説明

高通気性枕内包材

【課題】本発明は、枕上部に籠もった熱や湿気は即座に放出し、ポリウレタンフォームの内部に吸収された熱や湿気は徐々に放出されて枕全体の熱及び湿気が放出しうるようにした枕の内包材を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明に係る高通気性枕内包材Pは、内包材本体Aとその下方に配置される2個一組の枕高さ調整用マットB、B’とから構成され、内包材本体Aは少なくとも上層部10と下層部20との2層一体構造をなし、上層部10は、汎用軟質ポリウレタンフォームから構成され、その上面側に凹凸部11、12が形成され、その凹部11においては上層部を貫通する穴11aが形成され、下層部20は無膜軟質ポリウレタンフォームから構成され、枕高さ調整用マットB、B’は汎用軟質ポリウレタンフォームから構成され、貫通穴B1、B1’を有する平板状をなすものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、寝具用の枕の内包材に関し、特に高通気性の枕の内包材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年開発されたものとして、無膜の軟質ポリウレタンフォームがある。この無膜の軟質ポリウレタンフォームは、ポリエステル系またはポリエーテル系の通常の連続気泡の軟質ポリウレタンフォーム(以下、無膜化されていない連続気泡の軟質ポリウレタンフォームを「汎用軟質ポリウレタンフォーム」という。)を例えば爆発法により無膜化することによって製造される(以下、無膜化された連続気泡の軟質ポリウレタンフォームを「無膜軟質ポリウレタンフォーム」という。)。この無膜軟質ポリウレタンフォームは、内部のリブ間の膜が効率よく除去され、空隙容量が汎用軟質ポリウレタンフォームに比して大変大きいことが、構造上の特徴である。従って、無膜軟質ポリウレタンフォームは、セルに膜が無く、骨格構造を成しているため、高い通気性および通水性を有する。しかも、この無膜軟質ポリウレタンフォームは、汎用軟質ポリウレタンフォームが有する硬さ、密度などの特性が無膜化によって損なわれず、むしろ引っ張り強さはより向上するという特徴を有している。
【0003】
また、軟質ポリウレタンフォームについて、プロファイル加工などの加工によりその表面に凹凸を施したものが用いられており、通気性をさらに向上させるために凹部に軟質ポリウレタンフォームを貫通するスリットを設けたものが使用されている。
【0004】
特許文献1には、全て無膜軟質ポリウレタンフォームより構成され、表面をプロファイル加工した上側のシートと、中間の下側シートと、その下に配される高さ調整用マットとの3層構造の積層体を内包材とする枕が示されている。
【0005】
特許文献2には、枕本体と枕本体に内蔵される調節素材とからなり、枕本体の表面はプロファイル加工され、かつ、枕本体及び調節素材を貫通するスリットを設けた枕の内包材が示されている。しかし、特許文献2には、無膜軟質ポリウレタンフォームを使用するとの記載はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−139653号公報
【特許文献2】特開2004−159930号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、ポリウレタンフォームは通気性及び速乾性はあるものの本来保温性及び保湿性が高いものであるため、ポリウレタンフォームを内包材とする枕は、その使用中において、身体の頭部が接する枕の上部が最も温度が高くかつ湿気を含むため蒸れる状態となるので寝苦しくなる。特許文献1に記載の枕の内包材では、無膜軟質ポリウレタンフォームが通気性が高くかつ通水性が良好であるが、これはフォーム内の微少な空隙を通じての空気の移動による熱及び湿気の拡散放出によるものであるため、放熱及び放湿が緩やかである。したがって、枕の上部に籠もった熱及び湿気を即座に放出するためには、無膜軟質ポリウレタンフォームだけでは不十分である。
【0008】
また、特許文献2に記載のものは、枕本体及び調節素材を貫通するスリットにより枕上部に籠もった熱や湿気をスリットを通じて枕の外部に放出するものであるが、例えばポリウレタンフォームの内部空隙に吸収保持された熱や湿気は容易に放出できず、枕全体の温度及び湿気を放出するには難点がある。
【0009】
そこで、本発明者は、鋭意研究を重ね、枕上部に籠もった熱や湿気は即座に放出し、ポリウレタンフォームの内部に吸収された熱や湿気は徐々に放出されて枕全体の熱及び湿気が放出しうるようにした枕の内包材を案出した。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る高通気性枕内包材は、少なくとも上層部と下層部との2層一体構造をなし、上層部は、汎用軟質ポリウレタンフォームから構成され、その上面側に凹凸部が形成され、その凹部においては上層部を貫通する穴が形成され、下層部は、無膜軟質ポリウレタンフォームから構成されていることを特徴とするものである。
【0011】
また、上記の構成に加え、下層部の下方に、汎用軟質ポリウレタンフォームから構成され、貫通穴を有する平板状の枕高さ調整用マット2個一組が組み込まれている構成としてもよい。
【発明の効果】
【0012】
上記のように本発明に係る高通気性枕内包材は、少なくとも上層部と下層部との2層一体構造をなし、上層部が汎用軟質ポリウレタンフォームから構成され、その上面側に凹凸部が形成され、その凹部においては上層部を貫通する穴が形成されているので、この上層部に籠もった熱や湿気は前記貫通穴を通じて下層部へ即座に放出される。そして、下層部が無膜軟質ポリウレタンフォームから構成されているので、上層部から下層部に放出された熱や湿気は、拡散放出により枕全体から緩やかに放熱及び放湿される。したがって、当該高通気性枕内包材を使用して枕を構成すると、蒸れ感が無く、快適な睡眠が得られる。
【0013】
また、下層部の下方に、汎用軟質ポリウレタンフォームから構成され、貫通穴を有する平板状の枕高さ調整用マット2個一組が組み込まれている構成とした場合には、まず、貫通穴を有しているため、上記下層部に放出された熱や湿気が前記マットに放出され、マットの貫通穴を通じて内包材下方へ放出される。また、マットが2個一組であるため、マットを使用しない状態、マットを1個使用した状態、マットを2個使用した状態の3段階の高さ調節ができる。したがって、当該高通気性枕内包材を使用して枕を構成すると、蒸れ感が無く、快適な睡眠が得られるだけでなく、使用者の好の高さに応じて枕の高さを調節することができるので、寝心地がさらに良好となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施例に係る高通気性枕内包材の斜視図である。
【図2】本発明の実施例に係る高通気性枕内包材の分解斜視図である。
【図3】本発明の実施例に係る高通気性枕内包材の断面図である。
【図4】本発明の実施例に係る高通気性枕内包材の上層部の部分拡大斜視図である。
【図5】本発明の実施例に係る高通気性枕内包材を使用して枕を完成させた
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る枕の高通気性枕内包材について、添付の図面に基づき詳細に説明する。
【実施例】
【0016】
図1〜図4において、Aは高通気性枕内包材本体(以下、単に「内包材本体」という。)を表し、B、B’は枕高さ調整用マット(以下、単に「マット」という。)を表し、この内包材本体AにマットB、B’を組み合わせて内包材Pを構成し、図5に示すように、この内包材Pを側地Qにより覆い包んで枕Mが形成される。
【0017】
内包材本体Aは、図3及び図4に示すように、汎用軟質ポリウレタンフォームから構成された上層部10と無膜軟質ポリウレタンフォームから構成された下層部20との2層一体構造をなすものである。前記上層部10は、その上面側にプロファイル加工により凹部11と凸部12とが形成され、その凹部11には上層部10を貫通する穴、本実施例においてはスリット11aが形成されている。上層部10の下面は下層部20の上面の形状に合わせた形状をなしており、内包材本体Aは上層部10の下面と下層部20の上面とが接着されて一体構造をなしている。
【0018】
上記構成の内包材本体Aは、上層部10が、汎用軟質ポリウレタンフォームから構成され、その上面側に凹凸部11、12が形成され、その凹部11に上層部10を貫通するスリット11aが形成されているので、この上層部10の凹凸空間部に籠もった熱や湿気が前記スリット11aを通じて下層部20へ即座に放出される。そして、無膜軟質ポリウレタンフォームから構成された下層部20においては、上層部10から下層部20に放出された熱や湿気が、無膜軟質ポリウレタンフォームの拡散放出作用により枕全体から緩やかに放熱及び放湿されることになる。したがって、当該内包材本体Aは、これを使用すると蒸れ感が無い。
【0019】
下層部20の下面はフラットに構成されており、その下方に2枚一組のマットB、B’が重ねられる。マットB、B’は、同一形態をなすものであって、いずれも汎用軟質ポリウレタンフォームから構成され、その上面及び下面がフラットな平板状の形態をなしている。そして、このマットB、B’には、いずれにもこれを貫通する貫通穴、本実施例においてはスリットB1、B1’が形成されてなるものである。
【0020】
上記構成のマットB、B’は、これを貫通するスリットB1、B1’が形成されているため、前記した下層部20に放出された熱や湿気の一部が前記マットB、B’に放出され、マットB、B’のスリットB1、B1’を通じて内包材の下方へ放出されることになる。したがって、上記構成のマットB、B’と前記した内包材本体Aとからなる内包材Pを使用して枕を構成すると、内包材本体Aによる蒸れ感の無意向かを妨げることがない。しかも、マットB、B’が2個一組であるため、マットを使用しない状態、マットを1個使用した状態、マットを2個使用した状態の3段階の高さ調節ができる。すなわち、図5に示す枕Mは、マットB、B’のうちの1個のマットBを使用したものであるが、この枕Mの高さを低くする場合には、マットBを除去すればよく、逆にこの枕Mの高さを高くする場合には、マットB’を追加すればよい。
【0021】
以上のように本実施例に係る内方材Pは、これを使用して枕Mを構成すると、蒸れ感が無く、快適な睡眠が得られるだけでなく、使用者の好の高さに応じて枕の高さを調節することができるので、寝心地がさらに良好となる。
【符号の説明】
【0022】
A・・・高通気性枕内包材本体
10・・内包材本体の上層部
11・・上層部の凹部
11a・凹部における上層部を貫通するスリット
12・・上層部の凸部
20・・内包材本体の下層部
B・・・枕高さ調整用マット
B’・・枕高さ調整用マット
B1・・枕高さ調整用マットを貫通するスリット
B1’・枕高さ調整用マットを貫通するスリット
P・・・内包材
Q・・・側地
M・・・枕

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも上層部と下層部との2層一体構造をなし、
上層部は、汎用軟質ポリウレタンフォームから構成され、その上面側に凹凸部が形成され、その凹部においては上層部を貫通する穴が形成され、
下層部は、無膜軟質ポリウレタンフォームから構成されている
ことを特徴とする高通気性枕内包材。
【請求項2】
下層部の下方に、汎用軟質ポリウレタンフォームから構成され、貫通穴を有する平板状の枕高さ調整用マット2個一組が組み込まれている
ことを特徴とする請求項1に記載の高通気性枕内包材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−110266(P2011−110266A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−270172(P2009−270172)
【出願日】平成21年11月27日(2009.11.27)
【出願人】(591034143)西川リビング株式会社 (27)
【Fターム(参考)】