魚釣用電動リール
【課題】スプールのサミング操作から釣糸巻き取り操作へと至る一連の操作を、リール本体を握持する手の指でスムーズに行うことができる魚釣用電動リールを提供する。
【解決手段】本発明に係る魚釣用電動リールは、リール本体5の左右の側板5A,5B間に設けられ、釣糸が巻回されるスプール7と、リール本体5に設けられ、スプール7を回転駆動する駆動モータと、駆動モータの出力を調整する操作部材30とを有している。操作部材30は、スプール7のフランジ7bの外周近傍における左右の側板5A,5Bのいずれか一方の内側壁部に変位可能に設けられている。
【解決手段】本発明に係る魚釣用電動リールは、リール本体5の左右の側板5A,5B間に設けられ、釣糸が巻回されるスプール7と、リール本体5に設けられ、スプール7を回転駆動する駆動モータと、駆動モータの出力を調整する操作部材30とを有している。操作部材30は、スプール7のフランジ7bの外周近傍における左右の側板5A,5Bのいずれか一方の内側壁部に変位可能に設けられている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は魚釣用電動リールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、魚釣用電動リールは、主に深場の釣りに適用させるべく、仕掛けの放出から巻き取りに至るまで、釣竿を船縁に装着された竿掛けに置いたままの状態で行えるように構成されたものが多いが、最近では、手持ち状態での操作が行い易いように工夫されたものが知られている。
【0003】
例えば、魚釣用電動リールのスプールを巻き取り操作する(モータ出力を連続的に可変操作する)ための操作部材を、様々な位置に配置することが知られている。例えば、特許文献1には、制御ケースの上面から円板状の回転摘み(操作部材)の一部を露出させ、上方から親指を押し付けながら回転操作することで、モータ出力を連続的に可変させる構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−92959号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記したように、最近の魚釣用電動リールでは、ルアーフィッシングに用いられる魚釣用(ベイトキャスティング)リールと同様、好ましくは片手による手持ち状態で操作することが可能なタイプも望まれているが、従来のモータ出力を調整する操作部材の配置を工夫した魚釣用電動リールでは、操作性の面でさらに改良すべき余地がある。具体的には、単なる仕掛けの上げ下ろしのスピーディさは勿論のこと、特に、「仕掛け落下」、「サミング(仕掛け落下速度調整)」、「待機」、「シャクリ操作」、「フッキング」、「釣糸巻き取り操作」などの一連の操作を釣竿と共にリール本体を握持している手で違和感なく容易に行えることが、魚釣用電動リールの小型化に加えて、操作面において要望されている。
【0006】
しかしながら、上記した従来のタイプの魚釣用電動リールでは、これらの一連の操作を手持ち状態で行うことが難しい。すなわち、特許文献1に開示される構成では、サミング状態から釣糸巻き取り操作を行う場合、サミングしている親指を、一旦、スプールフランジや釣糸巻回面から上方に離間させて、スプール上方の側板間上面に配置されている前記操作部材へと移動させる必要があるため、操作のスムーズ性に欠ける。
【0007】
本発明は、上記した問題に着目してなされたものであり、スプールのサミング操作から釣糸巻き取り操作へと至る一連の操作を、リール本体を握持する手の指でスムーズに行うことができる魚釣用電動リールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、リール本体の左右の側板間に設けられ、釣糸が巻回されるスプールと、前記リール本体に設けられ、スプールを回転駆動する駆動モータと、前記駆動モータの出力を調整する操作部材とを有する魚釣用電動リールにおいて、前記スプールのフランジ外周近傍における前記側板のいずれか一方の内側壁部に前記操作部材を変位可能に設けたことを特徴とする。
【0009】
この請求項1に記載の発明によれば、スプールのフランジ外周近傍における側板のいずれか一方の内側壁部に操作部材が変位可能に設けられているため、スプールのサミング操作から釣糸巻き取り操作へと至る一連の操作を、リール本体を握持する手の指でスムーズに行うことができる。一般に、リール本体を掌で保持しながらスプール(フランジ外周や釣糸巻回部など)をサミング操作する親指は、スプールの回転軸(スプール軸)に対して斜めに位置した状態で当接されるのが自然である。本構成のように、モータ出力を調整する操作部材をスプールのフランジ外周近傍における側板の内側側壁に変位可能に設ければ、サミング操作する親指をその斜めに位置したままの状態で前方に移行させるだけで(スプールのサミング状態から無理のない親指の移行操作で)モータをスムーズに駆動操作できる。
【0010】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記操作部材は、スプールをサミング操作する手の親指で操作可能であることを特徴とする。
【0011】
この請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明と同様の作用効果が得られるとともに、操作部材は、スプールをサミング操作する手の親指で操作可能であるため、スプールのサミング操作から釣糸巻き取り操作へと至る一連の操作を、リール本体を握持する手の指で、特にサミングしている親指をスプールフランジや釣糸巻回面から完全に離間させることなく、スムーズに行うことも可能になる。なお、本構成において、「スプールをサミング操作する手の親指で操作部材を操作可能」とは、少なくとも操作部材の操作し始めの時点で、サミングしている親指をスプールフランジや釣糸巻回面から上方に離間させることなく操作できることを意味する。
【0012】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の発明において、前記操作部材は、前記スプールの回転軸をほぼ中心とする円弧状の経路に沿ってスライド操作可能であることを特徴とする。
【0013】
この請求項3に記載の発明によれば、請求項1または請求項2に記載の発明と同様の作用効果が得られるとともに、操作部材がスプールの回転軸をほぼ中心とする円弧状の経路に沿ってスライド操作可能であるため、操作部材を操作する指の操作方向がスプールの回転方向に沿った前後方向となり、スムーズな操作が可能となる。
【0014】
また、請求項4に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の発明において、前記操作部材が略水平面内で回転操作可能であることを特徴とする。
【0015】
この請求項4に記載の発明によれば、請求項1または請求項2に記載の発明と同様の作用効果が得られるとともに、操作部材が略水平面内で回転操作可能であるため、操作部材の設置スペースを小さく確保しつつ大きな操作範囲を得ることができ、モータ出力の微調整が可能となる。また、操作部材を操作する指の操作方向がスプールの回転方向に沿った前後方向となり、スムーズな操作が可能となる。
【0016】
また、請求項5に記載の発明は、請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の発明において、前記スプールをフリー回転状態から釣糸巻き取り状態へと切り換え操作するためのクラッチON操作部を更に有し、該クラッチON操作部が前記スプールのフランジ外周近傍における前記側板の内面に配置されていることを特徴とする。
【0017】
この請求項5に記載の発明によれば、請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の発明と同様の作用効果が得られるとともに、クラッチON操作部がスプールのフランジ外周近傍における側板の内面に配置されているため、クラッチOFF操作による釣糸繰り出しから、クラッチON操作、更には、釣糸巻き取りへと至る一連の操作の際、常にサミング操作を行なうことができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、スプールのサミング操作から釣糸巻き取り操作へと至る一連の操作を、リール本体を握持する手の指でスムーズに行うことができる魚釣用電動リールが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る魚釣用電動リールの平面図。
【図2】内部機構が部分的に示される図1に示す魚釣用電動リールの平面図。
【図3】図1のA−A線に沿う断面図。
【図4】図1のB−B線に沿う要部拡大断面図。
【図5】指の操作位置が二点鎖線で示される図1のA−A線に沿う断面図。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る魚釣用電動リールの平面図。
【図7】図6のC−C線に沿う断面図。
【図8】指の操作位置が二点鎖線で示される図6のC−C線に沿う断面図。
【図9】(a)〜(i)を含み、仕掛けを放出した後の一般的な操作を順に説明する図。
【図10】本発明の第3の実施形態に係る魚釣用電動リールの平面図。
【図11】図10のD−D線に沿う断面図。
【図12】図11の操作部材付近の要部拡大平面図。
【図13】図11の操作部材付近の要部拡大断面図。
【図14】本発明の第4の実施形態に係る魚釣用電動リールの平面図。
【図15】図14のE−E線に沿う断面図。
【図16】本発明の第5の実施形態に係る魚釣用電動リールの平面図。
【図17】図16のF−F線に沿う断面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る魚釣用電動リールの実施形態について説明する。
図1〜図5は本発明の第1の実施形態を示す図であり、図1は平面図、図2は内部機構を部分的に示した平面図、図3は図1のA−A線に沿う断面図、図4のB−B線に沿う要部拡大断面図、図5は指の操作位置が二点鎖線で示される図1のA−A線に沿う断面図である。
なお、以下の説明において、前後方向、左右方向、上下方向は、図2および図3に記載の方向と定義する。
【0021】
図1に示すように、本実施形態に係る魚釣用電動リール1は、左右のフレーム3a,3bに左右カバー4a,4bを取着して構成される左右側板5A,5Bを具備したリール本体5を有している。リール本体5を構成する一方の側板(右側板5B)側には、巻取り操作される手動ハンドル6が設けられており、左右側板5A,5B間には、釣糸が巻回されるスプール7がスプール軸7a(図3および図5参照)を中心に回転可能に支持されている。また、本実施形態では、図2,3,5に示すように、スプール7の前方側における左右側板5A,5B間に駆動モータ8を保持しており、スプール7は、手動ハンドル6の巻取り操作および駆動モータ8の回転駆動によって、動力伝達機構10を介して釣糸巻取り方向に回転駆動される。
【0022】
なお、駆動モータ8については、スプール7の内部に設置する構成であっても良いが、本実施形態のように、スプール7の前方に設置することで、スプール7の糸巻き量を確保しつつ、リール本体5を可及的にコンパクト化することが可能となる。また、動力伝達機構10については、駆動モータ8の回転駆動力を減速してスプール7側に伝達する機能(減速機構102および伝達ベルト101(図2参照)などによって果たされる)、駆動モータ8が回転駆動しても手動ハンドル6を連れ回しさせない機能や手動ハンドル6の逆回転を防止する機能(ラチェット104を含む)などを備えた公知のものによって構成することが可能である。また、そのような動力伝達機構10については、左側板5A側に配設されていても良いし、右側板5B側に配設されていても良く、或いは、左右側板それぞれに振り分けて配設されていても良い。なお、図中(特に図2)、符号116は、ハンドル6に結合されたハンドル軸、符号118は、ハンドル軸116に回転可能に支持されたドライブギヤ、符号120は、ドライブギヤ118に噛合するピニオンであり、これらは前述した動力伝達機構10を構成する。また、図中、符号125は、魚釣時にスプール7から釣糸が繰り出された際にスプール7の回転にドラグ力を付与する公知のドラグ機構であり、リール本体5とハンドル6との間には、ドラグ機構125によるドラグ力の調整を行なうための星型のドラグ調整ノブ(スタードラグ)139が設けられている。
【0023】
また、スプール7の前方の左右側板5A,5B間には、スプール7に対して均等に釣糸を巻回する機能を備えた公知のレベルワインド機構142(図3および図5参照)が設置されている。さらに、リール本体5を構成する左右側板5A,5B間のスプール7の上方には、駆動モータ8を制御する制御部100(図示しない制御基板を有する)を収容した箱型の制御ケース15が配設されている。
【0024】
また、リール本体5内には、ピニオン120を軸方向に移動させてスプール7を釣糸巻き取り状態/フリー回転状態に切り換える公知のクラッチ機構(図示せず)が配設されている。このクラッチ機構は、動力伝達機構10に介在されて手動ハンドル6および駆動モータ8からの動力伝達を継脱する機能を備えており、本実施形態では、右側板5B側に設置されている。
【0025】
前記クラッチ機構は、右フレーム3bに回動可能に支持された公知のクラッチプレートを備えており、このクラッチプレートには、動力伝達をON状態からOFF状態に切り換える(スプールを釣糸巻き取り状態からフリー回転状態に切り換える)クラッチOFF切換部材18が係合している。本実施形態におけるクラッチOFF切換部材18は、スプール7をサミングしながら操作が可能となる位置、具体的には、スプール7の後方側の左右側板5A,5B間に橋設された構成となっており、図3に示す状態から、その表面となる操作部(クラッチOFF操作部)18aに親指を載置して下方に押し下げ操作することで、クラッチ機構をON状態からOFF状態に切り換えるよう構成されている。すなわち、クラッチOFF切換部材18は、図5に示すクラッチON状態において、リール本体を把持している状態の手の指(親指T)でスプール7をサミングしている状態からそのまま後方にシフトし、操作部18aに載置してクラッチOFF操作ができるように配置されている。この場合、クラッチOFF切換部材18は、前記クラッチプレートと右フレーム3aとの間に設けられた図示しない振り分け保持バネによって、クラッチON位置とクラッチOFF位置との間で振り分け保持される。換言すれば、クラッチOFF切換部材18の押圧操作によって、前記クラッチプレートは、クラッチON位置とクラッチOFF位置との間で回動し、各々の位置で前記振り分け保持バネによって振り分け保持される。公知のように、クラッチプレートがクラッチOFF位置に回動されると、その表面に形成された一対のカム(図示せず)がピニオン120に係合しているアーム部材(図示せず)を軸方向に移動させ、これによりピニオン120とスプール軸7aとの動力伝達状態を解除する(クラッチOFF状態)。
【0026】
また、動力伝達をOFF状態からON状態に切り換える(スプールをフリー回転状態から釣糸巻き取り状態に切り換える)クラッチON切換部材19は、前記クラッチプレートをクラッチOFF位置からクラッチON位置に回動させるように機能する。このクラッチON切換部材19は、竿とリールとを片手で把持する場合にその把持している手の親指が届くように構成されるのが好ましく、本実施形態では、スプール7のフランジ7bの径方向外側でクラッチOFF切換部材18の位置に近い右側板5Bの上面に押圧ボタンの形態を成して設けられる。
【0027】
また、リール本体5には、駆動モータ8に対して電力を供給するための給電部20が設けられている。この給電部20は、左側板5Aの前方側の下面領域に形成されており、この給電部20に対しては、着脱可能な携帯バッテリ(図示せず)を装着したり、或いは、足元に置いたバッテリや釣り船に設置されている電源部から電力供給される給電コードが装着される。
【0028】
また、制御ケース15は、図3および図5に示すように、駆動モータ8及びレベルワインド機構142を覆う程度の軸方向長さで延在するが、スプール7の上方でその支軸(この支軸としては、本実施形態ではスプール7の外側に駆動モータ8が配置されているためスプール軸(スプール回転軸)7aが該当するが、スプール7の内部に駆動モータ8が配置される別の形態ではスプール軸7aが存在しないためモータ8の回転軸が該当する)近傍から、レベルワインド機構142および駆動モータ8を覆うような軸方向長さを備えていても良い。
【0029】
制御ケース15の後方側には、駆動モータ8の出力を調整するモータ出力調整用の操作部材30が配置されている。本実施形態の操作部材30は、スプール7(スプール軸7a)の上方でスプール7のフランジ7b外周近傍における側板のいずれか一方の内側壁部、特に本実施形態ではハンドル6側の右側板5Bの内側壁部に変位可能に設けられており、スプール7をサミング操作する手の親指Tで操作可能となっている(図5参照)。このように、ハンドル6側の右側板5Bの内側壁部に操作部材30を設けると、竿とリールとを握る左手の指(反ハンドル側の手の指)で操作部材30を容易に操作でき操作性を向上できる。
【0030】
また、本実施形態の操作部材30は、スプール7のスプール軸7aをほぼ中心とする円弧状の経路に沿ってスライド操作できるようになっている。具体的には、図4に示すように、操作部材30は、スプール7のフランジ7bの上側において、右側板5B(右フレーム3b)から内側に向けて所定量突出するように設けられており、操作部材30の右側板側に形成された接続部30aが右側板5Bの右フレーム3bのスライド孔(貫通孔)3baを貫通している。スライド孔3baは、スプール軸7aをほぼ中心とする円弧状の経路を形成しており、操作部材30のスライド範囲を規定する。スライド孔3baを貫通する操作部材30の接続部30aは、例えばネジ202を介して抜け止め部材208に接続固定される。抜け止め部材208は、摺動部材としての役割も兼ねており、右フレーム3bとこれに隣接する右カバー4bとによって画定される摺動空間200内で右フレーム3bの外面(前記スライド孔3ba周辺の外面)3bbに摺接しながら摺動することにより、操作部材30のスライド操作を案内する。なお、操作部材30のスライド範囲は、短すぎるとモータの出力の微調整が難しくなり、長すぎると把持した手の指をそのまま動かして操作がし難くなることから、操作範囲は10〜40mmであることが好ましい。また、接続部30aの断面形状は任意であるが、接続部30aの断面形状を非円形とすることにより接続部30aを抜け止め部材208に対する回転不能な接続に寄与でき有効である。
【0031】
また、操作部材30は、摺動子204を介して、操作部材30の操作量(円弧状の経路に沿う操作量)を検知する検知手段、ここでは角度センサ130と関連付けられる。具体的には、図1および図3に示すように、摺動子204は、操作部材30と一体に形成されるとともに、右フレーム3bの内面(前記スライド孔3ba周辺の内面)3bbに摺接しながら移動することにより、操作部材30のスライド操作を案内し、更に、その前方側にラック230が一体に形成されている。このラック230には角度センサ130に回転角を伝えるピニオン232が噛合している。また、角度センサ130は、スプール調整ダイヤル210の反対側に位置されて、右側板5Bに形成された凸状の収納部133内にシール状態で収納されており、操作部材30のスライド位置に応じた操作位置信号を出力する。すなわち、角度センサ130は、操作部材30の操作位置に応じて前記ラック230を介して回転するピニオン232の回転位置に対応した操作信号を出力し、その操作信号に基づいて駆動モータ8の出力が(操作部材30の操作位置に応じて)調整されるようになっている。
【0032】
このことに関連して、制御ケース15には、駆動モータ8の駆動を制御する前記制御部100が収容されており、操作部材30の回転操作量に応じて駆動モータ8の出力を調整するようになっている。この場合、制御部100は、操作部材30を前方に向けて摺動操作することで、駆動モータ8の出力が上昇するように設定されている。これにより、釣糸の巻き取りをする際、サミングしている(左手の)親指Tをそのまま右斜め前方に延ばして、操作部材30を押し進めるような操作をする(図1の二点鎖線の親指T参照)ことで釣糸の巻き取り操作がスムーズに行えるようになり、指の動きが単純化され、一連の探り操作をする際の操作性の向上が図れるようになる。
【0033】
操作部材30の摺動操作量と駆動モータ8の出力との関係については任意である。本実施形態では、操作部材30が、後端位置を基準位置としてモータの出力値0とし、そこから前方にスライド操作した際、モータ出力が増速するように設定されている(スライドさせる長さは任意であるが、上記したうように、10〜40mm程度が好ましい)。すなわち、前方方向に向けてスライド操作した際に増速とすることで、釣竿とリール本体を持つ手に負荷がかかる高速巻き取り時に、より前方を把持できるので、把持保持性が高くなり、操作性が良く、疲れ難くなる。
【0034】
なお、操作部材30については、後方に向けてスライド操作した際に、駆動モータ8の出力が上昇するように設定しても良い。
【0035】
また、制御ケース15の表面には、繰り出された釣糸の長さ(糸長情報)などを表示する表示部(液晶表示部)16が設けられており、また、その周囲には、各種の情報が設定可能な複数の操作ボタン16aが配設されている。
【0036】
制御ケース15に収容される前記制御部100は、魚釣用電動リールの動作を制御するCPU(Central Processing Unit)等を実装した制御基板(マイクロコンピュータ)及び各種駆動回路を実装した回路基板を備えており、これらは、省スペース化のため、例えば、表示部16の下方で上下方向に重なるように配置されている。すなわち、前記制御基板は、操作部材30のスライド量(ラックを介して回転されるピニオンの回転量)に応じて操作位置信号を出力する角度センサ130、スプール7に巻回されている釣糸の繰り出し量を検知することが可能な糸長計測装置、制御ケース15上に設けられた液晶表示部16に対して各種の情報を表示させる表示制御回路、制御ケース15上に設けられた操作ボタン16a、および、駆動モータ8の出力を停止状態から高出力値まで連続的に増減調整するモータ駆動回路との間で信号の送受信を行い、魚釣用電動リールの動作を制御する。
【0037】
以上説明したように、本実施形態によれば、スプール7のフランジ7b外周近傍における右側板5Bの内側壁部に操作部材30が変位可能に設けられているため(無論、左側板5Aの内側壁部に設けられてもよい)、スプール7のサミング操作から釣糸巻き取り操作へと至る一連の操作を、リール本体5を握持する手の指でスムーズに行うことができる(手持ち状態で一連の操作をスムーズに行えるようになる)。一般に、リール本体5を掌で保持しながらスプール7(フランジ7b外周や釣糸巻回部など)をサミング操作する親指Tは、スプール7の回転軸(スプール軸7b)に対して斜めに位置した状態で当接されるのが自然である(図1参照)。本実施形態のように、モータ出力を調整する操作部材30をスプール7のフランジ7b外周近傍における右側板5Bの内側側壁に変位可能に設ければ、サミング操作する親指Tをその斜めに位置したままの状態で前方に移行させる(図1の矢印参照)だけで(スプール7のサミング状態から無理のない親指の移行操作で)操作部材30を容易に操作できる(モータ8をスムーズに駆動操作できる)。また、本実施形態のように、スプール7をサミング操作する手の親指Tで操作部材30を操作できるようになっていれば(図1および図5参照)、スプール7のサミング操作から釣糸巻き取り操作へと至る一連の操作を、リール本体5を握持する手の指で、サミングしている親指Tをスプール7のフランジ7bや釣糸巻回面から完全に離間させることなく、スムーズに行うこともできる。
【0038】
また、本実施形態によれば、操作部材30がスプール軸7aをほぼ中心とする円弧状の経路に沿ってスライド操作可能であるため、操作部材30を操作する指の操作方向がスプール7の回転方向に沿った前後方向となり、スムーズな操作が可能となる。
【0039】
図6〜図9は本発明の第2の実施形態を示す図であり、図6は魚釣用電動リールの平面図、図7は図6のC−C線に沿う断面図、図8は指の操作位置が二点鎖線で示される図6のC−C線に沿う断面図、図9は(a)〜(i)を含み、仕掛けを放出した後の一般的な操作を順に説明する図である。
なお、本実施形態では、クラッチON切換部材19の位置および構成が異なっており、それ以外については、上記した第1の実施形態と同様に構成されているため、第1の実施形態と同一の構成部材については同一の参照符号を付し、詳細な説明については省略する。
【0040】
本実施形態において、クラッチON切換部材19は、その操作部(クラッチON操作部)19aが、図8に示すようにスプール7をサミングしている指(親指)Tが届く位置、すなわち、親指Tの腹部でスプール7の表面を押し当てている状態のまま、それ以外の部位で操作ができるように、スプール7の上方でスプール7のフランジ7b外周近傍における左フレーム(側板)3aの内面から突出し、その内面に沿って移動可能に配設されている。具体的に、操作部19aは、図6に示すように、制御ケース15の後端近傍の左側板5A側において、左フレーム3aから内側に向けて突出するように配設されており、この操作部19aは、クラッチOFF切換部材18と一体的に連動するように構成されている。すなわち、クラッチON切換部材19は、左フレーム3aに配設され、スプール7のフランジ7bの径方向外側で円弧状に移動可能な連結部19bを備えており、この連結部19bには、その一端側に前記操作部19aが、他端側に前記クラッチOFF切換部材18の左側板側の端部が一体的に連結されている。
【0041】
このため、図7の矢印D3で示すように、クラッチOFF切換部材18の操作部18aを押圧操作すると、クラッチON切換部材19の操作部19aは、矢印D4で示すように、円弧状に移動する連結部19bとともに、スプール7のフランジ7bに沿うように円弧状に移動する。そして、クラッチOFFで切り換え保持される位置は、側面視した際、クラッチOFF切換部材18の操作部18aに親指Tの根元側腹部を載置して中間腹部でスプール7をサミングでき、かつ、先端部で、クラッチON切換部材19の操作部19aに当接できる位置に設定されている。
【0042】
次に、本実施形態の魚釣用電動リールを用いて、実際に船釣りをする際の動作(コマセ釣りを例にして説明する)について図9を参照して説明する。なお、以下に例示する一連の魚釣り操作は、釣竿とともにリール本体を把持した手持ち状態で行うことが可能である。
【0043】
最初に、釣竿とともにリール本体5を把持している手の親指Tで、スプール7の後方側に配設されているクラッチOFF切換部材18の操作部18aを押し下げ操作することで、クラッチ機構をON状態からOFF状態に切り換える。クラッチ機構をON状態からOFF状態に切り換えると、スプール7はフリー回転状態となり、仕掛けは、図9(a)〜図9(b)に示すように落下する。このとき、クラッチON切換部材19は、連結部19bとともに、図7の矢印で示すように、スプール7のフランジ7bに沿うように円弧状に移動し、その操作部19aは、スプール7をサミングしている状態で押圧操作可能な位置に停止する(図8参照)。また、仕掛けが落下して着底(所定の棚に到達)するまでは、バックラッシュが生じ易いものの、リール本体5を把持している親指Tを、そのままクラッチOFF切換部材18の操作部18aから釣糸表面に延ばしてサミングすることで、バックラッシュを防止することが容易に行える。
【0044】
この場合、操作部18aに親指Tを載置した状態でサミング操作できるため、クラッチOFFに切り換え操作した一瞬に釣糸Sが落下して棚が狂ってしまうようなこともない。また、仕掛けを投入する際、サミングしながらクラッチOFFできるので、操作部18aに指を掛けた瞬間に釣糸Sが急速に出てバックラッシュすることもない。さらに、特定の棚で魚信を待っているときにおいても、直ぐに、意図する棚へ意図するスピードで仕掛けを落下することができる。なお、サミングは、スプールに巻回された釣糸Sに、直接、親指の腹部を押し当てても良いし、指の側部でスプールのフランジに接触させても良い。
【0045】
仕掛けが着底したり、所定の棚まで落下した際(通常、糸巻量は、ほぼ半分程度となるように設定されている)、サミングしている状態の親指Tをそのまま前方に伸ばして、クラッチON切換部材19の操作部19aを押し上げるように操作することで、容易にクラッチONに切り換えることが可能となる(図9(c)参照)。このとき、サミングしたままの状態でクラッチON操作が行えるため、サミングが離れて釣糸Sがずり落ちるようなこと(棚が狂ってしまうこと)はない。
【0046】
また、本実施形態では、スプール7のフランジ7bに沿うようにクラッチON切換部材19の操作部19aを配置しているため、特に、糸巻量が少ない状態の場合、フランジ7bを直接サミングした状態からクラッチON操作が行い易くなる。
【0047】
仕掛けが所定の棚(魚がいる下層域)まで落下した後、図9(d)に示すように、釣竿を上下に振ってコマセ振りを行う。このとき、親指Tをサミングした状態で魚信感知することが可能となり、魚信感知しながら次のアクション(探り操作、巻き取り操作、アオリ操作など)を待機することができる。なお、サミングした状態での魚の魚信は、クラッチON状態であっても、スプールと逆転防止機構の間にギヤが複数噛合しているため、スプールは回転方向に遊度があり、その遊度を利用して感知することが可能となっている。また、図9(d)に示すコマセ振りを行うときは、しっかりとリール本体5を把持した状態で魚信を感知しながら実施することができる。さらに、魚の魚信を待つのであれば、サミングしながら操作部材30に親指Tを当てておくこともできる(図1参照)ため、魚信があった場合は、直ちに巻き取り操作に移行することが可能となる。
【0048】
実際に探り操作をする場合、魚のいる棚を集中的に探るように、例えば、図9(d)〜図9(f)で示すように実行される。すなわち、図9(d)に示すように、コマセカゴを振ってコマセを放出した後は、棚の上層域まで低速巻き取り駆動操作してエサをコマセ放出領域まで巻き上げる(図9(e)参照)。このとき、仕掛けの巻き取り駆動は、サミングしている親指Tの先端を右斜め前方に若干押し出して操作部材30に当て付け、操作部材30をそのままスライドさせることで行うことが可能である(図1参照)。
【0049】
そして、棚の上層域まで仕掛けを巻き上げた後、再び仕掛けを所定の棚(魚がいる下層域)まで落下させる(図9(f)参照)。この操作は、操作部材30に親指Tの先端側を当てながらそのまま後方にずらして(図1の矢印と反対方向)、駆動モータ8の駆動をOFFにし、さらに、そのまま親指Tの根元側でクラッチOFF切換部材18の操作部18aを押し下げ操作することで行うことが可能である。このとき、スプール7はフリー回転状態となり、仕掛けは急速に落下するものの、そのまま親指Tの腹部でサミングすることができるため、その落下速度を容易に調整したり、仕掛けを所望の量だけ容易に落下させたり、緩急をつけた誘い落下することも可能となる。
【0050】
そして、図9(d)〜図9(f)に示すような一連の操作(探り操作)においては、仕掛けの巻き取り(駆動モータの巻き取り駆動)、駆動モータの停止、クラッチOFF、クラッチONの各操作が繰り返されるが、このような各操作は、上記したように、サミングしている親指Tを、そのまま右斜め前方にずらして巻き取り操作、後方にずらして駆動停止操作が行え、かつ、さらに後方にずらしてクラッチOFF、さらに、前方に伸ばしてクラッチONできるため、上記のような一連の探り操作を、魚信を感知しながらスムーズかつ素早く行うことが可能となる。
【0051】
さらに、所定の棚位置にある状態において、図9(g)に示すような釣竿を上下に振るシャクリ操作や駆動モータを巻き上げながらのシャクリ操作、或いは、誘い操作を行って仕掛けを上昇させる操作を行うこともあるが(図9(h)参照)、このようなシャクリ操作(誘い操作)をしながらの駆動モータの巻き上げ駆動は、サミング操作をすることが容易であるため、魚信も感知し易く、魚信があった場合は、直ちに巻き取り操作に移行することが可能となる。さらに、図9(i)で示すように、釣竿を高くシャクリ上げたときにサミングしている親指で魚信があっても、直ちに、操作部材30に当接する親指Tを移動して、そのまま巻き取り操作することでフッキングすることが可能となる。そして、魚をフッキングした後は、そのまま親指Tを側方にシフトして制御ケース15を押さえ付けるようにしてリール本体を把持保持することもでき、安定した状態で釣竿を操作することが可能となる。
【0052】
以上説明したように、本実施形態の構成によれば、クラッチON切換部材19は、その操作部19aがスプールをサミングした状態で操作することが可能な位置に配置されているため、仕掛けを放出している状態(クラッチOFFで仕掛けが落下している状態)において、クラッチをONするまではサミング操作して釣糸の放出状態を調整することができ、狙った棚に意図したスピードで落下させ、かつ停止することが可能となる。これにより、外道にエサを食われたり、棚を修正する作業をする必要がなくなって機会ロスをなくすことができる。また、クラッチON状態で、サミング操作して魚信を感知しながら、操作部材30に指を当接させておくことも可能(図1参照)であるため、魚信があった場合、直ちに巻き取り操作が行えるようになる。特に、シャクリ操作で釣竿を上げた際、そのままの巻き取り操作することで合わせ操作が行えるようになる。つまり、本実施形態では、クラッチON操作部19aがスプール7のフランジ7b外周近傍における側板の内面に配置されているため、クラッチOFF操作による釣糸繰り出しから、クラッチON操作、更には、釣糸巻き取りへと至る一連の操作の際、常にサミング操作を行なうことができる。
【0053】
図10〜図13は本発明の第3の実施形態を示す図であり、図10は魚釣用電動リールの平面図、図11は図10のD−D線に沿う断面図、図12は図11の操作部材付近の要部拡大平面図、図13は図11の操作部材付近の要部拡大断面図である。
なお、本実施形態では、モータ出力調整用の操作部材の構成が異なっており、それ以外については、上記した第1の実施形態と同様に構成されているため、第1の実施形態と同一の構成部材については同一の参照符号を付し、詳細な説明については省略する。
【0054】
本実施形態のモータ出力調整用の操作部材30Aは、略水平面内で回転操作可能な略半円盤状を成している。操作部材30Aは、スプール7(スプール軸7a)の上方でスプール7のフランジ7b外周近傍における側板のいずれか一方の内側壁部、特に本実施形態ではハンドル6側の右側板5Bの内側壁部(これにより、前述したように釣竿とリールとを握る左手の親指(反ハンドル側の手の親指)で操作部材30Aを容易に操作できる)に回転可能(略水平面内で回転可能)に設けられており、スプール7をサミング操作する手の親指Tで操作可能となっている。
【0055】
この場合、操作部材30Aは、180度を下回る所定の角度範囲分だけが常に右側板5Bの内側壁部から(スプール7の上方側に)突出するように右側板5Bに組み込まれており、操作部材30Aの回転操作によって右側板5Bから突出することがない操作部材30Aの部位は円弧を形成することなく途切れ、それにより、略半円盤形状を形成して省スペース化を図っている。また、操作部材30Aには、右側壁部から突出する領域に、突起30aを形成しておくことが好ましい。このような突起30aを設けることで、操作部材30Aの初期位置を特定して、実際の操作位置(モータの出力状態)を容易に把握させることが可能となる。
【0056】
また、操作部材30Aは、ラック・アンド・ピニオン機構を介して、操作部材30Aの操作角度(回転角度)を検知する検知手段、ここでも角度センサ130と関連付けられる。具体的には、図12および図13に明確に示されるように、操作部材30Aは、右側板内において上下方向に延びる回転軸240に保持されており、この回転軸240には、第1のピニオン241が固定されている。そして、この第1のピニオン241には、右側板5B側(リール本体5側)に、前後方向に摺動可能に設けられたラック242の一端側Xの側面歯242aが噛み合い、また、ラック242の他方側Yの下面歯242bには角度センサ130に回転量を伝える第2のピニオン243が噛み合っている。また、第1の実施形態と同様、角度センサ130は、スプール調整ダイヤル210の反対側に位置されて、右側板5Bの凸状の収納部133内にシール状態で収納されており、前記ラック242の下面歯242bに噛合するピニオン243の回転量を検出するようになっている。すなわち、角度センサ130は、前記操作部材30Aを回転操作した際、前記第1のピニオン241、ラック242、及び第2のピニオン243を介して、操作部材30Aの操作位置に応じた操作信号を出力し、その操作信号に基づいて駆動モータ8の出力が調整されるようになっている。
【0057】
このように、本実施形態では、操作部材30Aが略水平面内で回転操作可能であるため、操作部材30Aの設置スペースを小さく確保しつつ大きな操作範囲を得ることができ、モータ出力の微調整が可能となる。また、操作部材30Aは、水平面内で回転操作する構成であるため、操作する指の操作方向がスプール7の回転方向に沿った前後方向となり、スムーズな操作が可能となる。
【0058】
図14および図15は本発明の第4の実施形態を示す図であり、図14は魚釣用電動リールの平面図、図15は図14のE−E線に沿う断面図である。
なお、本実施形態では、モータ出力調整用の操作部材30Aの位置が第3の実施形態と異なっており、それ以外については、第3の実施形態と同様に構成されているため、第3の実施形態と同一の構成部材については同一の参照符号を付し、詳細な説明については省略する。
【0059】
図14に明確に示すように、本実施形態では、右側板5Bと制御ケース15との境界部付近(スプール7を露出させる開放部の右前方角部付近)に第3の実施形態と同様の構成の操作部材30Aが設けられている。すなわち、操作部材30Aは、制御ケース15の後端面と、右側板5Bの内側面との間で、水平面で略90°の操作角度で回転操作可能に露出した状態となっている。この場合、この操作部材30Aの設置位置に起因して、角度センサ130の設置位置は、制御ケース15の表示部16の右側部付近となっている。したがって、この構成では、操作部材30Aの少なくとも一部(回転軸部も含む)が右側板5Bに設けられ、他の一部が制御ケース15に設けられてもよく、また、ラック・アンド・ピニオン機構が制御ケース15側に設けられてもよい。
【0060】
このように、本実施形態では、操作部材30Aが右側板5Bと制御ケース15との境界部付近に設けられるため、操作部材30Aを操作しながら親指Tで上側からスプール7を押さえつけることができ、したがって、リールの把持安定性が高く、魚の引きに対処し易い。また、操作部材30Aは、左側板5A、右側板5B、及び制御ケース15で囲まれた解放部の角部に設置されていることから、リール本体を握り込んだ際、感覚的に、親指でその操作位置を把握することが容易となり、例えば、釣竿を大きくシャクリ上げてリール本体が見えない状況であっても、操作部材の位置を的確に把握し易くなる。
【0061】
図16および図17は本発明の第5の実施形態を示す図であり、図16は魚釣用電動リールの平面図、図17は図16のF−F線に沿う断面図である。
なお、本実施形態では、モータ出力調整用の操作部材の操作角度を検出するための検出機構が第1の実施形態と異なっており、それ以外については、第1の実施形態と同様に構成されているため、第1の実施形態と同一の構成部材については同一の参照符号を付し、詳細な説明については省略する。
【0062】
図示のように、本実施形態において、操作部材30Bは、前方へ向けて(駆動モータ8側へ向けて)斜め上方へ直線的にスライド操作できるようになっている。具体的には、操作部材30Bは、スプール7のフランジ7bの上側で、右側板5Bの内側壁部から内側に向けて所定量突出しており、操作部材30Bから右側板内に突設された接続部30Baが、右側板5Bの右フレーム3bのスライド孔(貫通孔)3ba’を貫通している。スライド孔3ba’は、前方へ向けて斜め上方へ直線的に延びており、操作部材30Bのスライド範囲を規定する。スライド孔3ba’を貫通する操作部材30Bの軸部30Baは、スライド式センサ、例えば可変抵抗器256に摺接しており、例えば操作部材30Bの操作位置に応じて可変抵抗器の抵抗値を変化させて駆動モータ8に流れる電流値を変えることができるようになっている。これにより、駆動モータ8の出力が操作部材30Bの操作位置に応じて調整することが可能である。
【0063】
このように、モータの出力を調整する操作部材の操作量を検知する検知手段については、適宜変形することが可能であり、本実施形態のように、スライド式センサ256によって操作部材30Bの操作量を検出する構成では、機構が単純化されるとともに、スペースに余裕があるやや大きめのリールに適した構成となる。
【0064】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、前述した実施形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施できる。例えば、前述した実施形態では、操作部材が前後スライド移動または水平回転移動によって変位されるが、その変位形態は任意である。また、前述した実施形態では、操作部材が右側板に設けられているが、左側板に設けられても構わない。また、操作部材の構造形態についても適宜、変形することが可能である。さらに、前述した実施形態では、手持ち保持される小型の電動リールを例示したが、釣竿を両手で手持ち保持する中型以上の電動リールにも本発明を適用可能である。この場合、操作部材については、スプールをサミングすることなく操作可能な位置に設置されていてもよい。
【符号の説明】
【0065】
1 魚釣用電動リール
5 リール本体
5A,5B 左右側板
6 手動ハンドル
7 スプール
7a スプール軸
7b フランジ
8 駆動モータ
19 クラッチON切換部材
19a 操作部(クラッチON操作部)
30,30A,30B 操作部材
【技術分野】
【0001】
本発明は魚釣用電動リールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、魚釣用電動リールは、主に深場の釣りに適用させるべく、仕掛けの放出から巻き取りに至るまで、釣竿を船縁に装着された竿掛けに置いたままの状態で行えるように構成されたものが多いが、最近では、手持ち状態での操作が行い易いように工夫されたものが知られている。
【0003】
例えば、魚釣用電動リールのスプールを巻き取り操作する(モータ出力を連続的に可変操作する)ための操作部材を、様々な位置に配置することが知られている。例えば、特許文献1には、制御ケースの上面から円板状の回転摘み(操作部材)の一部を露出させ、上方から親指を押し付けながら回転操作することで、モータ出力を連続的に可変させる構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−92959号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記したように、最近の魚釣用電動リールでは、ルアーフィッシングに用いられる魚釣用(ベイトキャスティング)リールと同様、好ましくは片手による手持ち状態で操作することが可能なタイプも望まれているが、従来のモータ出力を調整する操作部材の配置を工夫した魚釣用電動リールでは、操作性の面でさらに改良すべき余地がある。具体的には、単なる仕掛けの上げ下ろしのスピーディさは勿論のこと、特に、「仕掛け落下」、「サミング(仕掛け落下速度調整)」、「待機」、「シャクリ操作」、「フッキング」、「釣糸巻き取り操作」などの一連の操作を釣竿と共にリール本体を握持している手で違和感なく容易に行えることが、魚釣用電動リールの小型化に加えて、操作面において要望されている。
【0006】
しかしながら、上記した従来のタイプの魚釣用電動リールでは、これらの一連の操作を手持ち状態で行うことが難しい。すなわち、特許文献1に開示される構成では、サミング状態から釣糸巻き取り操作を行う場合、サミングしている親指を、一旦、スプールフランジや釣糸巻回面から上方に離間させて、スプール上方の側板間上面に配置されている前記操作部材へと移動させる必要があるため、操作のスムーズ性に欠ける。
【0007】
本発明は、上記した問題に着目してなされたものであり、スプールのサミング操作から釣糸巻き取り操作へと至る一連の操作を、リール本体を握持する手の指でスムーズに行うことができる魚釣用電動リールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、リール本体の左右の側板間に設けられ、釣糸が巻回されるスプールと、前記リール本体に設けられ、スプールを回転駆動する駆動モータと、前記駆動モータの出力を調整する操作部材とを有する魚釣用電動リールにおいて、前記スプールのフランジ外周近傍における前記側板のいずれか一方の内側壁部に前記操作部材を変位可能に設けたことを特徴とする。
【0009】
この請求項1に記載の発明によれば、スプールのフランジ外周近傍における側板のいずれか一方の内側壁部に操作部材が変位可能に設けられているため、スプールのサミング操作から釣糸巻き取り操作へと至る一連の操作を、リール本体を握持する手の指でスムーズに行うことができる。一般に、リール本体を掌で保持しながらスプール(フランジ外周や釣糸巻回部など)をサミング操作する親指は、スプールの回転軸(スプール軸)に対して斜めに位置した状態で当接されるのが自然である。本構成のように、モータ出力を調整する操作部材をスプールのフランジ外周近傍における側板の内側側壁に変位可能に設ければ、サミング操作する親指をその斜めに位置したままの状態で前方に移行させるだけで(スプールのサミング状態から無理のない親指の移行操作で)モータをスムーズに駆動操作できる。
【0010】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記操作部材は、スプールをサミング操作する手の親指で操作可能であることを特徴とする。
【0011】
この請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明と同様の作用効果が得られるとともに、操作部材は、スプールをサミング操作する手の親指で操作可能であるため、スプールのサミング操作から釣糸巻き取り操作へと至る一連の操作を、リール本体を握持する手の指で、特にサミングしている親指をスプールフランジや釣糸巻回面から完全に離間させることなく、スムーズに行うことも可能になる。なお、本構成において、「スプールをサミング操作する手の親指で操作部材を操作可能」とは、少なくとも操作部材の操作し始めの時点で、サミングしている親指をスプールフランジや釣糸巻回面から上方に離間させることなく操作できることを意味する。
【0012】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の発明において、前記操作部材は、前記スプールの回転軸をほぼ中心とする円弧状の経路に沿ってスライド操作可能であることを特徴とする。
【0013】
この請求項3に記載の発明によれば、請求項1または請求項2に記載の発明と同様の作用効果が得られるとともに、操作部材がスプールの回転軸をほぼ中心とする円弧状の経路に沿ってスライド操作可能であるため、操作部材を操作する指の操作方向がスプールの回転方向に沿った前後方向となり、スムーズな操作が可能となる。
【0014】
また、請求項4に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の発明において、前記操作部材が略水平面内で回転操作可能であることを特徴とする。
【0015】
この請求項4に記載の発明によれば、請求項1または請求項2に記載の発明と同様の作用効果が得られるとともに、操作部材が略水平面内で回転操作可能であるため、操作部材の設置スペースを小さく確保しつつ大きな操作範囲を得ることができ、モータ出力の微調整が可能となる。また、操作部材を操作する指の操作方向がスプールの回転方向に沿った前後方向となり、スムーズな操作が可能となる。
【0016】
また、請求項5に記載の発明は、請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の発明において、前記スプールをフリー回転状態から釣糸巻き取り状態へと切り換え操作するためのクラッチON操作部を更に有し、該クラッチON操作部が前記スプールのフランジ外周近傍における前記側板の内面に配置されていることを特徴とする。
【0017】
この請求項5に記載の発明によれば、請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の発明と同様の作用効果が得られるとともに、クラッチON操作部がスプールのフランジ外周近傍における側板の内面に配置されているため、クラッチOFF操作による釣糸繰り出しから、クラッチON操作、更には、釣糸巻き取りへと至る一連の操作の際、常にサミング操作を行なうことができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、スプールのサミング操作から釣糸巻き取り操作へと至る一連の操作を、リール本体を握持する手の指でスムーズに行うことができる魚釣用電動リールが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る魚釣用電動リールの平面図。
【図2】内部機構が部分的に示される図1に示す魚釣用電動リールの平面図。
【図3】図1のA−A線に沿う断面図。
【図4】図1のB−B線に沿う要部拡大断面図。
【図5】指の操作位置が二点鎖線で示される図1のA−A線に沿う断面図。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る魚釣用電動リールの平面図。
【図7】図6のC−C線に沿う断面図。
【図8】指の操作位置が二点鎖線で示される図6のC−C線に沿う断面図。
【図9】(a)〜(i)を含み、仕掛けを放出した後の一般的な操作を順に説明する図。
【図10】本発明の第3の実施形態に係る魚釣用電動リールの平面図。
【図11】図10のD−D線に沿う断面図。
【図12】図11の操作部材付近の要部拡大平面図。
【図13】図11の操作部材付近の要部拡大断面図。
【図14】本発明の第4の実施形態に係る魚釣用電動リールの平面図。
【図15】図14のE−E線に沿う断面図。
【図16】本発明の第5の実施形態に係る魚釣用電動リールの平面図。
【図17】図16のF−F線に沿う断面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る魚釣用電動リールの実施形態について説明する。
図1〜図5は本発明の第1の実施形態を示す図であり、図1は平面図、図2は内部機構を部分的に示した平面図、図3は図1のA−A線に沿う断面図、図4のB−B線に沿う要部拡大断面図、図5は指の操作位置が二点鎖線で示される図1のA−A線に沿う断面図である。
なお、以下の説明において、前後方向、左右方向、上下方向は、図2および図3に記載の方向と定義する。
【0021】
図1に示すように、本実施形態に係る魚釣用電動リール1は、左右のフレーム3a,3bに左右カバー4a,4bを取着して構成される左右側板5A,5Bを具備したリール本体5を有している。リール本体5を構成する一方の側板(右側板5B)側には、巻取り操作される手動ハンドル6が設けられており、左右側板5A,5B間には、釣糸が巻回されるスプール7がスプール軸7a(図3および図5参照)を中心に回転可能に支持されている。また、本実施形態では、図2,3,5に示すように、スプール7の前方側における左右側板5A,5B間に駆動モータ8を保持しており、スプール7は、手動ハンドル6の巻取り操作および駆動モータ8の回転駆動によって、動力伝達機構10を介して釣糸巻取り方向に回転駆動される。
【0022】
なお、駆動モータ8については、スプール7の内部に設置する構成であっても良いが、本実施形態のように、スプール7の前方に設置することで、スプール7の糸巻き量を確保しつつ、リール本体5を可及的にコンパクト化することが可能となる。また、動力伝達機構10については、駆動モータ8の回転駆動力を減速してスプール7側に伝達する機能(減速機構102および伝達ベルト101(図2参照)などによって果たされる)、駆動モータ8が回転駆動しても手動ハンドル6を連れ回しさせない機能や手動ハンドル6の逆回転を防止する機能(ラチェット104を含む)などを備えた公知のものによって構成することが可能である。また、そのような動力伝達機構10については、左側板5A側に配設されていても良いし、右側板5B側に配設されていても良く、或いは、左右側板それぞれに振り分けて配設されていても良い。なお、図中(特に図2)、符号116は、ハンドル6に結合されたハンドル軸、符号118は、ハンドル軸116に回転可能に支持されたドライブギヤ、符号120は、ドライブギヤ118に噛合するピニオンであり、これらは前述した動力伝達機構10を構成する。また、図中、符号125は、魚釣時にスプール7から釣糸が繰り出された際にスプール7の回転にドラグ力を付与する公知のドラグ機構であり、リール本体5とハンドル6との間には、ドラグ機構125によるドラグ力の調整を行なうための星型のドラグ調整ノブ(スタードラグ)139が設けられている。
【0023】
また、スプール7の前方の左右側板5A,5B間には、スプール7に対して均等に釣糸を巻回する機能を備えた公知のレベルワインド機構142(図3および図5参照)が設置されている。さらに、リール本体5を構成する左右側板5A,5B間のスプール7の上方には、駆動モータ8を制御する制御部100(図示しない制御基板を有する)を収容した箱型の制御ケース15が配設されている。
【0024】
また、リール本体5内には、ピニオン120を軸方向に移動させてスプール7を釣糸巻き取り状態/フリー回転状態に切り換える公知のクラッチ機構(図示せず)が配設されている。このクラッチ機構は、動力伝達機構10に介在されて手動ハンドル6および駆動モータ8からの動力伝達を継脱する機能を備えており、本実施形態では、右側板5B側に設置されている。
【0025】
前記クラッチ機構は、右フレーム3bに回動可能に支持された公知のクラッチプレートを備えており、このクラッチプレートには、動力伝達をON状態からOFF状態に切り換える(スプールを釣糸巻き取り状態からフリー回転状態に切り換える)クラッチOFF切換部材18が係合している。本実施形態におけるクラッチOFF切換部材18は、スプール7をサミングしながら操作が可能となる位置、具体的には、スプール7の後方側の左右側板5A,5B間に橋設された構成となっており、図3に示す状態から、その表面となる操作部(クラッチOFF操作部)18aに親指を載置して下方に押し下げ操作することで、クラッチ機構をON状態からOFF状態に切り換えるよう構成されている。すなわち、クラッチOFF切換部材18は、図5に示すクラッチON状態において、リール本体を把持している状態の手の指(親指T)でスプール7をサミングしている状態からそのまま後方にシフトし、操作部18aに載置してクラッチOFF操作ができるように配置されている。この場合、クラッチOFF切換部材18は、前記クラッチプレートと右フレーム3aとの間に設けられた図示しない振り分け保持バネによって、クラッチON位置とクラッチOFF位置との間で振り分け保持される。換言すれば、クラッチOFF切換部材18の押圧操作によって、前記クラッチプレートは、クラッチON位置とクラッチOFF位置との間で回動し、各々の位置で前記振り分け保持バネによって振り分け保持される。公知のように、クラッチプレートがクラッチOFF位置に回動されると、その表面に形成された一対のカム(図示せず)がピニオン120に係合しているアーム部材(図示せず)を軸方向に移動させ、これによりピニオン120とスプール軸7aとの動力伝達状態を解除する(クラッチOFF状態)。
【0026】
また、動力伝達をOFF状態からON状態に切り換える(スプールをフリー回転状態から釣糸巻き取り状態に切り換える)クラッチON切換部材19は、前記クラッチプレートをクラッチOFF位置からクラッチON位置に回動させるように機能する。このクラッチON切換部材19は、竿とリールとを片手で把持する場合にその把持している手の親指が届くように構成されるのが好ましく、本実施形態では、スプール7のフランジ7bの径方向外側でクラッチOFF切換部材18の位置に近い右側板5Bの上面に押圧ボタンの形態を成して設けられる。
【0027】
また、リール本体5には、駆動モータ8に対して電力を供給するための給電部20が設けられている。この給電部20は、左側板5Aの前方側の下面領域に形成されており、この給電部20に対しては、着脱可能な携帯バッテリ(図示せず)を装着したり、或いは、足元に置いたバッテリや釣り船に設置されている電源部から電力供給される給電コードが装着される。
【0028】
また、制御ケース15は、図3および図5に示すように、駆動モータ8及びレベルワインド機構142を覆う程度の軸方向長さで延在するが、スプール7の上方でその支軸(この支軸としては、本実施形態ではスプール7の外側に駆動モータ8が配置されているためスプール軸(スプール回転軸)7aが該当するが、スプール7の内部に駆動モータ8が配置される別の形態ではスプール軸7aが存在しないためモータ8の回転軸が該当する)近傍から、レベルワインド機構142および駆動モータ8を覆うような軸方向長さを備えていても良い。
【0029】
制御ケース15の後方側には、駆動モータ8の出力を調整するモータ出力調整用の操作部材30が配置されている。本実施形態の操作部材30は、スプール7(スプール軸7a)の上方でスプール7のフランジ7b外周近傍における側板のいずれか一方の内側壁部、特に本実施形態ではハンドル6側の右側板5Bの内側壁部に変位可能に設けられており、スプール7をサミング操作する手の親指Tで操作可能となっている(図5参照)。このように、ハンドル6側の右側板5Bの内側壁部に操作部材30を設けると、竿とリールとを握る左手の指(反ハンドル側の手の指)で操作部材30を容易に操作でき操作性を向上できる。
【0030】
また、本実施形態の操作部材30は、スプール7のスプール軸7aをほぼ中心とする円弧状の経路に沿ってスライド操作できるようになっている。具体的には、図4に示すように、操作部材30は、スプール7のフランジ7bの上側において、右側板5B(右フレーム3b)から内側に向けて所定量突出するように設けられており、操作部材30の右側板側に形成された接続部30aが右側板5Bの右フレーム3bのスライド孔(貫通孔)3baを貫通している。スライド孔3baは、スプール軸7aをほぼ中心とする円弧状の経路を形成しており、操作部材30のスライド範囲を規定する。スライド孔3baを貫通する操作部材30の接続部30aは、例えばネジ202を介して抜け止め部材208に接続固定される。抜け止め部材208は、摺動部材としての役割も兼ねており、右フレーム3bとこれに隣接する右カバー4bとによって画定される摺動空間200内で右フレーム3bの外面(前記スライド孔3ba周辺の外面)3bbに摺接しながら摺動することにより、操作部材30のスライド操作を案内する。なお、操作部材30のスライド範囲は、短すぎるとモータの出力の微調整が難しくなり、長すぎると把持した手の指をそのまま動かして操作がし難くなることから、操作範囲は10〜40mmであることが好ましい。また、接続部30aの断面形状は任意であるが、接続部30aの断面形状を非円形とすることにより接続部30aを抜け止め部材208に対する回転不能な接続に寄与でき有効である。
【0031】
また、操作部材30は、摺動子204を介して、操作部材30の操作量(円弧状の経路に沿う操作量)を検知する検知手段、ここでは角度センサ130と関連付けられる。具体的には、図1および図3に示すように、摺動子204は、操作部材30と一体に形成されるとともに、右フレーム3bの内面(前記スライド孔3ba周辺の内面)3bbに摺接しながら移動することにより、操作部材30のスライド操作を案内し、更に、その前方側にラック230が一体に形成されている。このラック230には角度センサ130に回転角を伝えるピニオン232が噛合している。また、角度センサ130は、スプール調整ダイヤル210の反対側に位置されて、右側板5Bに形成された凸状の収納部133内にシール状態で収納されており、操作部材30のスライド位置に応じた操作位置信号を出力する。すなわち、角度センサ130は、操作部材30の操作位置に応じて前記ラック230を介して回転するピニオン232の回転位置に対応した操作信号を出力し、その操作信号に基づいて駆動モータ8の出力が(操作部材30の操作位置に応じて)調整されるようになっている。
【0032】
このことに関連して、制御ケース15には、駆動モータ8の駆動を制御する前記制御部100が収容されており、操作部材30の回転操作量に応じて駆動モータ8の出力を調整するようになっている。この場合、制御部100は、操作部材30を前方に向けて摺動操作することで、駆動モータ8の出力が上昇するように設定されている。これにより、釣糸の巻き取りをする際、サミングしている(左手の)親指Tをそのまま右斜め前方に延ばして、操作部材30を押し進めるような操作をする(図1の二点鎖線の親指T参照)ことで釣糸の巻き取り操作がスムーズに行えるようになり、指の動きが単純化され、一連の探り操作をする際の操作性の向上が図れるようになる。
【0033】
操作部材30の摺動操作量と駆動モータ8の出力との関係については任意である。本実施形態では、操作部材30が、後端位置を基準位置としてモータの出力値0とし、そこから前方にスライド操作した際、モータ出力が増速するように設定されている(スライドさせる長さは任意であるが、上記したうように、10〜40mm程度が好ましい)。すなわち、前方方向に向けてスライド操作した際に増速とすることで、釣竿とリール本体を持つ手に負荷がかかる高速巻き取り時に、より前方を把持できるので、把持保持性が高くなり、操作性が良く、疲れ難くなる。
【0034】
なお、操作部材30については、後方に向けてスライド操作した際に、駆動モータ8の出力が上昇するように設定しても良い。
【0035】
また、制御ケース15の表面には、繰り出された釣糸の長さ(糸長情報)などを表示する表示部(液晶表示部)16が設けられており、また、その周囲には、各種の情報が設定可能な複数の操作ボタン16aが配設されている。
【0036】
制御ケース15に収容される前記制御部100は、魚釣用電動リールの動作を制御するCPU(Central Processing Unit)等を実装した制御基板(マイクロコンピュータ)及び各種駆動回路を実装した回路基板を備えており、これらは、省スペース化のため、例えば、表示部16の下方で上下方向に重なるように配置されている。すなわち、前記制御基板は、操作部材30のスライド量(ラックを介して回転されるピニオンの回転量)に応じて操作位置信号を出力する角度センサ130、スプール7に巻回されている釣糸の繰り出し量を検知することが可能な糸長計測装置、制御ケース15上に設けられた液晶表示部16に対して各種の情報を表示させる表示制御回路、制御ケース15上に設けられた操作ボタン16a、および、駆動モータ8の出力を停止状態から高出力値まで連続的に増減調整するモータ駆動回路との間で信号の送受信を行い、魚釣用電動リールの動作を制御する。
【0037】
以上説明したように、本実施形態によれば、スプール7のフランジ7b外周近傍における右側板5Bの内側壁部に操作部材30が変位可能に設けられているため(無論、左側板5Aの内側壁部に設けられてもよい)、スプール7のサミング操作から釣糸巻き取り操作へと至る一連の操作を、リール本体5を握持する手の指でスムーズに行うことができる(手持ち状態で一連の操作をスムーズに行えるようになる)。一般に、リール本体5を掌で保持しながらスプール7(フランジ7b外周や釣糸巻回部など)をサミング操作する親指Tは、スプール7の回転軸(スプール軸7b)に対して斜めに位置した状態で当接されるのが自然である(図1参照)。本実施形態のように、モータ出力を調整する操作部材30をスプール7のフランジ7b外周近傍における右側板5Bの内側側壁に変位可能に設ければ、サミング操作する親指Tをその斜めに位置したままの状態で前方に移行させる(図1の矢印参照)だけで(スプール7のサミング状態から無理のない親指の移行操作で)操作部材30を容易に操作できる(モータ8をスムーズに駆動操作できる)。また、本実施形態のように、スプール7をサミング操作する手の親指Tで操作部材30を操作できるようになっていれば(図1および図5参照)、スプール7のサミング操作から釣糸巻き取り操作へと至る一連の操作を、リール本体5を握持する手の指で、サミングしている親指Tをスプール7のフランジ7bや釣糸巻回面から完全に離間させることなく、スムーズに行うこともできる。
【0038】
また、本実施形態によれば、操作部材30がスプール軸7aをほぼ中心とする円弧状の経路に沿ってスライド操作可能であるため、操作部材30を操作する指の操作方向がスプール7の回転方向に沿った前後方向となり、スムーズな操作が可能となる。
【0039】
図6〜図9は本発明の第2の実施形態を示す図であり、図6は魚釣用電動リールの平面図、図7は図6のC−C線に沿う断面図、図8は指の操作位置が二点鎖線で示される図6のC−C線に沿う断面図、図9は(a)〜(i)を含み、仕掛けを放出した後の一般的な操作を順に説明する図である。
なお、本実施形態では、クラッチON切換部材19の位置および構成が異なっており、それ以外については、上記した第1の実施形態と同様に構成されているため、第1の実施形態と同一の構成部材については同一の参照符号を付し、詳細な説明については省略する。
【0040】
本実施形態において、クラッチON切換部材19は、その操作部(クラッチON操作部)19aが、図8に示すようにスプール7をサミングしている指(親指)Tが届く位置、すなわち、親指Tの腹部でスプール7の表面を押し当てている状態のまま、それ以外の部位で操作ができるように、スプール7の上方でスプール7のフランジ7b外周近傍における左フレーム(側板)3aの内面から突出し、その内面に沿って移動可能に配設されている。具体的に、操作部19aは、図6に示すように、制御ケース15の後端近傍の左側板5A側において、左フレーム3aから内側に向けて突出するように配設されており、この操作部19aは、クラッチOFF切換部材18と一体的に連動するように構成されている。すなわち、クラッチON切換部材19は、左フレーム3aに配設され、スプール7のフランジ7bの径方向外側で円弧状に移動可能な連結部19bを備えており、この連結部19bには、その一端側に前記操作部19aが、他端側に前記クラッチOFF切換部材18の左側板側の端部が一体的に連結されている。
【0041】
このため、図7の矢印D3で示すように、クラッチOFF切換部材18の操作部18aを押圧操作すると、クラッチON切換部材19の操作部19aは、矢印D4で示すように、円弧状に移動する連結部19bとともに、スプール7のフランジ7bに沿うように円弧状に移動する。そして、クラッチOFFで切り換え保持される位置は、側面視した際、クラッチOFF切換部材18の操作部18aに親指Tの根元側腹部を載置して中間腹部でスプール7をサミングでき、かつ、先端部で、クラッチON切換部材19の操作部19aに当接できる位置に設定されている。
【0042】
次に、本実施形態の魚釣用電動リールを用いて、実際に船釣りをする際の動作(コマセ釣りを例にして説明する)について図9を参照して説明する。なお、以下に例示する一連の魚釣り操作は、釣竿とともにリール本体を把持した手持ち状態で行うことが可能である。
【0043】
最初に、釣竿とともにリール本体5を把持している手の親指Tで、スプール7の後方側に配設されているクラッチOFF切換部材18の操作部18aを押し下げ操作することで、クラッチ機構をON状態からOFF状態に切り換える。クラッチ機構をON状態からOFF状態に切り換えると、スプール7はフリー回転状態となり、仕掛けは、図9(a)〜図9(b)に示すように落下する。このとき、クラッチON切換部材19は、連結部19bとともに、図7の矢印で示すように、スプール7のフランジ7bに沿うように円弧状に移動し、その操作部19aは、スプール7をサミングしている状態で押圧操作可能な位置に停止する(図8参照)。また、仕掛けが落下して着底(所定の棚に到達)するまでは、バックラッシュが生じ易いものの、リール本体5を把持している親指Tを、そのままクラッチOFF切換部材18の操作部18aから釣糸表面に延ばしてサミングすることで、バックラッシュを防止することが容易に行える。
【0044】
この場合、操作部18aに親指Tを載置した状態でサミング操作できるため、クラッチOFFに切り換え操作した一瞬に釣糸Sが落下して棚が狂ってしまうようなこともない。また、仕掛けを投入する際、サミングしながらクラッチOFFできるので、操作部18aに指を掛けた瞬間に釣糸Sが急速に出てバックラッシュすることもない。さらに、特定の棚で魚信を待っているときにおいても、直ぐに、意図する棚へ意図するスピードで仕掛けを落下することができる。なお、サミングは、スプールに巻回された釣糸Sに、直接、親指の腹部を押し当てても良いし、指の側部でスプールのフランジに接触させても良い。
【0045】
仕掛けが着底したり、所定の棚まで落下した際(通常、糸巻量は、ほぼ半分程度となるように設定されている)、サミングしている状態の親指Tをそのまま前方に伸ばして、クラッチON切換部材19の操作部19aを押し上げるように操作することで、容易にクラッチONに切り換えることが可能となる(図9(c)参照)。このとき、サミングしたままの状態でクラッチON操作が行えるため、サミングが離れて釣糸Sがずり落ちるようなこと(棚が狂ってしまうこと)はない。
【0046】
また、本実施形態では、スプール7のフランジ7bに沿うようにクラッチON切換部材19の操作部19aを配置しているため、特に、糸巻量が少ない状態の場合、フランジ7bを直接サミングした状態からクラッチON操作が行い易くなる。
【0047】
仕掛けが所定の棚(魚がいる下層域)まで落下した後、図9(d)に示すように、釣竿を上下に振ってコマセ振りを行う。このとき、親指Tをサミングした状態で魚信感知することが可能となり、魚信感知しながら次のアクション(探り操作、巻き取り操作、アオリ操作など)を待機することができる。なお、サミングした状態での魚の魚信は、クラッチON状態であっても、スプールと逆転防止機構の間にギヤが複数噛合しているため、スプールは回転方向に遊度があり、その遊度を利用して感知することが可能となっている。また、図9(d)に示すコマセ振りを行うときは、しっかりとリール本体5を把持した状態で魚信を感知しながら実施することができる。さらに、魚の魚信を待つのであれば、サミングしながら操作部材30に親指Tを当てておくこともできる(図1参照)ため、魚信があった場合は、直ちに巻き取り操作に移行することが可能となる。
【0048】
実際に探り操作をする場合、魚のいる棚を集中的に探るように、例えば、図9(d)〜図9(f)で示すように実行される。すなわち、図9(d)に示すように、コマセカゴを振ってコマセを放出した後は、棚の上層域まで低速巻き取り駆動操作してエサをコマセ放出領域まで巻き上げる(図9(e)参照)。このとき、仕掛けの巻き取り駆動は、サミングしている親指Tの先端を右斜め前方に若干押し出して操作部材30に当て付け、操作部材30をそのままスライドさせることで行うことが可能である(図1参照)。
【0049】
そして、棚の上層域まで仕掛けを巻き上げた後、再び仕掛けを所定の棚(魚がいる下層域)まで落下させる(図9(f)参照)。この操作は、操作部材30に親指Tの先端側を当てながらそのまま後方にずらして(図1の矢印と反対方向)、駆動モータ8の駆動をOFFにし、さらに、そのまま親指Tの根元側でクラッチOFF切換部材18の操作部18aを押し下げ操作することで行うことが可能である。このとき、スプール7はフリー回転状態となり、仕掛けは急速に落下するものの、そのまま親指Tの腹部でサミングすることができるため、その落下速度を容易に調整したり、仕掛けを所望の量だけ容易に落下させたり、緩急をつけた誘い落下することも可能となる。
【0050】
そして、図9(d)〜図9(f)に示すような一連の操作(探り操作)においては、仕掛けの巻き取り(駆動モータの巻き取り駆動)、駆動モータの停止、クラッチOFF、クラッチONの各操作が繰り返されるが、このような各操作は、上記したように、サミングしている親指Tを、そのまま右斜め前方にずらして巻き取り操作、後方にずらして駆動停止操作が行え、かつ、さらに後方にずらしてクラッチOFF、さらに、前方に伸ばしてクラッチONできるため、上記のような一連の探り操作を、魚信を感知しながらスムーズかつ素早く行うことが可能となる。
【0051】
さらに、所定の棚位置にある状態において、図9(g)に示すような釣竿を上下に振るシャクリ操作や駆動モータを巻き上げながらのシャクリ操作、或いは、誘い操作を行って仕掛けを上昇させる操作を行うこともあるが(図9(h)参照)、このようなシャクリ操作(誘い操作)をしながらの駆動モータの巻き上げ駆動は、サミング操作をすることが容易であるため、魚信も感知し易く、魚信があった場合は、直ちに巻き取り操作に移行することが可能となる。さらに、図9(i)で示すように、釣竿を高くシャクリ上げたときにサミングしている親指で魚信があっても、直ちに、操作部材30に当接する親指Tを移動して、そのまま巻き取り操作することでフッキングすることが可能となる。そして、魚をフッキングした後は、そのまま親指Tを側方にシフトして制御ケース15を押さえ付けるようにしてリール本体を把持保持することもでき、安定した状態で釣竿を操作することが可能となる。
【0052】
以上説明したように、本実施形態の構成によれば、クラッチON切換部材19は、その操作部19aがスプールをサミングした状態で操作することが可能な位置に配置されているため、仕掛けを放出している状態(クラッチOFFで仕掛けが落下している状態)において、クラッチをONするまではサミング操作して釣糸の放出状態を調整することができ、狙った棚に意図したスピードで落下させ、かつ停止することが可能となる。これにより、外道にエサを食われたり、棚を修正する作業をする必要がなくなって機会ロスをなくすことができる。また、クラッチON状態で、サミング操作して魚信を感知しながら、操作部材30に指を当接させておくことも可能(図1参照)であるため、魚信があった場合、直ちに巻き取り操作が行えるようになる。特に、シャクリ操作で釣竿を上げた際、そのままの巻き取り操作することで合わせ操作が行えるようになる。つまり、本実施形態では、クラッチON操作部19aがスプール7のフランジ7b外周近傍における側板の内面に配置されているため、クラッチOFF操作による釣糸繰り出しから、クラッチON操作、更には、釣糸巻き取りへと至る一連の操作の際、常にサミング操作を行なうことができる。
【0053】
図10〜図13は本発明の第3の実施形態を示す図であり、図10は魚釣用電動リールの平面図、図11は図10のD−D線に沿う断面図、図12は図11の操作部材付近の要部拡大平面図、図13は図11の操作部材付近の要部拡大断面図である。
なお、本実施形態では、モータ出力調整用の操作部材の構成が異なっており、それ以外については、上記した第1の実施形態と同様に構成されているため、第1の実施形態と同一の構成部材については同一の参照符号を付し、詳細な説明については省略する。
【0054】
本実施形態のモータ出力調整用の操作部材30Aは、略水平面内で回転操作可能な略半円盤状を成している。操作部材30Aは、スプール7(スプール軸7a)の上方でスプール7のフランジ7b外周近傍における側板のいずれか一方の内側壁部、特に本実施形態ではハンドル6側の右側板5Bの内側壁部(これにより、前述したように釣竿とリールとを握る左手の親指(反ハンドル側の手の親指)で操作部材30Aを容易に操作できる)に回転可能(略水平面内で回転可能)に設けられており、スプール7をサミング操作する手の親指Tで操作可能となっている。
【0055】
この場合、操作部材30Aは、180度を下回る所定の角度範囲分だけが常に右側板5Bの内側壁部から(スプール7の上方側に)突出するように右側板5Bに組み込まれており、操作部材30Aの回転操作によって右側板5Bから突出することがない操作部材30Aの部位は円弧を形成することなく途切れ、それにより、略半円盤形状を形成して省スペース化を図っている。また、操作部材30Aには、右側壁部から突出する領域に、突起30aを形成しておくことが好ましい。このような突起30aを設けることで、操作部材30Aの初期位置を特定して、実際の操作位置(モータの出力状態)を容易に把握させることが可能となる。
【0056】
また、操作部材30Aは、ラック・アンド・ピニオン機構を介して、操作部材30Aの操作角度(回転角度)を検知する検知手段、ここでも角度センサ130と関連付けられる。具体的には、図12および図13に明確に示されるように、操作部材30Aは、右側板内において上下方向に延びる回転軸240に保持されており、この回転軸240には、第1のピニオン241が固定されている。そして、この第1のピニオン241には、右側板5B側(リール本体5側)に、前後方向に摺動可能に設けられたラック242の一端側Xの側面歯242aが噛み合い、また、ラック242の他方側Yの下面歯242bには角度センサ130に回転量を伝える第2のピニオン243が噛み合っている。また、第1の実施形態と同様、角度センサ130は、スプール調整ダイヤル210の反対側に位置されて、右側板5Bの凸状の収納部133内にシール状態で収納されており、前記ラック242の下面歯242bに噛合するピニオン243の回転量を検出するようになっている。すなわち、角度センサ130は、前記操作部材30Aを回転操作した際、前記第1のピニオン241、ラック242、及び第2のピニオン243を介して、操作部材30Aの操作位置に応じた操作信号を出力し、その操作信号に基づいて駆動モータ8の出力が調整されるようになっている。
【0057】
このように、本実施形態では、操作部材30Aが略水平面内で回転操作可能であるため、操作部材30Aの設置スペースを小さく確保しつつ大きな操作範囲を得ることができ、モータ出力の微調整が可能となる。また、操作部材30Aは、水平面内で回転操作する構成であるため、操作する指の操作方向がスプール7の回転方向に沿った前後方向となり、スムーズな操作が可能となる。
【0058】
図14および図15は本発明の第4の実施形態を示す図であり、図14は魚釣用電動リールの平面図、図15は図14のE−E線に沿う断面図である。
なお、本実施形態では、モータ出力調整用の操作部材30Aの位置が第3の実施形態と異なっており、それ以外については、第3の実施形態と同様に構成されているため、第3の実施形態と同一の構成部材については同一の参照符号を付し、詳細な説明については省略する。
【0059】
図14に明確に示すように、本実施形態では、右側板5Bと制御ケース15との境界部付近(スプール7を露出させる開放部の右前方角部付近)に第3の実施形態と同様の構成の操作部材30Aが設けられている。すなわち、操作部材30Aは、制御ケース15の後端面と、右側板5Bの内側面との間で、水平面で略90°の操作角度で回転操作可能に露出した状態となっている。この場合、この操作部材30Aの設置位置に起因して、角度センサ130の設置位置は、制御ケース15の表示部16の右側部付近となっている。したがって、この構成では、操作部材30Aの少なくとも一部(回転軸部も含む)が右側板5Bに設けられ、他の一部が制御ケース15に設けられてもよく、また、ラック・アンド・ピニオン機構が制御ケース15側に設けられてもよい。
【0060】
このように、本実施形態では、操作部材30Aが右側板5Bと制御ケース15との境界部付近に設けられるため、操作部材30Aを操作しながら親指Tで上側からスプール7を押さえつけることができ、したがって、リールの把持安定性が高く、魚の引きに対処し易い。また、操作部材30Aは、左側板5A、右側板5B、及び制御ケース15で囲まれた解放部の角部に設置されていることから、リール本体を握り込んだ際、感覚的に、親指でその操作位置を把握することが容易となり、例えば、釣竿を大きくシャクリ上げてリール本体が見えない状況であっても、操作部材の位置を的確に把握し易くなる。
【0061】
図16および図17は本発明の第5の実施形態を示す図であり、図16は魚釣用電動リールの平面図、図17は図16のF−F線に沿う断面図である。
なお、本実施形態では、モータ出力調整用の操作部材の操作角度を検出するための検出機構が第1の実施形態と異なっており、それ以外については、第1の実施形態と同様に構成されているため、第1の実施形態と同一の構成部材については同一の参照符号を付し、詳細な説明については省略する。
【0062】
図示のように、本実施形態において、操作部材30Bは、前方へ向けて(駆動モータ8側へ向けて)斜め上方へ直線的にスライド操作できるようになっている。具体的には、操作部材30Bは、スプール7のフランジ7bの上側で、右側板5Bの内側壁部から内側に向けて所定量突出しており、操作部材30Bから右側板内に突設された接続部30Baが、右側板5Bの右フレーム3bのスライド孔(貫通孔)3ba’を貫通している。スライド孔3ba’は、前方へ向けて斜め上方へ直線的に延びており、操作部材30Bのスライド範囲を規定する。スライド孔3ba’を貫通する操作部材30Bの軸部30Baは、スライド式センサ、例えば可変抵抗器256に摺接しており、例えば操作部材30Bの操作位置に応じて可変抵抗器の抵抗値を変化させて駆動モータ8に流れる電流値を変えることができるようになっている。これにより、駆動モータ8の出力が操作部材30Bの操作位置に応じて調整することが可能である。
【0063】
このように、モータの出力を調整する操作部材の操作量を検知する検知手段については、適宜変形することが可能であり、本実施形態のように、スライド式センサ256によって操作部材30Bの操作量を検出する構成では、機構が単純化されるとともに、スペースに余裕があるやや大きめのリールに適した構成となる。
【0064】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、前述した実施形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施できる。例えば、前述した実施形態では、操作部材が前後スライド移動または水平回転移動によって変位されるが、その変位形態は任意である。また、前述した実施形態では、操作部材が右側板に設けられているが、左側板に設けられても構わない。また、操作部材の構造形態についても適宜、変形することが可能である。さらに、前述した実施形態では、手持ち保持される小型の電動リールを例示したが、釣竿を両手で手持ち保持する中型以上の電動リールにも本発明を適用可能である。この場合、操作部材については、スプールをサミングすることなく操作可能な位置に設置されていてもよい。
【符号の説明】
【0065】
1 魚釣用電動リール
5 リール本体
5A,5B 左右側板
6 手動ハンドル
7 スプール
7a スプール軸
7b フランジ
8 駆動モータ
19 クラッチON切換部材
19a 操作部(クラッチON操作部)
30,30A,30B 操作部材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リール本体の左右の側板間に設けられ、釣糸が巻回されるスプールと、
前記リール本体に設けられ、スプールを回転駆動する駆動モータと、
前記駆動モータの出力を調整する操作部材と、
を有する魚釣用電動リールにおいて、
前記スプールのフランジ外周近傍における前記側板のいずれか一方の内側壁部に前記操作部材を変位可能に設けたことを特徴とする魚釣用電動リール。
【請求項2】
前記操作部材は、前記スプールをサミング操作する手の親指で操作可能であることを特徴とする請求項1に記載の魚釣用電動リール。
【請求項3】
前記操作部材は、前記スプールの回転軸をほぼ中心とする円弧状の経路に沿ってスライド操作可能であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の魚釣用電動リール。
【請求項4】
前記操作部材が略水平面内で回転操作可能であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の魚釣用電動リール。
【請求項5】
前記スプールをフリー回転状態から釣糸巻き取り状態へと切り換え操作するためのクラッチON操作部を更に有し、該クラッチON操作部が前記スプールのフランジ外周近傍における前記側板の内面に配置されていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の魚釣用電動リール。
【請求項1】
リール本体の左右の側板間に設けられ、釣糸が巻回されるスプールと、
前記リール本体に設けられ、スプールを回転駆動する駆動モータと、
前記駆動モータの出力を調整する操作部材と、
を有する魚釣用電動リールにおいて、
前記スプールのフランジ外周近傍における前記側板のいずれか一方の内側壁部に前記操作部材を変位可能に設けたことを特徴とする魚釣用電動リール。
【請求項2】
前記操作部材は、前記スプールをサミング操作する手の親指で操作可能であることを特徴とする請求項1に記載の魚釣用電動リール。
【請求項3】
前記操作部材は、前記スプールの回転軸をほぼ中心とする円弧状の経路に沿ってスライド操作可能であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の魚釣用電動リール。
【請求項4】
前記操作部材が略水平面内で回転操作可能であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の魚釣用電動リール。
【請求項5】
前記スプールをフリー回転状態から釣糸巻き取り状態へと切り換え操作するためのクラッチON操作部を更に有し、該クラッチON操作部が前記スプールのフランジ外周近傍における前記側板の内面に配置されていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の魚釣用電動リール。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
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【図12】
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【図14】
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【図16】
【図17】
【公開番号】特開2013−21969(P2013−21969A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−159513(P2011−159513)
【出願日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【出願人】(000002495)グローブライド株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【出願人】(000002495)グローブライド株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】
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