説明

高粘度O/Wクリームの製造方法

【課題】多量の増粘剤を加えることがなく、また、簡易性及び経済性に優れた高粘度O/Wクリームの製造方法を提供する。
【解決手段】高粘度O/Wクリームの製造方法は、(A)非イオン性界面活性剤と、(B)前記非イオン性界面活性剤とともに水中でαゲルを形成し得る炭素数16以上の直鎖状高級アルコールと、(C)油分とを含む油相と、(D)水を含む水相とを70℃以上の温度で乳化してO/W乳化物(乳化パーツ)を調製し、この乳化パーツを攪拌しながら冷却し、水相中で油相がαゲルを形成する温度領域のピーク温度以上70℃未満で撹拌を停止することを特徴とする。前記ピーク温度はDSCによる前記乳化パーツの発熱ピークである。また、高粘度O/Wクリームの粘度は8,000mPa・s(B型粘度計、30℃)以上であることが好適である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高粘度O/Wクリームの製造方法、特に簡易性、経済性に優れた製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高粘度のクリーム等を製造する際には、処方中に2質量%以上の高級アルコールを配合してαゲルを形成させるか、増粘剤を多量に配合する必要があった。また、このような高粘度クリームを調製する方法としては、室温以上に融点を持つ成分(親水性非イオン性界面活性剤、脂肪酸、高級アルコール、ワックス等)のみならず、配合される全成分をその融点以上に加熱し、乳化した組成物をオンレーターなどの冷却機で室温付近まで冷却する方法が用いられてきた(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、多量の高級アルコールや増粘剤を用いると、クリームの使用時にべたつきを招いていた。また、従来行われている融点以上で乳化した組成物を冷却する方法は加熱や熱交換機の使用によりエネルギーを要するために無駄が多いだけでなく、オンレーター等の冷却機の使用後において洗浄に多量の水を使うこととなり、環境負荷が高くなる。
【0004】
したがって、多量の増粘剤を加えることなく、またオンレーター等の冷却装置を用いることなく、経済的に優れながら容易に製造することができ、従来と同等以上の使用性を有した高粘度O/Wクリームを開発することが望まれていた。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】妹尾学著,「界面活性の化学と応用」,大日本図書,1995年,p.160
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記背景技術の事情に鑑みなされたものであり、その解決すべき課題は、多量の増粘剤を加えることがなく、また、簡易性及び経済性に優れた高粘度O/Wクリームの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述の課題に鑑み、本発明者らが鋭意研究を重ねた結果、非イオン性界面活性剤、前記非イオン性界面活性剤とともに水中でαゲルを形成し得る炭素数16以上の直鎖状高級アルコール、油分等を含む油相と、水相成分(水、保湿剤等)とを70℃以上で乳化して、これを攪拌しながら冷却する際に水相中で油相がαゲルを形成する温度領域のピーク温度以上で攪拌を停止することにより、高粘度O/Wクリームを製造することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、(A)非イオン性界面活性剤と、(B)前記非イオン性界面活性剤とともに水中でαゲルを形成し得る炭素数16以上の直鎖状高級アルコールと、(C)油分と、を含む油相と、(D)水を含む水相とを70℃以上の温度で乳化してO/W乳化物(乳化パーツ)を調製し、この乳化パーツを攪拌しながら冷却し、水相中で油相がαゲルを形成する温度領域のピーク温度以上70℃未満で撹拌を停止することを特徴とする高粘度O/Wクリームの製造方法である。
【0009】
また、前記高粘度O/Wクリームの製造方法において、前記油相と、前記水相の一部とを70℃以上の温度で乳化して乳化パーツを調製し、この乳化パーツを攪拌しながら20〜40℃の残りの主水相を前記乳化パーツと混合して冷却し、水相中で油相がαゲルを形成する温度領域のピーク温度以上70℃未満で撹拌を停止することが好適である。
【0010】
また、前記高粘度O/Wクリームの製造方法において、攪拌停止温度が55℃以下であることが好適である。
また、前記高粘度O/Wクリームの製造方法において、前記水相中で油相がαゲルを形成する温度領域のピーク温度がDSC(示査走査型熱量測定)による前記乳化パーツの発熱ピークであることが好適である。
【0011】
また、前記高粘度O/Wクリームの製造方法において、高粘度O/Wクリームの粘度が8,000mPa・s(B型粘度計、30℃)以上であることが好適である。
また、前記高粘度O/Wクリームの製造方法において、前記主水相と前記乳化パーツの質量比が3:1〜1:1であることが好適である。
【発明の効果】
【0012】
本発明にかかる高粘度O/Wクリームの製造方法によれば、増粘剤を多量に配合することなく、またオンレーターのような冷却機を用いることがなく、低エネルギーで容易に製造することができるため経済性に優れている。さらに、粘度の低い化粧料と同一の処方成分であっても、本発明の製造方法によれば、より高粘度なものにすることができるため、増粘剤の多量使用を抑えることができ、使用感触が良好になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の高粘度O/Wクリームにおける乳化パーツのDSC測定結果である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の構成について詳述する。
本発明にかかる高粘度O/Wクリームは、(A)非イオン性界面活性剤と、(B)前記非イオン性界面活性剤とともに水中でαゲルを形成し得る炭素数16以上の直鎖状高級アルコールと、(C)油分と、を含む油相と、(D)水を含む水相とを70℃以上の温度で混合して乳化し、得られたO/W乳化物(乳化パーツ)を冷却する過程において、水相中で油相がαゲルを形成する温度領域のピーク温度以上で撹拌を停止することによって得られ、高粘度O/Wクリームの乳化粒子界面にはαゲルが形成されていることを特徴としている。
【0015】
前記αゲルは、水との共存下において、界面活性剤が炭素数16以上の直鎖状高級アルコールや未中和の脂肪酸とともに形成する、ラメラ状の2分子膜からなる会合体のことをいう。このαゲルの形成温度は、高級アルコールや脂肪酸の鎖長及び高級アルコールや未中和の脂肪酸と界面活性剤のモル比に依存して変化することは、福島正二著「セチルアルコールの物理化学」(フレグランスジャーナル社、1992年)に記載されている。
【0016】
本発明に用いられる(A)非イオン性界面活性剤は、水相中で油相がαゲルを形成し得るような非イオン性界面活性剤であれば特に限定されるものではない。
【0017】
本発明に用いられる(A)非イオン性界面活性剤の例としては、ポリオキシエチレン脂肪酸グリセリル、ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体、脂肪酸ポリオキシエチレンソルビタン、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、マルチトールヒドロキシ脂肪族アルキルエーテル、アルキル化多糖、アルキルグルコシド、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油グリセリルなどが挙げられ、親水性であるものが好ましく、特にHLB8以上のものが好ましいが、モノステアリン酸グリセリンなどの、親油性の非イオン性界面活性剤を組み合わせて使用することができる。
【0018】
本発明に用いられる(B)炭素数16以上の直鎖状高級アルコールは、前記非イオン性界面活性剤とともに水中でαゲルを形成し得るものであり、化粧品、医薬品、医薬部外品等の分野において用いられ得るものであれば特に限定されるものでなく、例としては、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、などが挙げられる。好ましくは炭素数16〜24の直鎖状高級アルコールである。
なお、αゲルの形成の上では、バチルアルコール、モノグリセライド等を添加することが好ましい。
【0019】
(A)非イオン界面活性剤と(B)炭素数16以上の直鎖状高級アルコールの濃度は、特に限定されるものではないが、高粘度O/Wクリーム中、(A)非イオン界面活性剤と(B)炭素数16以上の直鎖状高級アルコールの合計量を、(C)油分10質量部に対して0.5〜10質量部とすることが好ましい。0.5質量部未満の場合には、界面活性剤量が少ないため、安定性の高い高粘度O/Wクリームが得られない場合があり、10質量部を超える場合には、界面活性剤量が多すぎるため、使用性の点で好ましくない傾向がある。
【0020】
本発明に用いられる(C)油分としては、特に限定されるものではないが、次のようなものが挙げられる。
液体油脂として、例えば、アボガド油、ツバキ油、タートル油、マカデミアナッツ油、トウモロコシ油、ミンク油、オリーブ油、ナタネ油、卵黄油、ゴマ油、パーシック油、小麦胚芽油、サザンカ油、ヒマシ油、アマニ油、サフラワー油、綿実油、エノ油、大豆油、落花生油、茶実油、カヤ油、コメヌカ油、シナギリ油、日本キリ油、ホホバ油、胚芽油、トリグリセリン等が挙げられる。
固体油脂としては、例えば、カカオ脂、ヤシ油、馬脂、硬化ヤシ油、パーム油、牛脂、羊脂、硬化牛脂、パーム核油、豚脂、牛骨脂、モクロウ核油、硬化油、牛脚脂、モクロウ、硬化ヒマシ油等が挙げられる。
【0021】
ロウ類としては、例えば、ミツロウ、カンデリラロウ、綿ロウ、カルナウバロウ、ベイベリーロウ、イボタロウ、鯨ロウ、モンタンロウ、ヌカロウ、ラノリン、カポックロウ、酢酸ラノリン、液状ラノリン、サトウキビロウ、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、還元ラノリン、ジョジョバロウ、硬質ラノリン、セラックロウ、POEラノリンアルコールエーテル、POEラノリンアルコールアセテート、POEコレステロールエーテル、ラノリン脂肪酸ポリエチレングリコール、POE水素添加ラノリンアルコールエーテル等が挙げられる。
【0022】
炭化水素油としては、例えば、流動パラフィン、オゾケライト、スクワラン、プリスタン、パラフィン、セレシン、スクワレン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス等が挙げられる。
【0023】
合成エステル油としては、ミリスチン酸イソプロピル、オクタン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸ミリスチル、オレイン酸デシル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、酢酸ラノリン、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソセチル、12−ヒドロキシステアリン酸コレステリル、ジ−2−エチルヘキサン酸エチレングリコール、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、モノイソステアリン酸N−アルキルグリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ−2−ヘプチルウンデカン酸グリセリン、トリ−2−エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ−2−エチルヘキサン酸ペンタエリスリトール、トリ−2−エチルヘキサン酸グリセリン、トリオクタン酸グリセリン、トリイソパルミチン酸グリセリン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、セチル2−エチルヘキサノエート、2−エチルヘキシルパルミテート、トリミリスチン酸グリセリン、トリ−2−ヘプチルウンデカン酸グリセライド、ヒマシ油脂肪酸メチルエステル、オレイン酸オレイル、アセトグリセライド、パルミチン酸2−ヘプチルウンデシル、アジピン酸ジイソブチル、N-ラウロイル−L−グルタミン酸−2−オクチルドデシルエステル、アジピン酸ジ−2−ヘプチルウンデシル、エチルラウレート、セバシン酸ジ2−エチルヘキシル、ミリスチン酸2-ヘキシルデシル、パルミチン酸2−ヘキシルデシル、アジピン酸2−ヘキシルデシル、セバシン酸ジイソプロピル、コハク酸2−エチルヘキシル、クエン酸トリエチル等が挙げられる。
【0024】
シリコーン油としては、例えば、鎖状ポリシロキサン(例えば、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン等);環状ポリシロキサン(例えば、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン等)、3次元網目構造を形成しているシリコーン樹脂、シリコーンゴム、各種変性ポリシロキサン(アミノ変性ポリシロキサン、ポリエーテル変性ポリシロキサン、アルキル変性ポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン等)、アクリルシリコーン類等が挙げられる。
【0025】
さらに(C)油分中に、高級脂肪酸を一種または二種以上配合することが好適である。油分中にこれらを配合することで乳化粒子が更に微細化され、より安定性の高いO/Wクリームが得られる。高級脂肪酸としては炭素数16〜24のものが好適であり、例えば、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸などの不飽和脂肪酸、イソステアリン酸、イソパルミチン酸、イソミリスチン酸、ベヘニン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸等が挙げられる。高級脂肪酸は、O/Wクリーム中0.1〜3質量%、さらには0.2〜1.5質量%が好ましい。
【0026】
本発明に用いられる(D)水を含む水相とは、水あるいは水と水性溶媒を主な媒体としてなる処方であれば、特に限定されるものではなく、水あるいは水性溶媒の他、通常、化粧品、医薬品等に用いられる成分を安定性に影響が出ない範囲の配合量で配合していても構わない。
なお、本発明の高粘度O/Wクリームにおける水の総配合量は、特に限定されるものではないが、一般的には、高粘度O/Wクリーム中40〜95重量%であることが好ましい。
【0027】
本発明の製造方法における水相は水性溶媒を含むことが好ましい。水性溶媒としては、特に限定されるものではなく、公知の水性溶媒の中から、(C)油分、及び(A)非イオン性界面活性剤の種類に応じて、適宜選択して用いることができる。ここで、水性溶媒とは、水と相溶性を示す室温で液状の物質を意味し、例えば、ポリプロピレングリコール・ポリエチレングリコール共重合体又はそのジメチルエーテル、ポリエチレングリコール又はそのアルキルエーテル、ジプロピレングリコール、イソプレングリコール、プロピレングリコールを挙げることができる。
【0028】
また、本発明に用いられる(C)油分と水性溶媒との組み合わせとしては、水性溶媒が上記油分に相溶しない必要がある。このような組み合わせとしては、例えば、(C)液状油分がジメチルポリシロキサンである場合には、水性溶媒としてポリプロピレングリコール・ポリエチレングリコール共重合体又はそのジメチルエーテル、ポリエチレングリコール又はそのエチルエーテル、1,3−ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、イソプレングリコール等、(C)がシクロジメチコン(5量体)である場合には、水性溶媒としてポリプロピレングリコール・ポリエチレングリコール共重合体又はそのジメチルエーテル、ポリエチレングリコールまたはそのエチルエーテル等、(C)がメチルフェニルポリシロキサンである場合には、水性溶媒としてポリプロピレングリコール・ポリエチレングリコール共重合体又はそのジメチルエーテル、1,3−ブチレングリコール、グリセリン等、(C)が流動パラフィンである場合には、水性溶媒としてポリプロピレングリコール・ポリエチレングリコール共重合体又はそのジメチルエーテル、ポリエチレングリコール又はそのエチルエーテル、1,3−ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、イソプレングリコール等を挙げることができる。
【0029】
本発明に用いられる水性溶媒としては、具体的には、分子内に0〜3個の水酸基を有する水性溶媒が挙げられ、さらに具体的には、ポリプロピレングリコール・ポリエチレングリコール共重合物またはそのアルキルエーテル、ポリエチレングリコールまたはそのアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンジカルボン酸エステル、1,3−ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、イソプレングリコール、1,2−ペンタングリコール、1,2−ヘキサングリコール、2−メチル−1,3−プロパノール、エチルカルビトール、1,2−ブチレングリコール、グリセリン等を挙げることができ、これらの中から(C)油分、及び(A)非イオン性界面活性剤の種類に応じて、適宜選択して用いることができる。また、本発明に用いられる水性溶媒としては、これらの2種類以上を組み合わせて用いても良い。
一方で、分子内に水酸基を4個以上有する水溶性の物質は、通常、室温で固体になってしまい、本発明に用いられる水性溶媒として効果を発揮することができないことが多い。
【0030】
また、本発明に用いられる水性溶媒の配合量は、特に限定されるものではないが、70℃以上で調製するO/W乳化パーツ中5質量%以上配合することが好ましい。5質量%未満であると、安定な高粘度O/Wクリームの調製が困難になる傾向にある。
【0031】
本発明の製造方法において水相を油相と乳化する水相(一部水相)と、乳化パーツと混合する水相(主水相)とに分けて用いる場合、主水相と前記乳化パーツの質量比は3:1〜1:1であることが好適であり、これを逸脱すると高粘度のO/Wクリームが得られない場合や、使用性に劣るものとなる場合がある。
【0032】
本発明の製造方法にかかるαゲルの形成温度領域は、配合する界面活性剤や高級アルコールの種類、水相の構成等にもよるが典型的には約37〜52℃である。
【0033】
また、後から添加する主水相の温度は、乳化パーツとの混合終了直後の温度がαゲルの形成温度領域内(例えば37〜52℃)、さらには前記領域内でそのピーク温度以上になるように調節されることが好ましい。具体的には20〜40℃であることが好ましく、20℃未満である場合は、主水相を冷やすエネルギーが過剰に必要となり、経済性に劣る傾向にあり、また、主水相混合終了直後の温度が低くなりすぎて目的の高粘度O/Wクリームが得られなくなる場合がある。また、40℃を超える場合には、エネルギー的なメリットが少なくなる。
【0034】
水相中で油相がαゲルを形成していることは、DSC(示査走査型熱量測定)により確認することができる。(A)親水性非イオン性界面活性剤と(B)炭素数16以上の直鎖状高級アルコールと(C)油分とを含む油相を水相に乳化した乳化パーツを70℃以下に降温しながらDSC(示査走査型熱量測定)で測定すれば、発熱ピークが認められ、これは油相が水相中でαゲルを形成していることを示している。
本発明において「αゲル形成温度領域」とはαゲル形成による発熱ピークの温度範囲を意味し、ピーク温度とは前記発熱ピーク頂点の温度を意味する(図1参照)。なお、DSC測定において、αゲル形成による発熱ピークの他にも発熱ピークが検出されることがある。これは、乳化パーツ中に含まれる成分の単なる凝固による発熱ピークであり、αゲル形成による発熱ピークはこれら凝固による発熱ピークとは異なる。
【0035】
上記DSC(示査走査型熱量測定)で測定された発熱ピークのピーク温度は本発明の製造方法における乳化パーツの融点に相当すると考えられる。本発明の製造方法において、前記αゲル形成温度領域のピーク温度以上で撹拌を止めると目的の高粘度O/Wクリームを得ることができる。
【0036】
本発明の製造方法によって生成されるO/Wクリームは、水との共存下において、非イオン性界面活性剤と高級アルコールと油分によって形成された乳化粒子の界面に、非イオン性界面活性剤と高級アルコールとともにラメラ状の2分子膜からなる会合体、いわゆるαゲルが存在しており高粘度を保っている状態である。
【0037】
また、本発明において「クリーム」とは、ガラス瓶等に組成物を充填した場合に、瓶を傾けても流動しない程度の粘度を有することで定義される。具体的には、B型粘度計(ローター番号3番、ローター回転数12rpm)で、8,000mPa・s以上であり、より好ましくは12,000mPa・s以上である。なお、粘度の上限は特に限定されることはないが、あまりに高粘度にすぎると使用性の点で劣る事から、概ね100,000mPa・s(30℃)以下とするのが好ましい。
【0038】
以下、本発明にかかる高粘度O/Wクリームの製造方法の概念を説明する。
概念
1)(A)非イオン性界面活性剤と(B)前記非イオン性界面活性剤とともに水中でαゲルを形成し得る炭素数16以上の直鎖状高級アルコールと(C)油分とを含む油相と、(D)水を含む水相とを70℃以上の温度で乳化し、得られた乳化パーツを攪拌しながら冷却する。このとき、水相中で油相がαゲルを形成する温度領域のピーク温度以上で撹拌を停止する。例えば、油相と水相とを70℃以上(好ましくは70〜80℃、さらに好ましくは70〜75℃)で乳化し、得られた乳化パーツを攪拌しながら放冷または任意の冷却装置により冷却し、冷却中に乳化パーツの温度がαゲル形成温度領域のピーク温度以上となった時に撹拌を停止し、その後は放冷する方法が挙げられる。乳化、攪拌、冷却などに用いる装置は通常使用されているものから適宜選択すればよく、それまで使用していた装置をそのまま利用することができ、特別の設備は不要である。
上記方法によれば、従来法ではたとえ乳液等の粘度の低いO/W乳化物になってしまうような処方を用いたとしても高粘度のクリームを得ることができる。
【0039】
2)しかしながら、上記方法によると、温度領域のピーク温度付近になるまで放冷して冷却すると、相当の時間がかかってしまう場合がある。また、オンレーター等の冷却装置を用いると経済的に負荷がかかってしまう。そこで、上記問題を解消するために、水相の一部を用いて高濃度に乳化された乳化パーツを70℃以上で調製する。次に、上記高濃度乳化パーツに20〜40℃の残りの水相(主水相)を、αゲル形成温度領域になるまで徐々に混合する。この主水相の混合により、上述の高温乳化パーツが希釈されるとともに冷却され、αゲル形成温度領域のピーク温度以上で撹拌を止めると、効率よく高粘度O/Wクリームが調製されることになる。
【0040】
なお、本発明の製造方法では、αゲル形成温度領域のピーク温度以上70℃未満で攪拌を終了するが、低エネルギーでの製法のメリットを考慮した場合、終了時の温度は、前記ピーク温度以上55℃以下が好ましく、50℃以下であることがさらに好ましい。また、乳化パーツに主水相を混合する場合、主水相の混合はαゲルの形成温度領域内、さらにはαゲル形成温度領域内で且つそのピーク温度以上で終了するようにすることが好ましく、また、前記攪拌停止と同時に終了するようにすることもできる。
【0041】
上記製造方法によって得られた高粘度O/Wクリームは、粒子径が1〜3μmと、小さな粒子径であるにもかかわらず、広い温度範囲で長期間安定に存在することができる。
【0042】
また、従来の高粘度O/Wクリームの製造方法では、水、保湿剤、増粘剤を予め溶解させ70℃付近に加温した水相に、油分と高級アルコール、及び親水性非イオン界面活性剤を70℃付近で均一にした油相を、ホモゲナイザーで攪拌しながら乳化したものをオンレーターを用いて35℃付近まで急冷する方法が用いられてきた。しかしながら、従来の製造方法では、加熱や熱交換機の使用によりエネルギーの無駄が多く、冷却器に使用される水の消費量がかさんでしまい、環境負荷が高かった。
【0043】
一方で、本発明の製造方法によって得られる高粘度O/Wクリームは、乳化の際、オンレーターなどの冷却機を用いることなく、多量の水または水性溶媒を加熱する必要がないため、低エネルギーで容易に製造することができる。また、実質的に、人体に対する刺激性が比較的小さい非イオン性界面活性剤のみによって乳化されるものであるため、安全性に優れている。
【0044】
そして従来、高粘度のO/Wクリーム等を製造する際には、増粘作用を有する増粘剤、高級アルコール、脂肪酸等を多量に配合させることによって製造されていた。しかし、本発明の製造方法は、冷却中における攪拌停止温度をコントロールすることによって、製剤の粘度を高めることができるため、上述のような増粘剤等を多量に使用しないことから使用感触の良い高粘度O/Wクリームを製造することができる。
【0045】
さらに、本発明にかかる高粘度O/Wクリームの製造方法は、予め70〜80℃で製造した乳化パーツに、20〜40℃の水相を添加するだけで、製剤の温度をコントロールし、高粘度のO/Wクリームとすることができるため、従来用いられてきた製造工程を大幅に簡素化できる。
【0046】
本発明にかかる高粘度O/Wクリームは、例えば、化粧料、医薬、医薬部外品において皮膚、頭髪など身体に適用し得る外用組成物などに好適に適用することができる。例えば、皮膚化粧料、頭髪洗浄料、皮膚洗浄料、整髪料等に用いることができる。
また、本発明にかかる高粘度O/Wクリームには、上記必須成分の他に、通常、化粧品、医薬品等に用いられる成分を安定性など本発明の効果を損なわない範囲で配合することができる。かかる成分としては、例えば次のようなものが挙げられる。
【0047】
ポリエチレングリコール及びそのアルキルエーテル、グリセリン、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、ムコ多糖、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、キトサンなどの保湿剤。メチルセルロース、エチルセルロース、アラビアガム、ポリビニルアルコールなどの増粘剤。エタノールなどの有機溶剤。ブチルヒドロキシトルエン、トコフェロール、フィチン酸などの酸化防止剤。安息香酸、サリチル酸、ソルビン酸、パラオキシ安息香酸エステル(エチルパラベン、ブチルパラベンなど)、ヘキサクロロフェンなどの抗菌防腐剤。グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、セリン、トレオニン、フェニルアラニン、チロシン、アスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン、タウリン、アルギニン、ヒスチジンなどのアミノ酸とその塩。アシルサルコシン酸(例えばラウロイルサルコシンナトリウム)、グルタチオン、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、乳酸などの有機酸。
【0048】
ビタミンA及びその誘導体、ビタミンB6塩酸塩、ビタミンB6トリパルミテート、ビタミンB6ジオクタノエート、ビタミンB2及びその誘導体、ビタミンB12、ビタミンB15及びその誘導体などのビタミンB類、アスコルビン酸、アスコルビン酸リン酸エステル(塩)、アスコルビン酸ジパルミテートなどのビタミンC類、α―トコフェロール、β―トコフェロール、γ―トコフェロール、ビタミンEアセテート、ビタミンEニコチネートなどのビタミンE類、ビタミンD類、ビタミンH、パントテン酸、パンテチンなどのビタミン類。ニコチン酸アミド、ニコチン酸ベンジル、γ―オリザノール、アラントイン、グリチルリチン酸(塩)、グリチルレチン酸及びその誘導体、ヒノキチオール、ムシジン、ビサボロール、ユーカリプトール、チモール、イノシトール、サポニン類(サイコサポニン、ニンジンサポニン、ヘチマサポニン、ムクロジサポニンなど)、パントテニルエチルエーテル、エチニルエストラジオール、トラネキサム酸、セファランチン、プラセンタエキスなどの各種薬剤。
【0049】
ギシギシ、クララ、コウホネ、オレンジ、セージ、タイム、ノコギリソウ、ゼニアオイ、センキュウ、センブリ、トウキ、トウヒ、バーチ、スギナ、ヘチマ、マロニエ、ユキノシタ、アルニカ、ユリ、ヨモギ、シャクヤク、アロエ、クチナシ、サワラなどの有機溶剤、アルコール、多価アルコール、水、水性アルコールなどで抽出した天然エキス。ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、塩化ベンザルコニウム、ラウリルアミンオキサイドなどのカチオン界面活性剤。エデト酸二ナトリウム、エデト酸三ナトリウム、クエン酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、グルコン酸等の金属封鎖剤。水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、トリエタノールアミン等の中和剤。
また、その他、香料、スクラブ剤、粉末、色材、美白剤、紫外線吸収剤や紫外線散乱剤などの紫外線防御剤なども、安定性などを損なわない範囲で適宜配合することができる。
【実施例】
【0050】
以下、本発明にかかる高粘度O/Wクリームの実施例を示し、本発明について更に詳しく説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、配合量は全て質量%で示す。
【0051】
まず、各実施例・比較例で用いた試験法・評価法について説明する。
[粘度]
B型粘度計(ローター番号4番、ローター回転数12rpm)を用い、30℃における粘度を測定した。
【0052】
[増粘効果]
同じ組成を用いて比較例1と同様の方法(従来工程)により調製したO/W乳化組成物の粘度と比較して、粘度増加率により以下の判定を行った。
○:6倍以上
○△:4倍以上
△:2倍以上
×:2倍未満
なお、△以上の評価を合格とした。
【0053】
[安定性]
調製したO/W乳化組成物を、低温(−10℃)〜高温(60℃)の恒温槽に1か月間保存した後、乳化状態を肉眼で観察し、乳化粒子の破壊や合一の有無を確認し、以下の判定を行った。
○:乳化粒子の破壊や合一が認められない。
△:乳化粒子の破壊や合一が一部認められる。
×:乳化粒子の破壊や合一が認められる。
なお、△以上の評価を合格とした。
【0054】
[使用性評価]
10名のパネルに対して使用性(のび、なじみ、べたつき、みずみずしさ、しっとりさ)を評価してもらう。総合評価として従来品(下表比較例6の高粘度処方)とよりも優れていると回答した人数により、以下の判定を行った。
○:9名以上10名以下
○△:7名以上8名以下
△:5名以上6名以下
△×:3名以上4名以下
×:2名以下
とし、△以上を優位性ありとして合格とした。
【0055】
下記表に種々の製造方法にて製造されたO/W乳化組成物の粘度、安定性、及び使用性による評価結果について、各種組成物の配合組成と併せ、まとめて示す。なお、下記の表中の量は質量%で示している。
【0056】
【表1】

【0057】
実施例1〜4,比較例2〜5
表中の(A),(B),(C),(C),及び(D)を70℃で乳化してO/Wエマルション(乳化パーツ)を得た。この乳化パーツを攪拌しながら所定温度の主水相(D)を混合した。主水相混合終了時点での混合物温度は何れも40.2℃以下であった。所定温度になった時点で撹拌を止め、その後室温まで放冷してO/W乳化組成物を得た。
【0058】
比較例1,6
表中の(A),(B),(C),及び(C)をホモゲナイザーで攪拌しながら(D)及び(D)を混合し、70℃にて乳化し調製したW/Oエマルションをオンレーターに通過させて35℃まで冷却し、その後室温まで放冷してO/W乳化組成物を得た。
【0059】
なお、乳化パーツの発熱ピークの測定結果を図1に示す。測定はDSC(Q−1000,TA Instruments,USA)を用い、70℃〜30℃までを毎分2℃で降温させて測定した。この結果、上記表における処方の乳化パーツのαゲル形成による発熱ピーク温度は44.2℃であった。
【0060】
前記表1から明らかなように、実施例1〜4はαゲル形成温度領域のピーク温度以上(44.2℃)より高い温度で撹拌を停止させたことにより、高粘度であり、増粘効果、安定性、及び使用性に優れたO/Wクリームを得られることが明らかとなった。一方、比較例2〜5は、ピーク温度より低い温度で撹拌を停止させため、粘度の高いO/Wクリームを得ることができなかった。
そして、オンレーターで冷却する従来工程を用いた比較例1では、組成物の粘度は3000mPa・sとなり、実施例1と同じ組成であるにもかかわらず高粘度のO/Wクリームを得ることはできなかった。したがって、従来工程を用いた場合、比較例6のようにカルボキシビニルポリマーのような増粘剤を多量に配合させなければ高粘度のものは得られない。比較例6のように増粘剤を多量配合すれば増粘効果や安定性は良好であるが、実施例1〜4に比べて使用性は非常に悪い。
【0061】
また、実施例1〜4の結果より、乳化パーツの配合量に対する主水相の配合量が少ない程、主水相の温度を室温よりも低くしなければならない場合があることが分かった。
したがって、主水相と前記乳化パーツの好適な質量比は3:1〜1:1であることが明らかとなった。
【0062】
以上により、本発明にかかる高粘度O/Wクリームの製造方法によれば、オンレーターのような冷却機を用いることがなく、低エネルギーで容易に製造することができ、経済性に優れることが分かった。さらに、粘度の低い化粧料と同一の処方成分であっても、本発明の製造方法によれば、多量の増粘剤を使用することなく高粘度なO/Wクリームを製造することができるため、使用時にべたつかないクリームを製造することができることが明らかとなった。
【0063】
以下、実施例を挙げて本発明について更に説明を行うが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、下記の処方中の量は質量%で示している。
実施例5
クリーム 配合量(質量%)
(1)イオン交換水 残余
(2)グリセリン 5.0
(3)ブチレングリコール 5.0
(4)ポリエチレングリコール1500 2.0
(5)エタノール 3.0
(6)フェノキシエタノール 0.3
(7)パラベン 0.1
(8)水酸化カリウム 0.1
(9)エデト酸3ナトリウム 0.05
(10)カルボキシビニルポリマー 0.1
(11)キサンタンガム 0.1
(12)ベヘニルアルコール 0.5
(13)ベヘニン酸 0.3
(14)ステアリン酸 0.4
(15)イソステアリン酸 0.3
(16)ワセリン 2.0
(17)スクワラン 3.0
(18)デカメチルシクロペンタシロキサン 3.0
(19)ジメチルポリシロキサン 2.0
(20)2−エチルヘキサン酸セチル 2.0
(21)イソステアリン酸PEG−60グリセリル 1.0
(22)ステアリン酸PEG−5グリセリル 1.0
(23)香料 0.1
製造方法:70℃まで加温した成分(1)〜(3)の一部[(1)〜(3)合計量の約30質量%]および(8)からなる水相(一部水相)に、70℃まで加温した(12)〜(23)からなる油相を徐々に添加しホモミキサーで乳化して乳化パーツを調製した。この乳化パーツを攪拌しながら25℃にある残りの(1)〜(7)、(9)〜(11)の水相成分(主水相)を添加し混合することでクリームが得られた。得られたクリームの粘度は40,000mPa・s/30℃であった。(αゲル形成温度領域のピーク温度は44℃、混合攪拌停止時の温度は46℃)
【0064】
実施例6
頭髪化粧料 配合量(質量%)
(1)流動パラフィン 5.0
(2)ワセリン 2.0
(3)ジメチルポリシロキサン 5.0
(4)セタノール 4.0
(5)ステアリルアルコール 1.0
(6)1,3−ブチレングリコール 10.0
(7)ポリオキシプロピレングリセリルエーテル 2.0
(8)イソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル 2.0
(9)親油型モノステアリン酸グリセリン 2.0
(10)ポリオクタニウム−10 0.5
(11)精製水 残余
(12)香料 0.1
製造方法:70℃まで加温した成分(6)、(11)の一部からなる水相[(6)及び(11)の合計量の約30質量%]に、70℃まで加温した(1)〜(5)、(7)〜(10)、及び(12)からなる油相を徐々に添加しホモミキサーで乳化して乳化パーツを調製した。この乳化パーツを攪拌しながら25℃にある残りの水相成分を添加し混合することで頭髪化粧料が得られた。得られた頭髪化粧料の粘度は30,000mPa・s/30℃であった。(αゲル形成温度領域のピーク温度は48℃、混合攪拌停止時の温度は50℃)
【0065】
実施例7
皮膚洗浄料 配合量(質量%)
(1)エタノール 15.0
(2)ソルビット液 10.0
(3)ポリオキシプロピレン(9)ジグリセリルエーテル 4.0
(4)ヒマシ油 2.0
(5)イソステアリン酸 2.0
(6)ステアリン酸 7.0
(7)ラウリン酸 6.0
(8)ミリスチン酸 11.0
(9)パルミチン酸 3.0
(10)ドデカン−1,2−ジオール酢酸エーテルナトリウム 3.0
(11)N−メチルタウリンナトリウム 5.0
(12)水酸化ナトリウム 4.0
(13)塩化ナトリウム 0.5
(14)カモミラエキス 0.1
(15)ジブチルヒドロキシトルエン 0.1
(16)ヒドロキシエタンジホスホン酸4ナトリウム(30%) 0.1
(17)エデト酸3ナトリウム 0.1
(18)4−tert−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタン 0.05
(19)パラメトキシケイヒ酸2−エチルヘキシル 0.05
(20)白糖・ソルビット混合物 15.0
(21)色素 0.5
(22)精製水 残余
(23)香料 0.1
製造方法:70℃まで加温した成分(22)の一部[(22)全量の約50質量%]および(12)、(13)からなる水相に、70℃まで加温した(3)〜(11)、(18)、(19)及び(23)からなる油相を徐々に添加しホモミキサーで乳化して乳化パーツを調製した。この乳化パーツを攪拌しながら25℃にある残りの水相成分を添加し混合することで皮膚洗浄料が得られた。得られた皮膚洗浄料の粘度は25,000mPa・s/30℃であった。(αゲル形成温度領域のピーク温度は48℃、混合攪拌停止時の温度は53℃)
【0066】
実施例8
クリームファンデーション 配合量(質量%)
(1)タルク 3.0
(2)二酸化チタン 4.0
(3)ベンガラ 0.5
(4)黄酸化鉄 1.5
(5)黒酸化鉄 0.1
(6)ベントナイト 0.5
(7)モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン 1.0
(8)トリエタノールアミン 1.5
(9)ジプロピレングリコール 8.0
(10)イオン交換水 残余
(11)ベヘニン酸 0.5
(12)ステアリルアルコール 0.4
(13)イソヘキサデシルアルコール 6.0
(14)モノステアリン酸グリセリン 2.0
(15)液状ラノリン 2.0
(16)流動パラフィン 6.0
(17)パラベン 0.1
(18)香料 0.05
製造方法:成分(6)、(17)を分散した(8)、(9)を一部の(10)に加え、70℃で撹拌し、これに70℃に加熱溶解された(7)、(11)〜(16)、(18)からなる油相を徐々に添加しホモミキサーで乳化して乳化パーツを調製した。この乳化パーツを攪拌しながら室温の(10)と十分混合粉砕された粉体部(1)〜(5)とを添加することでクリームファンデーションが得られた。得られたクリームファンデーションの粘度は15,000mPa・s/30℃であった。(αゲル形成温度領域のピーク温度は47℃、混合攪拌停止時の温度は49℃)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)非イオン性界面活性剤と、
(B)前記非イオン性界面活性剤とともに水中でαゲルを形成し得る炭素数16以上の直鎖状高級アルコールと、
(C)油分、
とを含む油相と、
(D)水
を含む水相とを70℃以上の温度で乳化してO/W乳化物(乳化パーツ)を調製し、
この乳化パーツを攪拌しながら冷却し、
水相中で油相がαゲルを形成する温度領域のピーク温度以上70℃未満で撹拌を停止することを特徴とする高粘度O/Wクリームの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の高粘度O/Wクリームの製造方法において、
前記油相と、前記水相の一部とを70℃以上の温度で乳化して乳化パーツを調製し、
この乳化パーツを攪拌しながら、20〜40℃の残りの主水相を前記乳化パーツと混合して冷却し、
水相中で油相がαゲルを形成する温度領域のピーク温度以上70℃未満で撹拌を停止することを特徴とする高粘度O/Wクリームの製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2記載の高粘度O/Wクリームの製造方法において、攪拌停止温度が55℃以下であることを特徴とする高粘度O/Wクリームの製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3の何れかに記載の高粘度O/Wクリームの製造方法において、前記水相中で油相がαゲルを形成する温度領域のピーク温度がDSC(示査走査型熱量測定)による前記乳化パーツの発熱ピークであることを特徴とする高粘度O/Wクリームの製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4の何れかに記載の高粘度O/Wクリームの製造方法において、高粘度O/Wクリームの粘度が8,000mPa・s(B型粘度計、30℃)以上であることを特徴とする高粘度O/Wクリームの製造方法。
【請求項6】
請求項2〜5の何れかに記載の高粘度O/Wクリームの製造方法において、前記主水相と前記乳化パーツの質量比が3:1〜1:1であることを特徴とする高粘度O/Wクリームの製造方法。

【図1】
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