説明

高炉設備

【課題】高炉設備において、炉頂圧回収タービンの設置に伴う付帯設備を簡素化し、設置費用及びメンテナンスを低減する。
【解決手段】高炉10と、高炉10に熱風を送風する高炉送風機14と、高炉10から発生する副生ガスの圧力エネルギーを回収する炉頂圧回収タービン16とを備えた高炉設備1において、炉頂圧回収タービン16の駆動力が高炉送風機14に伝達されるように構成され、高炉送風機14は、当該高炉送風機14を駆動する電動機20を有し、電動機20と炉頂圧回収タービン16は、高炉送風機14に隣接して配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高炉設備に関するものである。
【背景技術】
【0002】
製鉄所の高炉から発生する副生ガスは発熱量を有しているため、通常は製鉄所内の加熱炉や発電用ボイラ設備などの燃料ガスとして用いられる。この場合、高炉設備には、燃料ガスとしての需要と高炉からの供給量との調整を行う目的で、高炉ガスを一旦貯留するためのガスホルダが設置されるが、高炉の炉頂圧が0.2MPa程度であるのに対して、ガスホルダにおいて貯留可能なガスの圧力は、ガスホルダの構造上0.005MPa程度であるため、通常は図2に示すように、ガスホルダ100と高炉101との間に、炉頂圧回収タービン102とセプタム弁103とを並列に設け、副生ガスをガスホルダで受け入れ可能な圧力に減圧すると共に副生ガスの圧力エネルギー回収を行っている(例えば、特許文献1)。
【0003】
このような高炉設備には、高炉101に熱風炉104を介して熱風を供給する高炉送風機105が設けられ、炉頂圧回収タービン102及びセプタム弁103の上流には、高炉から発生するダストにより炉頂圧回収タービン102の動翼が損傷することを防止するため、集塵設備106が設けられている。炉頂圧回収タービン102には発電機107が接続され、発電機107で発生した電力は製鉄所所内の高圧電気系統に送電されて、所内用の動力として利用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−249808号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、高炉設備に発電機107を設置した場合、発電機107以外にも高圧遮断器、変圧器及び送電用の高圧ケーブル等の付帯設備の設置が必要となり、設置費用及びメンテナンス等のために高いコスト負担が必要となっていた。
【0006】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、高炉設備において、炉頂圧回収タービンの設置に伴う付帯設備を簡素化し、設置費用及びメンテナンスを低減することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の目的を達成するための本発明は、高炉と、高炉に熱風を送風する高炉送風機と、高炉から発生する副生ガスの圧力エネルギーを回収する炉頂圧回収タービンとを備えた高炉設備において、前記炉頂圧回収タービンの駆動力が前記高炉送風機に伝達されるように構成されていることを特徴としている。
【0008】
本発明者らは、高炉設備におけるエネルギーの収支、即ち炉頂圧回収タービンと発電機による発電量と、高炉設備において消費される電力量とを比較した場合、高炉設備において消費する電力量のほうが大きいため、炉頂圧回収タービンにより回収されたエネルギーを電力に変換することなく高炉設備内で消費することができれば、発電機を設けることなく副生ガスの圧力エネルギーを有効に利用できる点、及び一般に高炉送風機の電動機の容量は炉頂圧回収タービンの発電機の容量より大きくなる点に着目した。本発明によれば、炉頂圧回収タービンの駆動力が高炉送風機に伝達されるように構成されているので、炉頂圧回収タービンにより回収された副生ガスの圧力エネルギーを全て高炉送風機で消費することができる。これにより、炉頂圧回収タービンを用いて副生ガスからの圧力エネルギー回収を行うにあたって、従来用いられる発電機が不要となり、それに伴い変圧器や遮断機、高圧ケーブルといった設備も不要となる。従って、高炉設備の付帯設備を簡素化し、設置費用及びメンテナンス費用を低減することができる。
【0009】
前記高炉送風機は、当該高炉送風機を駆動する電動機を有し、前記電動機と前記炉頂圧回収タービンは、前記高炉送風機に隣接して配置されていてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、高炉設備において、炉頂圧回収タービンの設置に伴う付帯設備を簡素化し、設置費用及びメンテナンス費用を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施の形態にかかる高炉設備の構成の概略を示す系統図である。
【図2】従来の高炉設備の構成の概略を示す系統図である。
【図3】高炉送風機、炉頂圧回収タービン及び電動機を減速機を用いて接続した状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について説明する。本実施の形態にかかる高炉設備1は、図1に示すように、高炉10と、当該高炉10に熱風管路11を介して熱風を供給する熱風炉12と、送風管路13を介して熱風炉12に送風を行う高炉送風機14と、高炉10とガス管路15を介して接続され、高炉10から発生する副生ガスの圧力エネルギーを回収する炉頂圧回収タービン16と、ガス管路15に設けられ、副生ガス中に含まれるダストを除去するダスト装置17と、炉頂圧回収タービン16をバイパスするバイパス管路18に設けられたセプタム弁19とを有している。
【0013】
高炉送風機14のロータ14aの一の端部には、高炉送風機14に隣接して配置された電動機20が継手21を介して接続されている。高炉送風機14の仕様は、例えば定格吐出圧力が0.5MPa、定格吐出風量が9000Nm3/minで、定格軸動力が5万5千kWである。また、電動機20は、高炉送風機14の定格軸動力と同じ5万5千kWの出力を持つものが選定されている。
【0014】
炉頂圧回収タービン16は、高炉送風機14に隣接して配置され、炉頂圧回収タービン16のロータ16aの端部は、高炉送風機14のロータ14aの他の端部、即ち電動機20が接続されている側の端部と高炉送風機14を挟んで反対側の端部に継手22を介して接続されている。これにより、炉頂圧回収タービン16の駆動力が高炉送風機14に伝達されるように構成されている。なお、継手21、22としては、例えばフランジ型固定軸継手が用いられる。また、通常の高炉設備1においては高炉の安定操業を目的として予備の高炉送風機が設置されるが、図1においては、予備機の記載を省略し、一台の高炉送風機14のみ描図している。予備の高炉送風機の構成も上述の高炉送風機14と同一である。
【0015】
ガス管路15における炉頂圧回収タービン16の上流には、調速弁23が設けられ、調速弁23により炉頂圧回収タービン16への副生ガスの供給量を制御することで、炉頂圧回収タービン16回転数、又は調速弁23の入口圧力、即ち高炉10の炉頂圧の制御が行われる。炉頂圧回収タービン16によりエネルギー回収を終えて減圧された副生ガスは、ガス管路15を介してセプタム弁19の下流に合流し、その後ガスホルダ(図示せず)に流入する。なお、炉頂圧回収タービン16の定格出力は、例えば2万5千kWである。
【0016】
ダスト装置17は乾式集塵装置であるダストキャッチャ30と、湿式集塵装置であるベンチュリスクラバ31を有している。
【0017】
本実施の形態にかかる高炉設備1は以上のように構成されており、次に、この高炉設備1の運用について説明する。
【0018】
先ず、電動機20により高炉送風機14を駆動し、熱風炉12を介して高炉10に熱風の供給を行うことで高炉10を起動する。
【0019】
高炉10の炉頂圧が上昇し、高炉10から副生ガスが発生すると、セプタム弁19により高炉10の炉頂圧が操業圧力に制御される。セプタム弁19による炉頂圧制御と並行して、調速弁23を所定の速度で開操作し、炉頂圧回収タービン16によるエネルギー回収量を徐々に増加させる。
【0020】
調速弁23の開操作に伴い炉頂圧回収タービン16による副生ガスの回収量が増加すると、セプタム弁19の開度が徐々に低下する。そして、セプタム弁19が全閉となった時点で調速弁23により高炉10の炉頂圧力制御を開始する。この間、高炉送風機14の回転数は電動機20により所定の回転数に維持されるとともに、炉頂圧回収タービン16の出力が増加するに伴い、電動機20へ供給される電力は減少し、その状態で高炉設備1の運転が継続される。
【0021】
以上の実施の実形態によれば、炉頂圧回収タービン16の駆動力が高炉送風機14に伝達されるように構成されているので、炉頂圧回収タービン16により回収された副生ガスの圧力エネルギーを全て高炉送風機14で消費することができる。これにより、炉頂圧回収タービン16を用いて副生ガスからの圧力エネルギー回収を行うにあたって、従来用いられていた発電機及び発電機設置に伴い設置される変圧器や遮断機、高圧ケーブルといった設備が不要となる。したがって、高炉設備1の付帯設備を簡素化し、設置費用及びメンテナンス費用を低減することができる。
【0022】
また、高炉送風機14を電動機20と炉頂圧回収タービン16の二つの駆動機により駆動するので、例えば、電動機20の電気系統に事故が発生し電動機20が停止した場合でも、電気系統事故発生と同時に調速弁23の制御対象を炉頂圧から炉頂圧回収タービン16の回転数に切替えるように構成することで、高炉送風機14の回転数を維持し高炉送風機14による送風を継続することができる。この場合、炉頂圧回収タービン16の回収動力は徐々に減少し、それに伴い高炉送風機14による高炉10への送風量も徐々に減少していくが、高炉10への送風を継続することができる。かかる場合、高炉送風機14の予備機(図示せず)が起動するまでの高炉10の休風時間を短縮することができる。
【0023】
さらには、一般に高炉10の拡大改修が行われた場合は、高炉10の容量拡大に伴い高炉送風機14の更新、電動機20及び炉頂圧回収タービン16の更新が行われるが、本実施の形態にかかる高炉設備1においては、電動機20の更新が不要となり、高炉10の拡大改修に伴う費用を低減することができる。
【0024】
加えて、従来のように炉頂圧回収タービン16を発電機に接続していた場合においては、発電機の同期投入操作等の操作が必要となるため、直ちに炉頂圧回収タービン16の負荷を増加させることができず、その間の副生ガスはエネルギー回収されることなくセプタム弁19により減圧して下流のガスホルダ(図示せず)に供給されていたが、炉頂圧回収タービン16を高炉送風機14に接続することにより同期投入操作等が不要となるため、運転操作が簡便化できるとともに、直ちに炉頂圧回収タービン16の負荷を増加させることができるため、エネルギーロスを低減させることができる。
【0025】
また、従来は、例えば発電機、あるいは炉頂圧回収タービン16の故障により発電機を緊急停止した場合、発電機から例えば製鉄所所内への送電も停止するため、製鉄所所内の電力消費量に対して製鉄所所内での発電量が不足し、高圧電気系統に電圧降下等の影響が生じていた。これに対して、以上の実施の形態によれば、発電機そのものを設けていないため、例えば炉頂圧回収タービン16に故障が発生した場合は、電動機20が停止することで、一時的に製鉄所所内の電力消費量に対して発電量が過剰となるが、この場合は発電量を直ちに低減することで対応製鉄所所内の高圧電気系統に与える影響を最小限とすることができる。
【0026】
なお、以上の実施の形態においては、高炉送風機14と炉頂圧回収タービン16及び電動機20を継手21、22により接続していたが、高炉送風機14と炉頂圧回収タービン16及び電動機20との接続は必ずしも継手21、22により接続させる必要はなく、例えば図3に示すように、高炉送風機14、炉頂圧回収タービン16及び電動機20を隣接して配置して、減速機40を介して接続してもよい。減速機40を用いて接続した場合、より回転数の高い炉頂圧回収タービン16を採用することで炉頂圧回収タービン16そのものを小型化することができる。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明は、高炉設備を簡素化する際に有用である。
【符号の説明】
【0028】
1 高炉設備
10 高炉
11 熱風管路
12 熱風炉
13 送風管路
14 高炉送風機
15 ガス管路
16 炉頂圧回収タービン
17 ダスト除去装置
18バイパス管路
19 セプタム弁
20 電動機
21、22 継手
23 調速弁
30 ダストキャッチャ
31 ベンチュリスクラバ
40 減速機


【特許請求の範囲】
【請求項1】
高炉と、高炉に熱風を送風する高炉送風機と、高炉から発生する副生ガスの圧力エネルギーを回収する炉頂圧回収タービンとを備えた高炉設備において、
前記炉頂圧回収タービンの駆動力が前記高炉送風機に伝達されるように構成されていることを特徴とする高炉設備。
【請求項2】
前記高炉送風機は、当該高炉送風機を駆動する電動機を有し、
前記電動機と前記炉頂圧回収タービンは、前記高炉送風機に隣接して配置されていることを特徴とする、請求項1に記載の高炉設備。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−12693(P2012−12693A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−153050(P2010−153050)
【出願日】平成22年7月5日(2010.7.5)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】