説明

高電圧ニオブ酸化物およびそれを含むキャパシター

Nb1−xTaO粉末であり、ここでxは0.1〜0.5である。さらに、この粉末、ならびにニオブサブオキシド粉末は、少なくとも1つのドーパント酸化物でドープされ得る。その粉末のプレス体、焼成体、キャパシターアノード、およびキャパシターも記載される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニオブサブオキシドのようなニオブ酸化物に関し、さらにそれから製造されるアノードおよびキャパシターに関する。
【背景技術】
【0002】
米国特許第6,759,026号;6,639,787号;6,592,740号;6,576,099号;6,527,937号;6,462,934号;6,416,730号;6,391,275号;6,373,685号;および6,322,912号明細書;
ならびに米国公開特許出願である2005/0084445;2004/0040415; 2003/0026756;2002/0172861;2002/0135973; 2002/0114722; 2001/0036056; 2005/0025699 および2005/0008564号に記載されるように(これらはすべて引用によりここに組み入れられる。)、ニオブサブオキシドが開発されてきており、キャパシター用途用のアノードを形成するのに有用である。これらの粉末は、アノードに形成されるとき、約200,000CV/g以上ものキャパシタンスを有することができ、低いDC漏れ、たとえば約0.1nA/CV〜約5.0nA/CVを有し得る。これらの特許に記載されるように、これらのニオブサブオキシド製品のための代表的な形成電圧は、アノードに形成されるとき、約6〜約70V,好ましくは約35Vであり得る。これらの特許は、70V〜130Vのような、他の高い形成電圧を記載する。これらの上述の特許は、DC漏れ、キャパシタンスをおよび形成電圧に関して特性の調和を記載するが、比較的高い形成電圧が用いられるにつれて、通常、DC漏れは増加し、それは高電圧応力で誘電体層における上昇した電子および/またはイオン伝導が生じる。高伝導または粉末中の汚染物、および陽極酸化処理中に発生する種々の欠陥、たとえば酸素空位、結晶化、物理的欠陥等、の結果であり得る。キャパシター粉末製造者は、粉末中の汚染物の含量を減少させることにより、この課題を伝統的に対処してきた。しかし、このアプローチは、材料精製の高コストならびに他の技術的理由により、技術的および商業的な制約がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって、電荷キャリアが固定化され、または補償され、それにより比較的高い形成電圧でニオブサブオキシド粉末を得、低いDC漏れを得ることができるように、誘電体層を安定化するのが非常に望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の特徴は、比較的高い形成電圧が容易となるように、減少され得る陽極酸化定数(anodization constants)を有するニオブサブオキシド材料を提供することである。
【0005】
さらに、本発明の特徴は、比較的高い形成電圧でDC漏れを調節しながら、比較的高い形成電圧を達成することである。本発明のさらなる特徴は、高い形成電圧を容易にし得る粉末を提供することである。
【0006】
本発明の付加的な特徴および利点は、次に続く説明において部分的に示され、そしてその記載から明らかであり、または本発明の実施により学ばれ得る。本発明の目的および他の利点は、説明および特許請求の範囲において特に指摘される構成および組み合わせにより実現され、達成されるであろう。
【0007】
これらおよび他の利点を達成するために、そして本発明の目的に沿って、ここに具体化され、広く記載されるように、本発明はNb1−xTaO粉末に関し、ここでxは0.1〜0.5である。
【0008】
さらに、本発明はNb1−xTaO粉末を含む粉末に関する。さらに、本発明は、少なくとも1つのドーパント酸化物でドープされたNb1−xTaO粉末に関する。さらに、本発明は、本発明の粉末を含む焼成されたプレス体、よびそれから製造されたキャパシターアノードに関する。
【0009】
さらに、本発明は、少なくとも1つのドーパント酸化物でドープされた式Nbを有する(ここで、xは2より小さく、yは2.5xより小さい)ニオブサブオキサイド粉末に関する。
【0010】
さらに本発明は、このニオブサブオキサイド粉末から製造され、焼成されたプレス体およびアノードに関する。
【0011】
さらに、本発明は、粉末、焼成されたプレス体、キャパシターアノード、およびキャパシターに関し、本発明の1つ以上の粉末を使用して達成される有益な特性を有し、たとえば比較的高い電圧で形成し得、なお安定したDC漏れおよび/または陽極酸化定数の低下を達成し得る。
【0012】
前述の一般的説明および次の詳細な説明の両方は、典型的で説明的なものにすぎず、特許請求の範囲に記載されるような、本発明のさらなる説明を提供しようとするものである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
添付図面は、本願に組み入れられ、その一部を構成するが、本発明のいくつかの態様を示し、説明とともに本発明の1つ以上の原理を説明するのに役立つ。
【図1】高電圧Nbサブオキシド製品の形成のための2つの経路の模式的説明である。
【図2】本発明のある試料のX線回折図である。
【図3】本発明のある試料のX線回折図である。
【図4】本発明のある試料のX線回折図である。すなわち、検討において製造されたYドープNbO試料のX線回折データであり、純NbOに類似する主要ピークを示すフルスケール強度を示す。
【図5】本発明のある試料のX線回折図である。すなわち、検討において製造されたYドープNbO試料のX線回折データであり、Yドープを伴うピーク位置のシフトを示す、拡大された2シータスケールを示す。
【図6a】いくつかの試料についての形成電圧の関数としてのCV/g挙動を示す図。
【図6b】いくつかの試料についての形成電圧の関数としてのDC漏れ挙動を示す図。
【図7】本発明のある試料のX線回折図である。すなわち、検討において製造されたYドープNb1−xTaO試料のX線回折データであり、純NbOに類似する主要ピークを示すフルスケール強度を示す。
【図8】本発明のある試料のX線回折図である。すなわち、検討において製造されたYドープNb1−xTaO試料のX線回折データであり、残留Ta小ピークの、拡大された強度スケールを示す。残留Ta強度低下におけるYドープの効果に注目されたい。
【図9】Nb1−xTaO材料におけるY含量の関数としてのDC漏れを示す図。
【図10】Nb1−xTaO材料のための形成電圧の関数としてのDC漏れを示す図。
【図11】種々のドナー酸化物Nbサブオキシド材料のための形成電圧の関数としてのDC漏れを示す図。
【図12】種々のドープされた酸化物Nbサブオキシド材料のための形成電圧の関数としてのCV/gを示す図。
【図13】種々のドーパント酸化物Nbサブオキシド材料のための粉末BET表面積の関数としてのCV/gを示す図。
【図14】金属の組み合わせ(Fe+Ni+Cr)の関数としてのDC漏れ(60Vでの形成)を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の1つの態様において、本発明はNb1−xTaOに関し、xは0.1〜0.5である。本発明の目的のために、粉末は、このNb1−xTaO粉末からなるか、または
そのNb1−xTaO粉末は、たとえば1つの層としてもしくは混合物として存在する、粉末全体の大部分として存在し得る。Nb1−xTaO粉末は、90wt%、またはそれより多い、たとえば99%もしくは99.9%もしくはそれより高い、または100%、の量で存在し得る。Nb1−xTaO粉末は、存在する、主要な粉末であってもよく、そこでは存在する他の粉末は不純物として考えられる。すなわち、粉末は、Nb1−xTaO粉末から本質的になり、またはそれからなる。任意には、xは0.2〜0.4、もしくは0.25〜0.35、または0.1〜0.5の範囲内のいかなる他の範囲(たとえば、0.15、0.2、0.25、0.3、0.35、0.4、0.45)であり得る。Nb1−xTaO粉末は、結晶性Nb1−xTaO粉末および/または無定形Nb1−xTaO粉末、または混合物またはそれらの組み合わせであってもよい。
【0015】
粉末物理特性は、表4、8、12および16に示され、BET表面積(1.32〜1.81m/g)、スコット密度(20.4〜25.9g/in)、およびHoriba LA-910光散乱法(120秒超音波処理なし、およびあり)で測定された、平均粒径(d50)、それぞれ80〜124μmおよび28〜42μmを含む。本発明の粉末は、これらの上述の物性の1つ以上を有し得る。BET表面積は、1〜3.0m/gもしくはそれより高く、または1.2〜2.5m/g、または1.3〜2.2m/g、または1.4〜2.0m/gであり得る。スコット密度は、これらの限定より低くても高くてもよい。流動はニオブまたはタンタル粉末のために商業的に受け入れられる標準により測定される。粉末流速はASTM B213−97に基づいて測定され得る。120秒超音波処理なしの平均粒径は、60〜175μm、または65〜160μm、または75〜150μm、または85〜140μmであり得る。120秒超音波処理ありの平均粒径(d50)は、15〜60μm、または20〜50μm、本発明の粉末は、これらの物性の1つ以上を有し得る。粉末は、二次凝集されていなくても二次凝集されていてもよい。
【0016】
1つ以上の態様において、Nb1−xTaO粉末は、少なくとも1つのドーパント酸化物でドープされ得る。1例として、粉末は、Y,Si,Mn,Al,Ce,Vまたはそれらの組み合わせの少なくとも1つの酸化物でドープされ得る。特定の例は、Y3、SiO2、Mn4、Al3、Mn3、CeO2、もしくはVを含むが、これらに限定されない。粉末は、+2またはそれより多い(たとえば、+3、+4)カチオン価を有する少なくとも1つのドーパントでドープされ得る。ドーパントは、ニオブのイオンサイズの10%以内であるイオンサイズを有し得る。すなわち、ドーパントは、ニオブのイオンサイズと同じか、より大きいか、または小さいイオンサイズであるイオンサイズを有し得、たとえばニオブのイオンサイズの10%以内であり得る。ドーパント酸化物は、いかなる量でもNb1−xTaO粉末とともに存在し得る。たとえば、その量は、ドーパント酸化物が存在しない場合と比べて、その材料のDC漏れ特性を低下させるのに十分な量であり得る。存在するドーパント酸化物の量は、たとえば粉末の全質量に基づいて3wt%以下であり得る。たとえば、ドーパント酸化物の量は、0.25〜3wt%、0.5〜2.5wt%、0.5〜2wt%、または0.5〜1.75wt%の範囲に及び得る。これらの範囲は、おおよその範囲であり得ると理解されるべきである。このように、任意に、各範囲は、各数値の前に「約」という用語を含むと理解され得る。たとえば、0.25〜3wt%は、任意に約0.25〜約3wt%、等であり得る。
【0017】
ドーパント酸化物は、任意に、いかなる純度レベルも有し得る。たとえば、ドーパント酸化物の純度レベルは、純度wt%に関して95%以上であり得る。他の範囲は、98%純度、99%純度もしくはそれより高い、99.5%純度もしくはそれより高い、99.9%純度もしくそれより高い、または99.995%純度もしくはそれより高い、を含む。適切な範囲は、95%〜99.995%純度もしくはそれより高い、98%〜100%純度、等である。
【0018】
ドーパント酸化物は、いかなる方法によってもNb1−xTaO粉末に導入され得、たとえばドーパント酸化物を、もし存在するとすれば固体(たとえば粉末)として、Nb1−xTaO粉末と混合することによる。好ましくは、均一混合は、Nb1−xTaO粉末にドーパント酸化物を適切に分布させるために達成される。Nb1−xTaO粉末をドープする、他の方法は、に気体、液体またはそれらの組み合わせの使用を含むが、これらに限定されない。ドーパント酸化物が導入され得、そこではドーパント酸化物の金属前駆体が導入され、ついで酸化してドーパント酸化物を形成する。ドーパントは、分離した、混合された、または共摩砕された基材粒子上に表面被覆として適用され得る。被覆は、基材粒子の存在下に液体ドーパント前駆体からのドーパント酸化物の沈殿により、または基材粒子および液体ドーパント前駆体の混合物を蒸発(乾燥)させることにより、付着され得る。あるいは、ドーパントは、焼成前にキャパシターアノード製造時にNbOまたはNb1−xTaO粉末に適用され得る。
【0019】
本発明の1つ以上の態様において、本発明は、さらに本発明の粉末からプレス体を形成することを含む。このプレス体は、未焼成体(グリーンボディ)であり得る。さらに、プレス体は、プレス、焼成等の従来法を用いて、焼成アノードまたはキャパシターアノードを形成するために焼成され得る。さらにキャパシターアノードは、キャパシター(たとえば、湿った、または乾燥した固体キャパシター)を形成するための1成分として含まれ得る。さらにキャパシターアノードは、キャパシターアノード上に形成される誘電体層を有し得る。いかなるプレス密度も、粉末のプレス体を形成するのに用いられ得る。たとえば、プレス密度は、3.0g/cc以上であり得る。たとえば、プレス密度は、3.0g/cc〜3.75g/ccであり得る。プレス密度は、3.1g/cc、または3.2g/cc、または3.3g/ccであり得、それらは高電圧形成キャパシターアノードに特に有利である。たとえば、プレス密度は、60,000〜75,000CV/gのキャパシタンスを有する、60V〜75Vの形成電圧で形成されたキャパシターアノードに有用であり得る。本発明のキャパシターアノードは、A,B,CおよびDのケースサイズを有するキャパシター設計に組み入れられ得る。
【0020】
本発明の1つ以上の態様において、Nb1−xTaO粉末からの焼成アノードは、径1μmよりも大きい(たとえば、1.1μm〜10μm)累積細孔容積を有し得、3.0g/cc以上のような、比較的高いプレス密度でさえも、0.010mL/g以上のレベル(たとえば、0.050mL/g〜約0.1mL/g、または0.025mL/g0.07mL/g)に維持される得、プレス密度に関して上述の範囲を含む。これらの細孔容積は、キャパシター形成においてカソード含浸に十分である。さらに、これらの焼成アノード細孔容積は、60V〜75Vの形成電圧で、たとえば50,000〜75,000CV/gまたはそれ以上のキャパシタンスを有する、キャパシターアノードとともに達成され得る。
【0021】
Siの酸化物、またはMnの酸化物、たとえばSiOおよび/またはMnでドープされたNb1−xTaO粉末は、すべてのプレス密度および焼成温度で、比較的低いDC漏れを得るのに最も好適であった。
【0022】
ドーパント酸化物は、いかなる物理的および化学的物性を有し得る。たとえば、ドーパント酸化物は、使用され得る、種々の異なる表面積を有し得る。ドーパント酸化物の表面積は、BET表面積について、約0.1〜約500m/g、たとえば約1〜約50m/g、または3〜25m/g、であり得る。ドーパント酸化物は、DC漏れに対する金属汚染物の負の効果を抑制する能力を有する。もっと詳しくは、ドーパント酸化物は、もしNb金属が不純物を有するならば、不純物を有するNb金属の効果を抑制し得る。ドーパント酸化物の使用とともに、Nb1−xTaO粉末、または式Nbを有するニオブサブオキシド粉末の純度は、Nbサブオキシドの純度に関して、約99wt%〜約90wt%であり得、そして好ましくはNbまたはNb1−xTaO材料が99.9wt%の純度を有するかのように、比較的低いDC漏れを得る。
【0023】
本発明の1つ以上の態様において、Nb1−xTaO粉末から形成される約5.0nA/CVより小さいDC漏れ、たとえば約0.10nA/CV〜4.5nA/CV、を有し得る。さらに、アノードは、形成温度90℃で、形成電圧60V〜75Vの形成電圧で、50,000〜75,000CV/gまたはそれ以上のキャパシタンスを有し得、キャパシターアノードは、3.0g/cc〜3.5g/ccのプレス密度で形成され、そしてアノードは、1200℃〜1750℃の温度(たとえば、1200℃〜1400℃または1350℃)で10分間、焼成される。焼成時間は、もっと短くても長くてもよい。本発明の目的のために、すべての記載されるキャパシタンスは、上述のテストスタンダードに基づく。
【0024】
本発明の1つ以上の態様において、いったん誘電体層が、本発明のキャパシターアノード上に形成されると、顕微鏡による分析を用いて、誘電体層内には場誘導(field-induced)結晶化は生じない。したがって、本発明の1つ以上の態様において、本発明は、キャパシターアノード(たとえば、Nb)上に形成された誘電体層とともに、Nb1−xTaO粉末、またはNb1−xTaOを含む粉末、から製造されたキャパシターアノードに関し、そして誘電体層は、誘電体層内で場誘導結晶化は有さない。誘電体層内での場誘導結晶化の欠失は、60V〜75Vまたはそれ以上の形成電圧で形成され、そして任意に上述のDC漏れおよび/またはキャパシタンスを有する、アノードを含む、本発明のいかなるアノードとともにも存在し得る。
【0025】
本発明の1つ以上の態様において、Nb1−xTaO粉末から形成されたキャパシターアノードは、粉末中にTaを有しないか、または最低量を有し得る。たとえば、好ましくは本発明のアノードには、Taが存在しない。本発明のキャパシターアノードは、キャパシターアノード中に存在するトレース量のTaを有し、たとえば約0.01wt%〜約5.0wt%、または約0.1wt%〜約0.5wt%である。Taは、結晶性Taに関し、粉末中に結晶性Ta相として存在し得る。Nb1−xTaO粉末を調製する際に、たとえばニオブ水酸化物またはニオブ酸化物とともに、タンタル酸化物またはタンタル水酸化物を用いて製造され得る。上述の特許において記載される方法と同様の方法を用いて、これらの供給材料は、もし出発材料が始めるべき酸化物でないならば、それらを仮焼してタンタル酸化物またはニオブ酸化物に任意に転換し得る。ついで、これらの材料は、ニオブまたはNbHと混合され、Nb1−xTaO粉末を得るために熱処理に供され得る。熱処理は、供給材料をNb1−xTaO粉末に変換し得るに十分な、いかなる温度でもよく、たとえば800℃〜1400℃、真空中で1〜4時間、またはそれ以上である。他の熱処理時間も使用され得る。望ましい特定の粉末に依存して、たとえば例に示されるように、ニオブおよびタンタル供給材料の量を調節する。
【0026】
供給材料に関して、好ましくは供給材料の粒径は、約0.05μm〜約10μm、たとえば約1.0μm〜約5.0μmである。他の種類も使用され得る。
【0027】
本発明の1つ以上の態様において、本発明は、少なくとも1つのドーパントでドープされた、式Nbを有するニオブサブオキシド粉末に関し、ここでxは2より小さく、yは2.5xより小さい。代表的な還元されたニオブ酸化物は、NbO、NbO0.7、NbO1.1、NbO、およびそれらの組み合わせを含み、他の酸化物は存在していても、存在しなくてもよい。
【0028】
通常、本発明の還元されたニオブ酸化物は、酸素に対するニオブの原子比が約1:2未満、たとえば1:1.1、1:1または1:0.7を有する。言い換えると、還元されたニオブ酸化物は、好ましくは式Nbを有し、ここでNbはニオブ、xは2以下、yは2.5xより小さい。例として、xは1、yは1.1、1.0、0.7のような、2未満であり得る。ドーパント酸化物、および量、例等に関するドーパント酸化物の他特性は、上述のものと同一である。同様の利点が、陽極酸化定数の低下、上述のような比較的高い電圧での形成能力、および上述のようなDC漏れを安定もしくは改良する能力に関して、この態様において達成される。したがって、粉末、プレス体、焼成プレス体、キャパシターアノードおよび上述のように、それらから形成されるキャパシターの種々の特性は、同様に、この態様において、すべて組み入れられる。
【0029】
いずれの態様においても、陽極酸化定数は約1.5nm/V〜約3.5nm/V、たとえば約2.0nm/V〜約3.0nm/Vであり得る。
【0030】
図1は、本発明の態様について、種々の形成経路の模式図を示す。その方法は、ゲッター材料(たとえばニオブ)の存在下で、酸素が減少したニオブ−タンタル酸化物を生成するのに十分な時間と十分な温度で、ニオブ酸化物(および/またはタンタル酸化物)から、ゲッター材料に酸素原子の移動を可能にする雰囲気中で、出発ニオブ酸化物(または前駆体)をタンタル酸化物(または前駆体)で熱処理する段階を含み得る。
【0031】
本発明の目的のために、ニオブ酸化物は、ニオブ金属および/またはその合金の少なくとも1つの酸化物であり得る。出発ニオブ酸化物の特定の例は、Nbである。
【0032】
本発明で使用されるニオブ酸化物(または前駆体)および/またはタンタル酸化物(または前駆体)は、いかなる形状またはサイズであってもよい。好適には、ニオブ酸化物(または前駆体)および/またはタンタル酸化物(または前駆体)は、粉末または多数の粒子の形態である。
【0033】
使用され得る粉末の種類の例は、フレーク状、角ばった、コブのある、およびそれらの混合物または変形を含むが、これらに限定されない。好ましくは、ニオブ酸化物および/またはタンタル酸化物は、酸素が減少したニオブ−タンタル酸化物を、もっと有効に導く粉末の形態である。このような好適な粉末の例は、約60/100〜約100/325メッシュおよび約60/100〜約200/325メッシュサイズを有する粉末を含む。もう1つのサイズの範囲は、−40メッシュ〜約−400メッシュである。
【0034】
本発明の目的のためのゲッター材料は、特定の原料ニオブ酸化物を酸素が減少したニオブ酸化物に還元することができる材料である。好ましくは、ゲッター材料は、タンタル、ニオブ、または両方を含む。他のゲッター材料も、単独で、またはタンタルもしくはニオブゲッター材料と組み合わせて使用され得る。また、他の材料もゲッター材料の一部を形成し得る。ゲッター材料は、いかなる形状またはサイズであってもよい。ゲッター材料は、ニオブ酸化物を還元するために最も効率的な表面積を有するように粉末の形態であり得る。したがって、ゲッター材料は、フレーク状、角ばった、コブのある、およびそれらの混合物または変形であってもよい。通常、十分な量のゲッター材料が、熱処理されるニオブ酸化物を少なくとも部分的に還元するために存在する。さらに、ゲッター材料の量は、ニオブ酸化物に望まれる酸化量に依存する。本発明の1つ以上の態様において、その方法は犠牲のゲッターの使用を必要としない。酸化物(Nbおよび/またはTa)およびゲッター成分(NbH)の両方は、一緒に摩砕され、サブオキシド材料を形成し、ついに目標組成を形成する。
【0035】
出発ニオブ酸化物(または前駆体)および/またはタンタル酸化物(または前駆体)が供される熱処理は、ニオブおよびタンタルのような金属の熱処理に一般的に用いられる加熱装置または炉内で実施され得る。ゲッター材料の存在下で、ニオブ酸化物(または前駆体)および/またはタンタル酸化物(または前駆体)の熱処理は、酸素が減少したニオブ−タンタル酸化物を形成するに十分な温度と十分な時間で行われる。熱処理の温度および時間は、ニオブ酸化物の還元量、ゲッター材料の量、およびゲッター材料の種類ならびに出発ニオブ酸化物(または前駆体)および/またはタンタル酸化物(または前駆体)の種類、のような種々の要因に依存する。通常、ニオブ酸化物の熱処理は、約800℃以下〜約1900℃、そしてもっと好ましくは約1000℃〜約1500℃、最も好ましくは約1250℃〜約1350℃の温度である。熱処理は、約5分間〜約100分間、たとえば約30分間〜約60分間の時間、実施される。本出願を考慮して、日常的な試験は当業者に、出発ニオブ酸化物またはタンタル酸化物の適切な、または望ましい還元を得るように、熱処理の温度および時間を調節することを可能にする。熱処理は、酸素原子をニオブ酸化物からゲッター材料に移すことを可能にする雰囲気中で行われる。熱処理は、好ましくは水素のみである水素含有雰囲気、または真空中、で行われ得る。不活性ガスのような、他の気体も、水素と反応しない限り、使用され得、水素とともに存在し得る。熱処理の間、水素雰囲気は、約10Torr〜約2000Torr、もっと好ましくは約100Torr〜約1000Torr、そして最も好ましくは約100Torr〜約930Torr、の圧力である。H2と不活性ガス、たとえばAr,との混合物が使用され得る。さらに、N2中のH2は、ニオブ酸化物のN2レベルの調節を行うのに用いられ得る。熱処理の間、一定の熱処理温度が熱処理プロセス全体で使用され得、または温度の変動もしくは段階的な温度が使用され得る。さらに、酸素が減少したニオブ−タンタル酸化物は、たとえば約100ppm〜約80,000ppmのN2または約130,000ppmのN2、の窒素レベルを含有し得る。適切な範囲は、約1,000ppm〜約50,000ppmのN2および約5,000ppm〜約15,000ppmのN2を含む。
【0036】
さらに、本発明は、キャパシター表面にニオブ酸化物膜または他の金属酸化物膜を有する、本発明によるキャパシターアノードに関する。アノードは、電解キャパシターの一部であり得る。アノードは、固体電解アノードであり得、または湿式アノードであり得る。好ましくは、膜はペントオキシド膜である。金属粉末をキャパシターアノードおよび種々のキャパシター設計にする手段は、当業者に知られており、ここで用いられ得、たとえば米国特許第4,805,074、5,412,533、5,211,741、および5,245,514号および欧州出願第0634762A1および0634761A1に示され、これらはすべて引用によりここに組み入れられる。
【0037】
本発明のキャパシターは、種々の末端用途に用いられ得、たとえば自動車エレクトロ二クス、携帯電話、コンピュータ(モニター、マザーボード等)、TVおよびCRT,プリンター/コピー機、電力サプライヤー、モデム、ノート型コンピュータ、ディスクドライバー等のコンシューマーエレクトロ二クス等である。
【実施例】
【0038】
本発明は、次の例によりさらに明かにされるが、これらは本発明の典型であるに過ぎない。
例1
次の実験および評価方法が、例において使用された。
NbおよびTaの酸化物の仮焼:
受領したままのTa(OH)5またはNb(OH)5試料が、所望の粒径およびBET表面積を有する供給材料を得るために仮焼された(公開米国特許出願2005/0025699号に記載される(引用によりここにすべて組み入れられる)共摩砕方法を用いてNbO系材料を製造するために)。Ta(OH)5またはNb(OH)5は、仮焼の際に、対応する酸化物(TaO5またはNbO5)に変えられた。仮焼は、ラボ規模のマッフル炉(Thermolyne,電気抵抗)内で、40〜60gの大きさで、磁器坩堝を用いて行われた。比較的大規模の仮焼(2〜16kgサイズ)が、パイロット規模の電気マッフル炉内で、Amersil石英ボートを用いて実施された。すべての仮焼材料は、BET表面積試験の前にSweco振動篩を用いて50メッシュで篩い分けされた。
SGグレードNbHの調製:
NbH の多数のロットが、水中でアトライター摩砕NbHにより調製された。冶金グレードNbインゴットスライスが水素化され、」そして40メッシュ未満の粒径グレードに砕かれた。ついで、Union Process 5S アトライターミル内で、3/16インチ(約0.5cm)径球形Nb媒体を用いて、約6時間、粗湿式粉砕された(水の存在下)。ついで、粗粉砕されたNbH材料は、1/16インチ媒体で、再び摩砕され、SGグレードNbHを製造した。」1Sおよび%Sサイズミルは、1/16インチサイズNb球状媒体とともに使用され、夫々410および190RPMで運転された。1Sミルにおける代表的なバッチサイズは約4kg、一方5Sミルは、16〜20kgサイズのロットを産生した。摩砕時間は、目標BET表面積3.8m/gに対して、20〜25時間に及んだ。摩砕の終わりに、スラリーは、Horiba粒径分析のためにサンプリングされ、夜通し静置され、ついで約50%固体の沈殿物を得るためデカントされた。沈殿物は、真空下に120℃で乾燥され、ついで50メッシュで篩い分けされ、粉末にされた。最終的な粉末は、BET表面積、酸素および水素が測定された。
NbHおよびTaO5/NbO5の共摩砕:
仮焼および篩い分けされたTaO5およびNbO5材料は、各試料について特定された、適切なモル比で、NbH粉末(〜3.5m/g)と人手で混合された。YOドープした試料について、商業的に入手し得るYOナノ粒子(25〜30nm、40〜45m/g、sigma-aldrich.com)が、さらにこの混合物に添加された。ついで、混合物は、01HDアトライターミルに充填された。共摩砕の操作条件は表3に示される。摩砕の終わりに、スラリーは、Horiba粒径分析のためにサンプリングされ、夜通し静置され、ついで約50%固体の沈殿物を得るためデカントされた。沈殿物は、真空下に120℃で乾燥され、ついで乾燥ケーキを得るために不動態化された。
生の篩い分け:
乾燥された共摩砕混合物は、SWECO振動篩を用いて最終的な最大粒径(−40メッシュ/106μm)に篩い分けされた。粉末は、望ましい範囲である1.1〜1.2g/ccに最終NbO粉末のバルク密度を低下させるために微細メッシュを通過させて篩い分けされた。最終篩い分け段階は、1段階篩い分けで通常、関連のある過度の損失および篩詰まりを避けるために、粗い20メッシュおよび中間50メッシュ篩わけ段階により先行された。篩い分けされた製品は、BET表面積、バルク密度およびHoriba粒径分布について試験された。
NbまたはNb1−xTaOへの転換:
篩い分けされた粒子混合物は、1350〜1375℃で真空中、4時間、熱処理し、ついで850℃で水素(2psig)中、1時間の反応段階により、NbまたはNb1−xTaOに転換された。熱処理段階は、粒子を十分に硬くするのに用いられ、その結果、製品は粉末で良好な流動性、および焼成アノード形態で細孔構造、を有する。すべての試料は、〜50gサイズで3インチアルミナ坩堝中に置かれ、熱処理された。アルミナ坩堝は、8インチ×10インチのMoトレイ内に置かれた。
NbまたはNb1−xTaOの特性:
熱処理および反応プロセスに続いて、NbまたはNb1−xTaO試料は、塊りを破壊し、大きな二次凝集物(アグロメレート)を除去するために、50メッシュで篩い分けされた。ついで、試料は、流動性、バルク(スコット)密度、0〜2分の音波処理時間についてのHORIBA粒径分析、ならびに2.8〜3.5g/ccのプレスされた、生の密度を有し、ついで1380℃で、10分間焼成されたアノードについての湿式電気的(CV/gおよび180秒でのDC漏れ)評価について、評価された。形成電圧は、30〜60Vに及んだ。生の破砕強度もプレスされたアノードについて評価された。焼成アノードの物理的性質、たとえば焼成密度および径収縮も測定された。XRD分析は、20〜45°、2
θで、0.5度/分の走査速度を用いてMicron Inc.で実施された。
【0039】
実験設計、原材料および処理データならびにNb1−xTaO試料について、特性データは、表1〜4に示される。
【0040】
【表1】

【0041】
【表2】

【0042】
F&X−目標BETに、Nbへ仮焼されたNb(OH)の商業的供給者。DLS−目標BETに、Taへ仮焼されたTa(OH)の商業的供給者。表において、同様な表記が使用される。
【0043】
表3は、Nb1−xTaO試料の一部として、01HDアトライターミル(500gバッチサイズ)を用いて製造された、4つの試料について、摩砕条件および生の摩砕混合物特性を示す。
【0044】
【表3】

【0045】
D50−60s US:60秒の超音波処理(US)後のD50サイズ。表において、同様な表記が使用される。
【0046】
表4は、Nb1−xTaO検討の一部としてなされた、4つの試料について、反応後の特性データを示す。すべての試料は、1350℃で240分間、熱処理された。ついで、Hポジティブ雰囲気(860Torr)で850℃、60分間、MRF炉LF2で反応された。各試料〜50gは、3インチアルミナ坩堝内に置かれた。
【0047】
【表4】

【0048】
0s=音波処理なし 120sUS=120秒の超音波処理
粉末流速は、キャパシターグレード粉末に許容し得るものであった。篩い分けされた粒子のバルク(かさ)密度は、Ta濃度の増加とともに次第に増加した。表4に示される、熱処理および反応された試料の物理的性質は、Nb1−xTaO型試料のBET表面積が、対照(純NbO)試料よりも著しく高いことを示す。
【0049】
熱処理および反応された試料のX線回折データは、図2および3に示される。すべての試料についてのXRDパターンの主要ピークが純NbOパターンに相当することは何の価値もない。これは、1次のNbO格子へのTa置換が成功し、この実験に用いられたたモル分率0.34を含む、ことを示す。小さい方のピーク(付加的相)分析は、すべてのNb1−xTaO型試料に少量の未反応Taが存在することを示す。これは、純NbO試料に通常みられるNbOの小さな層からの転換であり、TaがNbOに比べてはるかに安定であることを示す。
例2
ドープ試料の分析:
実験設計、原材料、および処理データならびにYドープNbO試料についての特性データが、表5〜8に示される。
【0050】
【表5】

【0051】
【表6】

【0052】
ConghuaおよびDuoloshanは、目標BETに仮焼された水酸化物の商業的供給者である。
【0053】
表7は、YドープNbO検討の一部として、01HDアトライターミル(500gバッチサイズ)を用いて製造された、3つの試料について、摩砕条件および生の摩砕混合物特性を示す。
【0054】
【表7】

【0055】
表8は、YドープNbO検討の一部としてなされた、3つの試料について、反応後の特性データを示す。すべての試料は、1375℃で240分間、熱処理された。ついで、Hポジティブ雰囲気(860Torr)で850℃、60分間、MRF炉LF2で反応された。各試料〜50gは、3インチアルミナ坩堝内に置かれた。
【0056】
【表8】

【0057】
粉末流速は、キャパシターグレード粉末に許容し得るものであった。摩砕混合物特性の観察は、Y濃度の増加とともに、篩い分けされた粒子のバルク密度が次第に増加することを示した。これは、Yドープ試料の摩砕スラリーは非常に安定(時間とともに最小の沈降)であり、乾燥時に密に充填されて沈殿物を形成するという事実によるのであろう。摩砕混合物のBET表面積は、使用されたナノスケール粒径により、Yドープに対して大きい。
【0058】
表8に示される電気的特性は、3wt%Yで、CV/gは逆に作用されることを示すが、これはNbO格子への過度のYイオン置換により引き起こされた、低下した誘電率によると思われる。さらに、物理的特性も、3wt%Yで逆に作用される(高いスコット密度および低破砕強度)。図4および5に示されるX線回折データは、3wt%YドープされたNbOの構造における、有意の変化を確認する(主要ピーク位置の変化)。しかし、1wt%Yで、材料は、物理的および電気的特性において、対照(純NbO)試料に非常に類似する挙動をするようにみえる。前述のNb1−xTaO型試料と違って、形成後のアノードの色は、純NbO対照試料と有意には異ならず、陽極酸化定数がYドープよりにより影響されなかったことを示す。
【0059】
追加の試験が、Yドープ試料のDC漏れ特性を評価するために、比較的高い形成電圧でなされた。これらの試験からのデータは、図6aおよび6bに図示される。このデータから明かなように、Yドープ試料は、比較的高い形成電圧で、有意に低いDC漏れを示した。しかし、図6aにも示されるように、陽極酸化定数は、少しも変化しないでとどまり、したがってCV/gは45V形成を超えて急に低下する。45V形成で、1wt%Yドープは、適度のCV/gで実行可能な誘電率を提供する。
例3
実験設計、原材料、および処理データならびにYドープNb1−xTaO試料についての特性データが、表9〜12に示される。摩砕粒径は、Yナノ粉末の添加とともに次第に減少する。比較的高いバルク密度(純NbO材料に比べて)が、これらの材料におけるTa置換挙動から期待され、すべての3つの試料では、おおよそ一定にとどまった。
【0060】
【表9】

【0061】
【表10】

【0062】
Ta供給:Cabot Corporation からの「C−515Ta基本ロット
表11は、YドープNb1−xTaO検討の一部として、01HDアトライターミル(500gバッチサイズ)を用いて製造された、3つの試料について、摩砕条件および生の摩砕混合物特性を示す。
【0063】
【表11】

【0064】
表12は、YドープNb1−xTaO検討の一部としてなされた、3つの試料について、反応後の特性データを示す。すべての試料は、1350℃で270分間、熱処理された。ついで、Hポジティブ雰囲気(860Torr)で850℃、60分間、MRF炉LF2で反応された。各試料〜50gは、3インチアルミナ坩堝内に置かれた。
【0065】
【表12】

【0066】
表12に示されるデータから明らかなように、最終的な粉末BET表面積(熱処理および反応の後)は、上述の摩砕混合物BETデータと一致する。通常、表面積の値は、代表的な80kCV/g純NbO粉末(通常、1.2〜1.4m/gに及ぶ)に比べて、微細な粒径を示す。NbOにおけるTa置換は、熱処理プロセスの間、焼成動力学および粒子成長を妨げ、比較的微細な粒径を導くようにみえる。
【0067】
電気的特性(さらに表12に示される)を観察すると、これらの材料の微細粒径は、高形成電圧(45Vおよび60V)で、CV/gの急な低下を導く。しかし、Y添加は、大いにDC漏れ特性を改良した。未ドープのNb1−xTaO試料(試料H)は、非常に高い漏れを示した。2wt%Y添加をした試料(試料J)は、許容し得るDC漏れを有する。1wt%および2wt%Y試料の両方とも、60Vまで形成され得た。これは、この種の材料のすべてに適用し得る、著しい改良である。
【0068】
Nb1−xTaO型材料のDC漏れ挙動に対するY添加の作用をさらに検討するために、この検討の3つの試料に関するXRDデータは、表7および8に示される。前述のように、いくつかの前述の試料におけるNb1−xTaO材料(未ドープ)のTEM分析は、陽極酸化された層の結晶性Ta相の包含を示したが、これは、これらの材料の高DC漏れの理由の1つであると考えられる。これらの粉末についてのXRD回折データは、検出可能レベルの結晶性Taを示した。図7および8にみられるように、Y添加は、熱処理および反応後に、残存結晶性Taの含量を次第に優位に低下させた。Y添加に伴う、これらの材料の、減少したDC漏れ(図9および10)は、結晶性TaとDC漏れの間の強い関連を示し得る。さらに、ドナー補償のような、他のメカニズム(陽極酸化層における低下した結晶性Taの他に)があり得、それによりYは、ドープNbO作用にみられるように、DC漏れを低下させるように働く。
例4
NbOにおける付加ドーパント:
実験設計、原材料、および処理データならびにドナー酸化物ドープNbO試料についての特性データが、表13〜16に示される。摩砕混合物特性は、SiO添加された試料(CM532)の非常に高いBET表面積を除外して、通常、純NbO型材料についての予期された範囲にあり、SiOの比較的低い密度を備えた、ナノサイズのフュームドシリカ源(表13)は、BETにおけるスパイクの一因となる可能性が大きく、そして他の処理変動は想像されない。試料CM522およびCM532について、通常の生粒子バルク密度よりも高い理由は知られていないが、これらのロットから熱処理された試料のスコット密度は、通常の範囲にある(表16)。
【0069】
【表13】

【0070】
【表14】

【0071】
表15は、NbOにおける付加ドーパント酸化物検討の一部として、01HDアトライターミル(500gバッチサイズ)を用いて製造された、6つの試料について、摩砕条件および生の摩砕混合物特性を示す。
【0072】
【表15】

【0073】
表16は、NbOにおける付加ドーパント酸化物検討の一部としてなされた、6つの試料について、反応後の特性データを示す。すべての試料は、1350℃で270分間、熱処理された。ついで、Hポジティブ雰囲気(860Torr)で850℃、60分間、MRF炉LF2で反応された。各試料〜50gは、3インチアルミナ坩堝内に置かれた。対照および標準試料についてのデータも比較のために示される。
【0074】
【表16】

【0075】
Qは、K−Pと同一の規模で製造された。
【0076】
表16に示されるように、すべての6つの新試料の物理的性質は、近接した、通常予測される範囲内にある。しかし、1つの有意の傾向は、熱処理された粉末のBET表面積であり、1.32〜1.72m/gの間で変動した。種々のドーパントが焼成および粒子成長の動力学に異なって作用し、最終表面積における挙動を導くようにみえる。
【0077】
図11に示され、そして表16に示されるように、ドーパント酸化物は、NbO材料のDC漏れ特性に有意の作用を有するようにみえる。特に、Y、SiO、およびMnでドープされた試料は、高形成電圧(60V)で、著しく低いDC漏れ電流を示した。Yドープ試料についてのデータは、有利な効果を確認する。
【0078】
これらの試料についてのCV/g対形成電圧挙動は、図12に示される。Mnドープ試料を除いて、すべての試料は60Vでの形成で、非常に低いCV/gを有していた。さらに、図12に示されるように、キャップロールオフ挙動が、主に粉末の1次粒径に依存する:比較的小さい粒子は、大きい粒子よりも比較的低電圧で形成する。
例5
図13は、NbO粉末において、汚染物を追い出されたDC漏れを低下させる際のドナー酸化物の作用を示す。ドープ粉末は、鋼内張チャンバーを有する実験室規模のアトライターミル内で調製され、Fe,Ni,およびCrで試料を汚染するのが通常である。NbO対照試料は、比較のためにドープ試料と同一の装置および方法を用いて製造される。NbO標準試料は、金属汚染を減少させたNb内張りパイロット規模の摩砕装置で製造される。図13にみられるように、ドープ試料のDC漏れ挙動は、対照試料よりも有意に良好である。純NbOデータ(標準および対照)の勾配は、ドープ試料の勾配よりも著しく険しい。この方法は、Ta系キャパシター粉末に適用され得るので、金属汚染からのDC漏れ寄与を調節する解決を提供する。図14は、金属の組み合わせ(Fe+Ni+Cr)の関数として、DC漏れ(60V形成)を示す。図は、ドープニオブサブオキシド試料の上昇したDC漏れにおける、汚染の著しく低下した効果を示す。
【0079】
出願人は、すべての引用文献の全内容を、この開示に具体的に組み入れる。さらに、量、濃度または他の値もしくはパラメーターは、範囲、好ましい範囲、または好ましい上値もしくは好ましい下値として示され、範囲が別々に開示されていても、いかなる上値もしくは好ましい値と、いかなる下値もしくは好ましい値との、いかなる対からも形成される組み合わせが具体的に開示されていると理解されるべきである。数値範囲が、ここで言及されるとき、他に言及がなければ、その範囲は、その端の点ならびにその間の整数および分数を含むように意図される。本発明の範囲は、範囲を規定するときに記載される特定の値に限定されるものではない。
【0080】
本発明の他の態様は、本発明を考慮し、ここに開示される本発明を実施することにより当業者に明らかである。本願明細書および例は例示的であり、本発明の真の範囲および精神は、請求項およびその均等物により指示される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Nb1−xTaOを含む粉末であり、ここでxは0.1〜0.5である。
【請求項2】
粉末が、本質的にNb1−xTaO粉末からなる請求項1に記載の粉末。
【請求項3】
粉末が、Y,Si,Mn,Al,Ce,Vまたはそれらの組み合わせの酸化物でドープされる請求項1または2に記載の粉末。
【請求項4】
粉末が、少なくとも1つのドーパント酸化物でドープされる請求項1〜3のいずれかに記載の粉末。
【請求項5】
粉末が、Y3、SiO2、Mn4、Al3、Mn3、CeO2、またはそれらの組み合わせでドープされる請求項1〜4のいずれかに記載の粉末。
【請求項6】
粉末が、+2またはそれより多いカチオン価を有する、少なくとも1つのドーパントでドープされる請求項1〜5のいずれかに記載の粉末。
【請求項7】
ドーパントが、ニオブのイオンサイズの10%以内であるイオンサイズを有する請求項3〜6のいずれかに記載の粉末。
【請求項8】
xが0.2〜0.4である請求項1〜7のいずれかに記載の粉末。
【請求項9】
xが0.25〜0.35である請求項1〜8のいずれかに記載の粉末。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の粉末を含む焼成プレス体からなるキャパシターアノード。
【請求項11】
キャパシターアノードが、1.5nm/V〜3.5nm/Vの陽極酸化定数を有する請求項10に記載のキャパシターアノード。
【請求項12】
キャパシターアノードが誘電体層を有し、そしてキャパシターアノードは、その誘電体層内で場誘導結晶化を有さない請求項10または11に記載のキャパシターアノード。
【請求項13】
少なくとも1つのドーパント酸化物でドープされる、式Nbを有する、ニオブサブオキシド粉末であり、ここでNbはニオブ、xは2より小さく、かつyは2.5xより小さい。
【請求項14】
ドーパント酸化物が、Y,Si,Mn,Al,CeもしくはV、またはそれらの組み合わせの酸化物である請求項13に記載のニオブサブオキシド粉末。
【請求項15】
ドーパント酸化物が、Y3、SiO2、Mn4、Al3、Mn3、CeO2、またはそれらの組み合わせである請求項13または14に記載のニオブサブオキシド粉末。
【請求項16】
ドーパント酸化物が、+2またはそれより多いカチオン価を有する請求項13〜15のいずれかに記載のニオブサブオキシド粉末。
【請求項17】
ドーパント酸化物が、ニオブのイオンサイズの10%以内であるイオンサイズを有する請求項13〜16のいずれかに記載のニオブサブオキシド粉末。
【請求項18】
請求項13〜18のいずれかに記載のニオブサブオキシド粉末を含む焼成プレス体からなるキャパシターアノード。
【請求項19】
Y,Si,Mn,Al,Ce,またはVの酸化物が3wt%以下の量で存在する請求項3に記載の粉末。
【請求項20】
酸化物が0.25wt%〜2.5wt%の量で存在する請求項3に記載の粉末。
【請求項21】
キャパシターアノードがさらに誘電体層を有し、そしてその誘電体層内で場誘導結晶化を有さない請求項10に記載のキャパシターアノード。
【請求項22】
キャパシターアノードがさらに誘電体層を有し、そしてその誘電体層内で場誘導結晶化を有さない請求項18に記載のキャパシターアノード。
【請求項23】
キャパシターアノードは、形成電圧60V〜75Vの形成電圧で、3.0g/cc以上のプレス密度で形成され、形成温度90℃に対して1000℃〜1500℃の温度で10分間以上、焼成される請求項10〜12または21のいずれかに記載のキャパシターアノード。
【請求項24】
キャパシターアノードは、形成電圧60V〜75Vの形成電圧で、3.0g/cc以上のプレス密度で形成され、形成温度90℃に対して1000℃〜1400℃の温度で10分間以上、焼成される請求項18または22に記載のキャパシターアノード。
【請求項25】
アノードが、0.010mL/g以上の1μm径より大きい累積細孔容積を有する請求項23または24に記載のキャパシターアノード。
【請求項26】
キャパシターアノードが、60,000CV/g〜75,000CV/gのキャパシタンスを有する請求項10から12、18または21〜25のいずれかに記載のキャパシターアノード。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6a】
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【図6b】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公表番号】特表2010−533642(P2010−533642A)
【公表日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−517081(P2010−517081)
【出願日】平成20年7月11日(2008.7.11)
【国際出願番号】PCT/US2008/069718
【国際公開番号】WO2009/012124
【国際公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【出願人】(391010758)キャボット コーポレイション (164)
【氏名又は名称原語表記】CABOT CORPORATION
【Fターム(参考)】