説明

高麗人参粉砕物を含有する飲料及びその製造方法

【課題】連続的な自動充填が可能であり、高麗人参の形態を一部維持した状態で飲料内に浮遊させることで、飲料の清涼感と同時に高麗人参の食感を直接感じられる粉砕物含有飲料組成物及びその製造方法を提供する。
【解決手段】高麗人参粉砕物含有飲料組成物において、一定サイズに粉砕した高麗人参粉砕物と、安定剤であるジェランガムと、カルシウム塩及びマグネシウム塩の中から選択される架橋剤とを含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は高麗人参粉砕物を含有する飲料及びその製造方法に関し、より詳しくは、一定サイズに粉砕した高麗人参粉砕物、安定剤及び架橋剤を含み、安定的に高麗人参粉砕物が飲料内に浮遊して、清涼感も優れた高麗人参粉砕物含有飲料組成物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の高麗人参飲料は、主に高麗人参を水または酒精で抽出、濃縮した濃縮液を主原料とし、各種生薬材及び糖質と混合して製造してきた。最近では、大韓民国特許第0658772号のように超微細の高麗人参の乾燥粉末を主原料とし、従来の高麗人参飲料とは異なり高麗人参に含有された全ての成分を摂取できるようにした製造技術が開発された。また、大韓民国特許第0737271号のように紅参飲料に水参を丸ごと入れて、消費者に対し視覚的に高麗人参製品としての信頼度を高める製造方法も開発された。
【0003】
しかし、高麗人参の乾燥粉末を使用する場合、高麗人参の形態及び食感を感じられない状態に加工して、微細粉末の安定性を高めるために混合安定剤及び乳化剤を過度に使用することで、飲料の清涼感が低下するという短所を持っている。また、水参を丸ごと入れた飲料の場合は、自動化設備による製造が困難であり、飲料内に水参が丸ごと含有されているため摂取が不便であるという短所を持っている。
【0004】
従って、食感を維持しつつも清涼感を有し、摂取が便利な高麗人参含有飲料に対する研究が要求されている実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】大韓民国特許第0658772号
【特許文献2】大韓民国特許第0737271号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明の発明者は前記問題点を解決するために研究、努力した結果、一定サイズに粉砕した高麗人参粉砕物を原料とし、ゲル化反応を誘導して高麗人参粉砕物が安定的に分散されるようにする安定剤及び金属陽イオンを有する架橋剤を混合すると、高麗人参粉砕物が底に沈まずに安定的に飲料内に浮遊し、清涼感も優れた飲料を製造できることを発見することで、本発明を完成するに至った。
【0007】
従って、本発明の目的は、高麗人参粉砕物、安定剤及び架橋剤を含有し、高麗人参粉砕物が安定的に浮遊した高麗人参粉砕物含有飲料組成物を提供することにある。
【0008】
更に、本発明のまた別の目的は、高麗人参粉砕物、安定剤及び架橋剤を使用して高麗人参粉砕物が安定的に浮遊した高麗人参粉砕物含有飲料を製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、
高麗人参粉砕物0.2〜5%(w/v)と、
ジェランガム0.01〜0.1%(w/v)と、
カルシウム塩及びマグネシウム塩の中から選択される架橋剤0.01〜0.1%(w/v)と、
を含む高麗人参粉砕物が浮遊した飲料組成物をその特徴とする。
【0010】
更に、本発明は、
ジェランガム0.01〜0.1%(w/v)を結晶果糖1〜10%(w/v)と混合した後、70〜95℃の熱水に入れて攪拌し、溶解、分散させる段階と、
カルシウム塩及びマグネシウム塩の中から選択される架橋剤0.01〜0.2%(w/v)、酸味剤0.03〜0.3%(w/v)及びマスキング剤0.3〜3%(w/v)を添加して配合する段階と、
高麗人参粉砕物0.2〜5%(w/v)を添加して飲料組成物を得て、これを殺菌する段階と、
前記殺菌した飲料組成物を4〜20℃で処理する段階と、
を含む高麗人参粉砕物が浮遊した飲料の製造方法をその特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明による高麗人参粉砕物含有飲料は、連続的な自動充填が可能であり、高麗人参の形態を一部維持した状態で飲料内に浮遊させることで、飲用時に飲料の清涼感と同時に高麗人参の食感を直接感じることができ、飲用時の便宜性を図ることができる。従って、本発明の飲料は高麗人参の消費階層が中・高年層に偏重された現在の消費限界性を克服し、清涼感と楽しさを追求する若い階層への消費を拡大して国内の高麗人参産業の全般的な発展への寄与が期待される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施例及び比較例の飲料組成物の分散、沈殿安定性を表す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は高麗人参粉砕物を含有する飲料及びその製造方法に関し、より詳しくは、一定サイズに粉砕した高麗人参粉砕物、安定剤及び架橋剤を含み安定的に高麗人参粉砕物が飲料内に浮遊して、清涼感も優れた高麗人参粉砕物含有飲料組成物及びその製造方法に関する。
【0014】
本発明は、高麗人参粉砕物0.2〜5%(w/v)、ジェランガム0.01〜0.1%(w/v)、及びカルシウム塩及びマグネシウム塩の中から選択される架橋剤0.01〜0.2%(w/v)とを含む高麗人参粉砕物含有飲料組成物をその特徴とする。
【0015】
本発明に使用される高麗人参はその種類が制限されないが、水参、尾参、紅参、人参葉、花旗参、三七人参または竹節人参、山蔘培養根などが使用され得る。
【0016】
前記高麗人参粉砕物は、全体飲料組成物に0.2〜5%(w/v)、好ましくは0.5〜4.0%(w/v)、更に好ましくは1.0〜3.0%(w/v)の範囲で含まれる。前記高麗人参粉砕物が0.2%(w/v)未満で含まれると、人参自体の味と食感が感じられず、5%(w/v)を超過すると、飲料の清涼感が大きく減少して飲料としての機能が低下する。
【0017】
本発明で高麗人参粉砕物を安定的に分散させ、沈んでいない状態に浮かべる役割をする安定剤としてはジェランガムを使用する。ジェランガムを水に分散、水和させた後、ゲル化過程を経て、この時、せん断力を加える場合、内部の結合が弱化した弱いゲルが形成される。前記弱いゲルは少ない力を加えただけでも粘度が非常に低くなり、液体のように流れ性を有する流体ゲルとなる。このような流体ゲルは粘度をほとんど上昇させることなく強い分散能力を有するため、高麗人参粉砕物を浮かべることができる。ジェランガムは、全体飲料組成物に0.01〜0.1%(w/v)、好ましくは0.01〜0.05%(w/v)含まれるようにする。ジェランガムが0.01%(w/v)未満で使用されると、生成したゲルの分散能力が低下して高麗人参粉砕物が安定的に分散できず、0.1%(w/v)を超過すると、飲料の粘度が非常に高くなり飲料としての特性に適さない。
【0018】
更に、本発明の飲料組成物は、前記ゲル化過程で架橋反応を促進させる金属陽イオンを有する架橋剤を含む。前記架橋剤は金属陽イオンによる静電気的引力にてゲル化過程で架橋反応を促進させ、生成したゲルを安定化させる役割を行う。前記架橋剤としては、カルシウム塩またはマグネシウム塩を使用し、好ましくは、乳酸カルシウム、塩化カルシウムまたは塩化マグネシウムを使用し、更に好ましくは、乳酸カルシウムを使用する。前記架橋剤は、全体飲料組成物に0.01〜0.2%(w/v)、好ましくは0.02〜0.1%(w/v)含まれるようにする。前記架橋剤が0.01%(w/v)未満で使用されると、生成したゲルの安定性が低下し、0.1%(w/v)を超過すると、生成したゲルの粘度が高くなり、飲料の味に悪い影響を及ぼす。
【0019】
本発明の飲料組成物は前記主成分以外に、甘味剤、酸味剤及びマスキング剤を更に含有することができる。
【0020】
甘味剤としては結晶果糖、アガベシロップなどが使用され得る。前記結晶果糖は飲料の甘味を調整するために使用するが、砂糖の1.2〜1.8倍の甘味を有し、糖類のうち最も高い甘味度を有し、後味がきれいですっきりした特徴がある。アガベシロップはリュウゼツランの一種であるアガベサボテンから抽出して作ったもので、果糖を約80%含有する有機栽培の天然甘味料として、甘味は砂糖の1.3倍であるが、グリセミック指数(GI)は1/3に過ぎない。炭水化物食品の摂取時、どれだけ早く血糖が高くなるかを0から100までの数字で表した血糖指数(GI、Glycemic index)が低いため、これを使用した飲料のGI値を下げて、糖尿があったり肥満を心配する消費者に有用である。
【0021】
本発明の飲料組成物には、甘味剤が全体飲料組成物に1〜15%(w/v)含有されるのが好ましい。1%(w/v)未満である場合は、製品の甘味が適切ではなく、15%(w/v)を超過すると、甘味が高く熱量が高い問題がある。
【0022】
更に、前記酸味剤としてはボディー感と酸味を与えるクエン酸もしくはクエン酸ナトリウムを使用するのが好ましく、全体飲料組成物に対して0.03〜0.3%(w/v)となるように添加できる。
【0023】
また、前記マスキング剤は高麗人参の苦味をマスキングするためであり、マルトデキストリン、シクロデキストリンまたはトレハロースなどを使用することができ、全体飲料組成物に0.3〜3%(w/v)となるように添加できる。
【0024】
本発明の飲料組成物は多様な機能性を表すために、紅参濃縮液、ガラナ抽出粉末、グレープフルーツ種子抽出物などを更に含有することができ、ビタミンを補強するための水溶性ビタミンを更に含有することもできる。
【0025】
更に、本発明は、
ジェランガム0.01〜0.1%(w/v)を結晶果糖1〜10%(w/v)と混合した後、70〜95℃の熱水に入れて攪拌し、溶解、分散させる段階と、
カルシウム塩及びマグネシウム塩の中から選択される架橋剤0.01〜0.2%(w/v)、酸味剤0.03〜0.3%(w/v)及びマスキング剤0.3〜3%(w/v)を添加して配合する段階と、
高麗人参粉砕物0.2〜5%(w/v)を添加して飲料組成物を得て、これを殺菌する段階と、
前記殺菌した飲料組成物を4〜20℃で処理する段階と、
を含む高麗人参粉砕物が浮遊した飲料の製造方法を特徴とする。
【0026】
前記熱水は、精製水を陽イオン、陰イオン樹脂に通過させ、水中のイオンを全て除去し、硬度0ppmに調節した純水を使用することが好ましいが、これはゲル形成時に水中に存在するイオンが架橋剤の水和を妨害するのを防ぐためである。前記熱水は、温度が70〜95℃であるものを使用して安定剤であるジェランガムが熱水によく溶解するようにする。この時、酸味剤として使用され得るクエン酸ナトリウムをジェランガム及び結晶果糖と粉体混合して熱水に溶解させることができ、これを通して架橋剤の水和を容易にし、pHを調整することができる。
【0027】
ジェランガム及び結晶果糖を熱水に溶解させて安定化させた後、架橋剤、酸味剤及びマスキング剤を前記配合比で配合し、ろ過して殺菌する。その後、高麗人参粉砕物を添加した後、殺菌、製品化過程を経て高麗人参粉砕物が浮遊した飲料を製造することができ、この時、配合、殺菌、製品化過程は通常的な飲料製造過程での条件で行われる。但し、殺菌過程は80〜130℃で10〜60分間行われることが好ましい。特に、高麗人参粉砕物が安定的に飲料内に浮遊し、層分離現象が表れないようにするために、殺菌過程後に、4〜20℃、好ましくは10〜20℃の低温で30分以上処理する。
【0028】
以下、実施例により本発明を詳しく説明するが、下記実施例により本発明が限定されるわけではない。
【0029】
実施例1:高麗人参粉砕物飲料の製造
水参を粉砕用ヘッドカッターで粉砕して、平均粒子サイズ5mmの水参粉砕物を得た。
そして、飲料100mL基準でジェランガム0.02%(w/v)、クエン酸ナトリウム0.01%(w/v)、結晶果糖6.0%(w/v)を90℃の熱水に入れて10分間1000rpmで攪拌し、溶解、分散させた。乳酸カルシウム0.05%(w/v)、アガベシロップ4.0%(w/v)、クエン酸0.1%(w/v)、マルトデキストリン2.0%(w/v)を添加して配合、ろ過、殺菌した。その後、前記水参粉砕物を1.2%(w/v)添加して65℃で予熱し、90℃で充填して後殺菌過程を経た。そして、15℃で50分間低温処理して高麗人参粉砕物飲料組成物を製造した。
【0030】
実施例2〜4及び比較例1〜5
前記実施例1と同様に製造過程を行うが、組成成分の種類及び含量を下記表1のように変えて飲料を製造した。
【0031】
【表1】

【0032】
試験例1:分散性及び沈殿安定性の確認
前記製造された飲料組成物を室温に置いて分散性及び沈殿安定性を観察し、その結果を下記表2に表した。
【0033】
【表2】

【0034】
前記表2から分かるように、本発明の飲料組成物は水参粉砕物が安定的に分散され、沈殿しないことを確認した。しかし、安定剤であるジェランガムを添加しなかったり、その量が少ない場合または架橋剤の量が少ない場合は、水参粉砕物の沈殿が多量に発生することを確認した。そして、ジェランガムまたは架橋剤が過量に含まれる場合、水参粉砕物が均等に分散しないことが観察され、本発明の組成物が分散性や沈殿安定性が優れていることを確認した。
【0035】
試験例2:低温処理過程による分散性及び沈殿安定性の確認
前記実施例1の飲料製造過程で、15℃で50分間低温処理段階の代りに室温で自然冷却させた後、各々10時間経過後の分散性と沈殿安定性を確認し、これを下記表3に表した。
【0036】
【表3】

【0037】
前記実験から分かるように、室温で自然冷却させた場合、10時間経過後、水参粉砕物の大部分が沈殿することを確認できた。従って、本発明の製造過程で低温冷却過程が、粉砕物がより長時間安定的に分散した状態にするのに好ましいことが分かった。
【0038】
試験例3:飲用性の確認
前記実施例及び比較例の組成物において、下記表4の添加物を配合して飲料組成物を製造した後、官能評価要員25名を対象に5点尺度法により各飲料組成物に対する官能評価を実施し、その結果を下記表5に示した。
【0039】
【表4】

【0040】
【表5】

【0041】
水参粉砕物が過量に含まれた比較例5の場合は、清涼感が非常に低下して飲料としての選好度が低く表れ、安定剤であるジェランガムと架橋剤が非常に少ない量で含まれた比較例1の場合は、清涼感は良いが、水参粉砕物の沈殿が多量に発生して沈殿物の食感が良くなく、その風味も良くなかった。しかし、本発明の飲料組成物は適切な清涼感を有し、水参粉砕物の組織感が感じられ、風味やボディー感も優れており、全体的な選好度が優秀であることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高麗人参粉砕物0.2〜5%(w/v)と、
ジェランガム0.01〜0.1%(w/v)と、
カルシウム塩及びマグネシウム塩の中から選択される架橋剤0.01〜0.1%(w/v)と、を含むことを特徴とする高麗人参粉砕物が浮遊した飲料組成物。
【請求項2】
甘味剤1.0〜15%(w/v)、酸味剤0.03〜0.3%(w/v)及びマスキング剤0.3〜3%(w/v)の中から選択される少なくとも1種を含むことを特徴とする、請求項1記載の飲料組成物。
【請求項3】
前記高麗人参粉砕物は平均サイズが1〜10mmであることを特徴とする、請求項1または2記載の飲料組成物。
【請求項4】
前記架橋剤は乳酸カルシウム、塩化カルシウムまたは塩化マグネシウムであることを特徴とする、請求項1または2記載の飲料組成物。
【請求項5】
ジェランガム0.01〜0.1%(w/v)を結晶果糖1〜10%(w/v)と混合した後、70〜95℃の熱水に入れて攪拌し、溶解、分散させる段階と、
カルシウム塩及びマグネシウム塩の中から選択される架橋剤0.01〜0.2%(w/v)、酸味剤0.03〜0.3%(w/v)及びマスキング剤0.3〜3%(w/v)を添加して配合する段階と、
高麗人参粉砕物0.2〜5%(w/v)を添加して飲料組成物を得て、これを殺菌する段階と、
前記殺菌した飲料組成物を4〜20℃で処理する段階と、
を含むことを特徴とする高麗人参粉砕物が浮遊した飲料の製造方法。
【請求項6】
前記ジェランガム及び結晶果糖にクエン酸ナトリウムを追加して混合することを特徴とする、請求項5記載の高麗人参粉砕物が浮遊した飲料の製造方法。

【図1】
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