説明

魚釣用リール

【課題】釣場の様々な状況変化に応じて、ショートキャストからロングキャストに至るまで対応可能な磁気制動装置を有する魚釣用リールを提供する。
【解決手段】本発明の魚釣用リールは、リール本体を構成する側板に装着される支持板51に設けられ、内側磁石41と外側磁石42のいずれか一方又は両方を軸方向に移動可能に保持して環状の導電体30に対する重合面積を変えると共に、いずれか一方の磁石を回転可能に保持する磁石保持体53を備えた軸方向移動保持機構50を有する。そして、内側磁石41と外側磁石42の環状の導電体30に対する重合面積を変えることで、環状の導電体30に作用する初期の磁気制動力、及び終期の磁気制動力が調整可能であると共に、内側磁石41と外側磁石42のいずれか一方を回転することで、環状の導電体30に対する磁気制動力が調整可能となっている

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リール本体の側板内間に回転自在に支持したスプールの釣糸放出時の過回転を防止するバックラッシュ防止装置を備えた魚釣用リールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、釣糸放出時(例えば、キャスティング時)に、釣糸の引き出し速度よりスプールの回転速度が速くなる(過回転)と、バックラッシュ現象が生じて糸絡みや食い込み等の不具合が発生するため、このようなスプール過回転現象を自動的に防止するためのバックラッシュ防止装置をキャスティング用リールに装備することが行われている。
【0003】
通常、バックラッシュ防止装置は、スプールの回転に制動力を付与する構成となっており、例えば、特許文献1に開示されているような、磁力を利用した磁気制動装置が知られている。この磁気制動装置は、スプールと一体で回転する導電体を磁石によって形成される磁界中に位置させ、導電体の回転に伴って生じる電磁力により、導電体の回転に制動力を付与すると共に導電体と一体回転するスプールに制動力を付与する。
【0004】
具体的に、特許文献1に開示されている磁気制動装置は、キャスティング時に、スプールの回転速度に応じて磁界内に導電体を付勢力に抗して進退させ、キャスティング初期、及び終期における不必要なスプール回転抑制を無くして飛距離の向上を図ると共に、このスプールの回転速度に応じて軸方向移動する導電体を、作動状態と非作動状態に選択可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3610276号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、釣場においては、仕掛け放出の条件として、遠方へ仕掛けをキャストする飛距離向上を優先する場合のロングキャスト(フルスイングキャスト)から、身近なポイントへのショートキャスト等、対象魚、釣場の状況などにより、釣人にとってベストな仕掛け放出操作とリールのスプール制動特性が要求される。
【0007】
しかしながら、上記した従来技術の場合、スプールの回転速度に応じて軸方向移動する導電体を、作動状態と非作動状態のいずれかに選択する構成のため、スプールの制動特性が限定的となり、実釣時における様々な釣場の状況に合致した最適な制動特性を使用してのキャスティング操作が行えない、等の問題がある。
【0008】
本発明は、上記した事情に着目してなされたものであり、釣場の様々な状況変化に応じて、ショートキャストからロングキャストに至るまで対応可能な磁気制動装置を有する魚釣用リールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した課題を解決するために、本発明の魚釣用リールにおける磁気制動装置は、リール本体に回転自在に支持したスプールの一側に、スプール軸に対して軸方向に移動可能に支持された環状の導電体と、前記環状の導電体の内面側及び外面側に所定間隔をおいて配設される内側磁石及び外側磁石と、前記スプールの回転に伴って径方向に移動し、スプールとの係合作用を利用して前記環状の導電体を前記内側磁石及び外側磁石の磁界内に進退可能にしてスプールに作用する磁気制動力を増減可能にする径方向移動部材と、前記リール本体を構成する側板に装着される支持板と、前記支持板に設けられ、前記内側磁石と外側磁石のいずれか一方又は両方を軸方向に移動可能に保持して環状の導電体に対する重合面積を変えると共に、いずれか一方の磁石を回転可能に保持する磁石保持体と、を備えた軸方向移動保持機構と、を有しており、前記内側磁石と外側磁石の環状の導電体に対する重合面積を変えることで、環状の導電体に作用する初期の磁気制動力、及び終期の磁気制動力が調整可能であると共に、前記内側磁石と外側磁石のいずれか一方を回転することで、環状の導電体に対する磁気制動力が調整可能である、ことを特徴とする。
【0010】
上記した構成によれば、環状の導電体に磁界を与える内側磁石と外側磁石のいずれか一方又は両方を、リール本体を構成する側板に装着される支持板に設けられた軸方向移動保持機構によって、軸方向に移動可能に保持していることから、釣場の状況等に応じて、内側磁石及び/又は外側磁石の軸方向位置を調整することが可能となる。すなわち、内側磁石及び/又は外側磁石の軸方向位置を変えることで、キャスティング初期及び終期に、環状の導電体を介してスプールに作用する制動力を最適な状態に変更・設定することが可能となる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、釣場の様々な状況変化に応じて、ショートキャストからロングキャストに至るまで対応可能な磁気制動装置を備えた魚釣用リールが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る魚釣用リールの第1の実施形態を示す図であり、内部構成を示す平面図。
【図2】磁気制動装置部分の構成を示す拡大図。
【図3】図2に示す状態から磁石を移動させた状態を示す拡大図。
【図4】図2及び図3に示す構成において、カム作用を概略的に示す図。
【図5】図3のA−A線に沿った断面図。
【図6】本発明の第2の実施形態を示す図であり、磁気制動装置部分の構成を示す拡大図。
【図7】図6に示す状態から磁石を移動させた状態を示す拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら本発明に係る魚釣用リールの一実施形態について説明する。
【0014】
図1から図5は、本発明の第1の実施形態を示す図であり、図1は、内部構成を示す平面図、図2は、磁気制動装置部分の構成を示す拡大図、図3は、図2に示す状態から磁石を移動させた状態を示す拡大図、図4は、図2及び図3に示す構成において、カム作用を概略的に示す図、そして、図5は、図3のA−A線に沿った断面図(軸受は省略する)である。
【0015】
図1に示すように、本実施形態に係る魚釣用リールとしての両軸受型リール1は、左右側板1a,1bと、両側板1a,1bによって覆われた左右のフレーム2a,2bとを有するリール本体を備えている。左右のフレーム2a,2b間にはスプール軸5が軸受7を介して回転可能に支持されており、スプール軸5には釣糸が巻回されるスプール5aが一体的に固定されている。
【0016】
右フレーム2bから突出するスプール軸5の端部には、スプール軸5の軸方向に沿って移動可能なピニオンギヤ8が取り付けられている。このピニオンギヤ8は、図示しない公知の切換手段によって、スプール軸5と係合してスプール軸5と一体に回転する係合位置(動力伝達状態)と、スプール軸5との係合状態が解除される非係合位置(動力遮断状態)との間で移動される。また、ピニオンギヤ8には駆動歯車12が噛合しており、駆動歯車12に取り付けられたハンドル軸9の端部には、ハンドル9aが取り付けられている。したがって、ハンドル9aを回転操作すると、前記駆動歯車12とピニオンギヤ8とを介して、スプール軸5が回転駆動され、それに伴ってスプール5aが回転される。
【0017】
また、左右のフレーム2a,2b間には、スプール5aの釣糸繰出し方向側に、公知のレベルワインド装置10が配設されている。このレベルワインド装置10は、ハンドル9aを回転操作することで、釣糸が挿通する釣糸案内体11が左右に移動するよう構成されており、釣糸の巻き取り操作に伴ってスプール5aに釣糸を均等に巻回する。
【0018】
また、本実施形態では、左側板側に、釣糸放出動作の際にスプール5aの過回転を防止する磁気制動装置20が配設されている。
【0019】
磁気制動装置20は、スプール軸5の外周面に配設され、軸方向に沿って移動可能で回り止め嵌合された筒状の移動体22を有している。移動体22の外周面には、所定間隔をおいて径方向に伸張して形成された切り欠き状の支持部材22aが形成されており、各支持部材22aには、径方向に移動可能となるように、遠心カラー(径方向移動部材)23が支持されている。これらの遠心カラー23は、スプール軸5(および移動体22)がスプール5aと共に回転した際、支持部材22aに対し、遠心力によって径方向外側に移動するようになっている。
【0020】
前記遠心カラー23の一方側(左フレーム2a側)には、環状の導電体30が支持されている。この導電体30は、前記移動体22の移動に伴って、スプール軸5に対して軸方向に移動可能となっている。
【0021】
前記スプール5aの釣糸巻回面の裏面側には、左フレーム2a側に向けて次第に拡径する軸方向変換制御部としてのテーパ面5bが形成されている。このテーパ面5bは、前記遠心カラー23が径方向外側に移動する際に、遠心カラー23の外面に形成された傾斜面23aと面接触(係合)して、遠心カラー23の移動を案内するようになっている。すなわち、移動体22の支持部材22aに支持された遠心カラー23は、スプール軸5(スプール5a)の回転に伴う遠心力により、傾斜面23aとの係合作用によって径方向に移動すると共に、テーパ面5bに沿って案内され、これにより、環状の導電体30が支持された移動体22を、左フレーム2a側へと軸方向に移動させる(遠心カラー23の径方向の移動が移動体22の軸方向の移動へ変換される)ようになっている。
【0022】
また、スプール軸5の一端部に固定されたリテーナ26と移動体22との間には、移動体22をスプール5a側方向に向けて常時付勢する(導電体30を、後述する磁石の磁界から離れる方向に向けてスプール5a側へと常時付勢する)バネ部材27が介挿されている。
【0023】
さらに、前記磁気制動装置20は、リール本体を構成する左側板1a側に配設され、前記軸方向に移動可能な導電体30との間で磁力を作用させる磁石40を備えている。この磁石40は、スプール5aの回転に伴って軸方向に進退する前記導電体30に対し、磁力を付与して導電体30に対して制動力を付与する構成であれば良く、本実施形態では、環状に構成され前記導電体30の内面側に所定間隔をおいて対向配設される内側磁石41と、環状に構成され前記導電体30の外面側に所定間隔をおいて配設される外側磁石42とを備えている。すなわち、前記導電体30は、内側磁石41、及び外側磁石42の間の隙間に生じる磁界内に進退可能となっており、スプール5aに磁気制動力を作用させる。なお、前記各磁石41,42は、夫々磁気シールド用の図示しない継鉄を介してホルダ45,46に取着されている。
【0024】
前記環状に構成される磁石40は、軸方向移動保持機構50によって、軸方向に対して移動可能に保持されている。以下、この軸方向移動保持機構50の構成例について説明する。
【0025】
軸方向移動保持機構50は、左側板1aに装着される支持板51と、この支持板51に前記スプール軸5の左端部を囲繞するように突出形成された支持部51aの外周に対して軸方向に移動可能となるように回り止め嵌合される磁石保持体53とを備えている。この場合、磁石保持体53は、内側環状壁53aと、外側環状壁53bとを備えており、内側環状壁53aが前記支持部51aに対して軸方向に移動可能に回り止め嵌合されている。そして、内側環状壁53aの外周には、ホルダ45を介在させて内側磁石41が取着されており、外側環状壁53bの内周側には、ホルダ46を介在させて外側磁石42が回転可能に配設されている。
【0026】
前記内側環状壁53aには、スプール側に向けて開口する環状凹所(切欠部)54が形成されており、前記支持部51aの先端に取着されたリテーナ51cとの間に付勢バネ55を介在させ、磁石保持体53をスプールと反対方向に付勢している。また、前記内側環状壁53aには、反スプール側に向けて開口すると共に、環状で周方向に沿って高低差を具備した螺旋状のカム面56が形成されている。
【0027】
また、前記支持板51には、外部に露出するようにツマミ(第1ツマミ)60が、支持板に装着される左側板1aの開口縁部1a´に入り込むようにして回転可能に装着されている。この第1ツマミ60は、支持板51との間に介在される付勢部材62(係合ピンとバネで構成)によって回転方向に節度が付与されており、前記開口縁部1a´にフランジ60aが対向することで抜け止めされている。また、第1ツマミ60には、前記高低差を具備した螺旋状のカム面56に係合する係合突起60bが一体的に突出形成されており、カム面56と係合突起60bとは、前記付勢バネ55の付勢力により常時、係合関係が維持されている。
【0028】
上記した構成により、第1ツマミ60を回転操作することで、図4に模式的に示すように、カム面56と係合突起60bとの作用により、磁石保持体53を、付勢バネ55の付勢力に抗して、軸方向に沿ってスプール側に移動(矢印方向)させることができる。また、第1ツマミ60を逆方向に回転操作することで、カム面56と係合突起60bとの作用、及び付勢バネ55の付勢力により、磁石保持体53を、軸方向に沿って反スプール側に移動させることができる。この場合、磁石保持体53を軸方向に沿って移動させることで、それに装着された内側磁石41と外側磁石42の導電体30に対する重合面積、つまり初期設定位置を変えることができ、両者の間に位置する導電体30に作用する初期の磁気制動力、及び終期の磁気制動力を調整することが可能となる。なお、図3は、磁石保持体53を軸方向に沿ってスプール側に移動させた状態を示している。
【0029】
また、本実施形態では、上記した磁石保持体53に保持される磁石40の内、外側磁石42(ホルダ46)を、回転可能に構成している。具体的には、外側磁石42を取着するホルダ46の外周面に歯車70を装着(ホルダ46の外周に一体形成しても良い)しておくと共に、前記磁石保持体53の外側環状壁53bに、軸方向に延出する開口部53dを形成しておき、この開口部53dを介して支持板51に回転可能に支持された中間歯車71を噛合させている。
【0030】
一方、前記支持板51には、外部に露出するようにツマミ(第2ツマミ)75が回転可能に装着されている。この第2ツマミ75は、支持板51を貫通するように配置され、リテーナ76によって抜け止めされると共に、支持板51との間に介在される付勢部材77(係合ピンとバネで構成)によって回転方向に節度が付与されている。そして、第2ツマミ75の軸方向内側端部には、前記中間歯車71に噛合する入力歯車72が装着されている。
【0031】
上記した構成により、第2ツマミ75を回転操作することで、図5に模式的に示すように、上記した歯車の連結構造により、歯車70、すなわち外側磁石42を回転可能にしている。この場合、外側磁石42を回転操作することで、内側磁石41との間で極性関係(N−N,N−S)が変化するため、その間に位置する導電体30に作用する磁気制動力を調整することが可能となる。
【0032】
次に、上記した構成の両軸受型リール1の作用について説明する。
【0033】
例えば、キャスティングによってスプール5aが回転すると、移動体22もスプール5aと一体回転する。キャスティング開始直後の初期において、スプール5aの回転速度が所定の大きさに到達するまでの間は、遠心カラー23に作用する遠心力が弱いため、スプール5aのテーパ面5bに対する遠心カラー23の押圧力の軸方向分力は、バネ部材27の付勢力よりも小さい。したがって、移動体22は、図2に示すように、スプール軸5に対して軸方向に殆ど移動することなく、移動体22に取り付けられた導電体30は、内側磁石41、及び外側磁石42間に形成された環状空間に突入しない。
【0034】
その後、スプール5aの回転速度が上昇して遠心カラー23に作用する遠心力が所定の大きさを超えると、すなわち、スプール5aのテーパ面5bに対する遠心カラー23の押圧力の軸方向分力がバネ部材27の付勢力よりも大きくなると、移動体22は、遠心カラー23とテーパ面5bとの係合案内作用により、バネ部材27の付勢力に抗してスプール軸5に対して移動し始める。そして、この移動によって、導電体30が内側磁石41、及び外側磁石42間に形成された環状空間(磁界)内に侵入すると、導電体30には、その侵入量(移動量)と回転速度とに応じた力を磁界から受ける。したがって、導電体30と一体で回転するスプール5aにもこの力に伴う制動力が作用する。つまり、スプール5aにはその回転速度に応じた磁気制動力が増減可能に作用し、その結果、スプール5aの過回転が防止され、バックラッシュ現象が抑止される。
【0035】
また、キャスティングの終期において、スプール5aの回転速度が減少して遠心カラー23に作用する遠心力が弱くなると、すなわち、スプール5aのテーパ面5bに対する遠心カラー23の押圧力の軸方向分力がバネ部材27の付勢力よりも小さくなると、移動体22はバネ部材27の付勢力によって初期位置へ向かって戻され始める。これにより、導電体30は、内側磁石41、及び外側磁石42間に形成された環状空間(磁界)から徐々に抜け出し、磁界から受ける力が次第に小さくなる。そのため、キャスティング終期において、飛距離を不必要に低下させることなく、スプールに適度な制動力を付与してバック8ラッシュを効果的に防止できる。
【0036】
そして、上記したように構成される磁気制動装置20は、軸方向移動保持機構50によって、内側磁石41、及び外側磁石42の初期設定位置を変更することが可能であるため、制動特性を最適な状態に設定することが可能となる。
【0037】
例えば、第1ツマミ60を回転操作して、図3に示すように、初期位置で、導電体30の先端領域が、内側磁石41、及び外側磁石42間に形成された環状空間(磁界)内に侵入した状態に設定しておくと、図2で示す初期設定状態と比較して、キャスティング初期や終期に、スプール5aに作用する制動力を大きくすることが可能になる。また、これに伴い、スプール5aの回転の初期から中期、中期から終期における制動特性の変更・設定が可能になるため、釣場の様々な状況変化に応じて、ショートキャストからロングキャストまで幅広く対応することが可能になる。
【0038】
また、本実施形態では、第2ツマミ75を回転操作することで、外側磁石42が回転され、これにより、対向する内側磁石41との間で極性関係(N−N,N−S)を変化させることが可能となっている。このため、内側磁石41、及び外側磁石42間に形成された磁界の大きさを調整することができるため、上記した磁石40の軸方向の移動調整に加え、更に、幅の広い制動特性の変更・設定が可能になる。
【0039】
次に、本発明の別の実施形態について説明する。
図6は、本発明の第2の実施形態を示す図である。この実施形態における磁石保持体53Aは、外側磁石42を保持しており、内側磁石41は、支持板51の支持部51aの外周に対して固定された状態となっている。そして、前記磁石保持体53Aは、支持体51に対して軸方向に移動可能で回り止めされている。
【0040】
前記磁石保持体53Aには、径方向内側において、反スプール側に突出する突出部が一体形成されており、ここに雄ネジ部53Bが形成されている。一方、支持板51には、回転可能で抜け止め保持された第1ツマミ60Aが装着されている。この第1ツマミ60Aの内側突出部には、前記雄ネジ部53Bと螺合する雌ネジ部60Bが形成されている。
【0041】
上記した構成により、第1ツマミ60Aを回転操作することで、雄ネジ部53Bと雌ネジ部60Bの螺合関係により、磁石保持体53Aが軸方向に進退可能となる。すなわち、第1ツマミ60Aを回転操作することで、例えば、図7に示すように、磁石保持体53Aをスプール側に移動させ、外側磁石42のみを軸方向に移動させることが可能となっている。
【0042】
このように、磁気制動装置として、導電体30に対し、内側磁石41、及び外側磁石42を所定間隔おいて配設する構成では、いずれか一方の磁石のみを軸方向に移動させることも可能であり、これにより、要求制動性能や磁石の性能に適した制動力調整が可能になる。もちろん、本実施形態では、外側磁石42を固定し、内側磁石41のみを軸方向に移動可能にしても良い。
【0043】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記した実施形態に限定されることはなく、種々変形することが可能である。例えば、磁石を軸方向に移動可能に保持する軸方向移動保持機構は、内側磁石41、及び外側磁石42を、夫々単独で軸方向に移動するようにしても良い。このように、内側磁石41、及び外側磁石42が、独立して軸方向に移動できることで、更に幅広い制動特性の設定が可能になる。
【0044】
また、上記した実施形態では、外側磁石42が、軸方向に移動可能で、かつ回転可能に構成されていたが、いずれか一方の磁石が独立して回転するようにしても良い。また、上記した実施形態では、導電体30に対し、その内側及び外側に、環状の磁石を対向配置した構成となっているが、いずれか一方のみに軸方向に移動する磁石を配設し、他方に磁性体を対向配置しても良い。さらに、上記した実施形態では、磁石の軸方向の移動、及び回転については、無段階に調整できるよう構成されていたが、段階的に調整できるよう構成されていても良い。
【符号の説明】
【0045】
1 魚釣用リール(両軸受型リール)
5 スプール軸
5a スプール
5b テーパ面
20 磁気静動装置
22 移動体
23 遠心カラー(径方向移動部材)
30 導電体
40 磁石
41 内側磁石
42 外側磁石
50 軸方向移動保持機構
51 支持板
60 第1ツマミ
75 第2ツマミ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リール本体に回転自在に支持したスプールの一側に、スプール軸に対して軸方向に移動可能に支持された環状の導電体と、
前記環状の導電体の内面側及び外面側に所定間隔をおいて配設される内側磁石及び外側磁石と、
前記スプールの回転に伴って径方向に移動し、スプールとの係合作用を利用して前記環状の導電体を前記内側磁石及び外側磁石の磁界内に進退可能にしてスプールに作用する磁気制動力を増減可能にする径方向移動部材と、
前記リール本体を構成する側板に装着される支持板と、前記支持板に設けられ、前記内側磁石と外側磁石のいずれか一方又は両方を軸方向に移動可能に保持して環状の導電体に対する重合面積を変えると共に、いずれか一方の磁石を回転可能に保持する磁石保持体と、を備えた軸方向移動保持機構と、
を備えた磁気制動装置を有し、
前記内側磁石と外側磁石の環状の導電体に対する重合面積を変えることで、環状の導電体に作用する初期の磁気制動力、及び終期の磁気制動力が調整可能であると共に、前記内側磁石と外側磁石のいずれか一方を回転することで、環状の導電体に対する磁気制動力が調整可能である、ことを特徴とする魚釣用リール。
【請求項2】
前記支持板には、前記磁石保持体に保持された内側磁石と外側磁石のいずれか一方又は両方を軸方向に移動する第1ツマミと、前記内側磁石と外側磁石のいずれか一方を回転する第2ツマミが装着されていることを特徴とする請求項1に記載の魚釣用リール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−157359(P2012−157359A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−91635(P2012−91635)
【出願日】平成24年4月13日(2012.4.13)
【分割の表示】特願2007−195071(P2007−195071)の分割
【原出願日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【出願人】(000002495)グローブライド株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】