説明

高純度水酸化リチウムと塩酸とを製造する方法

本発明は、高純度水酸化リチウム一水和物の製造方法に関し、以下の工程を含む。すなわち、リチウム含有塩水(brine)を濃縮する工程、塩水を精製してリチウム以外のイオンを除去し又はその濃度を低減する工程、必要に応じて塩水のpHを約10.5〜11に調節してリチウム以外のカチオンを更に除去する工程、塩水を酸で中和する工程、イオン交換によって塩水を精製してカルシウム及びマグネシウムの合計濃度を150ppb以下に低減する工程、塩水を電気分解して、カルシウム及びマグネシウムの合計濃度が150ppb以下の水酸化リチウム溶液を、副産物としての塩素ガス及び水素ガスと共に産生する工程、過剰水素による塩素ガスの燃焼によって塩酸を産生し、その後、必要に応じて得られたガス流を精製水で洗浄(scrubbing)する工程、水酸化リチウム溶液を濃縮及び結晶化して水酸化リチウム一水和物の結晶を作り出す工程、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、全ての目的のためにここにその全体を参考文献として合体させる、2008年4月22日出願の米国仮特許出願第61/125,011号の35U.S.C.§119(e)に基づく利益を請求するものである。
【0002】
本発明は、高純度リチウム製品、特に商業用、とりわけバッテリ用途のための水酸化リチウム一水和物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
水酸化リチウム一水和物(LiOH・H2O)は、消石灰(Ca(OH)2)と炭酸リチウム(Li2CO3)との水苛化反応(aqueous causticizationreaction)によって作り出すことができる。消石灰は、水(H2O)によって水和される酸化カルシウム(CaO)から形成することができる。これによって約3%の水酸化リチウム(LiOH)水溶液が作り出され、その後、これは標準的な工業慣習によって飽和溶液にまで濃縮されて結晶化される。これらの反応を下記に示す。
CaO+HO=Ca(OH)+熱
LiCO+Ca(OH)=2LiOH(aq)+CaCO
2LiOH(aq)=2LiOH・HO(水酸化リチウム一水和物)
【0004】
リチウム源としては、塩水(brine)型、又は鉱石型とすることができる。出発物質として、炭酸リチウムを、天然源又は合成源から得ることができる。最終的に、最終製品の純度は、出発物質である炭酸リチウム及び石灰の質と、水溶液を作るために使用される水の質と、によって影響される。
【0005】
水酸化リチウム一水和物は、種々のバッテリ用途のために益々使用されるようになってきている。バッテリ用途では、通常、不純物、特にナトリウム、カルシウム、及び塩素、が非常に低濃度であることが要求される。石灰等のカルシウム系化合物をベースとして使用する場合、単数又は複数の精製工程を行わない限り、カルシウム濃度の低い水酸化リチウム製品を得ることは困難である。これらの追加の精製工程により、望ましい水酸化リチウム製品を得るためには製造時間と製造コストとが増大する。
【0006】
加えて、リチウム含有率が約0.5%もの天然の「濃縮」塩水も時として見られるものの、一般に天然の塩水に含まれるリチウムの量は非常に少ない。しかしながら、これらの天然塩水の多くにはマグネシウムやその他の金属が高濃度で含まれており、そのことからリチウムの回収を経済的に行うことができない。このように、天然由来のリチウムが非常に低濃度であることによる作業の経済性の観点からのみならず、それらによってリチウム塩が通常汚染される化学的に密接に関連する物質、例えばナトリウム塩、から有用なレベルの純度のリチウム化合物を分離することが困難であることにより、天然の塩水(海水)から水酸化リチウム一水和物を製造することは非常に困難な作業である。また、その製造中に、カルシウムを含有する化合物、例えば消石灰、を利用する典型的な処理を使用して有意な純度の水酸化リチウム一水和物を産出することもとりわけ困難である。それにも関わらず、リチウムに対する需要は急速に増大しつつあり、高純度のリチウム製品、特に水酸化リチウム一水和物、を製造するための新たな方法が求められている。
【0007】
米国特許No.7,157,065 B2は、とりわけリチウムが約6.0wt%にまで濃縮された塩水から、ナトリウム濃度の低い炭酸リチウム及び塩化リチウムを製造するための方法と装置を開示している。また、濃縮塩水から工業用グレードの塩化リチウムを回収するための方法と装置も開示されている。
【0008】
従来の天然塩水からリチウム化合物を回収する試み、及び/又はそれらからリチウム製品を作り出す試みは、既に文献に記載されている。
【0009】
米国特許No.4,036,713は、主としてハロゲン化合物としての、リチウム及びその他のアルカリ金属及びアルカリ土金属類を含有する塩水、天然又はその他の資源から高純度の水酸化リチウムを作り出す方法を記載している。リチウム以外のアルカリ金属及びアルカリ土類金属の大半を沈殿によって分離するため、リチウム源を予め約2〜7%にまで濃縮する。次に、このような濃縮塩水のpHを、好ましくは反応の産生物、すなわち水酸化リチウム、を利用して残りのマグネシウム汚染物の実質的に全部を沈殿させることによって、約10.5〜約11.5にまで増加させ、炭酸リチウムを添加してカルシウム混入物質を除去して精製された塩水を提供する。次に、この精製された塩水を、陰極液から、水又は含水水酸化リチウムである陽極液を分離する選択的カチオン透過膜を有するセル中において陰極液として電気分解する。これにより、リチウムイオンが膜を通って移動して陰極液中に実質的に純粋な含水水酸化リチウムを形成し、この産生物から、水酸化リチウム一水和物又は炭酸リチウム等の高純度のリチウム結晶化合物を分離することができる。
【0010】
Kirk-Othmer Encyclopedia of Chemical Technology, 第2版、増補版、p438-467には、ユタ州グレート・ソルト・レークの塩水と、そこから様々な価値ある化学種を回収しようとするこれまでの試みが記載されている。特に興味深いのは、この源からの塩水はその湖の場所によってのみならず、年によってもその組成が大きく変化するということである。この参考文献は、これらの塩水から価値のあるリチウム(lithium values)を回収するためにこれまで提案されてきた種々多様な方法について記載しており、その中には、蒸発−結晶化−熱分解、イオン交換、リチウム−アルミニウム錯化、及び溶媒抽出、が含まれている。これらの従来提案された方法はすべて複雑で高コストであり、大半の商業用に使用されるのに十分に高い純度の製品を提供することはできないようである。
【0011】
米国特許No.2,004,018は、他のアルカリ及びアルカリ土類金属との混合物からリチウム塩を分離するための従来技術の方法について記載しており、ここでは、混合塩は、まず、硫酸塩に変換され、その後、大量のカリウムを沈殿物として除去するべく硫酸アルミニウムによって処理される。次に、この溶液に制御された量の可溶性炭酸塩を添加して、まず、炭酸マグネシウムと炭酸カルシウムとを除去し、次に、溶液中に残った他のアルカリ金属炭酸塩から炭酸リチウムを沈殿させて分離させる。しかしながら、Rosett et al.は、混合塩を塩酸で処理することによって得られた塩化物で作業する方が好適であるとしている。その結果得られた溶液を沸点まで沸騰させて濃縮し、その後冷却することによって、可能な限り大量の混合アルカリ金属塩化物が沈殿し、溶液中に塩化リチウムが残る。その後、この溶液は更に、冷却時に塩化リチウムが一水和物の形態で沈殿するような濃度にまで濃縮される。
【0012】
米国特許No.2,726,138は、いわゆる高純度塩化リチウムの製造方法に関し、この方法では、まず、合計で約2%の塩化リチウム、塩化ナトリウム、及び塩化カリウムを含有する粗水溶液を、昇温での蒸発によって、約40〜44%の塩化リチウム濃度にまで濃縮し、これを25〜50℃にまで冷却する。すると、塩化ナトリウム及び塩化カリウムが沈殿分離して、より多くの可溶性塩化リチウムが溶液中に残る。その後、これによって得られた溶液を、塩化リチウム用の不活性有機溶媒で抽出する。
【0013】
米国特許No.3,523,751は、炭酸ナトリウムの添加による、塩化リチウム溶液からの炭酸リチウムの沈殿に関する。なお、ここには、更に炭酸リチウムを沈殿させるために、水酸化リチウム溶液を容易に炭酸塩化することができることも開示されている。更に、塩化リチウム溶液の炭酸ナトリウムとの反応によって炭酸リチウムが沈殿することも記載されている。
【0014】
米国特許No.3,597,340は、塩化リチウムと塩化ナトリウムとの両方を含む水性塩化物塩水からの水酸化リチウム一水和物の回収に関し、これは、陽極液と陰極液との間を分離状態に維持する従来のアスベストファイバーマット型の隔膜を有する隔膜セル中で、塩水を電気分解するものである。
【0015】
米国特許No.3,652,202は、炭酸セル溶液(carbonated cell liquor)をアタパルジャイト・クレー(atapulgite type clay)と接触させ、その後、このように処理されたセル溶液からアルカリ金属炭酸塩を結晶化することによる電解セル中でのアルカリ金属塩化物の電気分解によって作られる、炭酸水性アルカリ金属水酸化物セル溶液からアルカリ金属炭酸塩を作る方法について記載している。
【0016】
米国特許No.3,268,289は、天日干しと、濃縮塩水中における塩化マグネシウムに対する塩化リチウムの比率を高めるための手段と、によるグレート・ソルト・レークの塩水の濃縮について記載している。その後、それによって得られた塩水を、電解セル中でのマグネシウム除去やマグネシウムの酸化マグネシウムへの酸化、等の様々な方法で処理することができる、と記載されている。
【0017】
米国特許No.3,755,533は、単量体または高分子有機キレート剤との錯化によってリチウム塩を他の金属塩から分離する方法について記載している。
【0018】
天然塩水又はアルカリ及びアルカリ土類金属の混合物からリチウムを産出するための上述した様々な方法は、全て、分離が困難であるか又は高コストであるかのいずれかであって、一般に、ある種の工業用途に使用されるのに十分な純度のリチウム製品をいまだ提供するものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】米国特許第7157065号明細書
【特許文献2】米国特許第4036713号明細書
【特許文献3】米国特許第2004018号明細書
【特許文献4】米国特許第2726138号明細書
【特許文献5】米国特許第3523751号明細書
【特許文献6】米国特許第3597340号明細書
【特許文献7】米国特許第3652202号明細書
【特許文献8】米国特許第3268289号明細書
【特許文献9】米国特許第3755533号明細書
【非特許文献】
【0020】
【非特許文献1】Kirk-OthmerEncyclopedia of Chemical Technology, 第2版、増補版、p438-467
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
従って、本発明の1つの課題は、他の高純度リチウム化合物に容易に転換することも可能な高純度のリチウム化合物として高価値なリチウム(lithium values)を回収するための比較的単純かつ経済的な方法を提供することにある。
【0022】
本発明のもう1つの課題は、高効率で、干渉するカチオンの不在により長時間に渡って作動可能な、高価値なリチウム(lithium values)の濃縮のための改善された電気分解処理方法を提供することにある。
【0023】
本発明の1つの具体的課題は、そこから水酸化リチウム一水和物の結晶や炭酸リチウムの結晶のような価値ある製品を容易に作り出すことが可能な、高純度な水酸化リチウム水溶液を産生することにある。
【0024】
以下から明らかにされるであろう本発明のこれら及びその他の課題は、以下の方法によって達成される。
【0025】
重要なことは、ナトリウム塩水のカルシウム及びマグネシウム濃度は十分に日常的な基準でppb範囲にまで低減されているのに対して、リチウム塩水中のカルシウム及びマグネシウム濃度をそのような濃度にまで低減することは、これまで極めて困難あることが判っており、本発明の重要な利点である、(合計で)150ppb以下の濃度にまで低減されたことはこれまでないと思われる。従って、合計濃度が150ppb以下、好ましくはそれぞれが50ppb以下、のリチウム含有塩水が本発明の重要課題であり、そのような塩水を得る方法も本発明の重要課題である。
【課題を解決するための手段】
【0026】
本発明は、高純度リチウム製品、特に水酸化リチウム一水和物、を製造する方法に関する。この方法は、全てのリチウム含有塩水に適用可能であるが、天然の塩水が好適である。リチウム含有鉱石も、それからリチウム含有塩水が作られることを前提として、リチウム源として使用可能である。
【0027】
使用される塩水源は、様々な不純物、すなわちリチウム以外のイオン、例えばマグネシウム、カルシウム、ナトリウム、カリウム等を含有している可能性がある。イオン交換による精製の前に、それらの不純物は、好ましくは各不純物を除去又は低減するための当該技術分野において知られている適切な方法によって、除去又は低減される。
【0028】
不純物の除去又は低減後、不純物が完全には除去されていない又は不純物が除去された塩水は、リチウム含有率について濃縮される。好ましくは塩水は、リチウム濃度として約2〜7wt%、好ましくは2.8〜6.0wt%、又は塩化リチウムとしての計算で約12〜44wt%、好ましくは17〜36wt%、に濃縮され、これにより存在するナトリウム及びカリウムの大部分を溶液から沈殿させる。
【0029】
その後、そのように濃縮された塩水のpHを、約10.5〜約11.5、好ましくは約11に調節して、鉄、マグネシウム、及びカルシウム等の二価又は三価のイオンを沈殿させる。これは、例えば、鉄、カルシウム、及びマグネシウムの含有量に対して化学量論的に等量の水酸化リチウム及び炭酸リチウムを添加することによって達成することができる。pHの調節は、好ましくは塩基、好ましくは前記方法による回収生成物である水酸化リチウム及び炭酸リチウム等のリチウム含有塩基、を添加することによって達成される。pH調節の結果、大部分の鉄、カルシウム、及びマグネシウムが、上記濃縮されてpH調節された塩水から除去される。
【0030】
その後、カルシウム及びマグネシウム、並びにその他の二価及び三価イオンを、その最終生成物が、カルシウム及びマグネシウムが合計で150ppb以下の塩水となるように、イオン交換によって更に低減することができる。
【0031】
この更に精製された塩水を、その後電気分解して、カルシウム及びマグネシウムが合計で150ppb以下の水酸化リチウム溶液を生成する。電気分解において、選択的にカチオンを通過させる半透膜を使用し、ここでリチウムイオンは膜を通って移動して陰極液中に実質的に純粋な含水水酸化リチウムを形成し、この生成物から、水酸化リチウム一水和物又は炭酸リチウム等の高純度リチウム化合物結晶を形成することができる。
【0032】
本発明による特に好適な方法は、水酸化リチウム一水和物の結晶を作るための方法に関し、この方法は、ナトリウムと場合によってはカリウムとを同時に含有するリチウム含有塩水を精製してカルシウム及びマグネシウムの合計濃度を150ppb以下に低減する工程と、塩水を電気分解して合計で150ppb以下のカルシウム及びマグネシウムを含有する水酸化リチウム溶液を、副産物としての塩素ガス及び水素ガスと共に作り出す工程と、水酸化リチウム溶液を濃縮及び結晶化して水酸化リチウム一水和物の結晶を産生する工程と、を有する。
【0033】
本発明の更に別の好適な方法は、塩酸の製造方法に関し、この方法は、ナトリウムと場合によってはカリウムを同時に含むリチウム含有塩水を精製してカルシウム及びマグネシウムの合計濃度を150ppb以下に低減する工程と、塩水を電気分解して合計で150ppb以下のカルシウム及びマグネシウムを含有する水酸化リチウム溶液を、副産物としての塩素ガス及び水素ガスと共に作り出す工程と、過剰水素による塩素ガスの燃焼によって塩酸を産生する工程と、を有する。
【0034】
本発明のもう一つの好適な方法は、水酸化リチウム一水和物と塩酸との両方を作る方法に関し、この方法は、ナトリウムと場合によってはカリウムとを同時に含有するリチウム含有塩水を精製してカルシウム及びマグネシウムの合計濃度を150ppb以下に低減する工程と、塩水を電気分解して合計で150ppb以下のカルシウム及びマグネシウムを含有する水酸化リチウム溶液を、副産物としての塩素ガス及び水素ガスと共に作り出す工程と、水酸化リチウム溶液を濃縮及び結晶化して水酸化リチウム一水和物の結晶を産生する工程と、過剰水素による塩素ガスの燃焼によって塩酸を産生する工程と、を有する。
【0035】
本発明の更に別の好適な方法は、水酸化リチウム一水和物の結晶を作る方法に関し、この方法は、ナトリウムと場合によってはカリウムとを同時に含有するリチウム含有塩水を濃縮して場合によっては塩水からナトリウムを沈殿させる工程と、必要に応じて塩水を更に精製して、ホウ素、マグネシウム、カルシウム、硫酸塩、及び残留ナトリウム及び残留カリウム、を除去又は低減する工程と、塩水のpHを約10.5〜11に調節してリチウム以外のカチオンを更に除去する工程と、イオン交換によって塩水を更に精製して、カルシウム及びマグネシウムの総濃度を150ppb以下に低減する工程と、塩水を電気分解して合計で150ppb以下のカルシウム及びマグネシウムを含有する水酸化リチウム溶液を、副産物としての塩素ガス及び水素ガスと共に作り出す工程と、水酸化リチウム溶液を濃縮及び結晶化して水酸化リチウム一水和物の結晶を産生する工程と、を有する。
【0036】
一好適実施例において、前記方法の水酸化リチウム溶液は、合計で150ppb以下のカルシウム及びマグネシウムを含有する高純度リチウム製品、より好ましくは高純度炭酸リチウム、に変換される。
【0037】
特に好適な実施例において、水酸化リチウム一水和物の結晶は遠心分離されて回収される。この遠心分離又はその他の方法で回収された結晶は、場合によっては乾燥され、その後乾燥材料としてパッケージ化される。
【0038】
好適には、塩水は、電気分解の前に約2〜約7wt%、好ましくは約2〜6.5wt%、より好ましくは2.8〜6.0wt%、のリチウム濃度にまで濃縮される。
【0039】
更に別の好適実施例において、リチウム含有塩水は天日干しによって濃縮される。
【0040】
場合によっては、塩水中のホウ素の量が、例えば有機抽出処理又はイオン交換によって低減される。
【0041】
マグネシウムは、好ましくは、石灰又は消石灰の添加、又はこれらとの制御された反応、によって低減され、ここで石灰が好適に使用される。カルシウムは、好ましくはシュウ酸を添加してシュウ酸カルシウムを沈殿させることによって低減される。カルシウム及びマグネシウムは、イオン交換、或いはリチウム塩水中のこれらのイオンを低減するための任意の公知の方法の組み合わせ、によっても除去することができる。
【0042】
場合によっては、硫酸塩を、例えばバリウムを添加して硫酸バリウムを沈殿させることによって低減することができる。
【0043】
所望の場合又は必要な場合、ナトリウムを分別結晶法又はその他の手段によって低減することができる。
【0044】
電気分解のために、両電極は好ましくは高耐腐食性物質で構成される。特に好適な実施例において、これらの電極は被覆(コーティング)されたチタン及びニッケルで構成される。別の好適実施例において、電気分解工程において、電気化学セルは「擬似ゼロギャップ(pseudo zero gap)」構成で配置される。電気分解工程において、単極膜、例えばIneos ChlorFM1500単極膜、を用いたセルが使用されることが特に好ましい。
【0045】
好適実施例において、加水分解工程において、乱流の発生(turbulence)とガス放出を促進するために、カソード側電極はランタンブレード(lantern blade)構成とされる。
【0046】
本発明の好適な方法は、塩酸の製造方法に関し、ナトリウムと場合によってはカリウムとを同時に含有するリチウム含有塩水を濃縮して塩水からナトリウムと場合によってはカリウムを沈殿させる工程と、塩水を精製して、ホウ素、マグネシウム、カルシウム、硫酸塩、及び残留ナトリウム及び残留カリウム、を除去又は低減する工程と、塩水のpHを約10.5〜11に調節してリチウム以外のカチオンを更に除去する工程と、イオン交換によって塩水を更に精製して、カルシウム及びマグネシウムの総濃度を150ppb以下に低減する工程と、塩水を電気分解して合計で150ppb以下のカルシウム及びマグネシウムを含有する水酸化リチウム溶液を、副産物としての塩素ガス及び水素ガスと共に作り出す工程と、過剰水素による塩素ガスの燃焼によって塩酸を産生する工程と、を有する。所望の場合、例えばカルシウムやマグネシウム等の不要なイオンを低減するために、上記実施例の任意の工程をこの方法に組み込むことができる。
【0047】
本発明は、更に、カルシウム(Ca)及びマグネシウム(Mg)の含有量が、合計で150ppb以下、好ましくは合計で50ppb以下、最も好ましくは合計で15ppb以下、である水酸化リチウム一水和物に関する。
【0048】
本発明のもう一つの態様は、更に、カルシウム(Ca)及びマグネシウム(Mg)の含有量が、合計で150ppb以下、好ましくは合計で50ppb以下、最も好ましくは合計で15ppb以下、である含水水酸化リチウムに関する。
【0049】
上述した水酸化リチウム一水和物及び/又は水酸化リチウム水溶液を含む製品又は他の製造物、例えばバッテリ、も本発明の態様である。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明による好適な方法の流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
本発明は、一般に、水酸化リチウム一水和物及び/又は塩酸を作るための製造方法に関し、この方法は、ナトリウムと場合によってはカリウムとを同時に含有するリチウム含有塩水(単に「塩水」と称する場合がある。)を精製してカルシウムとマグネシウムとの合計濃度を150ppb以下に低減する工程と、塩水を電気分解して合計で150ppb以下のカルシウム及びマグネシウムを含有する水酸化リチウム溶液を、副産物としての塩素ガス及び水素ガスと共に作り出す工程と、その後下記の工程のうちの少なくとも1つを実行する工程と、を有する。下記の工程とは、水酸化リチウム溶液を濃縮して水酸化リチウム一水和物の結晶を結晶化する工程、或いは、追加的に過剰水素による塩素ガスの燃焼によって塩酸を作る工程、である。
【0052】
好適実施例において、本発明による水酸化リチウム一水和物及び塩酸の製造方法は、通常、以下の工程を含む。すなわち、リチウム含有塩水を例えば天日干しによって、或いは加熱によって濃縮する工程、好ましくは塩水中に含有される可能性のあるホウ素不純物を、所望の場合、例えば有機抽出処理又はイオン交換処理によって低減する工程、それが存在する場合にマグネシウムの含有量を、石灰及び/又は消石灰との制御された反応によって低減して、所望の場合水酸化マグネシウムを沈殿させる工程、所望の場合、最初に例えばシュウ酸処理によってシュウ酸カルシウムを沈殿させ、カルシウムを低減する工程、を含む。所望の場合、硫酸塩を、例えばバリウムとの処理によって低減することができる。塩水中のナトリウム濃度を、分別結晶法によって低減することができる。重要なことは、イオン交換のみ、又は、上述したように沈殿等のその他の処理との組み合わせによって、カルシウム(Ca)及びマグネシウム(Mg)の濃度が、(合計で)150ppb以下、より好ましくは(合計で)50ppb以下、最も好ましくは(合計で)15ppb以下、に低減されることである。
【0053】
次に、その結果得られる(合計で)150ppbのカルシウム(Ca)及びマグネシウム(Mg)を含有する精製されたリチウム含有水溶液が、電気化学的に分解されて水酸化リチウムとなり、その際塩素ガスと水素ガスとが副産物として生成する。その後、場合によっては、水を分離することによって水を電気分解して水素ガス流を作りだすことができる。塩素ガス流及び水素ガス流は、場合によっては乾燥される。
【0054】
次に、塩素ガスを過剰水素ガスと燃焼させ、その後、それによって得られるガス流を精製水で洗浄(scrubbing)することによって塩酸を生成することができる。
【0055】
次に、水酸化リチウム溶液を、濃縮、又は真空冷却や蒸発等のその他の方法で、例えば(合計で)150ppb以下、好ましくは(合計で)50ppb以下、最も好ましくは15ppb以下(合計で)のカルシウム(Ca)及びマグネシウム(Mg)を含有する、バッテリ用として十分な純度の水酸化リチウム一水和物を作り出すことができる。
【0056】
得られた結晶を、場合によっては洗浄するとともに遠心分離することによって純度を増大させることができるが、これは必ずしも必要ではない。
【0057】
結晶は、好ましくは洗浄後に、場合によっては乾燥させて、純粋な一水和物の結晶を作り、その後、乾燥した材料をパッケージ化することができる。
【0058】
使用される出発物質としての塩水は、もちろん、そのイオン含有量は供給源に応じて異なり、従って、本製造方法もそれに応じて改変されるであろう。例えば、通常、イオン交換による精製前に、不要イオン、例えばカルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)、ホウ素(B)、鉄(Fe)、ナトリウム(Na)、及び硫酸塩等を除去し、又はそれらの濃度を低減するために、塩水を精製することが必要である。そのような除去処理は公知であり、その他今後開発されるであろう方法も使用可能である。好適実施例において、本発明の方法を実施する者は、他のアルカリ金属及びアルカリ土類金属を、主としてハロゲン化物塩として含有するリチウム含有塩水を使用するであろう。塩水は、まず任意の適当な手段によって、約2〜約7wt%のリチウム濃度にまで濃縮し、含有されている全てのナトリウム及びカリウムの大部分を、その濃度、すなわち塩化リチウムとしての計算で約12〜約44%、のハロゲン化リチウム溶液中において、不溶性のハロゲン化物として塩水から沈殿させる。尺度の他方の端部において、塩水を塩化リチウムにおける飽和濃度、すなわち約44%(7.1%リチウム)に近づけるまで電気分解することは可能ではあるが、塩化物イオンが膜を通過して移動する傾向が増大するので、そのように濃縮された塩水を使用することは好ましくない。したがって、最善の結果と効率のためには、陽極液として、約2〜5%のリチウム、又は約12%〜約30%の塩化リチウム、を含有する塩水を使用することが最も実用的である。
【0059】
ナトリウム塩及びカリウム塩の分離後、塩水のpHは、約10.5〜約11.5の範囲、好ましくは約11、に調節され、炭酸リチウムを添加して、残留カルシウム及び/又はマグネシウム、及び存在する鉄イオンを沈殿させて、これらのイオンを低減又は除去する。このpH調節は、適当な手段によって行うことができるが、それを後述するようにいずれも本製造方法による生成物として容易に入手可能な水酸化リチウム及び炭酸リチウムの添加によって達成することが好ましい。鉄、カルシウム、及びマグネシウムの含有量に対して化学量論的に等量の水酸化リチウム及び炭酸リチウムを添加することによって、これらのカチオンが、不溶性の水酸化鉄、水酸化マグネシウム、及び炭酸カルシウム、として実質的に完全に除去される。
【0060】
その結果得られる、リチウム以外の実質的に全てのカチオンが除去又は望ましい範囲内にまで実質的に除去された塩水は、好ましくは塩酸、又はその他の適当な鉱酸若しくは有機酸、によって中和され、イオン交換樹脂を用いて処理されてカルシウム及びマグネシウム濃度を更に低減させる。この更に精製された塩水を次に電気分解して、合計で150ppb以下のカルシウム(Ca)及びマグネシウム(Mg)を含有する水酸化リチウム溶液を生成し、これを蒸発又は加熱して同純度の水酸化リチウム一水和物を結晶化し、これを例えばバッテリ用途に使用することができる。
【0061】
この方法の生成物、すなわち合計で150ppb以下、より好ましくは(合計で)50ppb以下、最も好ましくは(合計で)15ppb以下、のカルシウム(Ca)及びマグネシウム(Mg)を含有する実質的に純粋な含水水酸化リチウムは、溶液として、或いは沈殿させて一水和物塩を生成した後に、商業用途の他の高純度リチウム製品に容易に変換される。たとえば、水酸化リチウム溶液を二酸化炭素によって処理して、高純度炭酸リチウムを優先的に沈殿させることができる。或いは、含水水酸化リチウムを部分的に又は完全に蒸発させて高純度水酸化リチウム一水和物を産生することができる。
【0062】
特に好適な実施例は、水酸化リチウム溶液を部分的に蒸発させて高純度水酸化リチウム一水和物を結晶化し、残りの溶液をブリード(bleed)によって新たに作成した溶液と共にリサイクルする方法である。これは、そのようにして製造された水酸化リチウム一水和物の結晶は、それ以外の方法によって製造されたものよりも更に純度が高いからである。このようにして製造されたリチウム製品は非常に高純度であり、事実、塩素の含有量は一般に0.01%であり、残留塩素は最大でも0.05%である。このことは、水酸化リチウムが、その腐食性のために塩素イオンの含有量が最小でなければならないグリースに使用される場合等の多くの用途において、非常に重要である。また、仮に塩素が除去されなければ、典型的な工業用単極膜を利用したセル等における場合のように、再結晶化によって高純度の水酸化リチウムを産生することは非常に困難である。
【0063】
本発明の方法において電気分解される塩水中のリチウム以外のカチオンの濃度を最小限にまで低減することが必要な理由は、高純度の水酸化リチウムの製造を確実にすることであるが、カルシウム、マグネシウム、及び鉄等のある種のカチオンは、選択的カチオン透過膜において不溶性の水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、及び水酸化鉄、として沈殿する傾向があるということも、もう一つの理由である。そのような沈殿によってリチウムイオンが膜を通過する効率が低下するのみならず、それによって電解膜の寿命、すなわちセルの連続運転が可能な期間、が大幅に短縮されて製造コストが増大することから、もちろん望ましいものではない。
【0064】
本発明の製造方法は、いかなる天然のリチウム含有塩水又は合成リチウム含有塩水を用いても実行することが可能である。原料の塩水も、通常は、以下のうちの単数又は複数の不純物を含有している。すなわち、マグネシウム、カルシウム、ホウ素、及びルビジウム等を含有している。これらは通常は溶解可能な形態で、多くの場合、それぞれの塩化物塩として存在する。不純物の存在又は不在に応じて、そのような不純物を除去するために必要な処理工程が異なることが理解されるだろう。従って、不純物が存在しない場合、或いはその含有量が最終製品の所定の用途のための要求を満たすようなものである場合には、その不純物を除去するための除去工程は不要である。
【0065】
そのような除去工程としては、従来から知られている、又は今後利用可能となる方法を使用することができる。
【0066】
必要な除去工程が実行された後、未だ所定量の不純物が存在しているかもしれない場合には、その後に更に除去工程を行うことができ、この除去工程は前の除去工程と同じ方法であっても、或いは異なる方法であっても良い。
【0067】
本発明の製造方法は、あらゆるリチウム含有塩水に広く利用可能である。適当な塩水は、例えばネバダ、アルゼンチン、チリに天然に見られる塩水等のように、井戸や採掘坑等に地下水として天然に存在するものと、海洋や湖に表面水として天然に存在するものと、の両方がある。塩水は、塩酸とリチウム鉱とを反応させて塩化リチウム含有塩水を作る反応によって、人工的に作り出すこともできる。この目的のための塩酸は、本発明の電気分解工程の副産物である水素ガスと塩素ガスとを反応させることによって得ることができる。典型的には、そのような塩水は、50〜500ppm、或いはそれ以下の非常に低濃度のリチウムを含有するが、場合によっては0.5%ものリチウムを含有する塩水もある。理論的には、本発明の製造方法は、非常に低濃度から飽和濃度までのいかなる濃度の塩水でも実施可能であるが、必要となる時間と装置の大きさを考慮すれば、非常に低濃度のリチウム含有量の塩水を用いることは、経済的には実行可能性が低い。そのため、準備工程として、天然の希釈塩水を、そのリチウム濃度が少なくとも約0.04%〜約1%、より好ましくは少なくとも約0.1%、に上昇するまで濃縮することが望ましい。
【0068】
希釈塩水は、任意の適当な方法によって、そのリチウム含有量に関して濃縮することができる。但し、現時点では、塩水において通常見られる複数種の塩の混合物の構成物を化学的に分離することは困難であるので、何らかの蒸発法が示唆される。蒸発は公知の任意の方法で行うことができるが、単純に池に塩水を貯留して天日干しによって時間をかけて濃縮させることが好適である。そのような天日干し蒸発法は、塩化リチウムよりも溶解度の低い塩化ナトリウム及び塩化カリウムの一部を分離させる傾向がある。更に、空気中の二酸化炭素の吸収によって、マグネシウムの一部も炭酸マグネシウムとして塩基性塩水から除去することができる。
【0069】
このように希釈塩水が約0.04〜1%、好ましくは少なくとも約0.1%のリチウム濃度にまでに濃縮された後、好ましくは、但し任意に、カチオン性不純物、すなわちリチウム以外のカチオン、特にマグネシウム、が大量に含まれている場合にはその除去を補助するべく、この塩水のpHを約10.5〜約11.5、好ましくは約11に調節する。これは、石灰、炭酸ナトリウム、又は水酸化カルシウム等の任意の適当なアルカリ物質を添加することによって実現可能であり、その場合における主要な考慮要素は低コストなことである。その後、その塩水を、天日干し蒸発によって、通常約0.5〜1%のリチウム(すなわち約3.1〜6.2%の塩化リチウム)まで更に濃縮することができる。空気中の二酸化炭素の吸収によってpHが約9程度にまで低下している場合は、それを石灰、水酸カルシウム、又は炭酸ナトリウムの添加によって再度10.5〜11に調節して、溶液中の残留マグネシウム及び残留カルシウムを約0.1%にまで低減することができる。
【0070】
その後塩水を、天日干し蒸発、或いはより急速には当該技術分野において知られている水中燃焼等の、適当な手段によって更に濃縮する。この処理中に、塩水は再び大気中から二酸化炭素を吸収して、それによってそのpHを約9にまで低下させるかもしれない。このようにして、塩水はその量において、約2〜約7%のリチウム濃度、すなわち約12〜約44%の塩化リチウム濃度にまで濃縮される。塩化リチウム濃度は、リチウム濃度に係数として「6.1」を乗算することによって簡便に計算される。塩化ナトリウム及び塩化カリウムは、塩水中における可溶性が塩化リチウムよりも遥かに低いので、リチウム濃度が約40%を超えた時、実質的に全てのナトリウム及びカリウムが除去される。塩化リチウム自身は、水溶液中において約7.1%のリチウム含有率又は約44%の塩化リチウム含有率にて、大気温度で飽和に達する。従って、この濃度が、共存する不純物と共に塩化リチウムを沈殿させずに済む、塩水の濃縮にとっての実用的な上限となる。上述したように、高純度のリチウムを得るために水酸化物の再結晶化によってナトリウムイオンとカリウムイオンとを除去しない限り、リチウム濃度が蒸発濃縮工程における実用的な下限である約35%に達するまでは、溶液中に多量のナトリウムとカリウムとが残る。
【0071】
そのようにして濃縮され精製された塩水が電気分解によって更に精製される場合、残りの干渉カチオンを除去することが好ましい。一好適実施例において、電気分解される塩水は、必要に応じて、電気分解中の塩素イオンの移動を抑制するためにリチウム濃度が約2〜5%(塩化リチウムとして約12〜30%)にまで希釈され、電気効率は事実、そのような濃度において改善される。もちろん、上記の濃縮工程が5%のリチウム濃度を超えて行われなかった場合には、この希釈は不要である。通常は主にカルシウム及びマグネシウムであり、場合によっては鉄を含むこともある、残りの干渉カチオンの実質的に全ての除去は、再度塩水のpHを約10.5〜11.5、好ましくは約11、にまで上昇させることによって達成される。これは、任意の適当なアルカリ物質の添加によって行うことが可能であるが、混入(コンタミネーション)のない最善の分離を実現するためには、化学量論的に等量の水酸化リチウム及び炭酸リチウムを添加することが好ましい。このようにして、実質的に全ての干渉カチオンが、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、又は水酸化鉄として除去される。この目的のための水酸化リチウム及び炭酸リチウムは、以下から理解できるように本製造方法による生成物から容易に入手することができる。
【0072】
上述したように、電気分解される塩水は、実質的に干渉カチオンを含まないものとすべきである。但し、実用的には、少量のナトリウムやカリウム等のアルカリ金属イオンは、その量が再結晶化中に溶液中に残留することになる約5wt%を超えない限りにおいて許容される。但し、鉄、カルシウム、及びマグネシウム等、カチオン透過性膜中での沈殿によって電気分解にとって大きな障害となるカチオンは、非常に低濃度となるまで減少させるべきである。そのようなイオンの総量は、好ましくは、約0.004%を超えるものであってはならない。但し、陰極液中ではそれらの可溶限界濃度までは許容される。そのようなより高い濃度は、必要であればセル膜の作動寿命を犠牲にして使用することが可能であろう。電気分解される塩水中の塩化物イオン以外のアニオンの含有量は、約5%を超えるべきではない。
【0073】
陰極液は、電流を流すのに十分なイオンを含む任意の適当な物質から構成することができる。上述した制限下で水のみを使用することも可能ではあるが、製造される製品、すなわち水酸化リチウム、によって必要なイオンを提供することが好ましい。水酸化リチウムの初期濃度は、セルを作動可能とするためにかろうじて十分な量から、一般的な圧力及び温度条件下での飽和濃度まで、様々なものであり得る。但し、原則として水酸化リチウムがセル中で沈殿するのを許容することは望ましくなく、セル膜内における水酸化物の沈殿を避けることが特に必要である場合は、飽和濃度は避けるべきである。更に、いかなる入手可能なカチオン選択性膜も完全ではなく、多少のアニオンは通過させるので、陰極液中の水酸化物イオン濃度が高ければ高いほど、そのようなイオンがより多くセル膜を通って陽極液に流れ込む。このことは、そのようなイオンが塩化物イオンと反応して酸化塩素を作り出し、それによって副産物としての塩素ガスの産生効率を低下させ、セル全体の電流効率を低下させるので、望ましくない。
【0074】
ここに記載する製造方法の効率は高いものではあるが、消費された塩化物イオンをリサイクルすることが好適であり、これは新たに調整される精製リチウム含有塩水による補充を伴う。当業者に知られている方法によってこのリサイクルされた塩水を処理して、形成された可能性のある酸化塩素を除去する。このように、本方法は、高効率であるのみならず、貴重なリチウム流を最大限利用するものでもある。
【0075】
本発明の製造方法において、カチオンを選択的に透過し、アニオンの通過を阻止する任意の市販の半透過性電解膜を使用することができる。そのような膜は、電解技術の当業者にとって周知である。適当な市販の電解膜としては、E.I. DuPont de Nemours & Co.からNafionの商標名で市販されているシリーズがある。そのような選択的カチオン透過膜を、電気分解される陽極液塩水と上述した陰極液との間に配置して、これら2つの液体の間を物理的に分離状態に維持する。
【0076】
電気分解中、約100amp/ft〜約300amp/ftの電流を、上記の膜を通して陰極液に通過させる。好ましくは、電流は150amp/ft〜250amp/ftの範囲である。好ましくは、膜のファウリングを回避するため、電流密度に応じて、カルシウム及びマグネシウムの濃度を、カルシウム(Ca)及びマグネシウム(Mg)の合計で20〜30ppb未満に維持すべきである。
【0077】
電気分解中、陽極液中の塩化物イオンはアノードへと移動し、放電して塩素ガスを産生し、これを副産物として回収して、以下に記載するように又はその他の方法で、いくつかの化学物質の中から例えば塩酸を産生するために使用することができる。陰極液中の水酸化物イオンは、アノードに引き寄せられながら、実質的には半透膜のアニオンに対する不透過性により、陽極液への移動が阻害される。陰極液に移動するリチウムイオンは、陰極液中の水由来の水酸化物イオンと結合して、それによって水素イオンを遊離させ、これらがカソードから放出されると同時に水素が形成される。この水素も副産物として収集され、例えば得られる塩素と共に塩酸(HCl)を産生するために使用することができる。或いは、その水素ガスをエネルギ生産のための熱源として使用することもできる。
【0078】
電解処理中、陽極液塩水中の塩化リチウムは、陰極液中で水酸化リチウムに変換されるが、この変換効率は、セルのアノード区画(アノードコンパートメント)へと移動する塩化リチウムを基準として実質的に100%である。電気分解は、水酸化リチウムの濃度が14%又は飽和直前の濃度に達するまで連続的に行うことができる。この含水水酸化リチウムは非常に高純度であり、好ましくはリチウム以外のカチオンを約0.5wt%以下、より好ましくは、0.4wt%以下、最も好ましくは0.2wt%以下、だけ含んだものとなる。水酸化リチウム一水和物もまた、好ましくは水酸化物イオン以外のアニオンを0.05wt%以下、より好ましくは0.04wt%以下、最も好ましくは0.02wt%以下、だけ含むものとされる。特に、塩化物イオンの含有量は0.04wt%、より好ましくは0.03wt%、最も好ましくは0.02wt%を超えないものとされることが銘記される。とりわけ、本発明の製造方法は、追加の処理工程を必要とすることなく、この純度の水酸化リチウム一水和物を産生する。但し、所望の場合、その他の処理工程によって、この製品を更に精製することも可能である。
【0079】
本発明の製造方法によって提供される高純度の含水水酸化リチウムは、そのままで使用することも可能であるし、或いは他の商業的に望ましい高純度リチウム製品に容易に変換することも可能である。例えば、含水水酸化リチウムを二酸化炭素によって処理して、塩化物イオンの含有率が0.05%以下、通常は僅か約0.01%、の高純度炭酸リチウムを沈殿させることができる。
【0080】
或いは、含水水酸化リチウムは、単純に水酸化リチウム溶液を乾燥状態まで蒸発させることによって、高純度の水酸化リチウム一水和物の結晶へと変換することができる。最も高純度の水酸化リチウム一水和物の結晶を得るために、部分結晶化、再生利用(recycling)、ブリーディング(bleeding)等の、より高度な結晶化技法を使用することも可能である。
【0081】
以上の説明から、含水水酸化リチウムの一部を変換することによって、濃縮塩水中の鉄、カルシウム、及びマグネシウムを除去するべく、初期段階の処理で使用される炭酸リチウム及び水酸化リチウムを提供できることが理解されるであろう。
【0082】
また、以上の説明から、新規な本製造方法は、天然の塩水から更なる精製を必要とすることなく商業用途にそのままで使用可能な形態の高純度のリチウム製品を得るための方法を、初めて提供するものであること、そして、その濃縮された塩水からのリチウムの回収が実質的に100%であること、が理解されるであろう。
【0083】
更に、水酸化リチウム溶液、水酸化リチウム一水和物の結晶、及び塩酸溶液が得られた後は、それらを、そのまま市販することに加えて、他のリチウム含有化合物を産生するための原料物質として利用することも可能である。例えば、純粋な圧縮二酸化炭素(CO2)ガスを使用してこれを水酸化リチウム溶液と反応させ、ある種のバッテリ用途に同様に利用可能な、高純度炭酸リチウムを沈殿させることができる。
【0084】
別の利用法は、この水酸化リチウム溶液を化石燃料の燃焼によって発生する燃焼ガスを洗浄(scrub)するために使用して、多少純度は低くなるが、炭酸塩を産生しつつ温室効果ガスの排出量を低減させるという利用法である。
【0085】
もう1つの例は、本発明の製造方法から生じる超純粋水酸化物及び塩酸を反応物質として利用して非常に高純度の塩化リチウム溶液を再度産生し、その後結晶化して、不純物濃度が極めて低濃度であることが要求される金属リチウム(例えば、バッテリコンポーネント用)を作るという利用法である。
【0086】
その他の例としては、本発明の水酸化リチウム溶液を利用して、広く認められた殺菌剤である次亜塩素酸リチウムの形成、酸塩基反応による高純度フッ化リチウム、臭化リチウム、及びその他のリチウム担持化合物の製造、がある。
【0087】
塩化リチウム溶液における高純度の必要性を認識して、本発明の製造方法は、カルシウムイオン及びマグネシウムイオンを、合計で200ppb以下の濃度にまで低減するのに有効なイオン交換樹脂を利用する。この濃度は、塩化リチウムを含む電気化学セルにおいて許容可能なものであることが示されており、それらは、均一なビーズ径分布を有する高容量マクロ多孔性弱酸陽イオン交換樹脂を利用することによって達成することができる。上記の樹脂は、下流側の処理によって得られる塩酸と水酸化リチウムとによって再生することが可能であり、それによって処理コストが節約される。
【0088】
その結果得られる塩化リチウム溶液は、リチウム含有量が15〜30wt%(塩化リチウムとして)の溶液であり、一般に以下の不純物を有する。
【0089】
【表1】

【0090】
なお、これらの低濃度の分析においては、誤った高い読み取り値をもたらすことになる混入(コンタミネーション)を避けるため、高度の注意力を必要とするものであることを銘記しなければならない。アルカリ性ナトリウム塩化物の分野で日常的に使用されている分析方法は適用できない。
【0091】
次に、このようにして精製された塩水を、電気化学セルを用いて電気分解する。典型的な電気化学セルは、3つの主要構成要素、すなわち、アノード、透過膜、及びカソード、を有する。本発明の製造方法は、ペルフルオロスルホン酸陽イオン交換膜、例えば、デュポン社のNafion(登録商標)シリーズの膜を使用する。
【0092】
上記の溶液、特に塩化リチウム溶液、の腐食性により、電気化学セルの電極は、好ましくは高耐腐食性材料で構成される。好ましくは、電極はチタン及びニッケルで被覆(コーティング)される。好適なセル構成は「擬似ゼロギャップ(pseudo zero gap)」構成と呼ばれているもの、例えば乱流(turbulence)を促進すると共に膜をアノード表面から離間保持するための乱流促進メッシュを有する平坦な板状のアノードを備える、Ineos FM01、の構成である。この構成は、アノードの直近の、潜在的に高いpH勾配領域によるアノードのコーティングの早発的損傷又は不良を回避するため、より伝統的なゼロギャップ構成よりも好ましい。
【0093】
好ましくは、カソード側電極は、乱流の発生とガス放出とを促進するため、ランタンブレード構成(lantern blade design)とする。
【0094】
各領域の電極における全体反応及び半反応は、以下の通りである。
2Cl→Cl+2e アノードでのイオン反応
2HO+2e→H+2OH カソードでのイオン反応
2Cl+2HO→Cl+H+2OH 全体のイオン反応
2LiCl+2HO→2HO+2LiOH 全体反応
【0095】
上述したセルの典型的な運転条件を、以下に示す。
【0096】
【表2】

【0097】
当業者は、これらが例示的なものであって限定的なものではなく、処理工程、使用される装置、所望の最終製品、及びその他の要因、に依存するものであることを理解するであろう。
【0098】
陰極液の潜熱を利用して、例えば単純な真空冷却結晶化によって水酸化リチウム一水和物を産生することができる。これは、そのような目的用に標準的に利用可能な工業装置構成を利用して達成することができる。
【0099】
本発明の水酸化リチウム一水和物は、バッテリ用途に使用されるのに十分な純度であり、バッテリ用に必要とされる純度を達成するために追加の洗浄又はその他の処理工程を必要とする他の水酸化リチウム処理と比較して、改善された結果をもたらすものである。
【0100】
電気化学セルの運転の結果として生成される塩素及び水素は、水分が除去され、場合によっては軽く圧縮される。塩素と水素とは、発熱反応して塩化水素ガスを発生する。これらのガスは、共にバーナーノズルを通過して適切に構成された燃焼チャンバ内で引火され、水で冷却される。生成された塩化水素ガスは、冷却されて水に吸収され、所望の濃度の塩酸を産生する。塩化水素ガスの吸収用に用いられる水の品質によって、得られる酸の純度が決まる。或いは、当業者は、これらのガス流から他の化学物質を作ることも可能であろう。
【0101】
本発明の処理全体に、追加の処理工程を加えることも可能である。例えば、イオン濃度が、所望の水酸化リチウム一水和物を産生するために必要な濃度範囲を超えている場合に、或いは電極の適切な機能を維持させるために、電解セル中の溶液を時々パージ(浄化)することが必要であるかもしれない。
【0102】
〔好適実施例の説明〕
本発明の方法の好適実施例を開示している図面を参照すると、天然のもの、或いはその他の方法で入手可能なもの、例えば鉱石から入手可能なもの、とすることができる塩化リチウム含有塩水(1)が提供される。この塩水は、不要なイオン又はその他の不純物の量を減少させるための一次精製工程(2)を受ける。これは、例えば、上述したような、或いは当該技術分野で知られているその他の処理により、マグネシウム、ホウ素、バリウム、カルシウム、又はナトリウム、を不溶性塩として沈殿させることによって達成することができる。例えば、塩水のpHをアルカリにより調節して不要なイオンの水酸化物を沈殿させることによって達成することができる。その後、この塩水は、そのような塩水を利用する他の処理(3)に使用することが可能であり、或いは、本出願により関連性の高いものとして、上述したようなイオン交換による二次精製工程(4)を受けることができる。最終的に、電気分解前の塩水中のカルシウム(Ca)及びマグネシウム(Mg)の総量は、化学的処理、天日乾燥処理、及び/又はイオン交換処理、の任意の組み合わせによって150ppb以下になる。
【0103】
カルシウム(Ca)及びマグネシウム(Mg)の総量が150ppb以下の塩水は、その後、電気分解(5)を受ける。この電気分解(5)では、陰極液から陽極液を分離する選択的カチオン透過膜が用いられる。リチウムイオンが膜を通過移動して、実質的に純粋な含水水酸化リチウムを含有する陰極水溶液を形成する。
【0104】
整流装置(21)をAC電源(図示せず)に接続して、電解セルのアノードとカソードにDC電流を提供する(5)。好ましくは、整流装置を通して冷却水を循環させて過剰な熱を除去し、整流装置の作動効率を改善する。セルを1.5kA/mで始動し、その後、生産需要に応じて2〜3kA/mの運転条件にまで上昇させる。これは、ここでも生産需要に基づいて3〜3.5ボルトの運転電圧で行われる。時間の経過に伴ってセル効率が低下すると、必要な電流密度は増大し、同じ生産需要を満たすために必要な電圧も同様に増大する。
【0105】
塩酸(HCl)を外部供給源から、又は本製造方法の処理から添加することにより、陽極液(14)を再利用することができ、これを塩化リチウム供給流(1)に戻すことができる。好ましくは、陽極液は塩化リチウム供給流(1)との混合前に精製される(15)。一好適実施例において、陽極液は、20wt%未満、より好ましくは19.5wt%未満、の濃度でセルを離れる。この消費された陽極液は、水酸化物イオン(OH-)の膜を介した移動により、塩素酸塩及び/又は次亜塩素酸塩を含んでいる可能性がある。これらのイオンは、好ましくは、リサイクルされた消費陽極液と新たな陽極液とに対して塩酸(HCl)を添加することによって中和される。
【0106】
加水分解によって副産物として塩素ガス(6)と水素ガス(7)とが生成する。次に、これらを塩酸合成ユニット中において合成させて塩酸(9)を産生し、塩酸(9)はその後保存される。好ましくは、安全性の理由から緊急状況中に作動するように塩素吸収装置(10)が備えられ、塩酸(HCl)の合成経路に問題が生じた場合には、これによって塩素ガスを吸収する。
【0107】
この好適実施例において、排ガス洗浄装置(12)が、例えば処理流から又は直接的に脱塩水を受け取り、塩酸(HCl)合成装置(8)に供給された水素ガス及び/又は塩素ガスを受け取って、ガス流から、塩酸(HCl)合成装置内において水素と反応しなかった残留塩素ガス等の不純物を除去する。この排ガス洗浄装置(12)は、大気放出規制に対する適合を確保するためのものである。
【0108】
陰極液(13)は、不純物としてカルシウム及びマグネシウムを合計で150ppb以下だけ含有する、含水水酸化リチウムの水溶液である。その後、水酸化リチウムを、この陰極液から例えばアルカリ濃縮及び/又は結晶化(16)により水酸化リチウム一水和物を沈殿させることによって分離できる。そしてその後、これらの結晶を遠心分離し、場合によっては乾燥させて(17)、水酸化リチウム一水和物又は炭酸リチウムを分離することができる。この結晶精製処理においては、蒸気を使用することができる。その後、回収された水酸化リチウム一水和物の結晶を、必要な場合にはそれらの最終パッケージに保存することができる(18)。
【0109】
この好適実施例において、陰極液は、例えば水酸化リチウム一水和物の回収前に冷却水を添加することによって冷却することができ(19)、或いは、陰極液を更なる電気分解のために戻すことも可能である(20)。
【0110】
セル運転又は結晶化処理の水蒸気を濃縮して、処理濃縮物を得ることができる。水酸化物イオン(OH-)が高濃度となることを避け、セル膜を介したリチウムイオン(Li)の移動を促進するために、膜処理濃縮物をセルの最適動作をもたらす濃度となるまで添加する。
【0111】
別実施例において、陰極液(13)は、水酸化リチウムの結晶を回収することなく、他の処理に直接使用することも可能である(22)。
【0112】
結晶のアルカリ濃縮及び/又は乾燥(16)の後、未回収のリチウムを含有している可能性のある残りの溶液を浄化し(24)、アルカリ性添加物(25)として供給流(1)に再処理のためにリサイクルし、未使用のリチウムを水酸化物として回収することができる。これにより、酸、好ましくは処理(26)で産生された塩酸、の添加によって酸性となっている陰極液供給流のpHも調節される。
【0113】
ここに提示した全ての参考文献、特許、特許出願及び公報、その他の引用文献の全体をここに参考文献として合体させる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナトリウムと場合によってはカリウムとを同時に含有するリチウム含有塩水を濃縮して、この塩水からナトリウムと場合によってはカリウムとを沈殿させる工程(a)と、
必要に応じて、前記塩水を精製して、ホウ素、マグネシウム、カルシウム、硫酸塩、及びその他の残留ナトリウム又は残留カリウムの濃度を、ゼロとし又は低減する工程(b)と、
前記塩水のpHを約10.5〜11に調節して、リチウム以外のカチオンを更に除去する工程(c)と、
前記塩水をイオン交換によって更に精製して、カルシウム及びマグネシウムの合計濃度を150ppb以下に低減する工程(d)と、
前記塩水を電気分解して、カルシウム及びマグネシウムを合計で150ppb以下だけ含有する水酸化リチウム溶液を、副産物としての塩素ガス及び水素ガスと共に産生する工程(e)と、
前記水酸化リチウム溶液を濃縮及び結晶化して、水酸化リチウム一水和物の結晶を産生する工程(f)と、
を有する水酸化リチウム一水和物の製造方法。
【請求項2】
前記工程(f)の水酸化リチウム溶液を、高純度リチウム製品、好ましくは高純度炭酸リチウムに変換する請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記水酸化リチウム一水和物の結晶を遠心分離する工程を更に有する請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
遠心分離された前記結晶を乾燥し、その後、その乾燥された結晶をパッケージ化する工程を更に有する請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
前記塩水を、電気分解前に約2%〜約7%のリチウム濃度に濃縮する請求項1に記載の製造方法。
【請求項6】
前記工程(a)のリチウム含有塩水を、天日干しによって濃縮する請求項1に記載の製造方法。
【請求項7】
前記工程(b)の塩水中のホウ素の量を、有機抽出処理又はイオン交換によって低減する請求項1に記載の製造方法。
【請求項8】
前記工程(b)の塩水中のマグネシウムの量を、石灰又は消石灰との制御された反応によって低減する請求項1に記載の製造方法。
【請求項9】
前記工程(b)の塩水中のマグネシウムの量を、石灰及び消石灰との制御された反応によって低減する請求項1に記載の製造方法。
【請求項10】
前記工程(b)の塩水中のカルシウムの量を、シュウ酸処理によって低減する請求項1に記載の製造方法。
【請求項11】
前記工程(b)の塩水中の硫酸塩の量を、バリウム処理によって低減する請求項1に記載の製造方法。
【請求項12】
前記工程(b)の塩水中のナトリウムの量を、分別結晶法によって低減する請求項1に記載の製造方法。
【請求項13】
前記塩水のpHを約11に調節する請求項1に記載の製造方法。
【請求項14】
前記塩水のpHを、鉄、カルシウム、及びマグネシウムの含有量に対して化学量論的に等量の水酸化リチウム及び炭酸リチウムを添加することによって調節する請求項1に記載の製造方法。
【請求項15】
前記塩水のpHを、請求項1に記載の製造方法による生成物として得られる水酸化リチウム及び炭酸リチウムを添加することによって調節する請求項1に記載の製造方法。
【請求項16】
前記塩水中のカルシウム及びマグネシウムの合計濃度を、イオン交換によって150ppb以下に低減する請求項1に記載の製造方法。
【請求項17】
前記電気分解の工程において、カチオンを選択的に通過させると共にアニオンの通過を阻止する半透膜を使用する請求項1に記載の製造方法。
【請求項18】
前記電気分解の工程において、両電極が高耐腐食性材料で構成されている請求項1に記載の製造方法。
【請求項19】
前記電気分解の工程において、両電極が被覆されたチタン及びニッケルで構成されている請求項1に記載の製造方法。
【請求項20】
前記電気分解の工程において、電気化学セルが「擬似ゼロギャップ」構成で配置されている請求項1に記載の製造方法。
【請求項21】
前記電気分解の工程において、単極膜セル、好ましくはIneos ChlorFM1500単極膜、を使用する請求項1に記載の製造方法。
【請求項22】
前記電気分解の工程において、カソード側電極が、乱流の発生とガス放出とを促進するためのランタンブレード構成である請求項1に記載の製造方法。
【請求項23】
ナトリウムと場合によってはカリウムとを同時に含有するリチウム含有塩水を濃縮して、この塩水からナトリウムと場合によってはカリウムとを沈殿させる工程(a)と、
必要に応じて、前記塩水を精製して、ホウ素、マグネシウム、カルシウム、硫酸塩、及びその他の残留ナトリウム又は残留カリウムの濃度を、ゼロとし又は低減する工程(b)と、
前記塩水のpHを約10.5〜11に調節して、リチウム以外のカチオンを更に除去する工程(c)と、
前記塩水をイオン交換によって更に精製して、カルシウム及びマグネシウムの合計濃度を150ppb以下に低減する工程(d)と、
前記塩水を電気分解して、カルシウム及びマグネシウムを合計で150ppb以下だけ含有する水酸化リチウム溶液を、副産物としての塩素ガス及び水素ガスと共に産生する工程(e)と、
過剰水素による前記塩素ガスの燃焼によって塩酸を産生する工程(f)と、
を有する塩酸の製造方法。
【請求項24】
前記工程(e)の水酸化リチウム溶液を、高純度リチウム製品、好ましくは高純度炭酸リチウムに変換する請求項23に記載の製造方法。
【請求項25】
水酸化リチウム溶液を濃縮及び結晶化して、水酸化リチウム一水和物の結晶を産生する工程を更に有する請求項24に記載の製造方法。
【請求項26】
前記結晶を乾燥する工程を更に有する請求項25に記載の製造方法。
【請求項27】
前記塩水を、電気分解前に約2%〜約7%のリチウム濃度に濃縮する請求項23に記載の製造方法。
【請求項28】
前記工程(a)のリチウム含有塩水を、天日干しによって濃縮する請求項23に記載の製造方法。
【請求項29】
前記工程(b)の塩水中のホウ素の量を、有機抽出処理によって低減する請求項23に記載の製造方法。
【請求項30】
前記工程(b)の塩水中のマグネシウムの量を、石灰又は消石灰との制御された反応によって低減する請求項23に記載の製造方法。
【請求項31】
前記工程(b)の塩水中のマグネシウムの量を、石灰との制御された反応によって低減する請求項23に記載の製造方法。
【請求項32】
前記工程(b)の塩水中のカルシウムの量を、シュウ酸処理によって低減する請求項23に記載の製造方法。
【請求項33】
前記工程(b)の塩水中の硫酸塩の量を、バリウム処理によって低減する請求項23に記載の製造方法。
【請求項34】
前記工程(b)の塩水中のナトリウムの量を、分別結晶法によって低減する請求項23に記載の製造方法。
【請求項35】
前記塩水のpHを約11に調節する請求項23に記載の製造方法。
【請求項36】
前記塩水のpHを、鉄、カルシウム、及びマグネシウムの含有量に対して化学量論的に等量の水酸化リチウム及び炭酸リチウムを添加することによって調節する請求項23に記載の製造方法。
【請求項37】
前記塩水のpHを、請求項23に記載の製造方法による生成物として得られる水酸化リチウム及び炭酸リチウムを添加することによって調節する請求項23に記載の製造方法。
【請求項38】
前記塩水中のカルシウム及びマグネシウムの合計濃度を、イオン交換によって150ppb以下に低減する請求項23に記載の製造方法。
【請求項39】
前記電気分解の工程において、カチオンを選択的に通過させると共にアニオンの通過を阻止する半透膜を使用する請求項23に記載の製造方法。
【請求項40】
前記電気分解の工程において、両電極が高耐腐食性材料で構成されている請求項23に記載の製造方法。
【請求項41】
前記電気分解の工程において、両電極が被覆されたチタン及びニッケルで構成されている請求項23に記載の製造方法。
【請求項42】
前記電気分解の工程において、電気化学セルが「擬似ゼロギャップ」構成で配置されている請求項23に記載の製造方法。
【請求項43】
前記電気分解の工程において、単極膜セル、好ましくはIneos ChlorFM1500単極膜セル、又はその他の市販の単極膜セル、を使用する請求項23に記載の製造方法。
【請求項44】
前記電気分解の工程において、カソード側電極が、乱流の発生とガス放出とを促進するためのランタンブレード構成である請求項23に記載の製造方法。
【請求項45】
ナトリウムと場合によってはカリウムとを同時に含有するリチウム含有塩水を精製して、カルシウム及びマグネシウムの合計濃度を150ppbに低減する工程(a)と、
前記塩水を電気分解して、カルシウム及びマグネシウムを合計で150ppb以下だけ含有する水酸化リチウム溶液を、副産物としての塩素ガス及び水素ガスと共に産生する工程(b)と、
前記水酸化リチウム溶液を濃縮及び結晶化して、水酸化リチウム一水和物の結晶を産生する工程(c)と、
を有する水酸化リチウム一水和物の結晶の製造方法。
【請求項46】
ナトリウムと場合によってはカリウムとを同時に含有するリチウム含有塩水を精製して、カルシウム及びマグネシウムの合計濃度を150ppbに低減する工程(a)と、
前記塩水を電気分解して、カルシウム及びマグネシウムを合計で150ppb以下だけ含有する水酸化リチウム溶液を、副産物としての塩素ガス及び水素ガスと共に産生する工程(b)と、
過剰水素による前記塩素ガスの燃焼によって塩酸を産生する工程(c)と、
を有する塩酸の製造方法。
【請求項47】
ナトリウムと場合によってはカリウムとを同時に含有するリチウム含有塩水を精製して、カルシウム及びマグネシウムの合計濃度を150ppbに低減する工程(a)と、
前記塩水を電気分解して、カルシウム及びマグネシウムを合計で150ppb以下だけ含有する水酸化リチウム溶液を、副産物としての塩素ガス及び水素ガスと共に産生する工程(b)と、
前記水酸化リチウム溶液を濃縮及び結晶化して、水酸化リチウム一水和物の結晶を産生する工程(c)と、
過剰水素による前記塩素ガスの燃焼によって塩酸を産生する工程(d)と、
を有する水酸化リチウム一水和物及び塩酸の両方の製造方法。
【請求項48】
カルシウム及びマグネシウムを合計で150ppb以下、好ましくは合計で50ppb以下、最も好ましくは合計で15ppb以下、だけ含有する水酸化リチウム一水和物。
【請求項49】
カルシウム及びマグネシウムを合計で150ppb以下、好ましくは合計で50ppb以下、最も好ましくは合計で15ppb以下、だけ含有する含水水酸化リチウム。

【図1】
image rotate


【公表番号】特表2011−518257(P2011−518257A)
【公表日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−506259(P2011−506259)
【出願日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際出願番号】PCT/US2009/002227
【国際公開番号】WO2009/131628
【国際公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【出願人】(506153837)ケメタル・フット・コーポレイション (3)
【Fターム(参考)】