説明

高精細電照切り文字

【課題】 文字、図形を象る天板の背後を側壁、底板で囲み、中に光源を収納する電照切り文字においては、近年開発された薄型バックライトを使用することにより、側壁高さを低く設定でき、側壁を樹脂の切削加工により制作することが可能となってきた。しかしながら、この樹脂製側壁は強度を保つため厚く切削する必要があり、その結果、天板は側壁との接合部で照度の低下を招く欠点があった。
【解決手段】 側壁を、天板接合部では薄く、底板接合部では厚く切削加工することにより必要な強度を確保しつつ、天板の側壁との接合部における照度低下を最小限に留める。 特に、側壁内側を斜面とすることにより、側壁内側のコーナー部の削り残しをなくし、天板の隅々まで輝度の均一性を確保した高精電照細切り文字を実現する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高精細な文字、図形を象る電照切り文字を効率的に製作できる電照切り文字の構成方式に関する。
【背景技術】
【0002】
電照広告看板等における一般的電照切り文字は図1に示されるように、表示面である天板(拡散板)1dの背後に側壁1a、底板1bより構成されるチャンネル(溝)が構成され、その中に光源1cが収納され、表示面である天板1aを背後から透過光で照らす仕組みとなっている。通常の光源の場合光源1cと表示面1dとの間に大きな光拡散空間を確保しなければならないため、側壁1a高さは40mm〜50mm以上の高さとなり、側壁1aはステンレス板の手作業による溶接により作成される。
【0003】
一方、特許文献1に記載の切り文字は広告、看板の分野におけるバックライトの薄型化を実現するものであり、電照切り文字等の広告看板を樹脂板等からの切り抜き加工により簡単に制作できる手段を提供している。
【0004】
図2は特許文献1記載の切り文字の断面図であり、光源2eよりの光線は一旦底板2cに反射、拡散された後、天板2aを照らす仕組みとなっている。この仕組みにより天板2a、底板2c間の距離を小さくすることができるため、側壁2bは樹脂板よりの切り抜き加工で作成することが可能となる特徴を有する。以下、特許文献1に記載され図2に示される構造の電照切り文字を”薄型樹脂製電照切り文字”と呼ぶ。
【0005】
なお、天板、側壁等のチャンネルの外部形状は広告、看板として直接目に触れられるものであり、看板の目的に添って所定の形状(文字、図形)に成形される必要があることはもちろんであるが、装飾効果、高級感を高めるため、素材表面等の外観は極力美観を確保しておく必要がある。
【特許文献1】特願 2010−179203
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記薄型樹脂製電照切り文字は、側壁等を全面的に樹脂機械加工で作成できるメリットがある反面、側壁2bが樹脂製であるため、その強度を保つため側壁2bにはある程度の厚みを必要とする。そのため、天板2aの端(側壁2bとの接合部2f)では光源からの光が側壁2bにより遮られ、照度が低下し、輝度の不均一さが生じる。この輝度の不均一さをカバーするため、輝度が低下している天板2aの端を覆い隠すめ(カッティングシート等による)縁取り2eが施工される。
【0007】
この縁取り2eは施工するのに手間がかかると同時に、全ての文字について一定幅の縁取りが必要となり(縁取りのある文字しか製作できないということになり)シャープで高精細な文字・図形を象る際でのデザイン上の制約となるほか、高級感の演出に対しても障害となる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記薄型樹脂製電照切り文字に関して縁取りの必要性をなくし、縁取りなしでも天板の隅々まで輝度の均一性を確保する手段を提供するものである。
即ち、本発明の薄型樹脂製電照切り文字の側壁の断面は図2の2bに示されるような単純な矩形ではなく、図3,3bに示されるように断面下部は幅広く、上部にいくに従って狭くなるよう成型されている。
側壁をこのように成型することにより、側壁3bの強度を確保しつつ、また、外観の美観を損ねることなく、天板の接合部3eでの側壁3bの厚さを最小限に留めることができ、側壁3bが天板3aへの光源3dからの光を遮ることを最小限度に押さえることが可能となる。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、薄型樹脂製切り文字において、強度、美観等の必要機能を維持しつつ 従来不可欠であった縁取りをなくすことができ、高級感を備えた高精細な文字、図形を電照切り文字として効率よく製作することができる。
結果として、従来の薄型樹脂電照切り文字の低コスト、生産効率の良さ等の特性をを継承し、なおかつ、デザイン性、斬新性、強度を飛躍的に高めた高精細な電照切り文字を実現することができる。
【実施例1】
【0010】
図3は本発明による高精細電照切り文字の断面図である。先に述べたように側壁3bの断面形状は底板接合部3fが厚く、天板接合部3eが薄くなるよう切削成型されている。また、外観上の美観を保つため、天板3aの切削面3hは、側壁3bの外側切削面3iと滑らかに接合するよう(接合部3eにおける天板3a、側壁3bの外側切削面3h、3iのそれぞれの接平面が一致するよう)切削されている。
【0011】
図3において、側壁3bおよび天板3aの切削断面は、強度を確保するという観点からは、底板接合部3fにおける厚さが天板接合部3eにおける厚さより大きいという条件を満たす限り、内外の切削面は任意の形状に設定してもよい。
【0012】
しかしながら、図3に示すように、側壁外側3h、側壁内側3k(光源内蔵側)の双方が傾斜面であるよう切削成形することで、いくつかのさらなる利点が生じてくる。
壁面双方の切削面3h、3kが傾斜面であるように切削成形される第1の利点は、天板位置からの底板の張り出し幅3mを小さくできることにある。すなわち、底板接合部3fでの壁面厚が同一の場合、内側への張り出し幅がある分、外側への張り出し幅3mが小さくすみ、その分、切り文字外観のシャープさを演出できる利点が生じる。
【0013】
第2の利点は切削成型法にある。一般に樹脂を3次元加工するには、NCルーターによる機械加工法が用いられ、 垂直な面を切削成型するには、図4に示される円筒型ビット4aが用いられるが、図3に示される側壁傾斜面の切削に対しては、傾斜面と同一角度に刃面をV字型に傾斜させたV字型ビット4bが採用可能となる。
このV字型ビット4bは先端が鋭い割には丈夫で折れにくい特徴を有し、傾斜面を直接的に切削できるほか、コーナーをシャープに削り取ることができるメリットを備える。
【0014】
即ち、円筒型ビット4aでは図5に示されるコーナー内側は、丸くしか切削できず、コーナーの天板の端には光源の光が届かない部分5aが残ることになる。従って、円筒型ビット4aでコーナーをシャープに削るには径が充分小さなビットを採用する必要があるが、そうしたビットは折れ易く、切削コストが多大なものとなる。
【0015】
それに対して、V字型ビット4bを採用することにより、コーナーを鋭く削り取るための、いわゆる”駆け上がり工法”の適応が可能となる。 ”駆け上がり工法”とは、図6に示されるようにV字型ビット4bを水平に移動させると同時に垂直方向に(図6の場合は上方に)移動させる工法である。これにより、図6に示されるようにV字型の鋭い谷を刻むことができる。
【0016】
図7は”駆け上がり工法”により、コーナー内側を削り、切削成型された壁面の例である。この例に示されるようにV字型ビット4bと”駆け上がり工法”の組み合わせにより、コーナーの隅々まで、壁面を削れ、光源よりの光を到達させることが可能となる。即ち、壁面内外を傾斜させることにより、高精細でシャープな電照切り文字を低コストで製作できることになる。
【0017】
以上述べた、側壁内外の切削面を斜面とすることにより生まれる効果は、図8に示されるように、切削面の一部(上部)を斜面としても同様にして得ることができる。
【0018】
なお、側壁3bの天板接合部3eでの可能となる薄さは、側壁材料にに左右されるが、精密切削加工に適しているアクリル樹脂、ABS樹脂、あるいは、低発泡塩ビの場合、側壁高15〜20mm前後、底辺(底板接合部3f)厚つ4mm前後に対して1mm前後にまで薄くすることが可能であり、この厚さでは天板端での照度低下はほとんど認められない。

【0019】
また、側壁3b、天板3aの切削面は、外部に光源3dよりの光が漏れることを防ぎ、かつ美観を保つため、必要に応じて塗装が施される(3g)。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】ステンレス側壁の電照切り文字
【図2】薄型樹脂製電照切り文字構造を示す。
【図3】本発明による高精細電照切り文字の断面を示す。
【図4】円筒ビット、V字ビットを示す。
【図5】円筒ビットによるコーナー部切削を示す。
【図6】V字ビットによる”駆け上がり”工法を示す。
【図7】V字ビットによるコーナー部切削を示す。
【図8】一部が斜面である側壁切削面を示す。
【符号の説明】
【0021】
1a・・・ステンレス側壁
1b・・・底板
1c・・・光源
1d・・・天板
2a・・・天板
2b・・・側壁
2c・・・底板
2d・・・・光源
2e・・・・縁取り
2f・・・・天板、側壁接合部
2g・・・・底板、側壁接合部
3a・・・・天板
3b・・・・側壁
3c・・・・底板
3d・・・・光源
3e・・・・天板、側壁接合部
3f・・・・底板、側壁接合部
3g・・・・塗装
3h・・・・側壁外側切削面
3i・・・・天板切削面
3m・・・・底板張り出し幅
4a・・・・円筒型ビット
4b・・・・V字型ビット
5a・・・・削り残し部分


【特許請求の範囲】
【請求項1】
天板3a、側壁3b、底板3c、光源3dから構成され、次の用件を備えていることを特徴とする電照切り文字。
1)天板3aは光源3dよりの透過光により電照されている。
2)側壁3bの一端には天板3aが接合部3eにおいて、他端には底板3cが接合部3fにおいて接合されている。
3)側壁3bは、天板3aの接合部3eでの厚みが底板3cの接合部3fでの厚みより薄くなるよう成型されている。
【請求項2】
側壁3bの内側切削面3hは、その全て、あるいは、その一部が斜面となるよう成形されていることを特徴とする「請求項1」記載の電照切り文字。
【請求項3】
側板3bの切削面3iと天板3aの切削面3hは滑らかに接合されるよう成型されていることを特徴とする「請求項1」、あるいは「請求項2」記載の電照切り文字。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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