説明

高炉の残銑抜き方法及び残銑抜き装置

【課題】トピードカーが走行するレールのレベル下げをすることなく、炉底部の残銑を排出することができる高炉の残銑抜き方法及び残銑抜き装置を提供する。
【解決手段】水平部と、水平部から分岐させて立ち上げた立ち上げ部からなり、水平部と立ち上げ部は軸方向に貫通孔が形成されるとともに水平部の貫通孔と立ち上げ部の貫通孔が連通している残銑抜き装置11を高炉炉底部1に取り付け、水平部の貫通孔を通して炉底れんが9をボーリングして炉底6に連通する残銑排出孔10を形成し、ボーリング後に貫通孔の高炉外側の開口を閉塞し、高炉内の圧力を上昇させて残銑を残銑排出孔10から水平部の貫通孔に流し、さらに立ち上げ部の貫通孔を上昇させ、排出樋18を経由して抜く。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、残銑を受けるトピードカーが走行するレールのレベルを下げる大改修をすることなく、炉底部の残銑を抜くことができる高炉の残銑抜き方法及び残銑抜き装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高炉の改修においては、高炉炉底部を解体する前に吹き止めた高炉内の残銑及び残滓を解体撤去するが、この吹き止めた高炉内の残銑及び残滓が多いと、残銑及び残滓を解体・除去する期間が長く必要となるのみならず、作業環境の悪い炉内での解体・除去作業が多くなることによる安全上の問題や健康上の問題ばかりでなく、残銑及び残滓を解体・撤去する費用も高くなる問題があった。
【0003】
そこで、送風停止後に出銑口レベルより下に残留する溶銑をほぼ全量炉外に排出して除去することができ、高炉吹き止めによる残銑及び残滓の解体撤去の日数を短縮しようとする高炉の吹止方法が提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1に記載された吹止方法では、高炉を吹き止めて操業を停止する際に、まず、装入物の供給を停止し、図4に示すように、高炉底部1の出銑口2を開放して出銑口レベル以上の溶銑を流出させる。出銑される溶銑は、出銑大樋3、溶銑樋19及び溶銑傾注樋20を流れてトピードカー4の炉口5より受銑する。
【0005】
出銑口2からの出銑が完了すると、出銑口2を塞ぎ、羽口から送風して炉内を高圧にし、次いで図5に示すように、鉄皮8側から炉底のれんが9の浸食面の直下域にボーリングして溶銑排出孔10を形成する。炉底れんが9の浸食面に発生する炉底れんが9の目地割れ部と溶銑排出孔10が連通し、出銑口レベル以下に残留していた溶銑7が目地割れ部から溶銑排出孔10へ流れて炉外に排出される。この方法により、炉底6に残銑7がなくなり、炉内残留物の除去に要する時間が著しく短縮されるというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭57−104605号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記特許文献1の炉底れんがをボーリングする吹止方法では、図5に示すように、トピードカーの溶銑流入口のレベルCが炉底のレベルBより高いため、炉底部の残銑の排出ができない。排出するためには、図5に示すように、トピードカーの炉口のレベルCを炉底のレベルBより下げる必要がある。
【0008】
しかしながら、トピードカーが走行するレールのレベル下げは、レール勾配を1/100以下にする必要があることから長距離にわたるため、改造費用が膨大となるので、実施されていない。そのため、炉底部からの残銑排出はせずに、注水による炉内冷却後に炉内側より排出しているが、鉄塊となるために長時間を要していた。
【0009】
そこで、本発明は、トピードカーが走行するレールのレベル下げをすることなく、炉底部の残銑を排出することができる高炉の残銑抜き方法及び残銑抜き装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、高炉炉底部に設けられた出銑口のレベル以下に溜まっている残銑を抜く高炉の残銑抜き方法において、水平部と、水平部から分岐させて立ち上げた立ち上げ部からなり、水平部と立ち上げ部は軸方向に貫通孔が形成されるとともに水平部の貫通孔と立ち上げ部の貫通孔が連通している残銑抜き装置を高炉炉底部に取り付け、水平部の貫通孔を通して炉底れんがをボーリングして炉底に連通する残銑排出孔を形成し、ボーリング後に貫通孔の高炉外側の開口を閉塞し、高炉内の圧力を上昇させて残銑を残銑排出孔から水平部の貫通孔に流し、さらに立ち上げ部の貫通孔を上昇させて排出することを特徴とする。
【0011】
前記構成において、残銑を立ち上げ部の貫通孔より排出樋、あるいは出銑口からの出銑時に使用する出銑大樋に排出する。
【0012】
また、本発明は、高炉炉底部に設けられた出銑口のレベル以下に溜まっている残銑を抜く高炉の残銑抜き装置において、水平部と、水平部から分岐させて立ち上げた立ち上げ部からなり、水平部と立ち上げ部は軸方向に貫通孔が形成されるとともに、水平部の貫通孔と立ち上げ部の貫通孔は連通し、水平部の貫通孔の両端の開口のうち、一方の高炉側の開口は水平部の貫通孔を通してボーリングにより形成された、炉底に連通する残銑排出孔に連通可能であり、他方の高炉外側の開口はボーリングに使用した後に耐火物で閉塞されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、炉内の圧力を上昇させて残銑抜き装置により残銑の排出レベルを上げて排出できるので、残銑を受けるレベルを下げるための大改修をすることなく残銑を抜くことができる。その結果、炉底に残留する残留物の除去に要する時間を大幅に減少させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の高炉の残銑抜き方法の実施例を示す図である。
【図2】本発明の高炉の残銑抜き装置を示す断面図である。
【図3】本発明の高炉の残銑抜き方法の別実施例を示す図である。
【図4】出銑口からの出銑の状態を示す図である。
【図5】トピードカーが走行するレールのレベル下げをした場合の状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施例を、図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0016】
図1において、高炉を止めて出銑口2のレベルを超える溶銑を抜き出す際、まず、装入物の供給を停止し、図1の1点鎖線で示すように、高炉炉底部1の出銑口2を開放して出銑口レベル以上の溶銑を流出させる。流出した溶銑は、出銑大樋3を流れ、トピードカー4の炉口5から受銑する。
【0017】
出銑口2からの出銑後、出銑口2のレベル以下で炉底6に溜まっている残銑7を抜くため、出銑口2を塞ぎ、羽口から送風して炉内を高圧にする。一方で、鉄皮8側から炉底のれんが9をボーリングし、残銑排出孔10を形成する。
【0018】
炉底のれんが9のボーリングによる残銑排出孔10の形成及び残銑排出孔10による残銑抜きは、残銑抜き装置11により行う。
【0019】
残銑抜き装置11は、図2に示すように、水平部12と水平部12から分岐させて立ち上げた立ち上げ部13からなる。水平部12と立ち上げ部13は、両端が開放された貫通孔14,15が形成された耐火物16を鉄皮17で被覆し、水平部12の貫通孔14と立ち上げ部13の貫通孔15は連通している。
【0020】
炉底のれんが9をボーリングして残銑排出孔10を形成する際は、残銑抜き装置11の水平部12の高炉側を高炉炉底部1の鉄皮8に固定し、水平部12の貫通孔14にドリルを挿入して炉底のれんが9を削孔し、炉底6に残銑排出孔10を開ける。開口後、水平部12の貫通孔14からドリルを抜いた後、貫通孔14及び貫通孔15が連通した状態を維持して貫通孔14の開口を耐火材(マッド)で塞ぐ。
【0021】
ボーリングにより残銑排出孔10が形成されると、炉底6、残銑排出孔10、貫通孔14及び貫通孔15が連通し、羽口からの送風により炉内圧が上がっているので、残銑7は、炉底6から残銑排出孔10および貫通孔14を流れ、さらに貫通孔15を上昇して排出樋18に流れ、トピードカー4の炉口5へ流入する。
【0022】
本実施例では、残銑抜き装置11の立ち上げ部13の排出レベルがトピードカー4の炉口5のレベルまで上昇しているので、炉内圧が低く、出銑口レベル以上の溶銑を流出させる出銑大樋3まで残銑が上昇しない場合に、この排出レベルまで残銑が上昇する炉内圧、例えば、炉内圧が約0.2MPaの場合、約2mのレベル上げ効果があるので、排出樋18を別途配置することにより、炉底6から排出する残銑7を、トピードカー4のレールのレベル下げをすることなくトピードカー4へ排出することが可能となる。
【実施例2】
【0023】
本実施例は、炉内圧を高くすることにより、出銑口2からの出銑に使用する出銑大樋3を利用して残滓7を抜くものである。
【0024】
図3において、炉内圧が0.4MPaの場合に約4mのレベル上げ効果があるので、炉内圧を上げることにより、通常の出銑口による出銑と同様に、通常使用している出銑大樋、溶銑樋、溶銑傾注樋を使ってトピードカー4へ排出することが可能となる。これにより改造コストを大幅に低減することができる。
【符号の説明】
【0025】
1:高炉底部
2:出銑口
3:出銑大樋
4:トピードカー
5:炉口
6:炉底
7:残銑
8:鉄皮
9:炉底のれんが
10:残銑排出孔
11:残銑抜き装置
12:水平部
13:立ち上げ部
14:水平部の貫通孔
15:立ち上げ部の貫通孔
16:耐火物
17:鉄皮
18:排出樋
19:溶銑樋
20:溶銑傾注樋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高炉炉底部に設けられた出銑口のレベル以下に溜まっている残銑を抜く高炉の残銑抜き方法において、
水平部と、水平部から分岐させて立ち上げた立ち上げ部からなり、水平部と立ち上げ部は軸方向に貫通孔が形成されるとともに水平部の貫通孔と立ち上げ部の貫通孔が連通している残銑抜き装置を高炉炉底部に取り付け、水平部の貫通孔を通して炉底れんがをボーリングして炉底に連通する残銑排出孔を形成し、ボーリング後に貫通孔の高炉外側の開口を閉塞し、高炉内の圧力を上昇させて残銑を残銑排出孔から水平部の貫通孔に流し、さらに立ち上げ部の貫通孔を上昇させて排出することを特徴とする高炉の残銑抜き方法。
【請求項2】
残銑を立ち上げ部の貫通孔より排出樋に排出することを特徴とする請求項1記載の高炉の残銑抜き方法。
【請求項3】
残銑を立ち上げ部の貫通孔より出銑口からの出銑時に使用する出銑大樋に排出することを特徴とする請求項1記載の高炉の残銑抜き方法。
【請求項4】
高炉炉底部に設けられた出銑口のレベル以下に溜まっている残銑を抜く高炉の残銑抜き装置において、
水平部と、水平部から分岐させて立ち上げた立ち上げ部からなり、水平部と立ち上げ部は軸方向に貫通孔が形成されるとともに、水平部の貫通孔と立ち上げ部の貫通孔は連通し、水平部の貫通孔の両端の開口のうち、一方の高炉側の開口は水平部の貫通孔を通してボーリングにより形成された、炉底に連通する残銑排出孔に連通可能であり、他方の高炉外側の開口はボーリングに使用した後に耐火物で閉塞されることを特徴とする高炉の残銑抜き装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−58026(P2011−58026A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−206193(P2009−206193)
【出願日】平成21年9月7日(2009.9.7)
【出願人】(306022513)新日鉄エンジニアリング株式会社 (897)
【出願人】(390022873)日鐵プラント設計株式会社 (275)
【Fターム(参考)】