説明

魚釣用リール

【課題】釣糸の再繰出し時に正確な棚取りを行うことができる魚釣用リールを提供する。
【解決手段】スプール10からの釣糸Lの繰出し量、および当該スプール10への釣糸Lの巻取り量を計測する糸長計測手段22と、スプール10を巻取り駆動する電動モータMと、糸長計測手段22による計測に基づいて糸長値Tを表示する表示部6と、を備えた魚釣用リール1であって、電動モータMによる釣糸Lの巻取り時に、釣糸Lの巻取り停止位置を検出する検出手段40と、検出手段40による検出に基づいて、電動モータMの作動を停止するとともに、表示部6に表示される糸長値Tをゼロリセットする制御部と、を備えた構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、魚釣用リールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、魚釣用リールに備わるスプールからの釣糸の繰出し量やスプールへの釣糸の巻取り量を糸長計測手段で計測し、その計測に基づく糸長値を表示部に表示できるようにした魚釣用リールが知られている(例えば、特許文献1参照)。
このような魚釣用リールを用いた釣りでは、表示部に表示される糸長値をもとにして、所望の棚に仕掛けを降ろすことが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平7−17065号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、釣糸は様々な条件下で使用されるため、釣場の気温や水温の変化で伸縮して糸径が変わったり、長期に亘る使用で釣糸が伸びて糸径が細くなったり、糸張力に応じてスプールの糸巻径も微妙に変化することがある。このため、糸長計測手段の計測に基づく糸長値と、実際の糸長値と、の間に差が生じてしまうことがあり、釣糸の再繰出し時に正確な棚取りを行うことができなくなるおそれがあった。
【0005】
本発明は、前記問題を解決するためになされたものであり、釣糸の再繰出し時に正確な棚取りを行うことができる魚釣用リールを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような課題を解決する本発明の魚釣用リールは、リール本体に設けられたスプールからの釣糸の繰出し量、および当該スプールへの釣糸の巻取り量を計測する糸長計測手段と、前記スプールを巻取り駆動する電動モータと、前記糸長計測手段による計測に基づいて糸長値を表示する表示部と、を備えた魚釣用リールであって、前記電動モータによる釣糸の巻取り時に、釣糸の巻取り停止位置を検出する検出手段と、前記検出手段による検出に基づいて、前記電動モータの作動を停止するとともに、前記表示部に表示される糸長値をゼロリセットする制御部と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
この魚釣用リールによれば、釣糸の巻取り時に、釣糸の巻取り停止位置が検出手段により検出され、この検出手段による検出に基づいて、制御部により電動モータの作動が停止されるとともに、表示部に表示される糸長値がゼロリセットされる。これにより、釣糸の巻取り時に余分な負荷が釣糸に作用するのを抑制することができるとともに、釣糸の巻取り停止位置において糸長値の基準点をリセットすることができる。
【0008】
また、本発明は、前記検出手段が、釣糸の巻取り時に、釣糸に装着された装着部材により押圧されて変位する接触部と、前記接触部の変位により接触するスイッチ接点と、を備えてなることを特徴とする。
【0009】
この魚釣用リールによれば、釣糸の巻取り時に、釣糸の巻取り停止位置に装着された装着部材に押圧されて接触部が変位し、この接触部の変位によりスイッチ接点が接触した状態となる。これにより、検出手段によって釣糸の巻取り停止位置が検出される。
【0010】
また、本発明は、前記接触部には、緩衝部材が設けられていることを特徴とする。
【0011】
この魚釣用リールによれば、接触部に設けられた緩衝部材によって装着部材の押圧時の衝撃を緩和することができる。
【0012】
また、本発明は、前記検出手段は、釣糸に装着された着磁部材が通過する際の磁気量を電気量に変換する磁気センサであることを特徴とする。
【0013】
この魚釣用リールによれば、磁気センサによって非接触状態で釣糸の巻取り停止位置を検出することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、検出手段により釣糸の巻取り停止位置が検出されると、制御部により電動モータの作動が停止されて、釣糸の巻取り時に余分な負荷が釣糸に作用するのを抑制することができるので、釣糸に傷みが生じたり、負荷によって釣糸が伸長したりするのを好適に防止することができる。これにより、糸切れ等が生じるのを軽減することができる。
また、検出手段により釣糸の巻取り停止位置が検出されると、表示部に表示される糸長値がゼロリセットされ、釣糸の巻取り停止位置において糸長値の基準点をリセットすることができるので、仮に、釣場の気温や水温の変化で釣糸が伸縮して糸径が変わったり、長期に亘る使用で釣糸が伸びて糸径が細くなったり、糸張力に応じてスプールの糸巻径が微妙に変化する事態が生じたとしても、釣糸の巻取り停止位置において毎回これをリセットすることができる。したがって、釣行時の釣糸の状態に応じた糸長値を的確に計測でき、これによって、釣糸の再繰出し時に正確な棚取りを行うことができる。
【0015】
また、検出手段が、釣糸の巻取り時に、釣糸に装着された装着部材により押圧されて変位する接触部と、前記接触部の変位により接触するスイッチ接点と、を備えてなる構成では、少ない部品点数による簡単な構成によって釣糸の巻取り停止位置を検出することができるので、コストを低減することができ、生産性が高まる。
【0016】
また、接触部に、緩衝部材が設けられている構成では、接触部に設けられた緩衝部材によって装着部材の押圧時の衝撃を緩和することができるので、釣糸の巻取り時に余分な負荷が釣糸に作用するのを一層抑制することができる。これにより、釣糸に傷みが生じたり、負荷によって釣糸が伸長したりするのをより好適に防止することができ、糸切れ等が生じるのを一層軽減することができる。したがって、釣糸の再繰出し時に正確な棚取りを行うことができる。
【0017】
また、検出手段が、釣糸に装着された着磁部材が通過する際の磁気量を電気量に変換する磁気センサとされた構成では、磁気センサによって非接触状態で釣糸の巻取り停止位置を検出することができるので、釣糸に装着された装着部材等による押圧によって検出手段が釣糸の巻取り停止位置を検出する構成に比べて、釣糸の巻取り時に余分な負荷が釣糸に作用するのを一層抑制することができる。これにより、釣糸に傷みが生じたり、負荷によって釣糸が伸長したりするのをより好適に防止することができ、糸切れ等が生じるのをより一層軽減することができる。したがって、釣糸の再繰出し時に正確な棚取りを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】(a)は本発明の第1実施形態に係る魚釣用リールを示す斜視図、(b)は同じく主要部を模式的に示した平面図である。
【図2】(a)は検出手段を示す拡大斜視図、(b)は検出手段の接触部としての釣糸ガイドが装着部材により押圧された状態を示す拡大斜視図である。
【図3】(a)はブロック図、(b)は糸長計測の手順を示すフローチャートである。
【図4】(a)釣糸の繰出し時の様子を示す説明図、(b)釣糸の巻取り時の様子を示す説明図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係る魚釣用リールの要部を示す斜視図である。
【図6】本発明の第3実施形態に係る魚釣用リールの要部を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る魚釣用リールの実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明では、魚釣用リールとしてワカサギ釣り用のリールに本発明を適用したものを例示するが、投げ、磯、船、ルアー釣りなど様々な釣りに用いられる魚釣用リールに本発明は適用可能であり、本発明の魚釣用リールが適用されるリールの形態を限定する趣旨ではない。また、以下の説明において、「前後、左右、上下」を言うときは、図1(a)に示した方向を基準とする。
【0020】
(第1実施形態)
本実施形態の魚釣用リール1は、図1(a)に示すように、前部側上面の中央部にスプール受け部4が設けられ、ここにスプール10が回転自在に軸支されている。また、魚釣用リール1の前端部に設けられた竿受け穴1aに、釣竿Rの元竿R1が挿入されて扁平な釣竿Rが取り付けられるようなっている。
魚釣用リール1の上面略中央部には、スプール10からの釣糸Lの繰出し量を数字で表示する表示部6が設けられている。
【0021】
また、魚釣用リール1の内部には、図1(b)に示すように、電動モータMが設けられており、この電動モータMを魚釣用リール1内に収容された図示しないバッテリーによって駆動することで、スプール10が回転駆動され、スプール10から繰出された釣糸Lの巻取りを行うことができるようになっている。なお、スプール10の回転駆動は、魚釣用リール1の上面に突設された後記するクラッチレバー3を左右方向に傾倒操作することによって行われる。
【0022】
また、魚釣用リール1は、釣糸Lの巻取り停止位置を検出する検出手段40と、電動モータMの駆動制御および表示部6に表示される糸長値の表示を制御する制御手段20と、を備えている。
なお、釣糸Lには、釣糸Lの巻取り停止位置を検出可能とするためのビーズB(装着部材)が装着(釣糸Lの所定位置に固定)されている。
【0023】
魚釣用リール1は、図1(a)に示すように、その外郭を構成する筺体2を有して構成されている。筺体2は、可撓性および弾性を有する材料、例えばABS樹脂、ポリカーボーネート等の合成樹脂材料で形成された略偏平な箱形であり、釣人が片方の手で掴む(把持する)ことのできる程度の大きさを有している。
【0024】
筺体2は、ロアケース2aとトップカバー2bとで構成されており、ロアケース2aには、電動モータMの他、電動モータMの回転力をスプール10に伝達あるいは遮断するための図示しないクラッチ機構等が設けられている。なお、ロアケース2aの下面には、図示しない蓋体を介してバッテリーを収容するための収容部が凹設されている。
【0025】
トップカバー2bは、上方に凸となるように前後方向に滑らかな円弧を描いて湾曲膨出する形状を呈しており、ロアケース2aに上方から被せられ、図示しないねじや嵌め込み等の固定手段によってロアケース2aに固定される。このようなトップカバー2bは、ロアケース2aとの間に電動モータや前記したクラッチ機構等の収容空間を形成している。
【0026】
トップカバー2bの前部側上面の中央部には、前記したようにスプール10が配置される有底円筒状のスプール受け部4が形成されている。
スプール受け部4の略中心部には、図1(b)に示すように、スプール10を回転自在に軸支するためのスプール軸5が図示しないナットに締め付けられて立設されている。スプール10は、このスプール軸5に挿通されて回転自在に支持され、スプール軸5に螺合されるスプール止めナット7で、スプール軸5から脱落不能に保持されている。
【0027】
スプール受け部4の底部には、図示しない開口部が形成されており、この開口部に、電動モータMの出力軸の先端部に取り付けられた合成ゴム等の伝導部材M1(図1(b)参照)が出没可能に配置されている。
本実施形態では、クラッチレバー3の傾倒操作によって、図示しないクラッチ機構が作動されることで、前記開口部を通じて伝導部材M1が出没するように構成されている。なお、伝導部材M1は、開口部を通じてスプール受け部4内に突出した状態でスプール10の下面に当接し、摩擦力をもってスプール10を回転駆動するようになっている。
【0028】
また、スプール受け部4の底部には、リードスイッチまたはホール素子等の磁気センサからなるスプール回転検出手段30が設けられている。スプール回転検出手段30は、スプール10の下面周縁部に埋設された図示しないマグネットに対向して配置されており、スプール10の回転およびその回転方向を検出し、これを電気信号に変換してスプール10の回転速度に比例したパルス信号を発生するパルスエンコーダを構成している。スプール回転検出手段30で発生されたパルス信号は、後記する制御手段20に送出される。
【0029】
トップカバー2bの前端部におけるスプール受け部4の前方には、防水性のマイクロスイッチ等からなる検出手段40が設けられている。検出手段40は、図2(a)に示すように、前後方向に揺動可能に支持された釣糸ガイド(接触部)41と、釣糸ガイド41の揺動による変位によって接触するスイッチ接点42とを有している。
釣糸ガイド41は、図示しないばね等の付勢部材によって前方へ向けて付勢されている。そして、釣糸ガイド41は、図2(b)に示すように、釣糸Lの巻取り時において、釣糸Lに予め装着しておいたビーズBに押圧されると、付勢力に抗して後方へ揺動するようになっており、その揺動による変位によってスイッチ接点42を接触させて、巻取り停止位置を検出するようになっている。
検出手段40は、図3(a)に示すように、制御手段20の電動モータ制御手段21および表示制御手段23に接続されている。
【0030】
トップカバー2bの上面の略中央部には、左右方向に向けてスリット2dが形成されており、このスリット2dを通じてクラッチレバー3がトップカバー2b上に突設配置されている。なお、クラッチレバー3は、スリット2dに沿って魚釣用リール1の左右方向(短手方向)に傾倒操作可能であり、例えば、左右方向の中央位置にあるときにスプール10を回転不能に保持するロック位置とされ、また、左側に傾倒された位置にあるときにスプール10を回転駆動して繰出された釣糸Lを巻取る巻取り位置とされ、さらには、右側に傾倒された位置にあるときにスプール10のロックを解除して釣糸Lの繰出しが可能となるスプールフリー位置とされる。
【0031】
スプール10は、主たる部材が、例えばABS樹脂、ポリカーボーネート等の合成樹脂材料で形成されており、図1(a)に示すように、上フランジ部12と、下フランジ部13と、上フランジ部12と下フランジ部13との間に形成された胴部14とを有している。上フランジ部12の外側上面には、繰り出された釣糸Lの中途部分L1を係脱可能に係止できる釣糸係止部11が突設されている。
また、下フランジ部13の下面周縁部には、スプール受け部4の底部のスプール回転検出手段30に対向する図示しないマグネットが取り付けられている。
【0032】
制御手段20は、図3(a)に示すように、電動モータ制御手段21、糸長計測手段22、および表示制御手段23を有している。ここで、電動モータ制御手段21および表示制御手段23が特許請求の範囲における「制御部」に相当する。
電動モータ制御手段21には、クラッチレバー3および検出手段40のスイッチ接点42が接続されている。電動モータ制御手段21は、クラッチレバー3の傾倒操作(巻取り操作)による入力を受けて電動モータMを駆動制御し、クラッチレバー3の傾倒操作の解除を受けて電動モータMを停止制御するようになっている。また、電動モータ制御手段21は、釣糸Lの巻取り時において、検出手段40が巻取り停止位置を検出した際に、クラッチレバー3の入力状態(傾倒操作状態)に関係なく、電動モータMを停止制御するようになっている。
【0033】
また、電動モータ制御手段21は、高速駆動モードと、低速駆動モードとの2つの駆動モードを有しており、通常時は、高速駆動モードにて電動モータMを駆動するようになっている。そして、電動モータ制御手段21は、糸長計測手段22で計測された糸長のデータ(カウント値CT)が所定の糸長(D)以下である場合に、高速駆動モードから低速駆動モードに切り替えて電動モータMを駆動するようになっている。例えば、釣糸Lの巻取り時に、釣糸Lに取り付けられた仕掛けHがトップガイドTP(図4(b)参照)に対して1mほどに近付いたときを所定の糸長(D)として設定することにより、巻取りのスピードを減速させることができる。
【0034】
糸長計測手段22には、スプール回転検出手段30が接続されており、糸長計測手段22は、スプール回転検出手段30からのパルス信号を入力し、この入力されたパルス信号を基に、釣糸Lの繰出しであるのか釣糸Lの巻取りであるのかを判定し、スプール10からの釣糸Lの繰出し量(糸長)、またはスプール10への釣糸Lの巻取り量(糸長)を計測する。具体的に、糸長計測手段22は、アップ/ダウンカウンタを内蔵しており、入力されたパルス信号からアップ/ダウンカウンタをアップカウント状態またはダウンカウント状態にセットし、アップカウント動作またはダウンカウント動作するようになっている。糸長計測手段22のアップ/ダウンカウンタで計測されたカウント値CTは、電動モータ制御手段21および表示制御手段23に送出される。
【0035】
表示制御手段23は、糸長計測手段22のアップ/ダウンカウンタで計測されたカウント値CTを入力し、カウント値CTに相関する糸長値Tを算出する。本実施形態では、図示しない記憶手段に予め記憶されたテーブルを参照して糸長値Tを算出する。表示制御手段23は、算出した糸長値Tを表示部6に送出する。
また、表示制御手段23は、釣糸Lの巻取り時において、検出手段40におけるスイッチ接点42の接触があった場合(検出手段40が巻取り停止位置を検出した場合)に、糸長計測手段22から入力されたカウント値CTをゼロリセットするようになっている。
【0036】
次に、本実施形態の魚釣用リール1の動作を図3(a)(b)、図4(a)(b)を参照して説明する。なお、図3(b)に示したフローチャートは、魚釣用リール1の好ましい動作の一態様を示したものであり、本発明はこれに限定されるものではない。
【0037】
魚釣用リール1を用いて、例えば、ワカサギを釣るに当たっては、まず、釣糸Lの巻取り停止位置を確定するために、装着部材としてのビーズBを釣糸Lに装着する。ビーズBの装着位置の目安としては、図4(b)に示すように、仕掛けHが釣竿RのトップガイドTPに近付いた状態において、仕掛けHとトップガイドTPとの間にこれらが接触することのない糸長L2を残して釣糸ガイド41をビーズBが押圧する状態となるように、ビーズBを釣糸Lに装着して固定する。
【0038】
その後、魚釣用リール1の図示しない電源スイッチを入れて、これを釣場に設置された台Gの上に置き、筺体2のトップカバー2bに図示しない手を添えるようにあてがう。なお、電源投入時は、表示部6に表示される糸長値Tは、ゼロにセットされる。
【0039】
魚釣用リール1の電源が投入されると、スプール回転検出手段30によりスプール10の回転およびその回転方向の検出が開始され、また、検出手段40により、ビーズBによる釣糸ガイド41の押圧の検出が開始される(ステップS1)。
【0040】
次に、釣糸Lに仕掛けを接続し、例えば、人さし指でクラッチレバー3を釣糸繰出し位置に傾倒操作して、スプール10をスプールフリー状態にする。これにより、スプールに巻き付けられた釣糸Lが繰出され、仕掛けHが水中に沈降される。
この際、必要に応じて人さし指または中指等をスプール10の上フランジ部12(図1(a)参照)の縁に押し当てることで、スプール10の回転速度、ひいては仕掛けHの沈降速度を調節することができる。
【0041】
スプール10が回転すると、スプール回転検出手段30により検出されたパルス信号に基づいて糸長計測手段22が釣糸Lの巻取りであるか否かを判定し(ステップS2)、釣糸Lの巻取りではない(ステップS2、No)と判定した場合に、釣糸Lの繰出しであるか否かを判定する(ステップS3)。そして、釣糸Lの繰出しである(ステップS3、Yes)と判定した場合に、カウント値CTをカウントアップ(+1)し、ステップS2に戻る。
つまり、釣糸Lの繰出し時には、ステップS2〜S4により、釣糸Lの繰出しが停止されるまで、カウント値CTがカウントアップ(+1)されることとなる。
糸長計測手段22で計測されたカウント値CTは、表示制御手段23に送出され、表示制御手段23によりカウント値CTに相関する糸長値Tが算出されて、糸長値Tが表示部6に表示される。
【0042】
操作者は、表示部6に表示された糸長値Tを目視しながら、必要に応じてスプール10の回転速度、ひいては仕掛けHの沈降速度を調節し、所望の棚に来たところでスプール10を人さし指等で押さえてスプール10の回転を停止させる。これとともに、クラッチレバー3を中央位置に起こす操作を行って、スプール10の回転をロックする。
【0043】
なお、釣糸Lの繰出しが行われていない場合(ステップS2,S3でともにNoである場合)には、カウント値CTのカウントアップ(+1)またはカウントダウン(−1)が行われることなく、ステップS2に戻り、前記したステップが繰り返される。
【0044】
次に、人さし指でクラッチレバー3を釣糸巻取り位置に傾倒操作すると、電動モータ制御手段21により電動モータMが駆動され、スプール10が釣糸Lの巻取り方向に回転されて、釣糸Lの巻取りが開始される。
【0045】
釣糸Lの巻取りが開始されると、スプール回転検出手段30により検出されたパルス信号に基づいて糸長計測手段22が釣糸Lの巻取りであると判定し(ステップS2、Yes)、ステップS5でカウント値CTが所定の糸長(D)以下であるか否かが判定される。カウント値CTが所定の糸長(D)以下ではない(ステップS5、No)と判定された場合には、ステップS6で高速駆動モードで電動モータMが駆動され、ステップS8でカウント値CTのカウントダウン(−1)が行われる。つまり、釣糸Lの巻取り時に、仕掛けHがトップガイドTPから離れた位置にあるときには、仕掛けHがトップガイドTPに近付くのに時間がかかるので高速駆動モードで電動モータMが駆動されることとなる。
【0046】
一方、ステップS5でカウント値CTが所定の糸長(D)以下である(ステップS5、Yes)と判定された場合には、ステップS7で高速駆動モードから低速駆動モードに電動モータMの駆動が切り替えられ、ステップS8でカウント値CTのカウントダウン(−1)が行われる。つまり、釣糸Lの巻取り時に、仕掛けHがトップガイドTPに近付いた時点で、高速駆動モードから低速駆動モードに切り替えられて電動モータMが駆動され、巻取りスピードが減速されることとなる。
【0047】
その後、ステップS9において、検出手段40が釣糸Lの巻取り停止位置を検出(押圧検出)したか否かが判定される。ステップS9において、釣糸Lの巻取り停止位置を検出した(ステップS9、Yes)と判定された場合には、ステップS10において、電動モータ制御手段21により電動モータMの駆動が停止され、巻取りが停止される。これにより、釣糸Lの巻取り時に余分な負荷が釣糸Lに作用するのを抑制することができる。そして、ステップS11において、表示制御手段23によりカウント値CTがゼロリセットされる。これにより、表示部6に表示される糸長値Tがゼロ(0)にリセットされる。したがって、釣糸Lの巻取り停止位置において糸長値Tの基準点をリセットすることができる。
なお、ステップS9において、釣糸Lの巻取り停止位置を検出しない(ステップS9、No)と判定された場合には、ステップS2に戻り、前記したステップが繰り返される。
【0048】
以上説明した本実施形態の魚釣用リール1によれば、検出手段40により釣糸Lの巻取り停止位置が検出されると、制御手段20の電動モータ制御手段21により電動モータMの作動が停止されて、釣糸Lの巻取り時に余分な負荷が釣糸Lに作用するのを抑制することができるので、釣糸Lに傷みが生じたり、負荷によって釣糸Lが伸長したりするのを好適に防止することができる。これにより、糸切れ等が生じるのを抑制することができる。
また、検出手段40により釣糸Lの巻取り停止位置が検出されると、表示部6に表示される糸長値Tがゼロリセットされ、釣糸Lの巻取り停止位置において糸長値Tの基準点をリセットすることができるので、仮に、釣場の気温や水温の変化で釣糸Lが伸縮して糸径が変わったり、長期に亘る使用で釣糸Lが伸びて糸径が細くなったり、糸張力に応じてスプール10の糸巻径が微妙に変化する事態が生じたとしても、釣糸Lの巻取り停止位置において毎回これをリセットすることができる。したがって、釣行時の釣糸Lの状態に応じた糸長値Tを的確に計測でき、これによって、釣糸Lの再繰出し時に正確な棚取りを行うことができる。
【0049】
また、検出手段40が、釣糸Lの巻取り時に、釣糸Lに装着されたビーズBにより押圧されて変位する釣糸ガイド41と、釣糸ガイド41の変位により接触するスイッチ接点42と、を備えてなるので、少ない部品点数による簡単な構成によって釣糸Lの巻取り停止位置を検出することができる。したがって、コストを低減することができ、生産性が高まる。
【0050】
(第2実施形態)
図5を参照して第2実施形態の魚釣用リールについて説明する。本実施形態が前記第1実施形態と異なるところは、検出手段40の接触部としての釣糸ガイド41に、緩衝部材44が設けられている点である。
緩衝部材44は、前方へ向けてテーパー状に縮径された渦巻状を呈しており、釣糸ガイド41の前部に取り付けられ、その内側に釣糸ガイド41を通じて釣糸Lを挿通可能に設けられている。
【0051】
このような緩衝部材44が設けられた魚釣用リール1によれば、前記第1実施形態で得られる作用効果に加えて、緩衝部材44によってビーズBの押圧時の衝撃を緩和することができるので、釣糸Lの巻取り時に余分な負荷が釣糸Lに作用するのを一層抑制することができる。これにより、釣糸Lに傷みが生じたり、負荷によって釣糸Lが伸長したりするのをより好適に防止することができ、糸切れ等が生じるのを一層軽減することができる。したがって、釣糸Lの再繰出し時に正確な棚取りを行うことができる。
【0052】
(第3実施形態)
図6を参照して第3実施形態の魚釣用リールについて説明する。本実施形態が前記第1,第2実施形態と異なるところは、検出手段として、磁気センサ45を用いている点である。
磁気センサ45は、ホール素子であり、前記したビーズBに代えて釣糸Lに装着された着磁部材B1が通過するときの磁気量を電気量に変換して出力可能となっている。
なお、磁気センサ45の後方にはガイド46が設けられている。
【0053】
このような磁気センサ45が設けられた魚釣用リール1によれば、前記第1実施形態で得られる作用効果に加えて、磁気センサ45によって非接触状態で釣糸Lの巻取り停止位置を検出することができるので、第1実施形態のビーズBの押圧により釣糸Lの巻取り停止位置を検出する構成に比べて、釣糸Lの巻取り時に余分な負荷が釣糸Lに作用するのを一層抑制することができる。これにより、釣糸Lに傷みが生じたり、負荷によって釣糸Lが伸長したりするのをより好適に防止することができ、糸切れ等が生じるのをより一層軽減することができる。したがって、釣糸Lの再繰出し時に正確な棚取りを行うことができる。
【0054】
なお、着磁部材B1は、釣糸Lに所定の間隔を空けて複数設けてもよく、磁気センサ45がこれらの着磁部材B1を段階的に検出することで、電動モータMを高速駆動モードから低速駆動モードに切り替えるようにしてもよい。
【0055】
また、検出手段40や磁気センサ45は、トップカバー2bの前端部におけるスプール受け部4の前方に配置したが、これに限られることはなく、釣竿Rの元竿R1や釣竿Rのその他の部分に配置してもよい。
【0056】
また、前記各実施形態において、LED等の発光手段や発音手段を筺体2に設け、検出手段40により釣糸Lの巻取り停止位置が検出された際に、そのことを発光手段や発音手段によって報知するように構成してもよい。
【符号の説明】
【0057】
1 魚釣用リール
6 表示部
10 スプール
20 制御手段
21 電動モータ制御手段
22 糸長計測手段
23 表示制御手段
30 スプール回転検出手段
40 検出手段
41 釣糸ガイド(接触部)
42 スイッチ接点
44 緩衝部材
45 磁気センサ
M 電動モータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スプールからの釣糸の繰出し量、および当該スプールへの釣糸の巻取り量を計測する糸長計測手段と、
前記スプールを巻取り駆動する電動モータと、
前記糸長計測手段による計測に基づいて糸長値を表示する表示部と、を備えた魚釣用リールであって、
前記電動モータによる釣糸の巻取り時に、釣糸の巻取り停止位置を検出する検出手段と、
前記検出手段による検出に基づいて、前記電動モータの作動を停止するとともに、前記表示部に表示される糸長値をゼロリセットする制御部と、を備えたことを特徴とする魚釣用リール。
【請求項2】
前記検出手段は、釣糸の巻取り時に、釣糸に装着された装着部材により押圧されて変位する接触部と、前記接触部の変位により接触するスイッチ接点と、を備えてなることを特徴とする請求項1に記載の魚釣用リール。
【請求項3】
前記接触部には、緩衝部材が設けられていることを特徴とする請求項2に記載の魚釣用リール。
【請求項4】
前記検出手段は、釣糸に装着された着磁部材が通過する際の磁気量を電気量に変換する磁気センサであることを特徴とする請求項1に記載の魚釣用リール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−13334(P2013−13334A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−146262(P2011−146262)
【出願日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(000002495)グローブライド株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】