説明

高設栽培床装置

【課題】 簡単な構造で低コストにより、有効栽培面積を効率的に形成し得ると同時に設置スペースを小さくして小規模ハウスでも大きな栽培収量を期待できる高設栽培床装置を提供する。
【解決手段】 高設栽培床装置において、支持用の複数の縦パイプと、横架アームの長手方向に間隔をあけて複数個が横架アームに直角状に配置され、培地シートと液受シートを間隙を設けて2層に撓ませた状態で、上面側で支持するように中央部がU字状に曲成された追加U字状アームであり、一部が2本の基本横架アームのうちの1つのアームの胴側部に着脱可能に嵌合するアーム嵌合部と、他部が複数の縦パイプ中の1つに差込嵌合する差込嵌合部と、を有する追加U字状アームと、追加U字状アームの差込嵌合部側において2本の基本横架アームに平行な状態で追加U字状アームに一体的に連結された追加横架アームと、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、野菜、果物等の栽培床に関し、特に、培地を地上より高位に設置して野菜、果物等の育成、栽培作業性を向上させる高設栽培床装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近時、培地を地上より高位に設置して野菜、果物等の育成、栽培作業時の労力軽減、培地管理等を有利に行える高架式栽培床、すなわち高設栽培床が注目され単位収量を見込めるハウス栽培などにも適合して導入が進められつつある。従来、特許文献1、2において、高設栽培床についての提案がなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−281832号公報
【特許文献2】特開平11−275953号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の高設栽培方法及び装置は、地上から高位において平行に設定された水平棒により倍土を装填した倍土シートおよびその下方に配置した貯水シートを両シート間に間隙を設けた態様で2層状に弛ませて支持し、その際の貯水シートを部分的に透明にするとともに、透明部分を開閉可能に遮光シートで覆った構造であり、これによって、作物の根の発育振りを遮光シートを開いて直接肉眼で見ることができるようにし、さらに水量確認を行えるようにしようと企図するものである。この特許文献1の装置は、遮光シートにより貯水シート中の植物の根に光が極力当たらないようにすることが可能であるが、この特許文献1の装置では、平行に支持された2本の水平棒間に一条の栽培床を形成するものであり、育成者の例えば腰近くの高さに倍土があって植え付けや育成管理などの作業を行ないやすいものの一条のみの栽培床であるから、2本の水平棒により培土の幅を一定にして設置面積を小さくし省スペース化を行っているわりには、有効な栽培面積を確保できにくいという問題があった。これに対し、特許文献2の図2において、栽培ベッドを2個あるいは多数個並べた複数連式の栽培ベッドを有する栽培装置が提案されているが、この特許文献2の装置では、結局、2本のアームによる1つの栽培ベッドを隣接配置したにすぎず、ベッド間の間隙部分のスペースが必要で実際に設置した状態では占有面積が大きくなり、また、ベッド間に空調用ダクトを配設するので、それらの機器を含めたメンテナンス作業、設置コストが高く、空調不要のベッドで安価で収量を期待できる栽培床の出現が待望されていた。
【0005】
本発明は上記従来の課題に鑑みてなされたものであり、その一つの目的は、簡単な構造で低コストにより、複数条の栽培床を幅方向に連続して設けることができ、有効栽培面積を効率的に形成し得ると同時に設置スペースを小さくして小規模ハウスでも大きな栽培収量を期待できる高設栽培床装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明は、地上より高位に平行に横架させた2本の横架アーム間に培地シートを下方に撓ませてその上面に装填した培地とともに支持させ、培地シートとの間に間隙を設けて培地シートからさらに下方に撓ませて同アーム間に液受シートを支持させた高設栽培床装置において、2本の基本横架アーム2a、2b間隙に対応した間隔で横架アームの長手方向と直交する方向に列状に配置され地上側から縦に支持された複数の縦パイプ9a、9b・・・と、横架アーム2の長手方向に間隔をあけて複数個が横架アームに直角状に配置され、培地シート3と液受シート5を間隙を設けて2層に撓ませた状態で、上面側で支持するように中央部がU字状に曲成された追加U字状アームであり、一部が2本の基本横架アーム2a、2bのうちの1つのアーム2bの胴側部に着脱可能に嵌合するアーム嵌合部30と、他部が複数の縦パイプ中の1つに差込嵌合する差込嵌合部32と、を有する追加U字状アーム22と、追加U字状アーム22の差込嵌合部32側において2本の基本横架アーム2a、2bに平行な状態で追加U字状アームに22一体的に連結された追加横架アーム7と、を有する高設栽培床装置1から構成される。
【0007】
その際、追加U字状アーム22の両端側は、横架アーム2b、7の胴側部に掛け回すように載せ掛ける半円状フック部24と、半円状フック部24の先端から鉛直状に垂下する縦腕部26と、が一体連結されてM字状を呈しており、半円状フック部24の内側が横架アーム7を挟み付ける状態で追加U字状アーム22の一端と追加横架アーム7が嵌合されるとよい。
【0008】
また、追加U字状アーム22は、1本のパイプ材をその両端寄り位置で半円状フック部を形成するように、一部を圧扁化して曲げ込むことにより成形するとよい。
【0009】
また、2本の基本横架アームは、それらの横架アームの長手方向に間隔をあけて複数個が横架アームに直角状に配置され、培地シートと液受シートを間隙を設けて2層に撓ませた状態で、上面側で支持するように中央部がU字状に曲成された基本U字状アームに連結支持されており、基本U字状アームは、その両端側で基本横架アームの胴側部に掛け回すように嵌合する半円状フック部と、半円状フック部の先端から鉛直状に垂下する縦腕部と、が一体連結されてM字状を呈した基本U字状アームからなり、半円状フック部の内側が横架アームを挟み付ける状態で基本U字状アームと基本横架アームが嵌合されるとよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の高設栽培床装置によれば、地上より高位に平行に横架させた2本の横架アーム間に培地シートを下方に撓ませてその上面に装填した培地とともに支持させ、培地シートとの間に間隙を設けて培地シートからさらに下方に撓ませて同アーム間に液受シートを支持させた高設栽培床装置において、2本の基本横架アーム間隙に対応した間隔で横架アームの長手方向と直交する方向に列状に配置され地上側から縦に支持された複数の縦パイプと、横架アームの長手方向に間隔をあけて複数個が横架アームに直角状に配置され、培地シートと液受シートを間隙を設けて2層に撓ませた状態で、上面側で支持するように中央部がU字状に曲成された追加U字状アームであり、一部が2本の基本横架アームのうちの1つのアームの胴側部に着脱可能に嵌合するアーム嵌合部と、他部が複数の縦パイプ中の1つに差込嵌合する差込嵌合部と、を有する追加U字状アームと、追加U字状アームの差込嵌合部側において2本の基本横架アームに平行な状態で追加U字状アームに一体的に連結された追加横架アームと、を有する構成であるから、簡単な構造で低コストにより、複数条の栽培床を幅方向に連続して設けることができ、有効栽培面積を効率的に形成し得ると同時に設置スペースを小さくして小規模ハウスでも大きな栽培収量を得ることが可能である。また、基本となる栽培床の幅両側からの栽培管理等の具体的作業を行ないやすくし、労力軽減を図れる。
【0011】
また、追加U字状アームの両端側は、横架アームの胴側部に掛け回すように載せ掛ける半円状フック部と、半円状フック部の先端から鉛直状に垂下する縦腕部と、が一体連結されてM字状を呈しており、半円状フック部の内側が横架アームを挟み付ける状態で追加U字状アームの一端と追加横架アームが嵌合される構成であるから、追加する横架アーム及びその支持のU字状アーム等の構造が簡単で軽量であり、低コスト化、組立作業容易性、組立時間短縮を達成できる。
【0012】
また、追加U字状アームは、1本のパイプ材をその両端寄り位置で半円状フック部を形成するように、一部を圧扁化して曲げ込むことにより成形された構成であるから、低廉なパイプ材の曲げと絞り工程のみでU字状アームを製造できるから、構造の容易化、製作簡単化、低コスト化、軽量化を達成し得る。
【0013】
また、2本の基本横架アームは、それらの横架アームの長手方向に間隔をあけて複数個が横架アームに直角状に配置され、培地シートと液受シートを間隙を設けて2層に撓ませた状態で、上面側で支持するように中央部がU字状に曲成された基本U字状アームに連結支持されており、基本U字状アームは、その両端側で基本横架アームの胴側部に掛け回すように嵌合する半円状フック部と、半円状フック部の先端から鉛直状に垂下する縦腕部と、が一体連結されてM字状を呈した基本U字状アームからなり、半円状フック部の内側が横架アームを挟み付ける状態で基本U字状アームと基本横架アームが嵌合される構成とすることにより、追加U字状アームと同様の構成の基本U字状アームで基本横架アームを支持できるから、組立作業や部品管理容易、材料コスト低減等を達成し得る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1実施形態に係る高設栽培床装置の正面側から見た縦断面図である。
【図2】図1の装置の一部省略側面図である。
【図3】図1の装置の縦パイプとU字状アームと横架アームの組み付け状態のみを示した一部省略斜視説明図である。
【図4】図1の装置の一部省略斜視図である。
【図5】図1の装置の正面側から見たU字状アームと縦パイプの組み付け例を示した概念説明図である。
【図6】図3の縦パイプとU字状アームと横架アームの組み付け構成の斜視説明図である。
【図7】(a)、(b)は、各シートの横架アームへの取り付け装置による取り付け構成を示す一部省略拡大斜視説明図である。
【図8】図2の一部省略平面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照しつつ本発明の高設栽培床装置の実施の形態について説明する。図1ないし図8は本発明の実施形態を示している。
【0016】
本実施形態において、高設栽培床装置1は、地上より高位に平行に2本の横架アームを横架させ、該横架アーム間に培地シートを下方に撓ませて支持し、該培地シートの上面に培地を装填し、さらに、培地シートとの間に間隙を設けて培地シートからさらに下方に撓ませて横架アーム間に液受シートを支持させた高架式の栽培床を有する装置であり、特に本実施形態において、2本の横架アームのそれぞれに平行に追加横架アーム7を簡単な構造で追加設置するだけで有効栽培床面積を大きく確保できる装置である。
【0017】
本実施形態では、2本の基本横架アーム2a、2bに1本の追加横架アーム7を併設して2条の栽培床8a、8bを形成している。
【0018】
実施形態において、横架アームは、地上から例えば1メートル〜1.3メートル程度の高さにおいて2本のアームを平行に配置し、2本の平行状態のアームを支持手段により支持させている。
【0019】
本実施形態において、高設栽培床装置1は、基本の横架アーム2a、2bを平行に支持させ、この基本の横架アームのうちの1つと縦パイプ9の1つとを利用して簡単にかつスペース効率の良好な高設栽培床装置を形成する。高設栽培床装置1は、2本の基本横架アームに平行に追加横架アーム7が設置され、それらの各横架アーム間、すなわち、基本の横架アーム2a、2b間並びに基本の横架アームの1つと追加横架アーム7間には、培地シート3を下方に撓ませて支持し、該培地シート3の上面に培地4を装填し、さらに、培地シート3との間に間隙を設けた下方位置であり、培地シート3からさらに下方に撓ませて横架アーム間に液受シート5を支持させた高架式の栽培床を有する装置であり、特に本実施形態において、2本の基本横架アーム2a、2bのそれぞれに平行に追加横架アーム7を簡単な構造で追加設置するだけで有効栽培床面積を大きく確保できる装置である。
【0020】
支持手段は、複数のアーム部材を組み付けて構成されている。本実施形態において、支持手段は、縦パイプ9と、U字状アーム7(2a、2b)を含み、これらは金属パイプ部材を組み付けて構成されている。具体的には、図3において、支持手段は直線状に配置される3本の縦パイプ9(9a、9b、9c)と、これらを高さ中間位置で連結する直杆状連結アーム10と、を含む支持枠体12を栽培床の長手方向所定間隔で複数個立設し、これらの縦パイプ9にU字状アームを組み付けて構成されている。3本の縦パイプ9は、2本の基本横架アーム2a、2b間隙に対応した間隔Wで横架アーム2a、2bの長手方向と直交する方向に列状に配置されており、これらのそれぞれの縦パイプ9a、9b、9cは、直杆状連結アーム10の連結位置より下位側の端部が地中に差し込まれた状態で立設されている。縦パイプは複数を直杆状連結パイプと連結して全体フレームとして支持力をもたせるようにしたフレーム枠でもよいが、好ましくは、各縦フレームが自立した構成とするのがよい。本実施形態において、複数の縦パイプは、下端を地中差込により立設させているが、地中差込に限らず、個々のアーム下端を任意構造の支持台や支持部材に取り付けて安定させる構造とすることもできる。各縦パイプ9には、培地シート3や液受シート5等のシート類の一部を止め具等で止める際の短筒状受部11が適宜位置に適宜数で取り付けられている。
【0021】
本実施形態において、1つの特徴的なことは、2本の基本横架アーム2a、2bの1つに係合して接続される追加U字状アーム22と、追加U字状アームに一体連結され基本横架アーム2a、2bに平行に併設支持される追加横架アーム7と、を含むことである。
【0022】
図1、図3、図5、図6において、2本の基本横架アーム2a、2bを支持する2本の縦パイプ9a、9bにも追加横架アーム7側の追加U字状アーム22と同様の構成の複数の基本U字状アーム20が横架アームの長手方向に間隔をあけて横架アーム2a、2bに直角状に配置されている。
【0023】
U字状アーム20,22は、横架アーム2、7の長手方向複数位置に離隔して配置され、横架アーム間に渡して各シート3,5の中央部を下方にU字状に撓ませて支持する際の離隔保形支持手段であり、例えば40メートル程度の栽培床長さについて2メートル間隔程度で間欠配置されている。実施形態において、追加横架アーム7側のU字状アーム22と、基本横架アーム2a、2b側のU字状アーム20とは、同様の構造であるが、着目すべき本願発明の特徴的な構成の1つは、追加横架アーム7側のU字状アーム22の構成である。
【0024】
2本の平行に配置した基本横架アーム2a、2b間に図1,4に示すように培地シート3及び液受けシート5をそれぞれの中央部を下方に撓ませて基本横架アーム2a、2bに支持させて配置させている。その際、培地シート3は上位に配置され、液受シート5は培地シート3と間隔をあけて層状に下位に配置されている。培地シート3の上面には植物栽培用の培地4が装填され、培地を装填した状態で培地シート3は基本横架アーム2a、2bに支持される。
【0025】
培地シート3は、いわゆる防根シートあるいは不透根シートであって水及び空気が透過可能で、植物の毛根や土砂等の通過を遮断しうる網目を有するシートであり、例えば不織布あるいは織布が用いられ、素材としては、ポリエチレンその他劣化しにくい耐熱・耐寒性素材が好適に選択される。
【0026】
本実施形態において、培地シート3上面に装填される培地4は、椰子油を採取した残渣物である椰子ガラを粉砕した粒状物をが用いられている。椰子ガラは、適度の油分残渣を保持しており、空気保持力及び排水性が高く水分含有度が低い。したがって、土などのように細菌や病気の発生が少なく、しかも土に比べると低密度で軽量であり、高架状態での作業を行ないやすい。また、横架アームの長手方向複数個所に例えば2メートル程度ごとに仕切りを入れてそれぞれの区画ごとに仕切って栽培することが可能であり、この場合、病気などの発生時にその区画部分の培地を交換したり除去することにより、培地全体の交換や撤去が不要となり栽培管理がしやすい。さらに、椰子ガラは炭化して椰子ガラ炭としての利用もされているが、廃棄処理量も多いので廃棄されるものをそのまま用いることができ、環境負荷軽減に資する。また、炭化等の加工が不要で、低価格で利用することができる、等の利点を有する。なお、培地としては、ロックウールやクリプトモス、パーライト混合物、その他軽量でできるだけ排水性に優れるものを選択するとよい。
【0027】
培地4の上面には、図1,2,4,8に示すように、各栽培床の幅方向両側位置で離隔した位置に2本の灌水パイプ40が横架アームの長手方向全長にわたって平行に載置されている。灌水パイプ40は、栄養分を配合した水を供給する栄養水供給装置44に連通する栄養水供給パイプ42に接続されており、灌水パイプ40の周囲に穿孔した多数の孔から栄養水を放出して培地に吸収させる。培地を通過した栄養水は、培地シート3を通過し下位側の液受シート5上に流下して収集される。
【0028】
培地シート3の下位に間隔をあけて下向きに湾曲する液受シート5は、培地シート3を通過して流下する栄養水を受ける防水シートであり、液体を通過させないで収集し、横架シートの長手方向に沿って排水させる。
【0029】
図1、図3、図5、図6において、2本の基本横架アーム2a、2bを支持する基本U字状アーム20は、基本横架アーム2a、2bの長手方向に間隔をあけて複数個が横架アームに直角状に配置され、間隙を設けて2層に撓ませた状態の培地シート3と液受シート5を複数箇所の上面側で支持する支持手段の構成要素であり、特に、縦パイプ9と横架アーム2,7とを連結して継ぎ足し可能な支持枠構造を形成する中央部がU字状に曲成された略U字状アームである。
【0030】
基本U字状アーム20は、中央部を下に凸となるように下向きに湾曲させ、さらに湾曲中央位置でさらに凹設した凹部21を有する構成であり、金属パイプ材で構成されている。さらに、この基本U字状アーム20の両端側には基本U字状アーム20と直角方向に伸びる基本横架アーム2a、2bに連結する連結部28を有するとともに、縦パイプ9に接続して高架支持される部位を備えている。
【0031】
実施形態において、基本U字状アーム20の両端側には、基本横架アーム2の胴側部に掛け回すように載せ掛けて外嵌する半円状フック部24と、半円状フック部の先端から鉛直状に垂下する縦腕部26と、が一体連結されてM字状を呈して構成されている。半円状フック部24が基本U字状アーム20と基本横架アーム2a、2bとを直角方向に連結する連結部28を構成する。また、縦腕部26は、縦パイプ9に接続して栽培床を高架支持させる部位である。本実施形態において、図5,6に示すように、基本U字状アーム20の両端側において基本横架アーム2a、2bを基本横架アームの長手と基本U字状アームのU字面とが直交するように連結固定させている。詳細には、基本U字状アーム20は、1本のパイプ材をその両端寄り位置で半円状フック部24を形成するように、一部を圧扁化して基本横架アーム2a、2bの胴側部に外嵌させ、曲げ込んで絞ることにより基本横架アーム2a、2bを連結させている。その状態で、半円状フック部24の下端から鉛直状に垂下する両縦腕部26を縦パイプ9a、9bの穴に差し込んで嵌合することにより、基本U字状アーム20と一体化された基本横架アーム2a、2bが縦パイプ9により高架支持されることとなる。基本横架アーム2a、2b及び基本U字状アーム20は、基本横架アーム2a、2bの長手方向に複数組が連結されて数十メートル程度の栽培床が形成される。
【0032】
前述したように、本発明において、特徴的なことは、むしろこの基本横架シートの1つを利用しながら次々に連設可能に一体的に接続される追加U字状アーム22と追加横架アーム7とを含むことであり、追加U字状アーム22並びに、追加横架アーム7自体の構成は基本U字状アーム22及び基本横架アーム2a、2bと同様である。追加U字状アーム22は、基本U字状アーム20と異なり、その一部が2本の基本横架アームのうちの1つのアーム2bの胴側部に着脱可能に嵌合するアーム嵌合部30と、他部が複数の縦パイプ中の1つに差込嵌合する差込嵌合部32と、を有する。すなわち、図6において、追加U字状アーム22の一端側の半円状フック部24には横架アームが嵌合されておらず、縦腕部26の内側にアーム2bの胴側部をあてがったようにして上から載せ掛けるように追加U字状アーム22を下降させ、そのまま強く押下げることにより半円状フック部の半円部の内側に基本横架アーム2bの胴側部がはまり込んだ状態で嵌合する。他方、追加U字状アーム22の他端側の半円状フック部24には基本U字状アーム20と同様に追加横架アーム7が半円状フック部の半円部の内側に嵌められて絞り込んで追加U字状アーム22と、追加横架アーム7が一体連結されている。そして、追加U字状アーム22のアーム嵌合部30を基本横架アームの1つの2bの胴側部に向けて下降すると、同時に垂下した縦腕部26の下端を縦パイプ9cの穴内に差込嵌合させる。このように、追加U字状アーム22と追加横架アーム7とを用いることにより、基本横架アーム2a、2bに追加してその左サイド、右サイドいずれの側に対しても培地間の間隙がほとんどない連続的なスペース利用効率の高い栽培床を併設して構築することができる。
【0033】
基本横架アームの一対のアームのうちの1つを用いて複数条の栽培床を形成する点では、基本横架アームの支持構成の要素である基本U字状アーム20は必ずしも用いる必要はなく、他の支持構成のものでもよい。しかしながら、本実施形態のように、追加U字状アーム22と基本的には同じ構成の基本U字状アーム20を基本横架アーム2の支持に用いることにより、装置の組立作業を短時間で簡単に行なえ、さらに材料、管理コストの低減を図れる。
【0034】
なお、図7において、実施形態における横架アーム2a、2b、7に対する培地シート3及び液受シート5の取り付け装置50を示しており、図において、各横架アームの上端には対向受け片52を有する金属製等のステー部材54が挿入口を上方に開口して長手方向に沿って固定されている。そして、この挿入口に2枚のシート3,5の端部寄り側を重ねて載置しその上から弾発挟み部材56を対向受け片52間に装着してシート3,5を重ねた状態で挟み込み、係止させるものである。ここに、取り付け装置50は、対向受け片52及びステー部材54を含む。弾発挟み部材は、金属線条を台形の交互反転形状に曲げ形成したものを弾発ばねとして用いるものである。
【0035】
なお、図1,4中60は、横架アームの長手方向に離間したU字状アーム20,22の
中央部の凹部21の凹設基部どうしをアーム長手方向に渡すように固定された支持アームであり、培地シート3を通過して流下した液体を受ける液受シート5の液受凹部を下位両側から支持して液受シートの耐久性維持を行っている。また、62は、液受シートに流下した液体が導かれたアーム長手方向に設けた排水パイプである。
【0036】
次に、図に基づいて実施形態に係る高設栽培床装置1の作用について説明する。高設栽培床装置1の組立に際しては、設置面に予め複数の縦パイプ9をユニット化して立設固定させる。例えば地面へ直接立設する場合には、各縦パイプ9の下端側を地中に刺し込み固定させる。縦パイプ9はアーム長手方向に対して例えば2メートル間隔で立設配置される。このとき、2条の栽培床構築の際には、3本、3条の場合は、4本の縦パイプのように条数+1本の縦パイプを立設させる。そして、図5のように両側に基本横架アーム2a、2bを固定させた略M字U字アームユニットを両端の縦腕部26を縦パイプの穴内に刺し込み嵌合させる。これにより、2本の平行基本横架アーム2a、2bが配置支持される。
【0037】
次に、追加U字状アーム22の差込嵌合部32側の半円状フック部24に連結させた追加U字アームユニットを基本横架アーム2a、2bの1つを利用しながら追加架設させる。すなわち、追加U字状アーム22の差込嵌合部32の縦腕部26を縦パイプ9cに差し入れるように位置あわせながら、アーム嵌合部30を基本横架アーム2bの胴側部に載せ掛け状に装架して押下げる。そして、完全に押下げが完了すると、追加U字状アーム22のアーム嵌合部30が基本横架アーム2bの胴側部に嵌合するとともに、追加横架アーム7を連結固定した差込嵌合部32が縦パイプに差込嵌合されて連結される。このとき、図8に示すように、追加U字状アーム22のアーム嵌合部30を基本横架アーム2bの胴側部に載せ掛けてあてがう際に、既に基本U字状アーム20の半円状フック部24が基本横架アーム2bとの直交位置に嵌合されているので、追加U字状アーム22のアーム嵌合部30側端部を強制的にややアーム長手方向にずらしながら基本横架アーム2bの胴側部に嵌合させることととなる。このとき、追加U字状アーム22の端部側にねじり変形応力が加わるから、各アーム2b、7との嵌合部で締結力が加わり、それらの間の結合力を大きくしてフレーム構造体全体の強度を大きなものとすることができる。その後、ステー部材54及び凹設基部固定支持アーム60をU字状アームの凹部21の下部に締結あるいは溶接などにより固定させ、装置の骨格部分の組立が完了する。
【0038】
次に、液受シート5及び培地シート3の順に2条の栽培床となる横架アーム2a、2b間、及び横架アーム2b、7間に広げて中央部分を弛ませた状態で取り付け装置50を介して支持させる。そして、培地シート3上に培地4を装填し、さらに灌水パイプ40を配備する。
【0039】
灌水パイプ40から散布される栄養水は栽培植物Pの根などに適度の養分と水分を供給し、余剰水分等は培地シートを透過して液受シート5上に流下し排出される。これによって、良好な水捌け性を保持し、病気等の発生の少ない栽培床を形成することができる。特に、隣接する個々の栽培床間の間隙を不必要に広くとらずに密に並列した状態で複数の栽培床を構築できるから、農業用ハウスや路地栽培においても、スペース効率を大幅に向上させ、同時に、幅方向の両側からの栽培管理作業等を有効に行なえて、実用性に優れた栽培床とすることが可能である。
【0040】
本実施形態の高設栽培床装置を用いた実施例構成において、具体的にしょうが、トマトについての栽培実験を行ったところ、病気のない良好な収穫量実績を得ることが確認された。本実施形態の高設栽培床装置は、その他、ほうれんそう、チンゲン菜、きゅうり、なす、ピーマン、サンチュその他のほとんどすべての葉物野菜、メロン、イチゴ、にんにくその他の根物野菜、その他果物等オールラウンドな植物栽培において有効に利用できる。
【0041】
以上説明した本発明の高設栽培床装置は、ハウス内のみならず、路地栽培においても有効に設置可能である。また、条数も2条に限らず幅方向の両側から作業を行なえる限り、3条以上設置することもできる。なお、縦パイプ等の支持台側にキャスタ等の転動部材を取り付けることにより、作業を行ないやすくしより多数条の連結構成を可能とし得るものである。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明の高設栽培床装置は、規模の大小にかかわらず、ハウス、路地栽培にかかわらず簡易に適用することができる。
【符号の説明】
【0043】
1 高設栽培装置
2(2a、2b) 基本横架アーム
3 培地シート
4 培地
5 液受シート
7 追加横架アーム
9 縦パイプ
20 基本U字状アーム
22 追加U字状アーム
24 半円状フック部
26 縦腕部
30 アーム嵌合部
32 差込嵌合部
40 潅水パイプ
50 取り付け装置
P 栽培植物


【特許請求の範囲】
【請求項1】
地上より高位に平行に横架させた2本の横架アーム間に培地シートを下方に撓ませてその上面に装填した培地とともに支持させ、培地シートとの間に間隙を設けて培地シートからさらに下方に撓ませて同アーム間に液受シートを支持させた高設栽培床装置において、
2本の基本横架アーム間隙に対応した間隔で横架アームの長手方向と直交する方向に列状に配置され地上側から縦に支持された複数の縦パイプと、
横架アームの長手方向に間隔をあけて複数個が横架アームに直角状に配置され、培地シートと液受シートを間隙を設けて2層に撓ませた状態で、上面側で支持するように中央部がU字状に曲成された追加U字状アームであり、一部が2本の基本横架アームのうちの1つのアームの胴側部に着脱可能に嵌合するアーム嵌合部と、他部が複数の縦パイプ中の1つに差込嵌合する差込嵌合部と、を有する追加U字状アームと、
追加U字状アームの差込嵌合部側において2本の基本横架アームに平行な状態で追加U字状アームに一体的に連結された追加横架アームと、を有することを特徴とする高設栽培床装置。
【請求項2】
追加U字状アームの両端側は、
横架アームの胴側部に掛け回すように載せ掛ける半円状フック部と、
半円状フック部の先端から鉛直状に垂下する縦腕部と、が一体連結されてM字状を呈しており、
半円状フック部の内側が横架アームを挟み付ける状態で追加U字状アームの一端と追加横架アームが嵌合されることを特徴とする請求項1記載の高設栽培床装置。
【請求項3】
追加U字状アームは、1本のパイプ材をその両端寄り位置で半円状フック部を形成するように、一部を圧扁化して曲げ込むことにより成形されていることを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載の高設栽培床装置。
【請求項4】
2本の基本横架アームは、それらの横架アームの長手方向に間隔をあけて複数個が横架アームに直角状に配置され、培地シートと液受シートを間隙を設けて2層に撓ませた状態で、上面側で支持するように中央部がU字状に曲成された基本U字状アームに連結支持されており、
基本U字状アームは、その両端側で基本横架アームの胴側部に掛け回すように嵌合する半円状フック部と、半円状フック部の先端から鉛直状に垂下する縦腕部と、が一体連結されてM字状を呈した基本U字状アームからなり、
半円状フック部の内側が横架アームを挟み付ける状態で基本U字状アームと基本横架アームが嵌合されることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の高設栽培床装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−85511(P2013−85511A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−228507(P2011−228507)
【出願日】平成23年10月18日(2011.10.18)
【出願人】(511251490)
【出願人】(511251559)
【出願人】(511251504)
【出願人】(511251515)
【Fターム(参考)】