説明

高濃度金属イオン水作製

【課題】安全に高濃度金属イオン水を得る技術を提供する。
【解決手段】(a)下記の(i)〜(iv):(i)銀、金、銅および亜鉛からなる群より選択される1種またはそれ以上の金属を担持してなる金属担持無機化合物、(ii)粘土物質、(iii)二酸化チタン、および(iv)微細可燃物、を含む混合物の焼成物;(b)粘土物質;ならびに(c)水を混合する際、該混合をpH5よりも高いpHの条件下で行う金属イオン含有水の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高濃度金属イオン含有水の製造方法およびキット、ならびに高濃度金属イオンを用いた消毒、抗菌または消臭剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、銀イオンなどの金属イオンの殺菌・抗菌・消臭効果が社会的にも認知されてきている。高濃度の銀イオン水を得るために硝酸銀が一般的に用いられているが、硝酸銀は生体に対する刺激が強いので、この方法で得た銀イオン水をヒトや動物に適用する殺菌・抗菌・消臭剤に配合することはできない。かかる状況下、本発明者らは、徐崩壊性銀担持セラミックを開発し、水道水に約24時間浸漬するだけで約0.2ppm(約200ppb)の銀イオン水を作製することに成功している(特許文献1参照)。
【0003】
しかし、殺菌・抗菌・消臭効果を高めるためにはさらに銀イオン濃度を高める必要がある。しかも、硝酸銀などの刺激の強い薬剤を用いた場合には、ヒトをはじめとする動物への適用に危険性と不安がある。
【0004】
また、銀イオンを含有するゼオライト等から銀イオンを水中に抽出する試みがなされているが(特許文献2参照)、この方法はpH2〜5の酸性条件下で行われ、折角抽出された銀イオンが酸化銀として沈殿してしまい、実用的な消毒、抗菌または消臭剤を作製することはできなかった。
【0005】
かかる状況において、安全かつ効率よく高濃度金属イオン水を得る技術が切望されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−332131号公報
【特許文献2】特開2002−068914号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の解決課題は、安全に高濃度金属イオン水を得る技術を提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決せんと鋭意研究を重ね、徐崩壊性銀担持セラミックを浸漬した水にモンモリロナイトやコロイダルシリカ等の粘土物質を添加することにより、ppmオーダーの銀イオン水を作製できることを見出した。本発明者らは、銅イオンなどの他の金属イオンにおいても同様に高濃度金属イオン水を作製できることを見出した。しかも本発明者らは、上記方法によれば、従来のような酸性条件下でなくてもppmオーダーの高濃度金属イオン水を作製できることを見出した。そしてこれらの知見から、本発明者らは本発明を完成させた。
【0009】
すなわち、本発明は、以下のものを提供する:

(1)
(a)下記の(i)〜(iv):
(i)銀、金、銅および亜鉛からなる群より選択される1種またはそれ以上の金属を担持してなる金属担持無機化合物、
(ii)粘土物質、
(iii)二酸化チタン、および
(iv)微細可燃物
を含む混合物の焼成物;
(b)粘土物質;ならびに
(c)水
を混合することを特徴とする金属イオン含有水の製造方法であって、該混合をpH5よりも高いpHの条件下で行う、方法。

(2)
(a)下記の(i)〜(iv):
(i)銀、金、銅および亜鉛からなる群より選択される1種またはそれ以上の金属を担持してなる金属担持無機化合物、
(ii)粘土物質、
(iii)二酸化チタン、および
(iv)微細可燃物
を含む混合物の焼成物;ならびに
(b)粘土物質
を含む、金属イオン含有水の製造キットであって、焼成物(a)および粘土物質(b)が水と混合されるものであるキットであって、該混合がpH5よりも高いpHの条件下で行われる、キット。

(3)
(a)下記の(i)〜(iv):
(i)銀、金、銅および亜鉛からなる群より選択される1種またはそれ以上の金属を担持してなる金属担持無機化合物、
(ii)粘土物質、
(iii)二酸化チタン、および
(iv)微細可燃物
を含む組成物の焼成物;ならびに
(b)粘土物質
を含む消毒、抗菌または消臭剤であって、所望箇所に適用された後、該適用箇所において水と混合されるものである消毒、抗菌または消臭剤であって、水との混合がpH5よりも高いpHの条件下で行われる、消毒、抗菌または消臭剤。

(4)
(a)下記の(i)〜(iv):
(i)銀、金、銅および亜鉛からなる群より選択される1種またはそれ以上の金属を担持してなる金属担持無機化合物、
(ii)粘土物質、
(iii)二酸化チタン、および
(iv)微細可燃物
を含む混合物の焼成物;
(b)粘土物質;ならびに
(c)水
を混合することにより得られる、消毒、抗菌または消臭剤であって、該混合がpH5よりも高いpHの条件下で行われる、消毒、抗菌または消臭剤。

(5)(3)または(4)に記載の消毒、抗菌または消臭剤を所望箇所に適用することを特徴とする、消毒、抗菌または消臭方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、高濃度金属イオン含有水の製造方法およびキット、ならびに高濃度金属イオンを用いた消毒、抗菌または消臭剤等が提供される。500ppb(0.5ppm)以上の銀イオン水は、より抗菌性が強いことが実証されている。本発明によれば、何ら特別な操作や処理を要することなく、手軽にppmオーダーの高濃度銀イオン水を短時間のうちに作製することができる。本発明に用いる材料は主に粘土物質などの天然材料であり、安全性が高い。したがって、本発明によれば、簡単かつ安全に高濃度金属イオン含有水を得ることができ、得られた高濃度金属イオン含有水を用いて所望箇所の消毒、抗菌または消臭を、簡単かつ安全に行うことができる。本明細書において、抗菌性とは、食中毒菌や悪臭を生じる細菌、水アカを生じさせる細菌などの細菌類、黒カビや青カビ、アスペルギルスなどの糸状菌類、酵母類、放線菌類などの微生物類、ヒトや家畜、家禽のインフルエンザウイルス、口蹄疫ウイルス、ノロウイルス、エイズウイルスなどのウイルス類、あるいは原生生物類の増殖や生育を抑制すること、あるいはこれらの生物を死滅させる性質をいう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、水中の粘土物質(RDS)が銀イオン濃度に及ぼす影響を調べた結果を示すグラフである。左パネルは、水中のRDS濃度が銀イオン濃度に及ぼす影響を調べた結果を示すグラフであり、右パネルは、水中のRDS濃度を1重量%として金属担持無機化合物ペレットの量を変化させたときの銀イオン濃度の経時変化を調べた結果を示すグラフである。
【図2】図2は、水中に粘土物質が存在しない場合の銀イオン濃度の経時変化を調べた結果を示すグラフである。左パネルは金属担持無機化合物ペレット1個の場合、右パネルは金属担持無機化合物ペレット5個の場合である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、第1の態様において、
(a)下記の(i)〜(iv):
(i)銀、金、銅および亜鉛からなる群より選択される1種またはそれ以上の金属を担持してなる金属担持無機化合物、
(ii)粘土物質、
(iii)二酸化チタン、および
(iv)微細可燃物
を含む混合物の焼成物;
(b)粘土物質;ならびに
(c)水
を混合することを特徴とする金属イオン含有水の製造方法であって、該混合をpH5よりも高いpHの条件下で行う、方法。
を提供する。
【0013】
すなわち、本発明の金属イオン含有水の製造方法は、(a)の焼成物と、(b)の粘土物質と、(c)水とを混合することにより、銀、金、銅および亜鉛からなる群より選択される1種またはそれ以上の金属イオンを高濃度に含有する水溶液を得るものである。本発明者らは、(a)の焼成物を水に添加することによる、金属イオン含有水の製造方法を報告している(特開2007−332131号公報)。しかし、この方法で得られる金属イオン含有水中の金属イオン濃度はppbオーダーであった。それに対し、本発明によれば、約5ppmもの高濃度金属イオン濃度が達成される。その理由は、金属イオン含有水の製造時に粘土物質(b)を焼成物(a)と水(c)と共存させたためである。なお、焼成物(a)中の粘土物質(ii)は焼成されているのに対し、上記粘土物質(b)は焼成されていない点で異なる。
【0014】
(a)の焼成物は、(i)銀、金、銅および亜鉛からなる群より選択される1種またはそれ以上の金属を担持してなる金属担持無機化合物、(ii)粘土物質、(iii)二酸化チタン、および(iv)微細可燃物を含む。
【0015】
金属担持無機化合物(i)は、抗菌性を発現するもととなる金属、例えば銀、金、銅または亜鉛のいずれかあるいはそれらのうち2種以上を担持してなり、これらの金属イオンの放出源となるものである。担体となる無機化合物としては、例えば、金属酸化物や金属リン酸塩などの金属塩等を主成分とする無機化合物材料が挙げられ、金属を担持することができる機能を有するものであれば、特に制限されるものではなく、上記以外にも、例えばセメント、石こう、ガラス系材料といった無機系の材料も挙げられる。これらのうちでも、金属担持無機化合物(i)としては、銀イオンを強固に長期間保持できることから、難溶性オルトリン酸塩に銀を担持してなる材料(例えば、特開平5−294808号公報、および特開平7−316008号公報参照。)などを好適に用いることができるが、これらに限定されるものではない。金属担持無機化合物(i)における金属の含有割合は、安定的にこれらの金属を担持させることができ、かつ十分な抗菌性能を発現することができる量に適宜調整すればよく、特に制限されるものではない。金属担持無機化合物(i)は、混練するその他の材料成分:(ii)粘土物質、(iii)二酸化チタン、および(iv)微細可燃物との均一混合性や、金属イオンの放出性能の観点から、粉末状または微粒子状であることが好ましい。
【0016】
粘土物質(ii)は公知であり、様々な定義が知られている。例えば、数ミクロン〜数十ミクロン程度の粒子からなり、シリカおよびアルミナのうち少なくとも一方を含む物質であると定義することができ、また例えば、数ミクロン〜数十ミクロン程度の粒子からなり、層状ケイ酸塩鉱物を主成分とし、方解石、苦灰石、長石、沸石などを含み、焼成することによって固まり、焼成物の骨格を形成する殻体となる物質であると定義することもできる。粘土物質(ii)の例としては、木節粘土、蛙目粘土など、あるいはラポナイトRDS粘土、ゼオライト系粘土、LUDOX、水ガラス、モンモリロナイト、コロイダルシリカ、ベントナイトなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、2種以上の粘土物質を混合して用いてもよい。粘土物質(ii)は、成分(i)、(iii)および(iv)との均一混合性の観点から、粉末状であることが好ましい。
【0017】
二酸化チタン(iii)は、前記の金属イオンとともに、抗菌性を発現するものである。すなわち、前記の金属イオンのみでは、例えば、ベロ毒素、エンテロトキシン等といった菌放出毒素に対しては充分な抗菌効果を発現しにくかったが、二酸化チタンを含有させることにより、紫外線が当たることで光触媒効果が発現し、これらの菌放出毒素をも分解無害化することができる。二酸化チタン(iii)は、光触媒用として一般的に用いられる微粒子状のものが好ましい。
【0018】
微細可燃物(iv)は、前記(i)〜(iii)成分とともに混練、成形した組成物を焼成した際に、焼失し、そのあとが空隙となることで、焼成物を多孔質体とする機能を有するものである。微細可燃物(iv)としては、焼成により焼失するものであれば、特に制限されるものではないが、粉末状若しくは粒状とした合成高分子、粉末状若しくは粒状とした天然木質材、粉末状若しくは粒状とした種子、合成繊維、天然繊維、活性炭繊維などが好適に用いることができる。粉末状もしくは粒状とした種子としては、例えば、胡桃を粉末状若しくは粒状にしたものなどを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。更なる高いレベルの安全性を確保し、より安心して使用するためには、天然繊維または粉末状もしくは粒状の種子などを用いることが特に好ましい。微細可燃物(iv)は、抗菌剤に偏りのない空隙を生じさせて均一な多孔質体とするために、粉末状若しくは粒状又は繊維状であることが好ましい。例えば、成分(iv)が粒状である場合には、そのサイズは特に限定されないが、焼成物に徐崩壊性を持たせる場合には50〜500μm程度であることが好ましい。
【0019】
成分(i)〜(iv)成分を含有してなる組成物は、抗菌剤に求められる適度な強度と優れた抗菌性能を付与するために、各成分の混合割合を以下のような割合とすることが好ましい。すなわち、金属担持無機化合物(i)は、金属イオンを放出して消臭抗菌性能を発現する抗菌剤における主要成分であり、抗菌剤の単位体積当りの抗菌性能を優れたものとするために、前記組成物中に、50〜74重量%程度とすることが好ましい。また、粘土物質(ii)は、抗菌剤の骨格を形成する成分であり、抗菌剤に求められる徐崩壊性を付与する場合には、前記組成物中に20〜44重量%程度とすることが好ましい。さらに、二酸化チタン(iii)は、成分(i)とともに、抗菌性能を発現する成分であり、組成物中に1〜10重量%程度とすることが好ましい。また、微細可燃物(iv)は、抗菌剤に偏りのない空隙を生じさせて多孔質体とするために、組成物中に5〜10重量%程度とすることが好ましい。さらに、成分(i)〜(iv)を含有してなる組成物には、例えば、CMC、メチルセルロースおよびアラビアガム等といったバインダー成分および水を少量加えてもよく、その添加量は、混練、成形時の取り扱い性を考慮して適宜決定すればよいが、前記バインダー成分は前記組成物中に0.5〜2重量%程度とするのが好ましい。
【0020】
成分(i)〜(iv)を含有してなる組成物を混練するには、一般的な混練機を用いることができる。また、混練したものを成形する際の形状は、抗菌剤の用途に応じて適宜定めればよく、特に制限されるものではないが、表面積をより大きくして粘土物質(b)および水(c)との接触面積を確保しつつ、強度も損なわないものとすることが好ましい
【0021】
成分(i)〜(iv)を含有してなる組成物を混練、成形したものを焼成するときの条件としては、約500〜約800℃の雰囲気温度において2〜8時間焼成することが好ましい。ここでいう焼成とは、成形した材料に直接着火させ反応させるものではなく、炉内において高温でじっくりと処理することをいう。とくに本発明では徐崩壊性を与えるために、この温度管理に注意する必要があり、高温度、例えば900℃以上で焼成したものは徐崩壊性を失い、また500℃未満で焼成した時には脆くなりすぎる恐れがある。なお、前記焼成温度と焼成時間との関係は、焼成炉の熱容量との関係もあり、一概に規定することはできないが、前記温度および時間の範囲内で、焼成温度が500℃に近くなる低い温度で焼成する場合には焼成時間を長くとり、反対に焼成温度が800℃に近くなる高い温度で焼成する場合には焼成時間は短めにすることが、焼成物の強度と崩壊性との兼ね合いの観点から好ましい。
【0022】
かくして得られた焼成物は、抗菌性を発現するもととなる金属イオンの溶出源として作用する。焼成物は棒状、球状、顆粒、ペレット、粉末など様々な形態とすることができ、焼成物には適宜穴が設けられて金属イオンの溶出を促進するようになっていてもよい。取り扱いやすさ、金属イオンの溶出し易さなどの観点から、ペレット状、顆粒状または粉末状が好ましくい。
【0023】
粘土物質(b)は公知であり、様々な定義が知られている。例えば、数ミクロン〜数十ミクロン程度の粒子からなり、シリカおよびアルミナのうち少なくとも一方を含む物質であると定義することができ、また例えば、数ミクロン〜数十ミクロン程度の粒子からなり、層状ケイ酸塩鉱物を主成分とし、方解石、苦灰石、長石、沸石などを含み、焼成することによって固まり、焼成物の骨格を形成する殻体となる物質であると定義することもできる。粘土物質(b)の例としては、木節粘土、蛙目粘土など、あるいはラポナイトRDS粘土、ゼオライト系粘土、LUDOX、水ガラス、モンモリロナイト、コロイダルシリカ、ベントナイトなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、2種以上の粘土物質を混合して用いてもよい。粘土物質(b)は、(a)の焼成物と(c)水との均一混合性の観点から、粉末状あるいは微粒子状であることが好ましい。粘土物質(b)は、上で説明した粘土物質(ii)と同じ種類ものであってもよく、異なる種類のものであってもよい。
【0024】
水(c)としては、例えば、純水、水道水、井戸水等といった水を用いることができるが、特に制限はない。水(c)に食塩、エタノール、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、クロルヘキシジン、フィトンチッド、ヒノキチオールまたはその他の公知の抗菌成分、あるいは香料などの成分を含有させてもよい。
【0025】
本発明の金属イオン含有水の製造方法は、焼成物(a)、粘土物質(b)および水(c)を混合することにより実施される。例えば、粘土物質(b)を分散させた水(c)に焼成物(a)を添加することにより金属イオン含有水を得てもよい。「金属イオン含有水」とは金属、例えば銀、金、銅、亜鉛などの抗菌性または殺菌性を有する金属イオンを含む水溶液をいう。また例えば、焼成物(a)と粘土物質(b)を混合したものに水(c)を添加することにより金属イオン含有水を得てもよい。また例えば、水(c)に焼成物(a)および粘土物質(b)を同時または順次添加してもよい。本発明の金属イオン含有水の製造方法の具体例は、焼成物(a)、粘土物質(b)および水(c)を混合することができれば、上記のものには限定されず、状況に応じて変更することができる。
【0026】
本発明における金属イオン含有水の製造時における焼成物(a)、粘土物質(b)および水(c)の混合物中の焼成物(a)の量は、必要とされる金属イオン含有水中の金属イオン濃度に応じて適宜増減することができる。
【0027】
上記混合物中の粘土物質(b)の量が多ければ多いほど、焼成物(a)からの金属イオンの溶出量が多くなるが、得られる金属イオン含有水の透明度が低下する。上記混合物中の好ましい粘土物質(b)の濃度は0.1〜5重量%程度を目安とするが、焼成物(a)の量、必要な金属イオン濃度、適用箇所、適用目的などの諸条件により適宜変更することができる。
【0028】
本発明において好ましい金属は銀、金、銅、亜鉛などの抗菌性または殺菌性を有する金属であり、なかでも銀および銅が好ましく、特に銀が好ましい。
【0029】
金属イオン含有水を使用する約3時間前〜数日前に、本発明のこの態様の方法により金属イオン含有水を作製しておくことが好ましい。
【0030】
本発明の金属イオン含有水の製造方法において、焼成物(a)を複数回繰り返し使用することもできる。例えば、粘土物質(b)を含む水(c)に焼成物(a)を添加して金属イオン抽出を行った後、焼成物(a)を回収して、新たに粘土物質(b)を含む水(c)に添加する操作を繰り返して、金属イオン抽出を複数回行うこともできる。
【0031】
本発明のこの態様の方法により得られた金属イオン含有水を、使用目的や使用条件に応じて適宜清澄化してもよい。清澄化のための手段・方法はろ過や遠心分離などがあり当業者に公知である。
【0032】
酸性条件下での金属イオンの溶出は、金属塩の沈殿を引き起こし、かえって水中の金属イオン濃度を低下させることが知られている。しかし本発明においては、焼成物(a)、粘土物質(b)および水(c)の混合を比較的強い酸性条件下で行わなくても、粘土物質(b)が水中に共存することにより、ppmオーダーという十分な量の金属イオンを水中に溶出させることができ、しかも金属塩の沈殿を防止することができる。したがって、本発明においては、焼成物(a)、粘土物質(b)および水(c)の混合をpH5よりも高いpHの条件下、好ましくはpH約5.5以上、より好ましくはpH約6以上、さらに好ましくはpH約6〜約8、最も好ましくはpH約6.5〜約7.5の条件下で行う。本発明において水(c)として純水や水道水を用いた場合は、pHが約6.5〜約7.5の範囲となる場合が多い。
【0033】
本発明において、焼成物(a)は棒状、球状、筒状、顆粒、ペレット、粉末など様々な形態とすることができるが、焼成物(a)が直径5mm以下、好ましくは直径3mm以下、より好ましくは直径2mm以下の粒状物または粉末である場合には、より高濃度の金属イオン水をより短時間のうちに得ることができる。本発明の使用目的に応じてペレットの形状やサイズを選択して、金属イオンを徐々に放出、繰り返し放出、あるいは素早く放出させることができる。これらのことは、以下に述べる本発明の諸態様においてもあてはまる。
【0034】
本発明は、第2の態様において、
(a)下記の(i)〜(iv):
(i)銀、金、銅および亜鉛からなる群より選択される1種またはそれ以上の金属を担持してなる金属担持無機化合物、
(ii)粘土物質、
(iii)二酸化チタン、および
(iv)微細可燃物
を含む混合物の焼成物;ならびに
(b)粘土物質
を含む、金属イオン含有水の製造キットであって、焼成物(a)および粘土物質(b)が水と混合されるものであるキットであって、該混合がpH5よりも高いpHの条件下で行われる、キットを提供する。
【0035】
例えば、本発明の金属イオン含有水の製造キットは、焼成物(a)と粘土物質(b)とをあらかじめ混合したものを適当な容器または包装に入れたものを必須成分とし、これを水と混合して金属イオン含有水を得るものであってもよい。また例えば、焼成物(a)と粘土物質(b)を別個の容器または包装に入れたものを必須成分とし、これらを水と混合して金属イオン含有水を得るものであってもよい。また例えば、焼成物(a)と、粘土物質(b)を水に懸濁したものを別個の容器または包装に入れたものを必須成分とし、これらを混合して金属イオン含有水を得るものであってもよい。本発明の金属イオン含有水の製造キットの具体例は、焼成物(a)、粘土物質(b)および水(c)を混合することができれば、上記のものには限定されず、状況に応じて変更することができる。キットには取扱説明書を添付するのが通常である。
【0036】
本発明の金属イオン含有水の製造キットにおいて、焼成物(a)を複数回繰り返し使用することもできる。例えば、粘土物質(b)を含む水(c)に焼成物(a)を添加して金属イオン抽出を行った後、焼成物(a)を回収して、新たに粘土物質(b)を含む水(c)に添加する操作を繰り返して、金属イオン抽出を複数回行うこともできる。そのような場合には、キットの取扱説明書にその旨記載することが好ましい。
【0037】
上記キットの使用において、焼成物(a)、粘土物質(b)および水(c)の混合を、pH5よりも高いpH、好ましくはpH約5.5以上、より好ましくはpH約6以上、さらに好ましくはpH約6〜約8、最も好ましくはpH約6.5〜約7.5の条件下で行う。
【0038】
本発明は、第3の態様において、
(a)下記の(i)〜(iv):
(i)銀、金、銅および亜鉛からなる群より選択される1種またはそれ以上の金属を担持してなる金属担持無機化合物、
(ii)粘土物質、
(iii)二酸化チタン、および
(iv)微細可燃物
を含む組成物の焼成物;ならびに
(b)粘土物質
を含む消毒、抗菌または消臭剤であって、所望箇所に適用された後、該適用箇所において水と混合されるものである消毒、抗菌または消臭剤であって、水との混合がpH5よりも高いpHの条件下で行われる、消毒、抗菌または消臭剤
を提供する。
【0039】
すなわち、本発明のこの態様の消毒、抗菌または消臭剤は、焼成物(a)と粘土物質(b)を含むものであり、さらに他の抗菌剤、殺菌剤または消臭剤を含んでいてもよい。これらの他の抗菌剤、殺菌剤または消臭剤は公知であり、当業者が必要に応じて適宜選択して用いることができる。本発明のこの態様の消毒、抗菌または消臭剤は、粉末、微粒子、顆粒などの固形状に成形されていてもよい。本発明のこの態様の消毒、抗菌または消臭剤を、抗菌、殺菌または消臭を必要とする箇所またはその周囲に適用し、次いで、該適用箇所に水を適用し、混合することにより、焼成物(a)、粘土物質(b)および水(c)が混合されて焼成物(a)から金属イオンが溶出し、消毒、抗菌または消臭作用が発揮される。水の適用は、単に散水するだけであってもよく、ヒトや動物の汗や尿、あるいは雨水などによって水が適用されてもよい。例えば、微粒子状の本発明のこの態様の消毒、抗菌または消臭剤を噴霧器に入れて、発汗しやすい部位に適用する消臭スプレイとしてもよい。かかるスプレイにて散布された本発明のこの態様の消毒、抗菌または消臭剤は、発汗により銀イオンを溶出し、その効果を発揮する。
【0040】
本発明のこの態様の消毒、抗菌または消臭剤は、散布、塗布など様々な形式で必要箇所に適用されうるが、適用形式はこれらのものに限定されない。
【0041】
本発明のこの態様の消毒、抗菌または消臭剤の形状は、必要箇所に適用し易く、水と混合し易いものであればいずれの形状であってもよく特に限定されないが、一般的には固形状であり、例えば、顆粒、粉末、微粒子などの形状が例示される。該適用は、いずれの方法で行ってもよく、散布、塗布、留置等にて行うことができるが、これらの方法に限らない。
【0042】
例えば、本発明のこの態様の消毒、抗菌または消臭剤を鶏舎、豚や牛などの畜舎などに散布し、消毒、抗菌または消臭が必要となったときに適用箇所に水を散布して、所望の消毒、抗菌または消臭効果を得ることができる。水の代わりに、あるいは水に加えて、動物の尿や汗、あるいは雨水などによっても金属イオンの溶出が行われうる。この態様の消毒、抗菌または消臭剤に水を徐々に適用することによって、金属を焼成物(a)から徐々に浸出させて効果を長持ちさせることもできる。
【0043】
したがって、例えば、本発明のこの態様の消毒、抗菌または消臭剤を、鳥類や家畜のインフルエンザの予防や伝染防止に好適に用いることができる。本発明のこの態様の消毒、抗菌または消臭剤の使用態様は、上記のものに限定されない。これらの態様を例示すれば、生ゴミの消臭、ペットの消臭、トイレの消臭、靴の中敷きへの使用、畜舎や鶏舎の消毒等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0044】
本発明のこの態様の消毒、抗菌または消臭剤の適用量は、必要な金属イオン濃度、適用箇所、適用目的などの諸条件により適宜変更することができる。また、あとで添加混合する水の量も同様に適宜変更することができる。
【0045】
本発明のこの態様の消毒、抗菌または消臭剤は、他の成分、例えば、金属イオン以外の抗菌成分、殺菌成分、消臭成分、あるいは香料などを適宜含んでいてもよい。
【0046】
本発明のこの態様の消毒、抗菌または消臭剤の使用において、pH5よりも高いpH、好ましくはpH約5.5以上、より好ましくはpH約6以上、さらに好ましくはpH約6〜約8、最も好ましくはpH約6.5〜約7.5の条件下で水を添加混合する。
【0047】
本発明は、第4の態様において、
(a)下記の(i)〜(iv):
(i)銀、金、銅および亜鉛からなる群より選択される1種またはそれ以上の金属を担持してなる金属担持無機化合物、
(ii)粘土物質、
(iii)二酸化チタン、および
(iv)微細可燃物
を含む混合物の焼成物;
(b)粘土物質;ならびに
(c)水
を混合することにより得られる、消毒、抗菌または消臭剤であって、該混合がpH5よりも高いpHの条件下で行われる、消毒、抗菌または消臭剤
を提供する。
【0048】
すなわち、本発明のこの態様の消毒、抗菌または消臭剤は、本発明の金属イオン含有水の製造方法に関して上で説明した方法に準じて焼成物(a)、粘土物質(b)および水(c)を混合して得られるものである。
【0049】
本発明のこの態様の消毒、抗菌または消臭剤は、焼成物(a)、粘土物質(b)および水(c)の液体混合物であってもよく、あるいはこれらの混合物を濾過や遠心分離などの公知の方法で清澄化した上清液であってもよい。
【0050】
また、この態様の消毒、抗菌または消臭剤は、ゲル状またはペースト状などの半固体状に成形することもできる。ゲル化剤、ゲル基材やペースト基材は公知であり、上記の液体混合物あるいは上清液をこれらの剤や基材と混合することにより、半固体状の消毒、抗菌または消臭剤を作成することができる。
【0051】
さらに、この態様の消毒、抗菌または消臭剤は、焼成物(a)、粘土物質(b)および水(c)の液体混合物、あるいはこれらの混合物を濾過や遠心分離などの公知の方法で清澄化した上清液を、凍結乾燥、噴霧乾燥、熱風乾燥などの公知の方法で乾燥させ、粉末、微粒子、顆粒などの固形状にしたものであってもよい。これらの固形状の消毒、抗菌または消臭剤を必要な場所に適用し、その後水を適用することによって金属イオンを水中に放出させて、所望の消毒、抗菌または消臭効果を得ることができる。水の適用は、単に散水するだけであってもよく、ヒトや動物の汗や尿、あるいは雨水などによって水が適用されてもよい。
【0052】
また、焼成物(a)および粘土物質(b)がミストを形成できるほど微粉末である場合には、あるいは上記のごとく本発明のこの態様の消毒、抗菌または消臭剤が清澄化された上清液である場合には、本発明のこの態様の消毒、抗菌または消臭剤はミスト状であってもよい。焼成物(a)および粘土物質(b)を微粉末化するための手段・方法は当業者に公知である。ミストを作製するための手段・方法も当業者に公知である。
【0053】
本発明のこの態様の消毒、抗菌または消臭剤は、使用時の1時間〜2日前、好ましくは数時間前に調製するものであってもよい。上記調製は、焼成物(a)、粘土物質(b)および水(c)を混合することによって行うことができる。また、上で説明したように、焼成物(a)を繰り返し使用することにより、本発明のこの態様の消毒、抗菌または消臭剤を調製することもできる。
【0054】
本発明のこの態様の消毒、抗菌または消臭剤中の粘土物質(b)の濃度は0.1〜5重量%程度を目安とするが、焼成物(a)の量、必要な金属イオン濃度、適用箇所、適用目的などの諸条件により適宜変更することができる。もちろん、本発明のこの態様の消毒、抗菌または消臭剤自体の適用量も、適用箇所、適用目的、必要とされる効果などの諸条件に応じて適宜選択されうる。
【0055】
本発明のこの態様の消毒、抗菌または消臭剤は、他の成分、例えば、金属イオン以外の抗菌成分、殺菌成分、消臭成分、あるいは香料などを適宜含んでいてもよい。これらの抗菌成分、殺菌成分または消臭成分、ならびに香料などは公知であり、当業者が必要に応じて適宜選択して用いることができる。
【0056】
本発明のこの態様の消毒、抗菌または消臭剤を、抗菌、殺菌または消臭を必要とする箇所またはその周囲に適用して、所望の消毒、抗菌または消臭効果を得ることができる。該適用はいずれの方法で行ってもよく、噴霧、散布、塗布、浸漬等にて行うことができるが、これらの方法に限らない。
【0057】
本発明のこの態様の消毒、抗菌または消臭剤の使用態様は様々である。これらの態様を例示すれば、生ゴミの消臭、ペットの消臭、トイレ、居室、倉庫などの消臭、靴の臭いの防止、衣類の防臭や抗菌、部屋干しの臭いの防止、手足やその他の皮膚の消毒、畜舎や鶏舎の消毒等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0058】
本発明のこの態様の消毒、抗菌または消臭剤を得る際に、pH5よりも高いpH、好ましくはpH約5.5以上、より好ましくはpH約6以上、さらに好ましくはpH約6〜約8、最も好ましくはpH約6.5〜約7.5の条件下で焼成物(a)、粘土物質(b)ならびに水(c)を混合する。
【0059】
本発明は、第5の態様において、
本発明の消毒、抗菌または消臭剤を所望箇所に適用することを特徴とする、消毒、抗菌または消臭方法
を提供する。
【0060】
本発明の消毒、抗菌または消臭剤の適用方法および適用箇所は特に限定はないが、例えば、生ゴミ、トイレ、居室、倉庫、衣類、洗濯物、靴、ペットおよびその周辺、手足やその他の皮膚、畜舎や鶏舎、その他の悪臭や伝染病の予防や抑制が望まれる箇所に、噴霧、散布、塗布、浸漬等にて適用することができる。
【0061】
本発明のこの態様の方法により、簡単かつ安全に高濃度金属イオン含有水を得ることができ、得られた高濃度金属イオン含有水を用いて所望箇所の消毒、抗菌または消臭を、やはり簡単かつ安全に行うことができる。
【0062】
以下に実施例を示して本発明をより詳細かつ具体的に説明するが、実施例は例示説明であり、本発明を限定するものと解してはならない。
【実施例1】
【0063】
(1)焼成物の調製
2種以上の金属の難溶性オルトリン酸塩に銀を10重量%担持してなる材料である金属担持無機化合物(太平化学産業株式会社製、シルバーエース)60重量%と、木節粘土30重量%と、二酸化チタン(テイカ株式会社製、AMT−100)1重量%と、微細可燃物として活性炭粉末(太平化学産業株式会社製、ヤシコールSS(粒径75〜250μmのもの約97重量%))9重量%とからなる組成物を混練し、ペレット状(サイズ:直径1.5cm、長さ1.5cmの筒状)に成形した後に、700℃前後の雰囲気温度において約2時間焼成することにより、焼成物を作製した。焼成したペレット1個あたりの重量は約2g、ペレット1個あたりの銀含量は約125mgであった。
【0064】
(2)粘土物質(RDS)が銀イオン濃度に及ぼす影響
上で得られた焼成物ペレット1個または5個を、0.01重量%から5重量%までのRDS(Laporte Inorganics社製)を分散させた水道水500mlに投入し、24時間後に水中の銀イオン濃度を測定した(n=3)。なお、水温は室温とし、pHは調節しなかった。溶液のpHは6.8〜7.3であった。銀イオン濃度の測定は、ICP−AES分光装置(「RIGAKU CIROS CCD」、(株)リガク製)を用いて行った。結果を図1の左パネルに示す。RDS濃度の上昇とともに、水中に溶出してくる銀イオン濃度が上昇する傾向が見られた。5重量%のRDSが水中に存在する場合、銀イオン濃度は4.879ppmであった。
【0065】
水中RDS濃度を1重量%とし、上で得られた焼成物ペレット1個または5個を投入することにより、水中銀イオン濃度の経時変化を調べた。他の実験条件は上で述べたのと同じであった。結果を図1の右パネルに示す。ペレット1個、5個いずれの場合にも、経時的に水中銀イオン濃度が上昇する傾向が見られた。特にペレット5個を投入した場合、水中銀イオン濃度は48時間後に約3.5ppmに達した。
【0066】
(3)水中の粘土物質の種類の影響
水中の粘土物質として各0.1重量%のRDS(Laporte Inorganics社製)、LUDOX(Sigma社製)または水ガラス(ナカライテクノス製)を用い、上記ペレットを1個または5個を用いて上と同様の実験を行い、3日目および7日目に水中の銀イオン濃度を測定した。溶液のpHは6.8〜7.3であった。結果を表1に示す。
【0067】
【表1】

【0068】
いずれの粘土物質が水中に存在する場合にも、ペレットの個数および日数の増加に伴って、水中の銀イオン濃度が上昇する傾向が見られた。水ガラス(ペレット5個)の場合に銀イオン濃度が若干低い傾向はあるものの、銀イオン濃度は水中の粘土物質の種類にはあまり影響されないことがわかった。
【比較例1】
【0069】
対照実験として、水中に粘土物質が存在しない条件下で上と同様の実験を行い、水中の銀イオン濃度を調べた。実験には上記ペレット1個または5個を用い、経時的に銀イオン濃度を測定した。溶液のpHは6.8〜7.3であった。結果を図2に示す。ペレット数を5個まで増加させても相加的に銀イオン濃度は上昇しなかった。ペレット5個を投入し、14日後に約0.8ppmの銀イオン濃度となったが、粘土物質が水中に共存する場合の実施例1のような高濃度の銀イオン濃度(約5ppm)は達成されなかった。
【実施例2】
【0070】
高濃度銀イオン水の抗菌効果について、大腸菌(ATCC25922)、ブドウ球菌(ATCC29213)、緑膿菌(ATCC27853)を用いて調べた。
各サンプル溶液15mlを50mlの遠沈管に入れ、それぞれの溶液に各菌液を100マイクロリットル(10cfu/ml)添加し、よく混和した。菌液添加0、5、15、30分時に菌液を混和した溶液から100マイクロリットルサンプリングし、滅菌シャーレ(直径9cm)に移した。あらかじめ準備しておいた標準寒天培地液(ニッスイ:日水製薬株式会社、Tokyo、Japan)10mlをシャーレに入れ、サンプリング液と混和した。その後、シャーレを37℃の恒温器内で24時間インキュベートした。24時間後、シャーレ内のコロニー数をカウントした。結果を表2に示す。
【0071】
【表2】

【0072】
粘土物質LUDOXが水中に存在する条件下で得られた銀イオン水を用いた場合(LUDOXの欄)は、粘土物質が水中に存在しない条件下で得られた銀イオン水を用いた場合(ミラクルアクア)に比べて、大腸菌、ブドウ球菌、緑膿菌のいずれに対しても強力な抗菌効果が得られた。これは粘土物質LUDOXが水中に存在する条件下で得られた銀イオン水の銀イオン濃度が高いためであると考えられた。表2のControlは水だけの場合である。
【実施例3】
【0073】
銅を担持するペレットを用いた場合の銅イオン溶出について調べた。銅担持ペレットは以下のようにして作製した。
シラスバルーンと硝酸銅を重量比で1:1に混和したもの(A)60重量%と、木節粘土(B)30重量%と、二酸化チタン(テイカ株式会社製、AMT−100)(C)1重量%と、微細可燃物として活性炭粉末(太平化学産業株式会社製、ヤシコールSS(粒径75〜250μmのもの約97重量%))(D)9重量%とからなる組成物を混練し、ペレット状(サイズ:直径1.5cm、長さ2.0cmの筒状)に成形した後に、700℃前後の雰囲気温度において約2時間焼成することにより、焼成物を作製した。
【0074】
作製したペレット1個の重量は2g、ペレット1個あたりの銅含量は60mgであった。水中の粘土物質としてLUDOXを用いて実験を行った。ペレット1個を24時間または48時間浸漬後に銅イオン濃度を測定した。溶液のpHは6.8〜7.3であった。その他の実験条件は実施例1で述べたとおりであった。結果を表3に示す。
【0075】
【表3】

【0076】
水中に粘土物質が存在しない場合と比べて、水中に粘土物質が存在する場合に銅イオン溶出量が3.5〜6倍に増加し、水中の粘土物質の効果が確認された。
【実施例4】
【0077】
金属担持焼成物の粒径を小さくして、金属イオン溶出速度および量について調べた。実施例1で作製した銀担持ペレットをそのまま、あるいは乳鉢内で直径1〜2mmに粉砕したものを、水道水またはLUDOX含有水道水にて抽出し、銀イオン濃度を経時的に測定した。溶液のpHは6.8〜7.3であった。結果を表4に示す。
【表4】

【0078】
金属担持焼成物の粒径を小さくすることによって、金属イオンの溶出が素早くなり、濃度も高くなった。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明は、消臭剤や抗菌剤などに応用することができるので、日用品や医薬品の分野ならびに畜産などの分野において利用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)下記の(i)〜(iv):
(i)銀、金、銅および亜鉛からなる群より選択される1種またはそれ以上の金属を担持してなる金属担持無機化合物、
(ii)粘土物質、
(iii)二酸化チタン、および
(iv)微細可燃物
を含む混合物の焼成物;
(b)粘土物質;ならびに
(c)水
を混合することを特徴とする金属イオン含有水の製造方法であって、該混合をpH5よりも高いpHの条件下で行う、方法。
【請求項2】
(a)下記の(i)〜(iv):
(i)銀、金、銅および亜鉛からなる群より選択される1種またはそれ以上の金属を担持してなる金属担持無機化合物、
(ii)粘土物質、
(iii)二酸化チタン、および
(iv)微細可燃物
を含む混合物の焼成物;ならびに
(b)粘土物質
を含む、金属イオン含有水の製造キットであって、焼成物(a)および粘土物質(b)が水と混合されるものであるキットであって、該混合がpH5よりも高いpHの条件下で行われる、キット。
【請求項3】
(a)下記の(i)〜(iv):
(i)銀、金、銅および亜鉛からなる群より選択される1種またはそれ以上の金属を担持してなる金属担持無機化合物、
(ii)粘土物質、
(iii)二酸化チタン、および
(iv)微細可燃物
を含む組成物の焼成物;ならびに
(b)粘土物質
を含む消毒、抗菌または消臭剤であって、所望箇所に適用された後、該適用箇所において水と混合されるものである消毒、抗菌または消臭剤であって、水との混合がpH5よりも高いpHの条件下で行われる、消毒、抗菌または消臭剤。
【請求項4】
(a)下記の(i)〜(iv):
(i)銀、金、銅および亜鉛からなる群より選択される1種またはそれ以上の金属を担持してなる金属担持無機化合物、
(ii)粘土物質、
(iii)二酸化チタン、および
(iv)微細可燃物
を含む混合物の焼成物;
(b)粘土物質;ならびに
(c)水
を混合することにより得られる、消毒、抗菌または消臭剤であって、該混合がpH5よりも高いpHの条件下で行われる、消毒、抗菌または消臭剤。
【請求項5】
請求項3または4に記載の消毒、抗菌または消臭剤を所望箇所に適用することを特徴とする、消毒、抗菌または消臭方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−232960(P2012−232960A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−104429(P2011−104429)
【出願日】平成23年5月9日(2011.5.9)
【出願人】(504150461)国立大学法人鳥取大学 (271)
【出願人】(506025800)高林産業株式会社 (1)
【Fターム(参考)】