説明

高電圧プラズマ発生装置

【課題】大気圧中、高電圧を与えてプラズマを発生させて、ガスを処理するとき、プラズマで処理されるガス成分の処理濃度をオンラインで取得し、プラズマを生成するための電力の調整を行う。
【解決手段】高電圧プラズマ発生装置は、高周波信号の給電により共振を発生させ、この共振により高電圧を発生させる長尺状の第1の電極と、第1の電極の周りを覆い、第1の電極の少なくとも一方の端から、第1の電極の延長上の離間した位置に、ガス流の供給口が設けられた金属製の筐体と、第1の電極の一方の端の近傍に、一方の端から離間して設けられ、筐体と接続された、アースされた第2の電極と、を有する。第1の電極と第2の電極との間に生成されるプラズマの発光強度を計測センサで計測し、この計測結果を用いて、第1の電極に給電する電力を調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマを発生させる高電圧プラズマ発生装置に関し、例えば、船舶や自動車に用いられるディーゼルエンジン等から排気される排気ガス中のNO(一酸化窒素)の酸化処理装置等の分野に好適に用いることのできる装置に関する。
【背景技術】
【0002】
今日、ディーゼルエンジン等から排気される排気ガス中のNOを酸化処理するために、大気圧中で生成するプラズマを利用する処理装置が提案されている。大気圧プラズマを通過したガスに含まれるガス成分を分析する場合、一般にガス分析計が用いられる。
【0003】
ガス分析計は、定電位電解法、化学発光法、及び高度方式(ザルツマン試薬方式)のいずれかの方式が一般的に用いられている。
定電位電解法は、ガス透過性隔膜を通して電解槽中の電解質中に拡散吸収されたNOを、所定の酸化電位を与えて定電位電解法により酸化し、そのとき生じる電解電流を取り出し、ガス中のNO等の対象ガス成分の濃度を求める方法である。この方法は小型軽量のため移動に適しているといった特徴を有する。なお、定電位電解法については、非特許文献1に記載されている。
【0004】
化学発光方法は、NOがオゾンと下記式に示すように反応してNO2を生成する過程で生じる化学発光の光強度がNOの濃度と比例関係にあることを利用して、この光強度を計測してNO濃度を求める方法である。化学発光方法は非特許文献2に記載されている。
NO + O3 → NO2* + O2
NO2* → NO2 + hν
* は、活性化状態を表す)
上記式(2)における発光のスペクトルは、600〜3000nmの波長帯域にあり、ピークは1200nm近傍に位置する。
【0005】
光度方式(ザルツマン試薬方式)では、N−1ナフチルエチレンジアミン二塩酸基、スルファニル酸、及び酢酸水溶液をザルツマン試薬(吸着液)として用いる。この試薬に二酸化窒素が吸収されると、亜硝酸が生成される。ここで生成される亜硝酸は、スルファニル酸とジアゾ反応し、ジアゾ化スルファニル酸塩として吸収される。このジアゾニウム塩は、発色剤であるN−1ナフチルエチレンジアミン二塩酸塩とカップリング反応し、アゾ染料を生成し、桃色に発色する。光度方式では、この発色の545nmにおける吸光度を測定し、二酸化窒素濃度を求める。一酸化窒素はザルツマン試薬と反応しないので、硫酸酸性過マンガン酸カリウム液を満たした酸化器に通して二酸化窒素とした後に、同様にザルツマン試薬に通し、このときアゾ染料として発色する桃色の、545nmにおける吸光度を測定し、二酸化窒素濃度を求める。なお、一酸化窒素の二酸化窒素への酸化率は、70%と扱われる。光度方式については、非特許文献3に記載されている。
【0006】
【非特許文献1】http://sogojoho.co.jp/neoseminar/eachbook/biosensa-02hen.htm(2008年5月15日検索)
【非特許文献2】http://www.erc.pref_fukui.jp/erc/measure/m-nox.htm(2008年5月15日検索)
【非特許文献3】http://www.erc.pref.fukui.jp/erc/measure/m-nox.htm(2008年5月15日検索)
【0007】
しかし、上記定電位電解法は、微量なガス成分の検出に有効に用いることができるが、測定対象となるガスを引き込んで、電解電流を安定した常態で計測する必要があるため、計測時間が長くなるといった問題がある。また、電解液を用いるため、一定以上のガス成分が流入したとき計測不能状態になるといった問題もある。
また、化学発光方法では、一酸化窒素とオゾンの反応により生じる発光スペクトルのピークは1200nm付近に位置するため、種々の検出器を用いることができるが、取り扱いに注意を要するオゾンを用いること、さらには、検出のための一酸化窒素も大量に必要であるといった問題がある。このため、微量なガス成分の計測に有効でない。
一方、光度方式についても、検出のための一酸化窒素が大量に必要であり、一酸化窒素の二酸化窒素への上記70%の酸化率は厳密なものでなく、大気汚染防止法で定められた値である。このため、微量なガス成分の計測には有効でない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このような状況下、本発明は、大気圧中、処理対象のガス成分を含むガスに対して高電圧を与えてプラズマを発生させて、ガス成分を処理するとき、処理されるガス成分の濃度情報をオンラインで取得可能な高電圧プラズマ発生装置、さらに、未処理のガス成分として排出される微量な未処理濃度の情報がオンラインで取得可能であり、しかも、局所的に発生する大気圧プラズマを利用して有効に未処理濃度を計測し、排出するガス成分の未処理濃度を調整する高電圧プラズマ発生装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は、大気圧中、処理対象のガス成分を含むガスに対して102〜105Vの高電圧を与えてプラズマを発生させる高電圧プラズマ発生装置であって、プラズマ発生のために電力が給電される第1の電極と、前記第1の電極の周りを覆う金属製の筐体と、前記第1の電極との間でプラズマを生成するために、前記第1の電極から離間して設けられ、前記筐体と接続されアースされた第2の電極と、前記第1の電極と前記第2の電極との間で生成されるプラズマの発光強度を計測する、前記筐体に設けられた計測センサと、前記計測センサで得られた計測信号に基づいて、前記第1の電極に給電する電力を制御し、さらに前記ガスのガス流量を制御する制御装置と、を有することを特徴とする高電圧プラズマ発生装置を提供する。
【0010】
その際、前記処理対象のガス成分を含むガスは、ガス流として供給され、前記第1の電極は、交流信号の給電により共振を発生させ、この共振により高電圧を発生させる長尺状の電極であって、前記交流信号の給電点が前記長尺状の略中間部分に設けられ、前記金属製の筐体には、前記第1の電極の少なくとも一方の端から、前記第1の電極の延長上の離間した位置にガス流の供給口が、この供給口と対向する位置にガス流の排出口が、それぞれ設けられ、前記第2の電極は、前記第1の電極の前記一方の端の近傍に、前記一方の端から離間して設けられ、前記制御装置は、前記第1の電極が電磁波を放射する際の共振周波数と同じ周波数の交流信号を前記給電点に給電するとともに、前記計測センサで得られた計測信号に基づいて、排出される前記ガス成分の排出濃度情報を求め、この排出濃度情報に応じて給電する交流信号の電力を制御することが好ましい。
【0011】
その際、前記筐体はアースされ、前記第2の電極は、前記供給口に設けられ、アースされた前記筐体と接続された網状電極であることが好ましい。
【0012】
その際、前記制御装置は、前記計測信号により前記発光強度が低いと判断されるとき、排出される前記ガス成分の濃度を低下するために、給電する交流信号の電力を増大するように、制御を行うことが好ましい。
なお、前記供給されるガスは、例えば、窒素酸化ガスを含むガスであり、供給された窒素酸化ガスのうち一酸化窒素ガスを、処理対象のガス成分として、プラズマを用いて酸化処理をする。
【発明の効果】
【0013】
本発明では、第1の電極への給電により生成されるプラズマの発光強度を、計測センサを用いて計測し、このときの計測信号に基づいて、プラズマで処理されるガス成分の処理濃度情報を求め、この処理濃度情報に基づいて給電する電力を制御する。このため、ガス成分の処理濃度を制御することができるとともに、ガスをガス流として供給され、排出されるとき、ガス成分の排出濃度情報をオンラインで取得できる。さらに、この排出濃度情報を用いて第1の電極への給電の電力を制御するので、排出するガス成分の排出濃度情報をオンラインで調整することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の高電圧プラズマ発生装置の一実施形態であるプラズマリアクターについて説明する。
図1は、プラズマリアクター10の概略の構成を示す概略構成図である。プラズマリアクター10は、NOを含んだ窒素酸化ガス(NOx)を空間内に導入し、空間内の導入口近傍で連続的にプラズマを生成させ、このプラズマを用いてNOを酸化処理し排出する装置である。
具体的には、プラズマリアクター10は、棒状電極12と、網状電極14と、筐体16と、分光光度計17と、制御ユニット18と、を主に有して構成される。
【0015】
棒状電極12は、高周波信号の給電を受け、棒状電極12内での共振が発生することにより高電圧を発生させる長尺状の棒形状を成した銅からなる電極である。高周波信号の給電点22は長尺状の略中間部分に設けられている。棒状電極12は、2lの長さを持ち、この長手方向の中心位置から僅かにずれた位置、具体的には、下記式(1)で定まる位置に給電点22を有している。給電点22には、給電線28から接続端子30を介して高周波信号が電力として印加される。給電点22が、棒状電極12の長手方向の中心位置から僅かにずれた位置(ずれ量x0とする)に設けられるのは、棒状電極12へ給電するときのインピーダンス整合を取るためである。棒状電極12は、交流ダイポールアンテナと同様に、棒状電極12中を伝送する伝送信号の波長λの半分の長さが棒状電極12の長さ2lとなるとき最低次モードの共振が生じて、効率よく高電圧を生成させることができることから、上記長さ2lは、プラズマリアクター10において共振周波数を定める重要な要素である。本実施形態では、100MHz〜10GHzの周波数帯域において有効に高電圧を発生するように、長さ2lは設定されている。棒状電極12は、銅の他に、銀、アルミニウム等も好適に用いられる。
【0016】
【数1】

【0017】
網状電極14は、棒状電極12の一方の端(図1では左端)の近傍に、この端から離間して設けられ、筐体16と接続された電極である。網状電極14は、金属製の筐体16の端部に設けられた開口部である供給口20を覆うように設けられ、アースされている筐体16と電気的に接続されている。このため、網状電極14は、常に電位が0となっている。網状電極14には、導電性の高い導体材料、例えば、銀、銅、アルミニウム等が好適に用いられる。
【0018】
筐体16は、棒状電極12の周りを覆うように設けられ、棒状電極12の少なくとも一方の端(図1中の左端)から、棒状電極12の延長上の側に離間した位置に、ガス流を導入する供給口20を備え、棒状電極12が放射する電磁波を内部空間に閉じ込める金属製の部材で構成されている。筐体16は、棒状電極12の他方の端(図1中の右端)から、棒状電極12の延長上の離間した位置に、供給されたガスを排出する排出口24を備える。すなわち、供給口20と排出口24は、棒状電極12の延長上の、互いに対向した位置にあり、棒状電極12の長手方向に平行にガスが供給され、排出される。
【0019】
分光光度計17は、棒状電極12と網状電極14との間に生成されるプラズマの発光強度を計測する、筐体16の側壁に設けられた計測センサである。分光光度計17で計測される発光スペクトルのうち、550〜800nmの波長範囲の発光スペクトルは、プラズマを用いてNOの処理される濃度に依存して発光強度が変わる。処理される濃度が低く、排出されるガス中のNO濃度が高い(プラズマでNOが少量しか処理されない)場合、上記波長範囲における発光強度は低い。一方、処理される濃度が高く、この結果、排出されるガス中のNO濃度が低い(プラズマでNOが多量に処理される)場合、上記波長範囲における発光強度は高い。
したがって、分光光度計17を用いて計測される550〜800nmの波長範囲におけるプラズマの発光強度を用いて、排出されるNO濃度を制御するために、制御ユニット18に計測信号を送信する。
【0020】
なお、分光光学計17は、筐体16に設けられた観察窓38を介して計測するが、筐体16内側の内部空間にファイバ等を挿入して、計測をすることもできる。この場合、ファイバ先端にレンズ等を用いて光を集光するとよい。供給されるガスに、NO以外のガス成分が含まれる場合、そのガス成分がプラズマにより発光するか否かをあらかじめ調べ、発光する場合、どの波長範囲で発光するかが予め判れば、ファイバ先端の開口数等を考慮する必要がなくなる。
【0021】
制御ユニット18は、棒状電極12の共振周波数と同じ周波数の信号を給電点22に給電するユニットである。制御ユニット18は、棒状電極12中を伝送する伝送信号の波長λの半分の長さが棒状電極12の長さ2lとなるとき最低次モードの共振が生じるように、概略の発振周波数の範囲が定められており、筐体16に設けられた電界プローブ26から得られる計測信号を用いて、高周波信号の周波数を調整しながら、共振周波数に対応する周波数の信号を給電する。具体的には、制御ユニット18は、図示されないRF発振器、減衰器、任波形発振器及びアンプを有し、筐体16の外側に設けられ、給電点22と接続される信号線28の接続端子30と接続される。
制御ユニット18は、分光光度計17から送られる計測信号に基づいて、550〜800nmの波長範囲の発光強度を求め、この発光強度が、予め設定された複数の閾値と比較されて、現在のプラズマの発光強度がどのレベルにあるかを判断し、この判断結果を用いて、棒状電極12に供給する電力を調整する。具体的には、制御ユニット18は、上記減衰器を用いて給電する電力を調整し、また、高周波信号の波形を任意波形発振器を用いて波形を変化させ、これによりデューティ比を変えてプラズマの発生を微調整する。
制御ユニット18は、さらに、NOを含んだ窒素酸化ガス(NOx)を空間内に導入するガス流量も制御する。
【0022】
なお、棒状電極12の、網状電極14側の端には、生成されるプラズマを維持することができるように、アルミナからなるセラミックバリア32が設けられている。セラミックバリア32は、数mm程度の厚さで構成される。
【0023】
筐体16の供給口20には、NOを含む窒素酸化ガス(NOx)を供給する供給管34が接続され、例えば、図示されないディーゼルエンジン等の排気口と接続されている。筐体16の排出口24には、排出管36が接続され、大気中に排出されるように、図示されないブロアを用いて筐体16の内部空間のガスを吸引する。
【0024】
このようなプラズマリアクター10では、給電点22に共振周波数と同じ周波数の高周波信号が給電されると、図2に示すように、棒状電極12の両端で電圧が最大となる共振が発生し、両側の端で数1000Vの電圧Voutが生成される。上述したように、給電点22は、棒状電極12の中心位置に対して上記式(1)で示されるようにずれており、この給電点22において電圧Vinが入力される。この給電点22における電圧Vinに対する両端の電圧Voutの比は、上記式(1)で定まるx0/(2l)を用いて、1/sin{x0/(2l)}と表される。
【0025】
窒素酸化ガス等のガスが供給されていないとき、大気圧中の空気で生成されるプラズマPは、図3(a)に示すように、網状電極14と棒状電極12の端との間の領域に形成される。これに対して、窒素酸化ガスが供給口14から供給されているとき、生成されるプラズマPは、図3(b)に示すように、供給されたガスが棒状電極12によって上下方向に2つに別れるように、生成されるプラズマPも、ガスの流れに沿って上下方向に拡がる。このプラズマ領域Pの拡大により、窒素酸化ガス等のガスがプラズマPに曝される範囲も広くなる。このため、NO等のガスの酸化処理の効率は向上する。
【0026】
一方、図4(a)〜(c)に示すように、棒状電極12に給電する電力(投入電力)を変化させると、分光光度計17で計測される分光スペクトルのうち、550〜800nmの波長範囲の発光強度は変化する。このときのNO処理率も図5に示すように大きく変化する。NO処理率が大きい場合、排出口24から排出されるNOの濃度は低く、有害なNOガスを大気に放出する量は小さくなる。一方、NO処理率が小さい場合、排出口24から排出されるNOのガス成分の濃度は高く、大気に有害なNOガスを放出する量は多くなる。したがって、NO処理率と対応して変化する550〜800nmの波長範囲の発光強度を利用することにより、現在排出されようとするNOの濃度レベルを推定することができる。
このため、プラズマリアクター10は、プラズマの550〜800nmの波長範囲における発光強度を求めることにより、棒状電極12に給電される電力を、制御ユニット18を用いて調整する。これにより、排出口24から排出されるNOの濃度を調整することができる。
すなわち、制御ユニット18は、NO等の処理対象のガス成分の、プラズマPで処理される処理率を求め、この処理率から、排出されるようとするガス成分の排出濃度情報を求め、この排出濃度情報に応じて給電する交流信号の電力を制御する。
【0027】
なお、図4(a)〜(c)、図5に示される処理結果は、以下のような寸法、条件を用いて得られたものである。
高さは図1中の上下方向の長さを、奥行きは図1中の紙面に垂直方向の長さを表す。筐体16はアルミニウムで構成し、棒状電極12は銅で構成し、網状電極14もアルミニウムで構成した。
・筐体16のサイズ(長手方向の長さ、高さ×奥行き):
428mm,60mm×72mm
・棒状電極12のサイズ(長手方向の長さ、高さ×奥行き):
344mm,6mm×4mm
・網状電極14とセラミックバリア32との距離: 1.2mm
・セラミックバリア32の厚さ: 3mm
供給したガスは、NOを182ppm含む窒素ガスである。
【0028】
プラズマリアクター10では、電界プローブ26の計測信号により、380〜420MHzの範囲で共振周波数を探査し、インピーダンス整合した。インピーダンス整合して共振が発生するときの共振周波数は408.8MHzであった。このときのリターンロスρは0.0182、VSWR(定在波比)は1.0371、Q値は略1500、棒状電極12の両側の端における電圧Voutは略3000Vであった。Q値が略1500であることから、インピーダンス整合状態、すなわち共振状態は、周波数に対して敏感であることがわかる。探査により得られた共振を実現する408.8MHzの高周波信号を給電点22に連続して給電した。このときの電力は約80Wである。この80Wの電力を100%として、図5に示すように投入電力比を定めた。
【0029】
図5に示すように、投入電力比が小さくなるとNO処理率が低下し、図4(a)〜(c)に示すように、550〜800nmの波長範囲の発光強度は小さくなることがわかる。プラズマの発光強度は、目視できるほどのレベルであるため、分光光度計17に用いるCCDの受光に必要な蓄積時間は数100m秒もあれば十分であるので、オンラインでの計測を行うことができる。
【0030】
このように、プラズマリアクター10では、局所的に発生するプラズマの発光強度を調べることにより、リアルタイムで排出されようとするNOの排出濃度情報を推定することができ、しかも、数100ppmの微量なNO濃度の計測が可能となる。これにより、排出されるNO濃度が高い場合、給電する電力を高くする等の制御を行うことができる。また、供給されるガスに含まれるNOの濃度が高い場合、給電する電力を高めて処理率を向上させることができる。
【0031】
以上、本発明の高電圧プラズマ発生装置について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよいのはもちろんである。本発明は、ディーゼルエンジン等から排気される排気ガス中のNOの酸化処理装置の他に、半導体製造過程で用いる大気圧プラズマ成膜装置に適用できる。又、大気圧プラズマを用いた気体の化学反応装置に適用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の高電圧プラズマ発生装置の一実施形態であるNOガス処理用プラズマリアクターの構成を示す図である。
【図2】図1に示すプラズマリアクターにおける共振状態を説明する図である。
【図3】(a)は、ガス供給がないとき状態で発生するプラズマの領域を、(b)は、ガスが供給される状態で発生するプラズマの領域を説明する図である。
【図4】(a)〜(c)は、図1に示すプラズマリアクターによって得られる発光スペクトルの波形を示す図である。
【図5】図1に示すプラズマリアクターで得られる、給電する電力とNO処理率との関係を示す図である。
【符号の説明】
【0033】
10 プラズマリアクター
12 棒状電極
14 網状電極
16 筐体
17 分光光度計
18 制御ユニット
20 供給口
22 給電点
24 排出口
26 電界プローブ
28 給電線
30 給電接続端子
32 セラミックバリア
34 供給管
36 排出管
38 観察窓

【特許請求の範囲】
【請求項1】
大気圧中、処理対象のガス成分を含むガスに対して102〜105Vの高電圧を与えてプラズマを発生させる高電圧プラズマ発生装置であって、
プラズマ発生のために電力が給電される第1の電極と、
前記第1の電極の周りを覆う金属製の筐体と、
前記第1の電極との間でプラズマを生成するために、前記第1の電極から離間して設けられ、前記筐体と接続されアースされた第2の電極と、
前記第1の電極と前記第2の電極との間で生成されるプラズマの発光強度を計測する、前記筐体に設けられた計測センサと、
前記計測センサで得られた計測信号に基づいて、前記第1の電極に給電する電力を制御し、さらに前記ガスのガス流量を制御する制御装置と、を有することを特徴とする高電圧プラズマ発生装置。
【請求項2】
前記処理対象のガス成分を含むガスは、ガス流として供給され、
前記第1の電極は、交流信号の給電により共振を発生させ、この共振により高電圧を発生させる長尺状の電極であって、前記交流信号の給電点が前記長尺状の略中間部分に設けられ、
前記金属製の筐体には、前記第1の電極の少なくとも一方の端から、前記第1の電極の延長上の離間した位置にガス流の供給口が、この供給口と対向する位置にガス流の排出口が、それぞれ設けられ、
前記第2の電極は、前記第1の電極の前記一方の端の近傍に、前記一方の端から離間して設けられ、
前記制御装置は、前記第1の電極が電磁波を放射する際の共振周波数と同じ周波数の交流信号を前記給電点に給電するとともに、前記計測センサで得られた計測信号に基づいて、排出される前記ガス成分の排出濃度情報を求め、この排出濃度情報に応じて給電する交流信号の電力を制御する請求項1に記載の高電圧プラズマ発生装置。
【請求項3】
前記筐体はアースされ、
前記第2の電極は、前記供給口に設けられ、アースされた前記筐体と接続された網状電極である請求項2に記載の高電圧プラズマ発生装置。
【請求項4】
前記制御装置は、前記計測信号により前記発光強度が低いと判断されるとき、排出される前記ガス成分の濃度を低下するために、給電する交流信号の電力を増大するように、制御を行う請求項1〜3のいずれか1項に記載の高電圧プラズマ発生装置。
【請求項5】
前記供給されるガスは、窒素酸化ガスを含むガスであり、供給された窒素酸化ガスのうち一酸化窒素ガスを、処理対象のガス成分として、プラズマを用いて酸化処理をする請求項1〜4のいずれか1項に記載の高電圧プラズマ発生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−25049(P2010−25049A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−189727(P2008−189727)
【出願日】平成20年7月23日(2008.7.23)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 第55回応用物理学関係連合講演会資料 開催日 :平成20年3月28日 主催者名:応用物理学会、計測自動制御学会、日本結晶学会、日本真空協会、日本顕微鏡学会、日本物理教育学会、日本分光学会
【出願人】(000005902)三井造船株式会社 (1,723)
【Fターム(参考)】