説明

高熱伝導性コンパウンド

【課題】 本発明は、高熱伝導で塗布性に優れ、さらに離油が少ない高熱伝導性コンパウンドを提供する。
【解決手段】 (A)平均粒径5〜50μmの粗粒の無機充填剤と平均粒径0.15〜2μmの細粒の無機充填剤の組合せからなり、それらの質量比が20:80〜85:15の範囲である無機充填剤を88〜97質量%、(B)基油を12質量%未満、(C)ポリオキシアルキレン基と酸無水物基を有する特定の高分子系表面改質剤、(ポリ)グリセリルエーテル、並びにアルケニルコハク酸イミド及びそのホウ素誘導体から選ばれる1種以上を0.08〜4質量%、それぞれ含有する高熱伝導性コンパウンド。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、極めて高い熱伝導率を有する高熱伝導性コンパウンドに関し、油分の分離が少なく、かつ塗布性に優れた高熱伝導性コンパウンドに関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器に使用されている半導体部品の中には、コンピュータのCPUや電源制御用のパワー半導体のように使用中に発熱をともなう部品がある。これらの半導体部品を熱から保護し、正常に機能させるためには、発生した熱をヒートシンク等の放熱部品へ伝導させ放熱する方法がある。熱伝導性コンパウンドは、これら半導体部品と放熱部品を密着させるように両者の間に塗布され、熱の伝導を高めるために用いられる。これら接合部の熱伝導は、熱伝導性コンパウンドの熱伝導率が高いほど優れ、また、塗布性が良いほど(塗膜が薄いほど、密着性が高いほど)高くなる。
【0003】
熱伝導性コンパウンドは、基油に熱伝導率の高い充填剤を多量に分散することで熱伝導率を高めたグリース状組成物である。一般には、基油にシリコーン油を用い、シラン系の表面改質剤等により充填剤を分散させている。そして、充填剤としては酸化亜鉛、酸化アルミニウムなどの金属酸化物や、窒化珪素、窒化アルミ、窒化ホウ素などの窒化物、アルミニウムや銅などの金属の粉末が使用されている。従来の熱伝導性コンパウンドの具体例としては、例えば、シリコーン油に窒化珪素を分散させる技術が開示されている(特許文献1参照)。また、塗布性と熱伝導率を向上させる目的で液状炭化水素やフッ素油を基油として使用し、特定の無機充填剤と組み合わせる技術が開示されている(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平9−97988号公報
【特許文献2】特許第2938428号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
基油にシリコーン油を用いた熱伝導性コンパウンドは、シリコーン油の表面張力が小さいために使用中に油分が分離しやすくなる場合がある。これにより、コンパウンドが硬くなると、剥離やひび割れを生じ密着性が損なわれることにより熱伝導性が低下する場合がある。
一般に、熱伝導性コンパウンドの熱伝導率は充填剤の量が多いほど高くなるが、一方、充填剤の量が多くなるとちょう度が低くなり十分な塗布性が得られなくなる恐れがある。この場合、塗膜の膜厚が増えたり気泡が混入したりすることで、熱伝導を妨げる結果となる。
本発明の目的は、高熱伝導で塗布性に優れ、さらに離油が少ない高熱伝導性コンパウンドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を達成するために鋭意検討した結果、特定の表面改質剤を配合することで、コンパウンドが硬くならずに無機充填剤を高充填させられることを見出し本発明に至った。
すなわち、本発明は、(A)平均粒径5〜50μmの粗粒の無機充填剤と平均粒径0.15〜2μmの細粒の無機充填剤の組合せからなり、それらの質量比が20:80〜85:15の範囲である無機充填剤を88〜97質量%、
(B)基油を12質量%未満、
(C)ポリオキシアルキレン基と酸無水物基を有する一般式(1)で表される高分子系表面改質剤、
【0006】
【化2】

【0007】
(式中、AOはオキシアルキレン基であり、Rは炭素数1〜24の炭化水素基であり、nは1〜150であり、mは重量平均分子量が500〜10万の範囲になる数である。)、(ポリ)グリセリルエーテル、並びにアルケニルコハク酸イミド及びそのホウ素誘導体から選ばれる1種以上を0.08〜4質量%、
それぞれ含有することを特徴とする高熱伝導性コンパウンドを提供するものである。
また、本発明は、上記高熱伝導性コンパウンドにおいて、無機充填剤が、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム及び炭化ケイ素から選ばれる少なくとも1種以上である高熱伝導性コンパウンドを提供するものである。
【0008】
また、本発明は、上記高熱伝導性コンパウンドにおいて、基油が、鉱油、合成炭化水素油、ジエステル、ポリオールエステル及びフェニルエーテルから選ばれる少なくとも1種以上である高熱伝導性コンパウンドを提供するものである。
また、本発明は、上記高熱伝導性コンパウンドにおいて、基油がジエステル及びポリオールエステルから選ばれる1種以上を含有し、その含有量が基油中に2〜90質量%である高熱伝導性コンパウンドを提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の高熱伝導性コンパウンドは、特定の表面改質剤の効果により無機充填剤の充填量を高め、塗布性を損なうことなく優れた熱伝導性を実現するものである。本発明の高熱伝導性コンパウンドを使用することで、熱対策の必要な電子部品の放熱性を向上でき、特にCPUやパワー半導体等の放熱材料として好適である。さらに、本発明の高熱伝導性コンパウンドは、押圧薄膜化性に優れ、容易に薄膜化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明に用いられる無機充填剤(A)は、平均粒径が5〜50μmの粗粒の無機充填剤と平均粒径が0.15〜2μmの細粒の無機充填剤からなる。粗粒の無機充填剤の平均粒径は、50μmを越えると塗膜が厚くなり熱伝導性が低下する傾向にある。また、細粒の無機充填剤の平均粒径は、0.15μm未満の場合には、充填剤の表面積が大きすぎて、液体成分(基油と表面改質剤)が不足し、ちょう度が低くなったりコンパウンドを調製できなくなる傾向にある。一方、粗粒の無機充填剤の平均粒径が5μm未満の場合や、細粒の無機充填剤の平均粒径が2μmを超える場合には、いずれも無機充填剤が最密充填できなくなる場合があり、結果として十分な熱伝導率が得られなくなる傾向にある。粗粒無機充填剤の平均粒径は、好ましくは5〜40μmであり、特に好ましくは8〜30μmである。細粒無機充填剤の平均粒径は、好ましくは0.2〜1.8μmであり、特に好ましくは0.3〜1.5μmである。
【0011】
また、粗粒の無機充填剤と細粒の無機充填剤の混合比率は、質量比で20:80〜85:15の範囲で混合するのが好ましい。細粒の無機充填剤が多すぎると、充填剤の表面積が大きくなりすぎて液体成分(基油と表面改質剤)が不足しちょう度が低くなったりコンパウンドを調製できなくなる場合がある。一方、細粒の無機充填剤が不足すると、無機充填剤を最密充填できない場合があり、結果として十分な熱伝導率が得られない場合がある。
【0012】
無機充填剤の種類としては、基油より高い熱伝導率を有するものであれば特に限定しないが、例えば、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化チタン、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化チタン、シリカ、炭化ケイ素、ダイヤモンド、ナノカーボン、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、及び各種金属の紛体などが例示される。この中でも、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、炭化ケイ素の粉体が好ましく、更には酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、炭化ケイ素の粉体が特に好ましい。本発明の無機充填剤の種類は1種類であってもよいし、また2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0013】
無機充填剤の含有率は88〜97質量%であるが、含有率が高いほど熱伝導性に優れ、好ましくは90〜97質量%であり、さらに好ましくは92〜96質量%である。88質量%未満では熱伝導性が低くなったり、また離油を生じ基油の滲み出しを生じることがある。一方、97質量%を越えるとちょう度が低くなり十分な塗布性を保てなくなったり、コンパウンドが調製できなくなる。
【0014】
基油(B)としては、種々の基油が使用でき、例えば、鉱油、合成炭化水素油、エステル、ポリエーテル、リン酸エステル、シリコーン油及びフッ素油などが挙げられる。基油の分離を防止する点においては、表面張力の低いシリコーン油及びフッ素油は、あまり好ましくない。基油は1種単独で使用しても、2種以上を組み合わせて使用しても良い。
合成炭化水素油としては、例えば、エチレンやプロピレン、ブテン、及びこれらの誘導体などを原料として製造されたアルファオレフィンを、単独または2種以上混合して重合したものが挙げられる。具体的には、1−デセンのオリゴマーであるポリアルファオレフィン(PAO)や、1−ブテンやイソブチレンのオリゴマーであるポリブテン、エチレンとアルファオレフィンのコオリゴマー等が挙げられる。また、アルキルベンゼンやアルキルナフタレン等を用いることもできる。
【0015】
エステルとしては、ジエステルやポリオールエステルが挙げられる。ジエステルとしては、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸等の二塩基酸のエステルが挙げられる。
ポリオールエステルとしては、β位の炭素上に水素原子が存在していないネオペンチルポリオールのエステルで、具体的にはネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等のカルボン酸エステルが挙げられる。
また、上記以外にも、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、2−ブチル−2−エチルプロパンジオール、2,4−ジエチル−ペンタンジオール等の脂肪族二価アルコールと、直鎖または分岐鎖の飽和脂肪酸とのエステルも用いることができる。
【0016】
ポリエーテルとしては、ポリグリコールやフェニルエーテルなどが挙げられる。
ポリグリコールとしては、ポリエチレングリコールやポリプロピレングリコール、及びこれらの誘導体などが挙げられる。
フェニルエーテルとしては、下記一般式(2)のアルキル化ジフェニルエーテル等が挙げられる。
【化3】

【0017】
(式中、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10及びR11は、水素原子又は炭素数1〜22の炭化水素基であり、R〜R11のうち、少なくとも1つは炭素数8〜22の炭化水素基である。)
リン酸エステルとしては、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート等が挙げられる。
熱伝導性コンパウンドは発熱部に塗布されるため、長時間高温にさらされる。このため、基油としては熱酸化安定性に優れることが望ましい。基油の動粘度は、40℃で10mm/s〜500mm/sであることが好ましい。粘度が低すぎると、高温になった時に、蒸発、離油などが生じる恐れがある。また、粘度が高すぎるとちょう度が低くなりコンパウンドが硬くなる恐れがある。
【0018】
ジエステルやポリオールエステルは、他の基油成分と組み合わせて用いることでちょう度を高くすることができる。その際、組み合わせるジエステルやポリオールエステルは、1種であってもよいし、2種以上組み合わせてもよい。また、ジエステルやポリオールエステルの割合は、ジエステルやポリオールエステルを含む全ての基油成分100質量%に対して2〜90質量%が好ましく、より好ましくは2〜50質量%であり、さらに好ましくは4〜30質量%である。上記範囲でジエステルやポリオールエステルを配合することで、より高いちょう度とすることができる。
基油の含有量としては12質量%未満、好ましくは2〜12質量%であり、含有量がこれ以上の場合は、ちょう度が高くなりすぎ、コンパウンドが流れ出てしまう場合がある。さらに離油を生じたり、熱伝導性が低下する場合がある。
【0019】
本発明に用いられる表面改質剤(C)は、無機充填剤粉末の表面に吸着して基油との親和性を向上させることにより、無機充填剤の充填量を増加させ熱伝導性を向上させたり、ちょう度を高めて塗布性を向上させる働きがある。なお、本発明の表面改質剤を用いることで、塗膜をより一層薄くすることができ、発熱部品から放熱部品への熱伝導を効率よく行うことができる。そのため、例えば4W/m・K未満のコンパウンドであっても、本発明の表面改質剤を用いて薄膜化することで効率のよい熱伝導が可能となる。
さらに、本発明に用いられる表面改質剤(C)は、従来表面改質剤として用いられている物質と比較すると耐熱性が高い。そのため、油分の熱・酸化安定性が良好で、耐熱性の高いコンパウンドを得ることができる。
表面改質剤の種類としては、ポリオキシアルキレン基と酸無水物基を有する一般式(1)で表わされる高分子系表面改質剤、(ポリ)グリセリルエーテル、およびアルケニルコハク酸イミドやそのホウ素誘導体が好ましく使用できる。
【0020】
一般式(1)において、AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基であり、オキシアルキレン基はオキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基から選ばれる1種または2種以上である。オキシアルキレン基としては、オキシブチレン基が好ましい。オキシアルキレン基が2種以上の場合、ランダム構造でもブロック構造でもよい。Rは炭素数1〜24の炭化水素基であり、好ましくは10〜22の炭化水素基であり、より好ましくは14〜20の炭化水素基である。炭化水素基は、アルキル基、アルニケル基、アリール基などが挙げられ、アルキル基、アルニケル基が好ましい。nは1〜150であり、好ましくは5〜100である。mは重合度を表わし重量平均分子量が500〜100,000の範囲となる数であり、好ましくは重量平均分子量が2,000〜50,000の範囲となる数であり、特に好ましくは5,000〜40,000の範囲となる数である。
【0021】
(ポリ)グリセリルエーテルは、一般式(3)で表わされる化合物である。
【化4】

一般式(3)において、R12は炭素数8以上の炭化水素基を表わし、例えば、炭素数8以上のアルキル基、アルケニル基、アリール基が挙げられ、炭素数8以上のアルキル基、アルケニル基が好ましい。R12の炭素数は、8〜30が好ましく、10〜26がより好ましく、12〜22が特に好ましい。また、一般式(3)において、pはグリセリンの重合度を表わす係数であって、1以上の数であり、好ましくは1〜5の数である。なお、pが1以上の場合は、pは平均値である。pが5を越えると基油への溶解性が悪くなる。
【0022】
アルケニルコハク酸イミドおよびそのホウ素誘導体は、一般式(4)で表わされる化合物である。
【化5】

【0023】
一般式(4)においてR13は炭素数1〜50のアルケニル基又はポリアルケニル基であり、2個のR13は同一でも異なっていてもよい。アルケニル基としては、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基などが挙げられ、ポリアルケニル基としては、ポリプロペニル基、ポリブテニル基、ポリペンテニル基などが挙げられる。R14は炭素数2〜5のアルキレン基である。qは1〜10であり、q+1個のR14は同一でも異なっていてもよい。Xはホウ素含有置換基であり、Xとしては、例えば化学式(5)の基が例示できる。
【0024】
【化6】

【0025】
このとき、ポリアルケニル基の分子量は70〜50000程度のものが好ましく、200〜5000がより好ましく、500〜3000が
特に好ましい。
表面改質剤(C)は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明に用いる表面改質剤は、0.08質量%〜4.0質量%含有することが好ましい。さらに好ましくは0.1〜3.0質量%であり、特に好ましくは0.1〜2.0質量%である。含有量が0.08質量%より少ない場合、効果が小さく、含有量が4.0質量%より多くても効果の向上は期待できない。これら表面改質剤は、1種単独でも2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0026】
また、本発明の高熱伝導性コンパウンドには必要に応じて、公知の添加剤を適宜配合することができる。これらとしては、例えば、酸化防止剤としてはフェノール系、アミン系、イオウ・リン系等の化合物が、さび止め剤としてはスルホン酸塩、カルボン酸、カルボン酸塩等の化合物が、腐食防止剤としてはベンゾトリアゾールおよびその誘導体等の化合物、チアジアゾール系化合物が、増粘剤・増ちょう剤としてはポリブテン、ポリメタクリレート、脂肪酸塩、ウレア化合物、石油ワックス、ポリエチレンワックス等が挙げられる。これらの添加剤の配合量は、通常の配合量であればよい。
【0027】
本発明の高熱伝導性コンパウンドの製造に関しては、均一に成分を混合できればその方法にはよらない。一般的な製造方法としては、乳鉢、プラネタリーミキサー、2軸式押出機などにより混練りを行い、グリース状にした後、さらに三本ロールにて均一に混練りする方法がある。
本発明の高熱伝導性コンパウンドのちょう度は200以上であれば使用可能であるが、塗布性、拡がり性、付着性、離油防止性などの点から250〜430であることが好ましい。
【実施例】
【0028】
以下、実施例により本発明を詳述するが、本発明はこれによって何等限定されるものではない。
実施例及び比較例に用いた充填剤と基油および表面改質剤を表1〜3に示す。
【0029】
【表1】

【0030】
【表2】

表中、Phe1は、一般式(2)のR〜R11のうち、1つ又は2つが炭素数12と炭素数14の直鎖又は分岐鎖アルキル基のものを示す。
【0031】
【表3】

【0032】
(実施例1〜27)
下記表4〜表9に実施例1〜27の組成を示す。なお、表中のその他※は、アミン系酸化防止剤を示す。
表4〜9の組成を配合して、熱伝導性コンパウンドを以下の方法で調製した。
基油に表面改質剤、酸化防止剤等の各種添加剤を溶解し、無機充填剤とともにプラネタリーミキサーまたは自動乳鉢に入れた。室温〜60℃で30分混練りを行いよく混合し、グリース状とした。その後、三本ロールによる混練りを2回実施して熱伝導性コンパウンドを調製した。
得られた熱伝導性コンパウンドを用いて、以下に示す性能を評価した。ちょう度は、JIS−K2220に準拠して不混和ちょう度を測定した。ちょう度の値が大きいほどコンパウンドが軟らかくなり、逆に小さいほど硬くなる。離油度はJIS−K2220に準拠して測定した。熱伝導率は、熱線法により、測定温度0℃で測定した。これらの測定結果を表12に示す。熱安定性試験は、熱伝導性コンパウンド0.25mlを鉄板に挟み、厚さ200μmに薄膜化し、120℃で1000時間または150℃で500時間加熱後、ちょう度を測定することにより行った。この測定結果を表14に示す。押圧薄膜化試験は、熱伝導性コンパウンド0.05mlを表面粗さがRa=0.5μmの2枚のアルミニウム板に挟み、3kgの荷重をかけて押し潰し、300秒後の拡がり面積を測定し、膜厚を算出した。その測定結果を表15に示す。
【0033】
【表4】

【0034】


【表5】

【0035】
【表6】

【0036】

【表7】

【0037】
【表8】

【0038】
【表9】

【0039】
(比較例1〜10)
下記表10及び表11に比較例1〜10の組成を示す。なお、表中のその他※は、アミン系酸化防止剤を示す。
表10及び表11の組成を配合して実施例1と同様にして、熱伝導性コンパウンドを調製した。
【0040】
【表10】

【0041】

【表11】

【0042】
表12に実施例1〜27の不混和ちょう度、熱伝導率、離油度を示す。また、表13に比較例1〜10の不混和ちょう度、熱伝導率、離油度を示す。
【0043】
【表12】

【0044】
【表13】

【0045】
【表14】

【0046】
【表15】

【0047】
表12からわかるように実施例1〜27は、充填剤を高充填させて熱伝導性を高めても、ちょう度が高く塗布性に優れるとともに、離油の発生もみられない。
一方、表13からわかるように、細粒の無機充填剤のみを用いて高充填にした比較例1、2では、液体成分が不足しグリース状にならない。粗粒の無機充填剤のみを用いた比較例3では、熱伝導率が悪くなり、またちょう度が高すぎるために離油が大きく、安定性が悪い傾向にある。表面改質剤を配合しなかったり少なすぎるとちょう度が低くなり、コンパウンドが硬くなるかグリース状にならない(比較例4,5)。無機充填剤の充填剤の量が少ない比較例6では、高いちょう度が得られるが、熱伝導率が低下してしまう。無機充填剤の充填剤の量が多すぎる比較例7では、グリース状にならない。シラン系の表面改質剤等、本発明の(C)成分以外の表面改質剤を用いた比較例8〜10では、充填率を上げるとグリース状にならないか、ちょう度は本願実施例に比べて低く、劣っていることがわかる。
また、表14からわかるように、実施例23は熱負荷を受けた後もグリース状を保っている。さらに、表15からわかるように、実施例7、8、23は半導体とヒートシンク等との接合を模擬した押圧薄膜化試験においても、容易に薄膜化される。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明の高熱伝導性コンパウンドは、熱対策の必要な電子部品の放熱性を向上でき、特にCPUやパワー半導体等の放熱材料として好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)平均粒径5〜50μmの粗粒の無機充填剤と平均粒径0.15〜2μmの細粒の無機充填剤の組合せからなり、それらの質量比が20:80〜85:15の範囲である無機充填剤を88〜97質量%、
(B)基油を12質量%未満、
(C)ポリオキシアルキレン基と酸無水物基を有する一般式(1)で表される高分子系表面改質剤、
【化1】

(式中、AOはオキシアルキレン基であり、R1は炭素数1〜24の炭化水素基であり、nは1〜150であり、mは重量平均分子量が500〜10万の範囲になる数である。)、(ポリ)グリセリルエーテル、並びにアルケニルコハク酸イミド及びそのホウ素誘導体から選ばれる1種以上を0.08〜4質量%、
それぞれ含有することを特徴とする高熱伝導性コンパウンド。
【請求項2】
無機充填剤が、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム及び炭化ケイ素から選ばれる少なくとも1種以上である請求項1に記載の高熱伝導性コンパウンド。
【請求項3】
基油が、鉱油、合成炭化水素油、ジエステル、ポリオールエステル及びフェニルエーテルから選ばれる少なくとも1種以上である請求項1又は2に記載の高熱伝導性コンパウンド。
【請求項4】
基油がジエステル及びポリオールエステルから選ばれる1種以上を含有し、その含有量が基油中に2〜90質量%である請求項1〜3のいずれかに記載の高熱伝導性コンパウンド。

【公開番号】特開2006−96973(P2006−96973A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−59722(P2005−59722)
【出願日】平成17年3月3日(2005.3.3)
【出願人】(398053147)コスモ石油ルブリカンツ株式会社 (123)
【Fターム(参考)】