光ダイオードが現段階において各界が追求する方向性である。
【0006】
赤色区域の光度を補うため、後に派生した青色発光ダイオードチップで緑色及び赤色蛍光粉を照射するか、或いは青色発光ダイオードチップで緑色及び黄色蛍光粉を照射して白色光を形成し、平均演色評価数を高める方法が第2方式である。第3方式は紫外光発光ダイオードチップで緑色、赤色、青色の3種類の蛍光粉を照射して白色光を形成する方法である。
【0007】
米国特許公告第2007/0194695A1号に開示された方式は、青色発光ダイオードチップにオレンジ色無機蛍光粉及び緑色無機蛍光粉を組み合わせ、白色光を形成している。そのオレンジ色無機蛍光粉及び緑色無機蛍光粉の混合比率を調整し、蛍光粉の吸収波長の幅を増加してほぼ真っ白な白色光を得ることができる。例えば、青色発光ダイオードチップがZn(Se0.1、S0.9):Cuのオレンジ色無機蛍光粉及びEu−activated b−sialonの緑色無機蛍光粉を混合した蛍光粉を介して励起する。
【0008】
別の方式は台湾特許公告第I263360号に開示されるように、励起光源が258nm〜490nm間の波長を発することができる光源であり、蛍光粉が励起光源の周囲に配置され、励起光源が発する光線を受け取る。蛍光粉は緑色蛍光粉、マゼンタ光(Magenta)蛍光粉、赤色光蛍光粉、青色蛍光粉等を含む。そのうち、緑色光とマゼンタ光(Magenta)蛍光粉の材質は(Me1−x−yEuRe)Mg(SiO)Clから構成されるグループのうちの1種類または2種類以上を選択する。赤色光蛍光粉の材質は(Me1−x−yEuRe)Sから構成されるグループのいずれかを選択し、青色蛍光粉の材料は(Ca1−x−yEuRe)(PO)Cl:Eu2+Gd2+から構成されるグループのいずれかを選択する。そのうち0<x≦0.8、0≦y≦2.0、0≦z≦1.0、1.0≦m≦6.0、0.1≦n≦3.0である。このほか、Meはカルシウム、ストロンチウム、バリウムから構成されるグループのいずれかを選択し、Reはプロセオジウム、ルビジウム、ジスプロシウム、サマリウム、ホルミウム、イットリウム、エルビウム、ユーロピウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウム、ガドリニウム、マグネシウム、マンガンから構成されるグループの1種類または2種類以上を選択する。上述の4種類の蛍光粉を適切に配合した後、波長385nmの紫色光を励起光とし、4波長かつ演色性に優れた白色光を形成する。
【0009】
上述の方式において、高演色性の発光ダイオードの製作方式を得るためには赤色の蛍光粉を増加したり、2種類以上の蛍光粉を使用したりすることができる。しかしながら、2種類の蛍光粉を使用して混光し、発光ダイオードに特定のCIE値の光源を発生させるとき、全部で3つのパラメータ、すなわち発光ダイオードの発光強度と2つの蛍光粉の濃度を同時に調整する必要がある。ある特定のCIE値と演色性を達するため、何度も試行錯誤(trial−and−error)を行う方式で異なる蛍光粉の間の濃度割合と青色光発光ダイオードの発光強度を調整しなければならない。例えば、上述の台湾特許公告第I263360号の先行技術において、4種類の蛍光粉が提案されているが、特定のCIE値を得るための調整過程において、試行錯誤する必要のある時間が指数的に増加する。さらに、異なる色温度下でよりよい演色性の白色光発光ダイオードを提供したい場合、さらに多くの時間をかけて最も良い蛍光粉の濃度を調整しなければならない。
【0010】
市場において開発される蛍光粉の種類が増加を続けたとき、あるいは2種類以上の蛍光粉を使用して混光を行いたい場合、異なる種類の蛍光粉を組み合わせて高演色性の発光ダイオードを得るための開発時間も長くなってしまう。これは製品の発売にとって非常に大きな挑戦であることは疑う余地がない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許公告第2007/0194695A1号明細書
【特許文献2】台湾特許公告第I263360号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、試行錯誤の時間コストを減少するため、ソフトウェアの計算を利用して多種類の蛍光粉を迅速に配合して高演色性の発光ダイオードを製造する方式とシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述の発明背景を鑑みて、産業利益の必要性を満たすため、本発明は高演色性発光ダイオードを製造する方法を提供する。そのステップは、まず標準スペクトルを計算し、そのうち、前記標準スペクトルは第1色温度下の黒体放射が発射する可視光スペクトルである。その後、発光ダイオードの発射スペクトル、第1蛍光粉の発射スペクトル、第2蛍光粉の発射スペクトルを提供する。前記標準スペクトルで前記第1蛍光粉と前記第2蛍光粉の濃度を調整して第1混光スペクトルを取得し、前記第1混光スペクトルと前記標準スペクトルを接近させる。
【0014】
上述の前記標準スペクトルを計算するステップでは、Planck方程式を利用し、計算して取得る。上述の第1混光スペクトルは発光ダイオード、第1蛍光粉、第2蛍光粉が励起放射した後に得られる。前記第1混光スペクトルを取得した後、まず前記第1混光スペクトルの各標準色標における演色性を計算し、その後演色性が最も悪い色標を見つけ前記第1蛍光粉と前記第2蛍光粉の濃度を修正し、第2混光スペクトルを取得する。
【0015】
本発明がさらに提供する高演色性発光ダイオードを製造する方法は、まず標準スペクトルを計算するステップを含み、前記標準スペクトルは第1色温度下の黒体放射が射出する可視光スペクトルである。その後発光ダイオードの発射スペクトル、第1蛍光粉の発射スペクトル、第2蛍光粉の発射スペクトルを提供する。標準スペクトルにより前記第1蛍光粉と前記第2蛍光粉の濃度を調整し、第1混光スペクトルを取得する。前記第1混光スペクトルの各標準色標における演色性を計算する。その後、演色性が最も悪い色標を見つけ前記第1蛍光粉と前記第2蛍光粉の濃度を修正し、第2混光スペクトルを取得する。
【0016】
本発明がさらに提供する高演色性発光ダイオードを製造するシステムは、標準スペクトルを計算する手段と、発光ダイオードの発射スペクトル、第1蛍光粉の発射スペクトル、第2蛍光粉の発射スペクトルを提供する手段と、前記標準スペクトルにより前記第1蛍光粉と前記第2蛍光粉の濃度を調整し、第1混光スペクトルを取得する手段と、前記第1混光スペクトルの各標準色標における演色性を計算する手段と、演色性が最も悪い色標を見つけ前記第1蛍光粉と前記第2蛍光粉の濃度を修正し、第2混光スペクトルを取得する手段を含み、そのうち前記標準スペクトルは第1色温度下の黒体放射が射出する可視光スペクトルである。
【0017】
本発明がさらに提供する高演色性発光ダイオードを製造するシステムは、発光ダイオードの発射スペクトル、第1蛍光粉発射スペクトル、第2蛍光粉発射スペクトルを保存するための第1データベースと、各標準色標の反射スペクトルを保存するための第2データベースと、前記第1データベース中の発光ダイオード、第1蛍光粉、第2蛍光粉の混光スペクトルを計算するための混色ユニットを含み、そのうち、前記混光スペクトルが第1混光スペクトルである。さらに第1色温度下の黒体放射が射出する可視光スペクトルを生成するための標準色温度スペクトル生成器と、前記第1混光スペクトルと前記標準色温度スペクトル生成器が生成する標準スペクトルの照合に用いるスペクトル比較ユニットと、前記第2データベース中の各標準色標の反射スペクトルを読み取り、かつ前記第1混光スペクトルと前記標準スペクトルに対し、前記第1混光スペクトルの各標準色標の反射スペクトル及び前記標準スペクトルの各標準色標の反射スペクトルをそれぞれ生成する標準色標反射スペクトル生成ユニットと、前記第1混光スペクトルの各標準色標反射スペクトルと前記標準スペクトルの各標準色標反射スペクトルを照合するための色標スペクトル比較ユニットを含む。
【0018】
そのうち、上述の前記標準スペクトルを計算するステップ、手段、システムは、Planck方程式を利用し、計算して得る。上述の第1混光スペクトルは発光ダイオード、第1蛍光粉、第2蛍光粉の励起放射後に得られる。そのうち、上述の第1蛍光粉はCaSc:Ce、(MgCaSrBa)SiO:Eu、CaScSiO1:Ce、(Ca1.47Mg1.5Ce0.03)(Sc1.50.5)SiO1或いは(Ca2.97Ce0.03)Sc(Si、Ge)12とすることができ、そのうち上述の第2蛍光粉は、CaAlSiN:Eu、(CaEu)AlSiN、(SrCa)AlSiN:Eu或いはSrGa:Euとすることができる。本発明は第3蛍光粉及びその発射スペクトルを含むこともできる。
【0019】
本発明がさらに提供する多種類の蛍光粉濃度を計算し高演色性発光ダイオードを得る方法は、多種類の蛍光粉の濃度を調整し、発光ダイオードの混光後のスペクトルを第1色温度下の黒体放射の発光スペクトルに接近させるステップ、及び混光後のスペクトルが各標準色標の反射スペクトル中で演色性が最も悪い色標を見つけ、上述の多種類の蛍光粉の濃度を修正するステップを含む。
【0020】
本発明がさらに提供する2段階の近似を使用して各種蛍光粉の高演色性発光ダイオードにおける配合割合を見つける方法は、黒体放射に近い各種蛍光粉の混合割合を見つけるステップ、及び演色性が最も悪い色標から各種蛍光粉の配合割合を修正するステップを含む。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】CIE 1931色度図である。
【図2】黒体放射の異なる色温度の色度図中における分布図である。
【図3】本発明の多種類の蛍光粉の濃度を計算して高演色性発光ダイオードを得る方法のフローチャートである。
【図4】本発明の高演色性発光ダイオードを製造する方法のフローチャートである。
【図5】本発明の高演色性発光ダイオードを製造するシステムのブロック図である。
【図6】本発明の高演色性白色光発光ダイオードの製造方法のフローチャートである。
【図7】本発明の発射スペクトルの相似度を比較して高演色性白色光発光ダイオードを製造するシステムのブロック図である。
【図8】発光ダイオードチップと2種類の異なる蛍光粉の濃度の混合発射スペクトルを示す曲線図である。
【図9】目標色温度の黒体放射の可視光スペクトルと混合発射スペクトルの比較図である。
【図10】演色評価数を照合して高演色性白色光発光ダイオードを製造するシステムのブロック図である。
【図11】本発明の高演色性白色光発光ダイオードを製造するシステムのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明がここで探究する方向は、高演色性の白色光発光ダイオード及びそのプロセスである。徹底的に本発明を理解できるように、以下の説明において詳細なステップとその構成を提示する。当然、本発明の実施は発光ダイオード及びそのプロセスの技術者が熟知する特殊な詳細に限定されない。一方で、本発明に対する不必要な制限を回避するため、周知の構成またはステップは詳細に説明していない。本発明の最良の実施例を以下で詳細に説明するが、これら詳細な説明のほか、本発明はさらに幅広くその他の実施例に実施可能であり、かつこれら実施例に本発明の範囲は限定されず、本発明の範囲は後付の特許請求の範囲に準じる。
【0023】
上述から分かるように、白色光を生み出すための重要な要素の1つが蛍光材料である。蛍光材料の発光は、蛍光体が光、電場、電子束等の異なる励起源の励起を経た後、蛍光体の電子が十分なエネルギーを獲得し、基底準位からより高エネルギーの励起準位に移行する。高い準位にある励起状態の電子は比較的不安定であるため、緩和(relaxation)の方式で低準位の基底準位に戻る。緩和過程において、非放射(non−radiative)方式でエネルギーが放出されると、格子の振動を生じ、エネルギーが「熱」の形式で消耗される。電磁放射(radiative)方式で放出されると、光の形式でエネルギーが放出される。発される光の波長が可視光の範囲にあるとき、人の目で蛍光体が放射する光を見ることができる。この蛍光体が発する光は、電子の高低エネルギー準位間での遷移のみと関係がある。
【0024】
発光ダイオードに使用する蛍光粉はホスト格子(host lattice、H)が主要な組成成分であり、例えばZnS:Cu2+のうちZnSがホスト格子である。蛍光体中の発光中心は異種イオンをホスト格子中に少量添加またはドープ(dope)して構成され、例えばZnS:Cu2+中のCu2+である。この異種イオンは励起されて蛍光を発生することができる中心体であり、活性体(activator)或いは活性化剤とも呼ばれる。蛍光材料中のホスト格子中に第2の異種イオンを添加することもあり、これはその吸収した励起エネルギーを活性体イオンに伝達して発光させる作用があり、増感剤(sensitizer)或いは補助活性体(co−activator)と呼ばれる。このため、ホスト格子及び活性体をコントロールすることでさまざまな各種波長を発射する蛍光粉を設計することができる。現在、市場において見受けられる蛍光粉の主体材料は多くが硫化物(Sulfides)、酸化物(Oxides)、硫酸化物(Oxysulfides)、窒化物(Nitrides)、酸窒化物(Oxynitrides)、ガーネット(Garnet)及びケイ酸塩(Silicates)類等から構成されている。
【0025】
一般に言う白色光とは、昼間に見える太陽光であり、学理上の分析によると白色光は400nm〜700nmの範囲の連続したスペクトルである。目に見える色で言うと、赤、オレンジ、黄、緑、青、青紫、紫等の7色に分解することができる。発光ダイオードの発光原理に基づくと、一般に単色光を発することができるのみである。それに白色光を発させるために、技術上では2種類以上の相互補色関係の光を混合し、白色光を得る目的を達する。白色光発光ダイオードは白色光を発生するほか、物体の色を忠実に表現できるか否かの能力、即ち演色性(Color Rendering)も技術上考慮が必要な部分である。演色性の高い光源は物体の色の表現がよりリアルであり、被照明物が人類の目に映ったときの物体の色もより自然の原色に近くなる。白色光発光ダイオードの演色評価数(Color Rendering Index;CRI)は発光ダイオードチップ、蛍光粉、材料と関係がある。異なる色温度下で、使用する蛍光粉または発光ダイオードチップには違いがある。
【0026】
色温度(Color Temperature)の定義は、黒体(Black body)放射に基づき、金属(黒体に近い)を一定温度まで加熱したとき、色を持つ可視光が現れる。このような光は温度の上昇に伴って変化し、このような光源に影響する温度がその光源の色温度である。例えば、1つの鉄の塊が昇温されると、開始時鉄は赤くなり、その後オレンジ色になり、さらに黄色、青白色、と変化する。研究者は連続したスペクトルを利用してその温度と色の間の関係を検証している。x軸が波長、y軸が放射流量を表し、y軸が異なる波長の放射の量を反映して、異なる温度時の鉄が放出するエネルギーの曲線を描くことができる。このため、鉄が赤色になったとき、それが赤色光のみを発することを表すのではなく、単に放射する赤色光がその他波長より多いことを表す。この試験から3つの特質が分かる。1.曲線には1つのピーク点がある、2.温度が上がると、ピーク点が短波方向に移動する、3.温度が上がると、あらゆる波長の放射流量が増加する、という特質である。例えば鉄は4200Kで赤色光を最も多く発し、放射流量のピーク点が赤色光の箇所にあるため、我々が鉄を見ると赤色になっているが、4800Kのとき放射流量のピーク点は黄橙色にあるため、我々が鉄を見ると黄橙色であり、温度が高くなると、ピーク点が短波方向に移動するため、5800Kのときピーク点は黄緑色に移動する。
【0027】
色温度の計算においては、絶対温度ケルビン(Kelvin;K)を単位とし、黒体放射はケルビン=摂氏+273を計算の起点とする。ある純黒物体がその上のあらゆる熱をすべて吸収でき、損失がないものとし、同時に熱が生成するエネルギーをすべて「光」の形式で放出できると仮定すると、光は熱の高低によって異なる色に変化する。例えば、黒体が受ける熱が500−550℃に等しいとき、暗い赤色になり、1050−1150℃に達すると黄色になる。このため、光源の色の成分は黒体が受ける熱の温度に相対する。したがって、光源の色の成分は黒体が受ける熱の温度に相対する。ただ、色温度はケルビン(K)という色温度の単位で表され、摂氏の温度単位では表されない。黒体が受ける熱がスペクトル中のすべての可視光波を放出させることができるとき、それは白色になり、我々が使用する電球内のタングステンフィラメントはこの黒体に非常に近いものである。色温度計演算法は上述の原理に基づき、熱を受けたタングステンフィラメントが放射する光線の色温度の単位をKで表す。この原理に基づき、あらゆる光線の色温度は上述の黒体が同じ色を発するときに受ける「温度」に相当する。この温度は色度図のプランク軌跡上でその対応点を見つけることができ、黒体の曲線は温度によってのみ変化し、黒体の成分などその他要素によって変化することはないため、どんな成分の黒体でも、同一温度であれば同一曲線となる。
【0028】
自然光源、色、時間、天候、観察方向、季節、地理的位置等の条件の影響で変化が非常に大きく、色彩の評定に極めて不便であるため、国際照明委員会(Commission International de l‘Eclairage、略称CIE)が、1930年に各種の極めて自然光に接近した標準光源を定めている。
【0029】
いわゆる平均演色評価数(general color rendering index、Ra)は、物体がある光源照射下で示される色とその基準光源照射下における色の両者の相対的差異である。その数値の評定法は、基準光源及び試料光源をそれぞれDIN 6169が規定する8つの標準テストカラーまたは標準色標上に照射して逐一比較し、その差異性を数値化したものであり、14個の標準色標または標準色標が国際的に規定されている。差異性が大きければ大きいほど、試料光源の演色性が悪いということを表し、表される色がリアルさを失うことを意味する。国際照明委員会CIEは太陽の演色評価数を100と定めており、各種光源の顕色指数はそれぞれ異なる。例えば、高圧ナトリウムランプの平均演色評価数はRa=23、蛍光灯の平均演色評価数はRa= 60〜90である。
【0030】
また、国際照明委員会は視覚的数学モデルと色のマッチング実験結果に基づき「1931 CIE標準観測者」という規範を制定しており、実際は3本の曲線で表す色の等色関数であるため、図1に示すように、多くの文献中で「CIE 1931標準等色関数」とも呼ばれる。CIE 1931色度図は公称値で表すCIE色度図であり、xは赤色の分量、yは緑色の分量を表す。色度図(chromaticity diagram)中の馬蹄形の範囲内は可視スペクトルのすべての色であり、馬蹄形の辺縁は飽和単色波長である。このシステムは光色座標(x、y、z)で3原色から組み合わせて成るある色の相対比率を表す(図にはxとy座標しかないが、恒等式x+y+z=1からzを導き出す)。中間の白色光は座標が(0.33、0.33)である。色空間辺縁の周りの色はスペクトル色であり、境界はスペクトル色の最大飽和度を表し、境界上の数字はスペクトル色の波長を表し、その輪郭はすべての感知できる色調を含む。あらゆる単色光は舌形の曲線上に位置し、この曲線が単色の軌跡であり、曲線の傍に記載された数字が単色(またはスペクトル色)光の波長値である。自然界中の各種の実際の色はみなこの閉じた曲線内に位置する。
【0031】
図2に黒体放射の異なる色温度の色度図中の分布図を示す。色度図中のプランク曲線の概念は黒体放射から来たものである。その方程式を導く過程は1859年から開始し、ドイツの物理学者キルヒホッフが放射の法則(law of radiation)を提示して、確定した温度下で物体の輻射能に対する放射率または吸収率は表面の性質と関係があることを示した。黒色物質は輻射能に対しより大きな吸収能力を有する。1つの物体があらゆる温度下であらゆる周波数の輻射能を完全に吸収できる場合、この物体は黒体(blackbody)と呼ぶことができる。当然、実際に完全黒体を得ることはできないが、実験においては小さい孔を1つあけた空洞を用いて完全黒体に近似したものとすることができる。外界の輻射能が小孔から空洞に入射された後、この輻射線が複数回の反射を経て、小孔から射出される機会はほぼないため、輻射能が空洞に完全に吸収されたとみなすことができる。この空洞をある温度まで加熱した場合、小孔から射出されるスペクトルを観察すると、このスペクトルは同一温度における黒体の吸収スペクトルと完全に同じはずである。
【0032】
1879年にJ.ステファンが黒体放射の全エネルギー(E)は絶対温度(T)の4乗と正比例する、E=aT、即ちいわゆるステファン・ボルツマンの法則を示した。
【0033】
1893年ヴィーンがさらに輻射能の波長の変化を計算し、波長λの変化は温度と正比例することを発見した。さらにステファン・ボルツマンの法則、及び熱力学における断熱過程の公式を用い、ヴィーンの変位則、Tλmax=定数を得た。
【0034】
1896年ヴィーンが熱力学普遍理論から実験データを考慮かつ分析し、次の半経験的公式を得た。



そのうちρνが輻射エネルギー密度(radiant energy density)、νが周波数、Tが絶対温度、αとβが定数である。
【0035】
1900年、J.W.レイリー、J.H.ジーンズが古典力学と統計物理理論に基づき、黒体放射の公式、即ちレイリー・ジーンズの法則を導き出した。




そのうち、cが光速、k=ボルツマン定数である。但しこの公式は低周波の部分のみ実験曲線と合致し、ν→∞であるとき、ρν→∞へと発散してしまい、実験と明らかに合致しなくなり、即ち古典物理における「紫外破綻」が生じる。
【0036】
後により正確かつ全面的な実験で、ヴィーンの公式はあらゆる実験データによく合致するわけではないことが示された。長波長においてヴィーンの公式は実験と明らかに合致しない。ドイツの物理学者プランク(M. Planck)は1900年末に実験データと合致する公式を見つけた。即ち、


或いは

そのうち、hはプランク定数であり、大きさはh=6.626x10-34 J・sである。プランクの仮定からレイリー・ジーンズの法則、ヴィーンの変位則、ステファン・ボルツマンの法則を解釈し、導き出すことができる。
【0037】
異なる色温度、発光ダイオードチップ及び蛍光粉等の要素がすべて白色光の発光スペクトルの演色性に影響するため、試験過程において何度も各影響要素のクロスチェックが必要であり、高演色性の白色光発光ダイオードを得るためには多くの時間とコストが必要である。本発明の発明者は前述の問題を解決するため、高効率の方式で高演色性の白色光発光ダイオードを得る。上述の黒体放射の原理及びそこから導き出されたプランクの法則(Planck’s law)に基づいて、多種類の蛍光粉を使用し、混合して高演色性の白色光発光ダイオードを迅速に得る製造方法とシステムの創作と発明に至った。
【0038】
本発明の特徴は、2段階の近似を用いて各種蛍光粉の高演色性発光ダイオードにおける配合割合を見つけることにある。第1段階の近似は主に黒体放射に近い各種蛍光粉の混合割合を配合し、第2段階の近似は主に演色性が最も悪い色標から各蛍光粉の配合割合を修正する。
【0039】
図3に本発明の多種類の蛍光粉の濃度を計算して高演色性発光ダイオードを得る方法を示す。第1ステップ31では、まず多種類の蛍光粉の濃度を調整し、発光ダイオードと混光した後のスペクトルを第1色温度下の黒体放射の発光スペクトルに接近させる。上述の発光ダイオードは紫外光発光ダイオード、または紫色光発光ダイオード、青色光発光ダイオードとすることができる。多種類の蛍光粉は2種類または2種類以上の蛍光粉とすることができ、発光ダイオードの色光によって決定する。例えば、紫外光または紫色光発光ダイオードを使用するとき、少なくとも同時に3色の蛍光粉を使用しなければ白色光を作ることができない。青色光発光ダイオードを使用するときは少なくとも2種類の色の蛍光粉を選択して混光しなければ高演色性の白色光を作ることはできない。その後、第2ステップ32では、前述の混光後のスペクトルの各標準色標の反射スペクトル中における演色性が最も悪い色標を見つけ、これにより多種類の蛍光粉の濃度を修正する。一般に混光後のスペクトルは14種類の標準色標に照射したときの反射スペクトルのうち、少なくとも1つの色標の反射スペクトルが相対して低い。この色標の情報を利用して各蛍光粉の濃度を再度調整し、演色性が最も悪い色標の反射スペクトルを改善することができる。
【0040】
図3のフローに基づき、本発明は高演色性発光ダイオードを製造する方法も提供する。詳細なステップを図4に示す。まず、第1ステップ41では、標準スペクトルを計算する。そのうち、標準スペクトルは第1色温度下の黒体放射が射出する可視光スペクトルである。同時に、第2ステップ42では、発光ダイオードの発射スペクトル、第1蛍光粉の発射スペクトル、第2蛍光粉の発射スペクトルを提供する。その後、第3ステップ43では、上述の標準スペクトルにより第1蛍光粉と第2蛍光粉の濃度を調整し、第1混光スペクトルを取得し、第1混光スペクトルを標準スペクトルに接近させる。続いて、第4ステップ44では、第1混光スペクトルの各標準色標における演色性を計算する。その後、第5ステップ45では、演色性が最も悪い色標を見つけ、第1蛍光粉と第2蛍光粉の濃度を修正し、第2混光スペクトルを得る。一般に混光後のスペクトルは、14種類の標準色標に照射したときの反射スペクトルのうち、少なくとも1つの色標の反射スペクトルが比較的低い。この色標の情報を利用して各蛍光粉の濃度を再度調整し、演色性が最も悪い色標の反射スペクトルを改善することができる。図4では、2種類の蛍光粉のみを用いて本発明の実施例を表しているが、同時に第3蛍光粉、第4蛍光粉、第5蛍光粉を使用することもできる。
【0041】
図4のステップに基づき、本発明はさらに高演色性発光ダイオードを製造するシステムも提供する。詳細は図5を参照して説明する。第1データベース51は発光ダイオードの発射スペクトル、第1蛍光粉の発射スペクトル、第2蛍光粉の発射スペクトルを保存するために用いる。混色ユニット52は、第1データベース51中の発光ダイオード、第1蛍光粉、第2蛍光粉の混光スペクトルの計算に用い、そのうち前記混光スペクトルを第1混光スペクトルとする。標準色温度スペクトル生成器53は、第1色温度下の黒体放射が射出する可視光スペクトルを生成するために用いる。スペクトル比較ユニット54は、前記第1混光スペクトルと標準色温度スペクトル生成器53の生成する標準スペクトルを照合するために用いる。スペクトル比較ユニット54が、第1色温度下の黒体放射の発射する可視光スペクトルに前記第1混光スペクトルが接近していると判断すると、前記第1混光スペクトルの情報を次の段階に送る。照合結果が接近していない場合、照合結果が接近するまで混色ユニット52が第1混色スペクトルを計算し直す。
【0042】
図5に示すように、第2データベース55は、各標準色標の反射スペクトルを保存するために用いる。標準色標反射スペクトル生成ユニット56は、前記第2データベース55中の各標準色標の反射スペクトルを読み取り、かつ前記第1混光スペクトルと標準スペクトルに対し、前記第1混光スペクトルの各標準色標反射スペクトル、及び前記標準スペクトルの各標準色標反射スペクトルをそれぞれ生成するために用いる。色標スペクトル比較ユニット57は、第1混光スペクトルの各標準色標反射スペクトル及び標準スペクトルの各標準色標反射スペクトルの照合に用いる。色標スペクトル比較ユニット57の照合結果が、すべての標準色標の演色性が接近しており、かつ点数がすべて設定された公称値に達しているとき(例えば95または97)、第1混光スペクトルは高演色性の白色光であることを表す。色標スペクトル比較ユニット57の照合結果のうち、ある1つまたは2つの色標の演色性が平均値より低い、または設定された公称値より低い場合、色標スペクトル比較ユニット57の照合結果が合格するまで、混色ユニット52に戻って第1混色スペクトルを再度計算する。
【0043】
以下、各関連の図面を参照し、本発明の各最良の実施例を詳細に説明する。図6に高演色性白色光発光ダイオードの製造方法のフローチャートを示す。第1ステップ61では、ある特定の色温度下における黒体放射の可視光スペクトルを計算する。本実施例では、プランク方程式で目標色温度の黒体放射の可視光スペクトルを計算する。


(1)


上述の黒体放射からの発展背景から、レイリー・ジーンズの方程式、ステファン・ボルツマンの方程式、或いはヴィーンの方程式を簡略化した黒体放射のスペクトルとして応用することもできる。目標色温度を設定し、かつプランク方程式(Planck’s Law)で色温度のスペクトルを計算すると(色温度範囲は2500K〜8000Kとできる)、目標色温度の黒体放射の可視光スペクトルが得られる。本ステップにおいて、目標色温度の黒体放射の可視光スペクトルはT(λ)で表す。
【0044】
第2ステップ62では、すでに分かっている発光ダイオードチップの発射スペクトル、第1蛍光粉発射スペクトル、第2蛍光粉発射スペクトルを提供する。2種類以上の蛍光粉があるとき、すべての蛍光粉の発射スペクトルを提供する必要がある。本ステップにおいて、発光ダイオードチップを測定した発射スペクトルはL(λ)で表す。第1蛍光粉を測定した発射スペクトルはP1(λ)で表す。第2蛍光粉を測定した発射スペクトルはP2(λ)で表す。
【0045】
第3ステップ63では、第1ステップで計算したある特定の色温度下における黒体放射の可視光スペクトルに基づき、すべての蛍光粉の濃度を調整し、その後発光ダイオードチップ、第1蛍光粉の濃度、第2蛍光粉の濃度を混合した後の混合発射スペクトルを計算する。計算方式の1つを次の方程式(2)に示す:


(2)
そのうち、混合発射スペクトルはC(λ)で表す。
発光ダイオードチップの発光強度はaで表す。
第1蛍光粉の濃度はbで表す。
第2蛍光粉の濃度はcで表す。
【0046】
上述の方式はそのうちの1つの計算方式であり、本項技術を熟知した者であればその他の方程式を使用して各蛍光粉の濃度を計算することができる。上述の方式に従って計算して得た混合発射スペクトルC(λ)が第1混光スペクトルである。
【0047】
第4ステップ64では第1混光スペクトルの各標準色標における反射スペクトルと演色評価数を計算する。主に目標色温度の黒体放射の可視光スペクトルと第1混光スペクトルまたは混合発射スペクトルの14の標準色標の反射スペクトルの差異性を比較する。比較方式は以下の方程式のとおりである。
【0048】
まず、目標色温度の可視光スペクトルの14の色標の反射スペクトルを計算する。

(3)

そのうちNは各色標の番号を表し、colorcheck(λ)は各色標の反射スペクトルを表す。
【0049】
同時に、混合発射スペクトルC(λ)または第1混光スペクトルの14の色標の反射スペクトルを計算する。

(4)
【0050】
方程式(3)及び(4)から14の標準色標の個別の反射スペクトルと比較を行う。本ステップにおいて、類似の方程式(5)を使用し各色標の計算をすることができる。


(5)
【0051】
第5ステップ65では、演色評価数値(R1〜R14)のうち差異が最大の数値を見つけ、第2ステップ62に戻り、その第1蛍光粉の濃度または第2蛍光粉の濃度、すなわち(b、c)を修正するか、再度新たに蛍光粉を選択する。この方式を使用して第2混光スペクトルを取得することができ、差異が最大のR値を向上することができる。本ステップ65においては、方程式(5)中の14の色標の結果から差異が最大の色標の番号を見つける。この色標の番号について、当初選択した蛍光粉の濃度は調整が必要であることを表し、時には別の種類の蛍光粉に交換が必要であることを表す。このようなループ式の計算を利用し、方程式(5)中で算出された最大の差異値が受け入れ可能な範囲になるまで、または差異値の変化が受け入れ可能な範囲になるまで行う。
【0052】
図7、そして図6のフローチャートに示すように、目標色温度の黒体放射生成器71は、ある特定の色温度の黒体放射の可視光スペクトルを提供することができ、そのうち、色温度の範囲は1500K〜8000Kの間とすることができる。第1データベース72は、各種発光ダイオードチップ及び蛍光粉の発射スペクトルの保存に用いる。長波紫外光発光ダイオードチップの発射範囲は365nm〜380nm、紫色光発光ダイオードチップの発射範囲は380nm〜420nm、青色光発光ダイオードチップの発射範囲は420nm〜470nmである。蛍光粉の発光波長範囲は480〜580nmの間とすることができ、組成はケイ酸塩類、または酸化物系とすることができる。例:
CaSc:Ce(516nm);
(MgCaSrBa)SiO:Eu(525nm);
CaScSi12:Ce(455-507nm);
(Ca1.47Mg1.5Ce0.03)(Sc1.50.5)Si12(455nm);
(Ca2.97Ce0.03)Sc (Si、Ge)12
蛍光粉の発光波長範囲は600-650nmの間であり、主に窒化物系及び硫化物系とする。例:
CaAlSiN:Eu(650nm);
(CaEu)AlSiN(648nm);
(SrCa)AlSiN:Eu(630nm);
SrGa:Eu(645nm)。
【0053】
本発明の技術領域を熟知した者であれば、その他種類の蛍光粉を本発明に応用できることが分かるはずであり、例えばガーネット系、酸窒化物等がある。
【0054】
スペクトル計算ユニット73は第1データベース72中から得た発光ダイオードチップ及び2種類の異なる蛍光粉の発射スペクトルにより、まず蛍光粉の濃度を判断する。スペクトル計算ユニット73により混光スペクトルを得る。図8に発光ダイオードチップと2種類の異なる蛍光粉を混合した混光スペクトルを示す。図8において、曲線Aは発光ダイオードチップの発射スペクトル、曲線B及び曲線Cは蛍光粉の発射スペクトル、曲線Dは混合後の混合発射スペクトルを表す。
【0055】
スペクトル比較ユニット74は目標色温度の黒体放射の可視光スペクトルと混光スペクトルのスペクトル相似度を比較する。図9に目標色温度の黒体放射の可視光スペクトルと混合スペクトルの比較図を示す。図9において、曲線Eは目標色温度の黒体放射の可視光スペクトルであり、曲線Fは混合発射スペクトルである。2本のスペクトルを重ね合わせる方式でスペクトルの相似度を判断し、白色光混光スペクトルと目標色温度の黒体放射の可視光スペクトルの近似度を高める。混光スペクトルがスペクトル照合の相似性を達する(「はい」)と、適切な白色光発射スペクトルが得られる。混合発射スペクトルがスペクトル照合の相似性を達しない(「いいえ」)と、目標色温度の黒体放射の可視光スペクトルと混合発射スペクトルのスペクトル照合の相似性が達せられるまで、蛍光粉の濃度の調整76または蛍光粉の再選択77が必要となる。
【0056】
図10に本発明が同時に提供する高演色性白色光発光ダイオードを製造するシステムのブロック図を示す。目標色温度の黒体放射生成器100がある特定色温度の黒体放射の可視光スペクトルを提供する。そのうち、色温度の範囲は1500K〜8000Kの間とすることができる。第1データベース101が各種発光ダイオードチップ及び蛍光粉の発射スペクトルの保存に用いられる。長波紫外光発光ダイオードチップの発射範囲は365nm〜380nm、紫色光発光ダイオードチップの発射範囲は380nm〜420nm、青色光発光ダイオードチップの発射範囲は420nm〜470nmである。蛍光粉の発光波長範囲は480-580nmの間とし、組成はケイ酸塩類または酸化物系とすることができる。例:
CaSc:Ce(516nm);
(MgCaSrBa)SiO:Eu(525nm);
CaScSi12:Ce(455-507nm);
(Ca1.47Mg1.5Ce0.03)(Sc1.50.5)Si12(455nm);
(Ca2.97Ce0.03)Sc (Si,Ge)12
及び蛍光粉の発光波長範囲は600-650nmの間とし、主に窒化物系及び硫化物系とすることができる。例:
CaAlSiN:Eu(650nm);
(CaEu)AlSiN(648nm);
(SrCa)AlSiN:Eu(630nm);
SrGa:Eu(645nm)。
【0057】
本発明の技術領域を熟知した者であれば、その他種類の蛍光粉を本発明に応用できることが分かるはずであり、例えばガーネット系、酸窒化物等がある。
【0058】
スペクトル計算ユニット102は第1データベース111中から得た発光ダイオードチップ及び2種類の異なる蛍光粉の発射スペクトルを目標色温度の黒体放射生成器100が生成する目標色温度の黒体放射の可視光スペクトルと比較することで蛍光粉の濃度を判断する。スペクトル計算ユニット102により混光スペクトルを得る。
【0059】
第2データベース103は各種標準色標の反射スペクトルのデータを保存する。標準色標の反射スペクトルと演色評価数計算ユニット104は第2データベース103と目標色温度の黒体放射の可視光スペクトルから目標色温度の黒体放射の可視光スペクトルの14の色標の反射スペクトル及び演色評価数値R1〜R14を算出することができる。
【0060】
混光スペクトルの反射スペクトルと演色評価数計算ユニット105は第2データベース103とスペクトル計算ユニット102が計算した混光スペクトル中から混光スペクトルの14の色標の反射スペクトル及び演色評価数値R1〜R14を算出することができる。
【0061】
比較ユニット107は上述の標準色標の反射スペクトルと演色評価数計算ユニット104及び混光スペクトルの反射スペクトルと演色評価数計算ユニット105の計算結果から14の色標の反射スペクトル及び演色評価数値R1〜R14を個別に比較する。比較ユニットにより前述の2つのスペクトルの14の色標における演色評価数値R1〜R14及び平均演色評価数値Raを得て、そのうちR1〜R14の中から最も悪いR値を見つける。14の色標の各演色評価数値R1〜R14及び平均演色評価数値Raがすべて目標評価数値に達している場合、適切な白色光発射スペクトルが得られる。14の色標の個別の演色評価数値R1〜R14及び平均演色評価数値Raのうち1つから数個の数値が目標評価数値に達していない(「いいえ」)場合、目標評価値に達するまで、蛍光粉の濃度の調整108か、蛍光粉の再選択109が必要である。
【0062】
図12に本発明の高演色性白色光発光ダイオードを製造するシステムのブロック図を示す。目標色温度の黒体放射のスペクトル生成器110は、ある特定色温度の黒体放射の可視光スペクトルを提供することができ、そのうち色温度の範囲は1500K〜8000Kの間とすることができる。
【0063】
第1データベース111は各種発光ダイオードチップ及び蛍光粉の発射スペクトルの保存に用いる。長波紫外光発光ダイオードチップの発射範囲は365nm〜380nm、紫色光発光ダイオードチップの発射範囲は380nm〜420nm、青色光発光ダイオードチップの発射範囲は420nm〜470nmである。蛍光粉の発光波長範囲は480-580nmの間とし、組成はケイ酸塩類、または酸化物系とすることができる。例:
CaSc:Ce(516nm);
(MgCaSrBa)SiO:Eu(525nm);
CaScSi12:Ce(455-507nm);
(Ca1.47Mg1.5Ce0.03)(Sc1.50.5)Si12(455nm);
(Ca2.97Ce0.03)Sc (Si,Ge)12
及び蛍光粉の発光波長範囲は600-650nmの間とし、主に窒化物系及び硫化物系とすることができる。例:
CaAlSiN:Eu(650nm);
(CaEu)AlSiN(648nm);
(SrCa)AlSiN:Eu(630nm);
SrGa:Eu(645nm)。
【0064】
本発明の技術領域を熟知した者であれば、その他種類の蛍光粉を本発明に応用できることが分かるはずであり、例えばガーネット系、酸窒化物等がある。
【0065】
スペクトル計算ユニット112は第1データベース111中から得た発光ダイオードチップ及び2種類の異なる蛍光粉の発射スペクトルから蛍光粉の濃度を判断する。スペクトル計算ユニット112により混光スペクトルを得る。
【0066】
スペクトル比較ユニット113は目標色温度の黒体放射の可視光スペクトルと混光スペクトルのスペクトル相似度を比較する。比較結果を第1段階の近似114とする。第1段階の近似の結果が「はい」の場合、次の段階へ進む。第1段階の近似の結果が「いいえ」の場合、スペクトル計算ユニット112に戻り、第1段階の近似114の結果が「はい」になるまで、その他の蛍光粉の濃度を探す。
【0067】
第2データベース115は14の標準色標の反射スペクトルのデータを保存する。標準色標の反射スペクトル演色性計算ユニット116は目標色温度の黒体放射のスペクトル生成器110と第2データベース115から目標色温度の黒体放射の可視光スペクトルの14の色標の反射スペクトル及び演色評価数値R1〜R14を算出することができる。
【0068】
混光スペクトルの反射スペクトル演色性計算ユニット118は混光スペクトルと第2データベース115から混光スペクトルの14の色標の反射スペクトル及び演色評価数値R1〜R14を計算する。
【0069】
比較ユニット129は標準色標の反射スペクトル演色性計算ユニット116と混光スペクトルの反射スペクトル演色性計算ユニット118が生成する結果を比較する。比較ユニット117から前述の2つのスペクトルの14の色標における演色評価数値R1〜R14及び平均演色評価数値Raを取得し、その比較結果を第2段階の近似119とする。14の色標の各演色評価数値R1〜R14及び平均演色評価数値Raがすべて目標評価数値に達した場合(「はい」)、ハイレベルの近似が得られる。14の色標の個別の演色評価数値R1〜R14及び平均演色評価数値Raのうち1つまたは数個の数値が目標評価数値に達していない(「いいえ」)場合、スペクトル計算ユニット112に戻り蛍光粉の濃度を調整するか蛍光粉を再度選択する必要がある。
【0070】
本発明は上述の実施例で述べた2種類の蛍光粉の混合のほか、前述の混合する蛍光粉の数量を3種類に増加することもでき、本発明は実際の応用上の必要性に合わせることができる。当然、実際の運用時は上述の2種類や3種類の蛍光粉の実施方式に限定されず、必要時は3種類以上の蛍光粉を使用して使用者の必要性を満たすことができる。
【0071】
上述の実施例から分かるように、本発明の手段はPlanck方程式を使用して設定温度の黒体放射のスペクトルを計算し、このスペクトルを用いて多種類の蛍光粉の第1段階近似濃度を算出することができる。各蛍光粉の第1段階近似濃度を調整した後発光ダイオード混色後の発光スペクトルを算出し、かつこれに基づき発光スペクトルの標準色標中における演色性を計算する。演色性が最も悪い色標から各蛍光粉の濃度を修正し、最もよい演色性の発光ダイオードを得ることができる。
【0072】
本発明の手段を利用し、高演色性の発光ダイオードを迅速に製造することができ、かつ試行錯誤の時間コストを大幅に削減することができる。
【0073】
本発明の手段およびその効果から、本発明は多くの利点が得られる。まず、試行錯誤の方式で蛍光粉の配合割合を見つける必要がない。同時に、多種類の蛍光粉を配合するとき、研究開発の時間を大幅に減らすことができる。
【0074】
当然、上述の実施例中の描写に基づき、本発明は多くの修正や差異が可能である。このため、後付の特許請求の範囲から理解する必要があり、上述の詳細な描写のほか、本発明はさらに幅広いその他の実施例において実施が可能である。上述は本発明の最良の実施例であり、本発明の特許請求の範囲を限定しない。その他本発明が開示する要旨を逸脱しない同等の効果を持つ変更や修飾はすべて本発明の特許請求の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0075】
0 完成
31〜32 ステップ
41〜45 ステップ
51 第1データベース
52 混色ユニット
53 標準色温度スペクトル生成器
54 スペクトル比較ユニット
55 第2データベース
56 標準色標反射スペクトル生成ユニット
57 色標スペクトル比較ユニット
61〜65 ステップ
71 目標色温度の黒体放射生成器
72 第1データベース
73 スペクトル計算ユニット
74 スペクトル比較ユニット
76 蛍光粉の濃度の調整
77 蛍光粉の再選択
100 目標色温度の黒体放射生成器
101 第1データベース
102 スペクトル計算ユニット
103 第2データベース
104 標準色標の反射スペクトルと演色評価数計算ユニット
105 混光スペクトルの反射スペクトルと演色評価数計算ユニット
106 比較ユニット
108 蛍光粉の濃度の調整
109 蛍光粉の再選択
110 目標色温度の黒体放射のスペクトル生成器
111 第1データベース
112 スペクトル計算ユニット
113 スペクトル比較ユニット
114 第1段階の近似
115 第2データベース
116 標準色標の反射スペクトル演色性計算ユニット
117 比較ユニット
118 混光スペクトルの反射スペクトル演色性計算ユニット
119 第2段階の近似

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高演色性発光ダイオードを製造する方法であって、
第1色温度下の黒体放射が射出する可視光スペクトルである標準スペクトルを計算し、
発光ダイオードの発射スペクトル、第1蛍光粉の発射スペクトル、第2蛍光粉の発射スペクトルを提供し、
前記標準スペクトルにより前記第1蛍光粉と前記第2蛍光粉の濃度を調整して第1混光スペクトルを取得し、
前記第1混光スペクトルの各標準色標における演色性を計算し、
演色性が最も悪い色標を見つけて前記第1蛍光粉と前記第2蛍光粉の濃度を修正し、第2混光スペクトルを取得するというステップを含むことを特徴とする、高演色性発光ダイオードを製造する方法。
【請求項2】
高演色性発光ダイオードを製造するシステムであって、
第1色温度下の黒体放射が射出する可視光スペクトルである標準スペクトルを計算するために用いる手段と、
発光ダイオードの発射スペクトル、第1蛍光粉の発射スペクトル、第2蛍光粉の発射スペクトルを提供するために用いる手段と、
前記標準スペクトルを用い前記第1蛍光粉と前記第2蛍光粉の濃度を調整して第1混光スペクトルを取得する手段と、
前記第1混光スペクトルの各標準色標における演色性を計算する手段と、
演色性が最も悪い色標を見つけて前記第1蛍光粉と前記第2蛍光粉の濃度を修正し、第2混光スペクトルを取得する手段と、
を含むことを特徴とする、高演色性発光ダイオードを製造するシステム。
【請求項3】
高演色性発光ダイオードを製造するシステムであって、
発光ダイオードの発射スペクトル、第1蛍光粉の発射スペクトル、第2蛍光粉の発射スペクトルの保存に用いる第1データベースと、
各標準色標の反射スペクトルの保存に用いる第2データベースと、
前記第1データベース中の前記発光ダイオード、前記第1蛍光粉、前記第2蛍光粉の混光スペクトルの計算に用い、そのうち前記混光スペクトルが第1混光スペクトルである混色ユニットと、
第1色温度下の黒体放射が射出する可視光スペクトルの生成に用いる標準色温度スペクトル生成器と、
前記第1混光スペクトルと前記標準色温度スペクトル生成器の生成する標準スペクトルの照合に用いるスペクトル比較ユニットと、
前記第2データベース中の各標準色標の反射スペクトルを読み取り、かつ前記第1混光スペクトルと前記標準スペクトルに対し、前記第1混光スペクトルの各標準色標反射スペクトルと前記標準スペクトルの各標準色標反射スペクトルをそれぞれ生成する標準色標反射スペクトル生成ユニットと、
前記第1混光スペクトルの各標準色標反射スペクトルと前記標準スペクトルの各標準色標反射スペクトルの照合に用いる色標スペクトル比較ユニットと、
を含むことを特徴とする、高演色性発光ダイオードを製造するシステム。
【請求項4】
多種類の蛍光粉の濃度を計算して高演色性発光ダイオードを得る方法であって、
多種類の蛍光粉の濃度を調整して発光ダイオードの混光後のスペクトルを第1色温度下の黒体放射の発光スペクトルに接近させ、
前記混光後のスペクトルの各標準色標の反射スペクトル中において演色性が最も悪い色標を見つけて前記多種類の蛍光粉の濃度を修正する、
というステップを含むことを特徴とする、多種類の蛍光粉の濃度を計算して高演色性発光ダイオードを得る方法。
【請求項5】
2段階の近似を用いて各種蛍光粉の高演色性発光ダイオードにおける配合割合を見つける方法であって、
黒体放射に近い各種蛍光粉の混合割合を見つけ、
演色性が最も悪い色標から前記各種蛍光粉の配合割合を修正する、
というステップを含むことを特徴とする、2段階の近似を用いて各種蛍光粉の高演色性発光ダイオードにおける配合割合を見つける方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−67961(P2010−67961A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−190269(P2009−190269)
【出願日】平成21年8月19日(2009.8.19)
【出願人】(509120632)先進開發光電股▲ふん▼有限公司 (17)
【Fターム(参考)】