説明

高純度メタリン酸塩及びその製造方法

本発明の高純度メタリン酸塩は、不純物の各有色金属元素濃度が5ppm以下であることを特徴とする。メタリン酸塩はアルミニウム塩又はバリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、ストロンチウム塩である。アルミニウム塩の場合、アルミニウム化合物とリン酸とを加熱反応させて重リン酸アルミニウム反応液を製造する第一工程、予めメタリン酸アルミニウム粉末を敷いた焼成容器に、第一工程で得られた重リン酸アルミニウム反応液を加えて焼成する第二工程、及び第二工程で得られた焼成物を粉砕する第三工程を具備する製造方法によって好適に製造される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、高純度メタリン酸塩及びその製造方法に関する。
【背景技術】
現在、電子材料分野では環境問題が深刻になっている中、鉛フリー化が求められている。ガラス業界においても同様に鉛フリー化が進んでおり、鉛ガラスに代わる高屈折レンズや低融点ガラスの開発が進んでいる。これらの高屈折レンズは有色金属、特に鉄の混入を嫌っている。高屈折レンズの原料として有望な材料として、リン酸塩系ガラス、ビスマス系ガラス、ホウケイ酸系ガラスなどが注目されている。中でもリン酸塩系ガラスの原料に関しては、単位重量あたりのリン含有量が高いことから、メタリン酸塩が有効であると考えられている。
リン酸塩系ガラスの原料として用いられるメタリン酸塩としては、メタリン酸アルミニウムやメタリン酸バリウム等が代表的なものである。これらのメタリン酸塩のうち、メタリン酸アルミニウムは、水酸化アルミニウムと二塩基性アンモニウムホスフェートの混合スラリーを630℃で1時間加熱することで得られることが知られている(例えば、特開昭57−118007号公報参照)。また、最近、リン酸塩とアルミニウム塩とリン酸アルミニウム化合物とを原料としてメタリン酸アルミニウムを製造するに際し、該原料にメタリン酸アルミニウム粉末を混合し、焼成反応させてメタリン酸アルミニウムを製造することが提案されている(例えば、特開2003−63811号公報参照)。更に、水酸化アルミニウムとリン酸とを反応させて重リン酸アルミニウムの反応液を生成し、該反応液をスプレードライヤーを用いて700〜750℃の温度で加熱してメタリン酸アルミニウムを製造する方法も知られている(例えば、Khicmicheskaya Promyshlennost(Moscow,Russian Federation)1982,10,595−7参照)。
メタリン酸アルミニウムとは別に、メタリン酸塩の一種であるメタリン酸亜鉛は、リン酸塩系ガラスの原料としての用途以外に、抗菌剤としても用いられている。メタリン酸亜鉛は、例えば酸化亜鉛とリン酸とを600℃で4時間加熱することで得られることが知られている(例えば特開平8−165213号公報参照)。
【発明の開示】
しかしながら、特開昭57−118007号公報に記載の製造方法では、焼成時にアンモニアが生成してしまい廃ガス処理等の設備が必要となる。また、不純物含有量を低減させることができない。
特開2003−63811号公報の記載によれば、高純度メタリン酸アルミニウムが得られるとされているが、固結防止のために用いられている好ましい反応では極力水分を少なくした固相反応を利用しているため、反応が完結しにくく、モル比(P/Al)のコントロールが難しいという欠点がある。また、不純物含有量に関し、具体的な記載がなされていない。
Khicmicheskaya Promyshlennost(Moscow,Russian Federation)1982,10,595−7に記載の方法では、スプレードライヤーを使用することに起因して、スプレーノズル等に由来するコンタミネーションが避けられない。
特開平8−165213号公報には、メタリン酸亜鉛の製造方法が簡単に記載されているのみであり、詳細な製造方法や不純物に関しての記載は何らなされていない。
従って本発明の目的は、前述した従来技術が有する種々の欠点を解消し得る高純度メタリン酸塩及びその製造方法を提供することにある。
本発明は、不純物の各有色金属元素濃度が5ppm以下であることを特徴とする高純度メタリン酸塩を提供することにより前記目的を達成したものである。
また本発明は、前記メタリン酸塩の好ましい製造方法として、
該メタリン酸塩を構成する金属の化合物とリン酸とを反応させて該金属のリン酸塩を製造する第一工程、及び
予め該メタリン酸塩粉末を敷いた焼成容器に、第一工程で得られたリン酸塩を加えて焼成する第二工程を具備することを特徴とする高純度メタリン酸塩の製造方法を提供するものである。
更に本発明は、前記メタリン酸塩がアルミニウム塩である場合の好ましい製造方法として、
アルミニウム化合物と無水リン酸とポリリン酸とを混合して得られた混合物を、予めメタリン酸アルミニウム粉末を敷いた焼成容器に入れて焼成することを特徴とする高純度メタリン酸塩の製造方法を提供するものである。
【図面の簡単な説明】
図1は実施例で得られたメタリン酸アルミニウムのXRDチャートである。
図2は実施例で得られたメタリン酸バリウムのXRDチャートである。
図3は実施例で得られたメタリン酸亜鉛のXRDチャートである。
図4は実施例で得られたメタリン酸カルシウムのXRDチャートである。
図5は実施例で得られたメタリン酸マグネシウムのXRDチャートである。
【発明を実施するための最良の形態】
以下、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明する。なお、特に断らない限り、以下の説明において「%」及び「ppm」はそれぞれ重量基準である。本発明のメタリン酸塩は、不純物として含有する各有色金属元素濃度が5ppm以下、好ましくは3ppm以下のものである。有色金属元素としては、鉄、クロム、ニッケル、マンガン又は銅の少なくとも1種が含まれる。これらの有色金属元素が5ppm超の濃度で含まれているメタリン酸塩を、例えば光学レンズ製造用原料として使用すると、得られる光学レンズの着色の程度が急激に高くなってしまう。特に、同濃度で比較した場合、鉄は、他の有色金属元素よりも着色の程度が高くなることから、鉄の濃度を低減させることが有効である。この観点から、特に鉄の濃度に関しては、5ppm以下、とりわけ3ppm以下であることが好ましい。
本発明のメタリン酸塩における各有色金属元素の含有量は、メタリン酸塩を水酸化ナトリウム水溶液に加熱溶解させて測定試料を調製し、該測定試料を用いてICP発光分光法によって測定する。
本発明のメタリン酸塩としては、アルミニウム塩、バリウム塩、亜鉛塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、ストロンチウム塩などが挙げられる。どのような塩を用いるかは、メタリン酸塩の具体的な用途に応じて適宜決定される。これらメタリン酸塩の同定はXRDを用いて行うことができる。
本発明のメタリン酸塩は、その遊離リン酸(P)の含有量が好ましくは2%以下であり、更に好ましくは1%以下、一層好ましくは0.3%以下である。遊離リン酸が2%超であると、吸湿性が高くなり、メタリン酸塩中の水分が増加するために、本発明のメタリン酸塩を光学レンズ製造用原料として用いたときに、ハンドリングが悪くなる又はガラスの屈折率が変動する等問題が生じる場合がある。ここでいう遊離リン酸の含有量は、水洗浄時に溶解してくるリン酸のことであり、Pで換算されたものである。
本発明のメタリン酸塩はその純度が96%以上、特に97%以上であることが好ましい。純度が96%未満であると、本発明のメタリン酸塩を光学レンズ製造用原料として用いたときに、遊離リン酸の場合と同様にハンドリングが悪くなる又はガラスの屈折率が変動する等問題が生じる場合がある。ここでいう純度とは、メタリン酸塩としてではなく、Pの含有量(重量%)と、メタリン酸塩を構成する金属の酸化物(以下、単に金属酸化物という)の含有量(重量%)とを別々に求めたものの合計である。
メタリン酸塩におけるPと金属酸化物とのモル比(P/金属酸化物)は、メタリン酸アルミニウムの場合、P/Al=2.4〜3.2、特に2.7〜3.1、とわわけ3〜3.05であることが好ましい。またメタリン酸バリウムの場合、P/BaO=0.85〜1.1、特に0.9〜1であることが好ましい。モル比がこの範囲内であれば、遊離リン酸の増加を抑えることが容易である。
メタリン酸塩におけるPの含有量は、バナジン酸アンモニウムとモリブデン酸アンモニウムとの混合による比色法で求めることができる。一方、メタリン酸塩における金属酸化物(例えばAlやBaO等)の含有量は、ICP発光分光法により求めることができる。これらの測定方法は、後述する実施例において更に詳述する。
本発明のメタリン酸塩は、強熱減量が2%以下、特に1%以下であることが好ましい。これによって、本発明のメタリン酸塩を光学レンズ製造用原料として用いたときに、遊離リン酸や純度と同様にハンドリングの悪さや又はガラスの屈折率の変動等の問題が効果的に防止される。
次に、本発明のメタリン酸塩の好ましい製造方法について説明する。本製造方法は、メタリン酸塩を構成する金属の化合物とリン酸とを反応させて該金属のリン酸塩を製造する第一工程と、予め該メタリン酸塩粉末を敷いた焼成容器に、第一工程で得られたリン酸塩を加えて焼成する第二工程を具備する。本製造方法における上記のリン酸塩とは、M(HPO(式中、Mは金属を表し、nはMの価数を表す)で表される重リン酸塩を意味する。本製造方法をメタリン酸塩の一種であるメタリン酸アルミニウムの製造方法を例にとり説明する。
(1)第一工程
第一工程においては、メタリン酸塩を構成する金属の化合物とリン酸とを反応させる。「メタリン酸塩を構成する金属の化合物」とは、メタリン酸塩が例えばアルミニウム塩である場合には、アルミニウム化合物をいう。用いられるアルミニウム化合物としては、例えば水酸化アルミニウムや、α−アルミナ、β−アルミナ及びγ−アルミナ等の酸化アルミニウムが好適に用いられる。特に水酸化アルミニウムを用いることが、高純度品が工業的に容易に入手することができる点から好ましい。なお、酸化アルミニウムを用いる場合は、酸化アルミニウム及びリン酸に加えて適量の水を添加することが好ましい。この理由は、反応系内で重リン酸アルミニウムが固結してしまい、液体として取り出しにくくなるからである。一方、リン酸は特に限定されないが、純度85%以上の高純度のものが好ましく、特に電子材料用のものが好ましい。そのようなリン酸は例えば日本化学工業から入手することができる。両者の混合は室温で行うことができる。
本工程での反応は、アルミニウム化合物として水酸化アルミニウム又は酸化アルミニウムを用いる場合には、以下の式で示される。この式から明らかなように、反応によってアルミニウムのリン酸塩(重リン酸アルミニウム)が得られる。
Al(OH)+3HPO→Al(HPO+3H
Al+6HPO+3HO→2Al(HPO+6H
前記の反応は室温下又は加熱下で行うことができる。反応温度は150℃まででよく、通常100〜120℃である。反応時間は特に限定されないが、通常30分程度である。
リン酸とアルミニウム化合物との仕込みのモル比は化学量論比であることが好ましいが、(P/アルミニウム化合物)のモル比で表して2.7〜3.1の間で任意に調整することができる。
前記の反応で得られたアルミニウムのリン酸塩は、約25重量%の水分を含有している重リン酸アルミニウムが主体の粘性液体である。
(2)第二工程
本工程においては、焼成容器にメタリン酸アルミニウム粉末を敷いた状態下に、粘性液体である第一工程の反応生成物を焼成容器に加える。これによって、第一工程の反応生成物が焼成容器の底に直接接触しなくなる。その結果、反応生成物であるメタリン酸アルミニウムへの不純物の混入が少なくなるという利点がある。また、メタリン酸アルミニウムが焼成容器から剥離しやすくなるという利点もある。このように、焼成容器に予め敷かれるメタリン酸アルミニウム粉末は敷粉(セッター)の役割を果たす。メタリン酸アルミニウム粉末の敷き方によって、焼成容器と焼成物との剥離性や焼成物中の不純物濃度に差が出ることから、メタリン酸アルミニウム粉末は、焼成容器の底及び可能であれば壁面に沿って均一に敷くことが好ましい。
焼成容器に敷くメタリン酸アルミニウム粉末と、容器に加える第一工程の反応生成物との割合は特に限定されないが、前者:後者の重量比で40:60〜60:40であることが、第一工程の反応生成物と焼成容器との接触を防ぐ点から好ましい。
本工程においては、焼成容器として有色金属が混入しない容器であれば特に限られるものではないが、例えば金属アルミニウム、アルミナ、コージェライト、金属の表面をセラミックコートしたようなホウロウガラスからなる容器を使用することが好ましい。特に金属アルミニウム又はアルミナからなる容器を使用することが好ましい。これによって有色金属元素の混入を極力防止することができる。
本工程で行う焼成による反応は次の通りである。
Al(HPO→Al(PO+3H
焼成温度は350℃以上、特に500℃以上、とりわけ550℃以上であることが好ましい。焼成温度が低すぎると、第一工程の反応生成物である重リン酸アルミニウムの脱水が完了しないことに起因して、遊離リン酸が増える傾向にある。焼成温度の上限に特に制限はなく、焼成容器の融点等に依存する。焼成容器が金属アルミニウムからなる場合、焼成温度の上限は約650℃である。焼成容器がアルミナからなる場合、焼成温度の上限はメタリン酸アルミニウムの融点以下である。
焼成時間に特に制限はない。一般に2時間以上であれば十分であり、好ましくは3時間ないし6時間である。焼成終了後に冷却して、焼成物であるメタリン酸アルミニウムの塊が得られる。かかる焼成工程は特に限定されないが、1段焼成又は多段焼成によるバッチ法又はローラハウスキルン等の連続焼成炉による連続焼成でよい。
(3)第三工程
以上の工程によって、不純物の少ない高純度のメタリン酸アルミニウムを得ることができる。この状態のメタリン酸アルミニウムは塊状であるため取り扱い性が良好でない場合がある。そこで、第二工程で得られた焼成物を粉砕する第三工程を行ってもよい。本工程における焼成物の粉砕は、不純物の混入を避けるためにアルミナ等のライニング加工を施した粉砕機を使用することが好ましい。粉砕の程度は、メタリン酸アルミニウムの具体的な用途にもよるが、光学レンズ製造用原料として用いる場合には、16〜32メッシュ、特に20〜28メッシュ程度の篩を通すことが好ましい。
(4)第四工程
粉砕によって得られたメタ燐酸アルミニウム粉末は、これに過剰のリン酸分が含まれていると表面吸湿し、保存中にダマが発生したり、固結する原因となる。そこで、第三工程で得られた粉末を水洗浄後乾燥して遊離リン酸を除去する第四工程を行ってもよい。このようにして得られたメタリン酸アルミニウムを各種用途に供する。また、得られたメタリン酸アルミニウムの一部は、第二工程における焼成容器に敷くメタリン酸アルミニウム粉末として用いられる。
次に、メタリン酸塩の他の例であるメタリン酸バリウムの好ましい製造方法について説明する。本製造方法に関し特に説明しない点については、先に述べたメタリン酸アルミニウムの製造方法に関する説明が適宜適用される。本製造方法は、バリウム化合物とリン酸とを加熱反応させてそれらの反応生成物を製造する第一工程と、予めメタリン酸バリウム粉末を敷いた焼成容器に、第一工程で得られた反応生成物を加えて焼成する第二工程とを具備する。なお、第一工程で得られた反応生成物は粒状のものであり、粒子の中心部付近に原料として使用するバリウム化合物が未反応の状態で存在しており、粒子の表面には未反応のHPOが付着しており、それらの間の部分がBa(HPOになっていると推定される。
(1)第一工程
第一工程において用いられるバリウム化合物としては、例えば水酸化バリウムや、炭酸バリウムが好適に用いられる。特に炭酸バリウムを用いることが、高純度品が工業的に容易に入手することができる点から好ましい。一方、リン酸は、特に限定されないが、純度85%以上の高純度のものが好ましく、特に電子材料用のものが好ましい。両者の混合は室温で行うことができる。
本工程での反応は、バリウム化合物として炭酸バリウム又は水酸化バリウムを用いる場合には、以下の式で示される。
BaCO+2HPO→Ba(HPO+3HO+CO
Ba(OH)+2HPO+3HO→Ba(HPO+2H
前記の反応は室温下又は加熱下で行うことができる。反応温度は100℃まででよく、通常70〜80℃である。反応時間は特に限定されないが、通常30分程度である。
リン酸とバリウム化合物との仕込みのモル比は、(P/BaO)で表して0.85〜1.1の間で任意に調整することができる。
前記の反応で得られた反応生成物は、水分を含有している粉体である。
(2)第二工程
本工程においては、焼成容器にメタリン酸バリウム粉末を敷いた状態下に、第一工程で得られた反応生成物を焼成容器に加えることで、該反応生成物が焼成容器に直接接触しなくなる。その結果、第二工程での反応生成物であるメタリン酸バリウムへの不純物の混入が少なくなるという利点がある。また、メタリン酸バリウムが焼成容器から剥離しやすくなるという利点もある。このように、焼成容器に予め敷かれるメタリン酸バリウム粉末は敷粉(セッター)の役割を果たす。この観点から、メタリン酸バリウム粉末は、焼成容器の底及び可能であれば壁面に沿って均一に敷くことが好ましい。
焼成容器に敷くメタリン酸バリウム粉末と、第一工程で得られた反応生成物との割合は特に限定されないが、前者:後者の重量比で40:60〜60:40であることが、第一工程で得られた反応生成物と焼成容器との接触を防ぐ点から好ましい。
焼成容器としては、先に説明したメタリン酸アルミニウムの製造方法に用いられるものと同様のものを用いることができる。
本工程で行う焼成による反応は次の通りである。
Ba(HPO→Ba(PO+2H
焼成温度は350℃以上、特に500℃以上、とりわけ550℃以上であることが好ましい。焼成温度が低すぎると、第一工程で得られた反応生成物の脱水が完了しないことに起因して、遊離リン酸が増える傾向にある。焼成温度の上限に特に制限はなく、焼成容器の融点等に依存する。焼成容器が金属アルミニウムからなる場合、焼成温度の上限は約650℃である。焼成容器がアルミナからなる場合、焼成温度の上限はメタリン酸バリウムの融点以下である。
焼成時間に特に制限はない。一般に2時間以上であれば十分であり、好ましくは3時間ないし6時間である。焼成終了後に冷却して、焼成物であるメタリン酸バリウムの塊が得られる。
第二工程以降は、必要に応じ、先に説明した第三工程及び第四工程を行ってもよい。
次に、メタリン酸塩としてのメタリン酸亜鉛の製造方法について説明する。本製造方法に関し特に説明しない点については、先に述べたメタリン酸アルミニウム又はメタリン酸バリウムの製造方法に関する説明が適宜適用される。第一工程において用いられる亜鉛化合物としては例えば酸化亜鉛を用いることができる。酸化亜鉛とリン酸とを室温にて混合し、混合液を200℃までに加熱濃縮したものをテフロン(登録商標)の容器に移し、室温まで冷却する。これによってガラス状の固化体からなる重リン酸亜鉛が得られる。本工程での反応は次式で示される。
ZnO+2HPO→Zn(HPO+H
酸化亜鉛は、その粒子が粗いと、リン酸と混合するときに粒子が溶け残ってしまうことがある。従って反応前に、目開き1mmの篩で篩って細かい粒子のみ使用することが好ましい。
酸化亜鉛とリン酸とのモル比(前者:後者)は1:2であることが好ましいが、リン酸が1〜2%程度過剰であってもよい。酸化亜鉛が過剰になると、得られるメタリン酸亜鉛が灰色になってしまい好ましくない。
反応は、酸化亜鉛粉末とリン酸とを混合し、室温から200℃まで加熱する。反応で精製する水は、加熱によって除去される。加熱を開始し140℃付近になると酸化亜鉛がほぼ完全に溶解し、透明な液になる。そして、180℃付近で液中の水分の約80以上が蒸発する。この反応の加熱温度の上限値は好ましくは200℃、更に好ましくは180℃である。反応時間は好ましくは10分から5時間であり、更に好ましくは30分から40分である。反応完了後、反応生成物を冷却するとガラス状の固化体となる。この固化体は、重リン酸亜鉛のアモルファスからなる。冷却の方法に特に制限はない。例えば室温に放置するだけでもよい。冷却を早めたい場合には、冷水に浸して急冷してもよい。
第一工程で得られた重リン酸亜鉛は、第二工程において焼成されてメタリン酸亜鉛が得られる。本工程での反応は次式の通りである。
Zn(HPO→Zn(PO+2H
焼成温度及び焼成時間は、先に説明したメタリン酸アルミニウム及びメタリン酸バリウムの場合と同様とすることができる。第二工程以降は、必要に応じ、先に説明した第三工程及び第四工程を行ってもよい。
以上、各種メタリン酸塩の製造方法について説明したが、これら以外のメタリン酸塩の製造方法は第一工程で用いる金属化合物、及び第二工程で焼成容器に敷くメタリン酸塩が異なるだけで、それ以外の操作は前述の方法と同様とすることができる。例えばメタリン酸カルシウムを製造する場合には、第一工程で用いるカルシウム化合物として炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、酸化カルシウム等を用い、第二工程で焼成容器に敷くメタリン酸塩としてカルシウム塩を用いればよい。メタリン酸マグネシウムを製造する場合には、第一工程で用いるマグネシウム化合物として炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム等を用い、第二工程で焼成容器に敷くメタリン酸塩としてマグネシウム塩を用いればよい。メタリン酸ストロンチウムを製造する場合には、第一工程で用いるストロンチウム化合物として水酸化ストロンチウム、酸化ストロンチウム、炭酸ストロンチウム等を用い、第二工程で焼成容器に敷くメタリン酸塩としてストロンチウム塩を用いればよい。
以上説明した製造方法に加え、メタリン酸アルミニウムを製造する場合には次の方法を採用することもできる。本製造方法に関し特に説明しない点については、先に述べた製造方法に関する説明が適宜適用される。本製造方法においては、アルミニウム化合物と無水リン酸とポリリン酸とを混合して得られた混合物を、予めメタリン酸アルミニウム粉末を敷いた焼成容器に入れて焼成する。
アルミニウム化合物としては、先に述べたメタリン酸アルミニウムの製造方法で用いられるものと同様のものを用いることができる。無水リン酸(即ちP)及びポリリン酸(例えば116%HPO)は、工業的に入手できるものでればその種類に特に制限はない。例えば日本化学工業から入手することができる。
一般的なメタリン酸アルミニウムの製造方法に従えば、アルミニウム化合物と無水リン酸とを混合し焼成すればよい。しかしそのような製造方法では、十分な反応が行われないため、得られるメタリン酸アルミニウムは白色でなく、遊離リン酸の含有量や強熱減量が高くなってしまう。そこで本製造方法においては、アルミニウム化合物及び無水リン酸に加えてポリリン酸を添加混合することにより反応系に水分を補充させ、均一な焼成反応を促進させている。ポリリン酸を添加する目的は、原料(アルミニウム化合物及び無水リン酸)の混合の程度を上げるためである。
本製造方法における反応は、アルミニウム化合物として水酸化アルミニウムを用いる場合には以下の式で示される。
Al(OH)+P+HPO
→Al(HPO
→Al(PO+3H
初めにアルミニウム化合物と無水リン酸とを混合させる。混合は常温で行うことができる。混合時間は、混合量に応じて異なるが5分以上であれば十分である。次いで両者の混合物にポリリン酸を添加混合する。この時も特別な操作は必要ない。混合時間は5分以上であれば十分である。上記の反応式から明らかなように、本反応では、メタリン酸アルミニウムの生成の過程で重リン酸アルミニウムが生成すると考えられる。
無水リン酸及びポリリン酸の合計をPに換算した場合、Pとアルミニウム化合物とのモル比は、P/Al=2.4〜3.2、特に2.7〜3.1、とりわけ3〜3.05であることが好ましい。
三者の混合によって得られた混合物は、粘性を有する柔らかい餅状のものである。この混合物を、予めメタリン酸アルミニウム粉末を敷いた焼成容器に入れて焼成する。焼成容器に予めメタリン酸アルミニウム粉末を敷いておく理由は、先に述べた製造方法と同様である。また焼成条件も同様である。
かくして得られた焼成物であるメタリン酸アルミニウムは、粉砕され、更に水洗浄後乾燥される。これらの工程の詳細は、先に述べた製造方法と同様である。
このようにして得られた各種メタリン酸塩は、デジタルビデオやデジタルカメラ等の光学レンズ及びデジタルビデオディスクプレーヤーの短波長レーザー用高透過ガラスの製造用原料、増幅用ファイバの製造用原料、二次電池用電解質原料として特に好適に使用される。特に光学レンズ製造用原料として好適に使用される。
【実施例】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲は、かかる実施例に制限されるものではない。
【実施例1−1】
(1)第一工程
2リットルのビーカーに、リン酸(日本化学工業(株)製、HPOの濃度85%、純リン酸)345.9gを仕込み、更に高純度水酸化アルミニウム78.0gを添加した。P、Alに換算したモル比(P/Al)は3.00であった。ビーカーを電熱器で加熱し反応を開始させた。液温は反応熱によって120℃前後にまで上昇した。この状態を30分保持した。反応によって重リン酸アルミニウム反応液が生成した。
(2)第二工程
予めメタリン酸アルミニウム粉末を敷いた金属アルミニウムからなる焼成容器に、第1工程で得られた重リン酸アルミニウム反応液を移した。焼成容器を電気炉に入れて550℃まで昇温し、この温度を4時間保持して焼成を行なった。焼成終了後、冷却し、メタリン酸アルミニウムの塊を得た。
(3)第三工程
第二工程で得られたメタリン酸アルミニウムの塊をアルミナ乳鉢で粉砕してメタリン酸アルミニウム粉末を得た。
【実施例1−2】
実施例1における第三工程で得られたメタリン酸アルミニウム粉末を純水で洗浄し、乾燥機で乾燥させた。これ以外は実施例1−1と同様とした。
【実施例1−3】
2リットルのビーカーに、リン酸(日本化学工業(株)製、HPOの濃度85重量%、純リン酸)345.9g及び純水27gを仕込み、更にα−アルミナ51gを添加した。P、Alに換算したモル比(P/Al)は3.00:1であった。ビーカーを電熱器で加熱し反応を開始させた。液温は反応熱によって130℃前後にまで上昇した。この状態を30分保持した。反応によって重リン酸アルミニウム反応液が生成した。この後は、実施例1−1における第二工程及び第三工程を行いメタリン酸アルミニウムを得た。
【実施例1−4】
2リットルのビーカーに、リン酸(日本化学工業(株)製、HPOの濃度85重量%、純リン酸)349.3gを仕込み、更に高純度水酸化アルミニウム78.0gを添加した。P、Alに換算したモル比(P/Al)は3.06:1であった。ビーカーを電熱器で加熱し反応を開始させた。液温は反応熱によって120℃前後にまで上昇した。この状態を30分保持した。反応によって重リン酸アルミニウム反応液が生成した。この後は、実施例1−1における第二工程及び第三工程を行いメタリン酸アルミニウムを得た。
【実施例1−5】
2リットルのビーカーに、リン酸(日本化学工業(株)製、HPOの濃度85重量%、純リン酸)308.2gを仕込み、更に高純度水酸化アルミニウム78.0gを添加した。P、Alに換算したモル比(P/Al)は2.70:1であった。ビーカーを電熱器で加熱し反応を開始させた。液温は反応熱によって120℃前後にまで上昇した。この状態を30分保持した。反応によって重リン酸アルミニウム反応液が生成した。この後は、実施例1−1における第二工程及び第三工程を行いメタリン酸アルミニウムを得た。
【実施例1−6】
実施例1−1の第二工程において、焼成温度を250℃とする以外は実施例1−1と同様の操作を行った。得られたメタリン酸アルミニウムは反応が十分でなかった。
〔比較例1−1〕
実施例1−1の第二工程において、メタリン酸アルミニウム粉末を敷いていない空の金属アルミニウムからなる焼成容器に、第1工程で得られた重リン酸アルミニウム反応液を移し焼成を行った。得られたメタリン酸アルミニウムの塊は、焼成容器に付着し、取り出すことができなかった。次いで、付着物をステンレス製のスプーンで強く掻き出した後、メタリン酸アルミニウムを得た。
〔比較例1−2〕
2リットルのビーカーに、リン酸(日本化学工業(株)製、HPOの濃度85重量%、純リン酸)345.9gを仕込み、更にα−アルミナ51gを添加した。P、Alに換算したモル比(P/Al)は3.00:1であった。なお、水は添加しなかった。ビーカーを電熱器で加熱し反応を開始させた。液温は反応熱によって130℃前後にまで上昇した。この状態を30分保持した。反応によって重リン酸アルミニウムが生成した。重リン酸アルミニウムはビーカー内で固結してしまい取り出すことが困難であった。
〔性能評価〕
実施例及び比較例で得られたメタリン酸アルミニウムについて、先に述べた方法で有色金属元素の含有量を測定した。またメタリン酸アルミニウム純度(P及びAlの含有量)を以下の純度測定(1)の方法で測定した。またメタリン酸アルミニウム中の遊離リン酸の含有量及び強熱減量を測定した。更に、メタリン酸アルミニウム中のP/Alモル比を測定した。これらの結果を以下の表1に示す。更に、実施例1−1で得られたメタリン酸アルミニウム粉末の結晶構造をX線回折装置で測定した。その結果を図1に示す。測定条件は、線源CuKα線、スキャンスピード4°/min、走査範囲2θ=5〜60°とした。
〔純度測定(1)〕
(1)Pの含有量
a.試料1gを200ml石英ビーカーに正確にはかりとる。
b.水酸化ナトリウム溶液(20wt/vol%)30mlを加える。
c.時計皿をして電熱器上で加熱溶解する。
d.室温まで冷却し、塩酸18mlを加え、加熱する。塩酸を加え、結晶が析出した場合は純水を少量加える。
e.室温まで冷却後、250mlメスフラスコに移し水を標線まで加え、よく振り混ぜる。
f.25mlを250mlメスフラスコに分取し、水を標線まで加えてよく振り混ぜ供試液とする。
g.供試液20mlを100mlメスフラスコに分取すると同時に、五酸化二リン標準液(1ml=0.58mgP)第1液10ml、五酸化二リン標準液(1ml=0.66mgP)第2液10mlをそれぞれ100mlメスフラスコ2本に分取し、それぞれのサンプルに純水を加えて約30mlにする。
h.硝酸(1+1)を4ml加え、ホットプレート上(約170℃)で15分間加熱する。
i.水を加えて液量を約70mlにし、ウォーターバスで約20分間冷却する。
j.バナドモリブデン酸アンモニウム発色試薬20mlを加え、標線まで水を加えてよく振り混ぜ30分間放置する。
k.分光光度計(420nm、セル20mm)を使用し、標準第1液を対照液として、セル補正を行った後、試料液及び標準第2液の透過率を少数点以下1ケタまで読みとる。その透過率から吸光度を求める。
l.次式からPの含有量(%)を小数点以下2桁まで求める。

式中、Aは試料の吸光度を表し、Bは標準第2液の吸光度を表す。
(2)Alの含有量
a.五酸化二リンの含有量測定時に分解、調製した供試液を使用する。
b.供試液から20mlをそれぞれ100mlメスフラスコ3本に分取する。
c.1本目のメスフラスコに塩酸(1+1)3mlを加え、標線まで水を加えて100mlとする。
d.2本目のメスフラスコに塩酸(1+1)3mlを加え、Al標準液(100ppm)5mlを加え、更に水を標線まで加えて100mlとする。
e.3本目のメスフラスコに塩酸(1+1)3mlを加え、Al標準液(100ppm)10mlを加え、更に水を標線まで加えて100mlとする。
f.試料液中のAl濃度(ppm)を、ICP標準添加法(波長396.152nm)によって測定する。
g.次式からAlの含有量(%)を小数点以下2桁まで求める。

〔遊離リン酸の含有量の測定〕
a.試料2gを250mlメスフラスコに正確にはかり、水を約150ml加える。
b.ホットプレート上で上記メスフラスコを約5分間加熱する。冷却後、上記メスフラスコに水を標線まで加え、よく振り混ぜる。
c.上記メスフラスコ中の液を乾燥ろ紙(No.5C)を用いて濾過する。
d.濾液100mlをホールピペットを用い300mlコニカルビーカーに分取する。
e.メチルオレンジ・インジゴカルミン混合指示薬を上記コニカルビーカーに2〜3滴加え、水酸化ナトリウム標準液(N/10)で滴定する。終点は、液の色が紫から鉛灰色に変わった点とする。
f.次式から遊離リン酸の含有量(%)を小数点以下2桁まで求める。

〔強熱減量〕
a.重量既知の磁製るつぼに試料5gを入れ、0.1mgまで正確にはかる。
b.500℃に保った電気炉に上記るつぼを入れ、1時間強熱する。
c.るつぼを電気炉から取出し、デシケーター中で放冷後、試料の重量を0.1mgまで正確にはかる。
d.測定値を用い以下の式から強熱減量(%)を小数点以下2桁まで求める。

〔P/Alモル比〕
次式から算出する。


【実施例2−1】
3Lのモルタルミキサーに高純度水酸化アルミニウム624gと無水リン酸(日本化学工業(株)製)774gを仕込み5分間混合した。次いでポリリン酸(商品名ポリリン酸116T、日本化学工業(株)製)を1105g添加し5分間混合した。P、Alに換算したモル比(P/Al)は3.00であった。得られた混合物は餅状混練物となった。予めメタリン酸アルミニウム粉末を敷いた金属アルミニウムからなる焼成容器に、この餅状混練物を移した。餅状混練物が入った焼成容器を電気炉に入れ550℃まで昇温後、この温度で4時間保持して焼成を行った。焼成終了後冷却し、メタリン酸アルミニウムの塊を得た。得られたメタ燐酸アルミニウムの塊を粉砕機で粉砕し、メタリン酸アルミニウムの粉末を得た。
〔実施例2−2ないし2−5〕
/Alの仕込モル比を2.9(実施例2−2)、2.8(実施例2−3)、2.7(実施例2−4)、2.6(実施例2−5)にそれぞれ変えた以外は、実施例2−1と同様にしてメタリン酸アルミウムの粉末を得た。
【実施例2−6】
実施例2−1において得られたメタリン酸アルミニウム粉末を純水で洗浄し、乾燥機で乾燥させた。これ以外は実施例2−1と同様とした。
【実施例2−7】
焼成時間を2時間に短縮する以外は実施例2−1と同様にしてメタリン酸アルミニウムの粉末を得た。
【実施例2−8】
無水リン酸の仕込量を463gとし、且つポリリン酸の仕込量を1473gとする以外は実施例2−1と同様にしてメタリン酸アルミニウムの粉末を得た。なお、モル比(P/Al)は実施例2−1と同様に3.00であった。
【実施例2−9】
3Lのモルタルミキサーに高純度水酸化アルミニウム624gと無水リン酸(日本化学工業(株)製)774gを仕込み5分間混合した。次いでポリリン酸(商品名ポリリン酸116T、日本化学工業(株)製)を1185g添加し5分間混合した。P、Alに換算したモル比(P/Al)は3.12であった。得られた混合物は餅状混練物となった。予めメタリン酸アルミニウム粉末を敷いた金属アルミニウムからなる焼成容器に、この餅状混練物を移した。餅状混練物が入った焼成容器を電気炉に入れ550℃まで昇温後、この温度で2時間保持して焼成を行った。焼成終了後冷却し、メタリン酸アルミニウムの塊を得た。得られたメタ燐酸アルミニウムの塊を粉砕機で粉砕し、メタリン酸アルミニウムの粉末を得た。
〔比較例2−1〕
3Lのモルタルミキサーに高純度水酸化アルミニウム624gと無水リン酸(日本化学工業(株)製)1704gを仕込み5分間混合した。次いで純水を175g添加した。無水リン酸と純水が激しく反応しガスを発生して餅状混練物とならなかった。
〔比較例2−2〕
メタリン酸アルミニウム粉末を敷いていない空の金属アルミニウムからなる焼成容器に、餅状混練物を移し焼成を行った。得られたメタリン酸アルミニウムの塊は、焼成容器に付着し、取り出すことができなかった。
〔性能評価〕
実施例及び比較例で得られたメタリン酸アルミニウムについて、先に述べた方法で有色金属元索の含有量を測定した。またメタリン酸アルミニウム純度(P及びAlの含有量)を以下の純度測定(2)の方法で測定した。更にメタリン酸アルミニウム中のP/Alモル比を測定した。更にメタリン酸アルミニウム中の遊離リン酸の含有量及び強熱減量を先に述べた方法で測定した。これらの結果を以下の表2に示す。
〔純度測定(2)〕
メタリン酸アルミニウムの純度の測定はP(wt%)とAl(wt%)を別々に求め、これらの合計をメタリン酸アルミニウムの純度として算出した。求め方は次の通りである。P(wt%)の場合は、バナジン酸アンモニウムとモリブデン酸アンモニウムとの混合による比色法で求めることができ、Al(wt%)はICP発光分光法及び重量法との合算で求めることができる。
(1)Pの含有量
a.試料5gを500mlガラスビーカーに正確にはかりとる。
b.水酸化ナトリウム溶液(20W/V%)150mlを上記ガラスビーカーに加える。
c.上記ガラスビーカーを電熱器にかけて液を加熱溶解し、沸騰後7分間加熱する。
d.室温まで冷却し、塩酸90mlを加えて沸騰するまで加熱し、沸騰後その状態を2分間維持する。この操作中に結晶が析出したら水を少量加えて結晶を溶解させる。
e.室温まで冷却後、濾紙(No.2)を用いて上記ガラスビーカー中の液を500mlメスフラスコに濾過する。液量が約300mlになるまで上記ガラスビーカー内の洗浄を繰り返し、その後塩酸(1+1)5mlにて上記ガラスビーカーを共洗いし、更に塩酸(1+1)3mlで濾過に使用した濾紙も洗浄する。その後純水にて洗浄し移し、上記メスフラスコに純水を標線まで加え、よく振り混ぜる。
f.以上a〜eの操作をブランクも一緒に実施する。
g.濾液は25mlを500mlメスフラスコに分取し、水を標線まで加え、よく振り混ぜ供試液とする。
h.五酸化二リン標準第1液(1ml=0.58mgP)10ml及び五酸化二リン標準第2液(1ml=0.66mgP)10mlをそれぞれ用意する。これらとは別に、供試液10mlを100mlメスフラスコに分取し、水を加えて約30mlにする。
h.硝酸(1+1)を4ml上記メスフラスコに加え、ホットプレート上で15分間加熱する。
i.上記メスフラスコに水を加えて液量を約70mlにし、ウォーターバスで約20分間冷却する。
j.発色試薬20mlを上記メスフラスコに加え、更に水を標線まで加えてよく振り混ぜ30分間放置する。これを試料液とする。
k.分光光度計(420nm、セル20mm)を使用し、標準第1液を対照液として、セル補正を行った後、試料液及び標準第2液の透過率を少数点以下1ケタまで読みとる。その透過率から吸光度を求める。
l.次式から五酸化二リン(P)の含有量(%)を小数点以下2桁まで求める。

式中、Aは試料の吸光度を表し、Bは標準第2液の吸光度を表す。
(2a)Alの含有量(ICP法)
a.五酸化二リンの含有量測定時に分解、調製した供試液を使用する。
b.供試液から5mlをそれぞれ100mlメスフラスコ2本に分取する。
c.一方のメスフラスコに標線まで水を加えて100mlとする。これを試料液とする。
d.他方のメスフラスコにAl標準液(100ppm)5mlを加え、更に水を標線まで加えて100mlとする。
e.試料液中のAl濃度(ppm)を、ICP標準添加法(波長396.152nm)によって測定する。
f.次式からAlの含有量(%)を小数点以下2桁まで求める。

(2b)Alの含有量(重量法)
a.五酸化二リン測定用に分解、調製時濾過に使用した濾紙及びブランクの濾紙を重量既知の磁性坩堝にそれぞれ入れ800℃、40分間電気炉で加熱し灰化する。灰化後各々の重量を測定する。
b.次式から酸化アルミニウム(Al)の含有量(%)を小数点以下2桁まで求める。

式中、Xは(サンプル灰化後るつぼ重量(g)−サンプル灰化前るつぼ重量(g))−(ブランク灰化後るつぼ重量(g)−ブランク灰化前るつぼ重量(g))を表す。
〔P/Alモル比〕
次式から小数点以下2桁まで求める。


【実施例3−1】
(1)第一工程
2リットルの反応容器にリン酸(日本化学工業(株)製、HPOの濃度89重量%、純リン酸)588.0gを仕込み、更に高純度炭酸バリウム526.9gを添加した。P、BaOに換算したモル比(P/BaO)は1.00であった。容器を電熱器で加熱し反応を開始させた。60分間反応を行い、粒状の反応生成物が得られた。
(2)第二工程
予めメタリン酸バリウム粉末を敷いた金属アルミニウムからなる焼成容器に、第1工程で得られた反応生成物を移した。焼成容器を電気炉に入れて550℃まで昇温し、この温度を4時間保持して焼成を行なった。焼成終了後、冷却し、メタリン酸バリウムの塊を得た。
(3)第三工程
第二工程で得られたメタリン酸バリウムの塊をアルミナ乳鉢で粉砕してメタリン酸バリウム粉末を得た。
〔実施例3−2ないし3−4〕
/BaOの仕込モル比を0.97(実施例3−2)、0.95(実施例3−3)、0.90(実施例3−4)にそれぞれ変えた以外は、実施例3−1と同様にしてメタリン酸バリウムの粉末を得た。
【実施例3−5】
焼成温度を250℃とする以外は実施例3−1と同様にしてメタリン酸バリウムの粉末を得た。
〔比較例3−1〕
実施例3−1の第二工程において、メタリン酸バリウム粉末を敷いていない空の金属アルミニウムからなる焼成容器に、第1工程で得られた反応生成物を移し焼成を行った。得られたメタリン酸アルミニウムの塊は、焼成容器に付着し、取り出すことができなかった。
〔性能評価〕
実施例及び比較例で得られたメタリン酸バリウムについて、先に述べた方法で有色金属元素の含有量を測定した。またメタリン酸バリウム純度(P及びBaOの含有量)を以下の純度測定(3)の方法で測定した。更にメタリン酸アルミニウム中のP/BaOモル比を測定した。更にメタリン酸バリウム中の遊離リン酸の含有量及び強熱減量を先に述べた方法で測定した。これらの結果を以下の表3に示す。更に、実施例3−1で得られたメタリン酸バリウム粉末の結晶構造をX線回折装置で測定した。その結果を図2に示す。測定条件は、線源CuKα線、スキャンスピード4°/min、走査範囲2θ=5〜60°とした。
〔純度測定(3)〕
(1)Pの含有量
a.試料約1gを電子天秤で0.1mgまで正確に測定し、250mlメスフラスコに入れる。過塩素酸10mlを加え、液の色が黄色になるまで加熱分解し、冷却後、純水で定容して良く混合して供試液とする。
b.供試液2mlをホールピペットで100mメスフラスコに分取し、硝酸(1+1)4mlを加え、純水で液量を70mlとする。
c.ホットプレート上で約15分間加熱沸騰させた後、約20分間水浴上(20±1℃)で冷却する。
d.冷却後バナドモリブデン酸アンモニウム発色試薬20mlを加え、純水で定容し、良く混合して30分間放置する。
e.リン酸標準第1液(Pとして0.37mg/ml)、第2液(Pとして0.43mg/ml)についても、各標準液10mlをそれぞれ100mメスフラスコに分取し、試料と同様に発色させる。
f.30分間放置後、分光光度計(測定波長430nm、セル25mm)を用いて測定する。なお、リン酸標準第1液でセル補正を行う。
g.次式からPの含有量(%)を小数点以下2桁まで求める。

式中、Aはリン酸標準第2液の吸光度を表し、Bは供試液の吸光度を表し、Sは試料採取量(mg)を表す。
(2)BaOの含有量
a.試料約1gを電子天秤で0.1mgまで正確に測定し、250mlメスフラスコに入れる。
b.過塩素酸10mlを加え、液の色が黄色になるまで加熱分解し、冷却後,純水で定容して良く混合し、供試液とする。
c.供試液100mlをホールピペットで300mlビーカーに分取し、純水で液量を150mlとする。
d.電熱器上で加熱沸騰させた後、硫酸(1+1)10mlを加え、良く攪拌し4時間放置する。
e.放置後、ろ紙(No5C)でろ過し、温水で充分洗浄する。
f.沈殿をろ紙と共に重量既知の磁性坩堝に入れ、電熱器上でろ紙が燃えないように注意しながら、灰化する。
g.灰化後、磁性坩堝を800℃に調整した電気炉に入れ、40分間強熱する。
h.強熱後、磁性坩堝をデシケーターへ移し入れ、室温まで放冷する。
i.放冷後、磁性坩堝の重量を電子天秤で0.1mgまで正確に測定し、残量を求める。
j.次式からBaOの含有量(%)を算出する。算出された値は小数点以下3桁目まで求め、小数点以下2桁目に丸め表示する。
BaOの含有量(%)=硫酸バリウムの重量(残量(g)×0.65697×250
〔P/BaOモル比〕
次式から算出する。


【実施例4−1】
(1)第一工程
2リットルのビーカーに、リン酸(日本化学工業(株)製、HPOの濃度85%、純リン酸)1844.8gを仕込み、酸化亜鉛(東邦亜鉛(株)製、銀嶺A)651.2gを添加した。酸化亜鉛は予め目開き1mmの篩を通したものを使用した。酸化亜鉛とリン酸とのモル比(前者:後者)は1:2であった。酸化亜鉛を添加することにより、液温は反応熱で120℃前後まで上昇した。反応容器を180℃に加熱して、反応で生成する水分を除去した。次いで反応生成物をテフロン(登録商標)容器に移し、容器中で室温にまで冷却してガラス状の固化体(重リン酸亜鉛)を得た。
(2)第二工程
予めメタリン酸亜鉛粉末を敷いたアルミナからなる焼成容器に、第1工程で得られた重リン酸亜鉛の固化体を移して充填した。焼成容器を電気炉に入れて室温から600℃まで5℃/minで昇温し、この温度を3時間保持して焼成を行なった。焼成終了後、冷却し、メタリン酸亜鉛の塊を得た。得られたメタリン酸亜鉛の塊を粉砕機で粉砕し、メタリン酸亜鉛の粉末を得た。
〔実施例4−2及び4−3〕
実施例4−1の第二工程において用いた焼成容器に代えて、コージェライトからなる焼成容器(実施例4−2)及びアルミニウムからなる焼成容器(実施例4−3)を用いる以外は実施例4−1と同様にして、メタリン酸亜鉛の粉末を得た。
〔比較例4−1〕
実施例4−1の第二工程における焼成温度を300℃にした以外は実施例4−1と同様の操作を行った。得られたメタリン酸亜鉛は脱水が完了していないので、不純物及び純度の測定ができなかった。
〔比較例4−2〕
実施例4−3の第二工程において、メタリン酸亜鉛粉末を敷いていない空の金属アルミニウムからなる焼成容器に、ガラス状の固化体を移し焼成を行った。得られたメタリン酸亜鉛は堅牢な塊になり、焼成容器に張り付き剥離が困難であった。
〔性能評価〕
実施例及び比較例で得られたメタリン酸亜鉛について、先に述べた方法で有色金属の含有量を測定した。またメタリン酸亜鉛純度(P及びZnOの含有量)を以下の純度測定(4)の方法で測定した。更にメタリン酸亜鉛中のP/ZnOモル比を測定した。更にメタリン酸亜鉛中の遊離リン酸の含有量及び強熱減量を先に述べた方法で測定した。これらの結果を以下の表4に示す。更に、実施例4−1で得られたメタリン酸亜鉛粉末の結晶構造をX線回折装置で測定した。その結果を図3に示す。測定条件は、線源CuKα線、スキャンスピード4°/min、走査範囲2θ=5〜60°とした。
〔純度測定(4)〕
メタリン酸亜鉛の純度の測定は、P及びZnOの含有量を別々に求め、これらの合計をメタリン酸亜鉛の純度として算出した。求め方は次の通りである。得られたメタリン酸亜鉛粉末をテフロン(登録商標)容器に10.0gはかり取り、20%NaOH溶液を100ml加えた後、30分間電熱器付きマグネチックスターラーで加熱撹拌して完全に溶解させる。この溶液を室温まで冷却後、濃塩酸60mlを少量ずつ添加し、沸騰後30分前記のスターラーで加熱撹拌する。これを再び室温まで冷却後、250mlメスフラスコに移して標線まで脱イオン水を加える。この溶液(以下、Aと記す)を使って各々の純度を求める。ZnO及びPの含有量は次の方法で測定する。
(1)ZnOの含有量
a.溶液Aを5mlコニカルビーカーに採取し、M/20のEDTA標準液を25ml加える。
b.2M酢酸ナトリウム緩衝液20mlを加えた後、脱イオン水を加えて150mlにし、アンモニア水を用いてpHを約5.8にする。
c.キシレノールオレンジ指示薬5滴を滴下する。この液を供試液とする。
d.M/20の亜鉛標準液で滴定し、薄紅色が消えにくくなり30秒保つところを終点とする。
e.空試験を、a〜dの操作において、aで溶液Aを加えない以外、同様の操作を行なう。そして次式から酸化亜鉛の含有量を求める。

式中、Aは供試液の滴定量(ml)を表し、Bは空試験の滴定量(ml)を表し、fは亜鉛標準液のファクターを表し、Sは試料の重量を表す。
(2)Pの含有量
a.溶液Aを10ml採取し、500mlメスフラスコの標線まで純水を加えて定容とする。
b.aで調製した液10mlを100mlメスフラスコに取り、純水を加えて約30mlにする。
c.硝酸4mlを加え、ヒーター上で加熱沸騰させた後、5分間加熱する。
d.水冷した後、純水を加え約70mlにする。
e.dの溶液を撹拌しながら、バナドモリブデン酸アンモニウム20mlを加える。
f.標線まで純水を加えて定容とし、30分間静置する。これを供試液とする。
g.供試液を次の方法で吸光測定する。測定条件はλ=430nm、セル=20mmガラスセル、測定時間=60secとする。五酸化二リン標準第1液を対照液としてセル補正を行なった後、供試液及び五酸化二リン標準第2液の吸光度を求め、次式からPの含有量を求める。

式中、Aは五酸化二リン標準第2液の吸光度、Bは供試液の吸光度を表し、Cは五酸化二リン標準第1液に含まれるPの重量、Sは試料の重量を表す。
五酸化二リン標準液は以下の方法で調製する。0.458mg/ml五酸化二リン溶液100mlメスフラスコにそれぞれ10、11ml取り、純水50mlを加える。撹拌しながら発色液20mlを添加し、標線まで純粋で定容し30分間静置する。得られた溶液をそれぞれ五酸化二リン標準第1液(0.0458mg/mlの五酸化二リンを含有)、五酸化二リン標準第2液(0.0504mg/mlの五酸化二リンを含有)とする。
〔P/ZnOモル比〕
次式から算出する。


【実施例5−1】
(1)第一工程
500ミリリットルのビーカーに、リン酸(日本化学工業(株)製、HPOの濃度85%、純リン酸)230.7gを仕込み、水冷しながら水酸化カルシウムスラリー174.1gを5ml/minの速度で添加した。水酸化カルシウムスラリーは、水酸化カルシウム(宇部マテリアル(株)製、CQH)74.1gを、100gの脱イオン水に分散させた物を使用した。水酸化カルシウムとリン酸とのモル比(前者:後者)は1:2であった。水酸化カルシウムスラリーを全量添加後、反応容器を140℃に加熱して、30分間反応を行ない、白色粘張な餅状物質を得た。
(2)第二工程
予めメタリン酸カルシウム粉末を敷いたアルミナからなる焼成容器に、第1工程で得られた餅状物質を移して充填した。焼成容器を電気炉に入れて室温から550℃まで5℃/minで昇温し、この温度を3時間保持して焼成を行なった。焼成終了後、冷却し、メタリン酸カルシウムの塊を得た。得られたメタリン酸カルシウムの塊を磁製乳鉢で粉砕し、脱イオン水でろ液が中性になるまで洗浄−ろ過を繰り返した。得られた沈殿を120℃に設定した乾燥機で乾燥し、メタリン酸カルシウムの粉末を得た。
〔性能評価〕
実施例で得られたメタリン酸カルシウムについて、先に述べた方法で有色金属の含有量を測定した。またメタリン酸カルシウムの純度(P及びCaOの含有量)を以下の純度測定(5)の方法で測定した。更にメタリン酸カルシウム中のP/CaOモル比を測定した。更にメタリン酸カルシウム中の遊離リン酸の含有量及び強熱減量を先に述べた方法で測定した。これらの結果を以下の表5に示す。更に、実施例5−1で得られたメタリン酸カルシウム粉末の結晶構造をX線回折装置で測定した。その結果を図4に示す。測定条件は、線源CuKα線、スキャンスピード4°/min、走査範囲2θ=5〜60°とした。
〔純度測定(5)〕
メタリン酸カルシウムの純度の測定は、P及びCaOの含有量を別々に求め、これらの合計をメタリン酸カルシウムの純度として算出した。求め方は次の通りである。得られたメタリン酸カルシウム粉末をテフロン(登録商標)容器に1.0gはかり取り、20%NaOH溶液を10ml加えた後、マイクロウェーブ分解装置(MILESTONE社製 MLS1200 MEGA)にて分解を行ない、さらに濃塩酸10mlを加え再度マイクロウェーブ分解装置にて処理を行なった。得られた溶液を100mlのメスフラスコに移し標線まで脱イオン水を加えた。この溶液(以下、Aと記す)を使って各々の純度を求める。CaO及びPの含有量は次の方法で測定する。
(1)CaOの含有量
a.溶液Aを10mlコニカルビーカーに採取し、M/20のEDTA標準液を20ml加える。
b.1M塩化アンモニウム緩衝液2mlを加えた後、脱イオン水を加えて150mlにし、アンモニア水を用いてpHを約10にする。
c.エリオクロムブラックT指示薬2滴を滴下する。この液を供試液とする。
d.M/20のカルシウム標準液で滴定し、青色〜赤色に変色するところを終点とする。
e.空試験を、a〜dの操作において、aで溶液Aを加えない以外、同様の操作を行なう。そして次式から酸化カルシウムの含有量を求める。

式中、Aは供試液の滴定量(ml)、Bは空試験の滴定量(ml)を表し、fはカルシウム標準液のファクターを表し、56.0778は酸化カルシウムの原子量を表す。
(2)Pの含有量
a.溶液Aを100mlメスフラスコに10ml採取し、純水を加えて定容とする。
b.aで調製した液10mlを100mlメスフラスコに取り、純水を加えて約30mlにする。
c.硝酸4mlを加え、ヒーター上で加熱沸騰させた後、5分間加熱する。
d.水冷した後、フェノールフタレインを1滴加え、アンモニア水と希硝酸を用いて弱酸性に調整後、純水を加え約70mlにする。
e.dの溶液を撹拌しながら、バナドモリブデン酸アンモニウム20mlを加える。
f.標線まで純水を加えて定容とし、30分間静置する。この液を供試液とする。
g.供試液を次の方法で吸光測定する。測定条件はλ=430nm、セル=20mmガラスセル、測定時間=60secとする。五酸化二リン標準第1液を対照液としてセル補正を行なった後、供試液及び五酸化二リン標準第2液の吸光度を求め、次式から五酸化二リンの含有量を求める。

式中、Aは五酸化二リン標準第2液の吸光度、Bは供試液の吸光度を表し、Cは五酸化二リン標準第1液に含まれるPの重量を表し、Sは試料の重量を表す。
五酸化二リン標準液は以下の方法で調製する。0.458mg/ml五酸化二リン溶液100mlメスフラスコにそれぞれ15、16ml取り、純水50mlを加える。撹拌しながら発色液20mlを添加し、標線まで純粋で定容し30分間静置する。得られた溶液をそれぞれ五酸化二リン標準第1液(0.0687mg/mlの五酸化二リンを含有)、五酸化二リン標準第2液(0.0733mg/mlの五酸化二リンを含有)とする。
〔P/CaOモル比〕
次式から算出する。


【実施例6−1】
(1)第一工程
500ミリリットルのビーカーに、リン酸(日本化学工業(株)製、HPOの濃度85%、純リン酸)230.7gを仕込み、水冷しながら水酸化マグネシウムスラリー140.3gを5ml/minの速度で添加した。水酸化マグネシウムスラリーは、酸化マグネシウム40.3gを、100gの脱イオン水に分散させた物を使用した。水酸化マグネシウムとリン酸とのモル比(前者:後者)は1:2であった。水酸化マグネシウムスラリーを全量添加後、反応容器を140℃に加熱して、30分間反応を行ない、透明粘張な糊状物質を得た。
(2)第二工程
予めメタリン酸マグネシウム粉末を敷いたアルミナからなる焼成容器に、第1工程で得られた糊状物質を移して充填した。焼成容器を電気炉に入れて室温から550℃まで5℃/minで昇温し、この温度を3時間保持して焼成を行なった。焼成終了後、冷却し、メタリン酸マグネシウムの塊を得た。得られたメタリン酸マグネシウムの塊を磁製乳鉢で粉砕し、メタリン酸マグネシウムの粉末を得た。
〔性能評価〕
実施例で得られたメタリン酸マグネシウムについて、先に述べた方法で有色金属の含有量を測定した。またメタリン酸マグネシウム純度(P及びMgOの含有量)を以下の純度測定(6)の方法で行った。更にメタリン酸マグネシウム中のP/MgOモル比を測定した。更にメタリン酸マグネシウム中の遊離リン酸の含有量及び強熱減量を先に述べた方法で測定した。これらの結果を以下の表6に示す。更に、実施例6−1で得られたメタリン酸マグネシウム粉末の結晶構造をX線回折装置で測定した。その結果を図5に示す。測定条件は、線源CuKα線、スキャンスピード4°/min、走査範囲2θ=5〜60°とした。
〔純度測定(6)〕
メタリン酸マグネシウムの純度の測定は、P及びMgOの含有量を別々に求め、これらの合計をメタリン酸マグネシウムの純度として算出した。求め方は次の通りである。得られたメタリン酸マグネシウム粉末をテフロン(登録商標)容器に1.0gはかり取り、20%NaOH溶液を10ml加えた後、マイクロウェーブ分解装置(MILESTONE社製 MLS1200MEGA)にて分解を行ない、さらに濃塩酸10mlを加え再度マイクロウェーブ分解装置にて処理を行なった。得られた溶液を100mlのメスフラスコに移し標線まで脱イオン水を加えた。この溶液(以下、Aと記す)を使って各々の純度を求める。MgO及びPの含有量は次の方法で測定する。
(1)MgOの含有量
a.溶液Aを10mlコニカルビーカーに採取し、M/20のEDTA標準液を20ml加える。
b.1M塩化アンモニウム緩衝液2mlを加えた後、脱イオン水を加えて150mlにし、アンモニア水を用いてpHを約10にする。
c.エリオクロムブラックT指示薬2滴を滴下する。この液を供試液とする。
d.M/20のマグネシウム標準液で滴定し、青色〜赤色に変色するところを終点とする。
e.空試験を、a〜dの操作において、aで溶液Aを加えない以外、同様の操作を行なう。そして次式から酸化マグネシウムの含有量を求める。

式中、Aは供試液の滴定量(ml)を表し、Bは空試験の滴定量(ml)を表し、fはマグネシウム標準液のファクターを表し、40.3045は酸化マグネシウムの分子量を表す。
(2)Pの含有量
a.溶液Aを100mlメスフラスコに10ml採取し、純水を加えて定容とする。
b.aで調製した液10mlを100mlメスフラスコに取り、純水を加えて約30mlにする。
c.硝酸4mlを加え、ヒーター上で加熱沸騰させた後、5分間加熱する。
d.水冷した後、フェノールフタレインを1滴加え、アンモニア水と希硝酸を用いて弱酸性に調整後、純水を加え約70mlにする。
e.dの溶液を撹拌しながら、バナドモリブデン酸アンモニウム20mlを加える。
f.標線まで純水を加えて定容とし、30分間静置する。この液を供試液とする。
g.供試液を次の方法で吸光測定する。測定条件はλ=430nm、セル=20mmガラスセル、測定時間=60secとする。五酸化二リン標準第1液を対照液としてセル補正を行なった後、供試液及び五酸化二リン標準第2液の吸光度を求め、次式から五酸化二リンの含有量を求める。

式中、Aは第2リン標準液の吸光度、Bは供試液の吸w光度お表し、Cは第1リン標準液に含まれるPの重量を表し、Sは試料の重量を表す。
五酸化二リン標準液は以下の方法で調製する。0.458mg/ml五酸化二リン溶液100mlメスフラスコにそれぞれ16、17ml取り、純水50mlを加える。撹拌しながら発色液20mlを添加し、標線まで純粋で定容し30分間静置する。得られた溶液をそれぞれ五酸化二リン標準第1液(0.0733mg/mlの五酸化二リンを含有)、五酸化二リン標準第2液(0.0779mg/mlの五酸化二リンを含有)とする。
〔P/MgOモル比〕
次式から算出する。


以上詳述した通り、本発明の高純度メタリン酸塩は、各種有色金属元素からなる不純物の含有量が低いものである。従って本発明の高純度メタリン酸塩は、デジタルビデオやデジタルカメラ等の光学レンズ及びデジタルビデオディスクプレーヤーの短波長レーザー用高透過ガラスの製造用原料、増幅用ファイバの製造用原料、二次電池用電解質原料として特に好適に使用される。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
不純物の各有色金属元素濃度が5ppm以下であることを特徴とする高純度メタリン酸塩。
【請求項2】
前記有色金属が、鉄、クロム、ニッケル、マンガン又は銅の少なくとも1種である請求の範囲第1項記載の高純度メタリン酸塩。
【請求項3】
遊離リン酸の含有量が2重量%以下である請求の範囲第1項記載の高純度メタリン酸塩。
【請求項4】
強熱減量が2重量%以下である請求の範囲第1項記載の高純度メタリン酸塩。
【請求項5】
アルミニウム塩である請求の範囲第1項記載の高純度メタリン酸塩。
【請求項6】
バリウム塩である請求の範囲第1項記載の高純度メタリン酸塩。
【請求項7】
亜鉛塩である請求の範囲第1項記載の高純度メタリン酸塩。
【請求項8】
カルシウム塩である請求の範囲第1項記載の高純度メタリン酸塩。
【請求項9】
マグネシウム塩である請求の範囲第1項記載の高純度メタリン酸塩。
【請求項10】
光学用レンズ製造用原料又はレーザー光線増幅用ガラス原料に使用される請求の範囲第1項記載の高純度メタリン酸塩。
【請求項11】
請求の範囲第1項記載の高純度メタリン酸塩の製造方法であって、
該メタリン酸塩を構成する金属の化合物とリン酸とを反応させて該金属のリン酸塩を製造する第一工程、及び
予め該メタリン酸塩粉末を敷いた焼成容器に、第一工程で得られたリン酸塩を加えて焼成する第二工程を具備することを特徴とする高純度メタリン酸塩の製造方法。
【請求項12】
第二工程における焼成容器として、金属アルミニウム、アルミナ又はコージェライトからなる容器を使用する請求の範囲第11項記載の高純度メタリン酸塩の製造方法。
【請求項13】
第二工程で得られた焼成物を粉砕する第三工程を更に具備する請求の範囲第11項記載の高純度メタリン酸塩の製造方法。
【請求項14】
第三工程で得られた粉砕物を水洗浄後乾燥して遊離リン酸を除去する第四工程を更に具備する請求の範囲第13項記載の高純度メタリン酸塩の製造方法。
【請求項15】
請求の範囲第5項記載の高純度メタリン酸塩の製造方法であって、
アルミニウム化合物と無水リン酸とポリリン酸とを混合して得られた混合物を、予めメタリン酸アルミニウム粉末を敷いた焼成容器に入れて焼成することを特徴とする高純度メタリン酸塩の製造方法。
【請求項16】
焼成容器として、金属アルミニウム又はアルミナからなる容器を使用する請求の範囲第15項記載の高純度メタリン酸塩の製造方法。
【請求項17】
焼成物を水洗浄後乾燥して遊離リン酸を除去する請求の範囲第15項記載の高純度メタリン酸塩の製造方法。

【国際公開番号】WO2004/080893
【国際公開日】平成16年9月23日(2004.9.23)
【発行日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−553532(P2004−553532)
【国際出願番号】PCT/JP2004/003007
【国際出願日】平成16年3月9日(2004.3.9)
【出願人】(000230593)日本化学工業株式会社 (296)