説明

魚介類用餌飼料

【課題】活魚輸送時のストレス負荷による肉質悪化を抑制・改善できる魚介類用の餌飼料を得ること。
【解決手段】水溶性抗酸化物質を有効成分として含有する魚介類用餌飼料にすることで、活魚輸送時等において魚介類に対してストレス負荷が生じたとしても、該ストレス負荷に対して前記魚介類の性状の変化を抑制でき、肉質悪化を抑制・改善できるようになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、養殖魚を含む、例えば、ブリ、真鯛またはヒラメ等の魚介類用の餌飼料であり、特に、養殖現場における養殖魚へのストレスによる罹患と肉質悪化を改善するための魚介類用餌飼料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、食品に対する安全性、安心性に関して国民の関心が急激に高まっており、さらに高齢化社会における健康への不安から、健康食品への希求もかつてない高まりを見せている。
【0003】
このような状況下において、例えば、魚介類においては、飼・餌料、飼育方法、投薬歴等を含めた履歴証明(トレーサビリティ)の確保による安全性、安心性が求められるだけでなく、人の健康に良い養殖魚介類等の生産、供給が重要課題となっており、これらが養殖魚介類等の商品価値を決める大きな要因の一つになっている。
【0004】
さらに、魚介類の体色を含めた姿形、味、におい、肉色、テクスチャー、鮮度等の肉質も商品価値を決める重要な要因になっている。
【0005】
養殖魚介類は、一般的に、生きたまま活魚としても出荷されることが多く、また、養殖用の種苗も当然のことながら生きたまま出荷されている。その活魚を輸送する際、過密や、酸素不足等のストレス負荷により、活力の低下や斃死発生が問題となっている。
【0006】
これら養殖等の魚介類用の飼餌料については、飼料効率と経済性を主眼とした研究が中心に行われているのが現実であり、養殖生産物の食品としての商品価値を高める観点、養殖魚介類の健康増進ないしは種苗を含めた養殖魚介類の活魚輸送時におけるリスク回避手段としての観点からの技術的研究は少ない。
【0007】
以上のことから、健康に育って活力高く、肉質も良く、安全・安心で人の健康にも良い魚介類の養殖を可能とする飼料ないしは飼料添加物の開発が、養殖業者だけでなく、消費者からも強く望まれている。
【0008】
そこで、養殖魚の肉質を改善できる魚介類用の餌飼料としては、例えば、リン脂質100gに対してカロチノイド0.1g〜10gの割合で配合してなる養魚飼料添加剤、および、飼料100g中にリン脂質2g以上とカロチノイド3mg以上とを含有してなる養魚飼料がある(特許文献1参照)。
【0009】
この特許文献1の公知技術においては、リン脂質に所要量のカロチノイドを配合させることによって、これを給餌された魚介類の肉色に赤い鮮やかな色合いが発現するようになり、異味,異臭のないすぐれた肉質を得ることができるというものである。
【0010】
【特許文献1】特開平6−70698号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、前述したように、養殖魚介類は、生きたまま活魚としても出荷・輸送されることが多く、その輸送する際における過密や、酸素不足等のストレス負荷によって活魚の肉質に悪化が生じてしまうことが問題として考えられるが、前記特許文献1の公知技術においては、この活魚輸送時等のストレス負荷による肉質悪化については考慮されていないものである。
【0012】
従って、活魚輸送時等のストレス負荷による肉質悪化を抑制・改善できる魚介類用の餌飼料を得るということに解決しなければならない課題を有している。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記の諸課題の観点から、精力的に検討を重ねた結果、魚介類用の餌飼料に水溶性抗酸化物質を有効成分として含有させることにより、上記の諸課題を解決することができることを見出した。
【0014】
更に、前記水溶性抗酸化物質として、糖の部分構造にもつと共にアミノ基を有し、分子量が268または283のいずれかであるものを用いることが好ましく、また、緑藻網(Chlorophyceae)オオヒゲマワリ目(Volvocales)のデュナリエラ属(Dunaliella)に属する微細藻(藻体)から得たものを用いた場合には、該デュナリエラ属に属する微細藻から得られる前記水溶性抗酸化物質の作用と、該藻体に含有されるβ−カロテンを含むカロテノイド(脂溶性抗酸化物質)の作用との相乗効果を得ることができるようになり、より好ましい形態とすることができるのである。
【0015】
そこで、本発明に係る魚介類用餌飼料においては、上記した従来例の課題を解決する具体的手段として、水溶性抗酸化物質を有効成分として含有することを最も主要な特徴とするものであり、更に、前記水溶性抗酸化物質は、糖の部分構造にもつと共にアミノ基を有し、分子量が268または283のいずれかであることと、前記水溶性抗酸化物質が、緑藻網オオヒゲマワリ目のデュナリエラ属に属する微細藻から得たものであることとを付加的な要件として含むものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る魚介類用餌飼料は、水溶性抗酸化物質を有効成分として含有するものであるため、この魚介類用餌飼料を養殖魚を含む魚介類に与えることで、活性酸素消去能が亢進され、活魚輸送時等において魚介類に対してストレス負荷が生じたとしても、該ストレス負荷に対して前記魚介類の性状の変化が抑制されることから、肉質悪化を抑制・改善できると共に、罹患が改善されて抗病性増強も期待でき、健康かつ活力の高い状態で育てることができ、消費者にとって肉質が良く、安全・安心で、人の健康にも積極的に寄与できるようになるという優れた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
次に、本発明を具体的な実施の形態に基づいて詳しく説明する。
まず、本発明において水溶性抗酸化物質とは、水に溶解する性質を有する抗酸化物質を意味するものである。この抗酸化物質としては、例えば、微細藻類の一種である緑藻網(Chlorophyceae)オオヒゲマワリ目(Volvocales)のデュナリエラ属(Dunaliella)に属する微細藻(藻体)等から得ることができ、天然由来のものが好ましいものである。このデュナリエラとしては、例えば、Dunaliella salinaD.salina)、D. bardawil及びD. tertiolecta等を使用することができる。
【0018】
前記デュナリエラ等の微細藻は、天然由来のものまたは培養によるもののいずれを用いても良いが、安定供給と品質保持の観点から、培養により増殖させて使用することが望ましい。また、前記微細藻は、生の藻体、乾燥した藻体または乾燥した粉体等のいずれであっても良い。
【0019】
微細藻は光合成を行なって自らのエネルギーとしているため、培養は光照射下に藻類培養用の培地を用い、通常の培養方法により行なうことができる。具体的な培養条件を述べれば下記のとおりである。
【0020】
D.salinaを培養する方法としては、培地は一般的な好塩性緑藻類を培養する際に用いられるものであれば格別な制限はなく、例えば、Dunaliella salina growth medium等の培地を用いることができる。
【0021】
即ち、新鮮なろ過海水999mlに対してNaCl 87g、KNO 76mg、KHPO 8.7mg及びNaHCO 4.2gを添加した溶液に、CuCl・2HO 200mg/l、Zn Cl 100mg/l、CoCl・6HO 200mg/l、MnCl・4HO 600mg/l、FeCl・6HO 400mg/l、(NH)6Mo24・4HO 1.2g/l及びEDTA2Na・2HO 2.2g/lからなる微量元素混合溶液1mlを添加することにより培地を調製した。
【0022】
培養は、D.salinaの細胞数が1−2×10 cells/mlとなるように培地に接種し、2リットル容のガラス扁平フラスコを用いて行なった。培養期間は7−14日間が適当であり、培養は空気を適当な通気手段により導入する好気的条件下(炭酸ガス供給は0%〜10%)にかつ蛍光灯や太陽光を光源として照度を3000 lux〜150000 luxに設定し、連続光照射(24時間明)から8時間明/16時間暗にて行なうのが望ましい。培養温度は15−40℃であり、30℃付近が望ましい。
【0023】
培養した微細藻(藻体)を常法により収集した後、例えば、遠心分離等によりデュナリエラ藻体と培養液とを分離し、得られたペーストを凍結乾燥して、デュナリエラ藻体乾燥粉末を得ることができる。
【0024】
本発明においては、水溶性抗酸化物質として、このようにして得られた微細藻をそのまま用いても良いが、例えば、微細藻から抽出した抽出物等を用いるのが良い。
【0025】
このようなデュナリエラ等の微細藻から抽出物を抽出する方法としては、常法により抽出することができるが、例えば、容器内にデュナリエラの微細藻と蒸留水とを収納して懸濁させ、必要により攪拌や超音波処理をしながら、時間は約10〜120分間、好ましくは約20〜40分間、温度は約0〜30℃、好ましくは約0〜15℃にしてデュナリエラ等の水抽出物を抽出する。
【0026】
このデュナリエラ等の微細藻から水抽出物を抽出する際の蒸留水中におけるデュナリエラの微細藻の濃度としては、例えば、約5重量%〜50重量%程度の濃度であれば良く、約5重量%〜15重量%程度の濃度にすることが好ましい。この理由としては、抽出時のデュナリエラの藻体(粉末を含む)の濃度は特に臨界的ではないが、濃度が高すぎるとデュナリエラ水抽出物の回収率が悪くなり、また濃度が低過ぎると抽出液中の有効成分(水溶性抗酸化物質)の濃度が低くなり、抽出液からの有効成分の回収のためのコストが高くなるからである。
【0027】
この抽出液からデュナリエラの水抽出物を得る方法としては、常法により得ることができるが、例えば、前記抽出液を遠心分離後、その上澄み液をとり、該上澄み液をフィルターを用いて濾過することによりデュナリエラの藻体と抽出液とを分離した後、これを凍結乾燥して前記抽出液からデュナリエラ水抽出物を得るものである。また、前記フィルターにより濾過して分離された抽出液を濃縮して濃縮液にし、該濃縮液を乾燥させて乾燥したデュナリエラの水抽出物を得るようにしても良い。このような濃縮・乾燥する方法としては、常法により行うことができるが、例えば、減圧濃縮や、凍結乾燥や、噴霧乾燥等の方法により行なうことができる。
【0028】
このようにして得られたデュナリエラ水抽出物について、カラムクロマトグラフィーを用いて精製を行った。このカラムクロマトグラフィーにおいては、例えば、ODS樹脂(Chromatorex)を充填した逆相カラムクロマトグラムと、陰イオン交換樹脂(Dowex 1×8)を充填したイオン交換クロマトグラムと、更には、高速液体クロマトグラフィー(ODSカラム)とにより精製を行い、WST−1法によるスーパーオキシドアニオン消去活性を指標として、2つの活性画分を得、これを所望により常法に従って、濃縮、凍結、および乾燥し、2種類の水溶性の抗酸化物質を得た。
【0029】
このようにして得られたデュナリエラ水抽出物について、その性質を調べたところ、次のような性質を有していることが分かった。
(1)LC/MS分析の結果、分子量は268と283であった。
(2)NMR分析の結果、これら分子量が268または283のいずれかである両物質ともに、ヒドロキシル基を多く含む糖の部分構造をもつと推定された。
(3)ニンヒドリン反応により、これら分子量が268または283のいずれかである両物質ともに、アミノ基を有しているものであった。
【0030】
そして、デュナリエラ水抽出物から得られた分子量が268または283のいずれかの物質は、水溶性で抗酸化活性を有していることが分かった。つまり、これら分子量が268または283のいずれかであるデュナリエラ水抽出物に含まれていた両物質は、水溶性抗酸化物質であることが分かった。
【0031】
このように、糖の部分構造にもつと共にアミノ基を有し、分子量が268または283のいずれかであるということに特定された水溶性抗酸化物質を使用する場合には、該水溶性抗酸化物質としてのより高い作用が得られるようになるのである。
【0032】
本発明においては、例えば、デュナリエラの微細藻等から得られた水溶性抗酸化物質を養殖魚等の魚介類用の餌飼料に配合することによって、前記水溶性抗酸化物質が有効成分として作用し、この有効成分を含んだ前記魚介類用餌飼料を与えられた魚介類におけるストレスによる肉質悪化等を抑制・改善するという新知見によるものである。
【0033】
そして、魚介類用の餌飼料に水溶性抗酸化物質を配合させる場合には、餌飼料に水溶性抗酸化物質を配合させることは勿論だが、例えば、デュナリエラの微細藻等の藻体自体や、デュナリエラの微細藻等の抽出物等を餌飼料に含有させても良い。また、前記餌飼料にデュナリエラの藻体を含有させるような場合には、魚介類用餌飼料中におけるデュナリエラ藻体の含有量として、略0.05重量部%〜10重量部%程度の範囲であれば良いのである。
【0034】
本発明を応用できる魚介類としては、例えば、ブリ、真鯛、ヒラメ、ハマチ、トラフグ、カンパチ、アジ、スギ、シマアジ、鯖、鱒、鮎、ウナギ、鯉、ギンザケ、車えびまたは鮑などが含まれる。
【0035】
本発明に言う魚介類用餌飼料とは、鰯、秋刀魚、アジ、鯖またはイカナゴ等の単独使用時に添加されるもの、および市販されている全ての魚介類用餌飼料に対して添加使用されるものを指す。
【0036】
そして、水溶性抗酸化物質を魚介類用の餌飼料に添加させる際の形態としては、顆粒状、粉末状、液体状、ペースト状等様々なものが挙げられる。さらに魚介類用餌飼料には、デュナリエラ属微細藻等から得られた水溶性抗酸化物質に加えて、例えば、ビタミン類、ミネラル類、オキアミエキス、粘結剤、防腐剤、色素類、強肝剤等の有用成分をそのまま使用目的に応じて配合することが可能である。
【実施例1】
【0037】
次に、具体的な実施例を用いて説明するが、本発明は以下の実施例になんら限定されるものではない。
【0038】
D.salinaの培養]
この実施例1において、D.salinaの培養としては、上記 Dunaliella salina growth mediumを用いて、D.salinaの細胞数が約1×10 cells/mlとなるように培地に接種し、2リットル容のガラス扁平フラスコを用いて行なった。23℃で、炭酸ガス5%を含有する空気を通気し、蛍光灯(3500lux)にて連続照射し、10日間培養した。培養した藻体を遠心分離機(3000回転10分間)にて分離し、得られたペーストを凍結乾燥して、デュナリエラ藻体乾燥粉末を得た。
【0039】
[試験飼料の作製]
この実施例1においては、ブリ用市販粉末飼料(ハマチモイストベースII)に水溶性抗酸化物質を含有した上記培養デュナリエラ藻体乾燥粉末を0.1%および1%添加した魚介類用餌飼料を作製した。すなわち、粉末飼料900gにデュナリエラ藻体乾燥粉末を1gまたは10gを添加し、よく混合した後、魚油100gと水400mlを加えてミンチ機でペレット状に成型した。使用時まで−20℃の冷凍庫にて保存した。
【0040】
[対照飼料]
前記実施例1と比較するための対照飼料として、前記実施例1と同様のブリ用市販粉末飼料に魚油100gと水400mlを加えてミンチ機でペレット状に成型した。使用時まで−20℃の冷凍庫にて保存した。
【0041】
[試験の条件]
以下の試験においては、体重約300gの真鯛を800L容水槽に1水槽あたり15尾収容した。試験群は、前記対照飼料を与えた対照飼料群と、前記実施例1の水溶性抗酸化物質を含有したデュナリエラ藻体乾燥粉末を0.1%添加した0.1%試験飼料群と、前記実施例1の水溶性抗酸化物質を含有したデュナリエラ藻体乾燥粉末を1%添加した1%試験飼料群との3群とした。給餌は、日曜日を除く毎日、1日1回飽食給餌とした。2ヶ月飼育した後、色揚げ効果を判定しその後、ストレス負荷試験を行った。
【0042】
[色揚げ効果試験]
この色揚げ効果試験においては、前記対照飼料群と、0.1%試験飼料群と、1%試験飼料群との3群について、それぞれ肉眼で体表面の色の濃淡を確認した。その結果、各群に差が認められなかったため、色彩色差計による測定はしなかった。本発明の魚介類用餌飼料には、色揚げ効果は認められなかった。
【0043】
[慢性ストレス負荷試験(低水位ストレス)]
この慢性ストレス負荷試験においては、対照飼料群7尾と、0.1%試験飼料群8尾と、1%試験飼料群7尾とを用いて行った。それぞれが収容された水槽の水位を真鯛の背びれが完全に露出する7.2cmまで下げ、かつ水槽の幅を33cmまで狭くして低水位高密度条件に設定した。その際、海水とエアレーションの供給は維持したので、飼育水の溶存酸素量は約5.7と十分な酸素量であった。この低水位高密度条件にしてから30分放置した。
【0044】
[急性ストレス負荷試験(空中露出ストレス)]
この急性ストレス負荷試験においては、前記対照飼料群と、0.1%試験飼料群と、1%試験飼料群との各試験群それぞれ3尾を用いて行った。これら各試験群について、暴れさせないようにしてそれぞれの魚を静かに1尾網で捕獲し、1分間空中で放置した。
【0045】
[血液ならびに肝臓検査]
前記対照飼料群と、0.1%試験飼料群と、1%試験飼料群との各試験群3尾について、ストレス負荷なしで、採血すると共に、肝臓を摘出した。また、前記慢性ストレス負荷試験と急性ストレス負荷試験との各ストレスを負荷した魚についても、ストレス負荷後直ちに採血すると共に、肝臓を摘出した。採取した血液は、自動血液性状検査機(セルタックα)を用いて血液性状を調べた。肝臓については、TBA値を測定した。
【0046】
[血液性状の測定結果]
前記血液性状を調べた測定結果を図1に示す。なお、図1においては、前記慢性ストレス負荷試験を行っていないもの(ストレス前)と、慢性ストレス負荷試験を行ったもの(低水位ストレス)と、急性ストレス負荷試験を行ったもの(空中露出ストレス直後)とに分類して示してある。
【0047】
この図1から明らかなように、慢性ストレス負荷試験においては、対照飼料群ではヘマトクリット値が若干低下したが、0.1%試験飼料群と、1%試験飼料群とにおいては、ほとんど変動は認められなかった。また、急性ストレス負荷試験においては、3群ともヘマトクリット値が上昇したが、特に対照飼料群で大きな変動が認められた。
【0048】
この血液性状の結果より、本発明に係る魚介類用餌飼料を魚介類(真鯛)に与えることによって、ストレス負荷時における魚介類の血液性状の変動を抑制する作用が認められ、ストレスに対する耐性を高める効果が認められた。
【0049】
[肝臓TBA値の測定結果]
前記摘出した肝臓のTBA値を測定した結果を図2に示す。なお、図2(a)は、前記慢性ストレス負荷試験を行っていないもの(ストレス前)と、慢性ストレス負荷試験を行ったもの(ストレス後)とのTBA値を示し、図2(b)は、急性ストレス負荷試験(空中露出ストレス)のTBA値を示してある。
【0050】
この図2(a)から明らかなように、慢性ストレス負荷試験において、TBA値の上昇が認められた。しかし、その上昇度合いは、対照飼料群でもっとも大きく、次に0.1%試験飼料群、1%試験飼料群であった。特に、1%試験飼料群においては、ストレス負荷しない場合とほとんど変わりはなかった。また、図2(b)から明らかなように、急性ストレス負荷試験においても同様の傾向が認められ、対照飼料群のTBA値が最も高く、0.1%試験飼料群、1%試験飼料群の順であった。1%試験飼料群のTBA値は、対照飼料群の約半分であった。
【0051】
この肝臓TBA値の測定結果より、本発明に係る魚介類用餌飼料を魚介類(真鯛)に与えることによって、ストレス負荷時における魚介類のTBA値の変動を抑制する作用が認められ、ストレスに対する耐性を高める効果が認められた。
【0052】
これら血液性状と肝臓TBA値との測定結果より、活魚輸送時等において魚介類に対してストレス負荷が生じたとしても、該ストレス負荷に対して前記魚介類の性状の変化が抑制されることから、肉質悪化を抑制・改善できるようになる。
【実施例2】
【0053】
(デュナリエラ水溶性抗酸化物質の調製)
前記デュナリエラを粉末にしたデュナリエラ藻体乾燥粉末から水溶性抗酸化物質を調製した。デュナリエラ藻体乾燥粉末40gに水360ml(ミリリットル)を添加し、室温で20分間攪拌した。その後、氷冷下で3分間超音波処理をし、遠心分離(2000rpmで30分した後、更に15000rpmで30分)を行ない、得られた上清をさらにシリンジフィルター(アドバンテック東洋社製、0.8μm)でろ過してデュナリエラ水抽出物を得た。このデュナリエラ水抽出物200mlをODS樹脂(Chromatorex)を充填したカラムクロマトグラフィーを実施した。溶出された非吸着画分と2L(リットル)の水で溶出した画分を併せて画分1とした。
【0054】
次に、50%メタノール溶液2Lを用いて溶出し、画分2を得た。これら画分1と画分2との各画分を濃縮乾固後、水200mlに溶解させた。各画分それぞれ、陰イオン交換樹脂(Dowex 1X8)を充填したカラムクロマトグラフィーを実施した。溶出された非吸着画分と1.2Lの水で溶出した画分を合わせて中性・酸性画分を得た。
【0055】
この得られた中性・酸性画分について再度ODS樹脂(Chromatorex)を充填したカラムクロマトグラフィーを実施した。50%メタノール溶液で溶出した画分を得た。この画分の80mlを8mlまで濃縮乾固し、HPLC(Cosmosil Packed Column 5C18カラム)で精製を行なった。1回のアプライ量を400μlとし、20回実施した。溶出順序の6番目と8番目の画分を得た。
【0056】
(飼料の作製)
この実施例2においては、ブリ用市販粉末飼料(ハマチモイストベースII)に上記デュナリエラ水溶性抗酸化物質、即ち、糖の部分構造にもつと共にアミノ基を有し、分子量が268または283のいずれかである水溶性抗酸化物質を添加して魚介類用餌飼料を作製した。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明に係る魚介類用餌飼料の例として0.1%試験飼料群と、1%試験飼料群と、比較として対照飼料群とにおける血液性状を測定した結果のグラフである。
【図2】(a)は、慢性ストレス負荷試験を行っていないものと、慢性ストレス負荷試験を行ったものとのTBA値を示したグラフであり、(b)は、急性ストレス負荷試験のTBA値を示したグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性抗酸化物質を有効成分として含有すること
を特徴とする魚介類用餌飼料。
【請求項2】
前記水溶性抗酸化物質は、
糖の部分構造にもつと共にアミノ基を有し、分子量が268または283のいずれかであること
を特徴とする請求項1に記載の魚介類用餌飼料。
【請求項3】
前記水溶性抗酸化物質は、緑藻網オオヒゲマワリ目のデュナリエラ属に属する微細藻から得たものであること
を特徴とする請求項1または2に記載の魚介類用餌飼料。

【図1】
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【図2】
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