魚釣用電動リール
【課題】手持ち状態での操作性と、置き竿状態での操作性の両方を向上させた魚釣用電動リールを提供する。
【解決手段】本発明に係る魚釣用電動リールは、スプール7を回転駆動する駆動モータ8と、左右側板5A,5B間のスプールの上方に配置され、駆動モータ8を制御する制御部を具備する制御ケース15と、釣竿とともにリール本体を把持保持した状態の手の親指が届く位置に配設され、駆動モータ8の出力を調整する第1操作部材25と、左右側板のいずれかに配設され、駆動モータ8の出力を調整する第2操作部材30とを有する。
【解決手段】本発明に係る魚釣用電動リールは、スプール7を回転駆動する駆動モータ8と、左右側板5A,5B間のスプールの上方に配置され、駆動モータ8を制御する制御部を具備する制御ケース15と、釣竿とともにリール本体を把持保持した状態の手の親指が届く位置に配設され、駆動モータ8の出力を調整する第1操作部材25と、左右側板のいずれかに配設され、駆動モータ8の出力を調整する第2操作部材30とを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、魚釣用電動リールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、魚釣用電動リールは、主に深場の釣りに適用させるべく、仕掛けの放出から巻き取りに至るまで、釣竿を船縁に装着された竿掛けに置いたままの状態で行えるように構成されたものが多いが、最近では、手持ち状態で操作が行えるように、よりコンパクト化された構成も製品化されている。
【0003】
一方、魚釣用電動リールは、スプールを巻き取り操作するための操作部材を、様々な位置に配置することが知られている。例えば、特許文献1に開示されているように、リール本体の側板に、モータ出力を連続的に可変できるようなレバータイプに構成したもの、或いは、スライドタイプに構成したもの等を配置することが知られている。また、特許文献2には、制御ケースの上面から円板状の回転摘み(操作部材)の一部を露出させ、上方から親指を押し付けながら回転操作することで、モータ出力を連続的に可変させる構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−169700号
【特許文献2】特開2003−92959号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記したように、最近の魚釣用電動リールでは、ルアーフィッシングに用いられる魚釣用(ベイトキャスティング)リールと同様、手持ち状態で操作することが可能なタイプも望まれているが、駆動モータを回転駆動する操作部材に関して改良すべき余地がある。具体的には、前記特許文献1に開示されているタイプの操作部材では、釣竿とともにリール本体を把持した片手で、釣糸巻き取り操作を行うことはできない。また、特許文献2に開示されているタイプの操作部材では、片手で釣糸巻き取り操作は行えるものの、操作部が制御ケース内に組み込まれているため、揺れる船の上で置き竿状態にしたときの操作が難しく、誤作動させてしまう可能性がある。
【0006】
本発明は、上記した問題に着目してなされたものであり、手持ち状態での操作性と、置き竿状態での操作性の両方を向上させた魚釣用電動リールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した目的を達成するために、本発明に係る魚釣用電動リールは、リール本体の左右側板間に設けられ、釣糸が巻回されるスプールと、前記スプールを回転駆動する駆動モータと、前記リール本体に配置され、前記駆動モータを制御する制御部を具備する制御ケースと、釣竿とともに前記リール本体を把持保持した状態の手の親指が届く位置に配設され、前記駆動モータの出力を調整する第1操作部材と、前記左右側板のいずれかに配設され、前記駆動モータの出力を調整する第2操作部材と、を有することを特徴とする。
【0008】
上記した構成の魚釣用電動リールでは、釣竿とともにリール本体を把持保持した状態の手の親指が届く位置に、駆動モータの出力を調整する第1操作部材が配設されているため、サミング操作や、駆動モータの巻き取り操作を違和感なく行うことが可能となる。すなわち、片手でリール本体を把持しながら釣糸巻き取り操作が行える。また、リール本体を置き竿状態にしたときには、操作し易い位置(左右側板のいずれか)に配設された第2操作部材を操作することで、誤操作することなく釣糸の巻き取りが行える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、手持ち状態での操作性と、置き竿状態での操作性の両方を向上させた魚釣用電動リールが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係る魚釣用電動リールの第1の実施形態を示す平面図。
【図2】図1に示す魚釣用電動リールをハンドル側から見た側面図。
【図3】図1に示す魚釣用電動リールを反ハンドル側から見た側面図。
【図4】図1に示す魚釣用電動リールを後方側から見た図。
【図5】図1のA−A線に沿った断面図。
【図6】釣竿とともにリール本体を把持して操作部材を操作する状態を示す平面図。
【図7】図6に示す魚釣用電動リールを後方側から見た図。
【図8】(a)は第1操作部材の断面図、(b)は第2操作部材の側面図。
【図9】(a)は第2操作部材の操作角度を示す図、(b)は第1操作部材の操作角度を示す図。
【図10】制御ケース内に収容される制御部の構成を示すブロック図。
【図11】制御部において実行される第1操作部材及び第2操作部材による操作処理手順を示すフローチャート。
【図12】制御部において実行される第1操作部材及び第2操作部材による操作処理手順の変形例を示すフローチャート。
【図13】制御部において駆動モータを制御する手法を示し、デューティ比と、各操作部材の操作角度との関係を示すグラフ。
【図14】制御部において駆動モータを制御する手法を示し、デューティ比と、第1操作部材の操作角度との関係を示すグラフ。
【図15】第1操作部材の第1の変形例を示す図であり、(a)は制御ケース部分を示す平面図、(b)は操作部材の断面図、(c)は操作部材の側面図。
【図16】第1操作部材の第2の変形例を示す図であり、(a)は制御ケース部分を示す平面図、(b)は操作部材の断面図、(c)は操作部材の側面図。
【図17】第1操作部材の第3の変形例を示す図であり、(a)は制御ケース部分を示す平面図、(b)は操作部材の断面図、(c)は操作部材の側面図。
【図18】本発明に係る魚釣用電動リールの第2の実施形態を示す図であり、(a)は平面図、(b)は第1操作部材を後方側から見た図、(c)は第2操作部材をハンドル側から見た図。
【図19】本発明に係る魚釣用電動リールの第3の実施形態を示す図であり、(a)は平面図、(b)は第1操作部材を後方側から見た図、(c)は第2操作部材をハンドル側から見た図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
図1から図7は、本発明に係る魚釣用電動リールの第1の実施形態を示しており、図1は平面図、図2は魚釣用電動リールをハンドル側から見た側面図、図3は魚釣用電動リールを反ハンドル側から見た側面図、図4は魚釣用電動リールを後方側から見た図、図5は図1のA−A線に沿った断面図、図6は釣竿とともにリール本体を把持して操作部材を操作する状態を示す平面図、そして、図7は図6に示す魚釣用電動リールを後方側から見た図である。
【0012】
本実施形態の魚釣用電動リール1は、左右のフレーム3a,3bに左右カバー4a,4bを取着して構成される左右側板5A,5Bを具備したリール本体5を有している。前記リール本体5を構成する一方の側板(右側板5B)側には、巻取り操作される手動ハンドル6が設けられており、左右側板5A,5B間には、釣糸が巻回されるスプール7が回転可能に支持されている。また、本実施形態では、図5に示すように、前記スプール7の前方側における左右側板間に駆動モータ8を保持しており、前記スプール7は、前記手動ハンドル6の巻取り操作、及び駆動モータ8の回転駆動によって、動力伝達機構10を介して釣糸巻取り方向に回転駆動される。
【0013】
なお、駆動モータ8については、スプール7の内部に設置する構成であっても良いが、本実施形態のように、スプール7の前方に設置することで、スプールの糸巻き量を確保しつつ、リール本体5を可及的にコンパクト化することが可能となる。また、前記動力伝達機構10については、駆動モータ8の回転駆動力を減速してスプール側に伝達する機能、駆動モータ8が回転駆動しても手動ハンドル6を連れ回しさせない機能、手動ハンドル6の逆回転を防止する機能などを備えた公知のものによって構成することが可能である。また、そのような動力伝達機構10については、左側板5A側に配設されていても良いし、右側板5B側に配設されていても良く、或いは、左右側板それぞれに振り分けて配設されていても良い。
【0014】
また、前記スプール7の前方の左右側板5A,5B間には、スプール7に対して均等に釣糸を巻回する機能を備えた公知のレベルワインド機構12が設置されている。さらに、リール本体を構成する前記左右側板5A,5B間のスプール7の上方には、前記駆動モータ8を制御する制御部を具備する制御ケース15が配設されている(制御部の構成については後述する)。この制御ケース15は、その表面が左右側板5A,5Bの表面と面一状に構成されている。
【0015】
また、前記リール本体5内には、スプール7を釣糸巻き取り状態/フリー回転状態に切り換える公知のクラッチ機構17が配置されている。このクラッチ機構17は、上記した動力伝達機構10に介在されて手動ハンドル6及び駆動モータ8からの動力伝達を継脱する機能を備えており、本実施形態では、右側板5B側に設置されている。このクラッチ機構17を構成するクラッチプレートには、動力伝達をON状態からOFF状態に切り換えるクラッチOFF切り換え部材18と、動力伝達をOFF状態からON状態に切り換えるクラッチON切り換え部材19が係合している。
【0016】
本実施形態におけるクラッチOFF切り換え部材18は、スプール7をサミングしながら操作が可能となるように、スプール7の後方側の左右側板5A,5B間に橋設された構成となっており、図5に示す状態から押し下げ操作することで、クラッチ機構17をON状態からOFF状態に切り換えるよう構成されている。また、クラッチOFF切り換え部材18は、図示されていない振り分け保持バネによって、図5に示すクラッチON位置とそこから押し下げられたクラッチOFF位置(図示せず)との間で振り分け保持される。
【0017】
また、本実施形態におけるクラッチON切り換え部材19は、右側板5B側に設置されており、図示されていない振り分け保持バネによって、クラッチON位置とクラッチOFF位置との間で揺動可能となるよう振り分け保持されている。この場合、前記クラッチON切り換え部材19は、クラッチON状態では、図5に示すように、その表面(操作部)が右側板5Bの表面と略面一状となり、クラッチOFF状態では、右側板5Bの表面から突出して押圧操作可能な状態となるように、揺動可能に支持されている。
【0018】
前記リール本体5には、駆動モータ8に対して電力を供給するための給電部20が設けられている。この給電部20は、左側板5Aの前方側の下面領域に形成されており、この給電部20に対しては、着脱可能な携帯バッテリ22(図7参照)を装着したり、或いは、釣り船に設置されている電源部から電力供給される給電コードが装着される。
【0019】
前記制御ケース15は、図5に示すように、スプール7の上方で、その回転軸(スプール軸7a)付近から前方側のレベルワインド機構12、及び駆動モータ8を覆うような大きさを備えており、その後端部分に、駆動モータ8の出力を調整する第1操作部材25が配置されている。
【0020】
また、左右側板のいずれか一方、好ましくは、手動ハンドル6が装着されている側の右側板5Bには、第1操作部材25と同様、駆動モータ8の出力を調整する第2操作部材30が配置されている。
以下、本実施形態における第1操作部材25、及び第2操作部材30の構成について詳細に説明する。
【0021】
前記第1操作部材25は、リール本体5を、リール脚取付け部5aを介して釣竿Rに装着した際に、図7に示すように、釣竿Rとともに前記リール本体を把持保持した状態の手の親指Tが届く位置に配設されている。具体的には、スプール7に釣糸Sが巻回された状態で、その表面をサミング操作しても、サミング操作しながら親指の腹部が当接可能となるようスプールの上方に配設されている。なお、標準的な糸巻量(S2で示す)から釣糸が繰り出されると、巻回されている釣糸の外径は次第に変化するが、ここでは、釣糸巻回量の半分(50%;S1で示す)であっても、十分にサミング操作しながら操作できる位置とされている。
【0022】
本実施形態における第1操作部材25は、リール本体5を把持保持しながらの操作が容易に行えるよう回転式に構成されており、より具体的には、略円筒形状に構成され、その外表面(回転表面)が、左右側板間でスプールを露出させる開口領域に面した構成となっている。すなわち、このような略円筒形状にすることで、リール本体5を把持保持しながらの操作がし易くなる。また、図6に示すように、親指Tの腹部を押し当てた際、安定性が高くなり、確実な操作をすることができ、単なる円板状の部材と比較しても、接触面積が大きいため、把持保持性も強くなる。
【0023】
上記した略円筒形状の第1操作部材25は、図1に示すように、制御ケース15の後端部15aの中央領域に、前方側に向けて窪んだ凹部15bを形成しておき、この凹部15bに回転可能に支持されている。この場合、第1操作部材25は、その回転軸25aの両端が制御ケース15に対して両軸支持されている。このように、第1操作部材25を両軸支持する構成としたことで、糸絡みを効果的に防止することが可能となり、また、第1操作部材25が、スプールの上方で左右側板5A,5Bの中央領域に位置することで、リール本体5の重心に対する把持位置のバランスが良くなり、操作性が良く、疲れ難い構成とすることが可能となる。なお、第1操作部材25の回転軸25aについては、リール本体5に対して回転可能に支持されたものであっても良い。また、第1操作部材25については、片側のみ回転可能に支持(片持ち支持)されたものであっても良い。さらに、第1操作部材25の外周面には、周方向に沿って多数の凹溝25bが形成されており、回転操作した際、滑り難い構成としている。
【0024】
ここで、第1操作部材における略円筒形状とは、図に示すように、内部が中実であっても良いし、全体或いは部分的に空洞部があるものを含む概念である。また、その外形状については、本実施形態のように、正確な円筒形状は勿論、周囲に凹凸が形成されていたり、指でつまんだり、当て付けることが可能な突起部が形成されたものであっても良い。或いは、軸方向の中間部分が膨出していたり、窪んでいるなど、軸方向に親指の腹部が当接できて回転操作ができるような外形状を備えたものであれば良い(これらの具体的な構成例については、図15から図17を参照しながら後述する)。
【0025】
また、本実施形態では、制御ケース15の表面の一部に、第1操作部材25の両端の表面形状と略面一(互いの表面形状を近似させる)となるように、半円柱状の隆起部15dを形成している。
このように、第1操作部材25の端部に対向する部分の制御ケースの表面形状を、第1操作部材の端部形状に近似させることで、図6及び図7に示すように、親指Tの一部をこの部分に添え、かつ、親指の別部分を第1操作部材25に添えての操作ができるため、親指が痛くなることなく把持保持を安定させながら操作を確実に行うことが可能となる。特に、これらの図に示すように、親指Tを反給電部側にシフトさせることが容易に行えるため、給電部20にかかる力Fによるねじれ負荷に対しての把持保持バランスが向上し、操作性の向上が図れると共に、疲れ難くなる。
【0026】
なお、上記したような隆起部については、第1操作部材25の軸方向の少なくとも一端側に形成しておけば良い(好ましくは、反給電部側のみで良い)。また、第1操作部材25の支持態様によっては、リール本体5を構成する左右側板に、そのような面一状となる隆起部を形成しておいても良い。或いは、そのような隆起部を形成することなく、制御ケース15そのものを肉厚にして、第1操作部材25の表面形状と近似するような表面形状としても良い。
【0027】
また、前記制御ケース15の下面には、第1操作部材25の誤動作を防止するために、第1操作部材とスプール7との間に位置する誤動作防止部15eを形成しておくことが好ましい。このような誤動作防止部15eを形成することで、釣糸を巻き取った際に、釣糸に付着する海水やゴミなどによって第1操作部材25が誤動作することを防止することができる。
【0028】
また、本実施形態では、略円筒状の第1操作部材25の回転軸25aを、スプール7の回転軸7aと略平行となるように設置している。
このように、略円筒形状の第1操作部材25の回転軸25aを、スプール7の回転軸7aと略平行(平行を含む)にすることで、リール本体を把持保持した状態で、第1操作部材25を自由に回転しても、指(親指T)の位置が横方向にずれ難く、図6の矢印で示すように、前後方向にしか移動しないため、ねじれ方向の負荷が変化することはなく疲れ難くなる。すなわち、親指Tの位置が大きく横にずれてしまうと、リール本体の重心や給電部20にかかる力(図に示すように、給電部20は側部に設けられているため、給電コードに引っ張られる力や携帯バッテリの重量負荷などで、釣竿Rの長手軸を中心に回転負荷による力がかかり易い)によるねじれ負荷に対し、操作性が低下したり疲れ易くなってしまう。
【0029】
前記右側板5B側に設けられた第2操作部材30は、もっぱら、置き竿にする際に操作される部分となる。すなわち、手持ち時(着底、糸フケ取り、誘い、シャクリ、合わせ直後の巻き取り)については、手持ち状態で使い易い第1操作部材25を使用し、置き竿時(仕掛け回収の所謂空巻きや、特に大物でない場合の巻き取りなど)には、置き竿状態で操作のし易い第2操作部材30を使用できるため、それぞれの場面での操作性の向上が図れ、疲れ難い構成となる。
【0030】
第1操作部材25と第2操作部材30との関係については、第2操作部材30の方が第1操作部材25より大きく、かつ、指で摘むことが可能な摘み部を有する構成にすることが好ましい。具体的には、図8(b)に示すように、摘み部を有するように、第2操作部材30を回動操作可能なレバー方式とすることができ、このような構成において、第2操作部材30を、第1操作部材25より大きく構成することが好ましい。なお、ここでの大きさとは、両部材の操作位置(実際に操作量を特定する部分)によって特定され、第1操作部材25では、操作量が特定される外周面位置となる動作径(L1)であり、第2操作部材30では、操作量が特定されるレバー部30aの先端までの動作径(L2)となる。すなわち、第1操作部材25及び第2操作部材30は、L1<L2となるように、構成することが好ましい。
【0031】
このように、第1操作部材25を小さくすることにより、駆動モータの変速に必要な動作部品(動作径)が小さくなり、手持ち時に必要な素早い操作(仕掛け着底直後の糸フケ取り、シャクリ直後の糸フケ取り、シャクリで竿を上げたときの合わせ、巻き取り等)が可能となる。一方、第2操作部材30を大きくしたことで、揺れる船の上で置き竿としても、指で摘み易くなり、仕掛け回収などの操作をスムーズに行えるようになる。
【0032】
また、上記したような第1操作部材25、及び第2操作部材30の構成においては、図9(a)及び(b)に示すように、第1操作部材25の可動角度θ1>第2操作部材の可動角度θ2と設定しておくことが好ましい。具体的に、本実施形態では、第1操作部材25の可動角度θ1を160°としてあり、第2操作部材の可動角度θ2を120°としてある。
【0033】
このような構成によれば、第1操作部材25の大きさ(操作径)が小さくても、充分な可動範囲をとることができるため、駆動モータの速度が急激に上昇することを防止することができる。また、可動範囲が長くなることで、第2操作部材30の操作と同様、速度を微調整することが容易に行えるようになる。
【0034】
上記した制御ケース15には、駆動モータ8の駆動を制御する制御部(制御基板)が収容されており、第1操作部材25、及び第2操作部材30の操作量に応じて駆動モータ8の出力を調整するようになっている。この場合、制御部は、第1操作部材25、及び第2操作部材30を前方に向けて回転(回動)操作することで、駆動モータ8の出力が上昇するように設定されている。すなわち、釣糸の巻き取りをする際、サミングしている親指をそのまま前方に延ばして、第1操作部材25を押し上げるような操作をすることで釣糸の巻き取り操作が行えるため、操作性の向上が図れるようになる。また、第2操作部材30については、手動ハンドル6を巻きながら、そのまま同方向に回動して釣糸を巻き取り操作することが可能となる。
【0035】
なお、各操作部材25,30の操作量と駆動モータ8の出力との関係については任意であるが、本実施形態では、図9に示すように、第1操作部材25の基準位置P1をモータの出力値0として、160°前方に回転操作した際、モータ出力がMaxになるように設定されると共に、第2操作部材30の基準位置P2をモータの出力値0として、120°前方に回動操作した際、モータ出力がMaxになるように設定されている。
【0036】
次に、前記制御ケース15の構成、及び制御ケース15に収容される制御部の構成について説明する。なお、制御ケース15の表面には、繰り出された釣糸の長さ(糸長情報)などを表示する表示部(液晶表示部)16が設けられており、また、その周囲には、各種の情報が設定可能な操作ボタン16a,16bが配設されている。
【0037】
図10は、制御ケース15に収容されて、上記した構成の魚釣用電動リールの動作を制御する制御部の構成を示すブロック図である。
【0038】
制御ケース15に収容される制御部100は、魚釣用電動リールの動作を制御するCPU(Central Processing Unit)110、糸長を計測したり、駆動モータの出力を可変制御するための各種プログラムや設定情報などを記憶したROM(Read Only Memory)111、一時記憶領域としてのRAM(Random Access Memory)112を実装した制御基板(マイクロコンピュータ)120を備えており、この制御基板120には、I/Oポート115を介して、各作動要素との間で信号の送受信がなされ、動作が制御されるようになっている。
【0039】
具体的には、制御基板120との間では、前記第1操作部材25及び第2操作部材30の操作量を検知する検知手段、具体的には、第1操作部材25の操作角度に応じて操作位置信号を出力する第1角度センサ130及び第2操作部材30の操作角度に応じて操作位置信号を出力する第2角度センサ140、スプール7に巻回されている釣糸の繰り出し量を検知することが可能な糸長計測装置150、制御ケース15上に設けられた液晶表示部16に対して各種の情報を表示させる表示制御回路160、制御ケース15上に設けられた操作ボタン16a,16b、及び駆動モータ8の出力を停止状態から高出力値まで連続的に増減調整するモータ駆動回路170との間で信号の送受信がされるよう構成されている。すなわち、CPU110は、ROM111に格納されている所定のプログラムを実行し、これに応じて生成される制御信号を、I/Oポート115を介して上記した各作動要素に供給することで各作動要素を制御し、魚釣用電動リール全体を制御する機能を有する。
【0040】
また、前記ROM111は、CPU110によって実行される各種プログラムや、制御処理に必要とされるデータ(例えば、糸長計測装置150から入力される検知信号に基づいて糸長を計測する演算プログラム、第1操作部材25及び第2操作部材30の操作角度とそれに対応して駆動モータ8の回転速度を可変させるデューティ比を特定する可変制御テーブル、液晶表示部16で文字や数字などの画像を表示させるための画像表示データなど)が記憶されている。また、前記RAM112は、作業領域を備えており、前記プログラムが作動している際に、処理手順やデータなどを一時的に記憶する機能を備えている。
【0041】
前記操作ボタン16a,16bは、例えば、投入した仕掛けを所望の深さで停止させる深さ情報、駆動モータ8の出力の可変範囲を変更する出力範囲設定情報など、釣り人から各種の情報を受け付ける。
【0042】
前記糸長計測装置150は、スプール7が釣糸の繰り出し/巻き取りで回転駆動された際、例えば、回転部分に装着されたマグネットと、これを検知する磁気センサによって実際の回転量や回転方向を検知し、その検知信号を生成する。
【0043】
また、前記モータ駆動回路170は、スプール7を回転駆動する駆動モータ8を駆動制御する機能を備える。具体的には、モータ駆動回路170は、例えば、前記CPU110からの制御信号(PWM信号;パルス幅変調信号)に基づいて、駆動モータに対する駆動電流通電時間率(デューティ比)を可変制御し、駆動モータ8を停止状態(OFF状態)から高速回転状態(Max状態)まで連続的に増減調節する。なお、前記CPU110からは、第1操作部材25及び第2操作部材30の初期位置(OFF位置)から実際の操作量を検知する角度センサによる検知信号に基づいて、角度毎に設定されているデューティ比に関する制御信号が出力される。
【0044】
前記表示制御回路160は、前記CPU110の制御に基づいて駆動され、液晶表示部16に対して、例えば、現在の釣糸の繰り出し量、仕掛けを投入してからの時間、駆動モータ8の駆動速度(インジケータによる表示でも良い)、或いは、操作方法やメッセージなど、釣り人に対して各種情報を表示させる機能を有する。
【0045】
前記角度センサ130,140は、各操作部材25,30の操作角度に応じた信号を生成する機能を備えたものであれば良く、例えば、操作部材の操作量に応じた抵抗値の変化を出力するポテンショメータを備えたもの、或いは、操作量に応じたパルスを生成するエンコーダを備えたものなど、様々な構造のものを適用することが可能である。
【0046】
次に、図11のフローチャートを参照して、制御部100において実行される第1操作部材25及び第2操作部材30による操作処理手順を説明する。
【0047】
最初、第1操作部材25及び第2操作部材30がOFF位置にあるか否かが判断される(ステップS1)。これは、例えば、操作部材25,30が、誤って駆動モータが駆動される可動範囲に位置していた場合において、電源を入れたときに駆動モータが回転駆動されないようにするセーフティ機能としての役目を果たす。
【0048】
第1操作部材25及び第2操作部材30がOFF位置にあると判断されれば(ステップS1;Yes)、引き続いて、第1操作部材25又は第2操作部材30から操作信号が入力されるのを待つ(ステップS2)。これは、角度センサ130,140からの検知信号の入力が該当する。
【0049】
第1操作部材25又は第2操作部材30から操作信号が入力されれば(ステップS2;Yes)、その操作部材はON状態となり、その操作部材の操作に基づいてモータの可変制御が実行される(ステップS3)。そして、この状態で、OFF状態となっている操作部材から操作信号が入力されなければ(ステップS4;No)そのままON状態となっている操作部材の操作に基づいてモータの可変制御が実行される(ステップS5)。
【0050】
なお、ON状態となっている操作部材については、常時、OFF操作される(初期位置に戻される)か否かが判断され(ステップS6)、OFF操作されなければ、OFF状態となっている操作部材からの操作信号の有無を検知する(ステップS6;No、ステップS4)。この場合、OFF状態にある操作部材から操作信号の入力があると、それまでON状態にあった操作部材をOFFにし、かつ操作のあった操作部材をONにする(ステップS10;操作部材の切り換え処理)。そして、ONにした操作部材による操作によってモータを可変制御する(ステップS5)。すなわち、制御部では、常に後から操作された操作部材からの信号を優先処理するため、別途、両操作部材間で切り換え処理をする必要性がなく、操作部材の変更がスムーズに行えるようになる。
【0051】
そして、ON状態となっている操作部材が、釣り人の操作によってOFF位置に戻されると、再度、上記の処理が繰り返される(ステップS6;Yes)。
【0052】
上記の処理手順は一例を示したに過ぎず、例えば、2つの操作部材25,30については、いずれも一度OFF位置に戻さないと、別の操作部材が操作できないように制御しても良い。或いは、図12の処理手順に示すように、図11に示す処理手順のステップS10の操作部材の切り換え処理の前に、OFF状態にあった操作部材の操作によるモータ出力値が、現在のモータの出力値以上になるまで回転(回動)操作されないと、ステップS10のモータの切り換え処理を実行しないようにしても良い(ステップS8)。
【0053】
このようにすることで、操作部材の切り換え処理時において、それまで操作していた操作部材によるモータ制御が比較的高速な状態のとき、切り換え処理によって駆動モータの駆動速度が一旦落ち込むようなことがなく、モータの駆動速度がスムーズな状態で操作部材の切り換え処理が実行されるようになる。
【0054】
また、制御部100は、第1操作部材25による駆動モータの可変範囲と、第2操作部材30による駆動モータの可変範囲を異なるように制御可能にすることが好ましい。
【0055】
このような制御について、図13のグラフを参照して説明する。
図13は、制御部100において駆動モータ8を制御する手法を示しており、デューティ比と、各操作部材25,30の操作角度との関係を示したグラフである。通常の制御においては、制御部100では、各操作部材25,30の操作範囲内において、駆動モータ8の出力を0から連続的に可変させており、最大操作角度まで操作した際、駆動モータ8の回転速度を可変させるデューティ比の範囲を0%から100%まで連続的(段階的な変化でも良い)に可変するように制御を実施している。
【0056】
しかし、上記したように、第1操作部材25は、サミングしているスプールから近接した位置にあり、かつ操作径が小さいことから、僅かな操作量で、急激にモータ速度が上昇する可能性がある。したがって、第1操作部材25については、操作範囲内において、Max位置になった場合でも、デューティ比が100%より小さい値(図13では、50%に設定してある)の範囲内で可変制御(デューティ比0〜50%)するように構成する。
【0057】
このようなモータ制御によれば、例えば、手持ち状態において、仕掛けに魚が掛かって第1操作部材25を操作しても、誤って急速にモータ速度が上昇することがないため、口切れや仕掛けの切断といったトラブルを防止することが可能となる。
【0058】
或いは、第1操作部材25については、図14に示すように、前記制御部100において、第1操作部材25の操作範囲内において、駆動モータ8の出力を0から連続的に可変させると共に、同一の操作範囲で前記駆動モータ8の可変範囲を変更可能に制御するようにしても良い。すなわち、通常モードでは、(イ)に示すように、操作部材が初期位置にある状態(操作角度0°)から、最大操作角度(本実施形態では160°としてある)まで操作した際、駆動モータ8の回転速度を可変させるデューティ比の範囲を0%から100%まで連続的(段階的な変化でも良い)に可変するように制御を行う。そして、釣り人の好みにより、例えば、制御ケース15に設けられた操作ボタンを操作することで、デューティ比の範囲が可変するように制御を行う。すなわち、(ロ),(ハ)(ニ)…に示すように、デューティ比の範囲を任意に変更することで、同一の操作角度であっても、駆動モータ8の出力が急激に上昇することを防止することが可能となる。この結果、魚が掛かった場合に、急激に駆動モータ8の回転速度が急上昇することを防止することができ、口切れや仕掛けの切断などを防止することが可能となる。
【0059】
なお、図13及び図14では、各操作部材25,30の回転角度とデューティ比との関係を、説明上わかり易くするために直線の線形グラフとして示したが、実際には、操作角度の範囲内において、所定の角度ずつ複数段階(例えば0から30段階)で駆動速度が可変されるように制御されるため、両者の関係については非線形となる。
【0060】
図15から図17はそれぞれ第1操作部材の変形例を示しており、各図における(a)は制御ケース部分を示す平面図、各図における(b)は操作部材の断面図、そして、各図における(c)は操作部材の側面図である。
【0061】
上述したように、第1操作部材を略円筒形状に構成する場合、その形状については種々変形することが可能である。具体的には、回転操作可能であり、その操作表面部が、左右側板と制御ケースとの間でスプールを露出させる開口に面して、サミングしている親指をそのまま延ばして当接できるような形状であれば良い。例えば、図15に示す操作部材35は、回転軸35aが両軸支持されており、その中間部分が湾曲面によって収縮した鼓形状にすると共に、その周囲に、周方向に沿って連続して凹溝35bを形成している。このような構成では、親指の腹部がフィットし易いと共に、滑りが生じ難くなる。或いは、図16に示す操作部材45は、回転軸45aが両軸支持されており、その中間部分が湾曲面によって膨出した樽形状にすると共に、その周囲に、周方向に沿って連続して突起45bを形成している。このような構成では、親指の腹部が掛かり易くなって、滑り難く操作性の向上が図れるようになる。或いは、図17に示す操作部材55は、回転軸55aが両軸支持されており、円筒形状の表面の一部にレバー部55bを形成している。このような構成では、初期値(駆動モータの出力が0)となる位置を明確化することができ、また、置き竿時における揺れる船上においても、レバー部55bを摘んで操作できることから、操作性の向上が図れるようになる。
【0062】
なお、いずれの操作部材も、上述した実施形態と同様、その動作径(L1)は、第2操作部材30のレバー部30aの先端までの動作径(L2)より小さくなるように構成されている。
【0063】
次に、本発明の別の実施形態について説明する。なお、以下に説明する実施形態では、上述した実施形態と同一の部分については、同一の参照符号を付し、その詳細な説明については省略する。
図18は、本発明に係る魚釣用電動リールの第2の実施形態を示す図であり、(a)は平面図、(b)は第1操作部材を後方側から見た図、(c)は第2操作部材をハンドル側から見た図である。
【0064】
本実施形態では、制御ケース15の後端側の表面部に、スプール7の回転軸方向に沿ってスライド可能な第1操作部材部65を配設すると共に、右側板5Bの表面部に、前後方向に沿ってスライド可能な第2操作部材70を配設している。
【0065】
このように、第1操作部材及び第2操作部材については、その構成については、回転式や回動式に限定されることはなく、スライド方式にしても良い。また、このような構成においても、第1操作部材65の大きさ(高さL1で定義する)は、第2操作部材70の大きさ(高さL2で定義する)よりも小さく設定されており、両部材の操作性の向上を図っている。すなわち、第1操作部材65を大きくし過ぎると、逆に、手持ち操作する上でリール本体5を把持した際、操作の妨げになるため、第2操作部材70よりも小さく設定しておくことが好ましい。
【0066】
図19は、本発明に係る魚釣用電動リールの第3の実施形態を示す図であり、(a)は平面図、(b)は第1操作部材を後方側から見た図、(c)は第2操作部材をハンドル側から見た図である。
【0067】
本実施形態では、第2操作部材を、上述した第1の実施形態と同様、レバータイプとしたものである。本実施形態においても、第1操作部材65の大きさ(高さL1で定義する)は、第2操作部材30の大きさL2よりも小さく設定されている。
このように構成しても上記した実施形態と同様な作用効果を得ることが可能である。
【0068】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、駆動モータ8の出力を制御する操作部材をリール本体に2つ設けたことに特徴がある。すなわち、1つの操作部材は、手持ち状態で操作可能な構成とし、もう1つの操作部材は、置き竿時に容易に操作できるように構成されていれば良く、その形状、操作方法や操作方向などについては、上記した実施形態に限定されることなく、種々変形することが可能である。また、操作部材以外の構成については、上記した実施形態に限定されることはなく、種々変形することが可能である。
【符号の説明】
【0069】
1 魚釣用電動リール
5 リール本体
5A,5B 左右側板
6 手動ハンドル
7 スプール
8 駆動モータ
12 クラッチ機構
15 制御ケース
25,35,45,55,65 第1操作部材
30,70 第2操作部材
【技術分野】
【0001】
本発明は、魚釣用電動リールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、魚釣用電動リールは、主に深場の釣りに適用させるべく、仕掛けの放出から巻き取りに至るまで、釣竿を船縁に装着された竿掛けに置いたままの状態で行えるように構成されたものが多いが、最近では、手持ち状態で操作が行えるように、よりコンパクト化された構成も製品化されている。
【0003】
一方、魚釣用電動リールは、スプールを巻き取り操作するための操作部材を、様々な位置に配置することが知られている。例えば、特許文献1に開示されているように、リール本体の側板に、モータ出力を連続的に可変できるようなレバータイプに構成したもの、或いは、スライドタイプに構成したもの等を配置することが知られている。また、特許文献2には、制御ケースの上面から円板状の回転摘み(操作部材)の一部を露出させ、上方から親指を押し付けながら回転操作することで、モータ出力を連続的に可変させる構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−169700号
【特許文献2】特開2003−92959号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記したように、最近の魚釣用電動リールでは、ルアーフィッシングに用いられる魚釣用(ベイトキャスティング)リールと同様、手持ち状態で操作することが可能なタイプも望まれているが、駆動モータを回転駆動する操作部材に関して改良すべき余地がある。具体的には、前記特許文献1に開示されているタイプの操作部材では、釣竿とともにリール本体を把持した片手で、釣糸巻き取り操作を行うことはできない。また、特許文献2に開示されているタイプの操作部材では、片手で釣糸巻き取り操作は行えるものの、操作部が制御ケース内に組み込まれているため、揺れる船の上で置き竿状態にしたときの操作が難しく、誤作動させてしまう可能性がある。
【0006】
本発明は、上記した問題に着目してなされたものであり、手持ち状態での操作性と、置き竿状態での操作性の両方を向上させた魚釣用電動リールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した目的を達成するために、本発明に係る魚釣用電動リールは、リール本体の左右側板間に設けられ、釣糸が巻回されるスプールと、前記スプールを回転駆動する駆動モータと、前記リール本体に配置され、前記駆動モータを制御する制御部を具備する制御ケースと、釣竿とともに前記リール本体を把持保持した状態の手の親指が届く位置に配設され、前記駆動モータの出力を調整する第1操作部材と、前記左右側板のいずれかに配設され、前記駆動モータの出力を調整する第2操作部材と、を有することを特徴とする。
【0008】
上記した構成の魚釣用電動リールでは、釣竿とともにリール本体を把持保持した状態の手の親指が届く位置に、駆動モータの出力を調整する第1操作部材が配設されているため、サミング操作や、駆動モータの巻き取り操作を違和感なく行うことが可能となる。すなわち、片手でリール本体を把持しながら釣糸巻き取り操作が行える。また、リール本体を置き竿状態にしたときには、操作し易い位置(左右側板のいずれか)に配設された第2操作部材を操作することで、誤操作することなく釣糸の巻き取りが行える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、手持ち状態での操作性と、置き竿状態での操作性の両方を向上させた魚釣用電動リールが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係る魚釣用電動リールの第1の実施形態を示す平面図。
【図2】図1に示す魚釣用電動リールをハンドル側から見た側面図。
【図3】図1に示す魚釣用電動リールを反ハンドル側から見た側面図。
【図4】図1に示す魚釣用電動リールを後方側から見た図。
【図5】図1のA−A線に沿った断面図。
【図6】釣竿とともにリール本体を把持して操作部材を操作する状態を示す平面図。
【図7】図6に示す魚釣用電動リールを後方側から見た図。
【図8】(a)は第1操作部材の断面図、(b)は第2操作部材の側面図。
【図9】(a)は第2操作部材の操作角度を示す図、(b)は第1操作部材の操作角度を示す図。
【図10】制御ケース内に収容される制御部の構成を示すブロック図。
【図11】制御部において実行される第1操作部材及び第2操作部材による操作処理手順を示すフローチャート。
【図12】制御部において実行される第1操作部材及び第2操作部材による操作処理手順の変形例を示すフローチャート。
【図13】制御部において駆動モータを制御する手法を示し、デューティ比と、各操作部材の操作角度との関係を示すグラフ。
【図14】制御部において駆動モータを制御する手法を示し、デューティ比と、第1操作部材の操作角度との関係を示すグラフ。
【図15】第1操作部材の第1の変形例を示す図であり、(a)は制御ケース部分を示す平面図、(b)は操作部材の断面図、(c)は操作部材の側面図。
【図16】第1操作部材の第2の変形例を示す図であり、(a)は制御ケース部分を示す平面図、(b)は操作部材の断面図、(c)は操作部材の側面図。
【図17】第1操作部材の第3の変形例を示す図であり、(a)は制御ケース部分を示す平面図、(b)は操作部材の断面図、(c)は操作部材の側面図。
【図18】本発明に係る魚釣用電動リールの第2の実施形態を示す図であり、(a)は平面図、(b)は第1操作部材を後方側から見た図、(c)は第2操作部材をハンドル側から見た図。
【図19】本発明に係る魚釣用電動リールの第3の実施形態を示す図であり、(a)は平面図、(b)は第1操作部材を後方側から見た図、(c)は第2操作部材をハンドル側から見た図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
図1から図7は、本発明に係る魚釣用電動リールの第1の実施形態を示しており、図1は平面図、図2は魚釣用電動リールをハンドル側から見た側面図、図3は魚釣用電動リールを反ハンドル側から見た側面図、図4は魚釣用電動リールを後方側から見た図、図5は図1のA−A線に沿った断面図、図6は釣竿とともにリール本体を把持して操作部材を操作する状態を示す平面図、そして、図7は図6に示す魚釣用電動リールを後方側から見た図である。
【0012】
本実施形態の魚釣用電動リール1は、左右のフレーム3a,3bに左右カバー4a,4bを取着して構成される左右側板5A,5Bを具備したリール本体5を有している。前記リール本体5を構成する一方の側板(右側板5B)側には、巻取り操作される手動ハンドル6が設けられており、左右側板5A,5B間には、釣糸が巻回されるスプール7が回転可能に支持されている。また、本実施形態では、図5に示すように、前記スプール7の前方側における左右側板間に駆動モータ8を保持しており、前記スプール7は、前記手動ハンドル6の巻取り操作、及び駆動モータ8の回転駆動によって、動力伝達機構10を介して釣糸巻取り方向に回転駆動される。
【0013】
なお、駆動モータ8については、スプール7の内部に設置する構成であっても良いが、本実施形態のように、スプール7の前方に設置することで、スプールの糸巻き量を確保しつつ、リール本体5を可及的にコンパクト化することが可能となる。また、前記動力伝達機構10については、駆動モータ8の回転駆動力を減速してスプール側に伝達する機能、駆動モータ8が回転駆動しても手動ハンドル6を連れ回しさせない機能、手動ハンドル6の逆回転を防止する機能などを備えた公知のものによって構成することが可能である。また、そのような動力伝達機構10については、左側板5A側に配設されていても良いし、右側板5B側に配設されていても良く、或いは、左右側板それぞれに振り分けて配設されていても良い。
【0014】
また、前記スプール7の前方の左右側板5A,5B間には、スプール7に対して均等に釣糸を巻回する機能を備えた公知のレベルワインド機構12が設置されている。さらに、リール本体を構成する前記左右側板5A,5B間のスプール7の上方には、前記駆動モータ8を制御する制御部を具備する制御ケース15が配設されている(制御部の構成については後述する)。この制御ケース15は、その表面が左右側板5A,5Bの表面と面一状に構成されている。
【0015】
また、前記リール本体5内には、スプール7を釣糸巻き取り状態/フリー回転状態に切り換える公知のクラッチ機構17が配置されている。このクラッチ機構17は、上記した動力伝達機構10に介在されて手動ハンドル6及び駆動モータ8からの動力伝達を継脱する機能を備えており、本実施形態では、右側板5B側に設置されている。このクラッチ機構17を構成するクラッチプレートには、動力伝達をON状態からOFF状態に切り換えるクラッチOFF切り換え部材18と、動力伝達をOFF状態からON状態に切り換えるクラッチON切り換え部材19が係合している。
【0016】
本実施形態におけるクラッチOFF切り換え部材18は、スプール7をサミングしながら操作が可能となるように、スプール7の後方側の左右側板5A,5B間に橋設された構成となっており、図5に示す状態から押し下げ操作することで、クラッチ機構17をON状態からOFF状態に切り換えるよう構成されている。また、クラッチOFF切り換え部材18は、図示されていない振り分け保持バネによって、図5に示すクラッチON位置とそこから押し下げられたクラッチOFF位置(図示せず)との間で振り分け保持される。
【0017】
また、本実施形態におけるクラッチON切り換え部材19は、右側板5B側に設置されており、図示されていない振り分け保持バネによって、クラッチON位置とクラッチOFF位置との間で揺動可能となるよう振り分け保持されている。この場合、前記クラッチON切り換え部材19は、クラッチON状態では、図5に示すように、その表面(操作部)が右側板5Bの表面と略面一状となり、クラッチOFF状態では、右側板5Bの表面から突出して押圧操作可能な状態となるように、揺動可能に支持されている。
【0018】
前記リール本体5には、駆動モータ8に対して電力を供給するための給電部20が設けられている。この給電部20は、左側板5Aの前方側の下面領域に形成されており、この給電部20に対しては、着脱可能な携帯バッテリ22(図7参照)を装着したり、或いは、釣り船に設置されている電源部から電力供給される給電コードが装着される。
【0019】
前記制御ケース15は、図5に示すように、スプール7の上方で、その回転軸(スプール軸7a)付近から前方側のレベルワインド機構12、及び駆動モータ8を覆うような大きさを備えており、その後端部分に、駆動モータ8の出力を調整する第1操作部材25が配置されている。
【0020】
また、左右側板のいずれか一方、好ましくは、手動ハンドル6が装着されている側の右側板5Bには、第1操作部材25と同様、駆動モータ8の出力を調整する第2操作部材30が配置されている。
以下、本実施形態における第1操作部材25、及び第2操作部材30の構成について詳細に説明する。
【0021】
前記第1操作部材25は、リール本体5を、リール脚取付け部5aを介して釣竿Rに装着した際に、図7に示すように、釣竿Rとともに前記リール本体を把持保持した状態の手の親指Tが届く位置に配設されている。具体的には、スプール7に釣糸Sが巻回された状態で、その表面をサミング操作しても、サミング操作しながら親指の腹部が当接可能となるようスプールの上方に配設されている。なお、標準的な糸巻量(S2で示す)から釣糸が繰り出されると、巻回されている釣糸の外径は次第に変化するが、ここでは、釣糸巻回量の半分(50%;S1で示す)であっても、十分にサミング操作しながら操作できる位置とされている。
【0022】
本実施形態における第1操作部材25は、リール本体5を把持保持しながらの操作が容易に行えるよう回転式に構成されており、より具体的には、略円筒形状に構成され、その外表面(回転表面)が、左右側板間でスプールを露出させる開口領域に面した構成となっている。すなわち、このような略円筒形状にすることで、リール本体5を把持保持しながらの操作がし易くなる。また、図6に示すように、親指Tの腹部を押し当てた際、安定性が高くなり、確実な操作をすることができ、単なる円板状の部材と比較しても、接触面積が大きいため、把持保持性も強くなる。
【0023】
上記した略円筒形状の第1操作部材25は、図1に示すように、制御ケース15の後端部15aの中央領域に、前方側に向けて窪んだ凹部15bを形成しておき、この凹部15bに回転可能に支持されている。この場合、第1操作部材25は、その回転軸25aの両端が制御ケース15に対して両軸支持されている。このように、第1操作部材25を両軸支持する構成としたことで、糸絡みを効果的に防止することが可能となり、また、第1操作部材25が、スプールの上方で左右側板5A,5Bの中央領域に位置することで、リール本体5の重心に対する把持位置のバランスが良くなり、操作性が良く、疲れ難い構成とすることが可能となる。なお、第1操作部材25の回転軸25aについては、リール本体5に対して回転可能に支持されたものであっても良い。また、第1操作部材25については、片側のみ回転可能に支持(片持ち支持)されたものであっても良い。さらに、第1操作部材25の外周面には、周方向に沿って多数の凹溝25bが形成されており、回転操作した際、滑り難い構成としている。
【0024】
ここで、第1操作部材における略円筒形状とは、図に示すように、内部が中実であっても良いし、全体或いは部分的に空洞部があるものを含む概念である。また、その外形状については、本実施形態のように、正確な円筒形状は勿論、周囲に凹凸が形成されていたり、指でつまんだり、当て付けることが可能な突起部が形成されたものであっても良い。或いは、軸方向の中間部分が膨出していたり、窪んでいるなど、軸方向に親指の腹部が当接できて回転操作ができるような外形状を備えたものであれば良い(これらの具体的な構成例については、図15から図17を参照しながら後述する)。
【0025】
また、本実施形態では、制御ケース15の表面の一部に、第1操作部材25の両端の表面形状と略面一(互いの表面形状を近似させる)となるように、半円柱状の隆起部15dを形成している。
このように、第1操作部材25の端部に対向する部分の制御ケースの表面形状を、第1操作部材の端部形状に近似させることで、図6及び図7に示すように、親指Tの一部をこの部分に添え、かつ、親指の別部分を第1操作部材25に添えての操作ができるため、親指が痛くなることなく把持保持を安定させながら操作を確実に行うことが可能となる。特に、これらの図に示すように、親指Tを反給電部側にシフトさせることが容易に行えるため、給電部20にかかる力Fによるねじれ負荷に対しての把持保持バランスが向上し、操作性の向上が図れると共に、疲れ難くなる。
【0026】
なお、上記したような隆起部については、第1操作部材25の軸方向の少なくとも一端側に形成しておけば良い(好ましくは、反給電部側のみで良い)。また、第1操作部材25の支持態様によっては、リール本体5を構成する左右側板に、そのような面一状となる隆起部を形成しておいても良い。或いは、そのような隆起部を形成することなく、制御ケース15そのものを肉厚にして、第1操作部材25の表面形状と近似するような表面形状としても良い。
【0027】
また、前記制御ケース15の下面には、第1操作部材25の誤動作を防止するために、第1操作部材とスプール7との間に位置する誤動作防止部15eを形成しておくことが好ましい。このような誤動作防止部15eを形成することで、釣糸を巻き取った際に、釣糸に付着する海水やゴミなどによって第1操作部材25が誤動作することを防止することができる。
【0028】
また、本実施形態では、略円筒状の第1操作部材25の回転軸25aを、スプール7の回転軸7aと略平行となるように設置している。
このように、略円筒形状の第1操作部材25の回転軸25aを、スプール7の回転軸7aと略平行(平行を含む)にすることで、リール本体を把持保持した状態で、第1操作部材25を自由に回転しても、指(親指T)の位置が横方向にずれ難く、図6の矢印で示すように、前後方向にしか移動しないため、ねじれ方向の負荷が変化することはなく疲れ難くなる。すなわち、親指Tの位置が大きく横にずれてしまうと、リール本体の重心や給電部20にかかる力(図に示すように、給電部20は側部に設けられているため、給電コードに引っ張られる力や携帯バッテリの重量負荷などで、釣竿Rの長手軸を中心に回転負荷による力がかかり易い)によるねじれ負荷に対し、操作性が低下したり疲れ易くなってしまう。
【0029】
前記右側板5B側に設けられた第2操作部材30は、もっぱら、置き竿にする際に操作される部分となる。すなわち、手持ち時(着底、糸フケ取り、誘い、シャクリ、合わせ直後の巻き取り)については、手持ち状態で使い易い第1操作部材25を使用し、置き竿時(仕掛け回収の所謂空巻きや、特に大物でない場合の巻き取りなど)には、置き竿状態で操作のし易い第2操作部材30を使用できるため、それぞれの場面での操作性の向上が図れ、疲れ難い構成となる。
【0030】
第1操作部材25と第2操作部材30との関係については、第2操作部材30の方が第1操作部材25より大きく、かつ、指で摘むことが可能な摘み部を有する構成にすることが好ましい。具体的には、図8(b)に示すように、摘み部を有するように、第2操作部材30を回動操作可能なレバー方式とすることができ、このような構成において、第2操作部材30を、第1操作部材25より大きく構成することが好ましい。なお、ここでの大きさとは、両部材の操作位置(実際に操作量を特定する部分)によって特定され、第1操作部材25では、操作量が特定される外周面位置となる動作径(L1)であり、第2操作部材30では、操作量が特定されるレバー部30aの先端までの動作径(L2)となる。すなわち、第1操作部材25及び第2操作部材30は、L1<L2となるように、構成することが好ましい。
【0031】
このように、第1操作部材25を小さくすることにより、駆動モータの変速に必要な動作部品(動作径)が小さくなり、手持ち時に必要な素早い操作(仕掛け着底直後の糸フケ取り、シャクリ直後の糸フケ取り、シャクリで竿を上げたときの合わせ、巻き取り等)が可能となる。一方、第2操作部材30を大きくしたことで、揺れる船の上で置き竿としても、指で摘み易くなり、仕掛け回収などの操作をスムーズに行えるようになる。
【0032】
また、上記したような第1操作部材25、及び第2操作部材30の構成においては、図9(a)及び(b)に示すように、第1操作部材25の可動角度θ1>第2操作部材の可動角度θ2と設定しておくことが好ましい。具体的に、本実施形態では、第1操作部材25の可動角度θ1を160°としてあり、第2操作部材の可動角度θ2を120°としてある。
【0033】
このような構成によれば、第1操作部材25の大きさ(操作径)が小さくても、充分な可動範囲をとることができるため、駆動モータの速度が急激に上昇することを防止することができる。また、可動範囲が長くなることで、第2操作部材30の操作と同様、速度を微調整することが容易に行えるようになる。
【0034】
上記した制御ケース15には、駆動モータ8の駆動を制御する制御部(制御基板)が収容されており、第1操作部材25、及び第2操作部材30の操作量に応じて駆動モータ8の出力を調整するようになっている。この場合、制御部は、第1操作部材25、及び第2操作部材30を前方に向けて回転(回動)操作することで、駆動モータ8の出力が上昇するように設定されている。すなわち、釣糸の巻き取りをする際、サミングしている親指をそのまま前方に延ばして、第1操作部材25を押し上げるような操作をすることで釣糸の巻き取り操作が行えるため、操作性の向上が図れるようになる。また、第2操作部材30については、手動ハンドル6を巻きながら、そのまま同方向に回動して釣糸を巻き取り操作することが可能となる。
【0035】
なお、各操作部材25,30の操作量と駆動モータ8の出力との関係については任意であるが、本実施形態では、図9に示すように、第1操作部材25の基準位置P1をモータの出力値0として、160°前方に回転操作した際、モータ出力がMaxになるように設定されると共に、第2操作部材30の基準位置P2をモータの出力値0として、120°前方に回動操作した際、モータ出力がMaxになるように設定されている。
【0036】
次に、前記制御ケース15の構成、及び制御ケース15に収容される制御部の構成について説明する。なお、制御ケース15の表面には、繰り出された釣糸の長さ(糸長情報)などを表示する表示部(液晶表示部)16が設けられており、また、その周囲には、各種の情報が設定可能な操作ボタン16a,16bが配設されている。
【0037】
図10は、制御ケース15に収容されて、上記した構成の魚釣用電動リールの動作を制御する制御部の構成を示すブロック図である。
【0038】
制御ケース15に収容される制御部100は、魚釣用電動リールの動作を制御するCPU(Central Processing Unit)110、糸長を計測したり、駆動モータの出力を可変制御するための各種プログラムや設定情報などを記憶したROM(Read Only Memory)111、一時記憶領域としてのRAM(Random Access Memory)112を実装した制御基板(マイクロコンピュータ)120を備えており、この制御基板120には、I/Oポート115を介して、各作動要素との間で信号の送受信がなされ、動作が制御されるようになっている。
【0039】
具体的には、制御基板120との間では、前記第1操作部材25及び第2操作部材30の操作量を検知する検知手段、具体的には、第1操作部材25の操作角度に応じて操作位置信号を出力する第1角度センサ130及び第2操作部材30の操作角度に応じて操作位置信号を出力する第2角度センサ140、スプール7に巻回されている釣糸の繰り出し量を検知することが可能な糸長計測装置150、制御ケース15上に設けられた液晶表示部16に対して各種の情報を表示させる表示制御回路160、制御ケース15上に設けられた操作ボタン16a,16b、及び駆動モータ8の出力を停止状態から高出力値まで連続的に増減調整するモータ駆動回路170との間で信号の送受信がされるよう構成されている。すなわち、CPU110は、ROM111に格納されている所定のプログラムを実行し、これに応じて生成される制御信号を、I/Oポート115を介して上記した各作動要素に供給することで各作動要素を制御し、魚釣用電動リール全体を制御する機能を有する。
【0040】
また、前記ROM111は、CPU110によって実行される各種プログラムや、制御処理に必要とされるデータ(例えば、糸長計測装置150から入力される検知信号に基づいて糸長を計測する演算プログラム、第1操作部材25及び第2操作部材30の操作角度とそれに対応して駆動モータ8の回転速度を可変させるデューティ比を特定する可変制御テーブル、液晶表示部16で文字や数字などの画像を表示させるための画像表示データなど)が記憶されている。また、前記RAM112は、作業領域を備えており、前記プログラムが作動している際に、処理手順やデータなどを一時的に記憶する機能を備えている。
【0041】
前記操作ボタン16a,16bは、例えば、投入した仕掛けを所望の深さで停止させる深さ情報、駆動モータ8の出力の可変範囲を変更する出力範囲設定情報など、釣り人から各種の情報を受け付ける。
【0042】
前記糸長計測装置150は、スプール7が釣糸の繰り出し/巻き取りで回転駆動された際、例えば、回転部分に装着されたマグネットと、これを検知する磁気センサによって実際の回転量や回転方向を検知し、その検知信号を生成する。
【0043】
また、前記モータ駆動回路170は、スプール7を回転駆動する駆動モータ8を駆動制御する機能を備える。具体的には、モータ駆動回路170は、例えば、前記CPU110からの制御信号(PWM信号;パルス幅変調信号)に基づいて、駆動モータに対する駆動電流通電時間率(デューティ比)を可変制御し、駆動モータ8を停止状態(OFF状態)から高速回転状態(Max状態)まで連続的に増減調節する。なお、前記CPU110からは、第1操作部材25及び第2操作部材30の初期位置(OFF位置)から実際の操作量を検知する角度センサによる検知信号に基づいて、角度毎に設定されているデューティ比に関する制御信号が出力される。
【0044】
前記表示制御回路160は、前記CPU110の制御に基づいて駆動され、液晶表示部16に対して、例えば、現在の釣糸の繰り出し量、仕掛けを投入してからの時間、駆動モータ8の駆動速度(インジケータによる表示でも良い)、或いは、操作方法やメッセージなど、釣り人に対して各種情報を表示させる機能を有する。
【0045】
前記角度センサ130,140は、各操作部材25,30の操作角度に応じた信号を生成する機能を備えたものであれば良く、例えば、操作部材の操作量に応じた抵抗値の変化を出力するポテンショメータを備えたもの、或いは、操作量に応じたパルスを生成するエンコーダを備えたものなど、様々な構造のものを適用することが可能である。
【0046】
次に、図11のフローチャートを参照して、制御部100において実行される第1操作部材25及び第2操作部材30による操作処理手順を説明する。
【0047】
最初、第1操作部材25及び第2操作部材30がOFF位置にあるか否かが判断される(ステップS1)。これは、例えば、操作部材25,30が、誤って駆動モータが駆動される可動範囲に位置していた場合において、電源を入れたときに駆動モータが回転駆動されないようにするセーフティ機能としての役目を果たす。
【0048】
第1操作部材25及び第2操作部材30がOFF位置にあると判断されれば(ステップS1;Yes)、引き続いて、第1操作部材25又は第2操作部材30から操作信号が入力されるのを待つ(ステップS2)。これは、角度センサ130,140からの検知信号の入力が該当する。
【0049】
第1操作部材25又は第2操作部材30から操作信号が入力されれば(ステップS2;Yes)、その操作部材はON状態となり、その操作部材の操作に基づいてモータの可変制御が実行される(ステップS3)。そして、この状態で、OFF状態となっている操作部材から操作信号が入力されなければ(ステップS4;No)そのままON状態となっている操作部材の操作に基づいてモータの可変制御が実行される(ステップS5)。
【0050】
なお、ON状態となっている操作部材については、常時、OFF操作される(初期位置に戻される)か否かが判断され(ステップS6)、OFF操作されなければ、OFF状態となっている操作部材からの操作信号の有無を検知する(ステップS6;No、ステップS4)。この場合、OFF状態にある操作部材から操作信号の入力があると、それまでON状態にあった操作部材をOFFにし、かつ操作のあった操作部材をONにする(ステップS10;操作部材の切り換え処理)。そして、ONにした操作部材による操作によってモータを可変制御する(ステップS5)。すなわち、制御部では、常に後から操作された操作部材からの信号を優先処理するため、別途、両操作部材間で切り換え処理をする必要性がなく、操作部材の変更がスムーズに行えるようになる。
【0051】
そして、ON状態となっている操作部材が、釣り人の操作によってOFF位置に戻されると、再度、上記の処理が繰り返される(ステップS6;Yes)。
【0052】
上記の処理手順は一例を示したに過ぎず、例えば、2つの操作部材25,30については、いずれも一度OFF位置に戻さないと、別の操作部材が操作できないように制御しても良い。或いは、図12の処理手順に示すように、図11に示す処理手順のステップS10の操作部材の切り換え処理の前に、OFF状態にあった操作部材の操作によるモータ出力値が、現在のモータの出力値以上になるまで回転(回動)操作されないと、ステップS10のモータの切り換え処理を実行しないようにしても良い(ステップS8)。
【0053】
このようにすることで、操作部材の切り換え処理時において、それまで操作していた操作部材によるモータ制御が比較的高速な状態のとき、切り換え処理によって駆動モータの駆動速度が一旦落ち込むようなことがなく、モータの駆動速度がスムーズな状態で操作部材の切り換え処理が実行されるようになる。
【0054】
また、制御部100は、第1操作部材25による駆動モータの可変範囲と、第2操作部材30による駆動モータの可変範囲を異なるように制御可能にすることが好ましい。
【0055】
このような制御について、図13のグラフを参照して説明する。
図13は、制御部100において駆動モータ8を制御する手法を示しており、デューティ比と、各操作部材25,30の操作角度との関係を示したグラフである。通常の制御においては、制御部100では、各操作部材25,30の操作範囲内において、駆動モータ8の出力を0から連続的に可変させており、最大操作角度まで操作した際、駆動モータ8の回転速度を可変させるデューティ比の範囲を0%から100%まで連続的(段階的な変化でも良い)に可変するように制御を実施している。
【0056】
しかし、上記したように、第1操作部材25は、サミングしているスプールから近接した位置にあり、かつ操作径が小さいことから、僅かな操作量で、急激にモータ速度が上昇する可能性がある。したがって、第1操作部材25については、操作範囲内において、Max位置になった場合でも、デューティ比が100%より小さい値(図13では、50%に設定してある)の範囲内で可変制御(デューティ比0〜50%)するように構成する。
【0057】
このようなモータ制御によれば、例えば、手持ち状態において、仕掛けに魚が掛かって第1操作部材25を操作しても、誤って急速にモータ速度が上昇することがないため、口切れや仕掛けの切断といったトラブルを防止することが可能となる。
【0058】
或いは、第1操作部材25については、図14に示すように、前記制御部100において、第1操作部材25の操作範囲内において、駆動モータ8の出力を0から連続的に可変させると共に、同一の操作範囲で前記駆動モータ8の可変範囲を変更可能に制御するようにしても良い。すなわち、通常モードでは、(イ)に示すように、操作部材が初期位置にある状態(操作角度0°)から、最大操作角度(本実施形態では160°としてある)まで操作した際、駆動モータ8の回転速度を可変させるデューティ比の範囲を0%から100%まで連続的(段階的な変化でも良い)に可変するように制御を行う。そして、釣り人の好みにより、例えば、制御ケース15に設けられた操作ボタンを操作することで、デューティ比の範囲が可変するように制御を行う。すなわち、(ロ),(ハ)(ニ)…に示すように、デューティ比の範囲を任意に変更することで、同一の操作角度であっても、駆動モータ8の出力が急激に上昇することを防止することが可能となる。この結果、魚が掛かった場合に、急激に駆動モータ8の回転速度が急上昇することを防止することができ、口切れや仕掛けの切断などを防止することが可能となる。
【0059】
なお、図13及び図14では、各操作部材25,30の回転角度とデューティ比との関係を、説明上わかり易くするために直線の線形グラフとして示したが、実際には、操作角度の範囲内において、所定の角度ずつ複数段階(例えば0から30段階)で駆動速度が可変されるように制御されるため、両者の関係については非線形となる。
【0060】
図15から図17はそれぞれ第1操作部材の変形例を示しており、各図における(a)は制御ケース部分を示す平面図、各図における(b)は操作部材の断面図、そして、各図における(c)は操作部材の側面図である。
【0061】
上述したように、第1操作部材を略円筒形状に構成する場合、その形状については種々変形することが可能である。具体的には、回転操作可能であり、その操作表面部が、左右側板と制御ケースとの間でスプールを露出させる開口に面して、サミングしている親指をそのまま延ばして当接できるような形状であれば良い。例えば、図15に示す操作部材35は、回転軸35aが両軸支持されており、その中間部分が湾曲面によって収縮した鼓形状にすると共に、その周囲に、周方向に沿って連続して凹溝35bを形成している。このような構成では、親指の腹部がフィットし易いと共に、滑りが生じ難くなる。或いは、図16に示す操作部材45は、回転軸45aが両軸支持されており、その中間部分が湾曲面によって膨出した樽形状にすると共に、その周囲に、周方向に沿って連続して突起45bを形成している。このような構成では、親指の腹部が掛かり易くなって、滑り難く操作性の向上が図れるようになる。或いは、図17に示す操作部材55は、回転軸55aが両軸支持されており、円筒形状の表面の一部にレバー部55bを形成している。このような構成では、初期値(駆動モータの出力が0)となる位置を明確化することができ、また、置き竿時における揺れる船上においても、レバー部55bを摘んで操作できることから、操作性の向上が図れるようになる。
【0062】
なお、いずれの操作部材も、上述した実施形態と同様、その動作径(L1)は、第2操作部材30のレバー部30aの先端までの動作径(L2)より小さくなるように構成されている。
【0063】
次に、本発明の別の実施形態について説明する。なお、以下に説明する実施形態では、上述した実施形態と同一の部分については、同一の参照符号を付し、その詳細な説明については省略する。
図18は、本発明に係る魚釣用電動リールの第2の実施形態を示す図であり、(a)は平面図、(b)は第1操作部材を後方側から見た図、(c)は第2操作部材をハンドル側から見た図である。
【0064】
本実施形態では、制御ケース15の後端側の表面部に、スプール7の回転軸方向に沿ってスライド可能な第1操作部材部65を配設すると共に、右側板5Bの表面部に、前後方向に沿ってスライド可能な第2操作部材70を配設している。
【0065】
このように、第1操作部材及び第2操作部材については、その構成については、回転式や回動式に限定されることはなく、スライド方式にしても良い。また、このような構成においても、第1操作部材65の大きさ(高さL1で定義する)は、第2操作部材70の大きさ(高さL2で定義する)よりも小さく設定されており、両部材の操作性の向上を図っている。すなわち、第1操作部材65を大きくし過ぎると、逆に、手持ち操作する上でリール本体5を把持した際、操作の妨げになるため、第2操作部材70よりも小さく設定しておくことが好ましい。
【0066】
図19は、本発明に係る魚釣用電動リールの第3の実施形態を示す図であり、(a)は平面図、(b)は第1操作部材を後方側から見た図、(c)は第2操作部材をハンドル側から見た図である。
【0067】
本実施形態では、第2操作部材を、上述した第1の実施形態と同様、レバータイプとしたものである。本実施形態においても、第1操作部材65の大きさ(高さL1で定義する)は、第2操作部材30の大きさL2よりも小さく設定されている。
このように構成しても上記した実施形態と同様な作用効果を得ることが可能である。
【0068】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、駆動モータ8の出力を制御する操作部材をリール本体に2つ設けたことに特徴がある。すなわち、1つの操作部材は、手持ち状態で操作可能な構成とし、もう1つの操作部材は、置き竿時に容易に操作できるように構成されていれば良く、その形状、操作方法や操作方向などについては、上記した実施形態に限定されることなく、種々変形することが可能である。また、操作部材以外の構成については、上記した実施形態に限定されることはなく、種々変形することが可能である。
【符号の説明】
【0069】
1 魚釣用電動リール
5 リール本体
5A,5B 左右側板
6 手動ハンドル
7 スプール
8 駆動モータ
12 クラッチ機構
15 制御ケース
25,35,45,55,65 第1操作部材
30,70 第2操作部材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リール本体の左右側板間に設けられ、釣糸が巻回されるスプールと、
前記スプールを回転駆動する駆動モータと、
前記リール本体に配置され、前記駆動モータを制御する制御部を具備する制御ケースと、
釣竿とともに前記リール本体を把持保持した状態の手の親指が届く位置に配設され、前記駆動モータの出力を調整する第1操作部材と、
前記左右側板のいずれかに配設され、前記駆動モータの出力を調整する第2操作部材と、を有することを特徴とする魚釣用電動リール。
【請求項2】
前記第2操作部材は第1操作部材より大きく、指で摘むことが可能な摘み部を有することを特徴とする請求項1に記載の魚釣用電動リール。
【請求項3】
前記制御部は、第1操作部材による駆動モータの可変範囲と、第2操作部材による駆動モータの可変範囲を異なるように制御可能であることを特徴とする請求項1又は2に記載の魚釣用電動リール。
【請求項4】
前記第1操作部材は、回転式に構成されることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の魚釣用電動リール。
【請求項5】
前記第1操作部材は、略円筒形状に構成されることを特徴とする請求項4に記載の魚釣用電動リール。
【請求項6】
前記第1操作部材は、前記左右側板間において両軸支持されていることを特徴とする請求項4又は5に記載の魚釣用電動リール。
【請求項7】
前記第1操作部材は、可動角度θ1で回転操作可能であり、前記第2操作部材は可動角度θ2で回動操作可能なレバー式に構成され、θ1>θ2としたことを特徴とする請求項4から6のいずれか1項に記載の魚釣用電動リール。
【請求項8】
前記第1操作部材は、前記スプールの上方で左右側板間に配設されることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の魚釣用電動リール。
【請求項9】
前記制御部は、前記第1操作部材及び第2操作部材の操作において、後から操作した側からの信号を優先処理することを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の魚釣用電動リール。
【請求項10】
前記制御部は、前記第1操作部材の操作範囲内において前記駆動モータの出力を0から連続的に可変させると共に、前記第1操作部材の同一の操作範囲で前記駆動モータの可変範囲を変更可能であることを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載の魚釣用電動リール。
【請求項1】
リール本体の左右側板間に設けられ、釣糸が巻回されるスプールと、
前記スプールを回転駆動する駆動モータと、
前記リール本体に配置され、前記駆動モータを制御する制御部を具備する制御ケースと、
釣竿とともに前記リール本体を把持保持した状態の手の親指が届く位置に配設され、前記駆動モータの出力を調整する第1操作部材と、
前記左右側板のいずれかに配設され、前記駆動モータの出力を調整する第2操作部材と、を有することを特徴とする魚釣用電動リール。
【請求項2】
前記第2操作部材は第1操作部材より大きく、指で摘むことが可能な摘み部を有することを特徴とする請求項1に記載の魚釣用電動リール。
【請求項3】
前記制御部は、第1操作部材による駆動モータの可変範囲と、第2操作部材による駆動モータの可変範囲を異なるように制御可能であることを特徴とする請求項1又は2に記載の魚釣用電動リール。
【請求項4】
前記第1操作部材は、回転式に構成されることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の魚釣用電動リール。
【請求項5】
前記第1操作部材は、略円筒形状に構成されることを特徴とする請求項4に記載の魚釣用電動リール。
【請求項6】
前記第1操作部材は、前記左右側板間において両軸支持されていることを特徴とする請求項4又は5に記載の魚釣用電動リール。
【請求項7】
前記第1操作部材は、可動角度θ1で回転操作可能であり、前記第2操作部材は可動角度θ2で回動操作可能なレバー式に構成され、θ1>θ2としたことを特徴とする請求項4から6のいずれか1項に記載の魚釣用電動リール。
【請求項8】
前記第1操作部材は、前記スプールの上方で左右側板間に配設されることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の魚釣用電動リール。
【請求項9】
前記制御部は、前記第1操作部材及び第2操作部材の操作において、後から操作した側からの信号を優先処理することを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の魚釣用電動リール。
【請求項10】
前記制御部は、前記第1操作部材の操作範囲内において前記駆動モータの出力を0から連続的に可変させると共に、前記第1操作部材の同一の操作範囲で前記駆動モータの可変範囲を変更可能であることを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載の魚釣用電動リール。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2011−250705(P2011−250705A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−124866(P2010−124866)
【出願日】平成22年5月31日(2010.5.31)
【出願人】(000002495)グローブライド株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年5月31日(2010.5.31)
【出願人】(000002495)グローブライド株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】
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