説明

高濃度石炭−水スラリーの製造方法

【課題】残細胞の処理及び水処理が不要で微細藻を培地ごと利用することができ、しかもエネルギーロスの少ない、高濃度石炭−水スラリーの製造方法を提供する。
【解決手段】湿式ミル4内に、石炭1、微細藻培養槽3の内容物をそのまま投入するとともに、必要量の水2を投入して石炭1を粉砕することにより、石炭ガス化炉7燃料或いはボイラ燃料として好適な、高濃度石炭−水スラリー5を製造する。また、得られる高濃度石炭−水スラリー5に、微細藻培養槽3の内容物をそのまま或いはこれを濃縮処理して得られる微細藻濃縮液を混合添加することにより、スラリーを安定化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細藻を育成培地ごと添加する、高濃度石炭−水スラリーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
石炭は固体であるため、液体に比べハンドリングが複雑なこと、粉塵に対する環境対策が必要なこと、貯炭場等の広い用地を要する等の問題があり、石炭をクリーンで重油並に利用する手段として、石炭スラリーが開発された。中でも、石炭と水を混合した石炭−水スラリーは、自然発火や粉塵飛散の問題もなく、ハンドリングし易い流体として取扱うことができる利点を持っている。高濃度石炭−水スラリーは、石炭の粒度分布や分散剤等の添加剤の開発によって、加える水を少なくしても流動性と安定性が保たれ、脱水することなく直接燃焼することが可能であり、ごく少量の添加剤を加えることによって、特定の粒度分布を有する石炭粒子が、約70%の重量濃度で均一に分散することが知られている。
【0003】
一般的傾向として、炭化度が高く、固有水分が低く、酸素含有量の少ない石炭が高濃度石炭−水スラリーを作るのに適している。高濃度石炭−水スラリーの製造は、石炭をスラリーに適した粒度分布に粉砕し、適正な添加剤を選定し、石炭と水と添加剤を適切に混合することにより、高濃度かつ低粘性で安定性に優れる高濃度石炭−水スラリーを製造することが可能となる。
【0004】
石炭−水スラリーの製造プロセスには、原料石炭を予め10mm以下程度に粗砕した石炭を、乾式粉砕して所望の粒度分布となるように調製した後、粉砕した石炭と水と添加剤を混合することにより石炭−水スラリーを製造する方法(乾式法)と、予め粗砕した石炭と水と添加剤を湿式ミルに投入し、石炭の粉砕と水、添加剤との混合を一つの粉砕機で行う方法(湿式法)とがある。
【0005】
石炭−水スラリーの高濃度化・安定化を図るには、粉砕された石炭粒子の粒子径分布はシャープな分布よりも幅の広い分布の方が好ましく、通常、最大粒子径150〜500μm、平均粒子径10〜20μm、74μm以下の粒子が80%以上、数μm以下の微粒子が10%程度である。粒子径74μm以下の石炭粒子の間に入り込んだ、粒子径数μm以下の微粒子が、石炭粒子を動かすコロの役割となることで、流動性及び高濃度化が図られている。石炭−水スラリーの流動特性は、炭種、石炭濃度、添加剤及び流動状態(レオロジー特性)等によっても変化するが、見掛け粘度は概略1000mPa・s(室温、剪断速度=100/s)である。
【0006】
高濃度石炭−水スラリーは、燃料供給が容易であるため、火力発電所等のボイラ燃料として使用実績があり、その他に石炭ガス化炉の燃料としても利用されている。ガス化は、石炭を部分燃焼させて一酸化炭素と水素に変換させる方法であり、石炭ガス化燃料には、炭化度が低く酸素含有量の多い石炭が適している。しかしながら、炭化度が低く酸素含有量の多い石炭の場合、添加剤が石炭表面に吸着しにくいため、安定な高濃度石炭−水スラリーを作り難い。しかも、スラリー中の石炭濃度が50%程度と低いため、ガス化炉内で大量の水を蒸発することになり、ガス化効率が低くなるという問題がある。さらに、スラリーの安定性を向上させるために、安定剤として、モンモリロナイト等の粘土鉱物やキサンタンガム等の多糖類をごく少量添加するが、これらを添加することによってスラリー粘性が高くなり、石炭濃度を高くすることができないという問題がある。
【0007】
混焼用のバイオマス燃料としてユーカリやオリーブ等の固体バイオマスの添加が考えられる。しかし、石炭の湿式粉砕時に石炭よりも柔らかい固体バイオマスを添加しても、固体バイオマスを石炭微粒子の粒子径まで粉砕するのは容易ではなく、固体バイオマスを微粒子まで粉砕しようとすると、石炭粒子の粒度分布が狭くなりすぎてしまうことでスラリー粘度が高くなる。また、固体バイオマスと石炭の混合粉砕では、固体バイオマスが石炭よりも柔らかいため、固体バイオマスが衝撃を吸収することで石炭に対する粉砕動力が低減し、微細粒子径が減少するため、スラリー流動性が低下する要因ともなる。
【0008】
特許文献1には、炭酸ガス含有廃ガスを発生する火力発電所等の工場に、微細藻類池を併設し、当該廃ガスから分離した炭酸ガスを、光合成を利用して微細藻類に固定し、得られる微細藻類を乾燥・粉砕したものを、別途調製した石炭−水スラリーに添加している。第2図では、微細藻類を脱水機で水分約30%に調整した湿潤微細藻類に界面活性剤を加えミルで十分混合したものを、別途調製した石炭−水スラリーに添加・混合し、燃料として使用することを開示している。
【0009】
しかしながら、微細藻培養槽における微細藻の濃度は、微細藻が光合成するために、極めて低濃度に設定されている。従って、特許文献1に開示された方法においては、微細藻乾燥粉末を得るための脱水・乾燥工程で動力・熱が必要となり、多大なエネルギーロスが生じることになるばかりか、微細藻類を取り出した後に残る培養液等を排水する場合に、今後の規制状況によっては、残細胞の処理及び水処理が必要となる問題がある。また、別途調製された石炭−水スラリーに添加・混合するためには、スラリー濃度に影響を及ぼさないよう、水分量の少ない湿潤微細藻類を添加する必要があり、かかる微細藻類の調製工程が煩雑となるばかりか、脱水後の水処理の問題も生じる。
【0010】
また、培養槽で培養された微細藻を処理する方法として、微細藻をスラリー化したバイオスラリー燃料として燃焼させることも提案されている(例えば、特許文献2参照)。しかしながら、微細藻30%に対して70%の水を加えた組成のスラリーを燃焼させる方法であるため、安定燃焼が難しく、エネルギー利用効率も低い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平4−110395号公報
【特許文献2】特開平9−042648号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明はこのような事情の下になされたものであり、残細胞の処理及び水処理が不要で微細藻を培地ごと利用することができ、しかもエネルギーロスの少ない、高濃度石炭−水スラリーの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するため、本発明者等は鋭意検討した結果、湿式ミルを用いて高濃度石炭−水スラリーを製造する方法において、スラリー製造時の水を微細藻培養槽の培地で代替することにより、残細胞の処理及び培養液等の水処理が不要となり、しかも、微細藻類には細胞形状が球形に近く、石炭微粒子と同程度の大きさの微細藻類も存在するため、これらの微細藻がスラリー中で石炭微粒子と同様の働きをすることに着目し、本発明に到達した。
【0014】
すなわち、本発明は、以下の通りである。
(1)湿式ミルを用いて、高濃度石炭−水スラリーを製造する方法において、
湿式ミル内に、石炭と、微細藻培養槽の内容物をそのまま投入するとともに、必要量の水を投入して石炭を粉砕することを特徴とする、高濃度石炭−水スラリーの製造方法。
(2)湿式ミルを用いて、高濃度石炭−水スラリーを製造する方法において、
湿式ミル内に、石炭と、微細藻培養槽の内容物を濃縮処理して得られる微細藻濃縮液を投入するとともに、前記濃縮処理で得られる水を含む必要量の水を投入して石炭を粉砕することを特徴とする、高濃度石炭−水スラリーの製造方法。
(3)前記水が、用水及び/又は微細藻培養槽の内容物の濃縮処理で得られる水であることを特徴とする、前記(1)又は(2)に記載の高濃度石炭水スラリーの製造方法。
(4)前記微細藻が球形細胞を有する微細藻であることを特徴とする、前記(1)又は(2)に記載の高濃度石炭−水スラリーの製造方法。
(5)前記微細藻が、炭酸ガス含有廃ガスを発生する施設に微細藻培養槽を併設し、当該炭酸ガスを、光合成を利用して微細藻に固定して得られる微細藻であることを特徴とする、前記(1)〜(4)いずれかに記載の高濃度石炭−水スラリーの製造方法。
(6)前記(1)又は(2)に記載の方法で製造した高濃度石炭−水スラリーに、微細藻培養槽の内容物をそのまま或いはこれを濃縮処理して得られる微細藻濃縮液を混合添加することを特徴とする、高濃度石炭−水スラリーの製造方法。
(7)前記高濃度石炭−水スラリーがガス化燃料或いはボイラ燃料であることを特徴とする、前記(1)〜(6)いずれかに記載の高濃度石炭−水スラリーの製造方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明の高濃度石炭−水スラリーの製造方法によれば、微細藻を育成培地ごと用いるため、ガス化燃料やボイラ燃料への微細藻の利用が容易になるとともに、石炭微粒子に加えて微細藻(1〜10μm)が流動性に寄与するため、得られるスラリーの流動性が向上する。それにより、スラリーの高濃度が可能となり、スラリー中の水分が減少し蒸発潜熱が低減することで、ガス化熱効率や燃焼効率が向上する。
【0016】
さらに石炭のみで必要となる微粒子の量を製造調整するには、その分粉砕機の動力が必要となるが、本発明の方法では微細藻がこの石炭微粒子量を補うため、粉砕機動力を減らす効果が生まれる。
【0017】
また、石炭−水スラリー製造用の水を、培地を含む微細藻で代替することにより、微細藻の脱水・乾燥工程が不要となるため、微細藻の後処理という観点から見て、エネルギー利用効率が格段に向上する。添加された微細藻は、ガス化炉内で燃焼し、水分はガス化剤(C+HO→CO+H)として消費され、余剰水分は水蒸気となり、一方、細胞分泌物質及び栄養塩は還元性微量成分ガス(N→NH、S→HS)となりガス精製過程で処理されるため、残細胞の処理(培地の殺菌)及び水処理といった問題も解決される。
【0018】
微細藻は、細胞を保護するため高粘性物質を生産する種類が存在しており、当該物質が石炭表面に吸着し、石炭粒子の親水性が向上することにより、石炭粒子の分散状態を維持するために添加していた添加剤が不要となる。
【0019】
微細藻培養槽を、炭酸ガス含有廃ガスを発生する火力発電所等の施設に併設し、当該廃ガス中の炭酸ガスを微細藻に固定し、得られる微細藻を含む培養槽内容物をそのまま添加することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本実施の形態に係る高濃度石炭−水スラリーの製造方法を示す説明図である。
【図2】本実施の形態に係る高濃度石炭−水スラリーの製造方法を示す説明図である。
【図3】本実施の形態に係る高濃度石炭−水スラリーの製造方法を示す説明図である。
【図4】本実施の形態に係る高濃度石炭−水スラリーの製造方法を示す説明図である。
【図5】微細藻クロロコックムの電子顕微鏡写真である。
【図6】高濃度石炭−水スラリーの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施の形態を以下に説明するが、本発明はこれらの実施の形態に限定されるものではない。
【0022】
(実施の形態1)
図1及び図2は、本発明の実施の形態である高濃度石炭−水スラリーの製造方法を示す説明図である。本実施の形態に係る高濃度石炭−水スラリーの製造方法では、原料炭を予め10mm以下程度に粗砕した石炭1、スラリー濃度調整用の水2、微細藻培養槽3の内容物をポンプP1により、ボールミル、ロッドミル等の湿式ミル4に投入した後、湿式粉砕して高濃度石炭−水スラリー5を得る。
【0023】
原料炭としては、瀝青炭、亜瀝青炭が好適である。石炭の灰分が多い場合は、浮選法、水中造粒法等で脱灰したものを用いることもできる。
【0024】
湿式ミル4内に投入する粗砕炭1の量は、石炭の炭種、石炭濃度及び流動状態等によって変化するため、所望の粘度が得られるような石炭濃度を予め設定しておき、設定した濃度になるように、粗砕炭1、微細藻培養槽3の内容物をそのまま、及び必要量の水を投入する。微細藻培養槽3の内容物中の水分で、石炭−水スラリーの媒体となる水の量を賄うことができる場合は、微細藻培養槽3の内容物をそのまま湿式ミル内に投入するだけでも良い。湿式ミル内には、必要に応じて、ナフタレンスルホン酸、それらの塩またはこれらの脂肪族アルデヒド付加縮合物、ポリスチレンスルホン酸塩等の分散剤や、粘土鉱物、カルボキシメチルセルロース、キサンタンガム等の安定剤等の添加剤を添加することもできる。
【0025】
所望の湿式ミル運転条件に従い、石炭を所定時間湿式粉砕することにより、石炭濃度約50〜70%で、見掛け粘度約1000mPa・s(室温、剪断速度=100/s)以下の高濃度石炭−水スラリーを製造する。そして、得られる石炭−水スラリー5を、スラリー貯槽6に貯留し、ポンプP2によりガス化炉7またはボイラ8に投入する。これにより、投入した培養液中の水分は、前述のようにガス化剤として消費される。余剰水分はガス化炉7またはボイラ8内での燃焼で水蒸気として排出されるため、燃焼に悪影響を及ぼす恐れがない。また、スルホン酸基を含む分散剤や安定剤の添加量が減少することにより排ガス中のSOxを減らす効果も期待できる。
【0026】
微細藻培養槽3の中は、水、微量の栄養塩(窒素、リン酸、カリウム分等)、極く低濃度の微細藻、微量の細胞分泌物質が存在する。本発明では、これらを全て石炭−水スラリー製造用の湿式ミル内に添加し、培養液中の水分をスラリー媒体として利用し、微細藻を石炭微粒子と同様に扱うので、排水処理や残細胞の処理が不要になると共に、微細藻を混燃用バイオマス燃料として扱う場合よりも微細藻の特性を有効利用し、かつ、エネルギーロスを少なくすることができる。
【0027】
本発明で用いる微細藻類としては、石炭微粒子と同程度の大きさ(1〜10μm)のものが好ましく、特に球形細胞を有するものが好ましい。かかる微細藻類としては、ナンノクロロプシス、クロロコックム、アファノカプサ、クラミドモナス、クロレラ、シネココッカス、ミクロキスティス等を挙げることができる。これらの微細藻は、淡水で生育する微細藻であるため、培地(淡水)ごと湿式ミル内に添加した場合でも、石炭−水スラリーの分散安定性を損ねる恐れがない。図5に、淡水性微細藻類であるクロロコックムの電子顕微鏡写真を示す。
【0028】
上記した微細藻類のうち、アファノカプサ、クラミドモナス等は、高粘性物質(多糖類)を生産する微細藻である。これらの微細藻を用いることにより、石炭−水スラリーを安定させるための添加剤、特に安定剤を減少させ、或いは、無くすことができる。
【0029】
図6は、本発明の高濃度石炭−水スラリーの製造方法で得られるスラリーの説明図である。スラリーは、水(培地からの水が主体)、石炭粒子、石炭微粒子及び微細藻等を含む組成物であり、石炭粒子(74μm以下)の間に、石炭微粒子(1〜10μm)及び微細藻(1〜10μm)が入り込んで、石炭粒子を動かすコロの役割を果たすことによって、スラリーの安定性が向上する。
【0030】
(実施の形態2)
図3及び図4は、本発明の別の実施の形態を示した図である。本実施の形態に係る高濃度石炭−水スラリーの製造方法では、原料炭を予め10mm以下程度に粗砕した石炭1、微細藻培養槽3の内容物を濃縮処理して得られる微細藻濃縮液31、前記濃縮処理で得られる水32、スラリー濃度調整用の水2を、湿式ミル4内に投入した後、実施の形態1と同様、湿式粉砕して高濃度石炭−水スラリー5を得る。濃縮処理で得られる水32及びスラリー濃度調整用の水2を投入し、微細藻濃縮液31中の水分のみでは賄い切れない石炭−水スラリーの媒体となる必要量の水を賄う。この場合、濃縮処理で得られる水32を含む必要量の水を湿式ミル内に投入して石炭を粉砕するので、微細藻の濃縮処理で発生する水の排水処理が不要となる。
【0031】
本実施の形態でも、湿式ミル内には、必要に応じて、分散剤、安定剤等の添加剤を添加することができる。本実施の形態では、石炭の粉砕時に投入する微細藻量を調節するのが容易であり、しかも培地ごと投入するのに比べて多量の微細藻を投入できる利点がある。
【0032】
微細藻培養槽の内容物の濃縮処理方法としては、公知の濃縮方法を採用することができる。濃縮液31における微細藻濃度は、石炭−水スラリー濃度(石炭濃度約50〜70%)及び添加剤量を考慮すると、水分量を極端に減らす必要はなく、培養液中の微細藻濃度は低濃度(例えば0.2〜1%程度)であっても良い。
【0033】
そして、得られる石炭−水スラリー5を、スラリー貯槽6に貯留し、ポンプP2によりガス化炉7またはボイラ8に投入する。
【0034】
上記の実施の形態1、2で説明した、湿式ミルを用いて高濃度石炭−水スラリーを製造する方法においては、高濃度石炭−水スラリーを製造した後、得られるスラリーに、微細藻培養槽の内容物をそのまま或いはこれを濃縮処理して得られる微細藻濃縮液を、混合添加することもできる。こうすることで、湿式ミル内で製造した高濃度石炭−水スラリーにさらに微細藻を添加するので、より安定性の高い高濃度石炭−水スラリーを製造することができる。添加した微細藻は、ガス化炉或いはボイラ内で容易に燃焼可能である。
【実施例】
【0035】
以下、本発明の高濃度石炭−水スラリーの製造方法の一実施例を説明する。
【0036】
(実施例1)
瀝青炭の粗砕炭1000部、微細藻培養槽の内容物(微細藻濃度:約0.1%)1000部、及び分散剤5部を、湿式ミル内に投入し、74μm以下の石炭粒子が80%程度になるように粉砕する。得られる石炭−水スラリーをスラリー貯槽に貯留し、ボイラ又は石炭ガス化炉に供給し燃料として利用する。
【0037】
(実施例2)
亜瀝青炭の粗砕炭1000部、微細藻培養槽の内容物を、濃縮処理して得た微細藻濃縮液(微細藻濃度:約0.2%)1000部、及び分散剤5部を湿式ミル内に投入し、実施例1と同様にして、石炭−水スラリーを得る。かかる濃縮処理法としては加圧ろ過、遠心分離、真空加熱などの方式による。得られる石炭−水スラリーを、スラリー貯槽に貯留し、ボイラ又は石炭ガス化炉に供給し燃料として利用する。
【0038】
(実施例3)
亜瀝青炭の粗砕炭1000部、実施例2と同様の方法で得られる微細藻濃縮液(微細藻濃度:約1%)200部、調整用の水700部、及び分散剤5部を湿式ミル内に投入し、実施例1と同様にして、石炭−水スラリーを得る。得られる石炭−水スラリーを、スラリー貯槽に貯留し、ボイラ又は石炭ガス化炉に供給し燃料として利用する。
【0039】
(実施例4)
実施例1で得られる石炭水スラリー1900部を、湿式ミルからスラリー貯槽へ移送する際の配管中に、実施例3で得られる微細藻濃縮液(微細藻濃度:約1%)100部を添加混合した後、この石炭−水スラリーをスラリー貯槽に貯留する。ボイラ又は石炭ガス化炉に供給し燃料として利用する。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明によれば、微細藻を培地のまま用いるため、湿式燃料供給のガス化炉に対してバイオマス利用が容易になるとともに、製造される石炭−水スラリーを各種燃料に好適に利用することができる。微細藻培養槽の内容物の処理法として、極めて有用な方法である。
【符号の説明】
【0041】
1 粗砕炭
2 水
3 培養槽
4 湿式ミル
5 石炭−水スラリー
6 スラリー貯槽
7 ガス化炉
8 ボイラ
31 微細藻濃縮液
32 水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
湿式ミルを用いて、高濃度石炭−水スラリーを製造する方法において、
湿式ミル内に、石炭と、微細藻培養槽の内容物をそのまま投入するとともに、必要量の水を投入して石炭を粉砕することを特徴とする、高濃度石炭−水スラリーの製造方法。
【請求項2】
湿式ミルを用いて、高濃度石炭−水スラリーを製造する方法において、
湿式ミル内に、石炭と、微細藻培養槽の内容物を濃縮処理して得られる微細藻濃縮液を投入するとともに、前記濃縮処理で得られる水を含む必要量の水を投入して石炭を粉砕することを特徴とする、高濃度石炭−水スラリーの製造方法。
【請求項3】
前記水が、用水及び/又は微細藻培養槽の内容物の濃縮処理で得られる水であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の高濃度石炭水スラリーの製造方法。
【請求項4】
前記微細藻が球形細胞を有する微細藻であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の高濃度石炭−水スラリーの製造方法。
【請求項5】
前記微細藻が、炭酸ガス含有排ガスを発生する施設に微細藻培養槽を併設し、当該炭酸ガスを、光合成を利用して微細藻に固定して得られる微細藻であることを特徴とする、請求項1〜4いずれかに記載の高濃度石炭−水スラリーの製造方法。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の方法で製造した高濃度石炭−水スラリーに、微細藻培養槽の内容物をそのまま或いはこれを濃縮処理して得られる微細藻濃縮液を混合添加することを特徴とする、高濃度石炭−水スラリーの製造方法。
【請求項7】
前記高濃度石炭−水スラリーがガス化燃料或いはボイラ燃料であることを特徴とする、請求項1〜6いずれかに記載の高濃度石炭−水スラリーの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−180481(P2012−180481A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−45598(P2011−45598)
【出願日】平成23年3月2日(2011.3.2)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【Fターム(参考)】