高純度L−カルチニンの調製方法
【課題】本願発明の目的は、S−エピクロロヒドリンから開始するL−カルニチンを合成する全工程におけるキラル材料とキラル中間体の含有量を検出しコントロールすることにより、L−カルニチンの純度が97%以上であり、D−カルニチンの含有量が2%以下である高純度L−カルニチンの調製方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】前記方法は、(1)GCおよびキラルカラムによりS−エピクロロヒドリンの光学異性体の含有量を検出し、S−エピクロロヒドリンの左旋性異性体の含有量を0%〜12%w/wの範囲内にコントロールする工程と、(2)合成工程において、中間体であるL−3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアミンの比旋光度を旋光計で検出し、該比旋光度を−26.0°〜−29.4°の範囲内にコントロールする工程と、(3)中間体混合物であるL−3−シアン−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアミンの光学的純度およびその右旋性異性体の含有量をキラル誘導体化試薬を使って検出し、前記右旋性異性体の含有量を0〜3.6%w/wの範囲内にコントロールする工程と、を有し、 前記キラル誘導体化試薬は、化学式(II)の光学的に純粋なD−もしくはL−化合物であり、前記化学式(II)のアスタリスクで示された炭素原子は、キラル炭素原子であり、Rは、C1〜C6の直鎖もしくは分岐鎖状のアルキル基、C6〜C10のアリール基、C2〜C6の直鎖もしくは分岐鎖状のアルケニルもしくはアルキニル基、またはC3〜C6のシクロアルキル基であり、Xは、ハロゲン原子を示す、高純度L−カルニチンの調製方法。
【課題を解決するための手段】前記方法は、(1)GCおよびキラルカラムによりS−エピクロロヒドリンの光学異性体の含有量を検出し、S−エピクロロヒドリンの左旋性異性体の含有量を0%〜12%w/wの範囲内にコントロールする工程と、(2)合成工程において、中間体であるL−3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアミンの比旋光度を旋光計で検出し、該比旋光度を−26.0°〜−29.4°の範囲内にコントロールする工程と、(3)中間体混合物であるL−3−シアン−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアミンの光学的純度およびその右旋性異性体の含有量をキラル誘導体化試薬を使って検出し、前記右旋性異性体の含有量を0〜3.6%w/wの範囲内にコントロールする工程と、を有し、 前記キラル誘導体化試薬は、化学式(II)の光学的に純粋なD−もしくはL−化合物であり、前記化学式(II)のアスタリスクで示された炭素原子は、キラル炭素原子であり、Rは、C1〜C6の直鎖もしくは分岐鎖状のアルキル基、C6〜C10のアリール基、C2〜C6の直鎖もしくは分岐鎖状のアルケニルもしくはアルキニル基、またはC3〜C6のシクロアルキル基であり、Xは、ハロゲン原子を示す、高純度L−カルニチンの調製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、高純度L−カルニチンの調製方法に関する。特に、前記方法は、キラル材料およびキラル中間体の含有量をモニタリングおよび調整することにより高純度L−カルニチンを調製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
L−カルニチンは、哺乳類動物の臓器に広く存在しており、また植物および微生物中にもいくらか存在している。L−カルニチンの主な薬理効果としては、長鎖脂肪酸をミトコンドリアに運搬し、それによって脂肪酸を酸化させ、エネルギーを生産することが挙げられる。L−カルニチンは、医薬品およびヘルスケア製品に広く使用されている。L−カルニチンは、1905年、GulewitschとKrimbergにより筋肉抽出液中から発見された。
【0003】
天然のカルニチンは、L−カルニチンだけであり、さらにL−カルニチンのみが生理的に活性である。現在の医薬品業界で使用されているL−カルニチンは、ほとんど、化学合成により得られている。利用する原料や合成作業によって左旋性のD−カルニチンも得られてしまうため、天然のL−カルニチンとは違い、完全に純粋なL−カルニチンを得ることは非常に難しい。D−カルニチンは、カルニチンアセチルトランスフェラーゼ(CAT)およびカルニチンパルミチルトランスフェラーゼ(PTC)の競合阻害剤である。そのため、DL−カルニチンを投与された患者のうち10%程が重症筋無力症になってしまう(Martindale:The Extra Pharmacopoeia (33th): 1356)。そのため、医薬品の安全性を考慮すると、化学合成工程におけるD−カルニチンの含有量を厳しくコントロールすることが必要である。
【0004】
1988年の特許出願公開S63−185947号には、キラルエピクロロヒドリンを四級アンモニウム塩に変え、その後シアン化し、加水分解し、そして脱ミネラルカ反応を介してL−カルニチンを得ることが記載されている。この方法では、L−カルニチンを調製するための出発原料が光学的に純粋であるため、キラル分離を行う必要がない。しかしながら、該特許は、キラル物質中の光学異性体の含有量についての示唆もなく、また最終物質におけるL−カルニチンおよびDカルニチンの含有量をどのように検出するかについての記載もない。
【0005】
特許「光学的に活性な四級アンモニウム塩の製造」(特許第3287567A号)では、キラルエピクロロヒドリンからL−3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアミンを製造することが記載され、さらにL−3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアミンが光学的に活性なカルニチンの中間体であることが示唆されているだけである。該特許は、L−3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアミンの光学活性については記載しているが、キラル材料中の光学異性体の含有量やそれを正確に検知する方法については記載していない。
【0006】
文献「L−(−)−カルニチンの合成」(Chinese Journal of Synthetic Chemistry, vol 12, 2004)には、L−3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアミンをキラルエピクロロヒドリンのアミン化により調製し、その後シアン化によりL−(−)−塩化−3−シアン−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアミンを調製し、最後にL−カルニチンを加水分解により得ることが詳細に記載されている。この間に、エピクロロヒドリンの正確な回転、中間体および最終生成物が検出されている。しかしながら、エピクロロヒドリン中の光学異性体の含有量、中間体および最終生成物の含有量についての記載はなく、さらにそれらの正確な検出についても記載がない。上述の方法は、純粋なL−カルニチンを製造するのにかなりのコストがかかってしまう。
【0007】
L−カルニチンの合成に関する他の報告(Chinese Journal of pharmaceuticals, 2006, 37(12))では、まず、キラル体サレン−CoIII複合体(2)([(R,R),N,N’−bis(3,5−di−tert−butylsalicylidene)−1,2−cyclohexanediamino(2−)]酢酸コバルト)の触媒作用によりラセミ体エピクロロヒドリンの加水分解を行い、S−エピクロロヒドリンを得て、アミノ化、シアン化、加水分解、およびイオン交換によりL−カルニチンを得ることが記載されている。これには、エピクロロヒドリン、中間体および最終生成物の比旋光度の検出のみが記載されていたが、エピクロロヒドリンの光学異性体、中間体および最終生成物の含有量もしくはそれらの正確な検出についての記載はなかった。さらには、コストを抑えつつL−カルニチンの純度を上げるコントロール方法についての記載はなかった。
【0008】
L−カルニチン中のD−カルニチンの含有量を検出する方法は以下の通りである。
誘導体化試薬(+)−FLEC((+)−1−(9−Fluoren)−ethyl chloroformate)をHPLCと組み合わせることによりD−カルニチンのL−カルニチン中における含有を検出したとJ.Pharm.Biomed. Anal.30(2002)209−218に報告されている。しかしながら、L−カルニチン産物中におけるD−カルニチンの含有量の検出は報告されているが、L−カルニチンを調製する際の出発原料および中間体における鏡像異性体の含有量を検出したものを報告したものはなく、L−カルニチンの純度を上げたり、コストを下げたりするのに使用できるコントロール方法についての報告もなかった。
【0009】
S−エピクロロヒドリンは、有機化学的合成もしくは生物学的変換により得られるため、光学異性体の含有量の正確な検出をせずに光学的回転を検出すると、L−カルニチンを調製する各段階において光学異性体の不純物をいくらか取り込んでしまう。全調製工程において、キラル分離が行われないため、最終生成物中に光学異性体の不純物が含まれてしまう可能性がある。さらに、L−カルニチンの調製には沢山の工程があるため、ラセミ体化も容易に起きてしまう。したがって、出発原料の異性体の含有量を正確に検出しコントロールすることと、各工程における中間体の光学的純度を正確に検出することは、最終生成物の光学的純度に作用するラセミ体化を保証するのに必要である。
【0010】
L−カルニチンの右旋性異性体は、人体に有害であるため、出発原料および中間体の光学的純度、さらに各工程における光学異性体の不純物の含有量をコントロールして、光学的純度の高いL−カルニチンを得る効果的な方法が求められている。これは、ヒトの健康を確実にし、さらに合成L−カルニチンの純度を向上するのに重要である。そして、環境保護のことを考慮しても、各合成工程の産物を確実にし、多数ある合成工程中の次の工程の中に予期せぬ中間体が混入するのを防ぐことで、汚染工程を減らし、さらに「三種類汚染」(“three waste”)の処理にかかる費用を減らす。エネルギー節約や排出量削減の観点からも重要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本願発明の目的は、S−エピクロロヒドリンから開始するL−カルニチンを合成する全工程におけるキラル材料とキラル中間体の含有量を検出しコントロールすることにより、L−カルニチンの純度が97%以上であり、D−カルニチンの含有量が2%以下である高純度L−カルニチンの調製方法を提供することである。
前記方法は、
(1)GCおよびキラルカラムによりS−エピクロロヒドリンの光学異性体の含有量を検出し、S−エピクロロヒドリンの左旋性異性体の含有量を0%〜12%w/wの範囲内にコントロールする工程と、
(2)合成工程において、中間体であるL−3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアミンの比旋光度を旋光計で検出し、該比旋光度を−26.0°〜−29.4°の範囲内にコントロールする工程と、
(3)中間体混合物であるL−3−シアン−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアミンの光学的純度およびその右旋性異性体の含有量をキラル誘導体化試薬を使って検出し、前記右旋性異性体の含有量を0〜3.6%w/wの範囲内にコントロールする工程と、を有し、
前記キラル誘導体化試薬は、化学式(II)の光学的に純粋なD−もしくはL−化合物であり、前記化学式(II)のアスタリスクで示された炭素原子は、キラル炭素原子であり、Rは、C1〜C6の直鎖もしくは分岐鎖状のアルキル基、C6〜C10のアリール基、C2〜C6の直鎖もしくは分岐鎖状のアルケニルもしくはアルキニル基、またはC3〜C6のシクロアルキル基であり、Xは、ハロゲン原子を示す、高純度L−カルニチンの調製方法。
【0012】
【化1】
【0013】
好ましい実施形態において、本願発明は、化学式(II)の光学的に純粋な化合物を提供し、前記化学式(II)のRは、メチル、エチル、イソプロピル、ブチル、もしくはベンジルであり、Xは、ClもしくはBrである。
【0014】
さらに好ましくは、本願発明の化学式(II)の光学的に純粋な化合物は、結晶固体である。前記結晶固体は、好ましくは、(+)α−メチル−6−メトキシ−2−ナフチルアセチル塩化物、(−)α−メチル−6−メトキシ−2−ナフチルアセチル塩化物、(+)α−メチル−6−エトキシ−2−ナフチルアセチル塩化物、(−)α−メチル−6−エトキシ−ナフチルアセチル塩化物から選択される。
【0015】
さらに好ましくは、本願発明の化学式(II)の光学的に純粋な化合物は、(+)α−メチル−6−メトキシ−2−ナフチルアセチル塩化物、(+)α−メチル−6−エトキシ−2−ナフチルアセチル塩化物およびその結晶から選択される。
【0016】
好ましい実施形態では、本願発明の工程(3)において、L−3−シアノ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムの光学的純度とその右旋性異性体の含有量の検出は;
(一)誘導体化試薬の調製:化学式(II)の光学的に純粋なD−型もしくはL−型化合物を溶媒に溶かして、暗下において0.01〜100mg/ml溶液を調製する工程と、
(二)テスト溶液の調製:適量のL−3−シアン−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムのサンプルを塩酸により加水分解し、pHの値が中性になるまでアンモニア水を加える工程と、
(三)コントロール溶液の調製:適量のラセミ体カルニチンを使ってコントロール溶液を調製する工程と、
(四)誘導体化反応:適量の化学式(II)の光学的に純粋な誘導体化試薬をL−カルニチン(もしくはD−カルニチン)のテスト溶液とカルニチンコントロール溶液と混ぜる工程と、を含む。上述の工程(一)の誘導体化試薬を、上述の工程(二)のテスト溶液と上述の工程(三)のコントロール溶液とそれぞれ溶媒の存在下で20℃〜95℃において反応させ、L−カルニチンおよびD−カルニチン誘導体を製造する;
(五)上述の工程(四)のテスト溶液およびコントロール溶液中のL−カルニチンおよびD−カルニチンの含有量を、HPLCにより検出し、それによりL−異性体L−3−シアノ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムおよびD−異性体D−3−シアノ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムの含有量を算出する。
【0017】
S−エピクロロヒドリンから開始するL−カルニチンの合成技術(下記の化学反応Iに示すように)は、異なる調製工程において、いくつもの重要な品質管理を提供しており、そのためL−カルニチンの光学的純度を上げ、さらに有害なD−カルニチンの含有量を減少させ、コストを下げることが出来る。
【0018】
1.GCカラムおよびキラルカラムによりS−エピクロロヒドリンの光学異性体の含有量を検出し、S−エピクロロヒドリンの左旋性異性体の含有量を0%〜12%w/wの範囲にコントロールすることにより、L−カルニチンの純度を97%以上とし、D−カルニチンの含有量を2%以下とする。
【0019】
2.合成工程におけるL−3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアミンの中間体の比旋光度を旋光計を使って−26.0°〜−29.4°の範囲内にコントロールすることにより、L−カルニチンの含有量を97%以上とし、D−カルニチンの含有量を2%以下とする。
【0020】
3.L−3−シアン−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアミンの光学的純度と、キラル誘導体化試薬を使ってその右旋性異性体の含有量を検出し、右旋性異性体の含有量を0〜3.6%w/wの範囲内にコントロールすることにより、L−カルニチンの含有量を97%以上とし、D−カルニチンの含有量を2%以下とする。
【0021】
本願発明におけるL−カルニチンの生成技術:
トリメチルアミン塩酸塩のアミノ化によりL−第四級アンモニウム塩(L−クロロ−3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアミン)を製造するのに利用されるS−エピクロロヒドリンから開始し、次に第四級アンモニウム塩をNaCNによりシアン化してL−シアン化物(L−クロロ−3−シアン−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアミン)を製造し、そして該シアン化物を濃縮塩酸により加水分解してL−カルニチン塩酸塩を製造し、最後に該L−カルニチン塩酸塩を脱塩電気分解、濃縮、精製してL−カルニチンを製造する。
【0022】
本願発明のL−カルニチン合成は、L−第四級アンモニウムもしくはL−シアン化物から開始する上述の工程と同じ工程を含む。
【0023】
【化2】
【0024】
本願発明は、キラル誘導体化試薬、ガスクロマトグラフィーおよびキラルカラムを使用して、S−エピクロロヒドリンの光学的純度を精密に検出する。特に好ましいキラルカラムは、ZKAT社のZTキラルカラム(0.25 x 0.5 x 20で、製造番号08−01−001)であり、注入口の温度は120〜180℃で、カラムの温度は80〜100℃で、検出器の温度は200〜240℃で、キャリアガスはスプリット比が4:1の窒素ガスである。
【0025】
化学式(II)の光学的に純粋な化合物は、好ましくは結晶固体である。特定の濃度を持つ化学式(II)の光学的に純粋な化合物の溶液も使用できる。溶媒は、エーテル、プロピルエーテル、テトラヒドロフラン、アセトン、メチルエチルケトン、アセトニトリル、プロピオニトリル、酢酸エチル、n―ヘキサン、ジクロロメタン、クロロホルム、もしくは前述の溶媒の2種以上の混合物から選択される。該溶液の濃度は、0.01〜100mg/mlである。特に好ましくは、該溶媒は、アセトニトリルで、該溶液の濃度は、1〜10mg/mlである。
【0026】
本願発明は、L−3−シアノ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムの光学的純度と中間体混合物中のそのD−異性体の含有量の検出について記しており、該検出の方法は、下記の工程を含む。
【0027】
(一)誘導体化試薬溶液の調製:化学式(II)のD−型もしくはL−型の光学的に純粋な化合物を上述の溶媒に溶かして、暗下で0.01〜100mg/mlの溶液を調製する。好ましくは、化学式(II)の光学的に純粋な化合物は、(+)α−メチル−6−メトキシ−2−ナフチルアセチル塩化物であり、溶媒は、アセトニトリルであり、溶液の濃度は、1〜10mg/mlである。
【0028】
(二)テスト溶液の調製:適量のL−3−シアノ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムのサンプルを塩酸により加水分解する。好ましくは、ニトリルと30%HClの質量/体積の比は、27.5g:40mlである。混合物を70〜80℃で5時間加熱し、その後室温まで冷却し、そしてpHの値が中性になるまでアンモニア水を添加して調整する。
【0029】
(三)コントロール溶液の調製:適量のラセミ体カルニチンを使用してコントロール溶液を調製する。
【0030】
(四)誘導体化反応:適量の化学式(II)の光学的に純粋な誘導体化試薬をL−カルニチン(もしくはD−カルニチン)テスト溶液およびカルニチンコントロール溶液と混ぜる。上述の工程(一)の誘導体化試薬を、上述の工程(二)のテスト溶液と上述の工程(三)のコントロール溶液とをそれぞれ溶媒の存在下で20℃〜95℃において反応させ、L−カルニチンもしくはD−カルニチン誘導体を製造する。
【0031】
(五)HPLC検出:上述の(四)工程のテスト溶液およびコントロール溶液中のL−カルニチンおよびD−カルニチンの含有量をHPLCにより検出し、それによりL−異性体L−3−シアノ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムおよびD−異性体D−3−シアノ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムの含有量を計算する。
【0032】
本願発明は、最終生成物のL−カルニチンおよびD−カルニチンの含有量をキラルHPLC法および誘導体化試薬を使って検出することを記載しており、テストサンプルは加水分解をすることなくテスト溶液を作成するために直接溶かされている。
【0033】
異なる調製工程における重要な品質管理に使われる高純度L−カルニチンの調製方法は、高純度L−カルニチンを提供するのに使われており、これによりL−カルニチンの含有量は97%以上であり、D−カルニチンの含有量は2%以下である。そのため、L−カルニチンの合成工程において作られる人体に有害なD−カルニチン不純物を効果的にコントロールできるだけでなく、製造コストを著しく下げることができ、また出発原料および不純物および反応物の生成物を正確にコントロールできることから生成物の品質管理も向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】図1は、ラセミ体エピクロロヒドリンの光学的純度を検出しているクロマトグラムを示す。
【図2】図2は、Shenzheng YaWang−kangli社のS−エピクロロヒドリンの光学的純度を検出しているガスクロマトグラムを示す。
【図3】図3は、Hai Keli bio−pharm社のS−エピクロロヒドリンの光学的純度を検出しているガスクロマトグラムである。
【図4】図4は、10%のラセミ体が添加されたエピクロロヒドリンの光学的純度を検出しているガスクロマトグラムである。
【図5】図5は、20%のラセミ体が添加されたエピクロロヒドリンの光学的純度を検出しているガスクロマトグラムである。
【図6】図6は、Shenzheng社のS−エピクロロヒドリンから調製されたL−カルニチンのD−異性体のHPLCを示す。
【図7】図7は、Shanghai社のS−エピクロロヒドリンから調製されたL−カルニチンのD−異性体のHPLCを示す。
【実施例】
【0035】
以下に記載の実施例は本願発明を説明するだけであって、本願発明はこれに限定されない。
【0036】
実施例1:ガスクロマトグラフィーによりエピクロロヒドリンの光学的純度の検出方法を確立する。
(1)ガスクロマトグラフィーカラムを選択する。
該方法の確立に際して、異なる製造業者からのキラルカラムをテストした。表1に使用した異なるカラムを記載する。
【0037】
【表1】
【0038】
上記のテストを比較すると、Atech Technology Co.,LtdのZTキラルカラムだけが、右旋性エピクロロヒドリンから左旋性エピクロロヒドリンを分離できることがわかった。分離度は1.87であり、これは要件をみたしている。
【0039】
Atech Technology Co.,LtdのZTキラルカラムのパラメーターを以下に記載する:
Atech Technology Co.,LtdからZTキラルカラムを購入した。最高使用温度は、200℃である;
固定液は、ZKAT−chiral B;実行標準(execution standard)は、Q/ZKAT01−2005;製造番号は08−01−001;製品番号は802103−4である。
【0040】
(2)クロマトグラフィーの条件
注入温度は、150℃;カラム温度は、85℃;検出温度は、220℃;キャリアガスは、N2;注入口圧力は、0.04MPa(15.9ml/min);メイクアップガス(make−up gas)は、0.12MPa;H2は、0.1MPa;空気は、0.08MPa;分流速度は、47ml/min(気泡流量計での測定による);スプリット比は、4:1;サンプルの濃度としては、サンプルはエーテルにより250倍に薄める;サンプル量は1μl。
【0041】
(3)検出限界
ラセミ体エピクロロヒドリンは除去され、0.004μl/ml、0.008μl/ml、0.016μl/ml、0.024μl/ml、0.032μl/mlの濃度を有する5つのサンプル溶液がエーテルを使って調製され、それらを順に検出した。
【0042】
0.032μl/mlの(R)−エピクロロヒドリンのクロマトグラフィーのSNRの結果は、3:1であった。すなわち、(R)−エピクロロヒドリンの検出限界は、0.016μl/mlだった。サンプル量が1μlだったため、検出限界は1.6x10−5μlであった。
【0043】
実施例2:中間体(L−3−シアノ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウム)のD−異性体の含有量の検出
L−3−シアノ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウム(27.5mg)を正確に計量し、100mlの容量測定のフラスコに入れ、30%塩酸(40μl)を加えた。75℃で5時間加水分解を行った後、アンモニウム水をpHが7.0になるまで滴下し、水を加えて溶解した。10mlの溶液をピペットで正確に採取し、100mlの容量測定用のフラスコに入れ、水を加えた。このようにしてテスト溶液を作成した。
【0044】
DL−カルニチン(20mg)を正確に計量し、100mlの容量測定用のフラスコに入れ、水を加えた。1mlの溶液をピペットで正確に採取し、100mlの容量測定用のフラスコに入れ、水を加えた。このようにして、コントロール溶液を作成した。
【0045】
コントロール溶液(30μl)とテスト溶液(5ml)をピペットで採取し、茶色の容量測定用フラスコにそれぞれいれた。そして、それぞれに0.05mol/lのカーボネート緩衝液(pH=10.3)を30μl、ピリジンアセトニトリル溶液を100μl(1mlのアセトニトリルが5μlのピリジンを含む)、0.5%の誘導体化試薬を100μlを加えてから、混合した。その後、密閉し、60℃の水槽で90分間反応させた後、取り出してから計量のために0.05mol/lの酢酸緩衝液(pH=4.0)で希釈し、濾過した。得られたテストサンプルおよびコントロールサンプル10μlをピペットで正確に採取し、液体クロマトグラフに注入した。クロマトグラムを記録し、D−異性体の含有量を外部標準法およびピーク面積法により算出した。
【0046】
HPLC検出法は以下の通りである:
アジレント社1100HPLC;蛍光検出器;カラムは、C18−ODSカラム(4.6x150mm、5μm);フロー速度は、1ml/min;移動相は、トリエチルアミン緩衝液(8mlのリン酸と15mlのトリエチルアミンと1500mlの水とをpHが5.4になるように調節)−テトラヒドロフラン(THF)の混合液;グラジエント時間は、下記の表2に示す:
【0047】
【表2】
【0048】
L−3−シアノ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムのD−異性体の含有量は表3に示すように検出された。
【0049】
【表3】
【0050】
実施例3:異なる光学的純度を持つS−エピクロロヒドリンから開始するL−カルニチンの調製
工程1:L−3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムの調製
まず、実施例1に記載の方法にしたがってS−エピクロロヒドリンのL−異性体の含有量を検出した。
【0051】
次に、トリメチルアミン溶液(60g)を250mlの三つ口フラスコに入れてから混ぜて10〜20℃に冷却し、S−エピクロロヒドリン(35g)を滴下した後に混ぜて10〜20℃で2〜4時間置いた。そして、反応温度を30〜70℃に上げて、そのまま2〜4時間保持し、減圧下で適量になるまで蒸発させ、凍結により結晶化し、その後乾燥させて、収率89.0%、融点212.0℃〜215.6℃のL−3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウム(55.2g)を得た。旋光度は、旋光計で検出した。
【0052】
工程二:L−3−シアノ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムの調製
L−3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウム(50g)を250mlの三つ口フラスコに入れ、H2O(40ml)に溶解させ、30〜70℃に加熱し、シアン化ナトリウム(48g)を滴下し、70℃で4時間保持し、減圧下で蒸発させ、0℃以下で凍結してから乾燥させて、収率92.1%、融点252.8℃〜253.4℃のL−3−シアノ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムを得た。
【0053】
工程三:L−カルニチンの調製
L−3−シアノ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウム(27.5g)と30%塩酸(40ml)を250mlのフラスコに加え、70℃〜80℃に加熱し、5時間保持した。その後、余分な塩酸を70℃の減圧下で蒸発させ、残留物を20℃に冷却し、20%アンモニウム(20g)を加えてから、0℃に冷却し、塩化アンモニウムを濾過により取り除いた。その後、活性炭素(3g)を加え、脱色、脱塩し、減圧下で乾燥させるために蒸発させて、その後エタノール(50ml)を添加し、50〜80℃で1時間還流し、20℃に冷却し、アセトンを滴下(125ml)し、ろ過し乾燥させて、収率75.4%のL−カルニチン産物(18.6g)を生成する。
【0054】
結果:
異なる光学的純度を持つS−エピクロロヒドリンから調製されたL−カルニチンの実験データを表4に示す。
【0055】
【表4】
【0056】
異なる光学的純度を持つS−エピクロロヒドリンのS−光学異性体およびR−光学異性体の含有量は、図1〜5に示されている。L−カルニチンの右旋性異性体のHPLCは図6〜7に示されている。
【0057】
図1〜5に関するデータを表5〜9に示す。
【0058】
【表5】
【0059】
【表6】
【0060】
【表7】
【0061】
【表8】
【0062】
【表9】
【0063】
実施例4:L−3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムからL−カルニチンを調製する
異なる光学的純度を持つL−3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムから実施例3の工程二に従ってL−カルニチンを調製した。実験データを表10に示す。
【0064】
【表10】
【0065】
実施例5:L−3−シアノ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムからのL−カルニチンを調製する
異なる光学的純度を持つL−3−シアノ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムから実施例3の工程三に従ってL−カルニチンを調製した。実験データを表11に示す。
【0066】
【表11】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、高純度L−カルニチンの調製方法に関する。特に、前記方法は、キラル材料およびキラル中間体の含有量をモニタリングおよび調整することにより高純度L−カルニチンを調製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
L−カルニチンは、哺乳類動物の臓器に広く存在しており、また植物および微生物中にもいくらか存在している。L−カルニチンの主な薬理効果としては、長鎖脂肪酸をミトコンドリアに運搬し、それによって脂肪酸を酸化させ、エネルギーを生産することが挙げられる。L−カルニチンは、医薬品およびヘルスケア製品に広く使用されている。L−カルニチンは、1905年、GulewitschとKrimbergにより筋肉抽出液中から発見された。
【0003】
天然のカルニチンは、L−カルニチンだけであり、さらにL−カルニチンのみが生理的に活性である。現在の医薬品業界で使用されているL−カルニチンは、ほとんど、化学合成により得られている。利用する原料や合成作業によって左旋性のD−カルニチンも得られてしまうため、天然のL−カルニチンとは違い、完全に純粋なL−カルニチンを得ることは非常に難しい。D−カルニチンは、カルニチンアセチルトランスフェラーゼ(CAT)およびカルニチンパルミチルトランスフェラーゼ(PTC)の競合阻害剤である。そのため、DL−カルニチンを投与された患者のうち10%程が重症筋無力症になってしまう(Martindale:The Extra Pharmacopoeia (33th): 1356)。そのため、医薬品の安全性を考慮すると、化学合成工程におけるD−カルニチンの含有量を厳しくコントロールすることが必要である。
【0004】
1988年の特許出願公開S63−185947号には、キラルエピクロロヒドリンを四級アンモニウム塩に変え、その後シアン化し、加水分解し、そして脱ミネラルカ反応を介してL−カルニチンを得ることが記載されている。この方法では、L−カルニチンを調製するための出発原料が光学的に純粋であるため、キラル分離を行う必要がない。しかしながら、該特許は、キラル物質中の光学異性体の含有量についての示唆もなく、また最終物質におけるL−カルニチンおよびDカルニチンの含有量をどのように検出するかについての記載もない。
【0005】
特許「光学的に活性な四級アンモニウム塩の製造」(特許第3287567A号)では、キラルエピクロロヒドリンからL−3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアミンを製造することが記載され、さらにL−3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアミンが光学的に活性なカルニチンの中間体であることが示唆されているだけである。該特許は、L−3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアミンの光学活性については記載しているが、キラル材料中の光学異性体の含有量やそれを正確に検知する方法については記載していない。
【0006】
文献「L−(−)−カルニチンの合成」(Chinese Journal of Synthetic Chemistry, vol 12, 2004)には、L−3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアミンをキラルエピクロロヒドリンのアミン化により調製し、その後シアン化によりL−(−)−塩化−3−シアン−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアミンを調製し、最後にL−カルニチンを加水分解により得ることが詳細に記載されている。この間に、エピクロロヒドリンの正確な回転、中間体および最終生成物が検出されている。しかしながら、エピクロロヒドリン中の光学異性体の含有量、中間体および最終生成物の含有量についての記載はなく、さらにそれらの正確な検出についても記載がない。上述の方法は、純粋なL−カルニチンを製造するのにかなりのコストがかかってしまう。
【0007】
L−カルニチンの合成に関する他の報告(Chinese Journal of pharmaceuticals, 2006, 37(12))では、まず、キラル体サレン−CoIII複合体(2)([(R,R),N,N’−bis(3,5−di−tert−butylsalicylidene)−1,2−cyclohexanediamino(2−)]酢酸コバルト)の触媒作用によりラセミ体エピクロロヒドリンの加水分解を行い、S−エピクロロヒドリンを得て、アミノ化、シアン化、加水分解、およびイオン交換によりL−カルニチンを得ることが記載されている。これには、エピクロロヒドリン、中間体および最終生成物の比旋光度の検出のみが記載されていたが、エピクロロヒドリンの光学異性体、中間体および最終生成物の含有量もしくはそれらの正確な検出についての記載はなかった。さらには、コストを抑えつつL−カルニチンの純度を上げるコントロール方法についての記載はなかった。
【0008】
L−カルニチン中のD−カルニチンの含有量を検出する方法は以下の通りである。
誘導体化試薬(+)−FLEC((+)−1−(9−Fluoren)−ethyl chloroformate)をHPLCと組み合わせることによりD−カルニチンのL−カルニチン中における含有を検出したとJ.Pharm.Biomed. Anal.30(2002)209−218に報告されている。しかしながら、L−カルニチン産物中におけるD−カルニチンの含有量の検出は報告されているが、L−カルニチンを調製する際の出発原料および中間体における鏡像異性体の含有量を検出したものを報告したものはなく、L−カルニチンの純度を上げたり、コストを下げたりするのに使用できるコントロール方法についての報告もなかった。
【0009】
S−エピクロロヒドリンは、有機化学的合成もしくは生物学的変換により得られるため、光学異性体の含有量の正確な検出をせずに光学的回転を検出すると、L−カルニチンを調製する各段階において光学異性体の不純物をいくらか取り込んでしまう。全調製工程において、キラル分離が行われないため、最終生成物中に光学異性体の不純物が含まれてしまう可能性がある。さらに、L−カルニチンの調製には沢山の工程があるため、ラセミ体化も容易に起きてしまう。したがって、出発原料の異性体の含有量を正確に検出しコントロールすることと、各工程における中間体の光学的純度を正確に検出することは、最終生成物の光学的純度に作用するラセミ体化を保証するのに必要である。
【0010】
L−カルニチンの右旋性異性体は、人体に有害であるため、出発原料および中間体の光学的純度、さらに各工程における光学異性体の不純物の含有量をコントロールして、光学的純度の高いL−カルニチンを得る効果的な方法が求められている。これは、ヒトの健康を確実にし、さらに合成L−カルニチンの純度を向上するのに重要である。そして、環境保護のことを考慮しても、各合成工程の産物を確実にし、多数ある合成工程中の次の工程の中に予期せぬ中間体が混入するのを防ぐことで、汚染工程を減らし、さらに「三種類汚染」(“three waste”)の処理にかかる費用を減らす。エネルギー節約や排出量削減の観点からも重要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本願発明の目的は、S−エピクロロヒドリンから開始するL−カルニチンを合成する全工程におけるキラル材料とキラル中間体の含有量を検出しコントロールすることにより、L−カルニチンの純度が97%以上であり、D−カルニチンの含有量が2%以下である高純度L−カルニチンの調製方法を提供することである。
前記方法は、
(1)GCおよびキラルカラムによりS−エピクロロヒドリンの光学異性体の含有量を検出し、S−エピクロロヒドリンの左旋性異性体の含有量を0%〜12%w/wの範囲内にコントロールする工程と、
(2)合成工程において、中間体であるL−3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアミンの比旋光度を旋光計で検出し、該比旋光度を−26.0°〜−29.4°の範囲内にコントロールする工程と、
(3)中間体混合物であるL−3−シアン−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアミンの光学的純度およびその右旋性異性体の含有量をキラル誘導体化試薬を使って検出し、前記右旋性異性体の含有量を0〜3.6%w/wの範囲内にコントロールする工程と、を有し、
前記キラル誘導体化試薬は、化学式(II)の光学的に純粋なD−もしくはL−化合物であり、前記化学式(II)のアスタリスクで示された炭素原子は、キラル炭素原子であり、Rは、C1〜C6の直鎖もしくは分岐鎖状のアルキル基、C6〜C10のアリール基、C2〜C6の直鎖もしくは分岐鎖状のアルケニルもしくはアルキニル基、またはC3〜C6のシクロアルキル基であり、Xは、ハロゲン原子を示す、高純度L−カルニチンの調製方法。
【0012】
【化1】
【0013】
好ましい実施形態において、本願発明は、化学式(II)の光学的に純粋な化合物を提供し、前記化学式(II)のRは、メチル、エチル、イソプロピル、ブチル、もしくはベンジルであり、Xは、ClもしくはBrである。
【0014】
さらに好ましくは、本願発明の化学式(II)の光学的に純粋な化合物は、結晶固体である。前記結晶固体は、好ましくは、(+)α−メチル−6−メトキシ−2−ナフチルアセチル塩化物、(−)α−メチル−6−メトキシ−2−ナフチルアセチル塩化物、(+)α−メチル−6−エトキシ−2−ナフチルアセチル塩化物、(−)α−メチル−6−エトキシ−ナフチルアセチル塩化物から選択される。
【0015】
さらに好ましくは、本願発明の化学式(II)の光学的に純粋な化合物は、(+)α−メチル−6−メトキシ−2−ナフチルアセチル塩化物、(+)α−メチル−6−エトキシ−2−ナフチルアセチル塩化物およびその結晶から選択される。
【0016】
好ましい実施形態では、本願発明の工程(3)において、L−3−シアノ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムの光学的純度とその右旋性異性体の含有量の検出は;
(一)誘導体化試薬の調製:化学式(II)の光学的に純粋なD−型もしくはL−型化合物を溶媒に溶かして、暗下において0.01〜100mg/ml溶液を調製する工程と、
(二)テスト溶液の調製:適量のL−3−シアン−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムのサンプルを塩酸により加水分解し、pHの値が中性になるまでアンモニア水を加える工程と、
(三)コントロール溶液の調製:適量のラセミ体カルニチンを使ってコントロール溶液を調製する工程と、
(四)誘導体化反応:適量の化学式(II)の光学的に純粋な誘導体化試薬をL−カルニチン(もしくはD−カルニチン)のテスト溶液とカルニチンコントロール溶液と混ぜる工程と、を含む。上述の工程(一)の誘導体化試薬を、上述の工程(二)のテスト溶液と上述の工程(三)のコントロール溶液とそれぞれ溶媒の存在下で20℃〜95℃において反応させ、L−カルニチンおよびD−カルニチン誘導体を製造する;
(五)上述の工程(四)のテスト溶液およびコントロール溶液中のL−カルニチンおよびD−カルニチンの含有量を、HPLCにより検出し、それによりL−異性体L−3−シアノ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムおよびD−異性体D−3−シアノ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムの含有量を算出する。
【0017】
S−エピクロロヒドリンから開始するL−カルニチンの合成技術(下記の化学反応Iに示すように)は、異なる調製工程において、いくつもの重要な品質管理を提供しており、そのためL−カルニチンの光学的純度を上げ、さらに有害なD−カルニチンの含有量を減少させ、コストを下げることが出来る。
【0018】
1.GCカラムおよびキラルカラムによりS−エピクロロヒドリンの光学異性体の含有量を検出し、S−エピクロロヒドリンの左旋性異性体の含有量を0%〜12%w/wの範囲にコントロールすることにより、L−カルニチンの純度を97%以上とし、D−カルニチンの含有量を2%以下とする。
【0019】
2.合成工程におけるL−3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアミンの中間体の比旋光度を旋光計を使って−26.0°〜−29.4°の範囲内にコントロールすることにより、L−カルニチンの含有量を97%以上とし、D−カルニチンの含有量を2%以下とする。
【0020】
3.L−3−シアン−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアミンの光学的純度と、キラル誘導体化試薬を使ってその右旋性異性体の含有量を検出し、右旋性異性体の含有量を0〜3.6%w/wの範囲内にコントロールすることにより、L−カルニチンの含有量を97%以上とし、D−カルニチンの含有量を2%以下とする。
【0021】
本願発明におけるL−カルニチンの生成技術:
トリメチルアミン塩酸塩のアミノ化によりL−第四級アンモニウム塩(L−クロロ−3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアミン)を製造するのに利用されるS−エピクロロヒドリンから開始し、次に第四級アンモニウム塩をNaCNによりシアン化してL−シアン化物(L−クロロ−3−シアン−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアミン)を製造し、そして該シアン化物を濃縮塩酸により加水分解してL−カルニチン塩酸塩を製造し、最後に該L−カルニチン塩酸塩を脱塩電気分解、濃縮、精製してL−カルニチンを製造する。
【0022】
本願発明のL−カルニチン合成は、L−第四級アンモニウムもしくはL−シアン化物から開始する上述の工程と同じ工程を含む。
【0023】
【化2】
【0024】
本願発明は、キラル誘導体化試薬、ガスクロマトグラフィーおよびキラルカラムを使用して、S−エピクロロヒドリンの光学的純度を精密に検出する。特に好ましいキラルカラムは、ZKAT社のZTキラルカラム(0.25 x 0.5 x 20で、製造番号08−01−001)であり、注入口の温度は120〜180℃で、カラムの温度は80〜100℃で、検出器の温度は200〜240℃で、キャリアガスはスプリット比が4:1の窒素ガスである。
【0025】
化学式(II)の光学的に純粋な化合物は、好ましくは結晶固体である。特定の濃度を持つ化学式(II)の光学的に純粋な化合物の溶液も使用できる。溶媒は、エーテル、プロピルエーテル、テトラヒドロフラン、アセトン、メチルエチルケトン、アセトニトリル、プロピオニトリル、酢酸エチル、n―ヘキサン、ジクロロメタン、クロロホルム、もしくは前述の溶媒の2種以上の混合物から選択される。該溶液の濃度は、0.01〜100mg/mlである。特に好ましくは、該溶媒は、アセトニトリルで、該溶液の濃度は、1〜10mg/mlである。
【0026】
本願発明は、L−3−シアノ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムの光学的純度と中間体混合物中のそのD−異性体の含有量の検出について記しており、該検出の方法は、下記の工程を含む。
【0027】
(一)誘導体化試薬溶液の調製:化学式(II)のD−型もしくはL−型の光学的に純粋な化合物を上述の溶媒に溶かして、暗下で0.01〜100mg/mlの溶液を調製する。好ましくは、化学式(II)の光学的に純粋な化合物は、(+)α−メチル−6−メトキシ−2−ナフチルアセチル塩化物であり、溶媒は、アセトニトリルであり、溶液の濃度は、1〜10mg/mlである。
【0028】
(二)テスト溶液の調製:適量のL−3−シアノ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムのサンプルを塩酸により加水分解する。好ましくは、ニトリルと30%HClの質量/体積の比は、27.5g:40mlである。混合物を70〜80℃で5時間加熱し、その後室温まで冷却し、そしてpHの値が中性になるまでアンモニア水を添加して調整する。
【0029】
(三)コントロール溶液の調製:適量のラセミ体カルニチンを使用してコントロール溶液を調製する。
【0030】
(四)誘導体化反応:適量の化学式(II)の光学的に純粋な誘導体化試薬をL−カルニチン(もしくはD−カルニチン)テスト溶液およびカルニチンコントロール溶液と混ぜる。上述の工程(一)の誘導体化試薬を、上述の工程(二)のテスト溶液と上述の工程(三)のコントロール溶液とをそれぞれ溶媒の存在下で20℃〜95℃において反応させ、L−カルニチンもしくはD−カルニチン誘導体を製造する。
【0031】
(五)HPLC検出:上述の(四)工程のテスト溶液およびコントロール溶液中のL−カルニチンおよびD−カルニチンの含有量をHPLCにより検出し、それによりL−異性体L−3−シアノ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムおよびD−異性体D−3−シアノ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムの含有量を計算する。
【0032】
本願発明は、最終生成物のL−カルニチンおよびD−カルニチンの含有量をキラルHPLC法および誘導体化試薬を使って検出することを記載しており、テストサンプルは加水分解をすることなくテスト溶液を作成するために直接溶かされている。
【0033】
異なる調製工程における重要な品質管理に使われる高純度L−カルニチンの調製方法は、高純度L−カルニチンを提供するのに使われており、これによりL−カルニチンの含有量は97%以上であり、D−カルニチンの含有量は2%以下である。そのため、L−カルニチンの合成工程において作られる人体に有害なD−カルニチン不純物を効果的にコントロールできるだけでなく、製造コストを著しく下げることができ、また出発原料および不純物および反応物の生成物を正確にコントロールできることから生成物の品質管理も向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】図1は、ラセミ体エピクロロヒドリンの光学的純度を検出しているクロマトグラムを示す。
【図2】図2は、Shenzheng YaWang−kangli社のS−エピクロロヒドリンの光学的純度を検出しているガスクロマトグラムを示す。
【図3】図3は、Hai Keli bio−pharm社のS−エピクロロヒドリンの光学的純度を検出しているガスクロマトグラムである。
【図4】図4は、10%のラセミ体が添加されたエピクロロヒドリンの光学的純度を検出しているガスクロマトグラムである。
【図5】図5は、20%のラセミ体が添加されたエピクロロヒドリンの光学的純度を検出しているガスクロマトグラムである。
【図6】図6は、Shenzheng社のS−エピクロロヒドリンから調製されたL−カルニチンのD−異性体のHPLCを示す。
【図7】図7は、Shanghai社のS−エピクロロヒドリンから調製されたL−カルニチンのD−異性体のHPLCを示す。
【実施例】
【0035】
以下に記載の実施例は本願発明を説明するだけであって、本願発明はこれに限定されない。
【0036】
実施例1:ガスクロマトグラフィーによりエピクロロヒドリンの光学的純度の検出方法を確立する。
(1)ガスクロマトグラフィーカラムを選択する。
該方法の確立に際して、異なる製造業者からのキラルカラムをテストした。表1に使用した異なるカラムを記載する。
【0037】
【表1】
【0038】
上記のテストを比較すると、Atech Technology Co.,LtdのZTキラルカラムだけが、右旋性エピクロロヒドリンから左旋性エピクロロヒドリンを分離できることがわかった。分離度は1.87であり、これは要件をみたしている。
【0039】
Atech Technology Co.,LtdのZTキラルカラムのパラメーターを以下に記載する:
Atech Technology Co.,LtdからZTキラルカラムを購入した。最高使用温度は、200℃である;
固定液は、ZKAT−chiral B;実行標準(execution standard)は、Q/ZKAT01−2005;製造番号は08−01−001;製品番号は802103−4である。
【0040】
(2)クロマトグラフィーの条件
注入温度は、150℃;カラム温度は、85℃;検出温度は、220℃;キャリアガスは、N2;注入口圧力は、0.04MPa(15.9ml/min);メイクアップガス(make−up gas)は、0.12MPa;H2は、0.1MPa;空気は、0.08MPa;分流速度は、47ml/min(気泡流量計での測定による);スプリット比は、4:1;サンプルの濃度としては、サンプルはエーテルにより250倍に薄める;サンプル量は1μl。
【0041】
(3)検出限界
ラセミ体エピクロロヒドリンは除去され、0.004μl/ml、0.008μl/ml、0.016μl/ml、0.024μl/ml、0.032μl/mlの濃度を有する5つのサンプル溶液がエーテルを使って調製され、それらを順に検出した。
【0042】
0.032μl/mlの(R)−エピクロロヒドリンのクロマトグラフィーのSNRの結果は、3:1であった。すなわち、(R)−エピクロロヒドリンの検出限界は、0.016μl/mlだった。サンプル量が1μlだったため、検出限界は1.6x10−5μlであった。
【0043】
実施例2:中間体(L−3−シアノ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウム)のD−異性体の含有量の検出
L−3−シアノ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウム(27.5mg)を正確に計量し、100mlの容量測定のフラスコに入れ、30%塩酸(40μl)を加えた。75℃で5時間加水分解を行った後、アンモニウム水をpHが7.0になるまで滴下し、水を加えて溶解した。10mlの溶液をピペットで正確に採取し、100mlの容量測定用のフラスコに入れ、水を加えた。このようにしてテスト溶液を作成した。
【0044】
DL−カルニチン(20mg)を正確に計量し、100mlの容量測定用のフラスコに入れ、水を加えた。1mlの溶液をピペットで正確に採取し、100mlの容量測定用のフラスコに入れ、水を加えた。このようにして、コントロール溶液を作成した。
【0045】
コントロール溶液(30μl)とテスト溶液(5ml)をピペットで採取し、茶色の容量測定用フラスコにそれぞれいれた。そして、それぞれに0.05mol/lのカーボネート緩衝液(pH=10.3)を30μl、ピリジンアセトニトリル溶液を100μl(1mlのアセトニトリルが5μlのピリジンを含む)、0.5%の誘導体化試薬を100μlを加えてから、混合した。その後、密閉し、60℃の水槽で90分間反応させた後、取り出してから計量のために0.05mol/lの酢酸緩衝液(pH=4.0)で希釈し、濾過した。得られたテストサンプルおよびコントロールサンプル10μlをピペットで正確に採取し、液体クロマトグラフに注入した。クロマトグラムを記録し、D−異性体の含有量を外部標準法およびピーク面積法により算出した。
【0046】
HPLC検出法は以下の通りである:
アジレント社1100HPLC;蛍光検出器;カラムは、C18−ODSカラム(4.6x150mm、5μm);フロー速度は、1ml/min;移動相は、トリエチルアミン緩衝液(8mlのリン酸と15mlのトリエチルアミンと1500mlの水とをpHが5.4になるように調節)−テトラヒドロフラン(THF)の混合液;グラジエント時間は、下記の表2に示す:
【0047】
【表2】
【0048】
L−3−シアノ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムのD−異性体の含有量は表3に示すように検出された。
【0049】
【表3】
【0050】
実施例3:異なる光学的純度を持つS−エピクロロヒドリンから開始するL−カルニチンの調製
工程1:L−3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムの調製
まず、実施例1に記載の方法にしたがってS−エピクロロヒドリンのL−異性体の含有量を検出した。
【0051】
次に、トリメチルアミン溶液(60g)を250mlの三つ口フラスコに入れてから混ぜて10〜20℃に冷却し、S−エピクロロヒドリン(35g)を滴下した後に混ぜて10〜20℃で2〜4時間置いた。そして、反応温度を30〜70℃に上げて、そのまま2〜4時間保持し、減圧下で適量になるまで蒸発させ、凍結により結晶化し、その後乾燥させて、収率89.0%、融点212.0℃〜215.6℃のL−3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウム(55.2g)を得た。旋光度は、旋光計で検出した。
【0052】
工程二:L−3−シアノ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムの調製
L−3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウム(50g)を250mlの三つ口フラスコに入れ、H2O(40ml)に溶解させ、30〜70℃に加熱し、シアン化ナトリウム(48g)を滴下し、70℃で4時間保持し、減圧下で蒸発させ、0℃以下で凍結してから乾燥させて、収率92.1%、融点252.8℃〜253.4℃のL−3−シアノ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムを得た。
【0053】
工程三:L−カルニチンの調製
L−3−シアノ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウム(27.5g)と30%塩酸(40ml)を250mlのフラスコに加え、70℃〜80℃に加熱し、5時間保持した。その後、余分な塩酸を70℃の減圧下で蒸発させ、残留物を20℃に冷却し、20%アンモニウム(20g)を加えてから、0℃に冷却し、塩化アンモニウムを濾過により取り除いた。その後、活性炭素(3g)を加え、脱色、脱塩し、減圧下で乾燥させるために蒸発させて、その後エタノール(50ml)を添加し、50〜80℃で1時間還流し、20℃に冷却し、アセトンを滴下(125ml)し、ろ過し乾燥させて、収率75.4%のL−カルニチン産物(18.6g)を生成する。
【0054】
結果:
異なる光学的純度を持つS−エピクロロヒドリンから調製されたL−カルニチンの実験データを表4に示す。
【0055】
【表4】
【0056】
異なる光学的純度を持つS−エピクロロヒドリンのS−光学異性体およびR−光学異性体の含有量は、図1〜5に示されている。L−カルニチンの右旋性異性体のHPLCは図6〜7に示されている。
【0057】
図1〜5に関するデータを表5〜9に示す。
【0058】
【表5】
【0059】
【表6】
【0060】
【表7】
【0061】
【表8】
【0062】
【表9】
【0063】
実施例4:L−3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムからL−カルニチンを調製する
異なる光学的純度を持つL−3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムから実施例3の工程二に従ってL−カルニチンを調製した。実験データを表10に示す。
【0064】
【表10】
【0065】
実施例5:L−3−シアノ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムからのL−カルニチンを調製する
異なる光学的純度を持つL−3−シアノ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムから実施例3の工程三に従ってL−カルニチンを調製した。実験データを表11に示す。
【0066】
【表11】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
S−エピクロロヒドリンから開始するL−カルニチンを合成する全工程におけるキラル体およびキラル中間体の含有量を検出およびコントロールすることにより、L−カルニチンの純度を97%以上とし、さらにD−カルニチンの純度を2%以下とする高純度L−カルニチンの調製方法であって
(1)ガスクロマトグラフィー(GC)およびキラルカラムによりS−エピクロロヒドリンの光学異性体の含有量を検出し、S−エピクロロヒドリンの左旋性異性体の含有量を0%〜12%w/wの範囲内にコントロールする工程と、
(2)合成工程において、中間体であるL−3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアミンの比旋光度を旋光計で検出し、該比旋光度を−26.0°〜−29.4°の範囲内にコントロールする工程と、
(3)中間体混合物であるL−3−シアン−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアミンの光学的純度およびその右旋性異性体の含有量をキラル誘導体化試薬を使って検出し、前記右旋性異性体の含有量を0〜3.6%w/wの範囲内にコントロールする工程と、を有し、
前記キラル誘導体化試薬は、化学式(II)の光学的に純粋なD−もしくはL−化合物であり、
【化1】
前記化学式(II)のアスタリスクで示された炭素原子は、キラル炭素原子であり、
Rは、C1〜C6の直鎖もしくは分岐鎖状のアルキル基、C6〜C10のアリール基、C2〜C6の直鎖もしくは分岐鎖状のアルケニルもしくはアルキニル基、またはC3〜C6のシクロアルキル基であり、
Xは、ハロゲン原子を示す、高純度L−カルニチンの調製方法。
【請求項2】
前記光学的に純粋な化学式(II)の化合物のRがメチル、エチル、イソプロピル、ブチル、もしくはベンジルであり、XがClまたはBrである請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記光学的に純粋な化学式(II)は、結晶固体である請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記光学的に純粋な化学式(II)は、(+)α−メチル−6−メトキシ−2−ナフチルアセチル塩化物、(−)α−メチル−6−メトキシ−2−ナフチルアセチル塩化物、(+)α−メチル−6−エトキシ−2−ナフチルアセチル塩化物、および(−)α−メチル−6−エトキシ−2−ナフチルアセチル塩化物から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記光学的に純粋な化学式(II)は、(+)α−メチル−6−メトキシ−2−ナフチルアセチル塩化物である請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記誘導体化試薬を溶媒に溶解して濃度が0.01〜100mg/mlの溶液を作成し、前記溶媒は、エーテル、プロピルエーテル、テトラヒドロフラン、アセトン、メチルエチルケトン、アセトニトリル、プロピオニトリル、酢酸エチル、n−ヘキサン、ジクロロメタン、クロロホルム、もしくはそれらの2以上の混合物から選択される請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記溶媒はアセトニトリルであり、濃度は1〜10mg/mlである請求項6に記載の方法。
【請求項8】
請求項1に記載の方法であって、前記L−3−シアノ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムの光学的純度およびそのD−異性体の含有量を検出する工程(3)は、
(一)化学式(II)の光学的に純粋なD−型もしくはL−型化合物を溶媒に溶解して0.01〜100mg/mlの溶液を暗下で調製して、誘導体化試薬を調製する工程と、
(二)適量のL−3−シアノ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムのサンプルを塩酸により加水分解し、さらにその後pHが中性になるまでアンモニア水を添加してテスト溶液を調製する工程と、
(三)適量のラセミ体カルニチンを使用してコントロール溶液を調製する工程と、
(四)適量の化学式(II)の光学的に純粋な誘導体化試薬をL−カルニチン(もしくはD−カルニチン)テスト溶液およびカルニチンコントロール溶液と混合することにより、20℃〜95℃の溶媒の存在下において、前記工程(一)の前記誘導体化試薬が前記工程(二)の前記テスト溶液と前記工程(三)の前記コントロール溶液とそれぞれ反応し、L−カルニチンおよびD−カルニチン誘導体を生成する誘導体化反応工程と、
(五)前記工程(四)の前記テスト溶液および前記コントロール溶液中のL−カルニチンおよびD−カルニチンの含有量をHPLCを使って検出することにより、L−異性体L−3−シアノ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムおよびD−異性体D−3−シアノ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムの含有量を算出する工程と、を有する方法。
【請求項1】
S−エピクロロヒドリンから開始するL−カルニチンを合成する全工程におけるキラル体およびキラル中間体の含有量を検出およびコントロールすることにより、L−カルニチンの純度を97%以上とし、さらにD−カルニチンの純度を2%以下とする高純度L−カルニチンの調製方法であって
(1)ガスクロマトグラフィー(GC)およびキラルカラムによりS−エピクロロヒドリンの光学異性体の含有量を検出し、S−エピクロロヒドリンの左旋性異性体の含有量を0%〜12%w/wの範囲内にコントロールする工程と、
(2)合成工程において、中間体であるL−3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアミンの比旋光度を旋光計で検出し、該比旋光度を−26.0°〜−29.4°の範囲内にコントロールする工程と、
(3)中間体混合物であるL−3−シアン−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアミンの光学的純度およびその右旋性異性体の含有量をキラル誘導体化試薬を使って検出し、前記右旋性異性体の含有量を0〜3.6%w/wの範囲内にコントロールする工程と、を有し、
前記キラル誘導体化試薬は、化学式(II)の光学的に純粋なD−もしくはL−化合物であり、
【化1】
前記化学式(II)のアスタリスクで示された炭素原子は、キラル炭素原子であり、
Rは、C1〜C6の直鎖もしくは分岐鎖状のアルキル基、C6〜C10のアリール基、C2〜C6の直鎖もしくは分岐鎖状のアルケニルもしくはアルキニル基、またはC3〜C6のシクロアルキル基であり、
Xは、ハロゲン原子を示す、高純度L−カルニチンの調製方法。
【請求項2】
前記光学的に純粋な化学式(II)の化合物のRがメチル、エチル、イソプロピル、ブチル、もしくはベンジルであり、XがClまたはBrである請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記光学的に純粋な化学式(II)は、結晶固体である請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記光学的に純粋な化学式(II)は、(+)α−メチル−6−メトキシ−2−ナフチルアセチル塩化物、(−)α−メチル−6−メトキシ−2−ナフチルアセチル塩化物、(+)α−メチル−6−エトキシ−2−ナフチルアセチル塩化物、および(−)α−メチル−6−エトキシ−2−ナフチルアセチル塩化物から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記光学的に純粋な化学式(II)は、(+)α−メチル−6−メトキシ−2−ナフチルアセチル塩化物である請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記誘導体化試薬を溶媒に溶解して濃度が0.01〜100mg/mlの溶液を作成し、前記溶媒は、エーテル、プロピルエーテル、テトラヒドロフラン、アセトン、メチルエチルケトン、アセトニトリル、プロピオニトリル、酢酸エチル、n−ヘキサン、ジクロロメタン、クロロホルム、もしくはそれらの2以上の混合物から選択される請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記溶媒はアセトニトリルであり、濃度は1〜10mg/mlである請求項6に記載の方法。
【請求項8】
請求項1に記載の方法であって、前記L−3−シアノ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムの光学的純度およびそのD−異性体の含有量を検出する工程(3)は、
(一)化学式(II)の光学的に純粋なD−型もしくはL−型化合物を溶媒に溶解して0.01〜100mg/mlの溶液を暗下で調製して、誘導体化試薬を調製する工程と、
(二)適量のL−3−シアノ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムのサンプルを塩酸により加水分解し、さらにその後pHが中性になるまでアンモニア水を添加してテスト溶液を調製する工程と、
(三)適量のラセミ体カルニチンを使用してコントロール溶液を調製する工程と、
(四)適量の化学式(II)の光学的に純粋な誘導体化試薬をL−カルニチン(もしくはD−カルニチン)テスト溶液およびカルニチンコントロール溶液と混合することにより、20℃〜95℃の溶媒の存在下において、前記工程(一)の前記誘導体化試薬が前記工程(二)の前記テスト溶液と前記工程(三)の前記コントロール溶液とそれぞれ反応し、L−カルニチンおよびD−カルニチン誘導体を生成する誘導体化反応工程と、
(五)前記工程(四)の前記テスト溶液および前記コントロール溶液中のL−カルニチンおよびD−カルニチンの含有量をHPLCを使って検出することにより、L−異性体L−3−シアノ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムおよびD−異性体D−3−シアノ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムの含有量を算出する工程と、を有する方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【公表番号】特表2012−505258(P2012−505258A)
【公表日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−531328(P2011−531328)
【出願日】平成21年10月9日(2009.10.9)
【国際出願番号】PCT/CN2009/001122
【国際公開番号】WO2010/043110
【国際公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【出願人】(511093292)チャンジョウ マリティプル ディメンジョン インスティテュート オブ インダストリー テクノロジー カンパニー,リミテッド (2)
【氏名又は名称原語表記】CHANGZHOU MULTIPLE DIMENSION INSTITUTE OF INDUSTRY TECHNOLOGY CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】Jiaxin Huayuan A−1704,No.18 Hengshan Road,Xinbei Changzhou,Jiangsu 213022,CHINA
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年10月9日(2009.10.9)
【国際出願番号】PCT/CN2009/001122
【国際公開番号】WO2010/043110
【国際公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【出願人】(511093292)チャンジョウ マリティプル ディメンジョン インスティテュート オブ インダストリー テクノロジー カンパニー,リミテッド (2)
【氏名又は名称原語表記】CHANGZHOU MULTIPLE DIMENSION INSTITUTE OF INDUSTRY TECHNOLOGY CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】Jiaxin Huayuan A−1704,No.18 Hengshan Road,Xinbei Changzhou,Jiangsu 213022,CHINA
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]