説明

魚釣用電動リール

【課題】魚釣用電動リールの操作部は、操作のしやすさやリール本体のコンパクト化などが要望され、操作部の形状や配置に種々の提案されている。
【解決手段】電動リールは、スプールの後方に駆動モータに指操作による回動で駆動指示を与えるモータ操作部、スプールの側方にクラッチ機構のクラッチ連結・遮断のクラッチ操作部を配置し、リール本体を把持する手の指操作により、クラッチ操作、サミング操作及び釣糸巻上げ操作を連続的に行いスムーズな片手持ち操作及び両手持ち操作を実施する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動部位に対する指示機能を有する操作部を搭載する魚釣用電動リールに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、魚釣りに用いられている魚釣用電動リール(以下、電動リールと称する)においては、釣行を行う際に、釣糸の繰り出し、釣糸の巻上げ等の複数の異なった動作を行うために、それぞれに専用に設けられた操作部位を操作している。例えば、釣行を開始する際には、釣糸を繰り出すためにクラッチOFF操作部を操作して、クラッチを切ってスプールをフリー状態にする。また、仕掛けが着底又は、所望する位置に到達した際には、クラッチON操作部を操作して、クラッチを繋いで釣糸の繰り出しを停止させる。さらに、仕掛けを回収する又は、魚が掛かった場合には、駆動モータの駆動開始・停止又は、巻上げ速度の指示を行う巻上げ操作部などを操作している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−169700号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述した操作部は、リール本体の異なる位置に独立して設けられている。これらの配置や形状は、リール本体内の内部機構や操作のしやすさなどが考慮されている。
しかしながら、さらなる操作のしやすさや、リール本体のコンパクト化などが要望され、操作部の形状や配置に種々の提案がなされている。
そこで本発明は、リール本体に設けられる駆動部位に対して、操作のしやすさや小型化を実現する指示機能を有する操作部を搭載する魚釣用電動リールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成する本発明に従う実施形態による魚釣用電動リールは、前方に繰り出した釣糸を巻上げて巻回するスプールと、該スプールを回転させて、前記釣糸の巻上げを行うための駆動モータと、前記スプールの後方で両端が回動可能に軸支され、前記スプールの軸心よりも低い位置に回動する軸心が配置され、前記駆動モータの駆動を指操作による回動で指示するモータ操作部と、前記スプールの側方に設けられ、前記駆動モータの駆動力を前記スプールに伝搬又は遮断するクラッチ機構と、前記クラッチ機構に連結して、前記モータ操作部の回動する軸心より上方に配置され、クラッチの伝搬又は遮断を指示するクラッチ操作部と、を具備する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、リール本体に設けられる駆動部位に対して、操作のしやすさや小型化を実現する指示機能を有する操作部を搭載する魚釣用電動リールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】図1(a)は、本発明の第1の実施形態に係る魚釣用電動リールの上方から見た全体的な外観構成を示す図、図1(b)は、電動リールを後方から見た全体的な外観構成を示す図である。
【図2】図2は、第1の実施形態のクラッチ機構の構成例を示す図である。
【図3】図3は、図1に示すA−A断面の電動リールの内部構造を示す断面図である。
【図4】図4(a)は、第2の実施形態に係る電動リールを上方から見た全体的な外観構成を示す図、図4(b)は、電動リールを後方から見た全体的な外観構成を図である。
【図5】図5は、第2の実施形態のクラッチ機構の構成例を示す図である。
【図6】図6(a)は、図4に示すB−B断面の電動リールの内部構造におけるクラッチがON状態を示す断面図、図6(b)は、電動リールにおけるクラッチがOFF状態を示す断面図である。
【図7】図7(a)は、第3の実施形態に係る電動リールを上方から見た全体的な外観構成を示す図、図7(b)は、電動リールを後方から見た全体的な外観構成を図である。
【図8】図8は、第3の実施形態に係る電動リールを片手で把持している状態を示す図である。
【図9】図9は、第3の実施形態のクラッチ機構の構成を示す図である。
【図10】図10(a)は、図7(a)に示すC−C断面の電動リールの内部構造におけるクラッチがON状態を示す断面図、図10(b)は、電動リールにおけるクラッチがOFF状態を示す断面図である。
【図11】図11(a)は、第4の実施形態に係る電動リールを上方から見た全体的な外観構成を示す図、図11(b)は、電動リールを後方から見た全体的な外観構成を図である。
【図12】図12は、第4の実施形態のクラッチ機構の構成を示す図である。
【図13】図13は、図11(a)に示すD−D断面の電動リールの内部構造を示す断面図である。
【図14】図14は、第5の実施形態に係る電動リールを上方から見た全体的な外観構成を示す図である。
【図15】図15は、クラッチ機構の構成を示す図である。
【図16】図16は、図14に示すE−E断面の電動リールの内部構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。
[第1の実施形態]
図1(a)は、本発明の第1の実施形態に係る魚釣用電動リール(以下、電動リールと称する)を上方から見た全体的な外観構成を示す図、図1(b)は、電動リールを後方から見た全体的な外観構成を図である。図2は、クラッチ機構の構成を示す図である。図3は、図1に示すA−A断面の電動リールの内部構造を示す断面図である。尚、以下の各実施形態における説明でリール本体において、釣糸が繰り出される矢印mの方向を前方(第1の方向)とし、その反対の矢印nの方向(第2の方向)を後方とする。
【0009】
電動リール1は、リール本体2内に、スプール7に釣糸(又は道糸)を巻取るための駆動モータ5を含む駆動機構6と、駆動モータ5からスプール7への駆動力の伝達の連結又は遮断を行うクラッチ機構10とが図示しないフレームに収容され、外装部により覆われている。さらに、リール本体2の側方の一方には、スプール7を手動で回転させる手巻き用ハンドル12が設けられ、ハンドル12の基部側にはドラグ調整用ノブ13が設けられている。
【0010】
また、リール本体2でスプール7を露呈させる開口領域の側端で、ハンドル12の回転軸の後方には、クラッチON/OFF操作部11が設けられている。このクラッチON/OFF操作部(以下、クラッチレバーと称する)11は、片持ち支持された回動するレバー形状を成し、図2に示すクラッチ機構10による駆動モータ5からスプール7への駆動力の伝達の連結(クラッチON)又は遮断(クラッチOFF)を指示する。
【0011】
本実施形態では、クラッチレバー11が上方位置(クラッチON)に上がっていれば駆動力が伝達され、下方位置(クラッチOFF)に下がっていれば駆動力が遮断されている。また、ハンドル12とクラッチレバー11は、クラッチ機構10に対して相関関係を有し、クラッチレバー11を押し下げると係止(ロック)され、クラッチが切られる。この時、スプール7がフリー状態となり釣糸が繰り出される。また、クラッチレバー11を指で操作する又はハンドル12を回転させると、係止が解除されてクラッチが連結する。尚、クラッチレバー11が下方位置の時に、ハンドル12が回転されると、係止状態が解除されて、クラッチレバー11が上方位置に戻るように復帰する。
【0012】
リール本体2の上面には、表示画面カバー3aが配置され、その後方にはメニュー選択及び各種設定を行うための複数の操作ボタン4が配置されている。
さらに、スプール7の後方には、駆動モータ5に対して釣糸の巻上げ開始・停止及び巻上げ速度を指示するモータ操作部8が設けられている。
【0013】
このモータ操作部8は、操作指示のために指が当接する円筒形状を成す当接領域(モータ操作部材)を有する回動型スイッチである。モータ操作部8は、両端が図示しないフレームに回動可能に軸支され、一端には角度センサ(ポテンショメータ等)9が連結されている。指の曲げ伸ばし動作により、モータ操作部8を回動させて、角度センサ9の角度をリニアに変化させることで、その回動の角度に応じた角度センサ9の出力により、駆動モータ4による釣糸の巻上げ開始・停止及びリニアな巻上げ速度を指示する。モータ操作部8及びクラッチレバー11は、硬質樹脂や耐腐食性の金属又は、表面が耐腐食処理された金属により形成される。
【0014】
また、リール本体2の上部には、前述した表示画面カバー3a及び操作ボタン4等が設けられた箱形状の部材(箱部材)からなる制御ケース17が取り付けられている。この制御ケース17内には、液晶表示部3及び、図示していないが、それぞれの構成部位を駆動制御するための種々のプログラムや設定情報等を記憶する不揮発性固体記憶素子:ROM(Read Only Memory)と、書き換え可能で一時記憶領域として利用する揮発性固体記憶素子:RAM(Random Access Memory)と、リール全体を制御する演算処理デバイス例えば、CPU(Central Processing Unit)からなる制御部とを備えている。
【0015】
制御ケース17の下方には、駆動モータ5が配置され、さらにスプール7の前方には、スプール7に釣糸が均一な高さとなるように巻き付けを行うレベルワインド機構18が設けられている。また、リール本体2の下部には、釣竿に装着するための竿取付部14と、図示しない電源ケーブルが接続される電源用コネクタ15が設けられている。尚、本実施形態では、駆動モータ5をスプール7の前方に配置した例であったが、この構成に限定されるものではなく、公知のスプール内にモータを配置する方法を採用してもよい。
【0016】
図3に示すように、本実施形態のモータ操作部8は、回動する軸心がスプール7の軸心よりも低い位置に配置される。また、図1(b)に示すように、前述したクラッチレバー11は、モータ操作部8の軸心より上方に配置されている。
【0017】
以上のように、本実施形態における構成によれば、例えば、釣竿及びリール本体を把持する手の親指操作により、クラッチレバー11のクラッチ操作、スプール7のサミング操作及び、モータ操作部8の釣糸巻上げ操作を連続的に行う片手持ち操作、所謂ワンハンド操作を容易に実施することができる。
【0018】
さらに、モータ操作部8の回動する軸心がスプール7の軸心よりも低い位置に配置されることにより、把持を行う際のパーミング性が改善される。また、クラッチレバー11の回動軸支位置がモータ操作部8の軸心より上方に配置されていることにより、操作の容易性が改善される。
【0019】
モータ操作部8は、円筒形状で両端がフレームに取り付けられているため、一箇所が回動可能に取り付けられている片持ちタイプのレバー構造に比べて、強度が高くなり、過負荷や衝撃に対して破損し難くなっている。特に、巻き上げ操作中に突然魚が掛かってくる場合においても、上側からモータ操作部を抑えている手の親指で十分耐えることが可能となり、そのまま、魚の引きに応じた巻取り操作への移行が可能となる。また、両手操作においても、釣竿及びリール本体を把持する一方の手の親指操作により、サミング操作及びモータ操作を行い、他方の手で、スプール7のクラッチ操及ハンドル12の手巻き操作を行うことで、スムーズな釣行操作を実現することができる。
【0020】
[第2の実施形態]
図4(a)は、第2の実施形態に係る電動リールを上方から見た全体的な外観構成を示す図、図4(b)は、電動リールを後方から見た全体的な外観構成を図である。図5は、クラッチ機構の構成を示す図である。図6(a)は、図4に示すB−B断面の電動リールの内部構造におけるクラッチがON状態を示す断面図、図6(b)は、電動リールにおけるクラッチがOFF状態を示す断面図である。尚、本実施形態の構成部位に置いて、前述した第1の実施形態と同等の構成部位には同じ参照符号を付してその説明は省略する。
【0021】
本実施形態は、前述したクラッチON/OFF操作部11が、クラッチOFF操作部22とクラッチON操作部23とに機能別に設けられた構成である。
クラッチOFF操作部22は、前述したと同様な円筒形状を成すモータ操作部21と隣接する位置に設けられる。クラッチOFF操作部22は、モータ操作部21の下面側に沿って後方に延出するつば部を有するレバー形状を成し、クラッチ機構24から延出して前記モータ操作部21の下方を迂曲する昇降移動可能な一対の支持アーム25のそれぞれの端部に取り付けられている。一対の支持アーム25は、降下移動によりクラッチをOFF(遮断)し、クラッチがON(連結)されると、上昇して復帰する。本実施形態では、クラッチOFF操作部22と支持アーム25は、モータ操作部21を迂曲するように設けられている。尚、この例では、一対の支持アームに保持される構成であるが、他にも、例えば、対向するフレーム間でクラッチ機構24から延出した1本の支持アームが屈曲して、一方のフレームから延び出て、スプールの後を通って、他方のフレームまで到達し、L字の先端部分が移動可能に保持されるL字型の支持アームにも適用することができる。
【0022】
クラッチOFF操作部22を押し下げることで、支持アーム25が下がりクラッチがOFFされて、駆動モータ5からスプール7に伝達される駆動力が遮断され、スプール7がフリー状態となる。
また、クラッチON操作部23は、スプール7が露呈するリール本体2の開口領域の一方の側端に、昇降する押しボタンの形状を成して設けられている。クラッチON操作部23は、クラッチ機構24に連結され、押し込みによりクラッチがONして、駆動モータ5からスプール7に駆動力が伝達される。
【0023】
これらのクラッチOFF操作部22とクラッチON操作部23は、クラッチ機構24に対して相関関係を有し、クラッチOFF操作部22を押し下げて係止させた際に、クラッチが切られると共に、クラッチON操作部23の上部がポップアップして突出される。反対に、突出するクラッチON操作部23の上部を押し込むと、クラッチが繋がれると共に、クラッチOFF操作部22が解除されて上方に移動して戻る。尚、クラッチが切られた状態の時に、手動ハンドル12を回してクラッチを繋いだ場合には、クラッチON操作部23の上部が引き込まれ、クラッチOFF操作部22が解除されて戻る。
【0024】
モータ操作部21は、駆動モータ5に対して釣糸の巻上げ開始・停止及び巻上げ速度を指示する。モータ操作部21は、回動する軸心がスプール7の軸心と同等又は低い位置に配置される。
本実施形態においては、モータ操作部21及びクラッチOFF操作部22は、近接して配置されているため、モータ操作部21は、リール本体2を把持したまま、その手の親指の曲げ伸ばし動作によりモータの駆動調整を行い、その指先にてクラッチOFF操作部22を押し下げて、クラッチをOFFにする。
【0025】
本実施形態の電動リール2をコマセ釣りに適用した場合、例えば、左手でリール本体と釣竿を把持し、仕掛け及びコマセかごを投入する際に、その親指の指先部分によりクラッチOFF操作部22を押し下げて係止させると、クラッチがOFFされて、スプール7がフリー状態となる。仕掛けが海底に向かい下降を開始して、状況によっては、その親指を伸ばして、スプール7に指の腹を宛がいサミング操作を行う。
【0026】
その後、着底した時又は釣糸が所望する繰り出し距離になった時に、左手の親指を側方に移動させて、その指先でクラッチON操作部23を押し込む又は、右手で手動ハンドル12を回して、クラッチを繋ぎ、繰り出しを停止させて、棚取りを行う。魚が掛かった場合又は、仕掛けを回収する場合には、左手の親指によりモータ操作部21を回動させて巻上げ駆動モータ5を低速から駆動させて釣糸の巻上げを行う。また途中で、魚の引き具合に合わせて、親指を曲げ伸ばしすることでモータ操作部21を回動させて、釣糸の巻上げ速度を調整する。
【0027】
以上のように、本実施形態の電動リール1は、操作部位の配置と形状により、リール本体と釣竿を把持する片手により釣行における主たる、仕掛けの投入動作及び釣糸の巻上げ動作をスムーズに実施することができる。また、両手操作においても、クラッチ操作、サミング操作及び巻上げ操作をいずれの手でも担当することができるため、状況に合わせてスムーズに釣行を行うことができる。
【0028】
[第3の実施形態]
図7(a)は、第3の実施形態に係る電動リールを上方から見た全体的な外観構成を示す図、図7(b)は、電動リールを後方から見た全体的な外観構成を図である。図8は、第3の実施形態に係る電動リールを片手で把持している状態を示す図である。図9は、クラッチ機構の構成を示す図である。図10(a)は、図7(a)に示すC−C断面の電動リールの内部構造におけるクラッチがON状態を示す断面図、図10(b)は、電動リールにおけるクラッチがOFF状態を示す断面図である。尚、本実施形態の構成部位に置いて、前述した第2の実施形態と同等の構成部位には同じ参照符号を付してその説明は省略する。
【0029】
本実施形態は、クラッチOFF操作の機能と駆動モータの巻上げ操作の機能を統合した複合機能操作部31が設けられている。具体的には、クラッチOFF操作部における一対の支持アーム25間にモータ操作部(21)を設けた構成である。また、前述したクラッチON操作部23に加えて、リール本体2の開口領域におけるハンドル12の反対側のスプール7の上方には、第2のクラッチON操作部32が設けられている。
【0030】
複合機能操作部31は、スプール7の後方に設けられた操作指示のために指を接触させて回動する円筒形状を成す当接領域(モータ操作部材)を有する回動型スイッチである。当接領域は、両端より一段、径が大きく形成され、その表面には滑り止め用の溝又は凹凸が形成されている。
複合機能操作部31は、駆動モータの巻上げ操作の機能として、図9に示すように、両端が一対の支持アーム25に回動可能に支持され、図7(a)に示すように、円筒形の内部中央には角度センサ9が収容されている。
【0031】
角度センサ9は、一方の支持アーム25の支持部材に固定され、他方から回転可能に設けられた支持部材にセンサ部分が連結している。さらに、回転可能な支持部材と複合機能操作部31とが一体的に係合されているため、当接領域を指操作で回動させると、一体的に角度センサ9に角度変化を与える。この角度変化により、駆動モータ5に対して釣糸の巻上げ開始・停止及び巻上げ速度を指示する。
【0032】
さらに、複合機能操作部31は、クラッチOFF操作の機能として、一対の支持アーム25により支持される。これらの支持アーム25は、クラッチ機構24から昇降可能に延出するアーム形状を成し、上方位置(クラッチON)に上がっていれば、駆動モータ5の駆動力がスプール7に伝達され、下方位置(クラッチOFF)に下がっていれば駆動力が遮断される。従って、複合機能操作部31を指で押し下げて係止させると、クラッチがOFFされ、スプール7がフリー状態となる。尚、図示していないが、複合機能操作部31を下方位置で係止させる何らかの係止機構を有している。支持アーム25は、回動の軸心がスプール7の軸心と同じ高さ位置又はこれよりも低い位置に配置される。
【0033】
さらに、複合機能操作部31は、第2のクラッチON操作部32と連結部材33により連結され、一体的に移動する。図10(a)に示すように、第2のクラッチON操作部32は、クラッチON時には、スプール7の斜め上方に位置する。クラッチのOFF操作により複合機能操作部31が押し下げられると、一体的に、第2のクラッチON操作部32もスプール7縁の円周に沿って下方に移動する。この時、図8に示すように、下方位置にある第2のクラッチON操作部32は、リール本体2を保持する手の親指に対向している。
【0034】
この親指で第2のクラッチON操作部32を指で操作すると、複合機能操作部31の係止状態が解除されて、下方位置から上方位置に復帰し、クラッチOFFからクラッチONに切り換えられる。また、前述したように、ポップアップしているクラッチON操作部23を押し込む又はハンドル12を回転させることにより、クラッチOFFからクラッチONの切り換えてもよい。
【0035】
尚、複合機能操作部31に対して、クラッチON操作部23、第2のクラッチON操作部32及びハンドル12は、クラッチ機構10において相関関係を有している。即ち、複合機能操作部31を押し下げて係止すると、クラッチが遮断され、第2のクラッチON操作部32が一体的に下方に移動し、且つクラッチON操作部23は上部がポップアップする。さらに、クラッチON操作部23を押し込む、又は第2のクラッチON操作部32を指で操作すると、係止が解除された複合機能操作部31が上方位置に戻り、クラッチが連結する。また、クラッチのOFF時にハンドル12を回転させると、クラッチが連結すると共に、クラッチON操作部23が沈み込み、複合機能操作部31及び第2のクラッチON操作部32が上方位置に戻り、駆動モータ5からスプール7に駆動力が伝達される。
【0036】
本実施形態の第2のクラッチON操作部32は、リール本体2の開口領域の内側面に張り出す突起形状であったが、これに限定されることはなく、例えば、スプール7の上方で両側のフレーム(リール本体のフレーム)に掛け渡す形状であってもよい。この形状の場合、サミング操作を妨げないように、例えば、クラッチON時は、前方の制御ケース17の下面側に退避し、複合機能操作部31が押し下げられたクラッチOFF時には、制御ケース17の後方近傍に出現するように構成してもよい。
【0037】
また、第2のクラッチON操作部32は、制御ケース17のスプール7側に露呈するように張り出して設けて、先端部分を上下移動させて係止又は係止解除する構成でもよい。
尚、本実施形態のような第2のクラッチON操作部32を設けた場合、クラッチON操作部23は省略してもよいが、置き竿の場合の操作を考慮すると設けておいた方が好ましい。
【0038】
以上説明した本実施形態の電動リールによれば、クラッチOFF操作の機能と駆動モータの巻上げ操作の機能を統合した複合機能操作部31を用いることにより、リール本体2に設けている操作部位の数を減少させることができ、小型化及び軽量化に寄与することができる。さらに、ユーザにとっては、例えば、仕掛けの投入から回収までを、指の押下及び曲げ伸ばしだけで連続して、スムーズに操作を行うことができ、釣行に掛かる負荷が軽減される。
【0039】
[第4の実施形態]
図11(a)は、第4の実施形態に係る電動リールを上方から見た全体的な外観構成を示す図、図11(b)は、電動リールを後方から見た全体的な外観構成を図である。図12は、クラッチ機構の構成を示す図である。図13は、図11(a)に示すD−D断面の電動リールの内部構造を示す断面図である。尚、本実施形態の構成部位に置いて、前述した第3の実施形態と同等の構成部位には同じ参照符号を付してその説明は省略する。
【0040】
本実施形態は、クラッチOFF操作の機能と駆動モータの巻上げ操作の機能を統合した複合機能操作部40がスプール7の後方に設けられている。また、リール本体2の開口領域におけるハンドル12側には前述したクラッチON操作部23が設けられている。
【0041】
複合機能操作部40は、モータ操作部41とクラッチOFF操作部42とが、一対の支持アーム25間を横架して一軸上に並設されて構成される。クラッチOFF操作部42は、上面に平面42aを有する断面が半円形の筒形状を成し、中空の内部には、角度センサ9を収容して、一方の支持アーム25に固定されるように軸止される押下用操作部材である。クラッチOFF操作部42の平面42aは、複合機能操作部40を押し下げる際に、指を接触させる面であり、滑り止め用に複数の溝又は凹凸が設けられている。
【0042】
モータ操作部41は、操作指示のために指が当接する円筒形状を成す当接領域(モータ操作部材)を有する回動型スイッチである。その円筒形状の一端が他方の支持アーム25に回転可能に軸支され、他端は角度センサ9の回動するセンサ部分に嵌合し、且つクラッチOFF操作部42に回動可能に連結されている。
【0043】
一対の支持アーム25は、クラッチ機構44からガイド溝45に沿って昇降可能に延出するアーム形状を成し、上方位置(クラッチON)に上がっていれば、駆動モータ5の駆動力がスプール7に伝達され、下方位置(クラッチOFF)に下がっていれば駆動力が遮断される。
【0044】
従って、複合機能操作部40のクラッチOFF操作部42を指で押し下げて係止させると、クラッチがOFFされ、スプール7がフリー状態となる。また同時に、クラッチON操作部23の上部がポップアップする。尚、図示していないが、複合機能操作部31を下方位置で係止させる何らかの係止機構を有している。複合機能操作部40の回動の軸心は、スプール7の軸心と同じ高さ位置又はこれよりも低い位置に配置される。
【0045】
以上説明した本実施形態の電動リールによれば、クラッチOFF操作の機能と駆動モータの巻上げ操作の機能を統合した複数の機能を有する複合機能操作部40を用いることにより、リール本体2に設けられている操作部位の数を減少させることができ、小型化及び軽量化に寄与することができる。
【0046】
さらに、複合機能操作部40を押し下げる際に、モータ操作部41に接触せずにクラッチOFF操作部42の上面42aを指で押し下げることができ、不用意に、モータ操作部41を回動させることなく、巻上げを開始させてしまう誤操作が防止できる。
【0047】
[第5の実施形態]
図14は、第5の実施形態に係る電動リールを上方から見た全体的な外観構成を示す図、図15は、クラッチ機構の構成を示す図である。図16は、図14に示すE−E断面の電動リールの内部構造を示す断面図である。尚、本実施形態の構成部位に置いて、前述した第1の実施形態と同等の構成部位には同じ参照符号を付してその説明は省略する。
【0048】
本実施形態は、クラッチOFF操作の機能と駆動モータの巻上げ操作の機能を統合した複合機能操作部51がスプール7の後方に設けられている。また、リール本体2の開口領域におけるハンドル12側には、前述したクラッチON操作部23が設けられている。
【0049】
複合機能操作部51は、両端が一対の支持アーム25に固定される中空の角柱形状を成している。複合機能操作部51は、駆動モータ5の巻上げ操作の機能として、内部には摺動抵抗器を含む操作部材52が設けられ、上面には、スライドボタン53が配置されている。スライドボタン53は、スライド移動による指示信号の電圧変化により、駆動モータ5に対して釣糸の巻上げ開始・停止及び巻上げ速度を指示する。本実施形態のスライドボタン53は、例えば、左右に直線的にスライド移動する構成として、左端位置をOFF位置とし、指操作で右側に移動するとONして、以降徐々に巻上げ速度が速くなるように設計される。
【0050】
また、複合機能操作部51は、クラッチOFF機能を有している。一対の支持アーム25は、クラッチ機構54から昇降可能に延出するアーム形状を成し、上方位置(クラッチON)に上がっていれば、駆動モータ5の駆動力がスプール7に伝達され、下方位置(クラッチOFF)に下がっていれば駆動力が遮断される。
【0051】
複合機能操作部51を指で押し下げて係止させると、クラッチがOFFされ、スプール7がフリー状態となる。また同時に、クラッチON操作部23の上部がポップアップする。尚、図示していないが、複合機能操作部31を下方位置で係止させる何らかの係止機構を有している。複合機能操作部51の上面は、スプール7の軸心と同じ高さ位置又はこれよりも低い位置に配置される。
【0052】
以上説明した本実施形態の電動リールによれば、クラッチOFF操作の機能と駆動モータの巻上げ操作の機能を統合した複数の機能を有する複合機能操作部を用いることにより、リール本体に露呈している操作部位の数を減少させることができ、小型化及び軽量化に寄与することができる。さらに、複合機能操作部51を押し下げる際に、スライドボタン53のスライド方向が押し下げる方向と直交しているため、押し下げ時に不用意にスライドボタン53に指が掛かっていたとしても移動させることがなく、巻上げを開始させてしまう誤操作が防止できる。
【0053】
以上説明した実施形態においては、以下の発明を含んでいる。
これらの発明は、電動リールにおいて、釣行を行う際に、釣糸の繰り出し、釣糸の巻上げ等の複数の異なった動作を行うために、それぞれに専用に設けられた操作部位を操作している。これらの操作部位の機能を統合した複合機能操作部を提示し、リール本体のコンパクト化、操作の簡易化及び操作のスムーズな連続性を実現する。
1.前方に繰り出した釣糸を巻上げて巻回するスプールと、
前記スプールを回転させて、前記釣糸の巻上げを行うための駆動モータと、
前記駆動モータの駆動力を前記スプールに伝搬又は遮断するクラッチ機構と、
前記スプールの側方に設けられ、前記クラッチ機構に対して前記駆動モータの駆動力を前記スプールに伝搬させる指示を行うクラッチON操作部と、
前記スプールの後方に配置され、前記クラッチ機構から延出する昇降移動によりクラッチを遮断する一対の支持アームと、両端が前記一対の支持アーム間を連結して回動可能に軸支され、指操作による回動で前記駆動モータの駆動を指示するモータ操作部材と、を備える複合機能操作部と、
を具備することを特徴とする魚釣用電動リール。(第3の実施形態)
2.前方に繰り出した釣糸を巻上げて巻回するスプールと、
前記スプールを回転させて、前記釣糸の巻上げを行うための駆動モータと、
前記駆動モータの駆動力を前記スプールに伝搬又は遮断するクラッチ機構と、
前記スプールの後方に配置され、前記クラッチ機構から延出する昇降移動によりクラッチを遮断する一対の支持アームと、
前記支持アームの一方に軸止される押下用操作部材と、前記支持アームの他方に回動可能に軸支されて指操作による回動で前記駆動モータの駆動を指示するモータ操作部材と、を前記一対の支持アーム間を横架して一軸上に並設する複合機能操作部と、
前記スプールの側方に設けられ、前記複合機能操作部と連結して一体的に前記スプールの外周に沿って移動し、前記クラッチ機構に対して前記駆動モータの駆動力を前記スプールに伝搬させる指示を行うクラッチON操作部と、
を具備することを特徴とする魚釣用電動リール。(第4の実施形態)
3.前方に繰り出した釣糸を巻上げて巻回するスプールと、
前記スプールを回転させて、前記釣糸の巻上げを行うための駆動モータと、
前記駆動モータの駆動力を前記スプールに伝搬又は遮断するクラッチ機構と、
前記スプールの側方に設けられ、前記クラッチ機構に対して前記駆動モータの駆動力を前記スプールに伝搬させる指示を行うクラッチON操作部と、
前記スプールの後方に配置され、前記クラッチ機構から延出する昇降移動によりクラッチを遮断する一対の支持アーム間に、両端を連結して軸止され、指操作によるスライド移動で前記駆動モータの駆動を指示するモータ操作部材を備える複合機能操作部と、
を具備することを特徴とする魚釣用電動リール。(第5の実施形態)
【符号の説明】
【0054】
1…電動リール、2…リール本体、3…液晶表示部、3a…表示画面カバー、4…操作ボタン、5…駆動モータ、6…駆動機構、7…スプール、8…モータ操作部、9…角度センサ、10…クラッチ機構、11…クラッチON/OFF操作部(クラッチレバー)、12…ハンドル、13…ドラグ調整用ノブ、14…竿取付部、15…電源用コネクタ、17…制御ケース、18…レベルワインド機構、21…モータ操作部、22…クラッチOFF操作部、23…クラッチON操作部、24…クラッチ機構、25…支持アーム、31…複合機能操作部、32…第2のクラッチON操作部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前方に繰り出した釣糸を巻上げて巻回するスプールと、
前記スプールを回転させて、前記釣糸の巻上げを行うための駆動モータと、
前記スプールの後方で両端が回動可能に軸支され、前記スプールの軸心よりも低い位置に回動する軸心が配置され、前記駆動モータの駆動を指操作による回動で指示するモータ操作部と、
前記スプールの側方に設けられ、前記駆動モータの駆動力を前記スプールに伝搬又は遮断するクラッチ機構と、
前記クラッチ機構に連結して、前記モータ操作部の回動する軸心より上方に配置され、クラッチの伝搬又は遮断を指示するクラッチ操作部と、
を具備することを特徴とする魚釣用電動リール。
【請求項2】
前方に繰り出した釣糸を巻上げて巻回するスプールと、
前記スプールを回転させて、前記釣糸の巻上げを行うための駆動モータと、
前記スプールの後方で、両端が回動可能に軸支され、前記駆動モータの駆動を指操作による回動で指示するモータ操作部と、
前記駆動モータの駆動力を前記スプールに伝搬又は遮断するクラッチ機構と、
前記スプールの側方に設けられ、前記クラッチ機構に対して前記駆動モータの駆動力を前記スプールに伝搬させる指示を行うクラッチON操作部と、
前記クラッチ機構から延出して前記モータ操作部の下方を迂曲する昇降移動可能な一対の支持アーム間に連結して前記モータ操作部に近接配置され、前記スプールへの前記駆動モータの駆動力を遮断するクラッチOFF操作部と、
を具備することを特徴とする魚釣用電動リール。
【請求項3】
前記モータ操作部は、角度センサが連結され、
回動の角度に応じた前記角度センサの出力により、前記駆動モータに対して釣糸の巻上げ開始・停止及び巻上げ速度を指示することを特徴とする請求項1又は2に記載の魚釣用電動リール。
【請求項4】
前記クラッチOFF操作部における、前記一対の支持アーム間を連結する部材として、前記モータ操作部を回動可能に軸支し、
押し下げ操作によるクラッチOFF機能と、回動操作による前記駆動モータの巻上げ操作の機能とを有することを特徴とする請求項2に記載の魚釣用電動リール。
【請求項5】
前記モータ操作部とクラッチ操作部とが、前記一対の支持アーム間を横架して一軸上に並設されて一体的に構成されることを特徴とする請求項2に記載の魚釣用電動リール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2013−21935(P2013−21935A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−157074(P2011−157074)
【出願日】平成23年7月15日(2011.7.15)
【出願人】(000002495)グローブライド株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】