説明

魚礁用ユニット及びこれを用いた魚礁

【課題】ユニットの組合わせによって比較的中規模から大規模な魚礁に好適で、労力とコストを大幅に節減可能な魚礁用ユニット及びこれを用いた魚礁を得ること。
【解決手段】イ)輪郭を長方体状に囲んで形成された外枠と、前記外枠中間部の前及び後側に横断して方形状に固着された中間枠と、前記外枠及び中間枠の左右外面側に交差して渡されている筋交いとを有し、前記外枠及び中間枠によって前、中間及び後の空間ブロックが形成されている枠体と、ロ)前記前及び後空間ブロックの前及び後寄りに前記外枠と一体に形成されている方形体状の前後コンクリート部と、ハ)前記コンクリート部を貫通して略水平に間隔をおいて埋込まれた複数本の間伐材とよりなる魚礁用ユニット及びこれを複数組合わせて用いた魚礁。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、間伐材を活用した人工の魚礁用ユニット及びこれを用いた魚礁の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
建築材として不適の間伐材の有効利用の一つとして、人工の魚礁への活用が計られている。例えば、下記特許文献に記載のものは、コンクリートパネルの上下面を貫通して埋め込んだ複数本の間伐材を突設させて一体に形成した魚礁用部材(パネルA)と、枠状コンクリートパネルの棚部に複数本の間伐材を敷き詰め固定した魚礁用部材(パネルB)とを組合わせて連結した魚礁である。
【特許文献1】特開2005−137267号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら前記特許文献に記載の魚礁ユニットである魚礁用部材が比較的小サイズであり、例えば間伐材をパネルAでは長さ30〜50cmに、パネルBでは200cmに切断して使用している。比較的小規模の魚礁には小回りをきかせて有効利用可能であるが、大規模の魚礁には大量に魚礁用部材を用いなければならず、ユニット数が増え多大なコストを必要とする。
これに対し本発明は、魚礁用ユニットを間伐材を細かく切断する部分が少なく比較的大サイズに構成し、ユニットの組合わせによって比較的中規模から大規模な魚礁に好適で、海底に設置した場合に潮流、波浪等の外力に対して移動や転倒することがなく、間伐材は流出浮遊することが少なく、労力とコストを大幅に節減可能な魚礁用ユニット及びこれを用いた魚礁を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この目的を達成するために、
請求項1の発明にあっては、イ)輪郭を長方体状に囲んで形成された外枠と、前記外枠中間部の前及び後側に横断して方形状に固着された中間枠と、前記外枠及び中間枠の左右外面側に交差して渡されている筋交いとを有し、前記外枠及び中間枠によって前、中間及び後の空間ブロックが形成されている枠体と、ロ)前記前及び後空間ブロックの前及び後寄りに前記外枠と一体に形成されている方形体状の前後コンクリート部と、ハ)前記コンクリート部を貫通して略水平に間隔をおいて埋込まれた複数本の間伐材とよりなる魚礁用ユニットにより解決した。
請求項2の発明にあっては、間伐材はコンクリート部の上段に埋込まれ、前記コンクリート部の下段に略水平に間隔をおいて複数本の開口部が穿設されている請求項1記載の魚礁用ユニットとするのが好ましい。
請求項3の発明にあっては、前後コンクリート部に埋込まれている間伐材の端部芯に予め中空部が穿設されている請求項1〜2のいずれかに記載の魚礁用ユニットとするのが好ましい。
請求項4の発明にあっては、請求項1〜3のいずれかに記載の魚礁用ユニットを一対前後長手方向に間隔をおいて平行に配設し前後が上下の枠繋ぎ材によって連結され、前記魚礁用ユニットは左右端の距離が外枠の前後奥行きと同一にとられてモジュール化されている魚礁により解決した。
請求項5の発明にあっては、請求項4に記載の魚礁の複数セットを用い下の段に対し上の段を順次90度回転して井桁状に載置して互いに固着されている魚礁により解決した。
【発明の効果】
【0005】
本発明の魚礁用ユニット及びこれを用いた魚礁によれば、間伐材を比較的大サイズに構成し、ユニットの組合わせによって比較的中規模から大規模な魚礁に好適で、海底に設置した場合に潮流、波浪等の外力に対して移動や転倒することがなく、間伐材は流出浮遊することが少なく、魚の即効的な蝟集機能と増殖礁としての機能が十分発揮され、労力とコストを大幅に節減可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1は、本発明の魚礁用ユニットの一例を示し、平面図、側面図、及び正面図である。 図2は、図1の魚礁用ユニットの斜視図で、全体図、及び前端部拡大図である。
図3は、図1の魚礁用ユニットを用いた魚礁の一例を示し、平面図、側面図、及び正面図である。
図4は、図3の魚礁の斜視図である。
以下においては、例えば図2を参照して、魚礁用ユニットを長手方向の左端部側を前Fとし右端部側を後Bとし、前Fからみて左側を左Lとし右側を右Rとして説明する。
【0007】
図1、2を参照して、本発明の魚礁用ユニットの一例を符号1で示し説明する。ここで、図1に二点鎖線で示すのは、後述する魚礁用ユニットを組合わせて用いる魚礁5である。
魚礁用ユニット1は、枠体2と、コンクリート部3と、間伐材4とよりなっている。
枠体2は、山形鋼材によって輪郭を長方体状に囲んで形成された外枠21と、外枠21の前Fと後Bとの中間に前後略等間隔に左右に横断して山形鋼材によって方形状に形成され溶接等による溶着により固着された(以下単に「溶着」と略す。)中間枠22と、外枠21及び中間枠22の左右外面側に交差して渡され端部が溶着されている鋼材の筋交い23とを有し、全体が前Fから後Bに向かって外枠21及び中間枠22によって前、中間及び後の3つの空間ブロックが形成されている。外枠21の前F及び後Bには上下段の中間部に水平方向に支持材24が固着され、後述する魚礁用ユニット1の組立ての際に用いて有効な好ましい構成要素である。本例では、外枠21の外寸は、前後奥行きD6m、左右W2m、高さH1.2mにとっている。
コンクリート部3は、図2においてハッチングで示すとおり、枠体2の前空間ブロック及び後空間ブロックの前寄り及び後寄りにおいて各空間ブロックの少なくとも1/2の大きさにとられ、外枠21と一体の方形体状に形成されている。コンクリート部3には、上段一列略水平に間隔をおいて複数本(本例では3本)の間伐材4が埋込まれ、下段一列略水平に間隔をおいて複数本(本例では4本)の断面略三角形の開口部31が穿設されている。ここの開口部31は必須の構成ではないが、後述するとおり伊勢えび等の生息場等として有用であり、断面は略三角形でなくともよいがその方がより効果的である。間伐材4の配設については後述する。
間伐材4は、長尺の複数本例えば本例では杉又は檜の3本で直径100〜200mm、長さ6〜10mのもの用い、各コンクリート部3の間に前端から後端に渡って埋込まれている。
又本例ではコンクリート部3に埋込まれている間伐材4の両端部の芯には予め中空部42が加工されていが、これは必須の構成ではないものの、後述するとおりコンクリート部3の空洞化が促進され、伊勢えびの生息環境が提供される。
上記した本例についての各部寸法は一例であって、これに限定されない。
【0008】
次に、魚礁用ユニット1の組立てについて説明する。
先ず、枠体2の各構成部材の外枠21、中間枠22及び筋交い23によって枠体2を図1、2に示すとおり長方体状に組立てる。3本の間伐材4の前後端末を、支持材24上に乗せて枠体2の正面からみて上段に位置決めし、4本の断面略三角形の開口部31を下段に設ける。該間伐材4と開口部31との上下関係は、互いの上下段の位置が変わっても良い。
次いで図示省略するが、前空間ブロックでは前及び左右の外側、後空間ブロックでは後及び左右の外側及び底面にそれぞれ型枠を当て、前空間ブロックの後及び後空間ブロックの前に木製枠を当てて囲い形枠とする。木製枠は貫通する間伐材4の径にばらつきがあるので、木製枠は各間伐材4の径に合わせて作成される。
この形枠にコンクリートを流し込み、養生を経てコンクリートを固化し、前後のコンクリート部3の上段には3本の間伐材4が埋込まれて保持され、下段には4本の断面略三角形の開口部31が穿設された魚礁用ユニット1が得られる。

【0009】
次に、図3、4を参照して、魚礁用ユニット1を用いた魚礁5について説明する。
魚礁用ユニット1は、単独でも使用可能であるが、海域の条件に合わせて通常は魚礁用ユニット1を複数個組合わせて設置する。その一例として図3、4に示すのは魚礁用ユニット1を6ユニット組合わせた3モジュールの例である。
魚礁5は、説明に当たり構成する魚礁用ユニット1を区別するためにそれぞれ1a、1b、1c、1d、1e、1fで表示し、上段が1a、1b、中段が1c、1d及び下段が1e、1fよりなっており、各ユニットはいずれも同一の構成で、一対の魚礁用ユニット1の組合わせでモジュール化されている。
先ず、下段の魚礁用ユニット1e、1fは一対で前後長手方向に間隔をおいて平行に配設され,その左右短案間隔は魚礁用ユニット1eの左端と魚礁用ユニット1fの右端の距離が外枠21の前後奥行きDと同一となるようにとられている。魚礁用ユニット1e、1f間には上下の枠繋ぎ材6を水平方向に渡して隣接する両ユニットの枠21に溶着して両ユニットが連結され、筋交い23と同様の筋交い61が交差して渡され端部が溶着されている。
中段の一対の魚礁用ユニット1c、1dは、下段の魚礁用ユニット1e、1fの上に90度回転して載置され中下段の枠21が枠繋ぎ材7を介して互いに溶着されている。
上段の一対の魚礁用ユニット1a、1bは、中段の魚礁用ユニット1c、1fd上に90度回転して載置され中上段の枠21が枠繋ぎ材7介して互いに溶着されている。ここで、魚礁用ユニット1a、1bは下段の魚礁用ユニット1e、1fとは同方向におかれている。
以上詳述したとおり、魚礁5の魚礁用ユニットは各段一対のモジュールで間伐材4の長手方向が下の段に対し上の段がそれぞれ90度回転した方向におかれて配設され、下の段と上の段が互いに固着されており、所謂井桁状に積上げられている。
【0010】
前記した魚礁5は、一対の魚礁用ユニットのモジュールの3セットが3段積上げられているが、設置する海域の条件は例えば広さ、水深、潮流、波浪等の条件によって千差万別であり、それらの諸条件に合わせて魚礁用ユニット1を単独で用いたり、一対の魚礁用ユニットのモジュールだけを用いたり、モジュールの複数セットを井桁状に積上げて使用する等により、柔軟に対応が可能である。
【0011】
前記詳述した海底に設置された魚礁5の機能、効用を下記する。
(イ)間伐材4は、プランクトン、魚介類、海藻類等の海中生物の良好な生息環境を創出し維持するので、魚礁としての機能の発揮が効果的且つ速効的に得られる。しかし、間伐材の魚礁部材としての耐久性は、船喰虫等の食害で精々数年に過ぎず、劣化流出により近海の刺し網、定置網等の漁業施設や海洋構造物へ危害を及ぼす危険性があり、各種研究開発がなされてきたが、未だ十分実用に適しているとはいえない。
これに対し、本発明の魚礁5では、間伐材4は枠体2に囲まれコンクリート部3に埋込まれた魚礁用ユニット1を組合わせており、海底に設置した場合に潮流、波浪等の外力に対して移動や転倒することがない重量のコンクリート量を有する構成であり、囲まれた枠体2から間伐材4は流出浮遊することは少ない。
(ロ)時間が経過してコンクリート部3に埋込まれた間伐材4が消耗、消滅した後は、コンクリート部3の間伐材4が埋込まれていた跡は空洞となり、伊勢えび等の生息場、隠れ場、飼料場として絶好の空洞となる。
コンクリート部3に埋込まれた間伐材4の両端部の芯を予め中空に加工しておくことにより、上記コンクリート部3の空洞化が促進される。
又、予め穿設されている開口部31は伊勢えび等の生息場等として有用である。伊勢えびは、物体に身をすり付けて生息する性質があり、開口部を三角形とすることで、伊勢えびの大小にかかわらず身の2面を接することができるので、生息場として効果的である。
(ハ)魚礁5の例では、間伐材4の長手方向が下の段と90度回転した方向におかれて複数段水平井桁状に積上げられているので、設置場所の条件に柔軟に対応でき、天端の表面積が広く確保でき水深によっては有用海藻類の藻場としても機能することができる。
(ニ)魚礁ユニットを積み重ねることにより、コンクリート部の上下で棚が形成され伊勢えびや稚魚の生息場及び隠れ場として機能する。
(ホ)以上まとめて、魚礁5の設置当初の間伐材4は、魚の即効的な蝟集機能を発揮し、数年後にはコンクリート部3に埋込まれた間伐材4の部分の跡が空洞となり伊勢えび等の生息場等の増殖礁としての機能を発揮することができる。
【産業上の利用可能性】
【0012】
本発明の魚礁は、魚の即効的な蝟集機能と増殖礁としての機能を発揮できるので、林野業から望まれている大量に発生する間伐材の有効利用に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の魚礁用ユニットの一例を示し、(a)平面図、(b)側面図、(c)正面図である。
【図2】図1の魚礁用ユニットの斜視図で、(a)全体図、(b)前端部拡大図である。
【図3】図1の魚礁用ユニットを用いた魚礁の一例を示し、(a)平面図、(b)側面図、(c)正面図である。
【図4】図3の魚礁の斜視図である。
【符号の説明】
【0014】
1、1a〜1f 魚礁用ユニット
2 枠体
21 外枠
22 中間枠
23、61 筋交い
24 支持材
3 コンクリート部
31 開口部
4 間伐材
42 中空部
5 魚礁
6、7 枠繋ぎ材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イ)輪郭を長方体状に囲んで形成された外枠と、前記外枠中間部の前及び後側に横断して方形状に固着された中間枠と、前記外枠及び中間枠の左右外面側に交差して渡されている筋交いとを有し、前記外枠及び中間枠によって前、中間及び後の空間ブロックが形成されている枠体と、ロ)前記前及び後空間ブロックの前及び後寄りに前記外枠と一体に形成されている方形体状の前後コンクリート部と、ハ)前記コンクリート部を貫通して略水平に間隔をおいて埋込まれた複数本の間伐材とよりなることを特徴とする魚礁用ユニット。
【請求項2】
間伐材はコンクリート部の上段に埋込まれ、前記コンクリート部の下段略水平に間隔をおいて複数本の開口部が穿設されていることを特徴とする請求項1に記載の魚礁用ユニット。
【請求項3】
前後コンクリート部に埋込まれている間伐材の端部芯に予め中空部が穿設されていることを特徴とする請求項1〜2のいずれかに記載の魚礁用ユニット。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の魚礁用ユニットを一対前後長手方向に間隔をおいて平行に配設し前後が上下の枠繋ぎ材によって連結され、前記魚礁用ユニットは左右端の距離が外枠の前後奥行きと同一にとられてモジュール化されていることを特徴とする魚礁。
【請求項5】
請求項4に記載の魚礁の複数セットを用い下の段に対し上の段を順次90度回転して井桁状に載置して互いに固着されていることを特徴とする魚礁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−282604(P2007−282604A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−116475(P2006−116475)
【出願日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【出願人】(501221164)日本漁場システム株式会社 (2)
【出願人】(000150280)株式会社中山製鋼所 (26)
【Fターム(参考)】