説明

高負荷伝動ベルト

【課題】センターベルトに対するブロックの揺動を起こりにくくし、揺動が原因で発生する振動や騒音の発生、発熱などの問題を低減し、より寿命の長い高負荷伝動ベルトを提供する。
【解決手段】エラストマー4中に心体5を埋設したセンターベルト1と、上ビーム11と下ビーム12をピラー13によって連結しており上下ビームとピラーによって囲まれたセンターベルトを挿入する溝14、15を有するブロック2とからなり、上下ビーム11、12には夫々プーリとの接触面2a、2b、2c、2dを有する高負荷伝動ベルト1において、前記接触面2a、2b、2c、2dは心体5から離れるに連れて徐々に幅が狭くなる形状を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センターベルトの長手方向に沿って所定ピッチでブロックを固定した高負荷伝動ベルトに関し、センターベルトに対するブロックの傾きやがたつきの発生を低減した高負荷伝動ベルトに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ベルト式無段変速装置に使用するベルトは、プーリのV溝幅を変えることによってプーリに巻きかかる有効径を変化させ変速比を調節する様な変速プーリに巻き掛けて使用するものであり、プーリからの側圧が大きくなるのでベルトは大きな側圧に耐えるものでなくてはならない。また、無段変速の用途以外にも通常のゴムベルトでは寿命が短くなりすぎるような高負荷伝動の用途には特別に高負荷に耐えうるようなベルトを用いる必要がある。
【0003】
そのようなベルトとして使用されるものの中に、センターベルトにブロックを固定してベルト幅方向の強度を高めた引張伝動式の高負荷伝動ベルトがあり、具体的な構成としては、心体をゴムなどのエラストマー中に埋設したセンターベルトをブロックの両側面にもうけた溝に嵌合し、センターベルトの長手方向に多数のブロックを配置したようなベルトがある。
【0004】
このようなベルトにおいては走行中にベルトがプーリに進入しブロックがプーリと接触するが、その際にブロックがセンターベルトに対して揺動して進行方向に傾きを生じることがある。そのような動きをすることによって、ベルトの振動や騒音の発生、発熱といった問題につながりベルトの寿命を縮めることにもなる。
【0005】
例えば、特許文献1には上記のようなセンターベルトにブロックを複数配置したベルトであって、ブロックの嵌合溝にセンターベルトを嵌め込む際に圧縮的に嵌合するような寸法を持たせたベルトが開示されている。ブロックをセンターベルトに圧縮的に嵌合することによって、ブロックのセンターベルトに対する揺動を防止して前記のような問題を解消しようとしたものである。
【0006】
【特許文献1】実開平1−55344号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載されたベルトでもブロックの揺動を防止できる効果を有しているが、ベルトが走行するうちにセンターベルトを構成するゴムなどのエラストマー材にへたりを生じて、ブロックとセンターベルトとの圧縮的な嵌合力が低下してくる。そうすると、ブロックの揺動を防止する効果が徐々に低下して最後にはなくなってしまう。特許文献1の方法では長期的な効果を得ることが難しい。
【0008】
そこで本発明では、このようなセンターベルトに多数のブロックを装着した高負荷伝動ベルトにおいて、センターベルトに対するブロックの揺動を起こりにくくし、揺動が原因で発生する振動や騒音の発生、発熱などの問題を低減し、より寿命の長い高負荷伝動ベルトの提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記のような課題を解決するために本発明の請求項1では、エラストマー中に心体を埋設したセンターベルトと、上ビームと下ビームをピラーによって連結しており上下ビームとピラーによって囲まれたセンターベルトを挿入する溝を有するブロックとからなり、上下ビームには夫々プーリとの接触面を有する高負荷伝動ベルトにおいて、前記接触面は心体から離れるに連れて徐々に幅が狭くなる形状を有することを特徴とする。
【0010】
請求項2では、接触面の幅の減少率が10〜40%の範囲である請求項1記載の高負荷伝動ベルトとしている。
【0011】
請求項3では、接触面の形状が略三角形状である請求項1〜2記載の高負荷伝動ベルトとしている。
【0012】
請求項4では、センターベルト表面にはカバー帆布を設けてなり、該カバー帆布は少なくともベルト長手方向の緯糸がアラミド繊維からなる帆布である請求項1〜3記載の高負荷伝動ベルトとしている。
【発明の効果】
【0013】
ブロックの揺動は中心から離れたところのプーリとの干渉ほど影響が大きく、請求項1にようにブロックの側面であるプーリとの接触面の形状を心体を中心としてそこから離れるに連れて徐々に幅が狭くなる形状とすることによって、ブロックを回転方向に動かそうとする力が弱くなって結果的に揺動を防止することになる。
【0014】
請求項2では接触面の幅の減少率が10〜40%としており、ブロックの揺動を防止することができるのに十分であると共に動力の伝達性能にも優れたブロックの形状を提供することができるものである。
【0015】
請求項3では、接触面の形状を略三角形としているが、それによって請求項1および請求項2と同様に心体から離れたところのブロックとプーリとの間の干渉を小さくすることができ、ブロックが揺動して騒音が発生したり発熱の問題などを防止したりすることができる。
【0016】
請求項4では、センターベルト表面にアラミド繊維からなるカバー帆布設けるとしており、ブロックとの間で摩擦が生じたとしてもセンターベルトの摩耗を防止することができると共にベルトの切断といった故障を低減することができる。また、発熱を少なくすることもでき、ブロックを構成する樹脂材料の劣化の防止にもなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を参照しつつ本発明を具体的に説明する。
【0018】
図1は、本発明に係る高負荷伝動ベルト1の一例を示す要部斜視図であり、図2は同じく要部側面図、図3は同じく断面図である。本発明の高負荷伝動ベルト1は、エラストマー4内に心体5をスパイラル状に埋設してなる同じ幅の二本のセンターベルト3a、3bと、このセンターベルト3a、3bに係止固定されている複数のブロック2とから構成されている。このブロック2の側面2a、2b、2c、2dは、プーリのV溝と係合する傾斜のついた面となっており、駆動されたプーリから動力を受け取って、係止固定されているセンターベルト3a、3bを引張り、駆動側プーリの動力を従動側プーリに伝動している。
【0019】
ブロック2は、上ビーム11および下ビーム12と、上下ビーム11、12の中央部同士を連結したピラー13からなっており、ブロック2の側面2a、2b、2c、2dには一対のセンターベルト3a、3bを嵌めこむ溝14、15が形成されている。また、溝15内の溝上面および溝下面にはセンターベルト3a、3bの上面に設けた凹条部18と下面に設けた凹条部19に係合する凸条部16、17に係合するようになっている。
【0020】
本発明ではブロック2のプーリとの接触面である側面2a、2b、2c、2dがセンターベルト3a、3bの心体5の位置を中心として、その中心から離れるにしたがって徐々に幅が狭くなっていくようにしている。心体5の位置から離れたところでプーリと接触するとブロック2をセンターベルト3a、3bに対して揺動させる影響が大きい。そこで本発明では前記のようにブロック側面2a、2b、2c、2dにおいて心体5の位置から離れるほど幅が狭くなるようにし、ブロック2がプーリと接触したときのブロック2を回転方向に動かそうとする力を軽減することによってブロック2の揺動を防止している。本発明においてはプーリとの接触面が心体5の位置から離れるにしたがって狭くなる形態であればよく、ブロックの側面2a、2b、2c、2d以外の、例えば上ビーム11の中央付近において幅が狭くなっている必要はない。むしろ上ビーム11の側面以外の部分では適度な厚みを有している方がブロックの強度を保つという意味からは好ましいといえる。
【0021】
ブロック側面2a、2b、2c、2dのプーリ接触面の形状において心体の位置を中心としてそこから離れていく距離に対する幅の減少量であらわされる減少率、例えば図2における(a+a)/bが10〜40%の範囲とすることが好ましい。10%未満であるとブロック2が揺動しようとする力を十分に小さくすることができず、40%を超えるとプーリ接触面の全体の面積が小さくなりすぎて動力の伝達性能が低下しすぎることになるので好ましくない。また、プーリ接触面の具体的な形状の例として略三角形であることが挙げられる。
【0022】
図4に示すように、センターベルト3は上下両面にカバー帆布10が配置されており、ベルト走行時に発生するセンターベルトとブロックとの摩擦からセンターベルトを保護するようになっている。またカバー帆布においてベルト長手方向の緯糸をアラミド繊維で構成したカバー帆布10を用いることによって摩耗を防止することができ、ベルトの切断による故障を低減することができる。
【0023】
カバー帆布10として用いられるのは、平織物、綾織物、朱子織物などを挙げることができ、少なくともベルト長手方向の緯糸にアラミド繊維を用いている。アラミド繊維としてはパラ系アラミド繊維でもメタ系アラミド繊維でもいずれでもよいが、0.3〜1.2デニールの原糸を収束したマルチフィラメント糸を用いることが好ましい。また、アラミド繊維以外にポリアミド繊維やウレタン弾性糸を混撚りした糸も用いることができるが、アラミド繊維の占める割合が緯糸の全重量の20〜80%であることが好ましい。原糸の太さが0.3デニール未満であるとベルト長手方向のカバー帆布10の引張強さが低下し、耐摩耗性にも劣ることになるので好ましくない。逆に1.2デニールを超えるような太さであると製織後にカバー帆布10としての剛性が高くなりすぎて経糸と緯糸とのバランスが取れなくなったり帆布にしわを発生させたりする原因となるので好ましくない。
【0024】
パラ系アラミド繊維としては、例えば商品名をケブラー、テクノーラ、トワロンを挙げることができ、メタ系アラミド繊維としたは、商品名でノーメックス、コーネックスを挙げることができる。
【0025】
また、ベルト幅方向の経糸についても緯糸と同様にパラ系アラミド繊維やメタ系アラミド繊維などのアラミド繊維からなるフィラメント糸としてもよく、その他6ナイロン、6,6−ナイロン、12ナイロン等のポリアミド繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリエステル繊維などのフィラメント糸を用いることができる。
【0026】
このような構成のカバー帆布10をセンターベルトの表面に積層接着するために接着処理がなされる。接着処理としては例えばRFL液、イソシアネート溶液あるいはエポキシ溶液による処理が挙げられる。RFL液はレゾルシンとホルマリンとの初期縮合物をラテックスに混合したものであり、ここで使用するラテックスとしてはスチレン・ブタジエン・ピリジン三元共重合体、水素化ニトリルゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、エピクロルヒドリンなどのラテックスである。また、ゴムを溶剤に溶かしてゴム糊状にしたものをカバー帆布10の表面に付着させる糊引き処理も接着処理として挙げることができる。
【0027】
これらの接着処理においてRFL液、イソシアネート溶液、エポキシ溶液、ゴム糊などの接着処理剤に摩擦係数低減材を配合することによって、ブロックとセンターベルトのカバー帆布との間の摩擦係数を下げることができ、酸化亜鉛などのウィスカを含んだブロックとセンターベルトとの摩擦による摩耗を防止することができる。摩擦係数低減材としては、具体的にはポリテトラフルオロエチレン、ポリトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルコキシエチレン共重合体、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体などのフッ素樹脂、セラミックパウダー、ガラスビーズ、超高分子量ポリエチレン、グラファイト、二硫化モリブデン、フェノール樹脂、ガラス繊維、カーボン繊維、アラミド繊維等をあげることができ、これらのうちの少なくとも1種、好ましくはセラミックパウダー、ガラスビーズ、超高分子量ポリエチレン、グラファイト、二硫化モリブデン、ポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素樹脂、フェノール樹脂のなかの少なくとも1種、更に好ましくはポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素樹脂を用いることが好ましい。
【0028】
また、センターベルト3には上下両面に所定ピッチで凹条部15、16、26等が設けられることで凹凸形状が形成されており、ブロック2との間で噛み合うようになっている。本発明においてカバー帆布10は接着処理後の幅が接着処理前の幅の55〜70%、より好ましくは58〜65%の範囲とすることがよい。カバー帆布として用いられる帆布は、元々伸縮性を有する帆布を用いているが接着処理を行うことによって縮む。縮みが大きいほど帆布は厚手となり逆に縮みが小さいほど薄手になる。一方、アラミド繊維は他の繊維と比べると剛性が高く、センターベルトの凸条部を形成する際にもその剛性のために金型の形状に沿いにくく凹凸形状の高さや形状が設計どおりに形成されにくい。そこで、前記のようにカバー帆布10の接着処理後の幅を接着処理前の幅の55〜70%とすることで帆布の厚みを調整し、凹凸形状を形成する金型の形状に沿うことができるようにした。この数値が55%未満になると縮みが大きく頒布が厚手になるので加硫時に金型に沿うことができずセンターベルトの凹凸形状の高さや形状が設計どおりに形成されにくくなり、70%を超えると帆布の伸縮性が乏しくなるので同様にセンターベルトの凹凸形状の高さや形状が設計どおりに形成されにくくなる。55〜70%、より好ましくは58〜65%の範囲とすることで伸縮性と沿いやすさを兼ね備えた帆布とすることができる。
【0029】
ブロック2は内部にインサート材を埋設したものでもそうでない樹脂材21のみからなっているものでもどちらでもよい。アルミニウム合金など金属などからなるインサート材を埋設していないブロック2を用いた場合、インサート材を埋設したブロックを用いたベルトよりも、軽量化が可能なので高回転で使用してもベルトに発生する遠心力が小さいという優位点があるが、自動二輪などの比較的軽負荷で高回転の用途に向いている。
【0030】
ここでインサート材というのは、それだけでほぼブロックの形状を呈する骨組的なものことを指し、例えば合成樹脂素材中に配合する形で加える短繊維やウィスカなどの補強材を添加することはインサート材を埋設することを意味するものではない。
【0031】
ブロック2の樹脂として用いることができるのは、具体的には硬度90°JIS A以上の硬質ゴム、硬質ポリウレタン樹脂、液晶樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、メタアクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド(PAI)樹脂、ポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、ポリイミド(PI)樹脂、ポリエーテルスルフォン(PES)樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂等のゴムや合成樹脂が用いられる。
【0032】
本発明では前述のようにブロックを形成する樹脂材中に繊維状の補強材やウィスカ状の補強材を配合することは可能であり、繊維状の補強材は15〜40重量%の範囲で配合する。15重量%未満であると補強効果が少なくブロックの耐摩耗性が十分でないなどの問題があり、40重量%を超えると樹脂への配合が困難になったり射出成形が困難になったりするなどの問題があるので好ましくない。
【0033】
合成樹脂に配合する繊維状補強材としては、アラミド繊維、炭素繊維、ガラス繊維、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維などを挙げることができる。その中でも前記のブロックを構成する樹脂で好ましい例であるナイロン46と炭素繊維を組み合わせて用いることによって炭素繊維がナイロン46の吸水性の欠点を改善し、剛性を大幅に向上させることができて、且つナイロン46の有する耐摩耗性、耐衝撃性、耐疲労性を生かすことができるものである。炭素繊維の中でも、PAN系炭素繊維を用いることが好ましい。また、炭素繊維と組み合わせてアラミド繊維を配合することによってブロックの靭性が向上し、耐摩耗性や、耐衝撃性を一層向上させることができる。
【0034】
また、前記繊維状補強材として上記の有機繊維のほかにも酸化亜鉛ウィスカ、チタン酸カリウムウィスカ、ホウ酸アルミニウムウィスカなどの無機繊維を配合してもよい。
【0035】
このような材料構成とすることによって、プーリと接する際に受ける側圧にも十分に耐えうる剛性、靭性等の強度を有するとともに、耐摩耗性に優れ、更には、摩擦時に発生する熱に対しても強いブロックとすることが可能となり、プーリから受ける動力を効率よくセンターベルト3a、3bに引張力として伝えることができ、引張伝動式の高負荷伝動ベルトを構成することができる。
【0036】
なお、これらの他に、二硫化モリブデン、グラファイト、フッ素系樹脂から選ばれてなる少なくとも一つを混入することによってもブロック2の潤滑性を向上させることができる。フッ素系樹脂としては、ポリ4フッ化エチレン(PTFE)、ポリフッ化エチレンプロピレンエーテル(PFPE)、4フッ化エチレン6フッ化プロピレン共重合体(PFEP)、ポリフッ化アルコキシエチレン(PFA)等が挙げられる。
【0037】
また、ブロック2は図5に示すように樹脂材21中にインサート材22が埋設されたものでもよく、インサート材22は、ブロック2の耐側圧性や曲げ剛性を持たせる部分となるインサート材であり、素材としてはアルミ合金、セラミックス、セラミックスとアルミニウムとの複合材料、炭素繊維強化樹脂や鉄などの素材が挙げられる。
【0038】
耐側圧性や曲げ剛性を持たせるという面では金属材料が好ましく、金属材料の中ではアルミ合金の弾性率が7000kgf/mmで比重が2.8であるのに対し、鉄は弾性率が22000kgf/mmで比重が7.8であり、強度的には鉄を用いるほうが高いといえるが、高速で回転するベルトにとって、ベルト重量は寿命に大きく影響を与えるため軽量化の面で有利なアルミ合金を用いることが好ましい。ただし、耐側圧性や曲げ剛性を持たせるという面では金属材料が優れており、インサート材22の所定箇所に樹脂材21を被覆したブロック2を用いることが好ましい。
【0039】
樹脂材21を所定の箇所に配置する場合、ブロック2の大きさよりもひと回り小さい金属材料からなるインサート材22を用いてそのほぼ全面を樹脂材21で被覆したものを用いると、部分的に樹脂材21を被覆配置したものに比べて、樹脂材の剥離などの問題が発生しにくいので好ましい形態ということができる。ただし、全面といっても製造工程の上で樹脂材21を被覆する際にインサート材22を固定する部材が接触しているところは、インサート材22が露出する箇所が発生することになるが、その程度のインサート材22の露出は、実質的に全面を樹脂材で被覆している形態に含まれるといってよいものである。
【0040】
インサート材22を被覆する樹脂材21としては、比較的摩擦係数の大きく耐摩耗性に優れ、センターベルト4を構成するエラストマー2と比べると剛性の高い、具体的には硬度90°JIS A以上の硬質ゴム、硬質ポリウレタン樹脂、液晶樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、メタアクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド(PAI)樹脂、ポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、ポリイミド(PI)樹脂、ポリエーテルスルフォン(PES)樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂等のゴムや合成樹脂が用いられる。
【0041】
また、これらの樹脂中に、綿糸、ポリアミド繊維やアラミド繊維等の化学繊維、ガラス繊維、金属繊維、カーボン繊維等からなる織布、フィラー、ウィスカ、シリカ、炭酸カルシウムなどの無機材料等を混入した強化樹脂からなる。
【0042】
また、ブロック2の下ビームは屈曲を許容しベルトがプーリに巻きかかることができるようにしなければならず、ベルト走行方向の前後面の少なくともいずれか一方に傾斜面を設けている。傾斜面を設けることによってブロック同士が緩衝することなくベルトが屈曲することができる。
【0043】
センターベルト3a、3bのエラストマー4として使用されるものは、クロロプレンゴム、天然ゴム、ニトリルゴム、スチレン−ブタジエンゴム、水素化ニトリルゴムなどの単一材またはこれらを適宜ブレンドしたゴムあるいはポリウレタンゴム等が挙げられる。そして、心体5としてはポリエステル繊維、ポリアミド繊維、アラミド繊維、ガラス繊維、スチールワイヤ等から選ばれたロープが用いられる。また、心体5はロープをスパイラル状に埋設したもの以外にも、上記の繊維の織布、編布や金属薄板等を使用することもできる。
【0044】
図6は、別のベルトの例であり、ブロック30はビーム部31の両端から上方に向かって一対のサイドピラー32、33が延びており、このサイドピラー32、33の上端からそれぞれブロック30の中心に向かって延びるロック部34、35が対向するように設けられている。そして、これらビーム部31、サイドピラー32、33及びロック部34、35によってセンターベルト36a、36bが嵌合する嵌合溝37が形成されている。この嵌合溝37に、センターベルト36a、36bが、ロック部34、35間の開口部より挿入され装着される。
【0045】
また、ロック部34、35の嵌合溝37側には、凸部38がそれぞれ設けられており、この凸部38が、センターベルト36a、36bに所定ピッチで設けられている凹部39に嵌合する。これによって、センターベルト36a、36bは、装着後はブロック30から抜けにくい状態となる。プーリとの接触面であるブロックの側面30a、30bはそれぞれセンターベルト36a、36bの心体の位置を中心として中心から離れるに連れて幅が徐々に狭くなるような略三角形状を呈している。
【0046】
次に本発明の効果を確認するために、本発明の実施例となるベルトと比較例となるベルトを作成して比較試験を行った。
【実施例】
【0047】
(実施例1)
実施例1としては図1に示すような形状でピッチ幅が18mm、ピッチ周長が690mm、ブロックピッチが3mmであり、ブロックは心体の位置から離れるほどプーリとの接触面の幅が小さくなるブロックを用い、その減少率は20%であるブロックとしている。表1に示す走行条件で走行させて耐久試験を行った。結果を表2に示す。
【0048】
(比較例1)
比較例1としては、上ビームの側面は幅一定とし、下ビームのみ心体から離れるほど幅が狭くなり、その減少率が30%であるベルトとした以外は実施例1と同じ構成のベルトを作成した。表1に示す走行条件で走行させて耐久試験を行った。結果を表2に示す。
【0049】
【表1】

【0050】
【表2】

【0051】
表2の結果からわかるように、実施例1では420時間走行させてもベルトに異常はなく、また100時間走行後におけるブロックの摩耗量も比較例1よりも小さな値となっている。またベルトの温度と騒音に関しても比較例1よりも大幅に低下している。これはプーリ接触面を三角形状として心体の位置から離れるにしたがって幅の狭い形状としたことにより、ブロックのセンターベルトに対する揺動が防止されていることに起因すると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
ベルトに装着したブロックの複数方向の撓みを抑えて割れを防止することができ、自動車や自動二輪車、農業機械の無段変速装置など、プーリの有効径が変化し大きなトルクを伝達するようなベルトとして適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の高負荷伝動ベルトの要部斜視図である。
【図2】本発明の高負荷伝動ベルトの側面図である。
【図3】本発明の高負荷伝動ベルトの断面図である。
【図4】センターベルトにカバー帆布を配置した例を示す要部斜視図である。
【図5】本発明の別の例を示す高負荷伝動ベルトの断面図である。
【図6】本発明の更に別の例を示す高負荷伝動ベルトの断面図である。
【符号の説明】
【0054】
1 高負荷伝動ベルト
2 ブロック
2a 側面
2b 側面
2c 側面
2d 側面
3a センターベルト
3b センターベルト
4 エラストマー
5 心体
10 カバー帆布
11 上ビーム部
12 下ビーム部
13 センターピラー
14 嵌合溝
15 嵌合溝
16 溝条部
17 溝条部
18 凸条部
19 凸条部
21 樹脂材
22 インサート材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エラストマー中に心体を埋設したセンターベルトと、上ビームと下ビームをピラーによって連結しており上下ビームとピラーによって囲まれたセンターベルトを挿入する溝を有するブロックとからなり、上下ビームには夫々プーリとの接触面を有する高負荷伝動ベルトにおいて、前記接触面は心体から離れるに連れて徐々に幅が狭くなる形状を有することを特徴とする高負荷伝動ベルト。
【請求項2】
接触面の幅の減少率が10〜40%の範囲である請求項1記載の高負荷伝動ベルト。
【請求項3】
接触面の形状が略三角形状である請求項1〜2記載の高負荷伝動ベルト。
【請求項4】
センターベルト表面にはカバー帆布を設けてなり、該カバー帆布は少なくともベルト長手方向の緯糸がアラミド繊維からなる帆布である請求項1〜3記載の高負荷伝動ベルト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−10070(P2006−10070A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−154641(P2005−154641)
【出願日】平成17年5月26日(2005.5.26)
【出願人】(000006068)三ツ星ベルト株式会社 (730)
【Fターム(参考)】