説明

高純度のexo−アルケニルノルボルネンを製造する方法

本発明の実施形態は、概して、高純度のexo−アルケニルノルボルネンを、その立体配座異性体混合物から製造する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明による実施の形態は、概して、endo−アルケニルノルボルネン及びexo−アルケニルノルボルネンの混合物から高純度のexo−アルケニルノルボルネンを製造する方法に関する。より具体的には、制御されたコープ転位を利用してendo−アルケニルノルボルネンをexo−アルケニルノルボルネンから容易に分離可能な物質に変換する方法に関する。
【0002】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2007年8月9日付けで出願された米国仮出願第60/964130号を基礎とする優先権の利益を主張し、該仮出願の全内容が参照により本明細書に援用される。
【背景技術】
【0003】
一般的に、アルケニルノルボルネン(ANB)は、シクロペンタジエン(CPD)又はその二量体ジシクロペンタジエン(DCPD)と、適当な求ジエン体(例えば、ビニルノルボルネン(VNB)を調製する場合には1,3-ブタジエン(BD))とを用いたDiels−Alder反応により商業的に調製される。既知のように、ANB製品は、そのexo−異性体及びendo−異性体の混合物として形成される。この場合、かかるDiels−Alder反応で得られる異性体比は、反応温度及び当該温度に反応混合物が保持される時間、ならびに使用する反応物の特性に依存する。典型的な市販のVNBは、exo:endo比が約1:3であることが見出されている。
【0004】
BDとCPDとの間のDiels−Alder反応による複数の生成物の分析から、該反応は、一群の並行反応及び逐次反応からなり、その主要な生成物はVNB、テトラヒドロインデン(THI)、1,4−ビニルシクロヘキセン(VCH)、DCPD、及び複数のオリゴマー化合物の混合物であるといえる。VCHは、BD残渣が直接二量体化して生じる。あるいは、VNBが逆Diels−Alder反応してBD及びCPDが生じた場合、BDがその後二量体化してVCHが形成され、同時にCPDが二量体化してジシクロペンタジエンが形成される。他の求ジエン体が用いられる場合には、類似の一群の並行反応及び逐次反応により類似の生成物が生じると考えられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
VNBのexo−異性体や他のアルケニルノルボルネンのexo−異性体は、多様な生理学的活性を示す様々な生物学的に活性な化合物の合成において有望な構成要素であるので、これらexo−異性体を得ることに対し、近年関心が高まっている。加えて、このような単量体のexo異性体及びendo異性体は、重合プロセスにおける反応性が異なり、異なる化学的特性及び/又は物理的特性を有する重合体を提供し得ることが見出されている。しかし、単純な分留によるこれらendo−異性体及びexo−異性体の分離は極めて困難であるので、個々の異性体の使用には課題があった。VNBはANBの最も一般的なものであるので、実質的に純粋な個々のANB異性体を提供する代替方法を見出すための研究は、VNB異性体と、特に実質的に純粋なexo−VNBの製造とに焦点を当ててきた。しかし、後述する比較例において示されるように、また、個々の異性体として使用できる製品は概して存在しないことから、このような研究はまだ成功していないと結論することができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による実施の形態によると、exo−アルケニルノルボルネン/endo−アルケニルノルボルネン(ANB)混合物から出発して、収率及び費用対効果が高い方法で、実質的に純粋なexo−アルケニルノルボルネン(exo−ANB)を製造することができる。「実質的に純粋な」及び「高純度」という語句は、本明細書において交換可能な用語として使用され、5重量%(wt%)未満の不純物を有する特定のANB異性体を意味すると理解される。「超高純度」という語句は、1重量%(wt%)未満の不純物を有する特定のANB異性体を意味すると理解される。これらの語句と共に、このような不純物は、所定のANB異性体混合物、又は特定のANB異性体以外の物質であると理解され、したがって本発明による実施の形態が実質的に純粋なexo−ANBを表す場合には、不純物は関連するendo−ANB異性体と他の物質とを包含し得る。「軽(light)」及び「重(heavy)」という用語は、アルケニルノルボルネンの混合物中に見出され得る不純物を説明するために使用する場合には、所定のANBよりも沸点が低い又は高い不純物を意味すると理解される。例えば、Diels−Alder反応により生じるビニルノルボルネン混合物の軽不純物が、ブタジエン(BD)、シクロペンタジエン(CPD)及びビニルシクロヘキセン(VCH)等の物質を包含し得るのに対し、その重不純物は、ジシクロペンタジエン(DCPD)、シクロオクタジエン(COD)及びテトラヒドロインデン(THI)等の物質を包含し得る。後述及び例示のとおり、かかる実施形態によると、制御された熱分解反応により、軽不純物または該熱分解反応の副生成物は反応系から除去され、exo−ANBが高収率(ANB−混合物中のexo−ANBの開始濃度に基づく。)で得られる一方、endo−ANB異性体は全て、対応するテトラヒドロインデン(THI)誘導体へコープ転位する。「制御された熱分解反応」という語句は、反応温度及び圧力の一方又は両方を変化させることにより速度が制御された反応を意味すると理解される。有利には、また過去には報告されていないこととして、これら不純物又は反応副生成物の除去は、コープ転位の反応速度の上昇と、所望のexo−ANB異性体の総収率の増加とをもたらす。
【0007】
説明及び理解を容易にするために、次に示される反応スキーム(スキーム1及びスキーム2)は、高純度のexo−VNB及びexo−MeVNBを得るために有用な、本発明の実施形態に関する。したがって、スキーム1は、出発物質としてBD及びCPDを用いたDiels−Alder反応によるexo−VNB及びendo−VNBの形成を示す。スキーム2も同様であり、イソプレン及びCPDをDiels−Alder反応物として、exo−MeVNB及びendo−MeVNBが形成されることを示す。加えて、スキーム1及びスキーム2は、上記Diels−Alder反応時や上記熱分解反応時に順次起こり得る逐次反応及び並行反応の多くを示す。VNB混合物の場合には、本発明の実施形態によると、例えば(i)VCHを生成するBD+BD反応を排除すること、(ii)CPDやBDと、exo−VNBとの反応を排除して、exo−VNBを保存すること、(iii)exo−VNBの逆Diels−Alder反応を排除することによりexo−VNBを保存すること、及び(iv)反応器中でendo−VNBからTHIへの変換を確実に完了させること、等により有利に最適化された結合反応経路によって、高純度のexo−VNBを高い総収率で得られることが、本明細書において以下に示される。加えて、このような最適化した反応がアルケニルノルボルネンの他の異性体の混合物に関しても提供され、高純度のexo−ANB、例えばexo−MeVNBが、同様に高い総収率で得られることが示される。さらにまた、本明細書における教示を通じて、当業者は、所望の炭素数4〜12のexo−アルケニルノルボルネンが高い収率で得られることが、理解されるだろう。
【化1】

【化2】

【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の実施形態では、出発物質として、純度が99重量%以上のexo−アルケニルノルボルネン/endo−アルケニルノルボルネン混合物を使用することが概して有利であるが、本発明の実施形態においては、典型的な不純物が最終生成物の収率及び純度に及ぼす影響が低減又は排除されるので、より純度の低い等級(例えば90重量%)の出発混合物を利用してもよい。かかる前提の下、本発明の幾つかの実施形態は、コープ転位反応を開始する前に蒸留し幾つかの不純物の濃度を低減することを包含する(例えば、出発混合物がVNB混合物である場合には、不純物は1,3−COD、1,5−COD、エチルノルボルネン、エチリデンノルボルネン、5,6−ジメチルノルボルネン及びVCH等を包含し得る。)。
【0009】
高純度exo−ANBの製造に関して、Diels−Alder経路によると、出発物質及び反応条件によりexo−ANB対endo−ANBが特定の比で形成されることがよく知られている。例えば、多くの市販のVNB−混合物は、約1:3のexo−/endo−比を有する。しかし、他のANBでは比が異なることがあり、またこれら他のANBは他の反応経路を介して提供されることもあるので、本発明による実施形態は、1対99〜99対1のexo−/endo−異性体比を有するANB異性体混合物を包含するものとする。
【0010】
本発明の実施形態には、1)endo−ANBが、テトラヒドロインデン、メチルテトラヒドロインデン、又は該endo−ANBに対応する他のテトラヒドロインデン化合物(コープ転位反応生成物と総称される)に選択的に変換されるように;2)endo−ANB/exo−ANBより沸点が低い分解生成物(軽化合物)が、開放系内に含まれるendo−ANB/exo−ANB混合物から除去されるように;開放系においてendo−ANB/exo−ANB混合物の蒸気圧を制御することにより、該混合物から高純度exo−ANBを製造する方法が含まれ得る。蒸気圧の制御は、第1の圧力値にて有効量の熱(endo−ANBをコープ転位させるのに効果的な量の熱)を適用し、次いで、exo−ANBからの軽化合物形成を最小化しつつコープ転位が進行するよう、温度及び圧力の一方又は両方を制御することにより実施される。開放系では、熱及び圧力の少なくとも一方がendo−ANB/exo−ANB混合物に適用されるので、軽化合物が当該系から除去され得るのに対して、密封系又は閉鎖系(密閉系)では、軽化合物が共反応して望ましくない成分が形成され得る。
【0011】
この文脈では、開放系とは、密閉されていない系であり、すなわち系の圧力と比較して低い圧力の源に対して開放されている。開放系は、例えば沸騰、蒸発又は他の気化手段によって、当該系からの成分排出が可能である。熱及び/又は圧力の適用は初期には密閉系に適用され得るが、その後、軽化合物(lights)を除去するために系が開放されるのであれば、その系は本発明の実施形態による開放系であると考えられる。
【0012】
初期endo−ANB/exo−ANB混合物に熱及び/または圧力が適用され、軽化合物がendo−ANB/exo−ANB混合物から排出されたり、THI又は他のコープ転位反応生成物が形成されたりするのに伴い、該混合物の組成(混合物中の各成分の種類や量)は、その初期混合物と比較して変化していく。したがって、このような動的環境では、所望の蒸気圧及び気化速度を制御又は維持するために適用される熱及び/又は圧力の量は常に変化し得る。気化速度は、endo−ANBが主にコープ転位によってTHI等のコープ転位反応生成物に変換されて消失する速度と、exo−ANBが主に逆Diels−Alder反応によって分解され消失する速度とが、所望のバランスとなるように制御する。加えて、かかる制御は、反応系から軽化合物を除去し、これら軽化合物の同時反応による望ましくない成分の形成を低減又は排除するのに効果的である。
【0013】
本発明の実施形態に包含される制御コープ転位は、多数の方法で実施することができ、このような実施形態の基本原理に従い得る。したがって、このような本発明の反応の実施形態には、回分(バッチ;一括)方式で実施されるものがあり、半回分(セミバッチ;分割)方式で実施されるものもあり、さらに連続(滴下)方式で実施されるものもある。またさらに、幾つかの実施形態は、このような回分式プロセス、半回分式プロセス及び連続式プロセスの組合せを包含する方式で実施される。例えば、連続式プロセスの実施形態は、連続操作を意図する加圧反応器(オートクレーブ)、管型反応器若しくはループ型反応器、又はこれら反応器の2つ以上を連続して組み合わせた多段式の連結反応器で実施され得る。
【0014】
半回分式プロセスの一例では、ANB混合物は時間の関数として添加され、このような関数は系からのより軽い分解成分の消失と関連する。したがって、軽化合物が反応器から排出されるにつれて、実用的範囲内で比較的一定の反応容量が維持されるよう、追加分の初期ANB混合物を、反応器中に段階的に投入し得る。有利には、かかる段階的添加により、生成物の形成速度(反応速度)が増加することが見出されている。それは、ANBがVNBである場合、例えば、既に形成されたTHIの存在によるものと考えられている。
【0015】
本発明の実施形態では、さらに、例えば、定圧プロセス(すなわち一定の圧力でのプロセス)、定温プロセス(すなわち一定の温度でのプロセス)、または温度及び圧力の両方を変化させるプロセスが実施され得る。定圧での実施態様では、その設定圧力を維持するのに適切な初期温度を設定する。その後、その定圧条件が維持されるように、必要に応じて温度を変化させる。したがって、圧力Pは一定にして(初期P=最終P)、温度は、軽成分が効果的に除去され且つendo−ANB反応の速度が増加するように初期温度を変えていき、適宜変化させる。このような定圧での実施態様では、温度の制御方法は特に限定されず、一次的又は段階的に傾斜させるなど、適宜の方法で行うことができる。
【0016】
定温での実施態様では、その設定温度を維持するのに適切な初期圧力を設定する。その後、その定温条件が維持されるように、必要に応じて圧力を変化させる。したがって、温度Tは一定であり(初期T=最終T)、圧力は、軽成分が効果的に除去され且つendo−ANB反応の速度が増加するように、初期Pを変えていき、適宜変化させる。このような定温での実施態様では、圧力の制御方法は特に限定されず、一次的又は段階的に傾斜させるなど、適宜実施することができる。幾つかの定温実施態様では、反応器の初期圧力を大気圧よりも高く(初期P>大気圧)設定して、出発反応液の沸点(その液体の蒸気圧が大気圧と等しくなる温度)を、大気圧沸点よりも上昇させ、次いで沸点のより高い軽成分が形成されるにつれ、当該軽成分が除去されるよう、反応の進行に伴い圧力を下げていく(最終P<初期P)。かかる定温実施形態では、圧力の制御方法は特に限定されず、一次的又は段階的に傾斜させるなど、適宜の方法で行うことができる。
【0017】
本発明の幾つかの実施形態では、反応系の温度及び圧力の両方を変化させてもよい。したがって、幾つかの態様では、回分式プロセス又は半回分式プロセスにおいて温度及び/又は圧力を一次的又は段階的に変化させる。他の態様では、複数の反応器を用いた連続プロセスにおいて、温度および/または圧力を適宜調整する。
【0018】
一般に、温度及び/又は圧力の制御は、これらの一方または両方を測定又は感知可能な1つ以上の装置と、温度及び/又は圧力を調節可能な1つ以上の装置とにより行う。幾つかの態様では、単一の装置または手段により、当該測定および調節を行う。例えば、温度及び圧力の両方を変化させる場合、かかるスキームでは、温度検出または温度変化の速度算出を継続的に行うことのできる温度検出器と、反応圧力及び/又は温度を適宜変化させ得る装置とを連結したものが使用され得る。或いは、圧力を継続的に検出してもよい。本発明による定圧態様または定温態様では、独立の、又は一体化した検出器および制御機器により、圧力及び温度の一方を一定に維持しつつ、所望の反応速度が維持されるように他方を適宜変化させてもよい。したがって、反応温度及び/又は反応圧力の検出及び制御を同時に行う機器も、本発明の範囲と精神とに包含されるものとする。
【0019】
実施形態が定圧であるか、定温であるか、又は圧力及び温度の両方を変化させるものであるかどうかに関わらず、一般的に、使用される反応温度は、100℃〜250℃の範囲内である。幾つかの態様では140℃〜190℃の範囲であり、さらに他の態様では145℃〜165℃の範囲である。上述の温度範囲のいずれも効果的であるが、exo−ANBの分解は、高い温度においてよりも、低い温度において、より緩慢となることに留意する。このことは有利になる場合もあるが、endo−ANBがコープ転位生成物(poduct)に転位する速度も、より緩慢となるので、exo−ANBの収率を最大化するためにより長い時間が必要となることにも留意する。また、上記温度範囲を規定することは、かかる範囲のいずれかより一点の温度を選択する必要性を示唆するものではなく、一点以上の温度を採用して収率を最大化し反応時間を最小化する意図である。例えば、反応初期では高い温度を採用することで反応時間が短縮され、反応後期では低い温度を採用することで反応液中のexo−ANB含有量保持され得ることが見出されている。したがって、反応に用いるexo−ANB/endo−ANBの初期濃度比が低い(例えば1:3)場合、160℃以上の初期反応温度が概して有利であり、反応が進行して当該比が約1:1以上に増大するにつれ、反応温度を可能な限り低い温度に低下させることが概して有利である。すなわち、コープ転位反応はまだ進行し得るが、exo−ANB又はendo−ANBのいずれかの分解は顕著に低減される温度(例えば、145℃以下の温度)が概して有利である。かかる方法によると、exo−ANBの高回収率を維持しながら、形成されるendo−ANBを極めて低いレベルから検出不可能なレベルとし得ることが見出されている。
【0020】
反応温度が約190℃を超えると、exo−ANB及びendo−ANBの両方の望ましくない迅速な分解、異性化、又は出発ANB混合物の重合、並びに生成物の許容不可能な損失が起こることがあり、その結果、収率が低減することにも留意すべきである。概して、本発明による実施形態が特定の温度又は温度範囲を選択することを含む場合には、このような選択は、反応速度を制御し、軽成分の効果的な除去を確保する適当な圧力(単数又は複数)の選択を決定し、したがってexo−ANB生成物の収率を最大化する。
【0021】
したがって、本発明による実施形態に関しては、特定のexo−ANBよりも沸点が高い成分の存在は、反応混合物中で保持されたとしても、該exo−ANBの収率にほとんど又は全く影響しないようである。以下に示すガスクロマトグラフィ(GC)の保持時間から明らかなように、かかる沸点のより高い生成物(例えば、沸点がTHI又はMeTHIの沸点以上の生成物)は、蒸留又は他の分離方法により所望の生成物から効率的に分離することができる。有利なこととして、かかる実施形態によると、exo−VNB(例えばVCH)又はexo−MeVNB(例えばDCPD若しくはリモネン)の沸点と同じか又はこれに近い沸点を有するいかなる顕著な副生成物も形成されないことから、これらの異性体及び他のexo−ANB異性体は、含有されるいずれの副生成物からもルーチン的に分離され得ることが見出されている。
【0022】
本発明の幾つかの態様では、他の成分が反応塊、例えば他の有機化合物又は溶媒に添加される。かかる他の成分は、単独で、又は2つ以上の混合物として使用してもよく、ANB及び熱分解時に形成され得るいずれの反応生成物のいずれに対しても反応性を有しない必要がある。さらに、かかる成分は、その反応条件下で分解又は重合しにくい必要がある。概して、かかる他の成分は、室温で液体であり、所定のANBより高い沸点を有する。このような態様では、かかる成分は反応液から容易に分離することができ、高い収率及び品質でexo−ANBを得ることができる。他の成分としては、10個以上の炭素原子を有する炭化水素、カルボン酸エステル、ハロ炭化水素、ニトリル及びアルデヒドが例示されるが、これらに限定されない。かかる他の成分の添加は、該成分の純度が十分に高く、exo−ANBの純度又は収率に影響を及ぼす不純物が添加されない場合には、反応温度及び圧力並びに反応塊の組成の制御を補助する上で有利であり得る。
【0023】
10個以上の炭素原子を有する炭化水素としては、n−デカン(沸点(bp) 174℃)、ウンデカン(bp 196℃)、cis−デカヒドロナフタレン(cis−デカリン)(bp 196℃)、trans−デカヒドロナフタレン(trans−デカリン)(bp 187℃)、テトラヒドロナフタレン(テトラリン)(bp 208℃)、n−ドデカン(bp 216℃)、ヘキサデカン(bp 288℃)、エイコサン(bp 343℃)、p−シメン(bp 177℃)、n−ブチルベンゼン(bp 183℃)、ドデシルベンゼン(bp 331℃)、メシチレン(bp 165℃)、1,3−ジエチルベンゼン(bp 181℃)、n−ブチルシクロヘキサン(bp 181℃)、n−ペンチルシクロペンタン(bp 181℃)、1−ペンチルナフタレン(bp 306℃)、ノニルシクロヘキサン(bp 282℃)、n−デシルシクロペンタン(bp 278℃)、2−メチルテトラデカン(bp 265℃)、並びに150℃以上の、好ましくは180℃以上の沸点を有するこれらのケロシン及び軽油が例示されるが、これらに限定されない。
【0024】
カルボン酸エステルとしては、酢酸シクロヘキシル(bp 174℃)、酢酸2−エチルヘキシル(bp 197℃)及び酪酸イソペンチル(bp 185℃)が例示される。ハロゲン化炭化水素としては、α−クロロナフタレン(bp 259℃)、ブロモベンゼン(bp 155℃)、1,2−ジクロロベンゼン(bp 180℃)及びα−ブロモナフタレン(bp 281℃)が例示される。ニトリルとしては、ヘプタンニトリル(bp 187℃)、オクタンニトリル(bp 204℃)、ベンゾニトリル(bp 191℃)及びシアン化ベンジル(bp 233℃)が例示される。また、アルデヒドとしては、ベンズアルデヒド(bp 179℃)及びサリチルアルデヒド(bp 197℃)が例示される。なお、特定の物質が上で例示されるが、これらは本出願の実施形態の範囲及び精神を限定するものではなく、このような実施形態をより良く理解するためのものである。
【0025】
あるいは、本発明の幾つかの実施形態では、温度及び圧力の両方を逐次的又は同時に変化させる。すなわち温度及び圧力の一方又は両方を所定の設定点まで変化させる。かかる実施形態の一つでは、反応器の温度を反応が迅速に進行する温度(初期T)に設定することができ、制御された態様で軽化合物が排出されるように圧力(初期P)を設定し、その後、温度(最終T≠初期T)及び圧力(最終P≠初期P)の両方を逐次的に又は同時に、実質的に全てのendo−ANB異性体がその適切なTHI誘導体生成物に変換されるまで、適宜変化させる。
【0026】
本発明による幾つかの実施形態では、反応液の温度をその沸点以下に維持しつつ、軽化合物が除去されるよう、当該系の初期Pを反応液の蒸気圧と同じか又はそれよりわずかに高く設定することが有利である。かかる軽化合物を実質的に全て除去した後、所望のexo−ANBを保持しながら所要速度で反応が起こるよう、一般的には圧力及び温度の両方を適宜調節する。例えば、初期endo−VNB/exo−VNB混合物の温度を約100℃〜250℃の範囲にわたって変化させた場合、圧力は約4.5psia(ポンド/平方インチ絶対圧力)〜125psiaの範囲とし得る。該混合物の温度を約140℃から190℃まで変化させた場合には、圧力は約14psiaから45psiaで変化させ得る。温度を約145℃から165℃まで変化させた場合には、適切な圧力範囲は約16psia〜26psiaであり得る。
【0027】
幾つかの態様では、ANB−混合物を、まず第1の圧力値でその沸点まで加熱して、排気(開放)しながら該混合物を第1の還流速度に達せしめる。次いで、該圧力を第2の圧力値に変化させ、コープ転位反応が進行するにつれ、該反応混合物を第1の還流速度に維持するように温度を調整する。
【0028】
他の態様では、上記反応系の排気流は分留カラムを通過させ、直前に説明した態様とは対照的に、排出された気体の組成を正確に制御する。かかる分留カラムの使用は、このようなカラムを使用しない場合よりも、より効果的にexo−ANBから軽成分を分離し得るので有利である。
【0029】
ANB混合物をコープ転位反応が開始するのに十分な温度まで加熱する総時間は、最終生成物の品質に影響することに留意する。したがって、本発明の実施形態では、適切な初期温度及び/又は初期圧力、ならびに該実施形態が定圧であるか、定温であるか、又は温度及び圧力の両方を制御するかは、endo−ANBの消費(コープ転位及び/又は逆Diels−Alder反応による)と、exo−ANBの消費(逆Diels−Alder反応による)との相対速度の関係を検討しながら選択する。例えば、温度設定を低く維持して反応を長時間継続させた場合には、exo−ANBの絶対収率を最大限増加させることができる一方、endo−ANBから対応THI誘導体への変換(及び逆Diels−Alder反応によるexo−ANBの損失)は、より高い温度で活発になる。収率及び品質の両方にとって、約145℃〜165℃の温度範囲内で、約48時間〜約580時間の反応時間が有利であると考えられる。
【0030】
本発明による複数の実施形態のうちのいずれを採用するかに拘わらず、exo−ANBの消失速度(kexo)に対するendo−ANBの消失速度(kendo)(kendo/kexo比とも称される)を可能な限り高い値に維持することが有利である。例えば、かかる比が20以上である場合に、exo−ANBが望ましい収率及び品質で容易に得られることが見出されている。
【0031】
本発明による他の実施形態では、不活性ガスを、反応容器のヘッドスペースに通過(スウィープ)させてもよく、及び/又は反応混合液中に拡散(スパージ)させてもよい。不活性ガスは、ヘリウム、窒素、アルゴン等のような任意の非反応性ガスから選択することができ、その使用が、反応混合物からの軽化合物除去に役立つことが判明している。
【0032】
加えて、例えばブチルヒドロキシトルエン(BHT)又は4−tert−ブチルカテコール(TBC)等の酸化防止剤が、反応混合物に有利に添加され得る。かかる酸化防止剤は、最初に、又はコープ転位反応開始後の他段階で添加され、いかなる望ましくない熱−酸化分解をも低減又は排除し得る。
【0033】
有利には、熱分解させた反応混合物から、分留によって実質的に純粋なexo−ANBを得ることができる。あるいは、反応混合物を部分的に蒸留することによりexo−ANB、THI誘導体、及び少量の「重化合物」の混合物を得ることができ、その後、より厳密な蒸留を行うことによりexo−ANB及び適当なTHI誘導体を別々に高純度で得ることができる。
【0034】
本発明による実施形態は、実質的に純粋なexo−アルケニルノルボルネンの形成のための方法を包含する。しかし、本発明の実施形態は、スキーム1及びスキーム2でそれぞれ示されるビニルノルボルネン異性体及びメチル−ビニルノルボルネン異性体に限定されない。むしろこのようなアルケニルノルボルネンは、以下に示される構造式(I)及び構造式(II)のうちのいずれかにより表される他のアルケニルノルボルネン全てを代表するものであるとする。したがって、本発明の範囲及び精神は、かかるVNB及びMeVNBの構造類似体に及ぶ。
【化3】

【化4】

式中、Rは炭素数1〜10のアルキル基、若しくは炭素数が十分な(炭素数が該範囲内で足りる)分枝鎖状若しくは環状アルキル基、又は炭素数1〜10の直鎖アルキル置換フェニル基から選択され得る。式中、RはH又はMeから選択され得る。より具体的には、本発明の実施形態によるアルケニルノルボルネンは、2−(1−プロペニル)−5−ノルボルネン、イソプロペニル−2−ノルボルネン、5−(1−メチレンプロピル)ノルボルネン、5−(2−メチル−1−メチレンプロピル)ノルボルネン、又は5−(1−フェニルエテニル)ノルボルネンから選択され得る。当業者により認められるように、上記構造体及び上記例示物質によると、熱コープ転位反応を起こし得るendo−異性体を有するアルケニルノルボルネンが得られる。
【0035】
所定の特性に係るいずれの数値又は数値範囲に関して、1つの範囲からの数値またはパラメータは、同じ特性に係る異なる範囲からの数値またはパラメータと組み合わせて、数値範囲を(新たに)形成してもよい。
【0036】
以下の実施例は、例示のみを目的として提供され、したがって本発明の範囲及び精神を限定するものではない。
【0037】
後述する様々な実施例において、ガスクロマトグラフィ(GC)法を用いて上述の反応の進行を追跡し、及び/又は最終組成物の純度を分析する場合には、以下のカラム及び温度プログラムを使用した。さらに、得られた保持時間の典型値を以下に示す:60メートル、0.25mmID SBP−Octyl(Supelco)カラム(0.25μmのフィルム付)。インジェクタ温度200℃での試料注入後、カラム温度を50℃から150℃まで5℃/分で、その後250℃まで40℃/分で昇温し、該温度で5分間保持した;250℃に加熱したフレームイオン化検出器(FID)を用いて、溶出した物質を検出した。VNB系反応に係る保持時間は、BD:
5.8分、CPD:6.4分、VCH:12分、endo−VNB:13.6分、exo−VNB:13.6分、THI:16.7分、DCPD:18.4分、及び重化合物:23分〜26分であった。MeVNB系反応に係る保持時間は、IP:6.4分、CPD:6.6分、exo−MeVNB:17.5分、endo−MeVNB:17.6分、DCPD:18.6分、リモネン:19分、MeTHI:19.3分、及び重化合物:24分〜28分であった。
【0038】
以下に示す合成及び熱分解の全ての実施例に関して、投入した液体物質は、窒素スパージし、溶存酸素及び水分を除去した。加えて、利用した全ての反応容器は、窒素置換して容器のヘッドスペースから酸素を除去した。
【0039】
<比較例>
[高圧反応条件によるExo−Endo−VNBの熱分解]
高純度のNisseki社製のendo−VNB/exo−VNBの試料を、Buchi LIMBO 反応器中で、206℃、圧力200psiaで40分間加熱し、J. Chem. Soc. Perkin Trans, I, 1991, 1981−1991, L. Crombie and K. M. Mistryに概して記載された条件を再現した。出発VNB混合物のGC分析結果は、BD 0%、CPD 0%、VCH 0.2%、endo−VNB 81.5%、及びexo−VNB 18.2%、THI 0.1%、並びに重化合物 0%であった。実験完了後、反応混合物は、BD 1.4%、CPD 0.3%、VCH 0.8%、endo−VNB 6.6%、及びexo−VNB 14.6%、THI 55.3%、並びに重化合物 21.1%を含有していた。したがって、VCH含有量は、exo−VNB含有量とは対照的に、実験中に0.2%から0.8%に増加した。これは、含まれるexo−VNBにおいて、最終的にはVCH 4.8%に対応する。endo−VNBのTHIへの変換は不完全であった。加えて、高温のため、重化合物が21.1%形成された。したがって、文献の証拠とは対照的に、これら反応条件下では、容易に回収可能な高純度のexo−VNBは形成されない。
【0040】
<実施例1〜8>
[市販のEndo−ビニルノルボルネン/Exo−ビニルノルボルネンの熱分解]
4種類の市販のVNB異性体混合物の試料につき、温度設定を低くした他は比較実施例の実験と同様にして、熱分解を下記のとおり実施した。
【0041】
実施例1〜4: 4種類のendo−ビニルノルボルネン/exo−ビニルノルボルネン試料を、販売元Acros(Acros Organics)、Aldrich(Sigma−Aldrich Co.)、 Nisseki(Nisseki Chemical Texas Inc.)及びTCI(TCI America)から得た。各材料から1mLの試料を、HiP MS ミクロ反応器(High Pressure Equipment Company, Erie, PA, USA)中に投入し、26時間180℃に加熱した。試料をその後冷却し、各ミクロ反応器の含有量を、その出発組成を対照としてGCにより分析した。分析結果を表1に示す。
【0042】
実施例5〜8: endo−ビニルノルボルネン/exo−ビニルノルボルネンの試料をINEOS(INEOS Belgium NV)から得た。1mLの試料をHiP MS ミクロ反応器中に投入し、26時間180℃に加熱した。Nissekiのendo−VNB/exo−VNBを、上記実験反応条件下で対照試料として使用した。試料は、その後冷却し、各ミクロ反応器の内容物を、その出発組成に対してGCにより分析した。分析結果を表2に示す。
【表1】

【表2】

【0043】
表1及び表2に示されるように、(i)Nisseki試料の再現的試験結果は、実質的に同等であった(実施例4,7,8参照);(ii)全ての市販の試料が同じ組成であるわけではない;(iii)各実施例において、BD及びCPDの形成、「重化合物」量の顕著な増加、及びVCHの形成又はVCH濃度の上昇が認められた。これらの観察結果は、比較実施例の結果と一致し、密閉管では、逆Diels−Alder生成物であるBD及びCPDが残り、その後これらから、採用した反応温度において、確認されたVCHおよび重化合物が形成され得ることを示唆する。したがって、過去に報告された密閉系熱分解法によると、VCHを含まないか実質的に含まないexo−VNBを形成し、高純度のexo−VNB(及び推論により高純度のexo−ANB)を単離することは、不可能ではなくとも非常に困難であることが明らかである。
【0044】
<実施例9>
[Endo−ビニルノルボルネン/Exo−ビニルノルボルネン混合物の熱分解]
窒素雰囲気下で、Pro−Pak(登録商標)ステンレス鋼充填物を充填した空冷式ガラスカラム(高さ12インチ)を備え、オイルバブラーに開放した3000mLの3つ口ガラスフラスコに、endo−VNB/exo−VNB(Acros)(1262g)を添加した。endo−VNB/exo−VNB混合物を、初期には、上記充填カラム内の蒸気先端が4インチの高さに観察されるまで加熱した。初期ポット温度は約141℃であった。ここでは、上記充填カラムにより、上記混合物の標準沸点が上昇した。すなわち、上記液体の大気圧での沸点は、上記充填カラムから加えられる凝縮蒸気の背圧により上昇した。約9日間の実験中、上記反応混合物の温度を徐々に上昇させ、上記4インチの蒸気高さが上記充填カラム内で維持されるようにした。実験の詳細を表3に示す。
【0045】
計200時間の加熱後、上記反応液の温度は165℃であった。最終混合物の重量は1176g(収率93%)であり、副生成物が86g減少したことを示した。GC分析により、最終反応混合物が、以下の成分比:VCH0.01%、endo−VNB0.1%、exo−VNB23.5%、THI74%、及び重化合物8.6%;を有することが判明し、非常に微量のBD及びCPDが、試料中に検出された。exo−VNB対VCHの最終比は99.9%対0.1%であり、exo−VNBは84.9%の収率で回収された。実施例1〜8の結果と比較して、本例の反応においてもVCHがいくらか形成されたが(Acros製VNB中のVCHの初期濃度については実施例1を、26時間密閉熱分解後のVCH濃度については表1を参照)、本例で得られた結果は、「軽化合物」が除去される反応容器の場合には、本実施例の制御圧力下又は開放条件下では、実質的に全てのBD及びCPDが、顕著な量の望ましくないVCH副生成物が形成される前に、その反応器系から排出され得ることを示す。
【0046】
本実施例では、沸騰する反応混合物がPro−Pak(登録商標)充填剤を含有する充填カラムを通じた還流下にあり、カラム排気流中に検出された成分がBD及びCPDのみであったことから、分留カラムの使用の有効性が実証された。
【0047】
最終反応物(最終生成物)を、オーバーヘッド温度21℃、200mTorr〜300mTorrの減圧下で12インチのPro−pak(登録商標)カラムを用いて蒸留し(蒸留の詳細は表3参照)、VCH及びendo−VNBがGCにより検出不可能なレベルにある純度99%超ののexo−VNB/THI混合物(exo−VNB34.5%、及びTHI64.6%)を3留分得た。本実施例は、純粋なexo−VNB/THI混合物が容易に合成、回収され得ることを示す。分留により、試料中のexo−VNB含有量は増加する。
【表3】

【0048】
<実施例10>
[Endo−ビニルノルボルネン/Exo−ビニルノルボルネン:THI(50:50)混合物の熱分解]
より高い沸点温度を採用できるように反応器に最初にTHIを添加した以外は、実施例9の反応条件と同様の反応条件を利用した。具体的には、ステンレス鋼充填剤材を詰めたカラム、水冷式コンデンサ、及びオイルバブラーを装着した250mLのフラスコに、50gのendo−VNB/exo−VNB(Aldrich)と、50gのTHI(Promerus)とを投入した。投入した液体を、170℃に設定した油浴にて加熱した。該液体が静かに沸騰するのが確認された時の該反応器(該反応液)の温度は157℃であった。油浴での24時間加熱後の該液体温度は158℃であり、90時間後では165℃に上昇した。この時点で加熱を停止し、その混合物を冷却した。最終混合物の重量は94.8gであった。その組成は、exo−VNB 13.5%(GC/NMR分析)、及びTHI 86.5%であった。BD、CPD、VCHは、いずれも試料中に検出されなかった。
【0049】
この熱分解は大気に開放した反応器中で行ったので、反応が進行するにつれて、全ての軽化合物を系から排出することができた。加えて、endo−VNBがTHIに変換されたので、上記反応混合物はTHI含有量がより高い組成に変化した。この変化が起こるにつれて、上記反応器は該混合物の初期沸点よりもわずかに高い温度に設定した熱源により加熱したので、反応器温度の上昇が観察された。さらに逆Diels−Alder反応により形成された軽化合物は全て排気されたので、これらが結合してVCH又は他の望ましくない副生成物を形成することはなかった。なお、endo−VNB/exo−VNBが、THI等の高沸点の液体と混合されることによって、初期温度がより高くなり、コープ転位の反応速度が上昇した。
【0050】
<実施例11>
[密閉反応器中におけるEndo−ビニルノルボルネン/Exo−ビニルノルボルネン(Nisseki)の熱分解]
反応速度論データを取得するために、反応器を密閉した他は実施例9と同様に熱分解反応を実施した。具体的には、endo−VNB/exo−VNB(Nisseki)の試料を、Buchi LIMBO 反応器(最大圧力50psig)に投入し、180℃に加熱した。該反応器は、その内圧が高まるよう、28時間当該温度に保持した。
【0051】
反応混合物を室温に冷却し、反応速度定数(一次速度論モデルに基づく)を算出することを可能にするためにその組成を決定した。減少速度は、exo−VNBが9.98E−06s−1、endo−VNBが7.8E−05s−1であった。このことから、これら化学種はいずれも減少するが、endo−VNBの転位(コープ転位)により、endo−VNBの減少は、ほぼ分解反応のみによって起こるexo−VNBの減少と比べ、7.8倍速い速度で起こるものと考えられる。
【0052】
加えて、exo−VNB含有量に対するビニルシクロヘキセン含有量は、1.3%から10.8%に増加した。文献の証拠とは対照的に、これらの条件下では高純度のexo−VNBは得られない。したがって、50psig〜200psigで反応を実施すると、VCH含有量は低減しない(比較実施例3参照)。
【0053】
<実施例12>
[背圧制御下での市販のEndo−Exo−ビニルノルボルネンの熱分解(等熱反応)]
本実施例における3回の試験の各々に関しては、表示された量のendo−ビニルノルボルネン/exo−ビニルノルボルネン(VNB 99%以上、Nisseki Chemical)を、以下の主要な設備から成る反応器系中に投入した:ジャケット付撹拌式反応器、二重オーバーヘッドコンデンサ、及びオーバーヘッド凝縮物レシーバタンク。反応初期に、endo−VNB/exo−VNB混合物を標的温度に加熱し、反応器の液体が静かに沸騰するまで圧力を調整した。上記混合物を当該標的温度に保持し、静かな沸騰状態を維持するよう、圧力を少しずつ調整した。各試験に関する定温の標的温度と傾斜圧力条件との詳細を、以下の表に示す。VNBのexo/endo異性体の初期比はendo−VNB 81.45%対exo−VNB 18.22%であり、VCHが0.24%、THIが0.08%存在した。
【表4】

【表5】

【表6】

【0054】
試験1では、反応器圧力を30psigから24psigに徐々に低下させながら、180℃で20時間加熱して、98%超のexo−VNB(exo−VNB/総VNB)を得た。GCデータから、exo−VNB対VCHの最終比は89.55%対10.45%であり、exo−VNBの初期量の約27%が回収され得ることを示した。
【0055】
一次速度論によるデータの解析結果によると、endo−VNBの消費反応速度は7.9E−05s−1、exo−VNBのそれは1.1E−05s−1である。したがって、180℃で両方の化学種が反応又は異性化し、exo−VNBの分解よりも約7.2倍速い速度でendo−VNBが転位していることになる。
【0056】
試験2では、反応器圧力を28psigから21psigに徐々に低下させながら、180℃で12時間加熱して、98%超のexo−VNBを得た。GCデータから、exo−VNB対VCHの最終比は92.80%対7.20%であり、exo−VNBの初期量の約37%が回収され得ることを示した。
【0057】
一次速度論によるデータの解析結果によると、endo−VNBの消費反応速度は1.2E−04s−1、exo−VNBのそれは1.7E−05s−1である。したがって、180℃で両方の化学種が反応又は異性化し、exo−VNBの分解よりも約7.1倍速い速度でendo−VNBが転位していることになる。
【0058】
試験3では、反応器圧力を12.5psigから7.5psigに徐々に低下させながら、160℃〜165℃で38時間加熱して、約98%のexo−VNBを得た。GCデータから、exo−VNB対VCHの最終比は97.46%対2.54%であり、exo−VNBの初期量の約67%が回収され得ることを示した。
【0059】
一次速度論によるデータ解析により、2つの反応温度における2つの反応速度を算出した。165℃では、endo−VNBの消費反応速度は1.19E−04s−1、exo−VNBのそれは1.67E−05s−1である。したがって、165℃で両方の化学種が反応又は異性化し、exo−VNBの分解よりも約18倍速い速度でendo−VNBが転位していることになる。
【0060】
160℃では、endo−VNBの消費反応速度は3.21E−05s−1、exo−VNBのそれは4.18E−07s−1である。したがって、160℃では両方の化学種が反応又は異性化し、exo−VNBの分解よりも約76.82倍速い速度でendo−VNBが転位していることになる。endo−VNBのコープ転位によるendo−VNBの減少速度よりもexo−VNBの減少速度が著しく緩やかであることが好ましい。得られたexo−VNBの品質に関して、以下の表は最終混合物中のexo−VNB及びendo−VNBに関連する%VCHを示す。反応器を開放することによりVCH濃度がより低くなること、及び或る温度で試験することにより、exo−VNBの分解速度が低下する場合には、閉鎖系反応器の場合と比べ、ずっと純粋な生成物が得られることが明らかである。
【表7】

【0061】
加えて、これら実験結果は、反応器の開放(通気、排気)制御によりBD及びCPDが低濃度に維持される場合には、重成分の生成が低減されることを示す。
【0062】
<実施例13>
[高純度のExo−ビニルノルボルネンの蒸留]
実施例12の試験3で得た粗exo−VNBを、以下の設備から成る真空蒸留装置に投入した:加熱用マントル付蒸留容器、充填蒸留カラム(理論段数60)、還流スプリッタ、水冷式コンデンサ、蒸留液レシーバ及び真空ポンプ。蒸留容器温度を加熱用マントルへの電力入力を調整することにより制御し、系の真空をオーバーヘッドレシーバで真空圧力を調整することにより制御した。
【0063】
13.9Kgの粗VNBを蒸留容器へ移し終えた後、上記蒸留系を所望の真空度に調整した。次いで、上記蒸留カラム中で総還流条件が確立されるまで、上記蒸留容器を加熱した。上記還流スプリッタを所望の還流比で作動させ、オーバーヘッドレシーバから液体留分を定期的に取り除き、分留を進行させた。GC分析により該オーバーヘッド液体留分の組成を求めた。必要に応じて、上記オーバーヘッド流の組成を変えるため、蒸留還流比を調整した。初期蒸留オーバーヘッド留分(凝縮物)は「軽」成分が豊富であり、該成分は主にブタジエン(BD)、シクロペンタジエン(CPD)及びビニルシクロヘキセン(VCH)である。該「軽」成分の除去後に、高純度のexo−VNBを残存するTHIから分離する。オーバーヘッド流中にTHIを認めたら、蒸留プロセスを終了させる。蒸留条件及び採取したオーバーヘッド留分の詳細を、以下の表に示す。
【表8】

【0064】
本実験は、粗出発混合物中に含有されるexo−VNBの約75%が分留時に除去されることを示した。オーバーヘッド留分中に存在する主要な不純物はVCHであり、VCHは、exo−VNBと沸点が近いので、exo−VNBからの分離が困難であることが分かった。捕集した上記高純度VNB留分のGC分析から、exo−VNB含有量は98%超、VCH含有量は0.25%未満であった。
【0065】
<実施例14>
[背圧制御下での市販のEndo−Exo−ビニルノルボルネン(Ineos)の熱分解(定圧反応)]
Pro−Pak(登録商標)ステンレス鋼充填物を充填した空冷式カラム(高さ12インチ)を装着し、オイルバブラーへガス開放した1000mLの3つ口フラスコに、Endo−VNB/exo−VNB(Ineos)(357g)を添加した。該endo−VNB/exo−VNB混合物を、上記充填カラム内の蒸気先端が6インチの高さに観察されるまで、141℃に設定した油浴にて初期加熱した。蒸気先端がこの高さだった時の反応器温度は約142℃であった。9日間の実験中、上記の蒸気高さが維持されるように、上記油浴の温度を調節した。計216時間の加熱後、上記反応混合物は166℃に達した。
【0066】
室温まで冷却させた後の上記反応混合物の重量は、250gであった。次いで、該混合物の試料をGCにより分析した。その成分比は以下のとおりであった:VCH0.05%(実質的に変化しない)、exo−VNB23.6%(初期値の約84%)、及びTHI76.1%。この組成から、exo−VNB対VCHの比は99.8%対0.20%であり、endo−VNBは検出されなかった。加えて、BD及びCPDは、いずれも上記試料中に検出されなかった。VCHレベルは、初期値の約87%に低下し、他の不純物(蒸留により除去可能である)は初期値の117%に増加した。重化合物含有量は、実験中、少量増加したのみであった。実験の詳細を表4に示す。
【0067】
したがって、上記反応で採用した制御圧力(定圧)条件下では、全てのブタジエンが系から除去され、その結果ブタジエンの結合による非所望のVCH副生成物形成も起こらなかったとみられる。加えて、上記試料中にCPDは存在しなかった。少量の重化合物が認められたが、そのレベルは密閉系での反応より顕著に低く、exo−VNBの出発濃度がかなりの程度保持されることを示した。142℃〜166℃の実験温度範囲において、一次速度論によるデータ解析によって求めたendo−VNBの減少速度は、、1.18E−05s−1であった。
【0068】
本実施例では、沸騰反応混合物はPro−Pak(登録商標)充填物を含有するカラムを通じた還流下にあり、捕集した排気流試料中にはBD及びCPDのみが含有さていたことから、開放系での分留プロセスの使用の有効性が実証された。
【0069】
最終反応混合物(250グラム)を蒸留し、exo−VNB及びTHIを含有する225.6グラムの高純度混合物を回収した。該材料の組成は、exo−VNB 23.6%、EtNB(エチルノルボルネン)0.4%、ENB(エチリデンノルボルネン)0.1%、1,5−COD(1,5−シクロオクタジエン)0.1%、及びTHI 75.7%であった。
【表9】

【0070】
<実施例15>
[背圧制御下でのEndo−Exo−ビニルノルボルネン(80:20)からの高純度Exo−VNBの調製(定圧反応)、及び分留]
窒素雰囲気下で、endo−VNB/exo−VNB(Aldrich)(841g)を、Pro−Pak(登録商標)ステンレス鋼充填物を充填した空冷式ガラスカラム(高さ12インチ)を装着し、オイルバブラーへ開放した2000mLの3つ口ガラスフラスコに添加した。endo−VNB/exo−VNB混合物を、上記充填カラム内の蒸気先端が約6インチの高さに観察されるまで、初期加熱した。初期容器温度は、約141℃であった。計216時間の加熱後、該反応混合物の沸点は165℃であった。最終混合物の重量は745.5g(回収率89%)であり、95.5gの副生成物が除去されたことを示した。最終反応混合物のプロトンNMR分析によると、反応終了時にendo−VNBは存在しなかった。該混合物の試料をGCにより分析した。その成分比は以下のとおりであった:VCH0.384%、exo−VNB26.28%、及びTHI72.17%。分留により、VCHが実質的に含まれず、純度99.0%のexo−VNBの試料を得た。VCH及びendo−VNBが試料中に存在しないことを、プロトンNMRにより確認した。
【0071】
<実施例16>
[加圧反応器中におけるEndo−Exo−ビニルノルボルネン(82:18)からのExo−VNBの生成のモニタリング]
次の一連の4つの実験では、市販のendo−VNB/exo−VNB(Ineos)を300mLの加圧反応器に投入し、165℃(32時間)、180℃(9時間)、190℃(8時間)及び210℃(3時間)の温度で加熱した。加熱した溶液を定期的にサンプリングし、endo−VNB、exo−VNB及びTHIの相対的濃度を測定した。一次反応速度論プロットから相対的速度定数を算出した。
【表10】

【0072】
上記表10に示されるように、endo−VNBの減少速度対exo−VNBの減少速度の比は、165℃で最大である。したがって、その系におけるexo−VNBの最大濃度を維持するために、より低い温度を維持する必要がある、(kendo/kexoの値を最大化する)。
【0073】
<実施例17>
[加圧反応器中でのEndo−ビニルノルボルネン/Exo−ビニルノルボルネン(82:18)の熱分解]
本実施例では、市販のendo−VNB/exo−VNB(Ineos)を300mLの加圧反応器に投入し、150℃で加熱し、反応器中の圧力を反応物の組成に基づき変化させた。かかる低温(下記表11参照)では、BD、CPD、VCH、DCPD、THI、及び重化合物の形成が全て起こり、それらの濃度は初期値から増加した。加えて、重化合物が著しく増加した。これは、大気圧近傍での加熱分解において反応分解物が排出されるよう制御開放した際の低い値とは対照的であった(実施例14、表4参照)。
【表11】

【0074】
<実施例18>
[背圧制御下でのEndo−Exo−ビニルノルボルネンの熱分解(傾斜させた温度及び圧力での反応)]
Endo−ビニルノルボルネン/exo−ビニルノルボルネン(Ineos)を、以下の主要な設備から成る回分式反応器系に秤量した:定格圧力のガラス反応器、温度制御型の油浴、及びオーバーヘッド留分レシーバタンク。反応器温度は外部高温油浴により自動制御し、反応器圧力はオーバーヘッドレシーバに接続した反応器排気ライン上の背圧制御弁により手動制御した。VNBのexo/endo異性体の初期比は、exo−VNB25%対endo−VNB75%であった。
【0075】
窒素を用いて交互に加圧/減圧する工程を3回行い、反応器ヘッドスペースから酸素を除去した。この窒素置換後、常温(20℃)において、反応器を、所望の初期圧となるまで窒素で加圧した。反応器の内容物を、所望の初期温度まで迅速に加熱した。反応を当該初期温度で所要時間継続し、第1の反応時間を通じて当該系の圧力制御器の設定値を徐々に低下させた。その後、反応温度を第2の温度設定値まで迅速に低下させた。反応を当該第2温度で所要時間継続し、第2の反応時間を通じて当該系圧力制御設定値を少しずつさらに低下させた。反応器から排出された蒸気を凝縮し、オーバーヘッド留分タンクに捕集した。
【表12】

【表13】

【0076】
試験1では、140時間の総反応時間の後に、99%のexo−VNBを得た。ここで、最初の18時間は165℃とし、残りの122時間は155℃とし、反応器圧力は12psigから4psigまで徐々に低下させた。GCデータは、exo−VNB対VCHの最終比が99.30%対0.70%であり、exo−VNBの初期量の約85%が回収され得ることを示した。一次速度論によるデータ解析から、当該2つの反応温度に関してそれぞれの反応速度を求めた。165℃では、endo−VNBの消費反応速度は1.72E−05s−1であり、exo−VNBの形成速度は1.35E−06s−1である。155℃では、endo−VNBの消費反応速度は1.12E−05s−1であり、exo−VNBは6.87E−07s−1である。したがって、155℃で両方の化学種が反応又は異性化し、exo−VNBの分解よりも16.3倍速い速度でendo−VNBが転位していることになる。
【0077】
試験2では、74時間の総反応時間の後に、99%超のexo−VNBを得た。ここで、最初の40時間は170℃とし、残りの34時間は160℃とし、反応器圧力は11psigから2psigまで徐々に低下させた。GCデータは、exo−VNB対VCHの最終比が97.85%対2.15%であり、exo−VNBの初期量の約71%が回収され得ることを示した。一次速度論によるデータ解析から、当該2つの反応温度に関してそれぞれの反応速度を求めた。170℃では、endo−VNBの消費反応速度は2.52E−05s−1であり、exo−VNBは6.95E−07s−1である。160℃では、endo−VNBの消費反応速度は1.54E−05s−1であり、exo−VNBは1.38E−06s−1である。したがって、160℃で両方の化学種が反応又は異性化し、exo−VNBの分解よりも11.2倍速い速度でendo−VNBが転位していることになる。
【0078】
<実施例19>
[背圧制御下でのEndo−Exo−ビニルノルボルネンの熱分解(分離カラム内で温度及び圧力を傾斜)]
Endo−ビニルノルボルネン/exo−ビニルノルボルネン(Ineos)を、以下の主要な設備から成る回分式蒸留ユニット中に秤量した:ジャケット付蒸留容器、理論段数12の規則充填物を含有するカラム、二重オーバーヘッドコンデンサ、及びオーバーヘッド留分レシーバタンク。上記蒸留容器ジャケットの温度は、専用の高温オイルユニットを使用して自動制御した。系の圧力は、オーバーヘッドレシーバの圧力を窒素添加により上昇させ、排気により低減する分割範囲制御スキームを使用して自動制御した。VNBのexo/endo異性体の初期比は、exo−VNB25%対endo−VNB75%であった。
【0079】
窒素により交互に加圧/減圧する工程を3回行い、酸素を上記蒸留系から除去した。この窒素置換後、当該蒸留ユニットを、真空(−10psig)及び常温(20℃)下に放置した。該蒸留容器の内容物を所望の初期温度まで迅速に加熱した。加熱中に系の圧力が0 psigに到達したときに、オーバーヘッドレシーバ圧力制御設定の初期値を入力した。反応を初期温度で所要時間継続し、第1の反応時間を通じて、系の圧力制御設定値を徐々に低下させた。反応温度は、その後第2の温度設定値まで迅速に低下させた。反応を第2の温度で所要時間継続し、系の圧力制御設定値を、第2の反応時間を通じて、再び徐々に低下させた。蒸留カラムを通じて蒸留容器から排出された蒸気の凝縮物を、オーバーヘッドレシーバタンクに捕集した。
【表14】

【0080】
本実験は、72時間の総反応時間の後に、99%超のexo−VNBが得られたことを示した。ここで、最初の20時間は165℃とし、残りの52時間は155℃とし、反応器圧力は13psigから0psigまで徐々に低下させた。GCデータは、exo−VNB対VCHの最終比が98.87%対1.13%であることを示し、exo−VNBの初期量の約84%が回収され得ることを示した。一次速度論によるデータ解析から、当該2つの反応温度に関してそれぞれの反応速度を求めた。165℃では、endo−VNBの消費反応速度は3.97E−05s−1であり、exo−VNBの形成速度は4.95E−07s−1である。155℃では、endo−VNBの消費反応速度は1.41E−05s−1であり、exo−VNBは8.60E−07s−1である。したがって、155℃で両方の化学種が反応又は異性化し、exo−VNBの分解よりも16.4倍速い速度でendo−VNBが転位していることになる。
【0081】
上記試験由来の粗exo−VNBを、以下の設備から成る真空蒸留装置に投入した:ジャケット付蒸留容器、充填蒸留カラム(理論段数60の不規則充填物)、還流スプリッタ、水冷式コンデンサ、留分レシーバ及び真空ポンプ。蒸留容器温度は、ジャケットへの熱入力を調整することにより制御し、系の真空度は、オーバーヘッドレシーバにおける真空圧力を調整することにより制御した。既知重量の粗exo−VNBを蒸留容器に移した後に、上記蒸留系を所望の真空度に調整した。次いで、上記蒸留カラム中で総還流条件が確立されるまで、上記蒸留容器を加熱した。上記還流スプリッタを所望の還流比で作動させ、オーバーヘッドレシーバから液体留分を定期的に取り除き、分留を進行させた。GC分析により、採取したオーバーヘッド液体留分の組成を求めた。必要に応じて、上記オーバーヘッド流の組成を変えるため、蒸留還流比を調整した。初期オーバーヘッド留分は「軽」成分が豊富であり、該成分は主にブタジエン(BD)、シクロペンタジエン(CPD)及びビニルシクロヘキセン(VCH)である。該「軽」成分の除去後に、高純度のexo−VNBを残存するTHIから分離する。オーバーヘッド流中にTHIを認めたら、蒸留プロセスを終了させる。
【表15】

【0082】
本実験は、粗出発混合物中に含有されるexo−VNBの約79%が分留時に除去されることを示した。オーバーヘッド留分中に存在する主要な不純物はVCHであり、VCHは、exo−VNBと沸点が近いので、exo−VNBからの分離が困難であることが分かった。捕集した上記高純度exo−VNB留分のGC分析から、exo−VNB含有量は98%超、VCH含有量は0.25%未満であった。
【0083】
<実施例20>
[高純度Exo−イソプロペニルノルボルネン/Endo−イソプロペニルノルボルネン(MeVNB)(90:10)の調製]
Endo−Exo−5−アセチルノルボルネン。シクロペンタジエン(308.3g、4.7モル)を、38℃〜43℃でジシクロペンタジエン(DCPD)から新たに分解し(cracked)、ドライアイス−イソプロパノール中で冷却したレシーバ中に捕集した。コンデンサ、滴下漏斗及びサーモウェルを装備した3Lの4つ口フラスコ中に、メチルビニルケトン(MVK)(344.2g、400ml、4.9モル)を投入した。シクロペンタジエンの滴下開始とともに、MVKを磁気撹拌した。温度が53℃に到達した時にシクロペンタジエンの添加を停止し、次いで温度が67℃に上昇した時に反応物を氷浴で冷却した。温度が47℃に低下した時にシクロペンタジエンの添加を再開し、温度が28℃に到達した後に氷浴を除去した。この添加及び冷却サイクルを3回繰り返した。23℃から71℃の間での温度変化とともに添加を78分で完了した。添加終了から2.8時間後のGC分析は、2.1%のDCPDを有する97%(exo:endo 19:81)の生成物を示した。該混合物を終夜室温で撹拌し、1.8%のDCPDを有する93.9%の最終生成物分析結果を得た。反応混合物を、18インチのビグリューカラムと、スプリッタを装着した蒸留ヘッドとにより真空蒸留した。スプリッタ比は、20:1に設定した。異性体比81:19(endo:exo),純度99%超(DCPD 0.3%)のEndo−exo−アセチルノルボルネン(306.5グラム)を得た。GC分析を、長さ30m,内径0.32mm,膜厚0.25μmのDB5カラムで、45℃から200℃まで15℃/分で、次いで300℃まで40℃/分で加熱,インジェクタ温度275℃,検出器温度350℃の条件にて実施した。保持時間は、4.65分(exo)、4.93分(endo)、及び4.30分(DCPD)であった。
【0084】
ヨウ化メチルトリフェニルホスホニウム。自動攪拌装置、サーモウェル、ストッパ及び窒素導入管を装備した22Lの4つ口フラスコに、トリフェニルホスフィン(1683.8g、6.4モル)を投入した。8000mlの乾燥トルエンを添加した。該混合物を攪拌して全てのトリフェニルホスフィンを溶解し、これにより温度が17℃に低下した。ヨードメタン(975g、6.9モル)を添加した。ホスホニウム塩の沈殿が直ちに始まった。反応温度が徐々に上昇するとともに、高濃度の白色スラリーが形成された。40分後に、温度は31.5℃に到達したため、該反応物を水浴で冷却した。温度は再びゆっくりと低下し、60分後に30.5℃となった。さらに1000mlのトルエンを添加し、該混合物を終夜室温で撹拌した。該混合物を濾過し、固形物をトルエンで洗浄した。得られた4546gの湿った白色固形物を20Lの丸底フラスコ中に配置し、45℃、50℃、60℃、70℃及びその後80℃で順次回転濃縮した。約1.5Lのトルエンを45℃で除去し、さらに500mlをより高い温度で除去した。フラスコを35℃に冷却し、生成物を終夜真空下で回転濃縮した。該生成物をその後2時間70℃〜80℃で回転濃縮し、その後回転濃縮しながら8時間にわたり室温まで冷却させた。これにより、2466gの(収率95%)乾燥塩を得た。該塩はNMRにより0.3重量%のトルエンの存在を示した。48時間以内にトルエン母液から、さらなるホスホニウム塩が沈殿した。
【0085】
Exo体が豊富なExo−Endo−5−イソプロペニル−2−ノルボルネン(MeVNB)。自動攪拌装置、サーモウェル、窒素導入管付コンデンサ、及びストッパを装備した22Lの4つ口フラスコ中で、ヨウ化メチルトリフェニルホスホニウム(1364.2g、3.4モル)を、4000ml無水ジエチルエーテルでスラリー状にした。攪拌した該スラリーに、5−アセチルノルボルネン(99%超(純度)且つDCPD0.3%(平均含有量)、、306.5g、2.2モル)を添加した。さらに1000mlのエーテルで該アセチルノルボルネン残渣を洗い落して添加した。固体のカリウムtert−ブトキシド(296.4g、2.6モル)を少しずつ添加した際、該反応混合物の温度は18.3℃であった。該混合物は直ちに黄変し、3分以内に温度が34.8℃まで上昇した結果、エーテルが還流した。該反応物を氷水浴中で冷却した。エーテル還流が収まった時、残りのカリウムtert−ブトキシドを添加した。さらに1000mlのエーテルを添加した。1時間後、該反応物が25.1℃まで冷却された時、GC分析は、5−アセチルノルボルネンが残存しないこと、及び89.3%の生成物(exo/endo比=83:17)を示した。該混合物を40時間撹拌した後、濾過してエーテルで洗浄した。得られた濾液を回転濃縮し、545.5gの固体及び褐色液状残渣を得た。これを濾過し、ペンタンによる洗浄を、該ペンタン洗浄液が透明で固形物の沈殿がなくなるまで何度も繰り返した。濾液及び洗浄液を回転濃縮し、GC分析で純度97.4%の生成物336g(粗収率100%超)を得た。1H NMRから、トリフェニルホスフィンオキシドの存在が認められた。該粗生成物を、ペンタンでシリカ612gに流した。該生成物の大部分は、1回目及び2回目の1000mlのペンタン溶離液中に回収され、295gの無色液体(純度99%)を得た。GC分析から、トリフェニルホスフィンオキシドの存在がまだ認められた。該試料を783gのシリカに吸着させ、ペンタンで流した。最初の3回の1000mlのペンタン溶離液から、純度98.5%の生成物(exo:endo比=83:17)258.9gを得た。GCによると、トリフェニルホスフィンオキシドはほとんど存在しなかった。該生成物は、12インチビグリューカラムにより真空蒸留した。ペンタン及びトルエンを、24℃〜106℃(705Torr〜141Torr)で除去した。トルエンを含有する2つの留分計39.4gを、99℃〜105℃(125Torr〜101Torr)で採取した。182g(収率60%)の99.3% イソプロペニルノルボルネンを、98℃〜101℃(100Torr〜101Torr)で採取した。Exo/endo比は、84:16(GC)及び82:18(NMR)であった。該生成物には、0.6%のMeTHI不純物が含まれていた。GC分析を、長さ30m,内径0.32mm,膜厚0.25μmのDB5カラムを用い、加熱速度45℃から200℃まで15℃/分、次いで300℃まで40℃/分,インジェクタ温度275℃,検出器温度350℃の条件にて実施した。保持時間は、3.94分(exo)、3.98分(endo)、及び4.45分(MeTHI)であった。
【0086】
本実施例では、高exo−MeVNB(84:16=exo:endo)生成物を含有する試料が、塩基(KO−tert−Bu)存在下において、高endo−NBCHO(81:19=endo:exo)出発物質と、ヨウ化メチルトリフェニルホスホニウムとのWittig反応により直接得られることが見出された。かかる条件下でのin−situエピマー化は、G. Adames, R. Grigg, and J.N. Grover in Tetrahedron Letters, 4, (1974) pp 363−366に記載される塩基触媒下におけるNaOEtMeOH経由のendo体が豊富なNBCHOからexo体が豊富なNBCHOへの平衡化は、exo−MeVNB合成に必要ではないことを意味する。
【0087】
<実施例21>
[背圧制御の有無でのEndo−Exo−イソプロペニルノルボルネンの熱分解(定温)]
以下に挙げる三つの試験の各々につき、endo−イソプロペニルノルボルネン/exo−イソプロペニルノルボルネン(MeVNB 98%以上)を、以下の主要な設備から成る回分式反応器中に秤量した:定格圧力のガラス反応器、温度制御型油浴、及びオーバーヘッド留分レシーバタンク。endo−MeVNB/exo−MeVNB混合物を標的温度に初期加熱し、反応器の液体が静かに沸騰するまで圧力を調整した。該混合物を所要時間標的温度に維持し、圧力を徐々に調整してこの静かな沸騰状態を維持した。各試験に係る定温条件および傾斜圧力条件の詳細を、以下の表に示す。MeVNBのexo/endo異性体の初期比は、exo−MeVNB 85%対endo−MeVNB 15%、又はexo−MeVNB 84%対endo−MeVNB 16%のいずれかであった。
【表16】

【表17】

【表18】

【0088】
試験1では、165℃で7時間反応させた後、99%超のexo−MeVNBが得られた。GCデータは、exo−MeVNB対DCPDの最終比が99.2%対0.8%であることを示し、exo−MeVNBの初期量の約97%が回収され得ることを示した。一次速度論によるデータ解析から、反応速度を求めた。165℃では、endo−MeVNBの消費反応速度は1.04E−04s−1であり、exo−MeVNBは6.6E−07s−1である。したがって、165℃で両方の化学種が反応又は異性化し、exo−MeVNBの分解よりも156.7倍速い速度でendo−MeVNBが転位していることになる。
【0089】
試験2では、165℃で7時間、反応器圧力を740mmHgから680mmHgに徐々に低下させながら反応させた後、99%超のexo−MeVNBが得られた。GCデータは、exo−MeVNB対DCPDの最終比が99.3%対0.7%であることを示し、exo−MeVNBの初期量の約99%が回収され得ることを示した。一次速度論によるデータ解析から、反応速度を求めた。165℃では、endo−MeVNBの消費反応速度は1.1E−04s−1であり、exo−MeVNBは1.25E−07s−1である。したがって、165℃で両方の化学種が反応又は異性化し、exo−MeVNBの分解よりも900倍速い速度でendo−MeVNBが転位していることになる。
【0090】
試験3では、155℃で21時間、反応器圧力を695mmHgから500mmHgに徐々に低下させながら反応させた後、99%超のexo−MeVNBが得られた。ここで反応器圧力は695mmHgから500mmHgに徐々に減少した。GCデータは、exo−MeVNB対DCPDの最終比が99.3%対0.7%であることを示し、exo−MeVNBの初期量の約99%が回収され得ることを示した。一次速度論によるデータ解析から、反応速度を求めた。155℃では、endo−MeVNBの消費反応速度は4.E−05s−1であり、exo−MeVNBに関しては5E−08s−1である。したがって、155℃で両方の化学種が反応又は異性化し、exo−MeVNBの分解よりも807倍速い速度でendo−MeVNBが転位していることになる。
【0091】
ここまでで、endo−アルケニルノルボルネン及びexo−アルケニルノルボルネンの異性体混合物から実質的に純粋なexo−アルケニルノルボルネン材料を形成する方法について述べてきた。これら方法は、以下に請求する本発明の実施形態に包含される。
【0092】
例えば、本発明の実施形態では、開放反応系の一部である反応容器に、所定量のendo−アルケニルノルボルネン/exo−アルケニルノルボルネン混合物を投入する。上述のように、かかる反応系は、種々の方式により構築することができる。その方式は特に限定されないが、反応容器の加熱機器、容器圧力の制御機器、及び容器に不活性ガスを提供する機器等の機器を1つ以上含み得る。加えて、該反応系は、コンデンサ、凝縮物レシーバ機器、充填又は非充填カラム、分留カラム、オイルバブラー等を包含し得る。
【0093】
一般的に、反応容器に投入した後に、その混合物の蒸気圧が該混合物の沸点と同じか又はそれよりわずかに低くなるよう、容器の圧力又は温度の一方を固定し、他方を調整する。加えて、該混合物の温度は、存在する任意のendo−アルケニルノルボルネンをコープ転位させるのに効果的である。当業者は理解するように、かかるコープ転位反応が進むにつれて、コープ転位生成物が形成される(例えば、endo−VNBに関してはTHIが形成され、endo−MeVNBに関してはMeTHIが形成される)ので、初期投入混合物の組成が変化して反応混合物が形成される。かかる組成変化は、当然、該反応混合物の沸点を変化させる。本発明による有利な実施形態では、蒸気圧が混合物の沸点と同じか又はそれよりわずかに低く維持されるよう、その反応系の温度及び圧力のいずれかを調整する。
【0094】
上で言及したように、本発明による実施形態の反応容器は、開放反応系に包含される。開放反応系とはすなわち、反応混合物中の一部の成分を反応容器外に排出する一方で、他の成分を反応容器中に保持することができる系である。蒸気圧制御は、排出される物質を、上記で「軽化合物」と規定したものに有利に制限する。保持される成分は、したがって、混合物中に存在するアルケニルノルボルネン異性体、及び上記で「重化合物」と規定した物質である。有利に、このような軽化合物を反応容器から排出することにより、これら物質が再結合して望ましくない物質を形成するのを低減又は排除し、それにより、高純度のアルケニルノルボルネン異性体の単離を実質的に妨げる複雑な混合物を回避することができる。上記複雑な混合物は、例えば、Titova et.al in “Thermal Isomerization of Vinylnorbornene” (Zhurnal Organicheskoi Khimii Vol.7(11), pp.2286−8(1971))、Ploss et.al., in “Cope Rearrangement of 2−(a−alkenyl)bicyclo[2.2.1]hept−5−enes and − bicyclo[2.2.2]oct−5−enes” (Journal fuer Praktische Chemie (Leipzig) Vol. 314(3−4), pp.467−82(1972))、及びMaeda et. al. in “Rearrangement of 5−vinyl−2−norbornene to 3a,4,7,7a−tetrahydroindene” (Nippon Kagaku Kaishi, Vol.8, pp.1587−9 (1974))等の刊行物に開示されている。
【0095】
本発明の幾つかの実施形態では、蒸気圧制御は、沸騰速度、凝縮速度、蒸気先端の高さ等の制御を包含する。かかる制御は手動で行うことができるが、本発明の幾つかの実施形態は、自動でかかる制御を行う1つ以上の機器を包含する。例えば、上記反応系は、所定の条件(例えば、蒸気先端の高さ、及び/又は反応混合物成分の濃度)をモニタリングし、該反応系に含まれる温度及び/又は圧力の制御システムに適切な制御シグナルを提供し得る他の装置に、そのモニタリング結果を報告し得る1つ以上のセンサーを含み得る。かかる自動制御は、本発明によるプロセスが連続式プロセス、又は完了するのに数日を要するプロセスである場合には、特に有利であり得る。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
高純度のexo−アルケニルノルボルネン(ANB)を、endo−ANB/exo−ANB混合物から製造する方法であって:
反応容器中に前記endo−ANB/exo−ANB混合物を投入すること;
コープ転位反応を生じさせるのに効果的な温度に前記endo−ANB/exo−ANB混合物を加熱することにより、反応液を形成すること;
該開放系から軽化合物が排出されつつ該反応液中にendo−ANB、exo−ANB及び重化合物が保持されるよう、開放系において前記反応液の蒸気圧を制御すること、ここで、該蒸気圧を制御することは、前記反応容器の温度及び圧力を制御することを含む;及び
前記高純度のexo−ANBを前記反応液から分離すること;
を包含する、高純度exo−ANB製造方法。
【請求項2】
前記反応容器中に投入される前記endo−ANB/exo−ANB混合物が、実質的に純粋なendo−ANB/exo−ANB混合物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記反応容器中に投入される前記endo−ANB/exo−ANB混合物が、実質的に純粋なendo−ANB/exo−ANB混合物と、exo−ANBの沸点よりも高い沸点を有する不活性溶媒とを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記不活性溶媒が、テトラヒドロナフタレン、ノニルシクロヘキサン、オクタンニトリル、サリチルアルデヒド、合成油、又は鉱物油を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記分離された高純度のexo−ANBが、超高純度のexo−ANBを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記分離された高純度のexo−ANBがexo−ビニルノルボルネンを含み、該exo−ビニルノルボルネンが0.5%未満のビニルシクロヘキセンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記蒸気圧を制御することが、前記温度を一定に保持することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記一定の温度が145℃〜165℃である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記加熱することが、第1の温度に加熱し、次いで該第1の温度より低い第2の温度に加熱することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記加熱することが、第1の温度に加熱し、次いで該第1の温度より高い第2の温度に加熱することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記第1の温度及び前記第2の温度が145℃〜165℃である、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記蒸気圧を制御することが、前記開放系反応容器から軽化合物が排出される温度を適用することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記蒸気圧を制御することが、前記開放系反応容器から軽化合物が排出されるよう、前記反応容器に適用する圧力を制御することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記蒸気圧を制御することが、実質的に大気圧を適用することを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記蒸気圧を制御することが、前記圧力を変化させながら前記温度を実質的に一定に保持することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記高純度exo−ANBが、高純度のexo−ビニルノルボルネンを含み、
該高純度のexo−ビニルノルボルネンが、コープ転位反応生成物との物理的混合物として分離される、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記開放系が分留カラムを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記endo−ANB/exo−ANB混合物が、exo−ANB99%対endo−ANB1%〜exo−ANB1%対endo−ANB99%を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記開放系が、回分式反応器、半回分式反応器、又は連続式プロセス反応器を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
endo−ANB/exo−ANB混合物から高純度のexo−ANBを製造する方法であって、
開放系において前記endo−ANB/exo−ANB混合物に有効量の熱及び/又は圧力を適用して蒸気圧を制御し、endo−ANBをコープ転位反応生成物に選択的に変換し、且つ該endo−ANB/exo−ANB混合物から軽化合物を除去して、前記高純度のexo−ANBを得ることを含む、高純度exo−ANB製造方法。
【請求項21】
コープ転位反応によりendo−ANBが前記コープ転位反応生成物に変換されるよう、前記蒸気圧を制御する、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
シクロペンタジエン、ブタジエン、又はイソプレンの少なくとも1つを含む軽化合物が排出されるよう、前記蒸気圧を制御する、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
蒸留により前記コープ転位反応生成物から前記高純度exo−ANBを分離することをさらに含む、請求項20に記載の方法。

【公表番号】特表2010−535905(P2010−535905A)
【公表日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−520300(P2010−520300)
【出願日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際出願番号】PCT/US2008/072426
【国際公開番号】WO2009/021096
【国際公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【出願人】(303043461)プロメラス, エルエルシー (18)
【Fターム(参考)】