説明

高脱水機構付スクリュープレス

【課題】 脱水ケーキをスクリュープレスに連動させて更に加圧脱水する高脱水機構付スクリュープレスの改良に関する。
【解決手段】 脱水ケーキをケーキシュート(16)に排出するスクリュープレス(1)において、トラフ状に形成したケーキシュート(16)の下部に撹拌装置(18)を配設し、ケーキシュート(16)の下端開口部(16a)に一対の通水性を有するプレスロール(22、23)を対設し、プレスロール(22、23)の回転をスクリュー軸(4)の回転数に同調させるので、撹拌装置(18)で脱水ケーキを解砕して内部の水分を漏出させ、プレスロール(22、23)に均一に供給して更に加圧して、低含水率の均一なケーキとなり、高脱水性を発揮する。そして、季節による処理量の変動や汚泥性状の変化に伴いスクリュー軸(4)とプレスロール(22、23)回転速度を切替えて、汚泥の処理量と脱水ケーキの含水率の調整が行なえる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、下水、し尿、あるいは食品生産加工廃水等の有機性汚泥を圧搾脱水するスクリュープレスに関し、特に、脱水ケーキをスクリュープレスに連動させて更に加圧脱水する高脱水機構付スクリュープレスの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のクリュープレスは、難ろ過性の有機性汚泥に凝集剤を添加してフロックを生成させて圧搾脱水している。スクリュープレスの始端部に供給した汚泥は、スクリュー羽根で搬送する間に外筒スクリーンからろ液を分離し、脱水ケーキを他端の排出口から取り出すようにしている。スクリュープレスは脱水ケーキの含水率を低下させるために排出口に押圧板を対設し、脱水ケーキの排出圧力に対応して押圧板を移動して圧搾圧力の調整を行っている。従来のスクリュープレスで高圧搾が行える脱水ケーキの含水率の範囲は、下水処理汚泥の脱水ケーキでは含水率は74〜83%、し尿処理汚泥の脱水ケーキでは含水率は83〜84%、食品工場排水処理汚泥の脱水ケーキでは含水率は80〜84%である。スクリュープレスの排出口の押圧板による圧搾圧力の増加は、ケーキ含水率の低減効果を発揮するが、スクリュー羽根の終端部でケーキの詰り現象が発生する。無理に搬送できたとしても、スクリーンから固形物が漏れて回収率が悪くなる。その課題を解決するために、スクリュー軸に加わるスラスト荷重及びトルクを検出して、排出口の開口率を最適条件とするスクリュープレス型圧搾機は、特許文献1に記載してあるように公知である。また、一対の透水性のロールを使用して懸濁液を直接処理するプレスロールにおいて、一対の透過性プレスロールをケーシングに配設し、懸濁液を超過圧力で供給して、プレスロールの透過性外郭表面を通過させ、材料をプレスロールの表面に付着させる脱水装置は、例えば、特許文献2に記載してあるように公知である。
【特許文献1】特公平7−12554号公報(段落番号0022、図1)
【特許文献2】特表平10−510761号公報(発明の詳細な説明、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記のスクリュープレス型圧搾機は、脱水ケーキの含水率が一定となり、ケーキ含水率の低減効果が得られ、固形物の回収率も良くなるが、やはり、圧搾圧力を高くするとスクリュー羽根の終端部でのケーキの詰り現象が発生し、脱水ケーキの含水率には限界がある。懸濁液を直接処理するプレスロールは、パルプスラリーなどのろ過性の良い原液では、ろ液を迅速に処理できるものであるが、難ろ過性の有機性の汚泥や濃度の低い懸濁液の処理では、大量処理は不可能であり、含水率にも限界があり、有機性汚泥の脱水には不向きである。この発明は、上記の従来技術を応用して、ケーキ含水率の低減効果と汚泥の大量処理を可能とする高脱水機構付スクリュープレスを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この発明に係る高脱水機構付スクリュープレスは、外筒スクリーンとスクリュー羽根を巻き掛けたスクリュー軸でろ過室を形成し、ろ過室の始端部に供給した汚泥を、スクリュー羽根で移送しながらろ液を分離して、ろ過室の終端部から脱水ケーキをケーキシュートに排出するスクリュープレスにおいて、トラフ状に形成したケーキシュートの下部に撹拌装置を配設し、ケーキシュートの下端開口部に一対の通水性を有するプレスロールを対設し、プレスロールの回転をスクリュー羽根の回転数に同調させるもので、スクリュープレスからの脱水ケーキを撹拌装置で解砕して、ケーキ内部の水分を漏出させ、プレスロールに均一に供給して更に加圧するので、低含水率の均一なケーキとなり、高脱水性を発揮する。また、季節による処理量の変動や汚泥性状の変化に伴いスクリュー軸とプレスロールの回転速度を切替えて、汚泥の処理量と脱水ケーキの含水率の調整が行なえる。そして、スクリュー軸の回転数に同調してプレスロールが回転するので、スクリュープレスから排出される脱水ケーキがプレスロールの上面に堆積することがない。
【0005】
脱水ケーキを加圧するプレスロールの構造は、円周溝を形成して底部に通孔を有するサポートろ過筒の外周に、多孔板を張設したもので、ケーキを加圧しながらろ液をサポートろ過筒の内部に流入させて、分離ろ液は端部及び下部から排出されて、ケーキ含水率の低減効果が得られ、固形物の回収率が良くなる。スクリュープレスに連動させて更に脱水ケーキを加圧脱水する手段は、プレスロールの下面に当接するスクレーパと、洗浄管を配設するろ液受を対設し、一方のプレスロールを支架する一対の支持板にスクレーパとろ液受を支架させると共に、支持板の一端に空気スプリングを連結し、他端を枢着して、一対のプレスロールの間隙を調節可能としたもので、高脱水性のケーキが得られる。そして、空気スプリングで一対のプレスロールの間隙を調整しても、可動側のプレスロールに追従してスクレーパと洗浄管が移動して、プレスロールに対するスクレーパの接触度合いと洗浄距離が変わることがない。
【0006】
ケーキシュートに過度に堆積する脱水ケーキの対応は、撹拌装置の上方のケーキシュートにレベルセンサーを配設し、プレスロールの回転を増加させ、或いは空気スプリングの空気圧を低下させて一対のプレスロールの間隙を広くして、圧搾ケーキの排出を早めるもので、スクリュープレスから排出される脱水ケーキがケーキシュートに過度に堆積することがなく、撹拌装置で解砕して、均一に脱水ケーキをプレスロールに供給できるので、故障の原因となることもない。
【発明の効果】
【0007】
この発明は上記のように構成してあり、プレスロールの回転をスクリュー軸の回転数に同調させるので、脱水ケーキの排出量が変動してもプレスロールが追従し、含水率が均一な低含水率のケーキとなり、高脱水性を発揮する。ケーキシュートに堆積する脱水ケーキは、プレスロールの間隙と回転速度を調整すれば、季節による汚泥量の増加や汚泥性状の変動に対応できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
この発明の実施例を図面に基づき詳述すると、先ず、図1はスクリュープレスの縦断面図であって、スクリュープレス1は、外筒スクリーン2の内部にスクリュー羽根3を巻き掛けたスクリュー軸4が回転自在に配設してあり、外筒スクリーン2とスクリュー軸4との間のろ過室5を汚泥の供給側からケーキの排出側に向って縮小させてある。スクリュー軸4の始端部に形成した原液供給路6の原液供給孔7がろ過室5に開口してある。図2はスクリュープレスの排出側の概念図であって、スクリュー軸4の後端部に連結したスクリュー駆動軸8にスプロケット9が嵌着してあり、スプロケット9にスクリュー駆動機10が連動連結してある。スクリュー軸4の回転速度は処理量と脱水ケーキ含水率の調整のため可変速操作が必要であり、スクリュー駆動機10はインバーターモーターを使用している。スクリュープレス1のろ過室5に凝集汚泥を供給する汚泥供給ポンプ(図示せず)は、圧入圧力を検知してポンプ吐出量を制御する圧入圧力一定制御としてある。スクリュープレス1の脱水性能は、汚泥の種類や汚泥性状、特に汚泥濃度と粗繊維成分含有率に大きく影響されるため、汚泥供給ポンプは定量性のある吐出量可変型の一軸ネジ式ポンプを使用して、圧入圧力を切替られるようにしてある。
【0009】
図1に示すように、ろ過室5の後端側にエアーシリンダー11に連結した背圧調整用の押圧板12が配設してあり、フレーム13に支架したガイド軸14に押圧板12を摺動自在に吊設してある。エアーシリンダー11は押圧板12を移動させて、ろ過室5のケーキの排出口15のクリアランスを調節させる。 図1に示すように、汚泥供給ポンプでろ過室5に圧入した凝集汚泥は、濃縮ゾーンAでは、圧入圧力により濃縮されながらスクリュー羽根3により搬送される。ろ過ゾーンBでは、濃縮汚泥は容積変化とスクリュー羽根3によるスラスト力を受けて内部圧力を上昇させながら圧搾脱水される。圧搾ゾーンCでは、押圧板12の背圧とスクリュー羽根3によるスラスト力と剪断力により圧搾脱水される。
【0010】
スクリュープレス1の排出口15のクリアランスは、汚泥性状の変動により、脱水ケーキの含水率が高いと狭くなり、脱水ケーキの含水率が低いと間隙が広くなる。図示を省略するが均一な水分の脱水ケーキを得るために、エアーシリンダー11のピストンの摺動位置を検出し、エアーシリンダー11への圧入圧を調整し、排出口15のクリアランスに合わせて押圧板12の移動を調節して脱水ケーキをケーキシュート16に取出すようにしてある。また、スクリュー軸4の回転数を操作することにより、凝集汚泥の処理量と脱水ケーキの含水率の調整ができ、汚泥の処理・処分方法や有効利用用途・プロセスに応じて脱水ケーキの設定が可能となる。符号17は、外筒スクリーン2の下方に配設したろ液受トラフ17である。図1に示すように、スクリュープレス1の排出口15に配設したケーキシュート16の下部をトラフ状に形成して、その内部の長手方向に拡散用の撹拌装置18が配設してある。図2はケーキシュートに配設した撹拌装置の正面図であって、撹拌装置18は、フレームに支架した撹拌軸19に中心部から左右に逆方向に巻き掛けた撹拌羽根20が止着してあり、脱水ケーキを解砕しながら均一に左右に分散させる。撹拌軸19の端部に嵌着したスプロケット21に独自のモーター(図示せず)を連動連結してあり、スクリュープレス1の排出口15から落下してくる脱水ケーキを解砕し、ケーキの内部に保水する水分を漏出させながら撹拌し、均等に左右に分散させる。
【0011】
図3はケーキシュートの下端開口部に配設したプレスロールの拡大図であって、撹拌装置18を配設したケーキシュート16の下端開口部16aに、一対の通水性を有するプレスロール22、23が配設してあり、撹拌装置18から均等に供給する脱水ケーキを更に加圧脱水する。図4及び図5は、プレスロールの要部拡大図であって、プレスロール22、23は、円周溝24aを形成して底部に通孔24bを有するサポートろ過筒24の外周面に多孔板25が張設してあり、サポートろ過筒24の両端部の複数の支持杆24c・・・でサポートロール26に支架してある。一対のプレスロール22、23の対設面の下方にケーキ排出シュート27を配設し、プレスロール22、23にスクレーパ28、28を摺接させて、加圧脱水したケーキをプレスロール22、23から剥離してケーキ排出シュート27に排出させる。プレスロール22、23の下方にろ液受29、29が配設してあり、ろ液受29、29の内部に支架した洗浄管30、30がプレスロール22、23に対設してあり、目詰まりしたプレスロール22、23の多孔板25に高圧水を噴射して、プレスロール22、23を再生する。一方のプレスロール22を支架する一対の支持板31、31にスクレーパ28と洗浄管30を内接したろ液受29が支架してあり、支持板31、31の一端に空気スプリング32を連結して他端を回動自在に枢着してある。空気スプリング32で一方のプレスロール22を揺動させて、固定した他方のプレスロール23との間隙を調節する。
【0012】
図2に示すように、プレスロール22、23を支架するサポートロール26、26の端部にギヤー33、33が嵌着してあり、ギヤー33、33の間に配設したロール駆動機34で互いに逆回転させる。一対のプレスロール22、23に破砕ケーキを食込ませ、プレスロール22、23で加圧した加圧ケーキをスクレーパ28で剥離して、ケーキ排出シュート27から排出させる。プレスロール22、23でケーキを加圧して分離したろ液を、サポートろ過筒24の内部に排水し、サポートろ過筒24の側端、或いは下側の通孔24bからプレスロール22、23の外部に取出して、ろ液受29から排水する。プレスロール22、23が目詰まりした時には、洗浄管30から洗浄水を噴射して、プレスロール22、23のろ過面を再生させる。
【0013】
季節変動による処理量と脱水ケーキ含水率の調整のために、スクリュー軸4の回転速度をスクリュー駆動機10で可変速操作を行い、スクリュー軸4の回転数に対応してプレスロール22、23のロール駆動機34を操作する。スクリュー羽根3の回転数に同調させて、プレスロール22、23の回転を増減させ、撹拌装置18の上部のケーキシュート16にケーキが堆積しないようにしてある。ケーキシュート16の上部にレベルセンサー35が配設してあり、過剰に堆積した脱水ケーキを検知した時に、プレスロール22、23の回転数を所定時間増加させる。また、空気スプリング32の空気圧を低下させて一対のプレスロール22、23の間隙を広くして、プレスロール22、23で挟圧する加圧ケーキの排出を早めてもよいものである。
【産業上の利用可能性】
【0014】
この発明に係る高脱水機構付スクリュープレスは、季節による処理量の変動や汚泥性状の変化に伴い回転速度を切替えるスクリュー軸の回転数に同調してプレスロールの回転を切り替えるので、脱水ケーキの排出量に対応して、プレスロールが追従し、高脱水性を発揮して均一な低含水率のケーキとなる。そして、ケーキシュートの脱水ケーキの堆積量に応じて、プレスロールの間隙と回転速度を調整できるので、汚泥の処理量と脱水ケーキの含水率の調整が行なえる。従って、下水、し尿、あるいは食品生産加工廃水等の有機性汚泥を圧搾脱水に適する高脱水機構付スクリュープレスとなる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】この発明に係る高脱水機構付スクリュープレスの縦断面図である。
【図2】同じく、ケーキシュートに配設した撹拌装置の正面図である。
【図3】同じく、ケーキシュートの下端開口部に配設したプレスロールの拡大図である。
【図4】同じく、プレスロールの要部縦断面図である。
【図5】同じく、プレスロールの要部横断面図である。
【符号の説明】
【0016】
2 外筒スクリーン
3 スクリュー羽根
4 スクリュー軸
5 ろ過室
16 ケーキシュート
18 撹拌装置
16a 下端開口部
22、23 プレスロール
24 サポートろ過筒
24a 円周溝
24b 通孔
25 多孔板
28 スクレーパ
29 ろ液受
30 洗浄管
31 支持板
32 空気スプリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外筒スクリーン(2)とスクリュー羽根(3)を巻き掛けたスクリュー軸(4)でろ過室(5)を形成し、ろ過室(5)の始端部に供給した汚泥を、スクリュー羽根(3)で移送しながらろ液を分離して、ろ過室(5)の終端部から脱水ケーキをケーキシュート(16)に排出するスクリュープレスにおいて、トラフ状に形成したケーキシュート(16)の下部に撹拌装置(18)を配設し、ケーキシュート(16)の下端開口部(16a)に一対の通水性を有するプレスロール(22、23)を対設し、プレスロール(22、23)の回転をスクリュー軸(4)の回転数に同調させることを特徴とする高脱水機構付スクリュープレス。
【請求項2】
上記プレスロール(22、23)は、円周溝(24a)を形成して底部に通孔(24b)を有するサポートろ過筒(24)の外周に、多孔板(25)を張設してあることを特徴とする請求項1に記載の高脱水機構付スクリュープレス。
【請求項3】
上記プレスロール(22、23)の下面に当接するスクレーパ(28、28)と、洗浄管(30)を配設するろ液受(29)を対設し、一方のプレスロール(22)を支架する一対の支持板(31、31)にスクレーパ(28)とろ液受(29)を支架させると共に、支持板(31)の一端に空気スプリング(32)を連結し、他端を枢着して、一対のプレスロール(22、23)の間隙を調節可能としたことを特徴とする請求項1又は2に記載の高脱水機構付スクリュープレス。
【請求項4】
上記撹拌装置(18)の上方のケーキシュート(16)にレベルセンサー(35)を配設し、プレスロール(22、23)の回転を増加させ、或いは空気スプリング(32)の空気圧を低下させて一対のプレスロール(22、23)の間隙を広くして、圧搾ケーキの排出を早めることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の高脱水機構付スクリュープレス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−769(P2008−769A)
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−170901(P2006−170901)
【出願日】平成18年6月21日(2006.6.21)
【出願人】(000197746)株式会社石垣 (116)
【Fターム(参考)】